JP4701469B2 - 光学部材用合成石英ガラスの製造方法 - Google Patents

光学部材用合成石英ガラスの製造方法 Download PDF

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  • Exposure Of Semiconductors, Excluding Electron Or Ion Beam Exposure (AREA)
  • Exposure And Positioning Against Photoresist Photosensitive Materials (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部材用合成石英ガラスとその製造方法および使用方法、特に、波長165nm以下の真空紫外光に対して高透過率を示す光学部材用合成石英ガラスとその製造方法および使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、LSIの高集積化に伴い、光リソグラフィ技術において、より線幅の狭い微細な描画技術が要求され、露光波長の短波長化が進められている。例えば、リソグラフィ用ステッパの光源は、従来のg線(波長436nm)やi線(波長365nm)から進んで、KrFエキシマレーザ(波長248nm)やArFエキシマレーザ(波長193nm)が用いられようとしている。また、さらに微細な描画技術を必要とする次世代の光源としてフッ素レーザ(波長157nm)が候補に挙げられている。
【0003】
KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザを光源とする光学系には、近赤外域から真空紫外域までの広範囲の波長域にわたって透明で、熱膨張係数が極めて小さく寸法安定性に優れ、高純度である等の諸特性に優れることから、合成石英ガラスが用いられる。しかし、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザに用いられるOH基含有量が多い合成石英ガラスは、波長165nm以下の波長域における透過率が低く、次世代の光源として考えられているフッ素レーザには不向きである。
また、波長165nm以下の波長域における透過率を向上させるためにOH基含有量を低減させた合成石英ガラスでは、透過光の波長が170nm付近から短波長になるにつれて、透過率が急激に低下する。
したがって、フッ素レーザを光源として用いる光学系に光学部材として合成石英ガラスを用いる場合には、その透過率の改善が重要な課題となる。
【0004】
また、光リソグラフィ技術に用いる光学装置の光学系は、多数のレンズ、プリズム等の光学部材が組み合わされて構成されている。したがって、光学部材の一枚あるいは一個あたりの透過率の向上が、光学系全体で積算されれば、大きな透過率の向上をもたらすことになる。
【0005】
しかし、フッ素レーザの波長域である波長165nm以下の波長領域での透過率を改善し、高い透過率を有する光学部材用合成石英ガラスを、効率的かつ簡便に製造する方法は、未だ提案されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、波長165nm以下の波長領域での透過率が改善された光学部材用合成石英ガラスを、効率的かつ簡便に製造できる方法の提供を目的とする。
本発明は、また、波長157nmにおける透過率が高い光学部材用合成石英ガラスおよびその使用方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、OH基含有量が50ppm(重量ppm、以下も同様)以下の合成石英ガラスに、波長180nm以下の真空紫外光を照射して波長165nm以下の透過率を改善する工程を有する光学部材用合成石英ガラスの製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、波長157nmにおける吸収係数が0.70cm-1以下である光学部材用合成石英ガラスを提供する。
さらに本発明は、OH基含有量が50ppm以下の光学部材用合成石英ガラスの使用方法であって、光学部材として使用する前に、波長180nm以下の真空紫外光を照射する工程を有する光学部材用合成石英ガラスの使用方法を提供する。
本発明において、光学部材とは、合成石英ガラスを、露光装置用レンズ(例えば投影系レンズや照明系レンズ等)、プリズム(例えばレーザ光源内のビームエキスパンダ等)、エタロン、フォトマスク、フォトマスクブランクス、窓材、分光フィルタなどに製品化したものまたは半製品化したものをいう。特に、レンズ、フォトマスク、フォトマスクブランクスが好ましい。なお、前記の露光装置とは、例えば、半導体製造用、LCD製造用、磁気ヘッド製造用、プリント基板製造用の露光装置等をいう。
【0009】
本発明者らは、合成石英ガラスの波長165nm以下の透過率を改善するためには、OH基含有量および水素分子含有量を制御した合成石英ガラスに波長180nm以下の真空紫外光を照射処理すれば、波長165nm以下の透過率が改善されることを知見した。
【0010】
そこで、照射処理前の合成石英ガラス(以下、「照射前合成石英ガラス」という)におけるOH基含有量および水素分子含有量が、照射処理後の合成石英ガラスの波長165nm以下の透過率に及ぼす影響を検討した。その結果、照射前合成石英ガラス中のOH基含有量は真空紫外域における光透過性に影響を及ぼし、OH基含有量が高いほど光透過性が低下するが、50ppm以下であれば、真空紫外光の照射によって波長165nm以下の透過率の改善を得ることができ、特に30ppm以下(さらには10ppm以下)であれば、波長165nm以下の透過率の改善に有効であることを知見した。
【0011】
上記波長165nm以下の透過率の改善機構については定かではないが、次のように考えられる。合成石英ガラス中のOH基の存在状態には2種類ある。一つは孤立した状態で存在する場合、一つは隣接するOH基同士が水素結合した状態で存在する場合である。OH基含有の真空紫外光透過性に対する影響はOH基の存在状態によって異なり、前者の方が後者よりも影響が大きい。すなわち、孤立した状態のOH基を等量含有する合成石英ガラスの透過率と比較して、水素結合した状態のOH基を含有する合成石英ガラスの波長165nm以下の透過率は高い。合成した合成石英ガラス中のOH基のほとんどは通常水素結合することなく孤立した状態で存在しており、波長180nm以下の光を照射することによりOH基の存在状態は水素結合した状態に変化して、波長165nm以下の透過率が向上するものと考えられる。
【0012】
また、合成石英ガラス中の水素分子含有量が3×1016分子/cm3 以上であると、より少量の紫外光照射により真空紫外光透過性を向上することができる。透過率改善効果に関して、紫外線照射の最適値があり、少なすぎると透過率はあまり改善せず、また多すぎると欠陥が生成し、逆に透過率が低下する。また、合成石英ガラス中の水素分子は、紫外線照射によるE’センターやNBOHCなどの欠陥生成を抑制する作用もある。水素分子含有量が1×1017個/cm3 以上であれば、波長165nm以下の透過率の改善により有効であり、特に、1×1018個/cm3 以上であれば、光学部材用合成石英ガラスとして使用される際の耐紫外線性(紫外線照射により透過率が著しく低下しない性能)の観点から好ましい。
【0013】
また、本発明において。照射前合成石英ガラスは、還元型欠陥を実質的に含まないことが好ましい。本発明において、還元型欠陥とは≡Si−Si≡のことをさし、波長163nmを中心とする吸収帯を有する。163nmにおける内部透過率T163 (%/cm)は、合成石英ガラス中のOH基含有量COH(ppm)により次式(3)のように推測される。
163 (%/cm)≧exp(−0.02COH 0.85)×100 (3)
本発明において、還元型欠陥を実質的に含有しないとは、163nmにおける内部透過率に関する式(3)を満足することを意味する。
しかし、還元型欠陥があると、163nmを中心とした吸収帯があるため、実際の波長163nmにおける透過率(T163 )は、式(3)の右辺の値よりも小さくなる。そこで、還元型欠陥を実質的に含有しなければ、より高い波長165nm以下の透過率を得るために有効である。
【0014】
また、本発明に用いられる照射前合成石英ガラス中に、フッ素は含有されていてもよい。フッ素が照射前合成石英ガラス中に含まれている場合には、フッ素は、照射前合成石英ガラス中の不安定な構造を低減し、波長165nm以下の透過率の改善に有効である。照射前合成石英ガラス中のフッ素含有量は100〜2000ppmが好ましい。より好ましくは、100〜600ppmの範囲である。
【0015】
照射前合成石英ガラス中のアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属不純物は、紫外域から真空紫外域における透過率を低下させるだけでなく、耐紫外線性を低下させる原因ともなるため、その含有量は極力少ない方が好ましい。具体的には金属不純物の合計量が100ppb以下、特に50ppb以下が好ましい。
【0016】
本発明における、波長180nm以下の真空紫外光の照射には、表面洗浄による波長165nm以下の波長域の透過率改善の効果もある。洗浄の効果は以下のようにして評価できる。
すなわち、以下の式(1)および式(2)で定められるTa とTb との差が小さくなるほど、洗浄効果が高い。ただし、Rは波長157nmにおける光学部材用合成石英ガラスの反射率、nは波長157nmにおける光学部材用合成石英ガラスの屈折率である。Tb は理論透過率に相当する。
a =(1−R)2 /(1+R)2 (1)
b =(1−n)2 /(1+n)2 (2)
【0017】
このうち、波長157nmにおける合成石英ガラスの反射率Rは、厚さの異なる3枚以上の合成石英ガラスの、反射損失を含む波長157nm透過率Tc を真空中で測定することにより、下記の算出式(4)より波長157nm吸収係数αとともに求めることができる。
c =(1―R)2 exp(−αt)/(1―R2 exp(−2αt))(4)
c :反射損失を含む波長157nm透過率
R:波長157nm反射率
α:波長157nm吸収係数[1/cm]
t:試料厚さ[cm]
本発明の光学部材用合成石英ガラスは、上記Ta とTb との差が0.03以下、特に0.01以下の光学部材用合成石英ガラスであることが好ましい。また、OH基含有量が50ppm以下の光学部材用合成石英ガラスを、光学部材として使用する前に、波長180nm以下の真空紫外光を照射して、上記Ta とTb との差を0.03以下とすることにより、表面の清浄度が高く、波長165nm以下における透過率が高い合成石英ガラスを各種光学部材として使用できる。
【0018】
本発明において、照射前合成石英ガラスの製造方法としては、OH基含有量が前記所定の範囲となる製造方法であれば、特に限定されない。例えば、直接法、スート法(VAD法、OVD法)、プラズマ法等を挙げることができる。製造時の温度が低く、塩素および金属などの不純物の混入を避けることができる観点で、スート法が特に好ましい。
【0019】
本発明において、照射する真空紫外光の波長は、180nm以下、好ましくは175nm以下である。また。真空紫外光は、連続光でもよいし、単色光でもよい。
照射する真空紫外光の強さは1mJ/cm2 以上が好ましい。より短時間で効果を得るためには5mJ/cm2 以上であることが好ましい。照射時間は用いる光源により適宜決定される。紫外光の総照射エネルギー量は、少なすぎると透過率はあまり向上せず、また多すぎると欠陥が生成し、逆に透過率が低下することがある。一般的には総照射エネルギー量で300〜50000J/cm2 程度であることが好ましい。総照射エネルギー量は1000mJ/cm2 以上、特に3000mJ/cm2 以上が好ましい。水素分子含有量が多いと、紫外光の総照射エネルギー量が多くても、欠陥が発生しにくい傾向がある。
照射処理の雰囲気は、雰囲気中に酸素分子、水分等が多く含まれると真空紫外光を吸収するため、窒素雰囲気もしくはHe雰囲気等とするのが好ましい。
【0020】
真空紫外光源の具体例としては、キセノンを媒質とするキセノンエキシマランプ(主波長172nm)、フッ素を媒質とするフッ素レーザ(主波長157nm)等が挙げられる。広範囲の領域にわたって波長165nm以下の透過率の改善が必要な場合にはキセノンエキシマランプが好ましい。また、生産性の観点からはフッ素レーザが好ましい。
【0021】
本発明において、照射処理は、合成石英ガラスを光学部材にするために経る各工程の前後のいずれの段階で行ってもよい。なお、各工程とは、加熱工程、切断工程、研磨工程、または、仕上げ工程などをいう。光学部材として完成した後に照射処理してもよい。また、照射処理は、光透過領域(光が透過する光路に相当する領域)のみに施しても良い。表面洗浄の目的で照射処理を行う場合は、光学部材として使用する前、特に直前に照射処理することが好ましい。
【0022】
本発明においては、波長157nmにおける吸収係数が0.70cm-1以下である光学部材用合成石英ガラスであることが好ましい。波長157nmにおける吸収係数は0.30cm-1以下であることがより好ましい。
また、SiOH基の伸縮振動に基づく赤外吸収ピークを略3640cm-1に有するものが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
【0024】
(例1)
公知のスート法により、SiCl4 を酸水素火炎中で加熱加水分解させ、形成された石英ガラス微粒子を基材に堆積させて、直径35cm、長さ100cmの多孔質石英ガラス体を作製した。得られた多孔質石英ガラス体を雰囲気制御可能な電気炉に設置し、室温にて10Torrまで減圧して1時間保持した後、He/SiF4 =99/1(体積比)の混合ガスを常圧になるまで導入した。この雰囲気中、常圧および室温で数時間保持することにより、フッ素ドープを行った。続いて、He100%雰囲気下に1450℃まで昇温し、この温度で5時間保持して、フッ素を含有した透明ガラス体を得た。
【0025】
得られた透明石英ガラス体から、100φ×30mmの円板状のブロックを切り出した。ブロックを、水素100%、10気圧、500℃の雰囲気下で250時間保持し、水素ドープ処理を行い、照射前合成石英ガラスを得た。得られた合成石英ガラスのOH基含有量及び水素分子含有量は、それぞれ4.8ppm、17.4×1017個/cm3 であった。また、前記式(3)により、還元型欠陥の有無に関し評価した結果、還元型欠陥を実質的に含有しないことが確認された。
さらに、円板状の合成石英ガラスの両面を光学研磨した後、窒素雰囲気下、キセノンエキシマランプ(主波長172nm)で650時間照射処理(総照射エネルギー量:約13000J/cm2 )を施し光学部材用合成石英ガラスを得た。
このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nmの紫外光に対する吸収係数(「波長157nmの紫外光に対する吸収係数」を以下、単に「波長157nm吸収係数」という)、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH伸縮振動に基づく赤外吸収ピーク(「SiOH伸縮振動に基づく赤外吸収ピーク」を以下、単にSiOH吸収ピークという)の位置(cm-1)を測定した。
【0026】
(例2)
例1と同様の方法で、OH基含有量が19ppm、水素分子含有量が10.3×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でフッ素レーザを照射して光学部材用合成石英ガラスを得た。照射条件は、10mJ/cm2 ×40Hz×150minであった。このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0027】
(例3)
例1と同様の方法で、OH基含有量が31ppm、水素分子含有量が2.1×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンを媒質とするエキシマランプを650時間照射処理(合計照射エネルギー量:約13000J/cm2 )を施し、光学部材用合成石英ガラスを得た。このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0028】
(例4)
例1と同様の方法で、OH基含有量が33ppm、水素分子含有量が0.8×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを650時間照射処理(総照射エネルギー量:約13000J/cm2 )を施した。このとき、照射前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0029】
(例5)
例1と同様の方法で、OH基含有量が54ppm、水素分子含有量が32.5×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを1000時間照射処理(総照射エネルギー:約20000J/cm2 )を施した。このとき、照射前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0030】
(例6)
例1と同様の方法で、OH基含有量が63ppm、水素分子含有量が0.5×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを1000時間照射処理(総照射エネルギー:約20000J/cm2 )を施した。このとき、照射前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0031】
(例7)
例1と同様の方法で、OH基含有量が5.2ppm、水素分子含有量が17.4×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを75時間照射処理(総照射エネルギー量:約1500J/cm2 )を施した。このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0032】
(例8)
例1と同様の方法で、OH基含有量が12ppm、水素分子含有量が10.3×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを75時間照射処理(総照射エネルギー量:約1500J/cm2 )を施した。このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0033】
(例9)
例1と同様の方法で、OH基含有量が32ppm、水素分子含有量が0.8×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを75時間照射処理(総照射エネルギー量:約1500J/cm2 )を施した。このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0034】
(例10)
例1と同様の方法で、OH基含有量が5.2ppm、水素分子含有量が17.4×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを35時間照射処理(総照射エネルギー量:約700J/cm2 )を施した。このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0035】
(例11)
例1と同様の方法で、OH基含有量が5.2ppm、水素分子含有量が17.4×1017個/cm3 で、還元型欠陥を実質的に含有しない照射前合成石英ガラスを準備し、窒素雰囲気内でキセノンエキシマランプを300時間照射処理(総照射エネルギー量:約6000J/cm2 )を施した。このとき、照射処理前後の合成石英ガラスの波長157nm吸収係数、照射後の合成石英ガラスにおけるSiOH吸収ピークの位置(cm-1)を測定した。
【0036】
(評価方法)
得られた光学部材用合成石英ガラスブロックの中心部より、30φ×10mmの評価用サンプルを切り出し、研磨加工後、以下の方法で水素分子含有量、OH基含有量、SiOH吸収ピーク、および波長157nm吸収係数を求めた。
水素分子含有量)ラマン分光測定を行い、レーザラマンスペクトルの4135cm-1の散乱ピークにより検出した強度I4135と、ケイ素と酸素との間の基本振動である800cm-1の散乱ピークの強度I800 との強度比(=I4135/I800 )より、水素分子含有量(分子/cm3 )を求めた(V.S.Khotimchenko et.al.,Zhurnal Prikladnoi Spektroskopii,46(6),987〜997(1986))。
【0037】
OH基含有量及びSi−OH吸収ピーク)一般的な合成石英ガラスは、赤外分光法の透過スペクトルにおいて、OH基を含むと3673cm-1にピークが出現する。このピークの吸収率から、実質的なピーク高さ(H)を求め、さらに、測定時に赤外光が透過する合成石英ガラスの厚さ(L、単位cm)を求め、次式よりOH基含有量を求める。
OH基含有量(ppm)=95×H/L
この手法は、β−OHと呼ばれ、ガラス中のOH基含有量を求める際に一般的に用いられている(例えば、J.P.Wiiliamset.al.,Ceram.Bull.,55(5),524(1976))。
【0038】
波長157nm吸収係数)真空紫外分光光度計を用いて、厚さ10mmの試料と厚さ2mmの試料の波長157nmにおける透過率を測定し、これらの透過率から波長157nm吸収係数を算出した。波長157nm吸収係数の値が小さい方が高い透過率を示す。例3における真空紫外光照射処理前後での分光透過率測定結果を図1に示す。
例1〜11の評価結果を表1にまとめて示す。例5および例6はOH基含有量が多いため、波長157nm吸収係数が大きい例である。また、例4は、水素分子含有量が少ないわりに紫外光の総照射エネルギー量が大きいため、欠陥が発生し、紫外光照射により波長157nm吸収係数が増大した例である。
【0039】
【表1】
Figure 0004701469
【0040】
(例12〜16)
OH基含有量が1.5ppmである合成石英ガラスについて、25mmφ×2mm厚、25mmφ×10mm厚、25mmφ×20mm厚、25mmφ×30mm厚の厚さの異なる4種類のサイズの試料をそれぞれ5個ずつ準備し、各試料について対向する25mmφの2面を平行平面度10秒以下、表面粗さ5Å以下の精度で鏡面研磨した。これらの試料を、以下に示す手順で湿式洗浄した。
1)硫酸:過酸化水素水:水=1:1:8の比率の混合液(液温100℃)中に10分間浸漬
2)イオン交換水にて5分間流水リンス
3)アンモニア:過酸化水素水:水=1:1:8の比率の混合液(液温25℃)中に10分間浸漬
4)イオン交換水にて5分間流水リンス
5)イオン交換水(液温40℃)にて10分間超音波洗浄
6)フロン蒸気乾燥
【0041】
次いで、表2に示す条件にて窒素ガス雰囲気下でキセノンエキシマランプ光(照度10mW/cm2 )を試料に照射し、様々な照射時間で洗浄を実施した。乾式洗浄後直ちに試料を真空紫外分光光度計(分光計器製、UV201M)にセットし、窒素雰囲気下にて波長157nm透過率を測定した。測定して得られた厚さ2mm(=t1 )、10mm(=t2 )、20mm(=t3 )、30mm(=t4 )の試料の波長157nm透過率T1 、T2 、T3 、T4 、を式(5)に代入し、最小二乗法により波長157nm反射率Rおよび波長157nm吸収係数αを求めた。
i =(1―R)2 exp(−αti )/(1―R2 exp(−2αti ))
(i=1,2,3,4) (5)
i :反射損失を含む波長157nm透過率
R:波長157nm反射率
α:波長157nm吸収係数[1/cm]
i :試料厚さ[cm]
得られた波長157nm反射率Rを用いて式(1)より透過率Ta を求め、波長157nmにおける屈折率n(=1.661)より式(2)を用いて計算される理論透過率Tb (=0.884)との差ΔT(=Tb −Ta )を求めることにより、表面の清浄度を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0004701469
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、波長165nm以下の透過率が改善された光学部材用合成石英ガラスを、高効率かつ簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の例3における照射処理前後での分光透過率測定結果を示す図である。

Claims (3)

  1. OH基含有量が50ppm以下で、水素分子含有量が1×10 17 個/cm3以上であり、還元型欠陥を実質的に含まない合成石英ガラスに、波長180nm以下の真空紫外光を照射して波長165nm以下の波長域の透過率を改善し、波長157nmにおける吸収係数が0.70cm-1以下である光学部材用合成石英ガラスを得る、光学部材用合成石英ガラスの製造方法であって、
    前記真空紫外光の総照射エネルギー量が300〜50000J/cm 2 である、光学部材用合成石英ガラスの製造方法。
  2. 波長180nm以下の真空紫外光が、キセノンエキシマランプ(主波長172nm)光である請求項に記載の光学部材用合成石英ガラスの製造方法。
  3. 波長180nm以下の真空紫外光が、フッ素レーザ(主波長157nm)光である請求項に記載の光学部材用合成石英ガラスの製造方法。
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