JP3827924B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形耐熱性および耐候性に優れ、成形加工時における添加剤の揮発や成形不良、シートや成形品におけるブリードアウトが低減された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を表面層に有する積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性に優れていることから、多くの用途に使用されている。最近では、シート材料や窓ガラス材料等、屋外での用途においても広く使用されるようになってきている。しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂を屋外で長期間使用すると、紫外線による樹脂の黄変やクラックの発生で、透明性や機械物性が低下することが知られている。
【0003】
耐候性を向上させる方法としては、例えば、紫外線吸収剤を芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する方法、紫外線吸収剤を配合した樹脂(芳香族ポリカーボネ−ト樹脂あるいはその他のアクリル樹脂等)を芳香族ポリカーボネネートシートや成形体表面に積層あるいは被覆する方法がある。さらに、高度の耐候性を付与するためには、紫外線吸収剤の配合濃度を高くしたり、高濃度に紫外線吸収剤を配合した樹脂をポリカーボネート樹脂の表面に積層あるいは被覆する方法が知られている。
【0004】
一般に樹脂添加剤は、押出加工、成形加工時に揮発や分解が起こりやすいものが多く、場合によっては、シートや成形品の色相を悪化させたりシルバー現象や成形耐熱性悪化等の成形不良、成形品におけるブリードアウト(プレートアウト)等の問題を引き起こす原因となることもある。紫外線吸収剤も例外ではなく、特に、多くの添加量を必要とする場合はこれらの問題をおこしやすい。かかる問題を解決するために、熱による分解や揮発が少ない紫外線吸収剤、さらに成形加工や製品の熱処理において樹脂製品の表面へ移行しにくい紫外線吸収剤の開発が望まれている。
【0005】
紫外線吸収剤でよく使用されているのは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるが、成形加工時のガス発生を抑制するために、より揮発性が低い紫外線吸収剤の開発が行われるようになってきた。例えば、ベンゾトリアゾール骨格に分子量が高めの置換基を導入した化合物、ベンゾトリアゾール化合物の二量体型化合物、トリフェニルトリアジン骨格を有する特定の化合物等が既に開発されている。その中でもより効果的なのがベンゾトリアゾール化合物の二量体型化合物とトリフェニルトリアジン骨格を有する特定の化合物である。前者を用いた例として特公平6−41162号公報が挙げられ、後者を用いた例として特開平5−93089号公報、特開平9−176476号公報、特開平10−17759号公報、特開平10−166512号公報、特開平10−120894号公報、特開平10−44356号公報等が挙げられる。
【0006】
さらに、特開平9−57813号公報では、前者紫外線吸収剤よりも後者紫外線吸収剤を用いたほうが耐候性試験において黄変が少ないと記載されている。しかしながら、後者の紫外線吸収剤を使用した場合、耐候性試験において黄変が少ない傾向が認められているもののまだ十分とは言えず、また、成形耐熱性も十分とは言えない。樹脂製品の多様化、高度な品質要求が高まる中では、より耐候性や成形耐熱性が優れる芳香族樹脂組成物の開発が望まれている。
【0007】
一方、アントラキノン系化合物等に代表される青色系染料は、例えば、ポリカーボネート樹脂の成形品の黄色味を打ち消したり青色味をつけるために、すなわち、ブルーイング剤として用いられるが、耐候性や成形耐熱性に対するブルーイング剤の影響についてこれまで言及されたことはなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、多くの添加剤やそれを用いた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されてきた。ポリカーボネート樹脂製品の多種多様化が進む中で、今後も新しい添加剤の開発が必要である。それと同時に、既存の各添加剤、例えば紫外線吸収剤に関しては、これを用いたポリカーボネート樹脂組成物に関し、耐候性をはじめ、成形耐熱性やその他の性能をより向上させることが強く求められている。
【0009】
本発明の目的は、特定のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を用いた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、耐候性と成形耐熱性がより向上した組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、驚くべきことに、特定のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を用いた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、該紫外線吸収剤量に対して規定された量のブルーイング剤を使用することにより、成形滞留による色相変化および耐候性試験処理における色相変化が小さくなることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明によれば、(A)粘度平均分子量が17,000〜50,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部(a成分)、(B)下記式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物0.1〜10重量部(b成分)および(C)ブルーイング剤Y重量部(c成分;ただし、Yは、b成分をX重量部としたときに、下記計算式で示される範囲である。)からなる芳香族ポリカーボネ−ト樹脂組成物が提供される。
0.00025X ≦ Y ≦ 0.00055X
【0012】
【化6】
【0013】
[式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基または炭素数6〜20のアラルキル基を示し、R2は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を示し、それぞれが同一でも異なっていてもよい。]
【0014】
本発明でa成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法(溶液法)また溶融法で反応させて得られるものである。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでもビスフェノールAが特に好ましい。
【0015】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0016】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融法によって反応させて芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、二価フェノールは単独または2種以上を使用することができ、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。また芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。
【0017】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。
【0018】
酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。
【0019】
有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0020】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間程度である。
【0021】
また、重合反応において、末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。カーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、ポリカーボネートの末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記式(6)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0022】
【化7】
【0023】
[式中、Rは水素原子または炭素数1〜9のアルキル基もしくはフェニルアルキル基であり、mは1〜5、好ましくは1〜3の整数を示す。]
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0024】
溶融法による反応は、通常二価フェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとジフェニルカーボネートを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0025】
また、溶融法による重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。
【0026】
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で17,000〜50,000であり、18,000〜40,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、押出・成形加工時に比較的良好な流動性を保ちながら、得られた成形品に関して一定の機械的強度を有するので好ましい。
【0027】
本発明でいう粘度平均分子量は、塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液を用いて測定された比粘度(ηSP)を次式に挿入して求めるMを指す。
【0028】
本発明において、b成分として前記式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物が使用される。
【0029】
前記式(1)中のR1とは、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数6〜20のアラルキル基である。
【0030】
炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖または分岐状のアルキル基であってよく、ハロゲン原子やアルコキシ基で置換されたアルキル基であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−イソプロポキシエチル基、2−メトシキプロピル基、3−ブトキシプロピル基、2−ブトキシエチル基、2−ヘキシルオキシエチル基、2−オクチルオキシエチル基および2−ドデシルオキシエチル基等が挙げられる。
【0031】
また、炭素数6〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基および2−フェニルイソプロピル基等が挙げられ、なかでもベンジル基が好ましく使用される。
【0032】
R1は、その置換基を有する化合物の合成効率や精製効率を考慮すると、好ましくは炭素数3〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜8のアルキル基であり、特に好ましくはヘキシル基である。また、R1は、ポリカーボネート樹脂との相溶性を考慮すると直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0033】
また、前記式(1)中のR2とは、水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基であり、その置換基を有する化合物の合成効率や精製効率を考慮すると、好ましくは水素原子およびメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0034】
かかるb成分のヒドロキシフェニルトリアジン化合物として、具体的には、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製TINUVIN1577)、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール(例えば、シプロ化成製CYASORB1164)等が挙げられ、化合物の合成効率や精製効率を考慮すると、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールがより好ましい。
【0035】
また、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物の粒径は、0.1〜1.5mm程度が好ましく、溶融押出に使用されるベースのポリカーボーネート樹脂粉粒体の粒径以下のものがより好ましい。また、粒径が一定のものが、押出加工して得られる樹脂組成物のペレットの色相が安定して良好であり、好ましく使用される。
【0036】
本発明において、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(b成分)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)100重量部に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは0.15〜8重量部であり、より好ましくは0.2〜6重量部である。0.1重量部未満では耐候性を十分付与できず好ましくなく、10重量部を超えると樹脂組成物の機械物性が低下し好ましくない。
【0037】
本発明において、c成分としてブルーイング剤が使用される。ブルーイング剤は、本来、透明ポリカーボネート樹脂の黄色みを打ち消すために用いたり、青みを目立たせる目的に用いているものであり、アントラキノン系染料等が好ましく使用される。アントラキノン系染料とは、9、10−アントラキノン骨格を分子中に有する有機染料である。
【0038】
c成分のブルーイング剤として、具体的には、バイエル社のマクロレックスバイオレットBやサンド社のテラゾールブル−RLS等が挙げられる。
【0039】
本発明において、ブルーイング剤(c成分)の配合量は、前記ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(b成分)の配合量によって規定される。つまり、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(b成分)の配合量をX重量部としたときに、ブルーイング剤(c成分)の配合量Y重量部は、下記計算式で示される範囲の値である。
0.00025X ≦ Y ≦ 0.00055X
【0040】
このYの下限範囲は、0.00028Xがより好ましく、0.0003Xがさらに好ましい。また、Yの上限範囲は、0.00052Xがより好ましく、0.0005Xがさらに好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(b成分)の配合量に対して、ブルーイング剤(c成分)の量が上記計算式の範囲を外れると、高度な成形耐熱性や耐候性を維持できず、本発明の目的を達成することができなくなり好ましくない。
【0041】
ここで、優れた成形耐熱性や耐候性を判断するために、成形滞留処理や耐候性試験処理における前後の状態の変化を評価する方法があげられる。評価項目としては、成形片の機械物性変化、分子量変化、色相変化等などがあげられるが、本発明においては、特に色相変化に注目して評価を行った。
【0042】
本発明においては、さらにd成分として、炭素数が3〜32である一価あるいは多価の脂肪族アルコールと炭素数が3〜32の脂肪族カルボン酸との脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0043】
炭素数が3〜32である一価あるいは多価の脂肪族アルコールとは、直鎖状のものでも分岐状のものでもよく、iso−プロパノール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、n−トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、n−ペンタデシルアルコール、パルミチルアルコール、マーガリルアルコール、ステアリルアルコール、n−ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ミリシルアルコ−ル、メチルペンチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、3.5−ジメチル−1−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−1−ペンタノール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等があげられる。なかでも、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ノニルアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0044】
炭素数が3〜32の脂肪族カルボン酸とは、1価のカルボン酸でありn−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、n−ペンタデカン酸、パルミチン酸、1−ヘプタデカン酸、ステアリン酸、n−ノナデカン酸、エイコサン酸、1−ヘキサコサン酸、ベヘン酸等があげられ、好ましくは、ステアリン酸、n−ノナデカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸であり、より好ましくはステアリン酸である。
【0045】
d成分の脂肪酸エステルとしては、前述のアルコールとカルボン酸を組み合わせて得られる1種以上の化合物である。具体的には、ステアリン酸モノグリセリド、パルミチルパルミテート、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラノナノネート、プロピレングリコールジステアレート、ジペンタエリスルトールヘキサステアレート等が挙げられる。
【0046】
これらの脂肪酸エステルの中でも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられ、このステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物は、重量比で前者が60〜80に対して後者が20〜40の範囲が好ましい。これらの脂肪酸エステルの中でより好ましいのは、ペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0047】
かかる脂肪酸エステル(d成分)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)100重量部に対して0.005〜1重量部が好ましく、0.01〜0.6重量部がより好ましい。脂肪酸エステルの配合量が上記範囲であると、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する際の離型性が十分であり、また、金型付着物が少なく、成形耐熱性に優れることから好ましい。
【0048】
本発明においては、さらにe成分として、下記式(2)、(3)、(4)および(5)で示されるリン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を用いることが好ましい。
【0049】
【化8】
【0050】
【化9】
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
【0053】
[式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4はアルキル置換基があってもよい芳香族基であって、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
前記リン系化合物(e成分)のなかで、前記式(2)で示されるリン系化合物が好ましく使用される。また、前記式(2)で示されるリン系化合物は、前記式(3)および前記式(4)と併用して使用することがより好ましい。
【0054】
前記式(2)、式(3)および式(4)で示されるリン系化合物を併用して使用する場合、その合計を100重量%とした時、式(2)で示されるリン系化合物が40〜80重量%、式(3)で示されるリン系化合物が0〜25重量%および式(4)で示されるリン系化合物が5〜50重量%の範囲が好ましく、式(2)が40〜80重量%、式(3)が5〜25重量%および式(4)が5〜50重量%がより好ましい。特に好ましくは、式(2)が50〜80重量%、式(3)が5〜25重量%および式(4)が5〜45重量%である。また、式(2)、式(3)および式(4)中のAr1、Ar2およびAr3はジアルキルフェニル基が好ましい。
【0055】
前記式(2)で示される化合物の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−ter
【0056】
テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトがより好ましい。
【0057】
このテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトは、2種以上の混合物であってもよく、具体的には、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(2−1成分)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト(2−2成分)およびテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト(2−3成分)の3種の混合物が好ましい。また、この混合物の混合比は、2−1成分、2−2成分および2−3成分が重量比で、100:37〜64:4〜14の範囲が好ましく、100:40〜60:5〜11の範囲がより好ましい。
【0058】
前記式(3)で示される化合物の具体例としては、ビス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、
【0059】
ビス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。
【0060】
このビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトは、2種以上の混合物であってもよく、具体的には、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト(3−1成分)およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト(3−2成分)の混合物が好ましい。また、この混合物の混合比は、3−1成分および3−2成分が重量比で、5:1〜4の範囲が好ましく、5:2〜3の範囲がより好ましい。
【0061】
前記式(4)で示される化合物の具体例としては、トリス(ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、
【0062】
トリフェニルホスファイト、トリス(4−n−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(4−デシルフェニル)ホスファイト、トリス(4−オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−オクタデシルフェニル)ホスファイト、トリス(4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−エチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられ、トリス(ジアルキル置換フェニル)ホスファイトが好ましく、トリス(ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。かかる式(4)で示される化合物は単独でまたは2種以上の混合物で使用してもよい。
【0063】
前記式(5)で示される化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
【0064】
本発明において、リン系化合物(e成分)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)100重量部に対して、0.002〜0.2重量部の範囲が好ましく、0.005〜0.15重量部の範囲がより好ましく、0.01〜0.1重量部の範囲がさらに好ましい。リン系化合物の配合量がかかる範囲であると、樹脂の熱安定性が良好で、また、樹脂の機械物性が低下せず好ましい。
【0065】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を高度に防止するために、前記リン系安定剤に加えて、他の熱安定剤を追加併用することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。
【0066】
かかるエステル類として具体的には、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、亜リン酸、トリメチルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。これらは、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
かかる熱安定剤の配合量は、該芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.15重量部が好ましく、0.001〜0.1重量部がより好ましく、0.001〜0.05重量部がさらに好ましい。
【0068】
本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にヒンダードフェノール系安定剤を加えることが好ましい。かかるヒンダードフェノール系安定剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.015〜0.15重量部の範囲が好ましく、0.03〜0.08重量部の範囲がより好ましい。
【0069】
かかるヒンダードフェノール系安定剤として、具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル(アルキルは炭素数7〜9で側鎖を有する)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンが挙げられる。
【0070】
その中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましく使用される。
【0071】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することができる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。
【0072】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、易滑性を付与するために、さらに無機粒子、好適には炭酸カルシウムを配合することができる。かかる無機粒子を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、これから得られる成形品、殊にシートを重ねた時の滑り性に優れる。芳香族ポリカーボネート樹脂からなるシートは、建築物や車両用の窓材、アーケード、風防板等に使用され、前記無機粒子を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐候性、耐熱成形性に優れることから、これらの用途に好適に使用される。
【0073】
また、前記無機粒子を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、その耐候性、耐熱成形性および易滑性を効率良く発揮させることから、芳香族ポリカーボネート樹脂製シートの表面に表面層として使用し、積層体とすることが好ましい。かかる積層体はシートおよび表面層が共にポリカーボネート樹脂であることからリサイクルも容易であり好ましい。
【0074】
かかる積層体を製造する方法としては、共押出法が好ましく採用される。具体的には、補助のエクストルージョンで本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物をその融点〜融点+150℃、好ましくは融点+30℃〜融点+100℃で溶融押出し、主のエクストルージョンで芳香族ポリカーボネート樹脂を同様の温度で溶融押出し、多層スロットダイまたはフィードブロックを経由させTダイから押出し積層することができる。
【0075】
かかる積層体において、芳香族ポリカーボネート樹脂製シートの厚みは、0.5〜20mmが好ましく、表面層の厚みは、10〜100μmが好ましい。
【0076】
かかる積層体の表面層は厚みが薄く、このような場合は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の押出量が少なくなり、押出成形時の滞留時間が長くなることから、本発明の成形耐熱性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が好適に使用される。
【0077】
前記無機粒子の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.01〜0.1重量部の範囲が好ましく、かかる範囲内であると成形耐熱性が損なわれず、また、成形品表面に易滑性が付与され好ましい。
【0078】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において芳香族ポリカーボネート樹脂と紫外線吸収剤、ブルーイング剤およびその他の添加剤をブレンドするには、任意の方法が採用される。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物パウダーやペレットのブレンド品は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、シート押出法、シート共押出法等の通常知られている方法で成形品やシート製品にすることができる。
【0079】
芳香族ポリカーボネート樹脂と添加剤のブレンドにあたっては、一段階で実施してもよいが、二段階以上に分けて実施してもよい。二段階に分けて実施する方法には、例えば、配合する芳香族ポリカーボネート樹脂パウダーやペレットの一部と添加剤とをブレンドした後、つまり、添加剤を芳香族ポリカーボネート樹脂パウダーで希釈して添加剤のマスターバッチとした後、これを用いて最終的なブレンドを行う方法がある。
【0080】
また、一段階でブレンドする方法においては、所定量の各成分を予め混合したものを芳香族ポリカーボネート樹脂パウダーやペレットとブレンドする方法、また、所定量の各成分を各々別個に計量し、芳香族ポリカーボネート樹脂パウダーやペレットに順次添加後ブレンドする方法等を採用することができる。
【0081】
各添加剤の配合にあたっては、添加剤を押出機に直接添加、注入、あるいは加熱融解後注入する方法をとることもできる。また、界面重合法においては、重合終了後の芳香族ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液に各添加剤を添加溶解する方法も採用できる。
【0082】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、成形評価は下記の方法で行った。
【0083】
[1]成形耐熱性
射出成形機を用いてペレットを成形温度340℃、1分サイクルで「滞留前の色相測定用平板」(70mm×50mm×2mm)に成形した。さらに、シリンダ−中に樹脂を10分間滞留させた後、「滞留後の色相測定用平板」を得た。滞留前後の平板の色相を色差計により測定し、次式により色差△Eを求めた。表に示した値(△E)が小さいほど成形耐熱性が優れることを示す。
△E={(L−L’)2+(a−a’)2+(b−b’)2}1/2
滞留前の色相:L、a、b
滞留後の色相:L’、a’、b’
【0084】
[2]耐候性
射出成形機を用いてペットを成形温度340℃、1分サイクルで色相測定用平板(70mm×50mm×2mm)に成形した。この平板成形片をJIS規格A1415にしたがってサンシャインウエザーメーターにより、500時間の処理を行った。処理前後の黄色度(YI)の差を△YIとした。表に示した値(△YI)が小さいほど耐候性が優れることを示す。
【0085】
実施例、比較例で用いた紫外線吸収剤、ブルーイング剤、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、脂肪酸エステル、炭酸カルシウムは以下の通りである。
【0086】
(1)紫外線吸収剤
2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール
【0087】
(2)ブルーイング剤
1−(4−メチルフェニルアミノ)−4−ヒドロシ−9、10−アントラキノン
【0088】
(3)リン系安定剤1
テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイトおよびテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトの100:50:10(重量比)混合物
【0089】
(4)リン系安定剤2
ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトの5:3(重量比)混合物
【0090】
(5)リン系安定剤3
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)
【0091】
(6)リン系安定剤4
ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジファスファイト
【0092】
(7)リン系安定剤5
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト。
【0093】
(8)ヒンダードフェノール系安定剤
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
【0094】
(9)脂肪酸エステル1
ステアリン酸モノグリセリド
【0095】
(10)脂肪酸エステル2
ペンタエリスリトールテトラステアレート
【0096】
(11)炭酸カルシウム
平均粒径5ミクロンの白色粉末で、約1重量%の脂肪酸で表面処理がなされたもの
【0097】
[実施例1〜15および比較例1〜4]
ビスフェノールA、p−tert−ブチルフェノール(末端停止剤)とホスゲンから界面縮重合法により得られた粉粒状芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、各添加剤を表1〜表3に示した組成の通り添加混合し、280℃で押出ペレット化後、前述の成形評価を行い、表1〜表3の評価結果を得た。
【0098】
[実施例16〜17および比較例5]
粘度平均分子量23700の芳香族ポリカーボネート樹脂をスクリュー径90mmの押出機に供給して250〜300℃で溶融し、一方スクリュー径50mmの補助押出機に芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、各添加剤を表4に示した組成の通り添加混合した樹脂組成物を供給して250〜300℃で溶融し、フィードブロックおよびTダイを経由し、表面層の厚さを50μm、ポリカーボネート樹脂シートの厚さを2mmに制御して積層体を押出した。耐候性の評価結果を表4に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収剤の配合量に対しブルーイング剤量を限定することにより、より成形耐熱性および耐候性を向上させることができ、その奏する工業的効果は格別である。
Claims (5)
- a成分100重量部に対して、さらに(D)炭素数が3〜32である一価あるいは多価の脂肪族アルコールと炭素数が3〜32の脂肪族カルボン酸との脂肪酸エステル0.005〜1重量部(d成分)を含有する請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- a成分100重量部に対して、さらに(F)炭酸カルシウム0.01〜0.1重量部(f成分)を含有する請求項1〜3記載のいずれかの芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜4記載のいずれかの芳香族ポリカーボネート樹脂組成物よりなる表面層を有する積層体。
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