JP3827655B2 - 非円形歯車及び非円形歯車を用いた容積式流量計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非円形歯車及び非円形歯車を用いた容積式流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、非円形歯車は容積式流量計やポンプなどに用いられている。非円形歯車のうちピッチ曲線がρ=a/(1−bcos2θ)で表されるオーバル歯車は、回転による噛合圧力角の変化が大きく、また、長径部における歯形の切下げ等の干渉を避けるために歯形モジュールを小さくして歯数を多くしている。ここに、ρ:動径,a:相似係数,b:扁平度,θ:偏角という。
【0003】
回転による噛合圧力角の変化を大きくしない技術として、楕円形歯車の一種であるオーバル歯車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。オーバル歯車は、歯車のピッチ曲線上に刻まれる歯形曲線の実質部を常に回転中心方向に歯付けすることで、噛合圧力角の変化を少なく且つ絶対に負にならないよう、設計された非円形歯車である。このオーバル歯車は、一回転当りの吐出量が大きく、長期間高精度を維持できることから容積式流量計の回転子としてかなり使用されている。
【0004】
また、インボリュート歯形の切下げを防ぐ技術として、従来から特殊な転位をした歪み楕円歯車が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この歪み楕円歯車は、歯数が14枚で実用化され、セーコーポンプとして知られたポンプ内に組み込まれており、歯車における長径の先端(トップ)に位置するポンプ内璧とのシール部分は、長軸方向の両端において各1つの歯で構成されている。また、この歪み楕円歯車は、切下げのない歯型であるが、オーバーハング部を有している。
【0005】
一方、非円形歯車は金属材料で製造されることが多いが、コストを鑑みて安価な樹脂成型で製造されることもある。しかしながら、樹脂成型の非円形歯車を考えた場合、成型性を高めて歯形強度を向上させる必要があり、そのためには歯形モジュールを大きくして歯数を少なくしなければならない。
【0006】
歯数を少なくする技術としては、上述した非特許文献1に記載の歪み楕円歯車が挙げられるが、この歯車は、オーバーハング部をもつ歯形をもつようになってしまう。樹脂成型による楕円歯車は、樹脂注入して固める際に鋳型の中で楕円中心方向に向って樹脂が収縮することで形成されるが、オーバーハング部では収縮方向がないため収縮できずその部分で欠陥を生じやすい。従って、オーバーハング部が存在しないように歯形を設計することが求めらている。
【0007】
また、非円形歯車として、突起歯形を有する突起歯車も提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の非円形歯車式流量計は、小型流量計としての測定精度を上げること及び1回転当りの吐出量を多くすることを目的として、長径部の歯形を突起させ且つその突起部分と噛合う切り欠きを短径部に設けた非円形歯車を備えている。
【0008】
【特許文献1】
特公平1−39052号公報
【特許文献2】
特公昭62−3885号公報
【非特許文献1】
市川常雄著,「歯車ポンプ」,日刊工業新聞社,昭和37年8月20日,p.165−166
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のごとく、非円形歯車を樹脂成型で製造する場合、樹脂歯形の強度を上げる必要があり、そのためにモジュールを大きくする必要があるが、モジュールを大きくするためには、歯車全体の大きさの制限もあり歯数を少なくすることが求められる。しかしながら、非円形歯車において単に切下げを防ぎながら工具圧力角を大きくすることにより歯形を傾けることで歯車全体に対するモジュールの比率を大きくしただけでは、オーバーハングする歯形を樹脂成型で形づくる必要が生じ、結果としてその部分で欠陥が生じてしまう。
【0010】
特許文献1には、歯車のピッチ曲線上に刻まれる歯形曲線の実質部を常に回転中心方向に歯付けすることで、工具圧力角(インボリュート歯形を創成する工具の圧力角)の設定に際し噛合圧力角が負にならない程度に歯形を傾け、その結果、オーバーハング部をもつ歯形が無いよう設計されたオーバル歯車が記載されているが、オーバーハング部が無く且つ歯数を少なくする技術については、記載されていない。
【0011】
特許文献2に記載の流量計では、回転子の軸がケーシング(ここでは計量室)側に固定された突起歯車を実際に設計・製造した場合、トップ部分の突起はモジュールに比例して大きくせざるを得ず、従ってその突起に噛合する凹部の凹みも大きくなり、突起歯車の中心に設けるべき軸受の入るエリアが確保できない。さらに、特許文献2に記載の突起歯車においても、オーバーハング部をもたないように歯数を少なくするための技術については記載されていない。従って、この突起歯車は、歯数が多くなるので、そのトップ部分の突起とケーシングの内壁とのシール長(シール幅)を小さくせざるを得ない。シール長が短い歯車は、トップ部からの漏れの量が多くなり、容積式流量計に設置するには適さない。
【0012】
さらに、特許文献1等の従来技術による非円形歯車において、歯数を少なくし且つオーバーハングを防ぐためには、工具圧力角を尖り限界まで大きくすることにより歯形を傾けて尖らせた設計にすることが考えられるが、その非円形歯車とそれを設けるケーシングの内壁とのシール部分が殆ど無くなり、シール性が確保できなくなる上に、歯車を噛み合せた回転に伴って尖り部分での磨耗が激しい。従って、特にトップ部やその付近の歯形であっても、尖り限界まで曲げて設計されていない。
【0013】
また、樹脂成型の非円形歯車に限らず、例えば金属等で形成された非円形歯車であっても、尖り限界まで尖らせた歯形及びシール長の短さという欠点を備えたものは使用に耐えない。従って、樹脂成型以外の非円形歯車であっても、尖り限界まで尖らせた歯形を用いた設計はなされていなかった。
【0014】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、噛合圧力角の変化を少なく、噛合歯面における工具圧力角設定に有利で、オーバーハング部を形成することもなく歯数を少なくし、ケーシング内に設置する際にケーシングの内壁とのシール性を十分確保することが可能な、非円形歯車、及びその非円形歯車を備えた容積式流量計を提供することをその目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の各技術手段により構成される。
第1の技術手段は、ケーシング内に一対で設けられるべき非円形歯車であって、当該非円形歯車は、歯数を4n+2枚(nは自然数)、長軸上の両端を歯溝、短軸上の両端を歯先、噛合歯面をインボリュート曲線、非噛合歯面をサイクロイド曲線とした歯形曲線をもち、該歯形曲線における各歯形のインボリュート曲線の工具圧力角は、前記長軸の両端に最近の歯形に対して、切下げを防ぎ且つ最大尖り限界まで歯先を尖らせるような大きい値に設定され、当該非円形歯車は、前記歯形曲線に基づいて、前記長軸上の両端にある歯溝を含む、該歯溝を挟んだ2つの歯形間の凹部を埋め、且つ、前記短軸上の両端の歯先を含む歯部を削った、歯数が4n−2枚の形状をもつことを特徴としたものである。
【0016】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、当該非円形歯車は、前記凹部を埋めた形状をもつ凸部と、当該非円形歯車と同じ非円形歯車における前記歯部を削った形状をもつ凹部とを、噛み合わせるよう構成されていることを特徴としたものである。
【0017】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記歯形曲線は前記ケーシングにおける当該非円形歯車の設置場所及び内壁の大きさにより決定し、前記形状は、前記凹部を前記ケーシングの内壁に合った円弧で埋めたものであることを特徴としたものである。
【0018】
第4の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記歯形曲線は前記ケーシングにおける当該非円形歯車の設置場所及び内壁の大きさにより決定し、前記形状は、前記凹部を前記ケーシングの内壁に合った曲線で埋めたものであり、該埋めた曲線は、当該非円形歯車と同じ非円形歯車における前記歯部を削ってできた凹部の底と噛合時に接触させるものであることを特徴としたものである。
【0019】
第5の技術手段は、第1乃至第4のいずれか1の技術手段において、前記歯形曲線は、歯数が14又は18のものとし、結果としてそれぞれ、歯数が10又は14となるよう構成したことを特徴としたものである。
【0020】
第6の技術手段は、第1乃至第5のいずれか1の技術手段において、当該非円形歯車のピッチ曲線は、ころがり接触条件を満足する単一の閉曲線或いは数種類を組み合わせた閉曲線であることを特徴としたものである。
【0021】
第7の技術手段は、第1乃至第6のいずれか1の技術手段において、当該非円形歯車は、樹脂で形成されていることを特徴としたものである。
【0022】
第8の技術手段は、第1乃至第7のいずれか1の技術手段において、前記ケーシングは、容積式流量計における計量室であることを特徴としたものである。
【0023】
第9の技術手段は、第8の技術手段における非円形歯車を一対備えた容積式流量計であって、前記一対の非円形歯車を前記計量室内に一対の回転子として噛合させて設置し、該一対の回転子が吐出する被測定流体の流量を測定することを特徴とする容積式流量計である。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態に係る非円形歯車を備えた容積式流量計の一構成例を示す図で、図1(A)は図1(B)の矢視A−A線断面図、図1(B)は図1(A)の矢視B−B線断面図である。図中、10は容積式流量計、11は筐体(外筐)、12は端面板、15は磁気センサ、20は計量室、21は流入口、22は流出口、23,27は回転子、23aは回転子23の歯車部(噛合部)、23bは回転子23の端面、24は回転子23の回転軸、25,26は磁石である。
【0025】
容積式流量計10は、外筐11と、蓋部(端面板)12と、外筐11及び端面板12により形成される空間に相当する計量室20と、及び計量室20内に配設され回転軸24まわりに回転可能に支持される回転子23及びそれと同様の回転子27と、磁気センサ15と、をその主要な構成要素とする。
【0026】
計量室20は、流入口21及び流出口22に連通した外筐11の内壁と、開口した外筐11を封止するために外筐11に取り付けられた非磁性材からなる端面板12と、により構成される。また、計量室20内には、回転軸24が垂直に且つ互いに平行に埋設され、回転軸24に回転可能に支持された非円形歯車の回転子23及び同様の回転軸に回転可能に支持された非円形歯車の回転子27が各々噛合するよう配設されている。本発明の特徴部分である非円形歯車の回転子23,27に関しては後述する。
【0027】
また、一方の回転子23の端面23bには軸対称な位置(ここでは長径上)に磁石25,26が埋設されている。このように、計量室20内で流入する流体の体積に比例して回転する回転子23の端面23bに、柱状の磁石25,26を圧入して、磁石25,26の磁束が端面板12の上に配設された磁気センサ15により検出できるようにしている。本構成例では、磁石25,26を回転子23に埋設した例を示したが、回転子27に埋設してもよく、さらには1つの磁石のみを埋設するようにしてもよい。
【0028】
さらに、上述の容積式流量計は、磁気感知方式を採用したものを例示したが、電磁式の感知方式を採用してもよいし、また、光学的に回転子の位置を検出する方式(光学式位置検出方式)や回転子の軸の回転を機械的に外部に伝達する方式を採用してもよく、回転子の回転動作を何らかの手段で計測できればよい。
【0029】
以下、上述の容積式流量計に限らず、一対の回転子が吐出する被測定流体の流量を測定する容積式流量計にも、一対の回転子として噛合させて設置可能な非円形歯車に関し、詳述する。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態に係る非円形歯車の一構成例を示す図で、図2(A),(B)は、一対の非円形歯車の噛合いをその回転位置に応じて示す図である。図中、30は第一の非円形歯車、31〜37,41〜47はそれぞれ第一の非円形歯車における第1〜第14の歯形、33a,33b,33cはそれぞれ第3歯形における噛合歯面,非噛合歯面,歯先、36a,36b,36cはそれぞれ第6歯形における噛合歯面,非噛合歯面,歯先、38,48は第一の非円形歯車における凹部、39,49は第一の非円形歯車における凸部、50は第二の非円形歯車、51〜57,61〜67はそれぞれ第二の非円形歯車における第1〜第14の歯形、58,68は第二の非円形歯車における凹部、59,69は第二の非円形歯車における凸部、O1は第一の非円形歯車の中心、O2は第二の非円形歯車の中心である。
【0031】
本発明の一実施形態に係る非円形歯車30,50(図1の回転子23,27に相当する)は、ケーシング内に一対で設けられるべき非円形歯車であって、次の歯形曲線をもつものとする。ここで、ケーシングは、容積式流量計における計量室に相当する。ここで、非円形歯車30,50が樹脂(樹脂モールドなどの成型により)で形成されているものとすることで、安価に製造できるだけでなく、歯数を少なく、且つ回転中心方向への収縮により欠陥が生じるオーバーハング部を形成させないようにする本発明の特徴部分が生かされた形態となる。しかしながら、勿論、非円形歯車30,50は樹脂成型だけでなく、金属を削り加工したものなど、様々な材料,製法によって形成可能である。
【0032】
この歯形曲線は、ピッチ曲線を楕円として刻まれた歯形曲線であって、歯数を4n+2枚(n=1,2,3,...)、長軸上の両端を歯溝(例えば歯形34と歯形35との間の歯溝)、短軸上の両端を歯先(例えば歯形31の歯先)とし、歯形31〜37,41〜47(非円形歯車50の場合、歯形51〜57,61〜67)を基本の曲線としている。なお、図2ではn=3で計14枚の場合を例示している。また、nを小さくとった場合、或いはより小型の歯車の場合はピッチ曲線の扁平度を小さくし、円形に近いようにするとよい。また、ここではピッチ曲線を楕円として説明しているが、非円形歯車のピッチ曲線は、オーバル歯車のピッチ曲線ρ=a/(1−bcos2θ)に代表されるものに限定されず、ころがり接触条件を満足する単一の閉曲線或いは数種類を組み合わせた閉曲線であればよい。
【0033】
歯数に関し、埋めた部分及び削った部分を考慮する前の歯数、すなわち元の歯形曲線における歯形の数としては、埋める部分及び削る部分を鑑みて6個以上の数(4n+2)であればよく、後述する埋める部分及び削る部分を考慮すると、最終的に出来上がる歯数は4n−2枚となる。実際には、元の歯形曲線は、歯数が14又は18のものとし、最終的にそれぞれ、歯数が10又は14となるよう構成することが好ましい。
【0034】
さらにこの基本歯形曲線は、噛合歯面をインボリュート曲線、非噛合歯面をサイクロイド曲線とした歯形曲線である。第一の非円形歯車30の第3歯形33を例に挙げて説明すると、噛合歯面33aをインボリュート曲線とし、歯先33cを挟んで非噛合歯面33bをサイクロイド曲線としている。さらに、この歯形曲線は、切下限界及び尖り限界により各歯形のインボリュート曲線の工具圧力角が設定されたものとする。なお、非噛合歯面はサイクロイド曲線であり、工具圧力角はゼロであり、また、ピッチ曲線の外側の非噛合歯面はピッチ曲線の外側を転がるときにできるエピサイクロイド(外サイクロイド)、ピッチ曲線の内側の非噛合歯面はピッチ曲線の内側を転がるときできるハイポサイクロイド(内サイクロイド)である。
【0035】
そして、非円形歯車30,50は、上述した基本歯形曲線に基づいて、長軸上の両端にある歯溝(例えば歯形34と歯形35との間の歯溝)を含んだ凹部であって、その歯溝を挟んだ2つの歯形(例えば歯形34及び歯形35)間の凹部を埋めた形状をもつように設計してある。図2では、例えば歯形34及び歯形35間の凹部を曲線で埋めた凸部39をもつ形状として示しており、この曲線39はその凹部をケーシングの内壁に合った円弧で埋めたものとしている。なお、このとき、歯形曲線はケーシングにおける非円形歯車の設置場所及び内壁の大きさにより決定している。また、例えば、凸部39の元となる歯形34及び歯形35の噛合歯面側はそのままの歯形を残すように設計されている。
【0036】
さらに、非円形歯車30,50は、基本歯形曲線に基づいて、短軸上の両端の歯先(例えば歯形31の歯先)を含む歯部を削った形状をもつように設計してある。図2では、例えば歯形31の歯先を含む歯部(歯形31に相当)を削り、凹部38をもつ形状として示している。従って、基本歯形曲線の歯数を4n+2枚とすると、最終的な歯形曲線の歯数は4n−2枚となる。
【0037】
そして、非円形歯車30及び非円形歯車50は、2つの歯形(例えば歯形34及び歯形35)間の凹部を埋めた形状をもつ凸部39と、非円形歯車50における歯部(歯形51に相当)を削った形状をもつ凹部58とが、噛み合うよう構成され、同様に、非円形歯車30の凹部38と非円形歯車50の凸部59とが、非円形歯車30の凸部49と非円形歯車50の凹部68とが、非円形歯車30の凹部48と非円形歯車50の凸部69とが、噛み合うよう構成されている。
【0038】
なお、ここでの噛み合いは、いずれも凹部と凸部との中心同士の接触によるものではなく、凸部39と凹部58との噛み合いを例に挙げると、図2(B)に示すように、非円形歯車30の長径と非円形歯車50の短径とが合ったときには、凸部39と凹部58とは接しておらず、凸部39における元の歯形35の噛合歯面の頂点が非円形歯車50の第14歯形67の噛合歯面と接し、矢視の回転方向に回転し、続いて凸部39における元の歯形34の噛合歯面の頂点が非円形歯車50の第2歯形52の噛合歯面と接して回転していく。従って、図2に示す一対の非円形歯車30,50は、一方の歯車の軸からの回転力によっては他方の歯車を1回転以上回転させることはできない。しかしながら、一対の非円形歯車30,50は、容積式流量計のごとき、被測定流体による流動力によって双方の歯車の外側に位置する部分を押しておくような使用形態においては、図2の矢視の回転方向に回転していくことは可能であり、その切換点はイナーシャの関係でトップ付近(凸部39等)となる。
【0039】
また、その他の歯形においては、例えば、非円形歯車30の第6歯形36を例に挙げると、図2(A)に示すように、歯形36の噛合歯面36aが非円形歯車50の第13歯形66の噛合歯面側と接触して噛み合い、次いで、凸部39における歯形35の噛合歯面が非円形歯車50の第14歯形67の噛合歯面側と接触して噛み合うようにして、矢視の回転方向に回転していく。
【0040】
図3乃至図6は、図2の非円形歯車を設計する際に考慮した点を説明する一連の構成図であり、いずれの図も非楕円形歯車の四半分のみを示しており、図6は図2の非円形歯車の四半分を示している。図中、Lは歯形曲線、Laは噛合歯面、Lbは非噛合歯面、Lcは歯先、Pはピッチ曲線、Rはピッチ曲線の中心からの放射線、Tは歯形の歯先を結んだ曲線、Bは歯形の底部を結んだ曲線であり、その他、図6においては図2と同じ符号を用いて示している。
【0041】
図3における歯形曲線Lは、ピッチ曲線Pを楕円として刻まれた歯形曲線であって、歯数を4n+2枚(ここでは14枚)とし、噛合歯面Laをインボリュート曲線、非噛合歯面Lbをサイクロイド曲線とした歯形曲線である。この歯形曲線Lは、放射線Rで区切られた領域(色付けにて図示)においてオーバーハング部が広く存在する。ここでいうオーバーハング部とは、色付けにて図示したように、非円形歯車の回転中心から噛合歯面(インボリュート歯形)Laの歯元に向けて放射状に展開した直線Rが、同一歯形歯面においてその歯元での交点の他に1つの交点を有する場合の歯形がはみ出した部分を指す。図3の歯形曲線Lは、長軸上の両端を歯先、短軸上の両端を歯溝とした設計となっており、この設計では、切下げが生じない程度にしか工具圧力角を大きく設定できず、その設定に基づいて長軸方向に歯形を傾けても、結局オーバーハング部を解消できない。
【0042】
樹脂成型などでは、回転中心方向への収縮によりオーバーハング部には欠陥が生じてしまうため、オーバーハング部を形成させないようにトップ歯形を2枚に(長軸上の両端を歯溝に)して設計を進めていく。すなわち、図4の歯形曲線Lで示すように、逆に長軸上の両端を歯溝、短軸上の両端を歯先とした設計とし、さらに図4,図5の歯形曲線Lで順番に示すように、オーバーハング部を少なくするよう各歯形を長軸方向に傾けていく。このとき、噛合歯面Laはインボリュート曲線を用いるが、噛合圧力角の変化を少なくするために、その工具圧力角を切下限界まで且つ噛合圧力角が負にならない程度に求めている。
【0043】
しかしながら、図5の歯形曲線Lにおいても長軸に最近の歯形ではオーバーハング部が存在しているので、同じく噛合歯面Laはインボリュート曲線を用いるが、噛合圧力角の変化を少なくするためにその工具圧力角を切下限界及び尖り限界より求めるようにする。なお、噛合歯面Laの工具圧力角設定に有利なように、非噛合歯面Lbはサイクロイド曲線を用いている。ここで、オーバーハング部の解消のために一番傾ける率の高い歯形は、長軸両端に近い歯形であるので、長軸上の両端を歯溝(凹)とすることで、切下げを防ぐよう工具圧力角を大きく(最大尖り限界まで)設定できる。
【0044】
すなわち、図6の歯形曲線Lで示すように、オーバーハング部を全く無くすまで各歯形を長軸方向に傾けていき、単にそれだけでは尖り限界まで尖らせたことから、歯形の歯先Lb(特に歯形34の歯先)が尖りすぎるので、この尖りを解消すべく歯形34の歯先と図2の歯形35の歯先とを繋いでいる。この歯先を繋いだことにより生じた凸部39との噛み合いを鑑みて、短径上の歯形を削り、凹部38を形成するよう設計している。なお、各歯形の歯先を結んだ曲線T、及び各歯形の底部を結んだ曲線は、ピッチ曲線に平行な曲線となる。
【0045】
トップ歯形の先端(凸部39)をケーシングに並行な円弧で繋いで1つの歯とし、一方の短径部の歯を取り除いた、上述のごとき設計は、歯形モジュールを大きくして歯数を少なくして堅牢とすることだけでなく、尖りによるトップ部分のシール長の不足を防止してトップ部のシール性を向上させることをも実現させる。また、図4乃至図6で示したように、基本歯形曲線における長軸上に歯溝をもつ設計は、オーバーハング部形成の回避にも有効である。
【0046】
本実施形態に係る非円形歯車によれば、噛合圧力角の変化を少なく、噛合歯面における工具圧力角設定に有利で、オーバーハング部を形成することもなく歯数を少なくすることや、ケーシング内に設置する際にケーシングの内壁とのシール性を十分確保することができ、また、ケーシングに軸固定する場合であっても、軸受の入るエリアを確保することができる。さらに、この非円形歯車は、歯形モジュールを全体に対して大きくしているので堅牢であり、少ない歯数で構成できるので樹脂成型にも有効である。さらに、上述のごとき非円形歯車を備えた容積流量計は、堅牢で高精度のものが実現でき、また非円形歯車が樹脂成型の場合には安価なものが実現できる。
【0047】
図7は、本発明の他の実施形態に係る非円形歯車の一構成例を示す図で、図2(A),(B)は、一対の非円形歯車の噛合いをその回転位置に応じて示す図である。図中、30′は第一の非円形歯車、39′,49′は第一の非円形歯車における凸部、50′は第二の非円形歯車、59′,69′は第二の非円形歯車における凸部であり、その他、図2と同じ部位には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図7で例示する実施形態の非円形歯車は、図2乃至図6で例示した非円形歯車及びその歯車を備えた容積式流量計(図1参照)において、凸部(図2における凸部39,49,59,69)の形状を変形させたものであり、その変形部分以外の説明をその効果も含めて省略する。
【0049】
本実施形態に係る非円形歯車30′(50′)は、凸部39′,49′(59′,69′)を、ケーシングの内壁に合った曲線で埋めたものとし、且つ、埋めた曲線は、非円形歯車50′(30′)における歯部を削ってできた凹部58,68(38,48)の底と噛合時に接触させるように設計したものである。なお、このとき、歯形曲線はケーシングにおける非円形歯車の設置場所及び内壁の大きさにより決定している。また、図7では、例えば、凸部39′の元となる歯形34及び歯形35の噛合歯面側は元の歯形を変形させた曲線として設計としているが、凸部39′の元となる歯形34及び歯形35の噛合歯面側はそのままの歯形を残すように設計してもよい。本実施形態に係る非円形歯車によれば、図1乃至図6で説明した実施形態に比べて、容積式流量計に設置した場合に、噛合圧力角の関係から閉じ込み現象が緩和されることにより、圧力損失を軽減することができ、トップ部のシール性向上と合わせて測定精度が高まる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、非円形歯車において、噛合圧力角の変化を少なく、噛合歯面における工具圧力角設定に有利で、オーバーハング部を形成することもなく歯数を少なくし、ケーシング内に設置する際にケーシングの内壁とのシール性を十分確保することができる。
【0051】
また、本発明に係る容積式流量計によれば、その非円形歯車を用いているので、堅牢で高精度の流量測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る非円形歯車を備えた容積式流量計の一構成例を示す図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係る非円形歯車の一構成例を示す図である。
【図3】 図2の非円形歯車を設計する際に考慮した点を説明する一連の構成図である。
【図4】 図2の非円形歯車を設計する際に考慮した点を説明する一連の構成図である。
【図5】 図2の非円形歯車を設計する際に考慮した点を説明する一連の構成図である。
【図6】 図2の非円形歯車を設計する際に考慮した点を説明する一連の構成図である。
【図7】 本発明の他の実施形態に係る非円形歯車の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
10…容積式流量計、11…筐体(外筐)、12…端面板、15…磁気センサ、20…計量室、21…流入口、22…流出口、23,27…回転子(非円形歯車)、23a…回転子の歯車部(噛合部)、23b…回転子23の端面、24…回転子の回転軸、25,26…磁石、30,30′…第一の非円形歯車、31〜37,41〜47…第一の非円形歯車における第1〜第14の歯形、33a…第3歯形における噛合歯面、33b…第3歯形における非噛合歯面、33c…第3歯形における歯先、36a…第6歯形における噛合歯面、36b…第6歯形における非噛合歯面、36c…第6歯形における歯先、38,48…第一の非円形歯車における凹部、39,39′,49,49′…第一の非円形歯車における凸部、50,50′…第二の非円形歯車、51〜57,61〜67…第二の非円形歯車における第1〜第14の歯形、58,68…第二の非円形歯車における凹部、59,59′,69,69′…第二の非円形歯車における凸部、O1…第一の非円形歯車の中心、O2…第二の非円形歯車の中心、L…歯形曲線、La…噛合歯面、Lb…非噛合歯面、Lc…歯先、P…ピッチ曲線、R…ピッチ曲線の中心からの放射線、T…歯形の歯先を結んだ曲線、B…歯形の底部を結んだ曲線。
Claims (9)
- ケーシング内に一対で設けられるべき非円形歯車であって、当該非円形歯車は、歯数を4n+2枚(nは自然数)、長軸上の両端を歯溝、短軸上の両端を歯先、噛合歯面をインボリュート曲線、非噛合歯面をサイクロイド曲線とした歯形曲線をもち、
該歯形曲線における各歯形のインボリュート曲線の工具圧力角は、前記長軸の両端に最近の歯形に対して、切下げを防ぎ且つ最大尖り限界まで歯先を尖らせるような大きい値に設定され、
当該非円形歯車は、前記歯形曲線に基づいて、前記長軸上の両端にある歯溝を含む、該歯溝を挟んだ2つの歯形間の凹部を埋め、且つ、前記短軸上の両端の歯先を含む歯部を削った、歯数が4n−2枚の形状をもつことを特徴とする非円形歯車。 - 当該非円形歯車は、前記凹部を埋めた形状をもつ凸部と、当該非円形歯車と同じ非円形歯車における前記歯部を削った形状をもつ凹部とを、噛み合わせるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の非円形歯車。
- 前記歯形曲線は前記ケーシングにおける当該非円形歯車の設置場所及び内壁の大きさにより決定し、前記形状は、前記凹部を前記ケーシングの内壁に合った円弧で埋めたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非円形歯車。
- 前記歯形曲線は前記ケーシングにおける当該非円形歯車の設置場所及び内壁の大きさにより決定し、前記形状は、前記凹部を前記ケーシングの内壁に合った曲線で埋めたものであり、該埋めた曲線は、当該非円形歯車と同じ非円形歯車における前記歯部を削ってできた凹部の底と噛合時に接触させるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非円形歯車。
- 前記歯形曲線は、歯数が14又は18のものとし、結果としてそれぞれ、歯数が10又は14となるよう構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非円形歯車。
- 当該非円形歯車のピッチ曲線は、ころがり接触条件を満足する単一の閉曲線或いは数種類を組み合わせた閉曲線であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非円形歯車。
- 当該非円形歯車は、樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非円形歯車。
- 前記ケーシングは、容積式流量計における計量室であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の非円形歯車。
- 請求項8に記載の非円形歯車を一対備えた容積式流量計であって、前記一対の非円形歯車を前記計量室内に一対の回転子として噛合させて設置し、該一対の回転子が吐出する被測定流体の流量を測定することを特徴とする容積式流量計。
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