JP3821981B2 - 未変性ラクトフェリン入り殺菌乳及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌した飲料の原料液(豆乳の原料液を除く)に、加熱殺菌され、かつ未変性のラクトフェリンを混合した未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料、及びその製造法に関する。詳しくは、本発明は、加熱殺菌しているにもかかわらず、含有されるラクトフェリンが熱により失活していない殺菌飲料、及びその製造法に関する。
【0002】
本発明において、飲料は、豆乳を除き、通常の飲料を意味しており、乳の他、果実飲料、乳性飲料、野菜飲料、コ−ヒ−、各種の茶類、ココア等を例示することができる。
【0003】
【従来の技術】
一般に、飲料は、種々のものが市販されているが、このような飲料は、食品としての保存性及び安全性を確保するために、通常は厳密に加熱殺菌の処理を施されており、容器に密封された状態で、市場に流通している。
【0004】
しかしながら、殺菌した未変性のラクトフェリンを含有する殺菌飲料は、知られておらず、文献も皆無である。
【0005】
ラクトフェリンは、生体内では、涙、唾液、末梢血、乳等に含まれている鉄結合性蛋白質であり、有害細菌に対する抗菌作用[ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(Journal of Dairy Science)、第67巻、第3ページ、1984年]、腸管からの鉄の吸収促進作用[ジャーナル・オブ・ペディアトリック・ガストロエンテロロジー・アンド・ニュートリション(Journal of Paediatric Gastroenterlogy and Nutition)、第2巻、第693ページ、1983年]、免疫賦活作用(山内邦男、今村経明、守田哲朗編、「牛乳成分の特性と健康」、第101ページの表IV−7、光生館、1993年)、細胞増殖作用[島村ら、「ラクトフェリンの構造及び作用」(Lactoferrin stracture and Function)、第1回国際ラクトフェリン・シンポジウム、ハワイ、1992年]、抗炎症作用[ビオキミカ・エト・ビオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta) 、第715巻、第116ページ、1982年]、ビフィズス菌増殖効果[特公平7−79684公報、日本小児科学学会雑誌、第87巻、第6号、第1000〜1013ページ、1983年、ペディアトリック・リサーチ(Pediatric Research)、第29巻、第2号、第208〜213ページ、1991年]等、種々の生理活性を有していることが報告されている。
【0006】
また、ラクトフェリンは種々の食品、加工食品、医薬品等に配合され、近年ラクトフェリン入りの乳幼児用ミルクも発売されている。
【0007】
従来、ラクトフェリンは中性において熱に不安定であり、62.5℃で30分間の加熱によりほぼ失活し、70℃で15分間の加熱により完全に失活することが知られており[ジャーナル・オブ・ペディアトリックス(Journal of Pediatrics) 、第90巻、第29ページ、1977年]、ラクトフェリン溶液を予め酸によりpHを1.0〜6.5に調整することによりラクトフェリンの熱安定性が増加し、加熱の最高温度が、130℃で1〜2分の処理でラクトフェリンの未変性率が60%以上であることが開示されている(特許第2688098号)。
【0008】
しかしながら、消費者に飲料を安全に提供するためには、原料由来の細菌を殺滅する必要があり、例えば、130℃で2秒以上等の条件で加熱処理される。
【0009】
また、長期保存を目的とする場合は、一般細菌の他、耐熱性芽胞菌を完全に殺滅する必要があるが、100〜130℃の温度での加熱処理では高温菌は耐熱性胞子を形成するために完全に死滅させることができず、保存中に耐熱性胞子が発芽し、増殖する場合もある。
【0010】
従って、長期保存可能な殺菌飲料を製造するためには、飲料中の耐熱性芽胞菌を死滅させ、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium boturinum) を完全に殺菌できる最低殺菌条件であるF0 =3.1(Z=18とする)以上を満たす加熱条件で殺菌する必要がある。
【0011】
尚、F0 は、加熱殺菌の致死値であり、一定温度で一定数の細菌を死滅させるのに要する加熱時間(分)を意味し、Zは微生物の熱死滅時間を1/10に短縮させるのに要する華氏の温度増加量であり、この値が大きい程微生物の耐熱性が高いことを意味する(乳業技術講座編集委員会編、「乳業技術講座第1巻 牛乳」、第250〜252ページ、朝倉書店、昭和38年)。
【0012】
いずれにせよ、以上のように殺菌を目的として加熱処理を行った場合は、熱によってラクトフェリンの活性は失われるのである。
【0013】
また、ラクトフェリン分解物は、ラクトフェリンと同様にビフィズス菌増殖促進効果、有害細菌の静菌及び殺菌効果を有することも知られている(例えば、日本栄養・食糧学会誌、第42巻、第1号、第13〜19ページ、1989年、特開平5−320068号公報等)。
【0014】
本発明者らは、先に未変性ラクトフェリン入り殺菌豆乳及びその製造法を特許出願した(特願平11−17519号。以下先願と記載する。)が、先願の技術が、豆乳以外の飲料にも適用し得ることを確認し、本発明を特許出願するものである。
【0015】
一方、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号、以下、乳等省令と記載する。)に規定されるところの「乳等」も、広義の意味で飲料又は飲料原料の一種として流通している場合がある。
【0016】
前記のとおりラクトフェリンは、乳等に含まれている鉄結合性蛋白質であるから、飲料として流通する「乳等」(尚、本発明においては、飲料又は飲料原料として流通する「乳等」を乳と記載するものとする。)においても、消費者がこれを飲用した場合には、「乳等」に含有されるラクトフェリンの各種の生理効果が当然に期待されるところである。このような観点から、乳に含有されるラクトフェリンに関しても従来から研究が続けられており、例えば、特開昭63−152400号公報には、ホエ−又は脱脂乳よりラクトフェリンを分離する技術が開示されている。
【0017】
しかしながら、乳においても、前記のとおり飲料として流通させる場合には厳密な加熱殺菌処理を要することは他の飲料と同様であり、飲料製品として市場に流通する段階では、含有されているラクトフェリンの活性は加熱によって失われているのである。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術に鑑みて、本発明者らは鋭意研究の結果、乳においては、一端原料乳よりラクトフェリン溶液を分離し、分離したラクトフェリン溶液のみを、ラクトフェリンを変性させない特別な条件で加熱殺菌し、また他の成分は常法により加熱殺菌し、各々を殺菌後に再度混合することにより、未変性ラクトフェリンを含有しているにもかかわらず、実質的に成分を調整しない加熱殺菌乳が得られることを見い出した。
【0019】
また、これに限ることなく、一般の飲料の場合においては、殺菌処理した飲料原料液に、別途殺菌処理した未変性のラクトフェリン溶液を無菌的に添加することによりラクトフェリンの生理活性を損なうこと無く、0.02〜5.0%(重量)の割合で未変性のラクトフェリンを含有する殺菌飲料、及びその殺菌飲料を製造し得ることを見い出し、本発明を完成した。
【0020】
本発明は、各種生理効果を有する未変性のラクトフェリンを添加すること、又はラクトフェリンの加熱処理中の失活を防止することにより、飲料の機能性を向上させることを目的としており、ラクトフェリンの有する生理効果をそのまま保持した加熱殺菌乳からなる未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料、ラクトフェリンの有するビフィズス菌増殖効果をそのまま保持した未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料、及びラクトフェリンに加えてラクチュロース等の有するビフィズス増殖効果の相乗効果により、腸内フロ−ラの改善をより一層高める未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第一の発明は、殺菌前にラクトフェリンを分離して殺菌した乳に、前記殺菌前の乳より分離したラクトフェリンを加熱殺菌した未変性のラクトフェリンを再度混合した未変性ラクトフェリン入り殺菌乳、である。また、本発明の第一の発明は、加熱殺菌されたラクトフェリンが、80〜100%(重量)の割合で活性を残存していること、を望ましい態様としている。
【0022】
前記課題を解決する本発明の第二の発明は、次のa)〜e)の工程、
a)殺菌前の乳からクリ−ムを分離し、脱脂乳を得る工程、
b)得られた脱脂乳よりラクトフェリンを分離する工程、
c)分離したラクトフェリンを酸性下で加熱殺菌する工程、
d)前記a)で分離したクリ−ム及び前記b)のラクトフェリン分離後の脱脂乳を加熱殺菌する工程、及び
e)加熱殺菌されたクリ−ム及び脱脂乳と、前記c)で加熱殺菌された未変性のラクトフェリンとを、混合後の成分が最初の乳と同一の成分になるように再度混合し、混合した殺菌乳を未変性ラクトフェリン入り殺菌乳として調製する工程、
からなることを特徴とする未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料の製造法、である。
【0024】
また、前記第二の発明は、加熱殺菌したラクトフェリンが、80〜100%(重量)の割合で活性を残存していること、ラクトフェリンの加熱殺菌、および前記a)で分離したクリ−ム及び前記b)のラクトフェリン分離後の脱脂乳の加熱殺菌が、150〜155℃の温度で2〜5秒間加熱して行われること、及び、前記c)工程において、分離したラクトフェリンがpH2.0〜5.5の酸性下で加熱殺菌されること、を望ましい態様としている。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に本発明について詳細に説明する。
【0026】
本発明の第一の発明は、殺菌した飲料の原料液(豆乳の原料液を除く)に、加熱殺菌され、かつ未変性のラクトフェリンを混合した未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料、である。
【0027】
本発明の飲料は、飲料の原料を殺菌した後に、原料とは別に殺菌したラクトフェリンを混合することによって得ることができる。この場合、ラクトフェリンを殺菌する方法として、例えば、前記の特許第2688098号の公報に記載された技術を採用することにより、ラクトフェリンを変性させることなく殺菌処理することができる。
【0028】
次に本発明の第一の発明の望ましい態様について説明するが、望ましい態様の理解を容易にするため、その製造方法である本発明の第二の発明及び第三の発明について、最初に説明し、次いで、再度第一の発明について説明する。
【0029】
本発明の第二の発明は、飲料として専ら乳を対象としている製造方法である。この場合の出発原料は乳であるが、ここに乳とは、乳等省令で規格されている乳等のうち、牛乳、特別牛乳、殺菌やぎ乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳等、専ら飲用又は飲用原料のために供するものを意味する。
【0030】
最初に、乳からクリ−ムを分離し、脱脂乳を得る。クリ−ムを分離する方法は、公知の方法であり、通常の遠心式分離装置(クリ−ムセパレタ−等)を使用することができる。
【0031】
次に、クリ−ムを分離した後の脱脂乳から、ラクトフェリンを分離する。ラクトフェリンを分離する方法としては、例えば、特開昭63−152400号公報に開示された方法を使用することができる。
【0032】
即ち、最初に、カルボキシルメチル基を有し、かつヘモグロビン吸着能が3.5g/100ml以上である弱酸性陽イオン交換体に、0〜60℃、好ましくは0〜10℃の温度において脱脂乳を接触させて吸着処理し、吸着処理した弱酸性陽イオン交換体を水洗し、水洗した弱酸性陽イオン交換体を塩類溶液(好ましくは塩類の水溶液)で脱離処理することによってラクトフェリンを分離することができる。
【0033】
この場合は、弱酸性陽イオン交換体は、体積変化率が1.5以下であること(ただし、体積変化率は、Na形における該交換体を水で膨潤させたときのベッド・ボリュ−ムを、該交換体をイオン強度0.5以下の塩化ナトリウム溶液と平衡化したときのベッド・ボリュ−ムで除した値)が望ましく、また、塩類溶液は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びこれらの混合物からなる群より選択された塩類溶液であることが望ましい。
【0034】
また、前記脱離処理工程は、弱酸性陽イオン交換体が塩類の相対的に低濃度の水溶液によって処理されイオン交換体から脱離する成分を除去する第1の脱離処理工程、及び弱酸性陽イオン交換体が塩類の相対的に高濃度の水溶液によって処理されイオン交換体から脱離する成分を除去する第2の脱離処理工程からなり、ラクトフェリンを、回収された全蛋白質中98%以上の純度で得ることが望ましい。また、この場合、相対的に低濃度の水溶液の濃度が0.4〜2.5重量%であり、相対的に高濃度の水溶液の濃度が1.5〜12重量%であることが好ましい。
【0035】
このように、特開昭63−152400号公報に開示された技術を使用すれば、ラクトフェリンを分離した後の脱脂乳が何ら損なわれることがなく、しかも大量に処理することができる利点がある。
【0036】
以上のように分離したラクトフェリンは、変性しない方法で加熱殺菌処理するが、このような方法としては、特許第2688098号公報に開示された技術を採用することが望ましい。即ち、ラクトフェリン溶液のpHを1.0以上6.5以下、好ましくはpH2.0〜5.5の範囲の酸性に調整し、60℃以上の温度で加熱処理する。
【0037】
pH調整に使用する酸は、乳酸、塩酸、酢酸、クエン酸等を例示することができるが、乳酸が風味の点から特に望ましい。
【0038】
pHを調整したラクトフェリン溶液を、公知の方法により、例えば150〜155℃の温度で2〜5秒間加熱して殺菌する。後記試験例から明らかなとおり、pHを前記の範囲に調整することにより、加熱殺菌後のラクトフェリンは、80%以上が未変性のまま残存し、生理的活性が維持されているのである。
【0039】
一方、最初の工程において乳から分離したクリ−ムと、ラクトフェリンを分離した後の脱脂乳は、常法により加熱殺菌する。この場合、クリ−ムと脱脂乳とを再度混合した後に加熱殺菌することが好ましいが、各々別個に殺菌することも可能である。
【0040】
最後に、加熱殺菌後の未変性のラクトフェリンを、クリ−ム及び脱脂乳に混合する。この操作は無菌状態で行うことが望ましい。また、混合後の成分が、最初の原料乳と同一の成分になるように、混合比率を考慮することが望ましい。混合後は、公知の方法により容器に充填し、密封し、最終製品を得ることができる。
【0041】
尚、飲料が殺菌脱脂乳である場合には、分離したクリ−ムの加熱処理及び混合は不要であり、加熱殺菌された脱脂乳と、加熱殺菌された未変性のラクトフェリンとのみを混合すれば良い。即ち、前記のように、分離したクリ−ム及びラクトフェリン分離後の脱脂乳を加熱殺菌し、加熱殺菌されたクリ−ム及び脱脂乳に、前記脱脂乳から分離され加熱殺菌された未変性のラクトフェリンを混合する態様の他に、ラクトフェリン分離後の脱脂乳のみを加熱殺菌し、加熱殺菌された脱脂乳のみに、前記脱脂乳から分離され加熱殺菌された未変性のラクトフェリンを混合する態様も採用することができるのである。
【0042】
以上のような各工程を経て得られた殺菌乳は、殺菌前の乳から実質的に成分無調整の状態でありながら、ラクトフェリンが失活していないものであり、換言すれば、本発明の第二の発明の製造方法によって、未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料の望ましい一態様である未変性ラクトフェリン入り殺菌乳を得ることができるのである。
【0043】
尚、補足すれば、脱脂乳から分離したラクトフェリンに乳酸を添加してpH調整する場合には、このような乳酸は、原料の脱脂乳にスタ−タ−を加えて発酵させて得られたものを使用することができる。即ち、前記ラクトフェリンを分離する前又は分離した後の脱脂乳を殺菌冷却し、のちスタ−タ−を添加して発酵させて発酵乳を調製し、得られた発酵乳の乳酸を使用するのである。このような乳酸は、原料乳由来のものであるため、最終的に得られた殺菌乳は、完全に原料乳由来の成分のみで構成されることになり、より好ましいのである。
【0044】
次に、本発明の第三の発明を説明する。
【0045】
本発明の第三の発明の方法における飲料は、乳に限られるものではなく、原料液は通常の飲料を製造することができる原料液である。
【0046】
例えば、果実飲料であれば、原水に、解凍した冷凍濃縮果汁、糖類、酸味料、香料、着色料、その他の原料を混合して飲料の原料液を調製することができる。また、乳性飲料、特に乳酸菌飲料であれば、脱脂乳を殺菌冷却し、のちスタ−タ−を添加して発酵させ、発酵乳を調製し、飲料の原料液を製造することができる。また、コ−ヒ−飲料であれば、コ−ヒ−注出液に、液糖、粉乳溶解液を混合撹拌することにより、飲料の原料液を調製することができる。尚、飲料の原料液として、乳を採用しても良いことはいうまでもない。
【0047】
本発明の方法においては、飲料の原料液がアロエ・エキス、ラクチュロース及びイノシトールからなる群より選択される1種又は2種以上の物質を含有していることが特徴である。
【0048】
アロエ・エキスは、例えばケ−プアロエ、アロエベラ、キダチアロエ等のアロエ植物の葉肉、又は葉を圧搾して得られる「アロエ」又は「アロエゲル」と呼ばれるもの、これらを乾燥粉砕した粉末状の「アロエ末」、精製した「アロエエキス」、「アロエ抽出物」等、アロエ植物由来の有効成分をもたらす全ての原料を包括するものであり、その形状、加工の程度又は種類は限定されない。しかしながら、本発明においては、医薬品原料、食品原料等の目的で市販されている原料を用いることが望ましく、アロエ果汁を濃縮した液を採用することが推奨される。
【0049】
尚、以下の記載においては、前記アロエ・エキスとしてアロエ果汁の濃縮液を採用した場合には、「アロエ・エキス」の用語の後に濃縮倍率を併記して表現するものとする。即ち、単に「アロエ・エキス」と表記した場合には、前記のとおり全てのアロエ関係の原料を包括する用語であるが、「アロエ・エキス(5倍濃縮)」と表記した場合は、アロエ果汁を濃縮した液(5倍に濃縮した液)を意味するものとする。後者の表記方法は、後記する実施例において用いるものである。
【0050】
本発明においては、以上のようなアロエ・エキスを、0.5〜20.0重量%の範囲で、飲料の原料液に含有させることが望ましい。
【0051】
ラクチュロース(4-O-β-D−ガラクトピラノシル−D-フラクトフラノース)は、ビフィズス菌増殖促進因子として公知の物質であり、乳糖にロブリー・ドブリュイン転位を行って製造される天然に存在しない二糖類である。このラクチュロースは、水に対する溶解度が高いために、安定な粉末を得るのが困難であり、通常シロップ状で利用されている。
【0052】
通常、ラクチュロース・シロップは、水分の他、45〜55%のラクチュロース、2〜8%のガラクトース、2〜5%の乳糖、および2〜8%のその他糖類を含んでおり、固形分中のラクチュロース純度は70〜90%である。尚、ラクチュロースの製品としては、繁雑な工程で粉末化、または結晶化した製品も市販されている。
【0053】
本発明においては、このようなラクチュロースは、0.5〜4.0重量%の範囲で、飲料の原料液に含有させることが望ましい。
【0054】
イノシトールは、米糠に多く含まれるビタミンB群の一種であり、世界のイノシト−ルの製造原料の大部分は米糠である。イノシト−ルは、1850年に穀類より分離され、9種類の立方異性体が認められているが、動植物界に存在して生理活性を示すのはミオイノシト−ルだけである。ミオイノシト−ルは、生体内では、遊離状で、脳、脊髄、心臓、腎臓、甲状腺、眼球、筋肉、睾丸等に広く分布し、各組織の細胞内で重要な役割をなしている。
【0055】
イノシト−ルは、ショ糖の約50%の甘味を有し、熱、光、酸、アルカリに安定であり、従来から、成長促進、脂肪肝及び肝硬変の予防、動脈硬化予防、老化防止等の薬理効果が期待され、健康食品としての将来性が約束されている(以上のイノシト−ルに関する記載は、ジャパンフ−ドサイエンス、第24巻、第3号、73〜80ペ−ジ、1985年による。)。
【0056】
本発明においては、このようなイノシト−ルを、0.001〜1.0重量%の範囲で、飲料の原料液に含有させることが望ましい。
【0057】
以上説明したとおり、本発明においては、最初に、アロエ・エキス、ラクチュロース及びイノシトールからなる群より1種又は2種以上の物質を選択し、飲料の原料液に含有させ、調製するのである。
【0058】
調製された飲料の原料液を公知の方法により殺菌(例えば、UHT殺菌法等。)し、例えば、均質機等により均質化する。
【0059】
本発明の第三の発明におけるラクトフェリンは、市販品であってもよく、牛乳から公知の方法(例えば、特開昭63−152400号公報記載の方法等。)により調製して使用することもできる。ラクトフェリンは、通常牛乳から分離されたものが安価であるが、牛乳由来のラクトフェリンに限定されるものではない。ラクトフェリンの飲料への添加量は、後記する試験例から明らかなとおり、飲料に対して0.02%以上であり、特に1.0〜5.0%の範囲が望ましい。
【0060】
本発明の第三の発明におけるラクトフェリン分解物は、市販品であってもよく、ウシラクトフェリンから公知の方法(例えば、特開平5−320068号公報記載の方法等。)により調製して使用することもできる。ラクトフェリン分解物は、通常牛乳から分離されたラクトフェリンから得られるものが安価であるが、本発明においては、牛乳由来のラクトフェリン分解物に限定されるものではない。
【0061】
本発明の第三の発明においては、このラクトフェリン分解物をも、ラクトフェリンと併用して飲料に添加することができる。ラクトフェリン分解物の添加量は、前記ラクトフェリンの添加割合の範囲内であることが望ましい。具体的には、未変性ラクトフェリンとラクトフェリン分解物を併用添加する場合、それらの合計の添加量が、0.02%以上、望ましくは1.0〜5.0%の範囲である。
【0062】
ラクトフェリン溶液は次のとおり調製される。即ち、ラクトフェリン単独、又はラクトフェリン及びラクトフェリン分解物を、水に10〜25%の濃度で溶解し、酸を添加してpHを2.0〜5.5の範囲に調整する。pH調整に使用する酸は、乳酸、塩酸、酢酸、クエン酸等を例示することができるが、乳酸が風味の点から特に望ましい。
【0063】
pHを調整したラクトフェリン液を、公知の方法により、例えば150〜155℃の温度で2〜5秒間加熱して殺菌する。後記試験例から明らかなとおり、pHを前記の範囲に調整することにより、加熱殺菌後のラクトフェリンは、80%以上が未変性のまま残存する。従って、本発明の方法においては、加熱殺菌したにもかかわらず、ラクトフェリンの生理的活性は維持されているのである。
【0064】
次に、前記殺菌飲料に、加熱殺菌した未変性ラクトフェリン溶液の所定量を添加し、均一に混合し、以下公知の方法により容器に無菌的に充填し、密封し、最終製品を得る。
【0065】
尚、未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料には、必要に応じてビタミン、果汁、香料等を添加することもできる。添加するビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB1 、ビタミンB2 、ビタミンB6 、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビタミンK、β−カロテン等を例示することができ、また、これらの混合物を適宜使用することもできる。また、果汁としては、リンゴ果汁、ミカン果汁、バナナ果汁等を適宜使用することができる。
【0066】
更に、香料としては、バニラフレーバー、ヨーグルトフレーバー等を適宜使用することができる。
【0067】
本発明の第一の発明は、以上のような製造方法によって製造されることを好ましい態様とする未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料である。
【0068】
本発明の未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料は、少なくとも食品衛生法の規定に基づき加熱殺菌されているので、保存、輸送が容易であり、かつ、直ちに飲用に供することができ、後記試験例から明らかなとおり、長期間の保存によってもラクトフェリンの凝集沈殿の生成が生成せず、製造直後と変わらない良好な品質を維持している。
【0069】
また、本発明の未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料は、後記試験例から明らかなとおり、ラクトフェリンの有するビフィズス菌増殖効果と飲料中に含有されているビフィズス増殖効果との相乗効果により、腸内フロ−ラの改善をより一層高める優れた効果を有している。また、この効果は、ラクトフェリン分解物を併用することにより、一層顕著に発揮されるのである。
【0070】
更に、本発明の未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料は、乳の分野に適用することが可能であるが、この場合のラクトフェリンは、原料液である乳に元来含有されているラクトフェリンを未変性の状態で殺菌したものとすることができる。
【0071】
即ち、原料液が乳であり、殺菌前の乳よりラクトフェリンを分離して別途加熱殺菌し、加熱殺菌されかつ未変性のラクトフェリンを、前記乳を殺菌した後に、再度混合することによって、殺菌前の乳と実質的に同一の成分組成を有することになり、換言すればほぼ成分無調整の殺菌乳となるのである。
【0072】
尚、以上説明した本発明においては、加熱殺菌の条件は、耐熱性芽胞菌を完全に殺滅して長期保存することができる条件、例えば、F0 =3.1(Z=18とする)以上を満たす加熱条件、具体的には150〜155℃の温度で2〜5秒間の条件等であることが望ましい。このように長期保存可能な殺菌飲料に本発明を適用すれば、本発明の効果を最大限に享受することができるのである。
【0073】
次に、試験例を示して本発明について詳細に説明する。
【0074】
試験例1
この試験は、加熱によるラクトフェリン活性の残存を調べるために行った。
【0075】
1)試料の調製
市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ社製)を1%の濃度で精製水に溶解し、90%の第一乳酸(ナカライテスク社製)の10%溶液を添加し、pHを表1に示す値に調整した。
【0076】
2)試験方法
前記pH調整ラクトフェリン溶液を二等分し、一方を加熱せず、他方を直接加熱式殺菌機(森永乳業社製)により155℃、2秒間加熱処理(F0 =81、Z=18とする)し、のち室温に冷却した。
室温に冷却した各試料について、ロケット法[アナリティカル・バイオケミストリー(Analitycal Biochemistry) 、第15巻、第45〜52ページ、1966年]によりラクトフェリン残存量を測定し、各pHの未加熱試料のラクトフェリン残存量に対する各加熱試料のラクトフェリン残存量の比率から残存率(%)を算出した。
【0077】
3)試験結果
この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、pH2.0〜5.5の範囲に調整したラクトフェリン溶解液は、155℃、2秒間加熱処理を行った場合、残存率は80%以上であった。
【0078】
この試験結果から、pH2.0〜5.5のラクトフェリン溶液を高温で加熱しても、高い割合でラクトフェリンの活性が残存すること、即ち、未変性のラクトフェリンが存在することが判明した。
【0079】
尚、ラクトフェリン、ラクトフェリンの濃度、pH、及び加熱温度を変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0080】
【表1】
【0081】
試験例2
この試験は、本発明の未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料の効果を調べるために行った。
【0082】
1)試料の調製
▲1▼投与飼料の調製
実施例1と同一の方法により未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料を調製した。
▲2▼試験動物
田中の方法(治療学、第14巻、第5号、第594〜597ページ、1985年)により、新生児の初期感染時期及び未熟児の腸内フロ−ラに近似した異常な腸内フロ−ラを安定して保有するマウスを作成した。
【0083】
2)試験方法
前記の方法により作成した5週齢のSPFマウス(SLC)Balb/c雌10匹を、5匹ずつ2群に分けて糞食防止ネットをいれたケージに入れ、1群(対照)を通常の固形食で1週間飼育し、次に牛乳のみを自由摂取させて1週間飼育した。他の1群を通常の常時固形食で1週間飼育し、次に前記未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料のみを自由摂取させて1週間飼育した。尚、両群とも水を自由に摂取させた。
牛乳及び未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料を投与後、1、3、5及び7日目の各マウスの新鮮糞便を経時的に採取し、光岡の方法(「腸内細菌の世界」、叢文社、1980年。以下に常法と記載する。)により糞便中の有害細菌数を測定し、各群の平均値を算出して試験した。
【0084】
3)試験結果
その結果、各試料投与後の経時的な糞便中のエンテロバクテリアッセ−、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、及びクロストリジウムの有害細菌数は、対照群では、9.0±0.2(第1日目)、8.2±0.2(第3日目)、8.1±0.2(第5日目)、9.8±0.9(第7日目。検出率60%)であった。
【0085】
これに対して、未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料投与群では、それぞれ対数値で6.2±0.2(第1日目)、6.1±0.2(第3日目)、5.2±0.3(第5日目)、7.0(第7日目。検出限界)以下であった。
【0086】
また、糞便中のこれら有害細菌数は、飼育条件を変更しない限り数週間にわたりほぼ安定に維持されていた。これらの結果から、本発明の未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料により飼育したマウスの有害細菌数は、牛乳で飼育したマウスのそれと比較して100〜1000分の1以下に低減し、倍以上多い異常な腸内フロ−ラを安定して長期間保有するマウスを作成することが可能となった。
【0087】
試験例3
この試験は、未変性ラクトフェリンの添加量による効果を調べるために行った。
【0088】
1)試料の調製
ウシラクトフェリンを0、0.02、0.04、0.06、0.1、0.5、1.0、2.0、5.0、及び7.0%の割合で飲料に添加したことを除き、実施例1と同一の方法により10種類の試料を調製した。
【0089】
2)試験方法
前記試験例2と同一の方法により作成したマウス50匹を、5匹ずつ10群に分け、試験例2と同一の方法により試験を行った。
【0090】
3)試験結果
この試験の結果、0.02%以上の未変性ラクトフェリン添加試料の投与によって、糞便中の有害細菌数は低下し、投与3日以降安定して低い水準に維持された。この効果は、未変性ラクトフェリンの添加量が多くなるほど顕著になった。また、1.0〜5.0%の未変性ラクトフェリン添加試料投与群の糞便中のクロストリジウムの細菌数は検出限界以下に低下し、7.0%未変性ラクトフェリン添加試料投与群では、5.0%の未変性ラクトフェリン添加試料投与群との差異が認められなかった。
【0091】
この結果から、0.02%以上、望ましくは1.0〜5.0%の未変性ラクトフェリン添加により、異常な腸内フロ−ラを保有するマウスの糞便中の有害細菌数を短期間に低下させ、異常な腸内フロ−ラを改善する作用があることが判明した。尚、ラクトフェリンの種類及び飲料の製造法を変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0092】
試験例4
この試験は、ラクトフェリン分解物併用効果を調べるために行った。
【0093】
1)試料の調製
飲料中のラクトフェリン含量及びラクトフェリン分解物含量を、それぞれ1%に調整したことを除き、実施例2と同一の方法により、未変性ラクトフェリン及びラクトフェリン分解物を添加した殺菌飲料を調製した。尚、ラクトフェリン及びラクトフェリン分解物を添加しないことを除き、実施例2と同一の方法により対照試料を調製した。
【0094】
2)試験方法
殺菌飲料により2週間飼育したことを除き、試験例2と同一の方法により試験を行った。
【0095】
3)試験結果
この試験の結果は表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、1%の未変性ラクトフェリン及び1%ラクトフェリン分解物を添加した殺菌飲料は、未添加の殺菌飲料と比較して、糞便中の有害細菌の低下が顕著であった。この結果から、ラクトフェリン分解物の併用は、良好であることが判明した。
【0096】
尚、ラクトフェリン分解物の種類を変更して同様の試験を行ったが、腸内フロ−ラを改善する同様の作用があることが判明した。
【0097】
【表2】
【0098】
参考例
ラクトフェリン分解物を次のとおり調製した。市販のラクトフェリン(ベルギ−のオレオフィナ社製)50gを5%の濃度で精製水に溶解し、1モルの塩酸を添加してpHを3に調整した。次いでこの溶液を70℃の温度で20分間加熱し、加水分解し、のち1モル苛性ソ−ダ溶液でpHを7に調整し、凍結乾燥し、分解率が20%のラクトフェリン分解物20gを得た。
【0099】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
【実施例】
実施例1
次に示す配合の白ぶどう果汁、アロエ・エキス、ラクチュロースを含有する清涼飲料の原料液を作成し、110℃、30秒間殺菌処理し、約20℃に冷却し、無菌タンクに貯蔵した。
配合
砂糖混合異性化糖 11.12(kg)
白ぶどう果汁(6倍濃縮) 1.67
アロエ・エキス(5倍濃縮) 1.40
脱脂粉乳 3.00
クエン酸 0.21
ラクチュロース 3.00
香料 0.10
溶解水 59.50
【0101】
これとは別に、14kgの常温水に、ウシラクトフェリン(森永乳業社製。ラクトフェリン含量95%)2kgを添加し、TKホモミクサー(特殊機化工業社製)を用いて溶解させ、ラクトフェリン液を調製し、このラクトフェリン液に第一乳酸(ナカライテスク社製。純度90%)を添加してpHを4.0に調整したのち水を添加して総量20kgに調整し、10%ラクトフェリン液を得た。
【0102】
ラクトフェリン液をスチ−ムインジェクション式殺菌機(森永乳業社製)により155℃で2秒間殺菌処理し、均質機(三丸機械工業社製)を使用して1段目20MPa、2段目2MPaの圧力で無菌的に均質化処理し、前記、無菌タンクに貯蔵した殺菌液と混合し、2%の未変性ウシラクトフェリンを含有する殺菌清涼飲料、約100kgを得た。
【0103】
外層から紙、アルミ箔、ポリエチレンのラミネート材より構成された容器(テトラパック社製)に、前記未変性ウシラクトフェリン入り殺菌清涼飲料をアセプティック包装機械(テトラパック社製)を使用して200mlずつ無菌的に充填し、未変性ウシラクトフェリン入り殺菌清涼飲料400個を製造した。
【0104】
得られた未変性ウシラクトフェリン入り殺菌飲料は、未変性のウシラクトフェリンを1.9%含有し、細菌汚染もなく、室温で6か月間保存後においても沈殿の生成が無く、良好な状態を維持していた。
【0105】
実施例2
次に示す配合の白ぶどう果汁、アロエ・エキス、ラクチュロース、イノシトールを含有する清涼飲料の原料液を調製し、110℃、30秒間殺菌処理し、約10℃に冷却し、無菌タンクに貯蔵した。
配合
砂糖混合異性化糖 11.12(kg)
白ぶどう果汁(6倍濃縮) 1.67
アロエ・エキス(5倍濃縮) 1.40
クエン酸 0.21
ラクチュロース 3.00
香料 0.10
イノシト−ル 0.01
溶解水 62.49
【0106】
これとは別に、14kgの常温水に、ウシラクトフェリン(森永乳業社製。ラクトフェリン含量95%)1kg、及び前記参考例と同一の方法により調製したラクトフェリン分解物1kgを各々添加し、TKホモミクサー(特殊機化工業社製)を用いて溶解させ、ラクトフェリン液を調製し、このラクトフェリン液に第一乳酸(ナカライテスク社製。純度90%)を添加してpHを4.0に調整し、のち水を添加して総量20kgに調整し、10%ラクトフェリン液を得た。
【0107】
ラクトフェリン液をスチ−ムインジェクション式殺菌機(森永乳業社製)により155℃で2秒間殺菌処理し、均質機(三丸機械工業社製)を使用して1段目20MPa、2段目2MPaの圧力で無菌的に均質化処理した。これを前記殺菌原料液に添加し、1%の未変性ウシラクトフェリン及び1%のラクトフェリン分解物を含有する清涼飲料約100kgを調製した。
【0108】
この1%の未変性ウシラクトフェリン及び1%のラクトフェリン分解物を含有する清涼飲料を500mlPET樹脂ボトル(吉野工業所製)にホット充填し、40℃以下に冷却し未変性ウシラクトフェリン入り殺菌清涼飲料200個を製造した。
【0109】
得られた未変性ウシラクトフェリン入り殺菌飲料は、未変性のウシラクトフェリンを0.8%、未変性のラクトフェリン分解物を0.9%含有し、細菌汚染もなく、室温で6か月間保存後においても沈殿の生成が無く、良好な状態を維持していた。
【0110】
実施例3
1)原料液の調製
原料乳を、ディスク型クリ−ムセパレ−タ−に通液し、脱脂乳及びクリ−ムを調製した。
【0111】
2)ラクトフェリンの分離
イオン交換基としてカルボキシメチル基を有し、ヘモグロビン吸着能力が、4.6g/100ml、及び体積変化が1.0であるCM−トヨパ−ル650(東洋ソ−ダ製)500mlを内径10cmのカラムに充填し、10%食塩水を通液した後水洗してNa型のイオン交換体を調製した。
続いて前記脱脂乳を、温度4℃で4l/hの流速で前記イオン交換体に通液した。通過後の脱脂乳は、外観、風味ともに変化は認められなかった。
脱脂乳通過後には、カラムに水を通液して水洗し、10%食塩水を5l/hの流速で通液してイオン交換体吸着成分を脱離し、回収液5.0lを得た。この間ヘッドボリュ−ムの変化は認められなかった。この回収液のラクトフェリン濃度は、36mg/100mlであった。
【0112】
3)原料液の加熱殺菌
前記1)で得られたクリ−ムと、前記2)でカラムを通過した後の脱脂乳とを保冷タンクにて混合撹拌した後、スチ−ムインジェクション式殺菌機(森永乳業社製)により155℃で2秒間殺菌処理し、均質機(三丸機械工業社製)を使用して1段目30MPa、2段目3MPaの圧力で無菌的に均質化処理し、加熱殺菌乳を得て無菌タンクに貯留した。
【0113】
4)ラクトフェリンの加熱殺菌及び殺菌飲料の調製
前記2)で得られたラクトフェリン含有回収液に第一乳酸(ナカライテスク社製。純度90%)を添加してpHを4.0に調整し、スチ−ムインジェクション式殺菌機(森永乳業社製)により155℃で2秒間殺菌処理し、均質機(三丸機械工業社製)を使用して1段目20MPa、2段目2MPaの圧力で無菌的に均質化処理し、前記3)で無菌タンクに貯蔵しておいた加熱殺菌乳と混合した。
【0114】
以上の工程によって、原料乳とほぼ同一の成分を有する加熱殺菌乳を得ることができたが、この加熱殺菌乳のラクトフェリンの変性の程度を、逆相系カラム(アサヒパックC4P−50:商標、旭化成社製)を用いたアセトニトリル、0.5モル食塩のグラジェント溶出による高速液体クロマトグラフィ−により試験したところ、変性率は0%であり、ラクトフェリンは全く変性していないことが確認された。
【0115】
比較例
前記実施例3と同一の原料乳を、従来法、即ち、前記実施例3における3)と同一の装置及び条件により、加熱殺菌し、加熱殺菌乳を得た。
得られた加熱殺菌乳におけるラクトフェリンの変性の程度を、前記実施例3と同一の方法で試験した結果、変性率は100%であり、ラクトフェリンは完全に失活していることが確認された。
【0116】
【発明の効果】
以上詳細に説明したとおり、本発明は、殺菌した飲料の原料液(豆乳の原料液を除く)に、加熱殺菌され、かつ未変性のラクトフェリンを混合した未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料、及びその製造法であり、本発明により奏せられる効果は次のとおりである。
1)未変性のラクトフェリンとラクチュロースのビフィズス菌増殖因子との相乗効果により、ヒト又は動物の異常な腸内フローラの細菌構成を改善する。
2)前記効果のある本発明の未変性ラクトフェリン入り清涼飲料は、加熱殺菌されているので、長期間保存が可能であり、容器から直ちに飲用することが可能である。
3)本発明の未変性ラクトフェリン入り殺菌飲料は、保存による品質の劣化がない。
4)本発明を乳に適用した場合には、成分を実質的に調整しない加熱殺菌乳でありながら、ラクトフェリンが変性していない加熱殺菌乳を得ることができる。
Claims (6)
- 殺菌前にラクトフェリンを分離して殺菌した乳に、前記殺菌前の乳より分離したラクトフェリンを加熱殺菌した未変性のラクトフェリンを再度混合した未変性ラクトフェリン入り殺菌乳。
- 加熱殺菌されたラクトフェリンが、80〜100%(重量)の割合で活性を残存している請求項1記載の未変性ラクトフェリン入り殺菌乳。
- 次のa)〜e)の工程、
a)殺菌前の乳からクリ−ムを分離し、脱脂乳を得る工程、
b)得られた脱脂乳よりラクトフェリンを分離する工程、
c)分離したラクトフェリンを酸性下で加熱殺菌する工程、
d)前記a)で分離したクリ−ム及び前記b)のラクトフェリン分離後の脱脂乳を加熱殺菌する工程、及び
e)加熱殺菌されたクリ−ム及び脱脂乳と、前記c)で加熱殺菌された未変性のラクトフェリンとを、混合後の成分が最初の乳と同一の成分になるように再度混合し、混合した殺菌乳を未変性ラクトフェリン入り殺菌乳として調製する工程、
からなることを特徴とする未変性ラクトフェリン入り殺菌乳の製造法。 - 加熱殺菌したラクトフェリンが、80〜100%(重量)の割合で活性を残存している請求項3記載の未変性ラクトフェリン入り殺菌乳の製造法。
- 前記ラクトフェリンの加熱殺菌、および前記a)で分離したクリ−ム及び前記b)のラクトフェリン分離後の脱脂乳の加熱殺菌が、150〜155℃の温度で2〜5秒間加熱して行われる請求項3または4記載の未変性ラクトフェリン入り殺菌乳の製造法。
- 前記c)工程において、分離したラクトフェリンがpH2.0〜5.5の酸性下で加熱殺菌される請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の未変性ラクトフェリン入り殺菌乳の製造法。
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