JP3833523B2 - 定着用アンカー - Google Patents

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    • E04G2023/0251Increasing or restoring the load-bearing capacity of building construction elements by using fiber reinforced plastic elements
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、取り扱いが容易で、施工性が良い定着用アンカーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、定着用アンカー1は、炭素繊維シート9を用いたコンクリート構造物16の補強に用いられている。該定着用アンカー1は、独立している柱の補強のみでなく、図5(a)に示すように、袖壁10が設けられた柱11や床12が設けられた梁13、さらには壁面14等の補強を容易にしたものである。これらコンクリート構造物16の補強に際し、前記定着用アンカー1の適用方法は、貫通型、定着型の2通りが用いられている。
【0003】
貫通型の定着用アンカー1を用いた炭素繊維シート9によるコンクリート構造物16の補強方法を、袖壁10が設けられた柱11の補強を例に以下に示す。
図5(a)(b)に示すように、前記袖壁10における柱11との取り合い部に貫通孔10aを設け、該貫通孔10aに定着用アンカー1を貫通させてその両端部を扇形状2に広げておく。一方で、前記袖壁10から見て柱11の両面に定着樹脂を用いて炭素繊維シート9を貼り付けておき、定着樹脂を介して定着用アンカー1の両端部を柱11の両面に設けた該炭素繊維シート9の端部に、各々貼り付けるものである。
【0004】
これにより、柱11の一方の面に設けられた炭素繊維シート9に作用する引張力は、定着用アンカー1に伝達され、該定着用アンカー1によって袖壁10を抜けて他方の面の炭素繊維シート9に伝達されるものである。
【0005】
また、定着型の定着用アンカー1を用いた炭素繊維シート9によるコンクリート構造物16の補強方法を、柱11、梁13、床12に囲われた壁面14の補強を例に以下に示す。
図5(a)(c)に示すように、前記柱11、梁13、床12の各々における壁面14との取り合い部に定着孔15を設けておき、該定着孔15に定着用アンカー1の一方の端部を挿入し、定着樹脂等により固着しておく。一方で、壁面14に定着樹脂を用いて炭素繊維シート9を貼り付けておき、定着用アンカー1の他方の端部を扇形状2に押し広げて、該炭素繊維シート9の端部に定着樹脂を介して貼り付けるものである。なお、上記と同様に、ここで用いた定着樹脂は、一般に用いられているエポキシ樹脂を用いている。
【0006】
これにより、炭素繊維シート9に作用する引張力は、定着用アンカー1に伝達されて、該定着用アンカー1によってコンクリート構造物16に伝達されるものである。
【0007】
このように用いられる定着用アンカー1は、図4に示すように、12,000〜24,000本程度の炭素繊維の素線4をサイジング剤と呼ばれるコーティング樹脂を多量に用いて束ねることにより、2〜3mm程度の径を有する炭素繊維ストランド3を形成させ、該炭素繊維ストランド3を複数本束ねることにより形成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、該定着用アンカー1は、その端部を扇形状2に均一に広げること、さらには前記炭素繊維シート9に固着する際に、炭素繊維ストランド3を直線的に貼り付けることが困難である。これら扇形状2の広げ方が不均一であったり、炭素繊維ストランド3が曲がって貼り付けられると、炭素繊維シート9及び定着用アンカー1を用いた補強構造の本来の効果が得られることなく、その強度を低下させることとなる。また、これら炭素繊維シート9及び定着用アンカー1を用いた補強構造が本来の強度を確保できるように施工管理を行うことも困難である。
【0009】
さらに、前記炭素繊維ストランド3には、先にも述べたようにサイジング剤が用いられている。これは、前記炭素繊維シート9に、定着用アンカー1の端部の扇形状2を固定する際に用いる定着樹脂の含浸を阻害するものである。このように、定着用アンカー1の端部への定着樹脂の含浸が不足すると、定着用アンカー1と炭素繊維シート9との定着力が低下するため、これに伴い、炭素繊維シート9及び定着用アンカー1を用いた補強構造全体としての強度が低下することとなる。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、取り扱いが容易で、施工性が良い定着用アンカーを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の定着用アンカーは、コンクリート部材の補強に用いられる炭素繊維ストランドを複数本束ねて形成される定着用アンカーであって、前記炭素繊維ストランドが、炭素繊維の素線を束ねて、該素線の束を炭素繊維束ね部材により巻き付けることにより構成されることを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の定着用アンカーは、前記炭素繊維ストランドが、炭素繊維の素線とともに芯材を束ねて、これらの束に炭素繊維束ね部材を巻き付けることにより構成されることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の定着用アンカーは、前記定着用アンカーが、複数本の前記炭素繊維ストランドを束ねて、該炭素繊維ストランドの束の一部にストランド束ね部材を巻き付けるとともに、該炭素繊維ストランドの束の端部を扇形状となるように押し広げて、扇形状の端部に形状保持手段を介して固定することにより構成されることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の定着用アンカーについて、図1から図3を用いて詳述する。
【0015】
図1に示すように、定着用アンカー1を構成する炭素繊維ストランド3は、12000本あるいは24000本の炭素繊維の素線4を束にしたものである。これら炭素繊維の素線4に対して微量のサイジング剤を用いて束とし、まとめた上で、図1(a)に示すように1本の炭素繊維束ね部材5を巻き付けていき、炭素繊維ストランド3としたものである。
【0016】
前記炭素繊維束ね部材5は、炭素繊維の素線4に用いるサイジング剤の量を減らすとともに、炭素繊維の素線4の束をばらけにくくすることを目的に用いるもので、サイジング剤の量が微量となるため、炭素繊維ストランド3が形成された際にその端部がダマになりにくく、全ての炭素繊維の素線4を直線的に伸ばすことが可能になるものである。
【0017】
なお、該炭素繊維の素線4の束に巻き付けた炭素繊維束ね部材5は、その材質にこだわるものではなく、前記炭素繊維ストランド3の柔軟性が損なわれないものであれば、何れの材質を用いてもよい。また、該炭素繊維の素線4の束に巻き付けた炭素繊維束ね部材5は、その本数にこだわるものではなく、図1(b)に示すように複数本巻き付けてもよい。
【0018】
さらに、図2に示すように、前記炭素繊維束ね部材5で炭素繊維の素線4の束を巻き付けることにより構成された炭素繊維ストランド3には、前記炭素繊維の素線4と平行となるように芯材6が配置されている。該芯材6は、前記炭素繊維ストランド3自身の強度を高める目的で用いられるもので、変形させても炭素繊維の素線4を切れにくくするものである。
【0019】
なお、ここで用いられる前記芯材6は、その種類にこだわるものではなく、前記炭素繊維ストランド3の柔軟性が損なわれないものであれば、何れの材質を用いてもよい。また、用いる数量についても、こだわるものではなく、数本用いるものとしてもよい。
【0020】
次に、図3に、予め端部を扇状に広げた定着用アンカー1の構成を示す。該定着用アンカー1は、上述するような、前記炭素繊維束ね部材5で炭素繊維の素線4の束を巻き付けることにより構成された炭素繊維ストランド3を数本束にしたもので、その中央部には、ストランド束ね部材7が巻き付けられている。また、両端部は、扇状に押し広げられて、この該扇形状2を形成する炭素繊維ストランド3の先端部には形状保持手段8として糸が用いられて、先端部各々を連結している。
【0021】
これら形状保持手段8は、前記定着用アンカー1の端部を炭素繊維シート9に固着する際に、施工効率を向上させることを目的に用いられるもので、定着用アンカー1の端部に扇形状2を形成させるとともに、この時、該扇形状2を構成する炭素繊維ストランド3の端部を、曲がることなく直線となっている状態に保持するものである。
【0022】
なお、前記定着用アンカー1の端部の形状を固定するために用いられる形状保持手段8は、前述の糸にこだわるものではなく、前記定着用アンカー1の端部を扇形状2に保持し、該扇形状2を構成する炭素繊維ストランド3の端部を直線として保持できるものであれば、扇形状2に紙を貼る、もしくは樹脂で固める等、何れの手段を用いてもよい。また、形状保持手段8は、扇形状2の貼り付け途中、あるいは貼り付け後に取り去っても良いし、そのまま貼り付けてしまってもよい。
【0023】
また、定着用アンカー1に巻き付けるストランド束ね部材7は、その材質にこだわるものではなく、炭素繊維ストランド3の束をばらけることなく保持できるものであれば良く、図3(a)に示すようにセロハン、紙を用いたり、図3(b)に示すように、糸を用いて複数箇所を束ねる等何れを用いてもよい。
【0024】
上述する構成によれば、前記定着用アンカー1は、炭素繊維の素線4の束に炭素繊維束ね部材5を巻き付けた炭素繊維ストランド3が用いられることから、炭素繊維の素線4がばらけにくいとともに、素線4自身を真っ直ぐにのばした状態で扇状に広げることを可能とした。
【0025】
また、炭素繊維ストランド3に用いるサイジング剤の量を減らすことができるため、前記炭素繊維シート9へ定着用アンカー1の端部を固着する際にも、定着樹脂が浸透しやすく、前記炭素繊維シート9及び定着用アンカー1を用いた補強構造の強度を確保しやすい。
【0026】
前記定着用アンカー1は、前記炭素繊維束ね部材5で炭素繊維の素線4の束を巻き付けることにより構成された炭素繊維ストランド3に、前記炭素繊維の素線4と平行となるように芯材6が配置されていることから、前記炭素繊維ストランド3自身の強度を高めることが可能になるとともに、定着用アンカー1自身を変形させても炭素繊維の素線4を切れにくくすることが可能となる。
【0027】
前記定着用アンカー1は、予めその端部が扇形状2に形成されているため、施工効率が良く、炭素繊維シート9及び定着用アンカー1を用いた補強構造の強度を維持することが可能となる。また、前記扇形状2を構成する炭素繊維ストランド3の端部が直線として保持されるため、炭素繊維シート9及び定着用アンカー1を用いた補強構造の強度を一層維持することが可能となる。
【0028】
【発明の効果】
請求項1記載の定着用アンカーによれば、コンクリート部材の補強に用いられる炭素繊維ストランドを複数本束ねて形成される定着用アンカーであって、前記炭素繊維ストランドが、炭素繊維の素線を束ねて、該素線の束を炭素繊維束ね部材により巻き付けることにより構成されることから、炭素繊維の素線がばらけにくいとともに、素線自身を真っ直ぐにのばした状態で扇形状に広げることが可能となる、
また、炭素繊維ストランドに用いるのサイジング剤の量を減らすことができるため、前記炭素繊維シートへ定着用アンカーの端部を固着する際にも、定着樹脂が浸透しやすく、前記炭素繊維シート及び定着用アンカーを用いた補強構造の強度を確保することが可能となる。
【0029】
請求項2記載の定着用アンカーによれば、前記炭素繊維ストランドが、炭素繊維の素線とともに芯材を束ねて、これらの束に炭素繊維束ね部材を巻き付けることにより構成されることから、前記炭素繊維ストランド自身の強度を高めることが可能になるとともに、定着用アンカー自身を変形させても炭素繊維の素線を切れにくくすることが可能となる。
【0030】
請求項3記載の前記定着用アンカーによれば、前記定着用アンカーが、複数本の前記炭素繊維ストランドを束ねて、該炭素繊維ストランドの束の一部にストランド束ね部材を巻き付けるとともに、該炭素繊維ストランドの束の端部を扇形状となるように押し広げて、扇形状の端部に形状保持手段を介して固定することにより構成されることから、施工効率が良く、炭素繊維シート及び定着用アンカーを用いた補強構造の強度を維持することが可能となる。
【0031】
また、前記扇形状を構成する炭素繊維ストランドの端部が直線として保持されるため、炭素繊維シート及び定着用アンカーを用いた補強構造の強度を一層維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る炭素繊維ストランドを示す図である。
【図2】 本発明に係る炭素繊維ストランドの他の事例を示す図である。
【図3】 本発明に係る定着用アンカーを示す図である。
【図4】 従来の炭素繊維ストランドを示す図である。
【図5】 従来の定着用アンカーを用いたコンクリート構造物の補強事例を示す図である。
【符号の説明】
1 定着用アンカー
2 扇形状
3 炭素繊維ストランド
4 素線
5 炭素繊維束ね部材
6 芯材
7 ストランド束ね部材
8 形状保持手段
9 炭素繊維シート
10 袖壁
10a 貫通孔
11 柱
12 床
13 梁
14 壁面
15 定着孔
16 コンクリート構造物

Claims (3)

  1. コンクリート部材の補強に用いられる炭素繊維ストランドを複数本束ねて形成される定着用アンカーであって、
    前記炭素繊維ストランドが、炭素繊維の素線を束ねて、該素線の束を炭素繊維束ね部材により巻き付けることにより構成されることを特徴とする定着用アンカー。
  2. 請求項1に記載の定着用アンカーにおいて、
    前記炭素繊維ストランドが、炭素繊維の素線とともに芯材を束ねて、これらの束に炭素繊維束ね部材を巻き付けることにより構成されることを特徴とする定着用アンカー。
  3. 請求項1または2に記載の定着用アンカーにおいて、
    前記定着用アンカーが、複数本の前記炭素繊維ストランドを束ねて、該炭素繊維ストランドの束の一部にストランド束ね部材を巻き付けるとともに、
    該炭素繊維ストランドの束の端部を扇形状となるように押し広げて、扇形状の端部に形状保持手段を介して固定することにより構成されることを特徴とする定着用アンカー。
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