JP3825152B2 - Pzt薄膜を備えた振動ジャイロ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はPZT薄膜を備えた振動ジャイロに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の振動ジャイロとしては、図8に示す音叉型、図9に示す音片型が知られている。
【0003】
音叉型の振動ジャイロ21は、図8に示すように連結部22の両端に一対の駆動用圧電セラミックス板23が、互いに平行に立設され、その平面が図においてX方向に向くように配置されている。又、駆動用圧電セラミック板23の上端の中心上において、検出用圧電セラミックス板24が一体に立設され、その平面が図において、Y方向に向くように配置されている。なお、X方向とY方向とは互いに直交している。そして、下方の駆動用圧電セラミックス板23に交番電圧を印加することにより、同圧電セラミックス板23をX,反X方向へ振動させる。この振動状態で、振動ジャイロ21にZ軸回りの回転が加わったときに、検出用圧電セラミックス24が歪み、そのときに生ずる電圧を検出することにより、検出用圧電セラミックス24に働いた力を検知することが可能となる。この力は、コリオリの力Fcといい、一般に、次式で表される。
【0004】
Fc=2mV×Ω …(1)
なお、mは振動ジャイロ21の質量、Vは振動ジャイロ21の振動速度、Ωは振動ジャイロ25のZ軸回りの角速度である。そして、前記質量m、振動速度Vが既知であれば、角速度Ωを導出することが可能となる。
【0005】
又、音片型の振動ジャイロ25は、図9に示すように恒弾性金属からなる四角柱状の音片型振動子26を備え、同音片型振動子26の互いに180度反対側の側面に対して、一対の駆動用圧電セラミックス板27が貼着されている(図面上は、片方のみ図示)。又、残りの両側面には、一対の検出用圧電セラミックス板28が貼着されている(図面上は、片方のみ図示)。そして、この振動ジャイロ25は、駆動用圧電セラミックス板27に交番電圧を印加することにより、同圧電セラミックス板27にて音片型振動子26をX,反X方向へ振動させる。この状態で、振動ジャイロ26にZ軸回りの回転が加わったときに、検出用圧電セラミックス28が歪み、そのときに生ずる電圧を検出することにより、検出用圧電セラミックス28に働いたコリオリの力を検出することが可能となる。
【0006】
ところで、上記の駆動用圧電セラミックス板23,27、検出用圧電セラミックス板24,28には、バルクのPZT(ジルコン・チタン酸鉛:チタン酸鉛,ジルコン酸鉛の固溶体からなるセラミックス)が使用されている。
【0007】
ところが、上記のようなバルクのPZTは、バルクそのものの薄形化が難しく、振動ジャイロ全体の小型化が難しい問題があった。
又、音片型の振動ジャイロのように、圧電セラミックス板を貼着して振動ジャイロを構成する場合、貼着工程が多くなるとともに、接着精度、すなわち、位置精度が悪い問題があり、従って、検出感度等に影響を及ぼし、均質なものを精度よく製造することは難しい問題があった。
【0008】
さらに、振動子が三次元構造体の場合は、任意の場所にバルクのPZTを取付けることが困難な場合があり、取付け場所が限られる問題がある。
又、コリオリの力Fcは、上記(1)式に示すように、振動ジャイロの質量mを大きくすれば、コリオリの力が大きくなり、この結果、検出用圧電セラミックスの歪み量が増大して、検出電圧も大きくなる。すなわち検出感度が上がることになる。このため、振動ジャイロの質量は大きい方が検出感度を得るためには好ましい。ところが、バルクのPZTを用いた振動ジャイロの場合、バルクのPZTを構成する基材を大きくしないと、質量が大きくできない問題があり、検出感度を上げるには限界がある。
【0009】
又、コリオリの力Fcは、上記(1)式に示すように、振動速度Vを大きくすれば、コリオリの力が大きくなり、この結果、検出用圧電セラミックの歪み量が増大して、検出電圧も大きくなって検出感度も上がる。しかし、振動速度を大きくするために、例えば、音叉型の振動ジャイロの場合、バルクのPZTの基材を薄くすると、剛性が低くなるため、捩じれ易くなり、正確に振動しなかったり、検出用圧電素子の検出のための歪みもねじれが加わった状態となって正確な検出ができない問題が生ずる。
【0010】
そこで、出願人は、小型化が可能で、捩じれに強く、検出感度を上げることができる振動ジャイロ31として、図7の構造のものを提案している。振動ジャイロは、4角柱状をなす弾性金属の下端(固定端)側と、上端(自由端)側とにそれぞれ互いに直交する貫通孔34,35を設けて、第1の平行平板部32と、第2の平行平板部33を形成している。前記第1の平行平板部32及び第2の平行平板部33の外表面には、チタン膜を形成し、同チタン膜上にPZT薄膜を形成している。そして、前記第1の平行平板部32側を振動を付与するための駆動部とし、第2の平行平板部33側を検出部としている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような構成の振動ジャイロは、PZT薄膜36上にさらにアルミニウム等で電極37を形成し、その電極37にリード線(図示しない)を直接接続して、駆動部である第1の平行平板部32には、電圧を印加して、振動を付与し、検出部である第2の平行平板部33では、PZT薄膜で生じた電圧を前記電極37に直接接続したリード線(図示しない)を介して検出するようにしている。
【0012】
ところが、上記の構成によると、リード線の接続により、検出部である第2の平行平板部33の剛性が変化し、その出力に影響を与えてしまうことが分かった。従って、検出特性が安定しない問題があった。一方、駆動部である第1の平行平板部32においても、リード線の接続によって振動特性に影響を与えるため、安定した駆動特性が得られない問題があった。
【0013】
本発明は上記の課題を解消するためになされたものであり、振動特性、或いは検出特性を安定化することができるPZT薄膜を備えた振動ジャイロを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、周方向に亘って第1乃至第4側面を有し、第1側面と第3側面、第2側面と第4側面とは、互いに180度反対位置に位置する四角柱状の弾性金属を備え、その弾性金属の固定端部側には、第1側面から第3側面まで貫通する貫通孔が形成されて、第2側面と第4側面を含むそれぞれの平板部にて第1の平行平板部が形成され、前記弾性金属の自由端部側には、第2側面から第4側面まで貫通する貫通孔が形成されて、第1側面と第3側面を含むそれぞれの平板部にて第2の平行平板部が形成され、第1の平行平板部の第2側面と第4側面、及び第2の平行平板部の第1側面と第3側面とにはチタンにて形成されたベース面が形成され、同ベース面上には、PZT薄膜が形成され、同PZT薄膜上には、電極が設けられ、前記弾性金属の固定端部には前記いずれかの電極に電気的に接続された接続用のパッドが形成されていることを特徴とするPZT薄膜を備えた振動ジャイロをその要旨としている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の平行平板部に設けられた電極と、固定端部に設けられたパッドとは、第1の平行平板部において、第2側面と第4側面に設けられた延出部を介して電気的に接続されている振動ジャイロをその要旨としている。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1において、前記第1の平行平板部に設けられた電極と、固定端部に設けられたパッドと電気的に接続されている振動ジャイロを要旨とするものである。
(作用)
請求項1に記載の発明によると、振動ジャイロは、固定端部に設けられたパッドにリード線が接続できる。このため、第1の平行平板部上に電極を設けて、その電極に対してリードを直接接続した場合と比較して、振動のために駆動される第1平行平板部の駆動特性がリード線を接続したことによって、その特性が変ることはなくなる。
【0017】
又、第2の平行平板部に電極を設けて、その電極に対してリード線を直接接続した場合と比較して、第2の平行平板部の検出特性が変ることはなくなる。
請求項2に記載の発明によると、第2の平行平板部に設けられた電極は、固定端部に設けられたパッドとに対して、第1の平行平板部において、第2側面と第4側面に設けられた延出部を介して電気的に接続される。このことによって、請求項1の作用を得る。
【0018】
請求項3に記載の発明によると、第1の平行平板部に設けられた電極は、固定端部に設けられたパッドと電気的に接続される。このことによって、請求項1の作用を得る。
【0019】
【実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図6を参照して説明する。
図1は振動ジャイロ1の斜視図を示している。なお、上記図面を含む各図面に図示されている、チタン膜、電極膜、側板の厚みは、説明の便宜上、実際のものより適宜拡大して図示されている。
【0020】
図1に示すように振動ジャイロ1は、四角柱状をなし、平行平板部3,2を上下に備えている。前記平行平板部3,2は、本発明の第2及び第1の平行平板部にそれぞれに相当する。
【0021】
同図1に示すように、振動ジャイロ1の基材4は、四角柱をなす弾性金属体としてのステンレスから構成されている。なお、本実施形態では、基材4の断面は、正方形をなしている。基材4の断面は、正方形で有るのが好ましいが、必ずしも正方形に限定されるものではない。基材4は、X方向側に向く面を第1側面5とし、時計回り方向(周方向)にわたって第2側面6、第3側面及び第4側面の順に配置されている。そして、第1側面5と、第3側面とは、Z軸を中心として、180度反対側に位置し、又、第2側面6と、第4側面とは同じくZ軸を中心として、180度反対側に位置している(なお、図は第1側面と、第2側面のみ図示されている。)。
【0022】
基材4の下部の第1側面5と、第3側面は、X軸方向に向かう断面四角形状をなす貫通孔7が穿設されている。この貫通孔7により、基材4の下部は、第2側面6、及び第4側面をそれぞれ外側面とした一対の側板8,9が形成されている。前記側板8,9は平板部に相当する。前記側板8,9の板厚は、数十〜数百μmとされた、薄肉部8a,9aとされている。そして、前記両側板8,9、及び貫通孔7とにより、基材4の下部は互いに平行に配置された平行平板構造となっており、平行平板部2が構成されている。
【0023】
又、基材4の上部の第2側面6と、第4側面は、Y軸方向に向かう断面四角形状をなす貫通孔10が穿設されている。この貫通孔10により、基材4の上部は、第1側面5、及び第3側面をそれぞれ外側面とした一対の側板11,12が形成されている。前記側板11,12は本発明の平板部に相当する。前記側板11,12の板厚は、前記平行平板部2の側板8,9と同一厚みとされている。そして、前記両側板11,12、及び貫通孔10とにより、基材4の上部は互いに平行に配置された平行平板構造となっており、平行平板部3が構成されている。そして、前記平行平板部2,3は互いに直交するように配置されている。
【0024】
前記平行平板部2において第2側面6と第4側面、及び平行平板部2,3において第1側面乃至第4側面には、スパッタリング等によって、チタン膜13が形成されている(図4参照)。同チタン膜13により、本発明のベース面が構成されている。
【0025】
同チタン膜13の表面全体には厚さ数十μmのPZT薄膜14(図5参照)が形成されている。
前記平行平板部2における第2側面6及び第4側面のPZT薄膜14上には、アルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積の電極膜15が上下一対形成されている(図1及び図6においては、第2側面6側のみ図示)。同一対の電極膜15は互いに反対側部から下方に延出部15aが形成されている。又、振動ジャイロ1の下端部(固定端部)において、第2側面6及び第4側面には、同じくアルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積のパッド15bが横方向に一対併設されている(図1及び図6においては、第2側面6側のみ図示)。そして、各パッド15bは前記各延出部15aに接続されている。
【0026】
又、前記平行平板部3における第1側面5及び第3側面のPZT薄膜14上には、アルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積の電極膜16が上下一対形成されている(図1及び図6においては、第1側面5側のみ図示)。同一対の電極膜16は互いに反対側部から下方に延びる延出部16aが形成されている。前記延出部16aは、平行平板部2の第1側面5及び第3側面において側板8,9の薄肉部8a,9a上に配置されている。
【0027】
又、振動ジャイロ1の下端部(固定端部)において、第1側面5及び第3側面には、同じくアルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積のパッド16bが横方向に一対併設されている(図1及び図6においては、第1側面5側のみ図示)。そして、各パッド16bは前記延出部16aに接続されている。
【0028】
前記電極膜15,16は本発明の電極に相当する。
そして、前記各パッド15b,16bにはリード線19がそれぞれハンダ付けされている。
【0029】
前記振動ジャイロ1において、本実施形態では下端部が固定端部に相当し、上端部が自由端部に相当する。
上記のように構成された振動ジャイロ1を使用する場合、基材4の下端部を固定した状態で、基材4の下部の平行平板部2の側板8,9の電極膜15に対して、それぞれ反対電位の交番電圧をリード線19を介して同期して印加する。
【0030】
すると、PZT薄膜の分極方向が電極膜15から基材4方向に向いている場合、プラス電位側に印加された方のPZT薄膜14は圧縮され、マイナス電位に印加された側のPZT薄膜14は引き伸ばされる。そして、交番電圧による極性の変化によって、PZT薄膜14は、圧縮、引き伸ばしが交互に繰り返され、この結果、平行平板部2は、X、反X方向に駆動され、上部に位置する平行平板部3は同方向に振動する。
【0031】
そして、この振動状態で、振動ジャイロ1にZ軸回りの回転が加わったときに、平行平板部3において一方の側面側のPZT薄膜14は、圧縮(歪み)され、他方の側面側(一方の側面とは180度反対側の側面)が引き伸ばされる(歪み)。この結果、そのときに生ずる電圧をリード線19を介して検出することにより、振動ジャイロ1に働いたコリオリの力を検知することが可能となる。又、上記(1)に示すように、振動ジャイロ1の質量m、及び振動速度Vが既知であれば、角速度Ωが導出できる。
【0032】
上記のように振動ジャイロ1を使用する場合、リード線19が固定端部に設けたパッド15b,16bに接続されているため、リード線19の接続によって平行平板部2の剛性が変ることはなく、その振動特性に影響が出ることはない。
【0033】
又、同じくリード線19が固定端部に設けたパッド15b,16bに接続されているため、リード線19の接続によって平行平板部3の剛性が変ることはなく、その検出特性に影響が出ることはない。
【0034】
次に、上記振動ジャイロ1の製造方法を図2乃至図6を参照して説明する。
図2は、基材4を示している。ステンレスからなる基材4は、断面正方形をなした四角柱状に形成されている。この基材4の上下両部に対して、それぞれ互いに直交するように貫通孔7,10を形成する。この貫通孔7,10の形成は、切削でもよく、エッチングで行ってもよい。この貫通孔7を形成することにより、図3に示すように基材4の下部は、第2側面6、及び第4側面がそれぞれ外側面とされ、数十〜数百μmの板厚を有する一対の側板8,9が形成される。又、前記両側板8,9、及び貫通孔7とにより、基材4の下部は側板8,9が互いに平行に配置された平行平板構造を有する平行平板部2が形成される。
【0035】
又、貫通孔10を形成することにより、図3に示すように基材4の上部は、第1側面5、及び第3側面がそれぞれ外側面とされ、数十〜数百μmの板厚を有する一対の側板11,12が形成される。又、前記両側板11,12、及び貫通孔10とにより、基材4の上部は互いに側板11,12とが互いに平行に配置された平行平板構造を有する平行平板部3が形成される。
【0036】
次に、この基材4を酸等で、クリーニングし、予め、PZT薄膜14を形成したい側面を除いた面を合成樹脂、又は、スパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法にてチタン以外の金属等にて、被覆してマスク(図示しない)を形成する。
【0037】
基材4の平行平板部2において第2側面6と第4側面、及び平行平板部2,3において第1側面乃至第4側面にスパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法にてチタン膜13を成膜する(図4参照)。
【0038】
次に水熱法で、チタン膜13上にPZT薄膜14を形成する。この水熱法は2つの段階からなっている。
(第1段階)
基材4、原材料としてのオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)と硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、及びKOH(8N)溶液をテフロン瓶(図示しない)に投入し、攪拌する。なお、PZT薄膜14の圧電性は、PZT薄膜14におけるチタン酸鉛,ジルコン酸鉛の構成組成比によって決まるため、後にできあがるPZT薄膜14の圧電性に応じてオキシ塩化ジルコニウムと硝酸鉛とのモル比を決めればよい。
【0039】
次に、図示しない圧力容器内において、基材4を上方に配置し、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)、硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、及びKOH(8N)溶液を攪拌しながら、加熱・加圧する。なお、ここでいう加圧とは、加熱された溶液の蒸気圧よる加圧のことである。温度条件は150℃で、48時間この状態を継続する。なお、攪拌は、300rpmで行う。
【0040】
この結果、過飽和状態で、基材4の両平行平板部2,3のチタン膜13表面にPZTの種子結晶(核)が形成される。
上記時間の経過後、基材4を圧力容器から取り出し、水洗・乾燥する。
【0041】
(第2段階)
次に、種子結晶が核付けされた基材4、原材料としてのオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)と硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、四塩化チタン(TiCl4 )及びKOH(4N)溶液をテフロン瓶(図示しない)に投入し、攪拌する。なお、PZT薄膜14の圧電性は、PZTにおけるチタン酸鉛,ジルコン酸鉛の構成組成比によって決まるため、後にできあがるPZTの圧電性に応じてオキシ塩化ジルコニウムと四塩化チタンと硝酸鉛とのモル比を決めればよい。
【0042】
次に、図示しない圧力容器内において、基材4を上方に配置し、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)、硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、四塩化チタン(TiCl4 )及びKOH(4N)溶液を攪拌しながら、加熱・加圧する。なお、ここでいう加圧とは、加熱された溶液の蒸気圧よる加圧のことである。温度条件は120℃で、48時間この状態を継続する。なお、攪拌は、300rpmで行う。
【0043】
この結果、過飽和状態で、基材4の両平行平板部2,3の両外側面にPZT薄膜14が所定厚み(この実施形態では数十μm)で形成される(図5参照)。
上記時間の経過後、基材4を圧力容器から取り出し、水洗・乾燥する。この後、マスクを除去する。
【0044】
そして、図6に示すように、PZT薄膜14面に電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bをスパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法により形成した後、パターニングし、不必要な電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bの部分を除去して、上下一対の電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bを形成し、振動ジャイロ1を形成する。その後、パッド15b,16bにリード線19をハンダ付けする。
【0045】
さて、本実施形態によると、次のような作用効果を奏する。
(1) 本実施形態では、リード線19が固定端部に設けたパッド15b,16bに接続したため、振動ジャイロ1を使用する場合、リード線19の接続によって平行平板部2の剛性が変ることはなく、その振動特性及びに検出特性に影響が出ることはない。
【0046】
(2) 本実施形態では、基材4の両平行平板部2,3のチタン膜13表面に形成されたPZT薄膜14は、数十μmとして薄く形成しているため、振動ジャイロ1を、小型化することができる。
【0047】
(3) 本実施形態では、基材4の上下両部を、平行平板構造としているため、捩じれに対して強くすることができる。従って、振動駆動用の平行平板部2は、正確に振動することができ、検出用の平行平板部3は、正確に変位できるため、ノイズに強いものとなる。
【0048】
(4) 本実施形態では、水熱法により、基材4の両平行平板部2,3の両外側面にチタン膜13を形成した後、水熱法により、及びPZT薄膜14を形成し、その後、前記PZT薄膜14を形成した基材4の両側面に対して、それぞれ電極膜15,16,延出部15a,16a、パッド15b,16bを形成した。その結果、同一工程(水熱法による工程)で得られた振動駆動用の平行平板部2、検出用の平行平板部3との組合せで構成される振動ジャイロ1は、検出感度等の品質を一定に、すなわち、均質なものとすることができる。又、水熱法により、駆動用のPZT薄膜14と、検出用のPZT薄膜14とが一度に形成できるため、別々に駆動用、検出用のPZT薄膜を形成する場合と異なり、作製工数を低減できる。
【0049】
(5) 検出用の平行平板部3の側板11と側板12の上部間を連結している連結部、或いは、平行平板部2と平行平板部3との間の部分の連結部は、上記(1)式のコリオリの力Fcの質量mとして使用できる。従って、同部分の質量を適宜変更することにより振動ジャイロ1のmを調整することが可能である。そのことによって、振動ジャイロ1の検出感度を上げることも可能である。
【0050】
本発明の実施形態は、上記実施形態以外に次のように変更することも可能である。
(1) 前記実施形態では、電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bをアルミニウムで形成したが、Au(金)にて形成してもよく、又、他の導電性金属にて形成してもよい。
【0051】
(2) 前記実施形態では、電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16b、PZT薄膜14、基材4の厚みをそれぞれ所定数値としたが、上記数値に限定されるものではなく、必要に応じて、上記以外の数値としてもよい。
【0052】
(3) 前記実施形態では、PZT薄膜14面に電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bをスパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法により形成した後、パターニングしたが、この代わりに、これらを導電性ペーストをスクリーン印刷法によって、印刷して形成してもよい。
【0053】
(4) 前記実施形態では、音片型の振動ジャイロ1に具体化したが、この振動ジャイロ1を連結板の両端に固設した音叉型の振動ジャイロに具体化してもよい。この場合、前記実施形態での振動ジャイロ1を一対、連結部としての連結板の両端に立設固定するだけで、音叉型の振動ジャイロが形成できる。
【0054】
(5) 前記実施形態では、電極膜15を各PZT薄膜14に対し分離して上下一対設けたが、分離しないでPZT薄膜14上の表面全体に設けてもよい。
(6) 前記実施形態では、平行平板部2,3に設けた電極膜15,16に対して、それぞれ延出部15a,16aを介して固定端部である下端部に設けたパッド15b,16bに接続した。この代わりに、一方の平行平板部2の電極膜15を延出部15aを介してパッド15bを接続し、他方の平行平板部3の電極膜16には、リード線19を直接接続してもよい。この場合は、駆動特性におけるリード線接続による悪影響を防止できる。
【0055】
反対に、他方の平行平板部3の電極膜16を延出部16aを介してパッド16bを接続し、一方の平行平板部2の電極膜15には、リード線19を直接接続してもよい。この場合は、検出特性におけるリード線接続による悪影響を防止できる。
【0056】
(7) 前記実施形態では、振動ジャイロ1の下端部を固定端部としたが、上端部を固定端部とし、下端部を自由端部としてもよい。この場合、駆動部が上端部となり、検出部が下端部となる。
【0057】
(8) 前記実施形態では、基材4をステンレスとしたが、他の金属でもよく、チタンとした場合は、チタン膜13の形成が不要となる。この場合、基材4の表面が本発明のベース面を構成する。
【0058】
ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に挙げる。
(1) 請求項1乃至請求項3うちいずれかにおいて、貫通孔は断面四角形状に形成されたものであるPZT薄膜を備えた振動ジャイロ。断面四角形状の貫通孔により、第1及び第2の平行平板部の側壁が板状に形成され、平行平板構造を得ることができる。
【0059】
(2) 請求項1乃至請求項3のうちいずれかにおいて、前記電極と前記パッドとは、振動ジャイロの同一側面側において設けられた同士が電気的に互いに接続されていることを特徴とする振動ジャイロ。同一側面において設けられた電極とパッドとが電気的に接続されるため、両者を電気的に接続する延出部を簡単に形成できる。
【0060】
(3) 請求項1乃至請求項3のいずれか、或いは上記(1)又は(2)において、延出部は、平行平板部を構成する側板の薄肉部上に形成されているPZT薄膜を備えた振動ジャイロ。延出部を薄肉部に形成することにより、第2平行平板部の電極と固定端部のパッドとを電気的に接続することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、振動特性、或いは検出特性を安定化することができる。
【0062】
請求項2の発明によれば、振動特性の安定化を図ることができる。
請求項3の発明によれば、検出特性の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は振動ジャイロの斜視図、(b)は同じく側面図。
【図2】基材の斜視図。
【図3】貫通孔を形成した基材の斜視図。
【図4】チタン膜をパターンニングして形成した基材の斜視図。
【図5】PZT薄膜を形成した基材の斜視図。
【図6】(a)は電極膜を形成した振動ジャイロの斜視図、(b)は同じく側面図。
【図7】振動ジャイロの斜視図。
【図8】従来の振動ジャイロの斜視図。
【図9】従来の振動ジャイロの斜視図。
【符号の説明】
1…振動ジャイロ、
2,3…平行平板部(第1、第2の平行平板部を構成する)、
4…基材、5…第1側面、6…第2側面、7,10…貫通孔、
8,9,11,12…側板(平板部を構成する)、
13…チタン膜(ベース面を構成する。)、14…PZT薄膜、
15,16…電極膜、15a,16a…延出部、15b,16b…パッド部。
【産業上の利用分野】
本発明はPZT薄膜を備えた振動ジャイロに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の振動ジャイロとしては、図8に示す音叉型、図9に示す音片型が知られている。
【0003】
音叉型の振動ジャイロ21は、図8に示すように連結部22の両端に一対の駆動用圧電セラミックス板23が、互いに平行に立設され、その平面が図においてX方向に向くように配置されている。又、駆動用圧電セラミック板23の上端の中心上において、検出用圧電セラミックス板24が一体に立設され、その平面が図において、Y方向に向くように配置されている。なお、X方向とY方向とは互いに直交している。そして、下方の駆動用圧電セラミックス板23に交番電圧を印加することにより、同圧電セラミックス板23をX,反X方向へ振動させる。この振動状態で、振動ジャイロ21にZ軸回りの回転が加わったときに、検出用圧電セラミックス24が歪み、そのときに生ずる電圧を検出することにより、検出用圧電セラミックス24に働いた力を検知することが可能となる。この力は、コリオリの力Fcといい、一般に、次式で表される。
【0004】
Fc=2mV×Ω …(1)
なお、mは振動ジャイロ21の質量、Vは振動ジャイロ21の振動速度、Ωは振動ジャイロ25のZ軸回りの角速度である。そして、前記質量m、振動速度Vが既知であれば、角速度Ωを導出することが可能となる。
【0005】
又、音片型の振動ジャイロ25は、図9に示すように恒弾性金属からなる四角柱状の音片型振動子26を備え、同音片型振動子26の互いに180度反対側の側面に対して、一対の駆動用圧電セラミックス板27が貼着されている(図面上は、片方のみ図示)。又、残りの両側面には、一対の検出用圧電セラミックス板28が貼着されている(図面上は、片方のみ図示)。そして、この振動ジャイロ25は、駆動用圧電セラミックス板27に交番電圧を印加することにより、同圧電セラミックス板27にて音片型振動子26をX,反X方向へ振動させる。この状態で、振動ジャイロ26にZ軸回りの回転が加わったときに、検出用圧電セラミックス28が歪み、そのときに生ずる電圧を検出することにより、検出用圧電セラミックス28に働いたコリオリの力を検出することが可能となる。
【0006】
ところで、上記の駆動用圧電セラミックス板23,27、検出用圧電セラミックス板24,28には、バルクのPZT(ジルコン・チタン酸鉛:チタン酸鉛,ジルコン酸鉛の固溶体からなるセラミックス)が使用されている。
【0007】
ところが、上記のようなバルクのPZTは、バルクそのものの薄形化が難しく、振動ジャイロ全体の小型化が難しい問題があった。
又、音片型の振動ジャイロのように、圧電セラミックス板を貼着して振動ジャイロを構成する場合、貼着工程が多くなるとともに、接着精度、すなわち、位置精度が悪い問題があり、従って、検出感度等に影響を及ぼし、均質なものを精度よく製造することは難しい問題があった。
【0008】
さらに、振動子が三次元構造体の場合は、任意の場所にバルクのPZTを取付けることが困難な場合があり、取付け場所が限られる問題がある。
又、コリオリの力Fcは、上記(1)式に示すように、振動ジャイロの質量mを大きくすれば、コリオリの力が大きくなり、この結果、検出用圧電セラミックスの歪み量が増大して、検出電圧も大きくなる。すなわち検出感度が上がることになる。このため、振動ジャイロの質量は大きい方が検出感度を得るためには好ましい。ところが、バルクのPZTを用いた振動ジャイロの場合、バルクのPZTを構成する基材を大きくしないと、質量が大きくできない問題があり、検出感度を上げるには限界がある。
【0009】
又、コリオリの力Fcは、上記(1)式に示すように、振動速度Vを大きくすれば、コリオリの力が大きくなり、この結果、検出用圧電セラミックの歪み量が増大して、検出電圧も大きくなって検出感度も上がる。しかし、振動速度を大きくするために、例えば、音叉型の振動ジャイロの場合、バルクのPZTの基材を薄くすると、剛性が低くなるため、捩じれ易くなり、正確に振動しなかったり、検出用圧電素子の検出のための歪みもねじれが加わった状態となって正確な検出ができない問題が生ずる。
【0010】
そこで、出願人は、小型化が可能で、捩じれに強く、検出感度を上げることができる振動ジャイロ31として、図7の構造のものを提案している。振動ジャイロは、4角柱状をなす弾性金属の下端(固定端)側と、上端(自由端)側とにそれぞれ互いに直交する貫通孔34,35を設けて、第1の平行平板部32と、第2の平行平板部33を形成している。前記第1の平行平板部32及び第2の平行平板部33の外表面には、チタン膜を形成し、同チタン膜上にPZT薄膜を形成している。そして、前記第1の平行平板部32側を振動を付与するための駆動部とし、第2の平行平板部33側を検出部としている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような構成の振動ジャイロは、PZT薄膜36上にさらにアルミニウム等で電極37を形成し、その電極37にリード線(図示しない)を直接接続して、駆動部である第1の平行平板部32には、電圧を印加して、振動を付与し、検出部である第2の平行平板部33では、PZT薄膜で生じた電圧を前記電極37に直接接続したリード線(図示しない)を介して検出するようにしている。
【0012】
ところが、上記の構成によると、リード線の接続により、検出部である第2の平行平板部33の剛性が変化し、その出力に影響を与えてしまうことが分かった。従って、検出特性が安定しない問題があった。一方、駆動部である第1の平行平板部32においても、リード線の接続によって振動特性に影響を与えるため、安定した駆動特性が得られない問題があった。
【0013】
本発明は上記の課題を解消するためになされたものであり、振動特性、或いは検出特性を安定化することができるPZT薄膜を備えた振動ジャイロを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、周方向に亘って第1乃至第4側面を有し、第1側面と第3側面、第2側面と第4側面とは、互いに180度反対位置に位置する四角柱状の弾性金属を備え、その弾性金属の固定端部側には、第1側面から第3側面まで貫通する貫通孔が形成されて、第2側面と第4側面を含むそれぞれの平板部にて第1の平行平板部が形成され、前記弾性金属の自由端部側には、第2側面から第4側面まで貫通する貫通孔が形成されて、第1側面と第3側面を含むそれぞれの平板部にて第2の平行平板部が形成され、第1の平行平板部の第2側面と第4側面、及び第2の平行平板部の第1側面と第3側面とにはチタンにて形成されたベース面が形成され、同ベース面上には、PZT薄膜が形成され、同PZT薄膜上には、電極が設けられ、前記弾性金属の固定端部には前記いずれかの電極に電気的に接続された接続用のパッドが形成されていることを特徴とするPZT薄膜を備えた振動ジャイロをその要旨としている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の平行平板部に設けられた電極と、固定端部に設けられたパッドとは、第1の平行平板部において、第2側面と第4側面に設けられた延出部を介して電気的に接続されている振動ジャイロをその要旨としている。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1において、前記第1の平行平板部に設けられた電極と、固定端部に設けられたパッドと電気的に接続されている振動ジャイロを要旨とするものである。
(作用)
請求項1に記載の発明によると、振動ジャイロは、固定端部に設けられたパッドにリード線が接続できる。このため、第1の平行平板部上に電極を設けて、その電極に対してリードを直接接続した場合と比較して、振動のために駆動される第1平行平板部の駆動特性がリード線を接続したことによって、その特性が変ることはなくなる。
【0017】
又、第2の平行平板部に電極を設けて、その電極に対してリード線を直接接続した場合と比較して、第2の平行平板部の検出特性が変ることはなくなる。
請求項2に記載の発明によると、第2の平行平板部に設けられた電極は、固定端部に設けられたパッドとに対して、第1の平行平板部において、第2側面と第4側面に設けられた延出部を介して電気的に接続される。このことによって、請求項1の作用を得る。
【0018】
請求項3に記載の発明によると、第1の平行平板部に設けられた電極は、固定端部に設けられたパッドと電気的に接続される。このことによって、請求項1の作用を得る。
【0019】
【実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図6を参照して説明する。
図1は振動ジャイロ1の斜視図を示している。なお、上記図面を含む各図面に図示されている、チタン膜、電極膜、側板の厚みは、説明の便宜上、実際のものより適宜拡大して図示されている。
【0020】
図1に示すように振動ジャイロ1は、四角柱状をなし、平行平板部3,2を上下に備えている。前記平行平板部3,2は、本発明の第2及び第1の平行平板部にそれぞれに相当する。
【0021】
同図1に示すように、振動ジャイロ1の基材4は、四角柱をなす弾性金属体としてのステンレスから構成されている。なお、本実施形態では、基材4の断面は、正方形をなしている。基材4の断面は、正方形で有るのが好ましいが、必ずしも正方形に限定されるものではない。基材4は、X方向側に向く面を第1側面5とし、時計回り方向(周方向)にわたって第2側面6、第3側面及び第4側面の順に配置されている。そして、第1側面5と、第3側面とは、Z軸を中心として、180度反対側に位置し、又、第2側面6と、第4側面とは同じくZ軸を中心として、180度反対側に位置している(なお、図は第1側面と、第2側面のみ図示されている。)。
【0022】
基材4の下部の第1側面5と、第3側面は、X軸方向に向かう断面四角形状をなす貫通孔7が穿設されている。この貫通孔7により、基材4の下部は、第2側面6、及び第4側面をそれぞれ外側面とした一対の側板8,9が形成されている。前記側板8,9は平板部に相当する。前記側板8,9の板厚は、数十〜数百μmとされた、薄肉部8a,9aとされている。そして、前記両側板8,9、及び貫通孔7とにより、基材4の下部は互いに平行に配置された平行平板構造となっており、平行平板部2が構成されている。
【0023】
又、基材4の上部の第2側面6と、第4側面は、Y軸方向に向かう断面四角形状をなす貫通孔10が穿設されている。この貫通孔10により、基材4の上部は、第1側面5、及び第3側面をそれぞれ外側面とした一対の側板11,12が形成されている。前記側板11,12は本発明の平板部に相当する。前記側板11,12の板厚は、前記平行平板部2の側板8,9と同一厚みとされている。そして、前記両側板11,12、及び貫通孔10とにより、基材4の上部は互いに平行に配置された平行平板構造となっており、平行平板部3が構成されている。そして、前記平行平板部2,3は互いに直交するように配置されている。
【0024】
前記平行平板部2において第2側面6と第4側面、及び平行平板部2,3において第1側面乃至第4側面には、スパッタリング等によって、チタン膜13が形成されている(図4参照)。同チタン膜13により、本発明のベース面が構成されている。
【0025】
同チタン膜13の表面全体には厚さ数十μmのPZT薄膜14(図5参照)が形成されている。
前記平行平板部2における第2側面6及び第4側面のPZT薄膜14上には、アルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積の電極膜15が上下一対形成されている(図1及び図6においては、第2側面6側のみ図示)。同一対の電極膜15は互いに反対側部から下方に延出部15aが形成されている。又、振動ジャイロ1の下端部(固定端部)において、第2側面6及び第4側面には、同じくアルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積のパッド15bが横方向に一対併設されている(図1及び図6においては、第2側面6側のみ図示)。そして、各パッド15bは前記各延出部15aに接続されている。
【0026】
又、前記平行平板部3における第1側面5及び第3側面のPZT薄膜14上には、アルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積の電極膜16が上下一対形成されている(図1及び図6においては、第1側面5側のみ図示)。同一対の電極膜16は互いに反対側部から下方に延びる延出部16aが形成されている。前記延出部16aは、平行平板部2の第1側面5及び第3側面において側板8,9の薄肉部8a,9a上に配置されている。
【0027】
又、振動ジャイロ1の下端部(固定端部)において、第1側面5及び第3側面には、同じくアルミニウムからなる厚さ数μmを有する互いに同面積のパッド16bが横方向に一対併設されている(図1及び図6においては、第1側面5側のみ図示)。そして、各パッド16bは前記延出部16aに接続されている。
【0028】
前記電極膜15,16は本発明の電極に相当する。
そして、前記各パッド15b,16bにはリード線19がそれぞれハンダ付けされている。
【0029】
前記振動ジャイロ1において、本実施形態では下端部が固定端部に相当し、上端部が自由端部に相当する。
上記のように構成された振動ジャイロ1を使用する場合、基材4の下端部を固定した状態で、基材4の下部の平行平板部2の側板8,9の電極膜15に対して、それぞれ反対電位の交番電圧をリード線19を介して同期して印加する。
【0030】
すると、PZT薄膜の分極方向が電極膜15から基材4方向に向いている場合、プラス電位側に印加された方のPZT薄膜14は圧縮され、マイナス電位に印加された側のPZT薄膜14は引き伸ばされる。そして、交番電圧による極性の変化によって、PZT薄膜14は、圧縮、引き伸ばしが交互に繰り返され、この結果、平行平板部2は、X、反X方向に駆動され、上部に位置する平行平板部3は同方向に振動する。
【0031】
そして、この振動状態で、振動ジャイロ1にZ軸回りの回転が加わったときに、平行平板部3において一方の側面側のPZT薄膜14は、圧縮(歪み)され、他方の側面側(一方の側面とは180度反対側の側面)が引き伸ばされる(歪み)。この結果、そのときに生ずる電圧をリード線19を介して検出することにより、振動ジャイロ1に働いたコリオリの力を検知することが可能となる。又、上記(1)に示すように、振動ジャイロ1の質量m、及び振動速度Vが既知であれば、角速度Ωが導出できる。
【0032】
上記のように振動ジャイロ1を使用する場合、リード線19が固定端部に設けたパッド15b,16bに接続されているため、リード線19の接続によって平行平板部2の剛性が変ることはなく、その振動特性に影響が出ることはない。
【0033】
又、同じくリード線19が固定端部に設けたパッド15b,16bに接続されているため、リード線19の接続によって平行平板部3の剛性が変ることはなく、その検出特性に影響が出ることはない。
【0034】
次に、上記振動ジャイロ1の製造方法を図2乃至図6を参照して説明する。
図2は、基材4を示している。ステンレスからなる基材4は、断面正方形をなした四角柱状に形成されている。この基材4の上下両部に対して、それぞれ互いに直交するように貫通孔7,10を形成する。この貫通孔7,10の形成は、切削でもよく、エッチングで行ってもよい。この貫通孔7を形成することにより、図3に示すように基材4の下部は、第2側面6、及び第4側面がそれぞれ外側面とされ、数十〜数百μmの板厚を有する一対の側板8,9が形成される。又、前記両側板8,9、及び貫通孔7とにより、基材4の下部は側板8,9が互いに平行に配置された平行平板構造を有する平行平板部2が形成される。
【0035】
又、貫通孔10を形成することにより、図3に示すように基材4の上部は、第1側面5、及び第3側面がそれぞれ外側面とされ、数十〜数百μmの板厚を有する一対の側板11,12が形成される。又、前記両側板11,12、及び貫通孔10とにより、基材4の上部は互いに側板11,12とが互いに平行に配置された平行平板構造を有する平行平板部3が形成される。
【0036】
次に、この基材4を酸等で、クリーニングし、予め、PZT薄膜14を形成したい側面を除いた面を合成樹脂、又は、スパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法にてチタン以外の金属等にて、被覆してマスク(図示しない)を形成する。
【0037】
基材4の平行平板部2において第2側面6と第4側面、及び平行平板部2,3において第1側面乃至第4側面にスパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法にてチタン膜13を成膜する(図4参照)。
【0038】
次に水熱法で、チタン膜13上にPZT薄膜14を形成する。この水熱法は2つの段階からなっている。
(第1段階)
基材4、原材料としてのオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)と硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、及びKOH(8N)溶液をテフロン瓶(図示しない)に投入し、攪拌する。なお、PZT薄膜14の圧電性は、PZT薄膜14におけるチタン酸鉛,ジルコン酸鉛の構成組成比によって決まるため、後にできあがるPZT薄膜14の圧電性に応じてオキシ塩化ジルコニウムと硝酸鉛とのモル比を決めればよい。
【0039】
次に、図示しない圧力容器内において、基材4を上方に配置し、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)、硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、及びKOH(8N)溶液を攪拌しながら、加熱・加圧する。なお、ここでいう加圧とは、加熱された溶液の蒸気圧よる加圧のことである。温度条件は150℃で、48時間この状態を継続する。なお、攪拌は、300rpmで行う。
【0040】
この結果、過飽和状態で、基材4の両平行平板部2,3のチタン膜13表面にPZTの種子結晶(核)が形成される。
上記時間の経過後、基材4を圧力容器から取り出し、水洗・乾燥する。
【0041】
(第2段階)
次に、種子結晶が核付けされた基材4、原材料としてのオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)と硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、四塩化チタン(TiCl4 )及びKOH(4N)溶液をテフロン瓶(図示しない)に投入し、攪拌する。なお、PZT薄膜14の圧電性は、PZTにおけるチタン酸鉛,ジルコン酸鉛の構成組成比によって決まるため、後にできあがるPZTの圧電性に応じてオキシ塩化ジルコニウムと四塩化チタンと硝酸鉛とのモル比を決めればよい。
【0042】
次に、図示しない圧力容器内において、基材4を上方に配置し、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 ・8H2 O)、硝酸鉛(Pb(NO3 )2 )の水溶液、四塩化チタン(TiCl4 )及びKOH(4N)溶液を攪拌しながら、加熱・加圧する。なお、ここでいう加圧とは、加熱された溶液の蒸気圧よる加圧のことである。温度条件は120℃で、48時間この状態を継続する。なお、攪拌は、300rpmで行う。
【0043】
この結果、過飽和状態で、基材4の両平行平板部2,3の両外側面にPZT薄膜14が所定厚み(この実施形態では数十μm)で形成される(図5参照)。
上記時間の経過後、基材4を圧力容器から取り出し、水洗・乾燥する。この後、マスクを除去する。
【0044】
そして、図6に示すように、PZT薄膜14面に電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bをスパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法により形成した後、パターニングし、不必要な電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bの部分を除去して、上下一対の電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bを形成し、振動ジャイロ1を形成する。その後、パッド15b,16bにリード線19をハンダ付けする。
【0045】
さて、本実施形態によると、次のような作用効果を奏する。
(1) 本実施形態では、リード線19が固定端部に設けたパッド15b,16bに接続したため、振動ジャイロ1を使用する場合、リード線19の接続によって平行平板部2の剛性が変ることはなく、その振動特性及びに検出特性に影響が出ることはない。
【0046】
(2) 本実施形態では、基材4の両平行平板部2,3のチタン膜13表面に形成されたPZT薄膜14は、数十μmとして薄く形成しているため、振動ジャイロ1を、小型化することができる。
【0047】
(3) 本実施形態では、基材4の上下両部を、平行平板構造としているため、捩じれに対して強くすることができる。従って、振動駆動用の平行平板部2は、正確に振動することができ、検出用の平行平板部3は、正確に変位できるため、ノイズに強いものとなる。
【0048】
(4) 本実施形態では、水熱法により、基材4の両平行平板部2,3の両外側面にチタン膜13を形成した後、水熱法により、及びPZT薄膜14を形成し、その後、前記PZT薄膜14を形成した基材4の両側面に対して、それぞれ電極膜15,16,延出部15a,16a、パッド15b,16bを形成した。その結果、同一工程(水熱法による工程)で得られた振動駆動用の平行平板部2、検出用の平行平板部3との組合せで構成される振動ジャイロ1は、検出感度等の品質を一定に、すなわち、均質なものとすることができる。又、水熱法により、駆動用のPZT薄膜14と、検出用のPZT薄膜14とが一度に形成できるため、別々に駆動用、検出用のPZT薄膜を形成する場合と異なり、作製工数を低減できる。
【0049】
(5) 検出用の平行平板部3の側板11と側板12の上部間を連結している連結部、或いは、平行平板部2と平行平板部3との間の部分の連結部は、上記(1)式のコリオリの力Fcの質量mとして使用できる。従って、同部分の質量を適宜変更することにより振動ジャイロ1のmを調整することが可能である。そのことによって、振動ジャイロ1の検出感度を上げることも可能である。
【0050】
本発明の実施形態は、上記実施形態以外に次のように変更することも可能である。
(1) 前記実施形態では、電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bをアルミニウムで形成したが、Au(金)にて形成してもよく、又、他の導電性金属にて形成してもよい。
【0051】
(2) 前記実施形態では、電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16b、PZT薄膜14、基材4の厚みをそれぞれ所定数値としたが、上記数値に限定されるものではなく、必要に応じて、上記以外の数値としてもよい。
【0052】
(3) 前記実施形態では、PZT薄膜14面に電極膜15,16、延出部15a,16a、パッド15b,16bをスパッタリングや真空蒸着等の物理的成膜法により形成した後、パターニングしたが、この代わりに、これらを導電性ペーストをスクリーン印刷法によって、印刷して形成してもよい。
【0053】
(4) 前記実施形態では、音片型の振動ジャイロ1に具体化したが、この振動ジャイロ1を連結板の両端に固設した音叉型の振動ジャイロに具体化してもよい。この場合、前記実施形態での振動ジャイロ1を一対、連結部としての連結板の両端に立設固定するだけで、音叉型の振動ジャイロが形成できる。
【0054】
(5) 前記実施形態では、電極膜15を各PZT薄膜14に対し分離して上下一対設けたが、分離しないでPZT薄膜14上の表面全体に設けてもよい。
(6) 前記実施形態では、平行平板部2,3に設けた電極膜15,16に対して、それぞれ延出部15a,16aを介して固定端部である下端部に設けたパッド15b,16bに接続した。この代わりに、一方の平行平板部2の電極膜15を延出部15aを介してパッド15bを接続し、他方の平行平板部3の電極膜16には、リード線19を直接接続してもよい。この場合は、駆動特性におけるリード線接続による悪影響を防止できる。
【0055】
反対に、他方の平行平板部3の電極膜16を延出部16aを介してパッド16bを接続し、一方の平行平板部2の電極膜15には、リード線19を直接接続してもよい。この場合は、検出特性におけるリード線接続による悪影響を防止できる。
【0056】
(7) 前記実施形態では、振動ジャイロ1の下端部を固定端部としたが、上端部を固定端部とし、下端部を自由端部としてもよい。この場合、駆動部が上端部となり、検出部が下端部となる。
【0057】
(8) 前記実施形態では、基材4をステンレスとしたが、他の金属でもよく、チタンとした場合は、チタン膜13の形成が不要となる。この場合、基材4の表面が本発明のベース面を構成する。
【0058】
ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に挙げる。
(1) 請求項1乃至請求項3うちいずれかにおいて、貫通孔は断面四角形状に形成されたものであるPZT薄膜を備えた振動ジャイロ。断面四角形状の貫通孔により、第1及び第2の平行平板部の側壁が板状に形成され、平行平板構造を得ることができる。
【0059】
(2) 請求項1乃至請求項3のうちいずれかにおいて、前記電極と前記パッドとは、振動ジャイロの同一側面側において設けられた同士が電気的に互いに接続されていることを特徴とする振動ジャイロ。同一側面において設けられた電極とパッドとが電気的に接続されるため、両者を電気的に接続する延出部を簡単に形成できる。
【0060】
(3) 請求項1乃至請求項3のいずれか、或いは上記(1)又は(2)において、延出部は、平行平板部を構成する側板の薄肉部上に形成されているPZT薄膜を備えた振動ジャイロ。延出部を薄肉部に形成することにより、第2平行平板部の電極と固定端部のパッドとを電気的に接続することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、振動特性、或いは検出特性を安定化することができる。
【0062】
請求項2の発明によれば、振動特性の安定化を図ることができる。
請求項3の発明によれば、検出特性の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は振動ジャイロの斜視図、(b)は同じく側面図。
【図2】基材の斜視図。
【図3】貫通孔を形成した基材の斜視図。
【図4】チタン膜をパターンニングして形成した基材の斜視図。
【図5】PZT薄膜を形成した基材の斜視図。
【図6】(a)は電極膜を形成した振動ジャイロの斜視図、(b)は同じく側面図。
【図7】振動ジャイロの斜視図。
【図8】従来の振動ジャイロの斜視図。
【図9】従来の振動ジャイロの斜視図。
【符号の説明】
1…振動ジャイロ、
2,3…平行平板部(第1、第2の平行平板部を構成する)、
4…基材、5…第1側面、6…第2側面、7,10…貫通孔、
8,9,11,12…側板(平板部を構成する)、
13…チタン膜(ベース面を構成する。)、14…PZT薄膜、
15,16…電極膜、15a,16a…延出部、15b,16b…パッド部。
Claims (3)
- 周方向に亘って第1乃至第4側面を有し、第1側面と第3側面、第2側面と第4側面とは、互いに180度反対位置に位置する四角柱状の弾性金属を備え、
その弾性金属の固定端部側には、第1側面から第3側面まで貫通する貫通孔が形成されて、第2側面と第4側面を含むそれぞれの平板部にて第1の平行平板部が形成され、
前記弾性金属の自由端部側には、第2側面から第4側面まで貫通する貫通孔が形成されて、第1側面と第3側面を含むそれぞれの平板部にて第2の平行平板部が形成され、
第1の平行平板部の第2側面と第4側面、及び第2の平行平板部の第1側面と第3側面とにはチタンにて形成されたベース面が形成され、
同ベース面上には、PZT薄膜が形成され、
同PZT薄膜上には、電極が設けられ、
前記弾性金属の固定端部には前記いずれかの電極に電気的に接続された接続用のパッドが形成されていることを特徴とするPZT薄膜を備えた振動ジャイロ。 - 前記第2の平行平板部に設けられた電極と、固定端部に設けられたパッドとは、第1の平行平板部において、第1側面と第3側面に設けられた延出部を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の振動ジャイロ。
- 前記第1の平行平板部に設けられた電極と、固定端部に設けられたパッドと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の振動ジャイロ。
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