JP3823408B2 - 光学素子の製造方法及び光学素子の洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学素子の製造方法及び光学素子の洗浄方法に関するものである。なおこの出願で、光学素子用素材とは、光学素子形成用材料(例えばフッ化カルシウム結晶)を目的の光学素子に応じた形状に加工した状態のものをいう。ただしここでいう光学素子用素材は、洗浄が済むとそのまま光学素子となる場合、洗浄後にさらに例えば反射防止膜等の表面膜が形成されて光学素子となる場合いずれでも良い。
【0002】
【従来の技術】
解像度が高い露光装置を実現するため、露光用光源の短波長化が進められている。そしてこのような光源の1つとして、ArFエキシマレーザが注目されている。
【0003】
ArFエキシマレーザを光源とする露光装置を実現するためには、該露光装置に内蔵する光学素子を形成するための材料(光学素子形成材料)の選択が重要になる。すなわち、ArFエキシマレーザの吸収が小さい材料で、しかも、大型のレンズを形成することができる材料が必要になる。
【0004】
この種の材料として合成石英ガラスが検討されている。またガラス以外では、フッ化カルシウム結晶が検討されている。
【0005】
フッ化カルシウム結晶が光学素子形成用材料として検討対象となっている理由は、▲1▼:該結晶がArFエキシマレーザ光に対し実用的な透過率を示すこと、▲2▼:該結晶が潮解性や光学的異方性を示さないこと等からである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、光学素子は、使用予定の光に対する光透過性が高い方が好ましい。特に露光装置では、多数の光学素子により光学系が構成される。したがって、露光装置の光学系全体の光透過性を高めるためには、個々の光学素子の露光光に対する光透過性が高い方が好ましい。
【0007】
光学素子の光透過性を高めるためには、光学素子内部での光の吸収を低減しかつ光学素子表面に付着した有機物による露光光の吸収を低減するのが良い。ここで、光学素子表面に付着した有機物とは、光学素子用素材表面に付着した有機物、および、光学素子用素材に反射防止膜などの表面膜を形成した場合のこの表面膜に付着した有機物の双方である。
【0008】
光学素子表面に付着した有機物に起因する光透過性の低下を抑制するため、光学素子を製造する際には製造工程中で、光学素子用素材に対し、およびまたは、表面膜を形成し終えた光学素子に対し、上記有機物を除去するための洗浄が行なわれる。この洗浄方法として、従来は、有機溶剤を用いた超音波洗浄が行なわれていた。
【0009】
しかしながら、有機溶剤を用いた超音波洗浄では、有機物の除去効果は必ずしも満足できるものではなかった。また特に光学素子用素材をフッ化カルシウム結晶で構成した場合、これに超音波洗浄を施すと、この光学素子用素材表面に潜傷(鏡面研磨した素材表面が荒れてしまう現象)が生じる場合もあった。
【0010】
したがって、光学素子の光透過性を改善することができる光学素子の製造方法が望まれる。特にフッ化カルシウム結晶を素材とする光学素子の光透過性を改善することができる光学素子の製造方法が望まれる。
【0011】
また、製造された光学素子を例えば長期間保管した後などでも光学素子表面に付着した有機物を効果的に除去することができる洗浄方法が望まれる。特にフッ化カルシウム結晶を素材とする光学素子の洗浄方法が望まれる。
【0012】
また、光透過性に優れるArFエキシマレーザ露光装置が望まれる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願に係る発明者は鋭意研究を重ねた。その結果、洗浄対象物に紫外線を照射することにより洗浄対象物表面の有機物を分解し除去する洗浄方法(「紫外線洗浄方法」という)に先ず着目した。なぜなら、紫外線洗浄方法が、有機溶剤を用いた湿式の洗浄方法より高い洗浄効果を示すといわれているからである(例えば文献I(『プラスチックエージ』Jan.1995,pp.138-143,「光処理による表面改質・洗浄効果と応用展開」)。
【0014】
この文献Iには、エンジニアリングプラスチック、液晶用ガラス、金属等の洗浄対象物に、オゾンを含む雰囲気で、低圧水銀ランプからの紫外線を照射する方法が開示されている。具体的には、波長185nmの光と波長254nm光との二種類の光を主とする紫外線を用いた紫外線洗浄方法が開示されている(文献Iの特に第139頁の左欄)。
【0015】
ところが、光学素子に対しては、紫外線洗浄方法を単純に適用できないことが、この出願に係る発明者の詳細な実験によって明らかになった。その詳細は後の実施例で説明するが簡単に述べれば次のようなことである。
【0016】
露光装置などで必要とされるような高い光透過性が要求される光学素子を製造する際に紫外線洗浄方法を実施しようとした場合、照射する紫外線の波長を考慮しないと、洗浄効果は得られたとしても、光学素子用素材の内部に新たに吸収帯を誘起してしまい、光透過性をかえって悪化させてしまうことが分かった。
【0017】
またその一方で、いままでの研究では、紫外線洗浄に用いる光として波長222nmの光を主とする紫外線を用いた場合、少なくともフッ化カルシウム結晶については、その内部での光透過性低下を実用上問題ない程度に抑制しつつ洗浄効果が得られることが分かった(詳細は後述する。)。
【0018】
したがって、この出願の第1の発明によれば、光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工し形成された光学素子用素材を、洗浄する工程を含む、光学素子の製造方法において、
前記洗浄工程として、前記光学素子用素材に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
またこの出願の第2の発明によれば、光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工し形成された光学素子用素材表面に表面膜を形成して光学素子を得る工程と、該光学素子を洗浄する工程とを含む光学素子の製造方法において、
前記洗浄工程として、前記光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする。
【0020】
またこの出願の第3の発明によれば、光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工し光学素子用素材を得る工程と、該光学素子用素材を洗浄する第1の洗浄工程と、洗浄の済んだ光学素子用素材表面に表面膜を形成し光学素子を得る工程と、該光学素子を洗浄する第2の洗浄工程とを含む光学素子の製造方法において、
前記第1の洗浄工程として、前記光学素子用素材に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含み、
前記第2の洗浄工程として、前記光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含むこと
を特徴とする。
【0021】
上述した第1の発明によれば、光学素子用素材の表面に有機物が付着していた場合、その有機物は、波長222nm光を主とする紫外線と照射雰囲気の気体との作用で酸化され、さらに二酸化炭素と水とに分解され、揮発すると考えられる。そのため、光学素子を製造する際に、少なくとも光学素子用素材表面の有機物を除去できるという洗浄効果が得られる。しかも、照射する紫外線を波長222nm光を主とする紫外線としたので、光学素子用素材内部の吸収を実質的に増加させることなく、上記の洗浄効果が得られる。
【0022】
また上述した第2の発明によれば、反射防止膜等の表面膜を有した光学素子の表面膜に有機物が付着していた場合、その有機物は、波長222nm光を主とする紫外線と照射雰囲気の気体との作用で酸化され、さらに二酸化炭素と水とに分解され、揮発すると考えられる。そのため、光学素子を製造する際に、少なくとも表面膜の有機物を除去できるという洗浄効果が得られる。しかも、照射する紫外線を波長222nm光を主とする紫外線としたので、光学素子用素材内部の吸収を実質的に増加させることなく、上記の洗浄効果が得られる。
【0023】
また上述した第3の発明によれば、光学素子用素材の表面に有機物が付着していた場合、および、光学素子の表面膜に有機物が付着していた場合それぞれについて、この発明でいう洗浄工程の作用が及ぶ。しかも、照射する紫外線を波長222nm光を主とする紫外線としたので、光学素子用素材内部の吸収を実質的に増加させることなく、上記の洗浄効果が得られる。
【0024】
またこの出願の第4の発明によれば、光学素子を洗浄するに当たり、光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射することを特徴とする。
【0025】
この第4の発明によれば、完成した光学素子に対し任意のときにこの発明でいう洗浄を実施することができる。そして光学素子表面にもし有機物が付着していた場合、この有機物は、波長222nm光を主とする紫外線と照射雰囲気の気体との作用で酸化され、さらに二酸化炭素と水とに分解され、揮発すると考えられる。しかも、照射する紫外線を波長222nm光を主とする紫外線としたので、光学素子用素材内部の吸収を実質的に増加させることなく、上記の洗浄効果が得られる。
【0026】
この第4の発明によれば、例えば、製造後に長期間使用せず保管されていた光学素子や、製造後に使用はしていたが使用途中で例えば点検が必要となった光学素子等に対して、この発明でいう洗浄を実施することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態について説明する。
【0033】
1.第1の実施の形態
光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工し形成された光学素子用素材に、酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含む、光学素子の製造方法の発明の実施の形態について、先ず説明する。
【0034】
(1) 光学素子形成用材料として、フッ化カルシウム結晶を用いることが出来る。また、フッ化マグネシウム結晶またはフッ化バリウム結晶も、対象として期待することができる。しかし特にフッ化カルシウム結晶が好適である。その理由は、フッ化カルシウム結晶がArFエキシマレーザ等の短波長光に対する光透過性に優れるため紫外線用の光学素子を構成するうえで好ましいこと、および、後述する実験結果から明らかなように、この発明でいう洗浄技術を適用するとフッ化カルシウム結晶自体の内部吸収を実質的に増加させることなく顕著な洗浄効果を示すからである。
【0035】
市販されているフッ化カルシウム結晶は、大きく分けると、紫外光グレードと赤外光グレードとがある。また、フッ化カルシウム結晶は、多結晶のものと単結晶のものとがある。
【0036】
この出願の各発明を実施する際に、どのグレードのフッ化カルシウム結晶を用いるか、また、単結晶のものを用いるか、多結晶のものを用いるかに関しては、光学部品の仕様に応じ任意に決めることが出来る。光透過性を実質的に損ねることなく洗浄効果を得るという目的に対しては、この出願の各発明は、フッ化カルシウム単結晶が紫外光グレードとか赤外光グレードとかにかかわらず、また、多結晶のものとか単結晶のものとかにかかわらず、適用することができる。
【0037】
ただしArFエキシマレーザ露光装置に関する参考例の場合は、好ましくは、紫外光グレードでかつ単結晶のフッ化カルシウム結晶を用いるのが良い。その理由は、このようなフッ化カルシウム結晶は、紫外線の透過性に優れ、歪みが少なく、しかも、屈折率分布が均質なので、光学的特性に優れるArFエキシマレーザ露光装置の実現が期待できるからである。
【0038】
(2) 目的とする光学素子は、任意の光学素子とすることができる。典型的には、各種のレンズやプリズムを挙げることが出来る。したがって、光学素子用素材も、各種のレンズ、プリズムなどに対応した形状を有した素材とすることができる。
【0039】
(3) 光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工する際の加工方法は、任意好適な加工方法とすることができる。典型的には、光学素子形成用材料を切断する処理および研磨する処理を含む加工である。また例えば成形加工の場合があっても良い。さらには成形加工に研磨処理が加わる加工の場合があっても良い。
【0040】
(4) この発明でいう紫外線を照射する雰囲気は、酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気であれば良い。例えば、▲1▼大気雰囲気、▲2▼照射雰囲気を外界から分離しこの照射雰囲気に酸素の量が大気雰囲気より多くなるように酸素を流す雰囲気(実質的に酸素のみの雰囲気も含む)、▲3▼照射雰囲気を外界から分離しこの照射雰囲気にオゾンを流す雰囲気(実質的にオゾンのみの雰囲気も含む)それぞれは、この発明でいう紫外線照射雰囲気として用いることができる。
【0041】
照射雰囲気を大気雰囲気とする場合は特別な雰囲気を形成せずに済むので、その分、光学素子の製造工程の簡略化が図れるという利点が得られる。照射雰囲気をオゾンを積極的に追加した雰囲気とする場合は、詳細は後述するが、大気雰囲気よりも短時間で洗浄効果が発現するので、光学素子の製造工程における洗浄工程での処理時間を短縮できるという利点が得られる。
【0042】
(5) 波長222nm光を主とする紫外線とは、この波長の光を含みかつこれ以外の波長のうち光学素子形成用材料内部に新たに吸収帯を励起するような波長光は含まない光とする。後述する実施例および比較例の例で考えると、次のようになる。
【0043】
光学素子形成用材料がフッ化カルシウム結晶の場合、これに、波長172nmの光または、波長193nmの光または、波長248nmの光を照射したとき、洗浄効果は発現するが光透過性は悪化する。また、波長254nmの光を照射した場合、洗浄効果はほとんど得られず、光学素子用素材を発熱させてしまう。一方、波長222nm光を選択的に照射した場合は、光透過性の低下は実質的になくかつ洗浄効果も発現する。
【0044】
これからすると、波長222nm光を含みなるべくその近傍の光は、この発明でいう紫外線の1つとして用いることができる。
【0045】
このような紫外線は、例えば、Kr(クリプトン)ガスとCl(塩素)ガスとを封入したエキシマランプを用いることで得ることができる。
【0046】
なお、波長222nm光を主とする紫外線は光学素子用素材の内部吸収を実質的に低下させないので、該紫外線の強度や照射時間の上限はないと考えられる。そこで、該紫外線の強度や照射時間は、目的の洗浄効果が得られる条件以上でかつ設備投資や製造時間に無駄が生じない適当な条件とすれば良い。
【0047】
(6) 波長222nm光を主とする紫外線照射に当たっての光学素子用素材に対する前処理は特に限定されない。光学素子形成用材料を加工して光学素子用素材を得た際の状態などを考慮して適正な前洗浄を行なう場合があっても良い。
【0048】
2.第2の実施の形態
光学素子用素材表面に表面膜を形成し光学素子を得る工程と、該光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程とを含む、光学素子の製造方法の発明の実施の形態について、次に説明する。
【0049】
(a) 光学素子用素材を得るところまでは、第1の実施の形態にて説明した(1) 〜(3) の実施形態とすることができる。
【0050】
(b) またここでいう表面膜は、反射防止膜、波長選択膜など光学素子の特性向上のために設けられる任意好適な膜とすることができる。光学素子用素材表面に表面膜を形成する方法も、特に限定はされない。例えば従来公知の任意の方法、例えば蒸着法、スパッタ法等の任意の成膜方法を用いる。
【0051】
(c) 光学素子用素材表面に表面膜を形成して得た光学素子に対し照射する波長222nm光を主とする紫外線の条件や照射雰囲気は、第1の実施の形態にて説明した(4) 〜(6) の実施形態とすることができる。
【0052】
3.第3の実施の形態
光学素子用素材を洗浄する第1の洗浄工程と、洗浄の済んだ光学素子用素材表面に表面膜を形成し光学素子を得る工程と、該光学素子を洗浄する第2の洗浄工程とを含む、光学素子の製造方法の発明の実施の形態は、上述の第1および第2の実施の形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0053】
4.第4の実施の形態
光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する洗浄方法の発明の実施の形態を、次に説明する。
【0054】
光学素子は、光学素子用素材自体が光学素子となる場合、光学素子用素材の表面に表面膜を形成して光学素子を得る場合いずれでも良い。そして、光学素子用素材を得るところまでは、第1の実施の形態にて説明した(1) 〜(3) の実施形態とすることができる。また、表面膜についての実施の形態は、第2の実施の形態で説明した(b) の実施形態とすることができる。
【0055】
光学素子に対し照射する紫外線の条件や照射雰囲気は、第1の実施の形態にて説明した(4) 〜(6) の実施形態とすることができる。
【0056】
光学素子に対する洗浄は任意のときに行なうことができる。光学素子を長期に保管していた後の使用を開始するとき、或は、光学素子を使用している途中で光学素子表面に汚れが生じたとき、或は、光学素子を装置に組み込んで使用する場合において装置のメンテナンスのとき等に光学素子の洗浄をする。
【0057】
5.参考例の露光装置の実施の形態
次に、参考例として、ArFエキシマレーザ露光装置の実施の形態について説明する。この説明を図1を参照して行なう。ここで図1は、参考例の実施の形態の露光装置の構成を概略的に示した図である。
【0058】
この参考例の実施の形態では縮小投影型露光装置の例を考える。この参考例の実施の形態の露光装置は、光源としてのArFエキシマレーザ装置11と、光源11の光を露光用マスク(例えばレチクル)13に導く照明光学系15と、露光用マスク13を透過した光を被露光物(例えばウエハ)17に導く結像光学系19とを具える。
【0059】
照明光学系15は、露光用マスク13および被露光物17の相対位置を調整するためのアライメント光学系15aと、平行光を生成する光学レンズ15bとを含む。なおアライメント光学系15aおよび光学レンズ15bそれぞれは、複数のレンズ(図示せず)で構成される。結像光学系19も複数のレンズ(図示せず)で構成される。
【0060】
この参考例の実施の形態の露光装置の場合、前記照明光学系15および結像光学系19を構成している光学素子群の一部の光学素子または全部の光学素子それぞれを、所定の光学素子で構成することができる。
【0061】
所定の光学素子は上記の第1〜第3の実施の形態で説明した形態で製造される光学素子とすることができる。ただし、光学素子を形成する際に用いるフッ化カルシウム結晶が、紫外線グレードのかつ単結晶のフッ化カルシウム結晶とされた光学素子が好ましい。その方が、既に説明した理由から、光学的特性に優れるArFエキシマレーザ露光装置の実現が期待できるからである。
【0062】
また、好ましくは、前記照明光学系15および結像光学系19を構成している光学素子群の各光学素子それぞれを、前記所定の光学素子で構成する。こうすると、露光装置内の各光学素子がこの発明の洗浄効果を持つ光学素子になるので、露光装置の光透過性がより向上する。
【0063】
なお、この発明を適用することができる露光装置は図1の例に何ら限られるものではなく、多くの変形または変更を行なうことができる。例えば、上述の例では光学素子としてレンズの例を説明した。しかし、露光装置中にフッ化カルシウム結晶で構成されるレンズ以外の光学素子(例えばプリズムなど)が存在する場合は、該光学素子も前記所定の光学素子で構成する。
【0064】
【実施例】
以下実施例および比較例によりこの出願の発明についてさらに説明する。なお以下の実施例で述べる使用材料や、数値条件はこの発明の範囲内の一例にすぎない。したがって、この発明は、以下の使用材料や数値条件に限定されない。
【0065】
露光装置の性質上、露光装置の光学系には、高い品質が要求される。そのためフッ化カルシウム結晶に対しても、歪が小さいこと、屈折率分布が均質なこと、かつ、高い光透過性が要求される。そこで、以下の実施例および比較例では、露光装置の光学系に使用可能な良質な紫外光グレードのフッ化カルシウム単結晶について、検討を進めた。特にArFレーザの波長193nmで使用される光学素子を実現することを念頭において検討を進めた。
【0066】
実験のための試料として、厚さ3mm、5mm、10mm,20mmのフッ化カルシウム単結晶を必要数それぞれ用意した。各試料はいずれも鏡面研磨を施した。具体的には、研磨面の粗さがRMS(平方自乗平均)<5Åを満たすように、研磨を行なった。なお、厚みの異なる試料を用意した理由は、後の実施例2〜5にて説明する。
【0067】
1.実施例1および比較例1〜比較例4
厚さが10mmの複数枚の試料それぞれを、エタノールを含浸させた清浄な布で拭いた。
【0068】
(実施例1)
先ず、波長222nm光を主とする紫外線を試料に照射する前に、該試料の波長193nm光に対する透過率を測定した。透過率は91.85%であった。この結果を後記の表1中の「透過率照射前」の欄に示した。なお、透過率は多重反射を含んだ値である(以下の各実施例および比較例の透過率において同じ。)。また透過率の測定は分光光度計(ここではVarian社製のCary5)により行なった。
【0069】
また波長222nm光を主とする紫外線を試料に照射する前に、試料の清浄度を把握するため水の接触角を測定した。接触角は62度であった。その結果を後記の表2中の「照射前接触角」の欄に示した。なお、接触角の測定は接触角測定装置(ここでは協和界面科学社製CA−A型)により行なった。
【0070】
次に、クリプトン(Kr)ガスと塩素(Cl)ガスとを封入したエキシマランプからの光を、試料に、大気雰囲気で照射した。なお、このエキシマランプとして、波長222nmの光を半値幅2nmの状態で出力するランプを用いた。またこのエキシマランプの光強度が試料の位置で20mW/cm2 となるようにランプを駆動した。またランプ光の照射時間を100秒とした。
【0071】
波長222nm光を主とする紫外線を照射し終えた試料について、波長193nm光に対する透過率を、上記の分光光度計により測定した。また、水の接触角についても上記接触角測定装置により測定した。
【0072】
実施例1の条件で処理をした試料では、波長193nm光に対する光透過率は、91.95%となり、照射前に比べ0.1%向上した。また、紫外線照射後の水の接触角は25度となり、照射前に比べ37度改善された。
【0073】
透過率および接触角それぞれが向上したのは、試料表面に付着した有機物が除去されて洗浄効果が発現したためと考えられる。
【0074】
なお、実施例1での水の接触角の改善効果は、後述の比較例1、比較例2に比べて小さい。この実施例1が洗浄効果を高める条件を追求した実験ではないためである。この発明の方法において水の接触効果が高まる点は、後の実施例5にて説明する。また、実施例1での紫外線照射後の透過率は91.95%であるが、透過率をさらに高め得る点は、後の実施例5にて説明する。
【0075】
(比較例1)
比較例1では、紫外線照射源としてキセノン(Xe)ガスを封入したエキシマランプを用いた。なおこのエキシマランプは、波長172nmの光を主として出力する。
【0076】
このエキシマランプからの光を照射する前に、試料の波長193nm光に対する透過率と、水の接触角とを、実施例1と同様な方法でそれぞれ測定した。透過率は91.70%であり、接触角は63度であった。
【0077】
次に、この試料にエキシマランプからの光を、大気雰囲気で照射した。エキシマランプの光強度が試料の位置で20mW/cm2 となるようにランプを駆動した。またランプ光の照射時間を100秒とした。
【0078】
波長172nm光を主とする紫外線を照射し終えた試料について、波長193nm光に対する透過率を、上記の分光光度計を用い測定した。また、水の接触角についても上記接触角測定装置により測定した。
【0079】
比較例1の条件で処理をした試料では、波長193nm光に対する光透過率は、86.65%となり、照射前に比べ5.05%も低下した。また、紫外線照射後の水の接触角は14度となり、照射前に比べ49度改善された。
【0080】
このことから、波長172nm光を主とする紫外線は、洗浄効果は得られるが、光透過性を悪化させてしまうことが分かる。光透過性を悪化させる理由は、波長172nm光を主とする紫外線を照射すると、試料内部に波長193nmの新たな吸収帯を誘起してしまい内部吸収が生じるためと考えられる。
【0081】
(比較例2)
比較例2では、紫外線照射源としてArFエキシマレーザ装置を用いた。なおこのArFエキシマレーザ装置は、波長193nmの光を主として出力する。
【0082】
このArFエキシマレーザ装置からの光を照射する前に、試料の波長193nm光に対する透過率と、水の接触角とを、実施例1と同様な方法でそれぞれ測定した。透過率は91.65%であり、接触角は64度であった。
【0083】
次に、ArFエキシマレーザを、試料に、大気雰囲気で照射した。なおArFエキシマレーザの光強度を、試料の位置で20mW/cm2 とした。また、ArFエキシマレーザは100Hzのパルスとして照射した。またレーザ光の照射時間を100秒とした。
【0084】
なお、この場合のArFエキシマレーザの照射強度は、洗浄効果を得ようとしていることから、露光装置として使用する場合の照射強度に比べかなり高い強度であることは理解されたい。
【0085】
ArFエキシマレーザを照射し終えた試料について、波長193nm光に対する透過率を、上記の分光光度計を用い測定した。また、水の接触角についても上記接触角測定装置により測定した。
【0086】
比較例2の条件で処理をした試料では、波長193nm光に対する光透過率は、88.25%となり、照射前に比べ3.4%低下した。また、紫外線照射後の水の接触角は13度となり、照射前に比べ51度改善された。
【0087】
このことから、ArFエキシマレーザは、洗浄効果は得られるが、光透過性を悪化させてしまうことが分かる。光透過性を悪化させる理由は、有機物を分解できる程度の高い強度でArFエキシマレーザ光を照射すると、試料内部に波長193nmの新たな吸収帯を誘起してしまい内部吸収が生じるためと考えられる。なお、比較例2の方が比較例1より光透過率の悪化具合が小さい。これは照射する光の波長が、比較例1より比較例2の方が長いためと考えられる。
【0088】
(比較例3)
比較例3では、紫外線照射源としてKrFエキシマレーザ装置を用いた。なおこのKrFエキシマレーザ装置は、波長248nmの光を主として出力する。
【0089】
このKrFエキシマレーザ装置からの光を照射する前に、試料の波長193nm光に対する透過率と、水の接触角とを、実施例1と同様な方法でそれぞれ測定した。透過率は91.80%であり、接触角は64度であった。
【0090】
次に、KrFエキシマレーザを、試料に、大気雰囲気で照射した。なおこのKrFエキシマレーザの光強度を、試料の位置で20mW/cm2 とした。また、KrFエキシマレーザは100Hzのパルスとして照射した。またレーザ光の照射時間を100秒とした。
【0091】
KrFエキシマレーザを照射し終えた試料について、波長193nm光に対する透過率を、上記の分光光度計を用い測定した。また、水の接触角についても上記接触角測定装置により測定した。
【0092】
比較例3の条件で処理をした試料では、波長193nm光に対する光透過率は、90.05%となり、照射前に比べ1.75%低下したが照射前と同程度と考えて良いレベルであった。また、紫外線照射後の水の接触角は65度であり、照射前と変わらなかった。
【0093】
このことから、KrFレーザのような長波長側の紫外線を用いた場合は、波長193nmの光に対する透過率低下は実質的に生じないが、洗浄効果も得られないことが分かった。
【0094】
実施例1〜比較例3までの結果を表1、表2にまとめて示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
(比較例4)
比較例4として、低圧水銀ランプ光より発生する光のうち254nm光だけを主として取り出し、この光を上記用意した試料のうちの1つに、大気雰囲気で照射した。しかし洗浄効果は認められなかった。
【0098】
また、オゾン発生器を使用して雰囲気中のオゾン濃度を1000ppm程度以上に維持した状態で試料に254nm光を照射した。わずかに洗浄効果の向上がみられる傾向をつかんだが、依然として不充分な状況であった。そのわずかな洗浄効果を得るためにも、大きな照射強度で少なくとも80分間以上の処理時間を要した。しかも、このように洗浄効率が低いだけでなく、低圧水銀ランプからの発熱により試料(フッ化カルシウム結晶)の温度が150℃以上まで急激に上昇し、応力歪の発生までも引き起こすことがあった。
【0099】
上述の実施例1および比較例1〜4から分かるように、酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて紫外線をフッ化カルシウム結晶に照射する際に、結晶の光透過性を損ねることなく所望の洗浄効果を得るためには、波長222nm光を主とする紫外線が適当である。一方、少なくとも、波長172nm光を主とする紫外線、波長193nm光を主とする紫外線、波長248nmを主とする紫外線および波長254nmを主とする紫外線それぞれは、不適当である。
【0100】
2.実施例2〜実施例4
実施例2として、厚さが3mmの試料について、実施例1と同様な手順で、▲1▼紫外線照射前の透過率および接触角測定、▲2▼波長222nm光を主とする紫外線照射、▲3▼紫外線照射後の透過率および接触角測定をそれぞれ行なった。
【0101】
実施例3として、厚さが5mmの試料について、実施例1と同様な手順で、▲1▼紫外線照射前の透過率および接触角測定、▲2▼波長222nm光を主とする紫外線照射、▲3▼紫外線照射後の透過率および接触角測定をそれぞれ行なった。
【0102】
実施例4として、厚さが20mmの試料について、実施例1と同様な手順で、▲1▼紫外線照射前の透過率および接触角測定、▲2▼波長222nm光を主とする紫外線照射、▲3▼紫外線照射後の透過率および接触角測定をそれぞれ行なった。
【0103】
実施例2〜実施例4の各試料いずれも、紫外線照射前の透過率および接触角は実施例1の試料での紫外線照射前の透過率および接触角と同程度であった。また、実施例2〜実施例4の各試料いずれも、紫外線照射後の透過率および接触角は実施例1の試料での紫外線照射後の透過率および接触角と同程度であった。
【0104】
厚さが異なる試料を用いて実験を行なった理由は、波長222nm光を主とする紫外線が新たな吸収帯を生じさせるか否かをさらに確認するためである。
【0105】
光学素子の内部に光透過損失α(吸収係数α)が存在すると、光学素子の光透過性を示す指標のひとつである内部透過率τは、光学素子の厚さがtの場合では、τ=EXP(−α×t)となる。すなわち光透過損失が試料内部に存在した場合は、試料が厚くなると、光透過性は急激に減少する。ところが実施例1〜実施例4の結果では試料の厚さにかかわらず透過率は同程度である。したがって、波長222nm光を主とする紫外線は、これをフッ化カルシウム結晶に照射しても内部に波長193nm光についての新たな吸収帯を生じさせないといえる。
【0106】
3.実施例5〜7および比較例5
次に、波長222nm光を主とする紫外線を照射する際の雰囲気に関する実験について説明する。
【0107】
波長222nm光を主とする紫外線を照射する雰囲気として、窒素雰囲気、大気雰囲気、酸素雰囲気、オゾン雰囲気の4種類を形成する。なお窒素雰囲気、酸素雰囲気、オゾン雰囲気それぞれは、照射領域を簡易に密閉した状態を作りそこに、該当する気体が充満するよう該当する気体を流すことで形成した。
【0108】
(実施例5)
波長222nm光を主とする紫外線を照射する前の試料についての水の接触角を、実施例1と同様に測定した。接触角は64度であった。
【0109】
次に、紫外線照射時間を5分としたこと以外は、実施例1と同様にして大気雰囲気にて、波長222nm光を主とする紫外線を試料に照射した。その後、波長193nm光に対する透過率と、水の接触角とをそれぞれ測定した。透過率は92.05%であった。接触角は2度未満(<2)となり、高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0110】
(実施例6)
波長222nm光を主とする紫外線を照射する前の試料についての水の接触角を、実施例1と同様に測定した。接触角は62度であった。
【0111】
次に、紫外線照射雰囲気を酸素雰囲気とし、かつ、照射時間を5分としたこと以外は、実施例1と同様にして、波長222nm光を主とする紫外線を試料に照射した。その後、波長193nm光に対する透過率と、水の接触角とをそれぞれ測定した。透過率は92.05%であった。接触角は2度未満(<2)となり、高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0112】
(実施例7)
波長222nm光を主とする紫外線を照射する前の試料についての水の接触角を、実施例1と同様に測定した。接触角は63度であった。
【0113】
次に、紫外線照射雰囲気をオゾン雰囲気とし、かつ、照射時間を5分としたこと以外は、実施例1と同様にして、波長222nm光を主とする紫外線を試料に照射した。その後、波長193nm光に対する透過率と、水の接触角とをそれぞれ測定した。透過率は92.05%であった。接触角は2度未満(<2)となり、高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0114】
(比較例5)
波長222nm光を主とする紫外線を照射する前の試料についての水の接触角を、実施例1と同様に測定した。接触角は62度であった。
【0115】
次に、紫外線照射雰囲気を窒素雰囲気とし、かつ、照射時間を5分としたこと以外は、実施例1と同様にして、波長222nm光を主とする紫外線を試料に照射した。その後、波長193nm光に対する透過率と、水の接触角とをそれぞれ測定した。透過率は92.05%であった。接触角は62度であり、照射前と変わらないことが分かった。
【0116】
実施例5〜7および比較例5の結果を下記の表3にまとめて示した。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例5〜7および比較例5の結果から分かるように、波長222nm光を主とする紫外線を照射する雰囲気として、大気雰囲気、酸素雰囲気およびオゾン雰囲気いずれも使用可能なことが分かる。したがって、波長222nm光を主とする紫外線を照射する雰囲気は、酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気が必要なことが分かる。また、実施例5〜7の結果から分かるように、この実施例の条件下では、照射時間が5分であれば、大気雰囲気、酸素雰囲気およびオゾン雰囲気いずれの場合も、接触角が同じ値に達する。すなわち、同様な洗浄効果が得られることが分かる。しかも、この実施例5〜7の各条件であると、上述した比較例1,2に対しても充分優位な洗浄効果が得られることが分かる。
【0119】
ところで、実施例5〜7それぞれの処理で得られた透過率92.05%という値は、次のような意味を持つ。
【0120】
フッ化カルシウム結晶自体の光透過率が100%で、かつ、該結晶の表面状態(汚染、荒れなど)による光損失が0であると仮定した場合の多重反射含みの透過率(これをここでは「理論透過率」と称することにする。)は、波長193nmにおいて92.27%になる。
【0121】
実施例5〜7それぞれの処理で得られた透過率92.05%という値は、この理論透過率に対しては、92.27−92.05=0.22%という関係を示す。したがって、実施例5〜7それぞれの処理は、光損失を0.2%程度にまで低減できる洗浄処理に相当することを意味している。
【0122】
なお、理論透過率は周知の方法に従い次のように求まる。
【0123】
R=(n−1)2 /(n+1)2 ・・・▲1▼
T=τ(1−R)2 /(1−R2 τ2 ) ・・・▲2▼
ただし、R:反射率、nはフッ化カルシウム結晶の屈折率、Tは多重反射含みの透過率、τは内部透過率である。
【0124】
フッ化カルシウム結晶での内部吸収や内部散乱がないと仮定するので内部透過率τは100%すなわち1である。そこで、τ=1を上記▲2▼式に代入する。すると下記の▲3▼式が得られる。この▲3▼式で与えられる透過率が理論透過率である。
【0125】
T=(1−R)2 /(1−R2 ) ・・・▲3▼
また▲3▼式中の反射率Rは▲1▼式より求まる。フッ化カルシウム結晶の波長193nm光に対する屈折率nはn=1.5014であるので、これを▲1▼式に代入すると、R=0.040179になる。このRの値を▲3▼式に代入するとT=0.9227が得られる。これを100倍すると、92.27%という値が得られる。
【0126】
4.実施例8
波長222nm光を主とする紫外線を照射する雰囲気についてさらに検討した結果を示す。
【0127】
実施例5〜7それぞれでは、紫外線照射時間をいずれも5分としていた。これに対し、この実施例8では、紫外線照射時間をいずれも1分とした。しかも、オゾン雰囲気として、オゾン濃度が約1000ppmとなるようにオゾンを供給する雰囲気とした。具体的には次のように実験をした。
【0128】
紫外線照射前の試料についての水の接触角を実施例1と同様に測定した。
【0129】
次に、ある試料には大気雰囲気で波長222nm光を主とする紫外線を照射した。また別の試料には酸素雰囲気で波長222nm光を主とする紫外線を照射した。また別の試料にはオゾン濃度1000ppmのオゾン雰囲気で波長222nm光を主とする紫外線を照射した。
【0130】
そして、各試料の水の接触角を測定した。紫外線照射前後の接触角の変化を表4にまとめて示した。
【0131】
【表4】
【0132】
実施例8の結果から、紫外線照射雰囲気が大気雰囲気および酸素雰囲気それそれの場合では、紫外線照射時間が1分では洗浄効果は充分とはいえない。これに対し、紫外線照射雰囲気がオゾンを含む雰囲気であると、紫外線照射時間が1分であっても、本方法の能力限界と考えられる程度まで洗浄効果が現れる。これからして、高い洗浄効果を確保しつつ紫外線照射時間を短縮する場合は、照射雰囲気にオゾンを含ませるのが良いことが分かる。
【0133】
また紫外線照射時間を短縮できると、紫外線光源からの熱の影響や試料自体の紫外線による発熱を抑制できるという効果も得られる。実際、紫外線照射時間を1分としたこの実施例8の場合、紫外線照射しても試料の温度は室温程度に維持出来た。
【0134】
【発明の効果】
上述した説明から明らかなように、この出願の光学素子の製造方法によれば、光学素子用素材およびまたは光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気で波長222nm光を主とする紫外線を照射する。またこの出願の光学素子の洗浄方法によれば光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気で波長222nm光を主とする紫外線を照射する。そのため、素材自体の光透過性を悪化させることなく有機物を除去することができるので、光透過性に優れた光学素子を得ることができる。
【0135】
この出願の光学素子の製造方法および光学素子の洗浄方法は、特に、フッ化カルシウム結晶を素材とする光学素子の製造方法および洗浄方法として好適である。
【0136】
また参考例の光学素子によれば、酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気で波長222nm光を主とする紫外線を照射して処理されたフッ化カルシウム結晶からなる光学素子用素材を用い形成された光学素子である。そのため、フッ化カルシウム結晶を単に用い構成した光学素子に比べ、高い光透過性を示す光学素子を実現することができる。
【0137】
また参考例のArFエキシマレーザ露光装置によれば、酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気で波長222nm光を主とする紫外線を照射して処理されたフッ化カルシウム結晶からなる光学素子用素材を用い形成された光学素子により、露光装置の光学素子群の一部の光学素子または全部の光学素子を構成してある。そのため、フッ化カルシウム結晶を単に用いた光学素子を含む露光装置に比べ高い光透過性を示すArFエキシマレーザ露光装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例の実施の形態を説明する図である。
【符号の説明】
11:光源(ArFエキシマレーザ装置)
13:露光用マスク
15:照明光学系
15a:アライメント光学系
15b:光学レンズ
17:被露光物
19:結像光学系
Claims (6)
- 光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工し形成された光学素子用素材を、洗浄する工程を含む、光学素子の製造方法において、
前記洗浄工程として、前記光学素子用素材に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含み、
前記光学素子形成用材料がフッ化カルシウム結晶である
ことを特徴とする光学素子の製造方法。 - 光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工し形成された光学素子用素材表面に表面膜を形成して光学素子を得る工程と、該光学素子を洗浄する工程とを含む光学素子の製造方法において、
前記洗浄工程として、前記光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含み、
前記光学素子形成用材料がフッ化カルシウム結晶である
ことを特徴とする光学素子の製造方法。 - 光学素子形成用材料を目的とする光学素子の形状に加工し光学素子用素材を得る工程と、該光学素子用素材を洗浄する第1の洗浄工程と、洗浄の済んだ光学素子用素材表面に表面膜を形成し光学素子を得る工程と、該光学素子を洗浄する第2の洗浄工程とを含む光学素子の製造方法において、
前記第1の洗浄工程として、前記光学素子用素材に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含み、
前記第2の洗浄工程として、前記光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含み、
前記光学素子形成用材料がフッ化カルシウム結晶である
ことを特徴とする光学素子の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法において、
前記光学素子がArFエキシマレーザ露光装置に用いられる光学素子である
ことを特徴とする光学素子の製造方法。 - 光学素子を洗浄するに当たり、
光学素子に酸素およびオゾンの少なくとも一方を含む雰囲気にて波長222nmの光を主とする紫外線を照射する工程を含む光学素子の洗浄方法において、
前記光学素子が、フッ化カルシウム結晶を素材とする光学素子である
ことを特徴とする光学素子の洗浄方法。 - 請求項5に記載の光学素子の洗浄方法において、
前記光学素子がArFエキシマレーザ露光装置に用いられる光学素子である
ことを特徴とする光学素子の洗浄方法。
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