JP3822836B2 - ロープ用緩衝具及び緩衝装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は落石、雪崩、崩壊土砂等の衝撃力を吸収する衝撃吸収柵やロープ製のガードレール等に適用可能なロープ用緩衝具及び緩衝装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の衝撃吸収柵を定着部へ定着するロープ用緩衝具は、ロープに作用する張力を減衰する等の機能性から、重量が重く、操作・組立て性が複雑であり、さらには、製作費用も高価であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来のロープ用緩衝具にあっては、次のような問題点がある。
<イ>緩衝具の本体は、切削加工に適さない形状であるため鋳鉄で製造している。
そのため、緩衝具は数十キロと重たく、持ち運びや組付けに多大の労力を必要とする。
<ロ>落石防護柵に使用する緩衝具は、巨大落石の衝撃にも耐え得るように厚肉に形成することから、重量面だけではなく製造コストも嵩む。
<ハ>楔要素を備えたボルトでロープを部分的に締付けるタイプにあっては、ロープとの接触面積が小さいため、ボルトの締付力が大きい割に緩衝性能が低い。
<ニ>緩衝具が2枚の板体の間でロープを挟持するタイプである場合、所定の緩衝性能を発揮するには、ロープを跨ぐように緩衝具本体の両側に設置するすべてのボルトを均等に締結する必要がある。
しかし、各ボルトを均等に締付けることは難しく、しかも緩衝具の製造公差も加わって、各側のボルトの締付力にバラツキを生じ易い。
殊に、従来の緩衝具は実際の落石などが作用して初めて緩衝性能を評価できるものであって、実際の緩衝性能を設置直後に確認することはできない。
そのため、安定した緩衝性能に対する信頼性の点で不安が残る。
<ホ>コンプレッサなどの機器の搬入が困難な山岳地帯での取り付け工事においては、スパナやレンチ等の簡単な工具によるボルトの締付作業を強いられる。
ボルトの締付作業を手作業に頼ると、ロープの把持力のバラツキがさらに生じ易くなる。
【0004】
【発明の目的】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところはつぎの何れかひとつのロープ用緩衝具及び緩衝装置を提供することにある。
▲1▼小型軽量化と緩衝性能の高性能化の両立を図ることができるロープ用緩衝具及び緩衝装置。
▲2▼運搬取扱性、組付性に優れたロープ用緩衝具及び緩衝装置。
▲3▼製作性に優れたロープ用緩衝具及び緩衝装置。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明のロープ用緩衝具は、引張力が作用する1本のロープを把持し、ロープとの間の摩擦抵抗により前記引張力を減衰するロープ用緩衝具であって、板体の中央を折り返して1本のロープの周面と面接触させて収容可能に形成した拡張部を有する拘束板と、前記拘束板を収縮方向に締付けて拡張部をロープに接面させる締付手段と、からなり、拘束板へ作用させた前記締付手段の締付力が拡張部を通じてロープに均等な拘束力として作用させてロープを定着し、前記拘束板の拡張部の拘束力に基づく摩擦抵抗により前記引張力を減衰することを特徴としたものである。
【0006】
また、本発明のロープ用緩衝具は、前記構成の拘束板の締付部間に間隔保持板を介挿したことを特徴としたものである。
【0007】
また、本発明のロープ用緩衝装置は、引張力が作用する1本のロープを把持し、ロープとの間の摩擦抵抗により前記引張力を減衰するロープ用緩衝装置であって、板体の中央を折り返して1本のロープの周面と面接触させて収容可能に形成した拡張部を有する拘束板と、前記拘束板を収縮方向に締付けて拡張部をロープに接面させる締付手段とを具備する緩衝具と、一方を前記拘束板に接続すると共に、他方を反力源へ接続して前記引張力を支持する掛止手段と、からなり、拘束板へ作用させた前記締付手段の締付力が拡張部を通じてロープに均等な拘束力として作用させてロープを定着し、前記拘束板の拡張部の拘束力に基づく摩擦抵抗により前記引張力を減衰することを特徴としたものである。
【0008】
さらに、本発明は前記するロープ用緩衝装置であって、掛止手段がロープを挿通するスリットを備えた複数の掛止材と、これらの掛止材に貫通して掛止するU字形の連結材とから構成することを特徴としたものである。
【0009】
特に、本発明は前記するロープ用緩衝装置であって、前記拘束板の締付部の間に間隔保持板を介挿することを特徴としたものである。
【0010】
また、本発明は前記するロープ用緩衝装置であって、拘束板をばね鋼板で形成したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は前記するロープ用緩衝装置であって、前記連結材と前記拘束板側面とに跨って回転防止板を追加して設けたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態1】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
<イ>緩衝装置の構成
図1に緩衝装置10の斜視図を示し、図2に緩衝具30の横断面図を示す。
本発明に係る緩衝装置10は、引張力が作用する1本のロープ20を把持してロープ20との間の摩擦抵抗により引張力を減衰する緩衝具30と、緩衝具30に掛止してアンカー頭部等の反力源へ繋ぎ止める掛止手段40とからなる。
【0014】
緩衝具30は、ロープ20を拘束する拘束板31と、その両端部の間に介挿させる間隔保持板33と、該側部から締付ける締付手段32とを具備する。
掛止手段40は、拘束板31の一側に当接して掛止し、引張力を受ける掛止材41と、掛止材41と反力源を結ぶ連結材42と、回転防止板50とを具備する。
【0015】
ロープ20は、ワイヤロープ、PCストランド、PC鋼棒等の引張耐力に優れた各種のロープを含むものである。
また本例では締付手段32がボルト321とナット322である場合について示すが、これに限定されるものでなく、拘束板31の締付部312を締付け可能な公知の手段を適用できる。
【0016】
<ロ>拘束板
拘束板31は、矩形の板体を折曲加工して形成したもので、この板体の中央部を円形に折曲した拡張部311と、拡張部311終端から板体の先端にかけて平らに形成した締付部312、312とから形成する。
締付部312、312の開口間隔はロープ20の挿入作業性を考慮して、できるだけ広く確保することが望ましい。
【0017】
各締付部312、312には、横一列にボルト孔313を穿設する。
ボルト孔313の形成位置、すなわちボルト321の締結位置は、拘束板31の拘束効果を考慮すると拡張部311により近い位置が望ましい。
【0018】
拡張部311は、ロープ20の周面と面接触が可能な形状とする。
拘束板31を一枚ものの板体で形成したのは、締付部312、312をボルト321で締付けたとき、この締付力を拡張部311を通じてロープ20に均等な拘束力として作用させるためである。
したがって、拡張部311内側の周方向の長さは締付部312、312をボルト321で締付けたとき、ロープ20を拘束可能な寸法に設定するものとする。
【0019】
拘束板31の長手方向の長さやボルト321の設置本数は、ロープ20径やロープ20に作用する引張力に応じて適宜決定するものとする。
【0020】
拘束板31の素材は、引張度の高い各種金属板を使用できるが、ばね鋼で形成することが望ましい。
拘束板31を一枚ものの一般鋼板で形成した場合、ロープ20を均等な力で拘束できるものの、その拘束力はボルト321の締付力だけの要因で決まり、各ボルト321のトルク管理を厳密に行う必要がある。
拘束板31にばね鋼を用いれば、ボルト321の締付力に加えてばね鋼固有のばね力を利用できるので、ロープ20をより強固で弾力的に拘束することが可能となる。
また拘束板31にばね鋼を使用した場合には、各ボルト321の締付力に多少のバラツキがあっても、拘束板31のばね力がこのバラツキを緩和するため、ロープ20に対して安定した力で拘束することが可能となる。
【0021】
<ハ>間隔保持板(図2参照)
間隔保持板33は対峙する締付部312、312の間に介挿する部材であって、ロープ20を容易に収容するために締付部312、312の開口幅を広く確保するための部材である。
間隔保持板33の板厚の上限値は、ロープ20幅より小さく設定する。
【0022】
間隔保持板33は矩形を呈する剛性体で、締付部312のボルト孔313ピッチに併せて孔331又は長孔を穿設した板体である。長孔を穿設してある場合には、ロープ20径の変化にある程度対応することができる。
間隔保持板33は、ロープ20の周面に当接可能な寸法に形成する。この場合、間隔保持板33のロープ20との当接面332を窪み部状に形成するとよい。
【0023】
<ニ>掛止材(図3参照)
掛止材41はロープ20を略直交方向に挿通する板材で、拘束板31に当接して引張力を連結材42へ伝播する部材である。
掛止材41は、外周縁からロープ20を取り入れるためにその側方から中央付近まで開口して形成したスリット411と、スリット411の両側に形成した二つの孔412を備えている。
【0024】
二枚の掛止材41は、緩衝具30を組み付け終えたロープ20の両側から各スリット411を差し込むことで、互いのスリット411の開放部を閉鎖し合う状態で取り付けることができる。
なお、掛止材41はかならずしも上記のような構成や形状とする必要はなく、ロープ20を貫通して、拘束板31の一側に当接して掛止可能な構造であれば特に制約は受けない。
【0025】
<ホ>連結材
連結材42は、一端を掛止材41に接続し、他端を図外のアンカー等の反力源に接続して引張力を伝播する部材である。
連結材42は一本の棒体の中央を略U字形に折り曲げて形成しており、その両端部におねじを形成し、ナット43を取り付けられるようになっている。
なお、連結材42は引張力を伝播できる素材であれば、鋼材以外に鎖や各種ロープ材を使用できる。
【0026】
<ヘ>回転防止板(図4参照)
回転防止板50は連結材42と拘束板31の間に跨って配置して、相互にロープ周方向の回転を防止するための部材である。
【0027】
回転防止板50は板体であって、その板面には拘束板31の拡張部311外形寸法より大きい開口幅Lのスリット501と、先述した連結材42を挿通する二つの孔502、502を形成している。これらの二つの孔502、502は、スリット501の開口軸に対して対称に配置し、それぞれに挿通するロープ20および連結材42の軸芯が一直線上となるようにする。
また、回転防止板50はかならずしも備える必要はない。
【0028】
【作用】
つぎに本発明に係る緩衝装置の使用方法について説明する。
【0029】
<イ>緩衝具の組付け
ボルト321を組付ける前の拘束板31は、締付部312、312が開口しており、その開口から容易にロープ20を差し込み、ロープ20を拡張部311内に収容する。
【0030】
ロープ20の収容後、締付部312、312間に間隔保持板33を介挿して、拘束板31の対峙する締付部312、312のボルト孔313にボルト321を挿通し、ナット322を螺着してスパナやレンチ等の簡単な工具で締付けて、ロープ20の周面を所要の力で拘束する。
つまり、一対の締付部312、312を間隔保持板33に当接するように向けた締付力Fが、拘束板31の拡張部311の全体がロープ20を拘束する方向への力へと変位して、拡張部311の内周面がロープ20を当接して拘束する(図5参照)。
このように拘束板31の片側を締付ける操作だけで、ロープ20を均等に、かつ大きな力で拘束することができる。
また、間隔保持板33を介挿することで締付部312、312の離間距離を小さくし、締付量の減少による締付け負担を軽減する。
【0031】
所定の拘束力に達するまでボルト321を締付ける。
締付部312、312が間隔保持板33に当接したときに、ロープ20の拘束力が所定の値に達するように予め拘束板31を形成しておけば、面倒なボルト321の締付トルクの管理が不要となる。
このようにして、ロープ20の所定の位置に緩衝具30を組付ける。
【0032】
<ロ>掛止手段の配置
次に連結材42の屈曲部側をアンカー等の反力源に連結する。
緩衝具30に回転防止板50を外装すると共に、緩衝具30の把持位置より上流側のロープ20の側方から二枚の掛止材41、41を外装する。連結材42の両端を回転防止板50、掛止材41、41に挿通して、ナット43を組付ける。
また、掛止材41を一枚のみ使用するか、或いは三枚以上重合して用いてもよい。
【0033】
<ハ>緩衝作用
緩衝装置10の緩衝作用について説明する。
【0034】
ロープ20に作用した引張力は、ロープ20を拘束する拘束板31と掛止材41との当接(図3参照)によって、連結材42を介し反力源に伝播して支持される。
ロープ20に作用する引張力が、ロープ20を拘束する緩衝装置10の拘束力に基づく摩擦抵抗より大きくなると、ロープ20と緩衝装置10の間では摺動を開始する。
すなわち、ロープ20の周面に圧接する拘束板31の拡張部311との接触部の摩擦抵抗によりエネルギーが減衰される。
特にロープ20と拘束板31との接触面を、ロープ20の軸線方向に沿って広範囲に形成しているため、大きな摩擦抵抗面の確保によって極めて高い緩衝性能が得られる。
また、締付部312、312間に介在する間隔保持板33の当接面332もロープ20と面接触する摩擦力の発生要因となる。
【0035】
【発明の実施の形態2】
上記した実施の形態1の間隔保持板33を省略し、締付部312、312を直接締付けてもよい(図示せず)。
本例にあっては、構成部品の点数を削減できる利点がある。
【0036】
【発明の実施の形態3】
以上は一本の連結材42を用いる場合について示したが、複数の連結材42を並設して使用してもよい(図示せず)。
本例にあっては、掛止材41を介して伝播される各連結材42への力が等しくなるように、掛止材41上における各連結材42の貫通位置がロープ20を中心として対称となるようにする。
本例にあっては、巨大な引張力に対応するのに好適であることの他に、複数地点に分散させて設置した複数の反力源への接続性が良好となる等の利点がある。
【0037】
【発明の効果】
本発明は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>緩衝具の組立操作と緩衝装置の組立操作を共に簡単に行うことができ、作業環境の悪い現場での取扱性と組立性に優れる。
<ロ>緩衝装置を構成する拘束板を板材で形成できるため、従前の鋳鉄製のものと比較して小型軽量化と低コスト化が可能となる。
<ハ>折り返した拘束板の端部を締付けるだけで、各ロープを均等な力で拘束できると共に、ロープの長さ方向に沿った連続した接触面を確保できるので、高い減衰性能を発揮できる。
したがって、前記したように装置の小型軽量化が図れるだけでなく、緩衝性能の高性能化の両立を図ることができる。
<ニ>スパナやレンチ等の簡単な工具だけで緩衝装置をセットできて、組付けの作業性がよい。
<ホ>拘束板にばね鋼を用いると、ばね鋼固有のばね力を利用できるので、締付力のバラツキを緩和して、ロープを強固で弾力的に拘束することが可能となる。
さらに拘束力のバラツキがなくなり、安定した減衰性能を発揮できることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロープ用緩衝装置の斜視説明図。
【図2】ロープ用緩衝具の横断面図。
【図3】ロープへの掛止材の取り付け説明図。
【図4】図1におけるA−Aの断面図。
【図5】ロープの拘束原理の説明図。
【符号の説明】
10・・緩衝装置
20・・ロープ
30・・緩衝具
31・・拘束板
311・拡張部
312・締付部
32・・締付手段
33・・間隔保持板
40・・掛止手段
41・・掛止材
42・・連結材
50・・回転防止板
Claims (7)
- 引張力が作用する1本のロープを把持し、ロープとの間の摩擦抵抗により前記引張力を減衰するロープ用緩衝具であって、
板体の中央を折り返して1本のロープの周面と面接触させて収容可能に形成した拡張部を有する拘束板と、
前記拘束板を収縮方向に締付けて拡張部をロープに接面させる締付手段と、からなり、
拘束板へ作用させた前記締付手段の締付力が拡張部を通じてロープに均等な拘束力として作用させてロープを定着し、
前記拘束板の拡張部の拘束力に基づく摩擦抵抗により前記引張力を減衰することを特徴とする、
ロープ用緩衝具。 - 請求項1に記載するロープ用緩衝具であって、前記拘束板の締付部の間に間隔保持板を介挿したことを特徴とする、ロープ用緩衝具。
- 引張力が作用する1本のロープを把持し、ロープとの間の摩擦抵抗により前記引張力を減衰するロープ用緩衝装置であって、
板体の中央を折り返して1本のロープの周面と面接触させて収容可能に形成した拡張部を有する拘束板と、
前記拘束板を収縮方向に締付けて拡張部をロープに接面させる締付手段とを具備する緩衝具と、
一方を前記拘束板に接続すると共に、他方を反力源へ接続して前記引張力を支持する掛止手段と、からなり、
拘束板へ作用させた前記締付手段の締付力が拡張部を通じてロープに均等な拘束力として作用させてロープを定着し、
前記拘束板の拡張部の拘束力に基づく摩擦抵抗により前記引張力を減衰することを特徴とする、
ロープ用緩衝装置。 - 請求項3に記載するロープ用緩衝装置であって、掛止手段がロープを挿通するスリットを備えた複数の掛止材と、これらの掛止材に貫通して掛止するU字形の連結材とから構成したことを特徴とする、ロープ用緩衝装置。
- 請求項3又は請求項4に記載するロープ用緩衝装置であって、前記拘束板の締付部の間に間隔保持板を介挿したことを特徴とする、ロープ用緩衝装置。
- 請求項3乃至請求項5のいずれかに記載するロープ用緩衝装置であって、拘束板をばね鋼板で形成したことを特徴とする、ロープ用緩衝装置。
- 請求項4乃至請求項6のいずれかに記載するロープ用緩衝装置であって、前記連結材と前記拘束板側面とに跨って回転防止板を追加して設けたことを特徴とする、ロープ用緩衝装置。
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