JP2005218390A - 乳酸菌スターター、並びに豆乳発酵食品の製造方法及び豆乳発酵食品 - Google Patents
乳酸菌スターター、並びに豆乳発酵食品の製造方法及び豆乳発酵食品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 豆乳の有する大豆臭や渋み、収斂味等を抑えた、良好な風味を呈する豆乳発酵食品を提供する。さらには、機能性も追加された豆乳発酵食品を提供する。
【解決手段】乳酸菌スターターとして、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、計5種の乳酸菌株を所定割合で混合してなる混合スターターを用いる。
【選択図】なし
【解決手段】乳酸菌スターターとして、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、計5種の乳酸菌株を所定割合で混合してなる混合スターターを用いる。
【選択図】なし
Description
この発明は、乳酸菌スターター、当該乳酸菌スターターによる豆乳発酵食品の製造方法、及び前記方法により製造される豆乳発酵食品に関し、より詳細には、豆乳を主とする原料を発酵するに適した乳酸菌スターター、当該乳酸菌スターターを用いてヨーグルト様の豆乳発酵食品を製造する方法、及びこれにより得られるヨーグルト様豆乳発酵食品に関する。
なお、本願において「食品」とは、食べるタイプの「食料」のみならず飲むタイプの「飲料」も含む。
大豆は、良質の蛋白質を多量に含有する高蛋白食品として広く食用に供されており、そのまま調理されて食されるほか、納豆や豆腐などの加工食品、醤油や味噌などの調味料としても利用されている。
また、大豆の絞り汁である豆乳についても牛乳の代替飲料として従来から食用に供されており、特に近年、血中コレステロールに対する懸念など健康志向の高まる中、大豆の含有する各種成分が脂質代謝の促進、記憶力の向上、成人病の予防、骨粗鬆症や更年期障害の緩和等の機能性を有するとして注目を集めていることから、その需要が急増している。
このような現状を受け、当該豆乳の用途を広げるべく、豆乳を主原料とした加工食品の研究開発、商品化が進められており、当該加工食品としては、当該豆乳を乳酸菌によって発酵させ、ヨーグルト様食品やチーズ様食品といった豆乳発酵食品を製造する方法が提案されている。前記豆乳発酵食品では、豆乳の有する各種機能性が発揮されるのに加え、大豆に多く含まれる蛋白質が乳酸菌によって分解されることにより各種ペプチドやアミノ酸等が生成されるため、これらのペプチドやアミノ酸等によってさらに機能性を高めることができる。
前記豆乳を主原料としたヨーグルト様食品等の豆乳発酵食品を製造する場合、経口摂取するという観点から品質が安定していることは必須であるが、これ以外に、豆乳の原料となる大豆特有の青臭さや収斂味、渋み等が食品としての風味を損なう原因となるため、これらを抑制し、風味的にも良好な食品とする必要がある。
そのため、豆乳発酵食品の製造にあたり、風味の改善を図った先行技術としては、大豆にフマール酸又はその塩を添加して磨砕・抽出処理して得た豆乳を原料として豆乳発酵食品を製造する方法(例えば特許文献1)や、大豆食品をストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)のKSM-85-4株(FERM P-16574)で発酵させる方法(例えば特許文献2)、乳酸生成菌株のひとつがラクトコッカス属ラクチス種ラクチス亜種ディアセチルラクチス変異株(Lactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis)である混合種菌を用いて豆乳を発酵する方法(例えば特許文献3)がある。
本願の先行技術文献としては下記のようなものが挙げられる。
特開平07−31371号公報
特開平11−318371号公報
特開平5−184320号公報
上記従来の方法を用いて製造された豆乳発酵食品は、通常の豆乳と比較すると前記大豆特有の青臭さや収斂味、渋み等が抑えられ、飲食しやすい食品となっている。
しかし、牛乳を原料として製造されるヨーグルト等の乳製品と比較するとその風味の差は未だ大きく、豆乳発酵食品の風味改善に対する課題は多い。
なお、前記豆乳発酵食品の風味は、原料の発酵に用いられる乳酸菌によって大きく変動するため、スターターとなる乳酸菌の決定は特に重要であり、複数種の乳酸菌を混合する場合には、使用する乳酸菌の種類のほか、その配合割合も重要なポイントとなる。
また、単に風味を改善するだけでなく、前記大豆の有する各種機能性に加えて更なる機能性が発揮される食品とすることができれば、健康志向の高まっている現在の需要にも合致するといえる。
以上より、本発明は、先行技術と比較して嗜好性や機能性のより優れた豆乳発酵食品を提供することを目的とする。
前述の課題を解決するために、本発明は、豆乳発酵食品の製造に使用する乳酸菌スターターとして、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)の5種類の乳酸菌株を混合してなるものを用いる(請求項1)。
前記乳酸菌スターターを成す各乳酸菌株の混合比率は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)を0.5〜1.5%、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)を0.5〜1.5%、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)を95〜98%、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)を0.5〜1.5%、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)を0.1〜0.5%とすることが好ましい(請求項2)。
また、前記乳酸菌スターターは、前記各乳酸菌株の菌体濃度がそれぞれ107〜108cell/mlとなるように接種されることが好ましい(請求項3)。
本発明の豆乳発酵食品の製造方法は、乳酸発酵に用いるスターターを前記5種類の菌を混合してなる乳酸菌スターターとすることを特徴とし(請求項4)、その発酵条件は、発酵温度を25〜35℃、発酵時間を12〜20時間とすることが好ましい(請求項5)。
また、前記豆乳発酵食品の原料としては、主原料である豆乳の他、甘味料、乳化剤、食物繊維、香料(ヨーグルトフレーバー)、NaClを含み(請求項6)、これにさらにコラーゲンペプチド、果実、ナタデココのうちいずれか1以上を含めてもよい(請求項7)。
上記方法によって豆乳を主原料とする豆乳発酵食品(請求項8)が製造される。
本発明で乳酸菌スターターとして用いるラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)の4種は、中温性乳酸菌で、通常の酪農ヨーグルト製造に用いられている乳酸菌と比較して発酵温度が低く、これらを使用することによって従来の発酵食品と比較してクセや酸味を少なくすることができると共に、出来上がった食品に濃厚なクリ−ミー感を与えることができ、また、生成されるジアセチル等のフレーバー物質によってチーズ風味が助長されることから、チーズ風植物性ヨーグルトといった新しい食感の食品とすることができる。
前記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)は、いずれも乳酸高生産能を持つ乳酸菌であり、豆乳タンパクを固める機能は有しないが、原料のpHを低下させるほか、後述のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)に利用されるクエン酸を生産し、ジアセチルやCO2、酢酸などの芳香性物質の生成を促進する働きがある。
さらに、前記ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei(ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)とも呼ばれる))は、前述の通り低温発酵が可能である点に加え、乳酸などの酸の生産速度が他の菌種と比較して遅いことから、製品を熟成させる間も酸を生産し続けることができ、またこれに伴い、保存中の製品内の乳酸菌の生菌数を維持する効果を発揮できるものと推察される。
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)は、ジアセチル、CO2、酢酸など芳香性物質の高生産能を有する乳酸菌で、豆乳の蛋白質を高度に分解し凝固させる機能がある。また、植物性である豆乳を他の乳酸菌で発酵させた場合のように独特な酸敗臭を生成することがないため、酸味が少なく、かつ酪農製品に酷似した香りを生成することができるという利点もある。乳酸生産能が低いため、共生している他の乳酸菌により発酵系のpHが低下した条件で、クエン酸代謝が促進される。
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)は、植物由来の乳酸菌で、主に穀類を原材料とする発酵食品に利用される。本乳酸菌は、製品に適度な酸味を与える目的で使用され、クエン酸などの酸味料を添加せずとも、製品の酸甘バランスを好適に保つことができる。また、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)と同様、ヨーグルト風味に最適なpH4.2〜4.5の状態における製品中で生菌数を維持することができる乳酸桿菌であることから、製品の保存中において生菌数を維持する役割も果たすと考えられる。
このように、上記所定の複数種の乳酸菌株を混合してなる乳酸菌スターターを調製することにより、豆乳発酵に好適な乳酸菌スターターを得ることができ、該スターターを用いれば、上記各乳酸菌株相互の働きによる総合的な作用によって、前記豆乳の有する大豆臭さ、雑味、渋み、収斂味等を大幅に低減することができ、くせや酸味が少なくまろやかで、かつ、粘り気が強くクリ−ミーな、風味・食感ともに良好なヨーグルト様豆乳発酵食品を得ることができる。
また、本発明の豆乳発酵食品は、豆乳が本来有する大豆たんぱく質、イソフラボン、ミネラル類等による脂質代謝の促進、記憶力の向上、成人病の予防、骨粗鬆症や更年期障害の緩和等の機能性が維持されているほか、乳酸菌による分解によって各種ペプチドやアミノ酸が生成されており、また、豆乳の有するイソフラボンが乳酸発酵によって体内に吸収されやすくなっているため、豆乳よりもさらに機能性の高いものとなる。
さらに、甘味料であるオリゴ糖や、食物繊維、果実、コラーゲンペプチド等を添加して得られた豆乳発酵食品にあっては、腸内環境の調整、高血圧の防止や骨粗鬆症の軽減、関節炎の治癒、潰瘍の抑制、美容効果等の機能性をさらに向上させることができるほか、果実やナタデココの添加によって風味や食感を一層よいものとすることができ、嗜好性も向上させることができる。
このように、各種機能性を有し、人体に有益な食品である本願の豆乳発酵食品は、牛乳アレルギーなどで牛乳を飲めない人や、ベジタリアンにも好適に利用されるといえる。
本発明は、所定の複数種の乳酸菌株を所定割合で混合することによって豆乳発酵食品の製造に好適な乳酸菌スターターを得るものであり、また、豆乳に甘味料や香料、乳化剤等を混合して成る原料を、前記乳酸菌スターターを用いて所定条件で発酵することにより、風味のよいヨーグルト様豆乳発酵食品を製造するものである。
以下、本発明の豆乳発酵食品の製造方法につき説明する。
〔乳酸菌スターター〕
乳酸菌は、前記豆乳を主とした原料の発酵に用いられるものであり、当該発酵によりヨーグルト様の豆乳発酵食品が製造される。
乳酸菌は、前記豆乳を主とした原料の発酵に用いられるものであり、当該発酵によりヨーグルト様の豆乳発酵食品が製造される。
前記原料の発酵に用いる乳酸菌スターターとしては、豆乳の有する大豆臭さ等を大幅に改善しつつ蛋白質を高度に分解できると共に、適度な乳酸生産能と、発酵ミルクの代表香気成分であるジアセチル等のフレーバー物質の高生産能を有するものであることが好ましく、そのような乳酸菌スターターとして、本発明では下記の表1に示す5種の乳酸菌を混合して得られる混合スターターを用いる。
本発明でスターターとして用いるラクトコッカス属の乳酸菌3種、及びラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイの計4種は動物由来の乳酸菌で、通常の酪農ヨーグルト製造に用いられている乳酸菌と比較して発酵温度が低く、低温発酵が可能な中温性乳酸菌として知られている。これらは、一般にチーズやバターの製造によく用いられているもので、ヨーグルトの製造には向いていないとされている。しかし、牛乳でなく豆乳を主原料とする豆乳発酵食品の製造にあっては、従来の発酵食品と比較してクセや酸味を少なくすることができると共に、出来上がった食品に濃厚なクリ−ミー感を与え、また、生成されるジアセチル等のフレーバー物質によってチーズ風味が助長されることから、チーズ風植物性ヨーグルトといった新しい食感の食品とすることができる。
前記ラクトコッカス属の乳酸菌のうち、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)の2種、及び前記ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)は、いずれも乳酸高生産能を持つ乳酸菌であり、豆乳蛋白を固める機能は有しないが、原料のpHを低下させるほか、後述のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)に利用されるクエン酸を生産し、ジアセチルやCO2、酢酸などの芳香性物質の生成を促進する働きがある。
さらに、前記ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei(ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)とも呼ばれる))は、前述の通り低温発酵が可能である点に加え、乳酸を主とした酸の生産速度が他の菌種と比較して遅く、また、pH4程度であっても発酵が可能な乳酸桿菌であることから、製品を熟成させる間も酸を生産し続けることができ、またこれに伴い、保存中の製品内の乳酸菌の生菌数を維持する効果を発揮できるものと推察される。
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)は、ジアセチル、CO2、酢酸など芳香性物質の高生産能を有する乳酸菌で、豆乳の蛋白質を高度に分解し凝固させる機能がある。また、植物性である豆乳を他の乳酸菌で発酵させた場合のように独特な酸敗臭を生成することがないため、酸味が少なく、かつ酪農製品に酷似した香りを生成することができるという利点もある。これらの特徴により、当該乳酸菌は本発明のスターター構成のメインとして用いられる。乳酸生産能が低いため、共生している他の乳酸菌により発酵系のpHが低下した条件で、クエン酸代謝が促進される。
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)は、植物由来の乳酸菌で、主に穀類を原材料とする発酵食品に利用される。本乳酸菌は、製品に適度な酸味を与える目的で使用され、製品の風味の最大のポイントである酸甘バランスを保つのに重要な役割を果たしている。すなわち、本発明のスターターを成す乳酸菌株中、上述する動物由来の4種の菌は全てクエン酸生産能が低く、これらのみでは製品に適度な酸味を与えることが期待できない。しかし、本発明は、乳酸菌スターターに前記ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)を混合していることから、豆乳に含まれる蔗糖、または副原料として添加される糖質を発酵して製品の酸甘バランスを好適に保つことができ、製品に人為的にクエン酸などの酸味料を添加する必要がないという効果を有する。
また、多くの乳酸球菌はpH5付近かそれ以下では増殖できないが、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)は、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)と同様、ヨーグルト風味に最適なpH4.2〜4.5の状態における製品中で生菌数を維持することができる乳酸桿菌であることから、製品の保存中において生菌数を維持する役割も果たすと考えられる。
複数種の菌を混合して得られる乳酸菌スターターは、混合する菌の種類や混合割合によって製造される食品の風味や食感が大きく左右される。本発明にあっては、上記5種の乳酸菌株が混合されたものを乳酸菌スターターとして用いることにより、これらの乳酸菌株の有する独自の作用、及び該乳酸菌株相互の働きによって得られる総合的な作用によって、豆乳の有する大豆臭さ、雑味、渋み、収斂味等が大幅に低減され、くせや酸味が少なくまろやかで、かつ、粘り気が強くクリ−ミーな、所望の風味・食感を有する豆乳発酵食品を製造することができる。
前記各乳酸菌株の混合比は、良好な風味や食感を得る観点から前記表1に示す混合比とすることができる。また、前記乳酸菌スターターは、表1に示すように、原料と混合した際に、スターターを成す上記5種の乳酸菌株の菌体濃度がそれぞれ107〜108cell/mlとなるように接種されることが好ましい。
なお、本実施形態では、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)527、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)H-61、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)N-7、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)L-14、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)MS-L.P.を下記表2に示す比率にて混合したものを乳酸菌スターターとして使用する。
以下、前記乳酸菌スターターの調製方法の一例を簡単に説明する。
まず、表1に示す各種乳酸菌を、GYP液体培地にてそれぞれ個別に培養しておき、その後、これらを所定の混合比(表2)で混合する。前記培養の温度は約25℃とする。
なお、種類の異なる乳酸菌であっても、増殖速度及び混合比がほぼ同一であれば、それらを混合した状態で培養することも可能であり、例えばラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)は増殖速度が近似しているため、混合培養可能である。このように混合培養することは、培養設備の削減及び菌体生産効率の向上を可能とするため、コストの低減にもつながるといえる。
また、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)は培養時間が他の菌株と比較して長く、約30℃で48〜72時間程度培養する必要がある。
次に、前記所定の混合比で混合された乳酸菌を、遠心分離機で培養液(菌液)と菌体とに分離する。菌体分離には菌液を連続的に排出する構造のバクトフュージを利用した遠心分離法と、分離膜としてホローファイバーを使用したクロストロー濾過装置を利用した膜濾過法がある。なお、当該分離の際には、菌体に雑菌が混入しないよう無菌的に処理する。
このようにして無菌的に分離された菌体を、1%のグルタミン酸ナトリウムを含む10%の脱脂粉乳溶液に懸濁して、菌体濃度が例えば前記培養液の10倍に濃縮された懸濁液とする。これが乳酸菌スターターとなる。前記脱脂粉乳溶液は、調整後のスターターに雑菌が混入されていることのないよう、110℃で15分間加熱した殺菌済みのものを用いる。
前記乳酸菌スターターの菌体濃度は、当該乳酸菌スターターの使用時点において活性が好適な状態に維持されているよう、通常はスターターの形態によって決定される。一例として、原料と混合する前の状態では、フレッシュカルチャーの場合は109cell/ml、凍結菌体(FC),凍結乾燥菌体(FD)の場合は1010〜1011cell/mlに濃縮しておくことができる。
培養された菌体を集菌・懸濁して得られた前記乳酸菌スターターは、これをそのまま原料に添加して発酵を行うことができるが(フレッシュカルチャー法)、それ以外に、前記集菌・懸濁されたスターターを一旦凍結した凍結菌体(FC)や、凍結乾燥した凍結乾燥菌体(FD)等を用いることもできる。
前記凍結菌体や凍結乾燥菌体のようにスターターを凍結させる方法としては、生菌数及び菌体活性を高く維持する目的から、瞬間的に凍結することが可能な方法が好ましく、具体的には、菌体の懸濁された菌液を液体窒素中に浸漬あるいは滴下することにより急速凍結させる方法を挙げることができる。
また、凍結後の保存にあたっては、生菌数のみならず、菌体の有する乳酸発酵性、プロティアーゼ性、フレーバー物質生産性、ファージ耐性、抗菌性物質生産性等の各種性質を高く維持するために、より低い温度で保存することが好ましく、具体的には、-40℃以下で保存することが好ましい。-40℃以下とした場合には数ヶ月または1年間程度の保存が可能である。一般には-84℃で保存することが多い。
前記凍結菌体や凍結乾燥菌体を用いて原料を発酵させる際には、前記菌体をそのまま原料に添加する直接添加法と、当該菌体からバルクスターターを調整し、さらに培養をして菌の量を増加させた上で添加する間接添加法がある。
しかし、本発明は複数種の乳酸菌を混合してなる混合スターターを用いるものであり、このような混合スターターにあっては、増殖速度の異なる菌体が混合された状態で培養されると菌の混合割合が変化してしまい、所望の発酵がなされなくなることから、直接添加法を採用することが好ましい。
前記フレッシュカルチャーを用いる場合の利点としては、乳酸菌スターターが調製して得られたままの状態、すなわち、高活性かつ混合割合が適正な状態であるため、高品質な豆乳発酵食品を製造することが可能である。ただし、当該フレッシュカルチャーは5℃で冷蔵しても数日間しか保存できないことから、豆乳発酵食品を大量に生産する場合には、乳酸菌スターターを常に大量に調製する必要がある。
一方、凍結菌体や凍結乾燥菌体を用いる場合には、乳酸菌スターターとなる菌体が凍結されている状態なため長期間の保存が可能であり、必要な時点で必要な量だけ使用することができ簡便であるほか、需要が増大して大量にスターターが必要な場合でも当該需要に応えることができる。しかし、菌体の保存が適切になされないと活性が低下してしまい、主発酵の誘導期間が長くなるという問題があり、当該活性や生菌数につき、使用前に検査する必要がある。さらに、凍結や凍結乾燥のための設備や、保存状態を管理して菌体の品質を維持するための設備等も必要となる。
しがたって、フレッシュカルチャー、凍結菌体及び凍結乾燥菌体、それぞれの乳酸菌スターターが有するメリット、デメリットを考慮して、製造条件に適したスターター形態を採用することとする。
〔原料〕
本願において「原料」とは、前記乳酸菌スターターを除く、本発明の豆乳発酵食品を成す物質全てを指す。本発明の豆乳発酵食品の原料としては下記のものを挙げることができる。
本願において「原料」とは、前記乳酸菌スターターを除く、本発明の豆乳発酵食品を成す物質全てを指す。本発明の豆乳発酵食品の原料としては下記のものを挙げることができる。
1.豆乳(主原料)
豆乳は、水に浸して柔らかくした大豆をすり砕いて煮沸したものを漉して得られるもので、本発明の豆乳発酵食品の主原料である。
豆乳は、水に浸して柔らかくした大豆をすり砕いて煮沸したものを漉して得られるもので、本発明の豆乳発酵食品の主原料である。
前記豆乳は、使用する大豆の品種や加工方法等によってその品質が左右されるが、本発明にあっては、豆乳の有する大豆臭等を抑制し、風味の良好な豆乳発酵食品を提供することを目的とするため、主原料となる豆乳自身も、低苦味、低収斂味で、糖質を多く含む等、風味のよいものが好ましい。
また、機能性食品としての観点からは、前記豆乳が良質な蛋白質を多く含んでいることが好ましい。
上述のような高品質の豆乳の一例としては、太子食品工業株式会社製の「本格豆腐が出来る無添加豆乳」を挙げることができる。当該豆乳は糖度(Brix)が約12〜13%と高く、風味のよい豆乳発酵食品を製造することができる。
2.副原料
豆乳発酵食品の製造にあたっては、前記主原料の豆乳のほか、甘味の付加、風味の向上、製品の安定化等の観点から下記の副原料が加えられる。これらの副原料としては、製造された食品の風味を損なうことがないよう、強いクセのないものを用いる。
豆乳発酵食品の製造にあたっては、前記主原料の豆乳のほか、甘味の付加、風味の向上、製品の安定化等の観点から下記の副原料が加えられる。これらの副原料としては、製造された食品の風味を損なうことがないよう、強いクセのないものを用いる。
(1)甘味料
甘味料は、食品に甘味を与える等の目的で使用されるもので、一例として下記のようなものを挙げることができ、これらのうちいくつかを組み合わせて使用することができる。本実施形態にあっては下記の各種甘味料全てを組み合わせて使用する。
甘味料は、食品に甘味を与える等の目的で使用されるもので、一例として下記のようなものを挙げることができ、これらのうちいくつかを組み合わせて使用することができる。本実施形態にあっては下記の各種甘味料全てを組み合わせて使用する。
(1−1)糖類
糖類としては、砂糖、蔗糖、ブドウ糖、果糖等があり、本発明の豆乳発酵食品の製造にあっては、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
糖類としては、砂糖、蔗糖、ブドウ糖、果糖等があり、本発明の豆乳発酵食品の製造にあっては、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
一例としては、王子コンスターチ株式会社の異性化糖RSC−20を挙げることができる。当該RSC−20は、果糖33.0%、蔗糖20.2%、それ以外の糖6.4%を含有しており、砂糖のみと比較して遥かによい風味を呈しているほか、液糖であるため原料に混合しやすいという利点もある。
(1−2)オリゴ糖
オリゴ糖は、甘味料の役割を果たすだけでなく、腸内環境の改善に役立ち、生活習慣病に対する機能性をも有するもので、任意に使用することができる。
オリゴ糖は、甘味料の役割を果たすだけでなく、腸内環境の改善に役立ち、生活習慣病に対する機能性をも有するもので、任意に使用することができる。
このようなオリゴ糖としては、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖、キシロオリゴ糖等を挙げることができるが、特に、オリゴ糖の中では甘味度が高く濃厚な風味を呈する大豆オリゴ糖を用いることが好ましい。
大豆オリゴ糖とは、大豆から分離・精製されてなるオリゴ糖であり、その成分は、スタキオース12%、ラフィノース4.0%、マルトース3.5%、マルトトリオース4.5%、マルトテトラオース25%、シュクロース(香り成分)20%、その他の糖類31%となっている。
砂糖の約50%の甘味度で後味のすっきりした甘味を有し、低カロリーであるほか、熱や酸にも強く、加工適正に優れているという利点がある。また、含有成分であるスタキオース、ラフィノースは胃や小腸で消化されにくく効率よく大腸に届くため、有害菌の抑制及びビフィズス菌の増殖を効率的に促進させることができ、豆乳発酵食品の整腸作用を強化することができる。
前記大豆オリゴ糖としては、カルピス食品工業株式会社製の大豆オリゴ糖SOFを挙げることができる。
(1−3)スクラロース
スクラロースは、砂糖から作られた唯一のノンカロリー甘味料で、苦味や渋みがほとんどなく清涼感のある砂糖に似た甘味質であり、砂糖の600倍という高甘味度を有する甘味料である。安全性が高く、非う蝕性で、耐熱性や耐光性といった優れた安定性を有するほか、高い溶解性を有するため高濃度シロップの調製が容易であるという利点も有する。また、当該スクラロースにはマスキング効果があり、塩なれ、酢なれ、渋みを緩和するため、本発明のようにヨーグルト様発酵食品を製造する際には有用であるといえる。
スクラロースは、砂糖から作られた唯一のノンカロリー甘味料で、苦味や渋みがほとんどなく清涼感のある砂糖に似た甘味質であり、砂糖の600倍という高甘味度を有する甘味料である。安全性が高く、非う蝕性で、耐熱性や耐光性といった優れた安定性を有するほか、高い溶解性を有するため高濃度シロップの調製が容易であるという利点も有する。また、当該スクラロースにはマスキング効果があり、塩なれ、酢なれ、渋みを緩和するため、本発明のようにヨーグルト様発酵食品を製造する際には有用であるといえる。
前記スクラロースを含む甘味料としては、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のサンスイートSU−100を挙げることができる。これはスクラロース15%、パラチニット85%を含有し、甘味度は砂糖の約100倍となっている。
(1−4)蜂蜜
蜂蜜は、濃厚な独特の甘味を付加するとともに、こくを与えるなど、風味を向上させるほか、殺菌、消炎、造血作用等を有しており、また、蜂蜜の糖分は脂肪になりにくいという利点も有する。
蜂蜜は、濃厚な独特の甘味を付加するとともに、こくを与えるなど、風味を向上させるほか、殺菌、消炎、造血作用等を有しており、また、蜂蜜の糖分は脂肪になりにくいという利点も有する。
(2)乳化剤
乳化剤は、添加した場合に食品に与える影響が少ないものが好ましく、一例として三菱化学フーズ株式会社製のリョートーシュガーエステルS−1170を挙げることができる。前記リョートーシュガーエステル蔗糖S−1170は脂肪酸エステル無味無臭のため食品添加剤として好ましいほか、乳化容量が大きく、各種のストレスに対する乳化安定化能に優れている。また、蛋白質の変性防止作用もある。
乳化剤は、添加した場合に食品に与える影響が少ないものが好ましく、一例として三菱化学フーズ株式会社製のリョートーシュガーエステルS−1170を挙げることができる。前記リョートーシュガーエステル蔗糖S−1170は脂肪酸エステル無味無臭のため食品添加剤として好ましいほか、乳化容量が大きく、各種のストレスに対する乳化安定化能に優れている。また、蛋白質の変性防止作用もある。
(3)水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、腸内環境の調整、便通の改善等を図ることができるという機能性を有する。また、液体状である飲料タイプの豆乳発酵食品においては飲料保存中の沈殿を防止し、固形状である食料タイプの豆乳発酵食品においては保型性を確保するというゲル安定化剤としての効果も発揮する。
水溶性食物繊維は、腸内環境の調整、便通の改善等を図ることができるという機能性を有する。また、液体状である飲料タイプの豆乳発酵食品においては飲料保存中の沈殿を防止し、固形状である食料タイプの豆乳発酵食品においては保型性を確保するというゲル安定化剤としての効果も発揮する。
当該水溶性食物繊維としては、低粘度、高溶融度、無味無臭で、添加した際に食品に与える影響が少ないものが好ましく、本発明にあってはこのような食物繊維であれば特に限定されないが、飲料タイプの豆乳発酵食品を製造する場合には、一例として、大日本明治製糖株式会社製のラフティリンST−Gel等を使用することができる。前記ラフティリンは、天然由来の水溶性食物繊維で、ミネラル吸収の促進や下痢の改善等、優れた生理効果をもっているほか、ほぼ無味無臭で、低粘度、高溶解度であるため、添加した際の製品への影響が少なく、乳化・分散の安定性が高い。食物繊維の分画品であって食物繊維の含有量が高く(一例として92.7%以上)、また、耐酸性が高いため酸性製品に使用できる。主成分はイヌリンである。
また、食料タイプの豆乳発酵食品を製造する場合には、一例として三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスマート400を添加することができる。これにより、良好な保型性を有し、濃厚感のあるクリーミーさとあっさりした食感の豆乳発酵食品とすることができる。
(4)香料
本発明にあっては風味の良好なヨーグルト様豆乳発酵食品を製造することを目的としているため、ヨーグルトフレーバーの香料を添加することが好ましい。
本発明にあっては風味の良好なヨーグルト様豆乳発酵食品を製造することを目的としているため、ヨーグルトフレーバーの香料を添加することが好ましい。
具体的には、食品に強いヨーグルト風味を与える、例えば日本シイベルヘグナー株式会社製のFFE−1348や、揮発性のある良好なヨーグルトフレーバーで、豆乳独特の大豆臭をマスキング可能な三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のNo.6006等が挙げられ、これらの香料を単独で又は所定割合で混合して用いることができる。
前記香料は、他の原料と共に発酵工程を経るものであるが、加熱することによって所望のヨーグルトフレーバーを発散することができなくなるため、後述する豆乳発酵食品の製造方法において説明するように、発酵工程を経る他の原料が加熱殺菌された後、乳酸菌スターターの接種前又はこれと同じ段階で添加することとする。
(5)NaCl(水溶液)
NaClは、乳酸菌の成育を助長する役割を果たすべく加えられるものであり、風味には影響を与えない。
NaClは、乳酸菌の成育を助長する役割を果たすべく加えられるものであり、風味には影響を与えない。
(6)その他の原料(任意)
本発明の豆乳発酵食品にあっては、機能性や嗜好性のさらなる向上を図るべく、上記原料以外にも下記に示すようなものを必要に応じて原料に含めることができる。
本発明の豆乳発酵食品にあっては、機能性や嗜好性のさらなる向上を図るべく、上記原料以外にも下記に示すようなものを必要に応じて原料に含めることができる。
(6−1)コラーゲンペプチド
コラーゲンは動物体中にもっとも多く含まれるタンパク質で、体の細胞と細胞の隙間を埋める役割を果たし、特に皮膚、骨、軟骨、腱などの結合組織の主要な構成成分である。当該コラーゲンを外部より摂取することにより、高血圧の防止や骨粗鬆症の軽減、関節炎の治癒、潰瘍の抑制等などに効果があるとの報告がされているほか、体内でのコラーゲン合成を促進し、皮膚の若返りが図られたり、肌の保湿性が高まるなどの美容効果も報告されている。
コラーゲンは動物体中にもっとも多く含まれるタンパク質で、体の細胞と細胞の隙間を埋める役割を果たし、特に皮膚、骨、軟骨、腱などの結合組織の主要な構成成分である。当該コラーゲンを外部より摂取することにより、高血圧の防止や骨粗鬆症の軽減、関節炎の治癒、潰瘍の抑制等などに効果があるとの報告がされているほか、体内でのコラーゲン合成を促進し、皮膚の若返りが図られたり、肌の保湿性が高まるなどの美容効果も報告されている。
コラーゲンペプチドは、ゼラチンをさらに分解し低分子化する事により、体内での消化・吸収性がより向上するなど、機能性を高めたもので、ゼラチンが冷却時にゲル化するのに対し、コラーゲンペプチドはゲル化力がほとんどなく、低粘度であり、また、コラーゲン特有のにおいも低減されているため、飲料をはじめとする各種食品への添加に好適である。当該コラーゲンペプチドの一例としては、豚皮を原料としてなる新田ゼラチン株式会社製のSCP5100を挙げることができる。
(6−2)果物・野菜
豆乳発酵食品にビタミン等の栄養を付加するほか、風味や食感等の嗜好性を向上させる目的で添加することができる。
豆乳発酵食品にビタミン等の栄養を付加するほか、風味や食感等の嗜好性を向上させる目的で添加することができる。
当該果物や野菜は、これを所定形状、所定サイズに切ったものを固形状のまま添加したり、すり潰したもの、搾ったもの(果汁)等の状態で添加することができ、また、果実を煮詰めたジャムのような状態としたものを添加するようにしてもよい。
果物の一例としては、ブルーベリーを挙げることができる。ブルーベリーは視力回復効果等の目に対する効果のほか、尿路感染症の予防や発ガン抑制効果もあるとされており、また、当該ブルーベリーの添加された豆乳発酵食品の風味をより一層向上させることができる。
前記果物や野菜は、当該果物や野菜の有する風味や栄養を損なうことのないよう発酵工程を経ないものとし、他の原料と乳酸菌スターターを混合して発酵した後でこれを添加するようにする。
(6−3)ナタデココ
ナタデココは食感及び風味を向上させ、より嗜好性の高い豆乳発酵食品とするために添加することができる。当該ナタデココは市販されているシロップ入りのものなどが使用可能である。
ナタデココは食感及び風味を向上させ、より嗜好性の高い豆乳発酵食品とするために添加することができる。当該ナタデココは市販されているシロップ入りのものなどが使用可能である。
ナタデココは、前記果物・野菜と同様、他の原料が乳酸菌スターターによって発酵された後で添加することも可能であるが、ナタデココを添加した状態で発酵工程を経ると、当該ナタデココが乳酸菌の増殖に最適な生息場となり、製造された豆乳発酵食品中の乳酸菌数を多く保つことができるという利点があるため、他の原料と共に発酵工程を経るようにすることが好ましい。
ただし、ナタデココの風味や食感を維持する観点から、前記香料と同様、他の原料を加熱殺菌した後、乳酸菌スターターの接種前又はこれと同じ段階で添加することとする。
〔豆乳発酵食品の製造方法〕
つぎに、上述の原料及び前記乳酸菌スターターにより豆乳発酵食品を製造する方法について説明する。豆乳発酵食品の製造方法は主に、原料の混合、原料の加熱殺菌、乳酸菌スターターの接種、発酵、充填、冷却の6つの工程からなる。
つぎに、上述の原料及び前記乳酸菌スターターにより豆乳発酵食品を製造する方法について説明する。豆乳発酵食品の製造方法は主に、原料の混合、原料の加熱殺菌、乳酸菌スターターの接種、発酵、充填、冷却の6つの工程からなる。
(1)原料の混合
主原料である豆乳、及び、副原料のうち甘味料、乳化剤、水溶性食物繊維、ゲル安定剤、NaCl等、後述する加熱殺菌工程又は発酵工程後に添加するもの以外の原料を混合攪拌し、乳酸菌スターターによって発酵するに適した均一な状態とする。コラーゲンペプチド等、任意の原料であっても、加熱や発酵に品質が影響を受けるものでなければ、この段階で他の原料と混合する。
主原料である豆乳、及び、副原料のうち甘味料、乳化剤、水溶性食物繊維、ゲル安定剤、NaCl等、後述する加熱殺菌工程又は発酵工程後に添加するもの以外の原料を混合攪拌し、乳酸菌スターターによって発酵するに適した均一な状態とする。コラーゲンペプチド等、任意の原料であっても、加熱や発酵に品質が影響を受けるものでなければ、この段階で他の原料と混合する。
粉末や粒体などの固形原料は、この段階において液体原料に溶解させるが、溶解を容易にすべく水を加えた上で混合することもできる。
溶存酸素の存在は発酵遅延の原因となるため、混合の際には原料中に気泡が混入しないよう留意する必要がある。気泡が混入しないよう混合する方法としては、80℃〜90℃に加熱しながら攪拌したり、消泡剤を使用することなどが考えられる。
(2)原料の加熱殺菌
前記混合工程により均一化された原料は、乳酸菌スターターの接種前に殺菌処理される。殺菌処理は一般に加熱により行われ、具体的には、プレート式熱交換器による連続殺菌法や、タンク内に原料を所定量収容した状態でこれを加熱するバッチ殺菌法などがある。これらの殺菌法により、原料を例えば110℃で10分間加熱する。
前記混合工程により均一化された原料は、乳酸菌スターターの接種前に殺菌処理される。殺菌処理は一般に加熱により行われ、具体的には、プレート式熱交換器による連続殺菌法や、タンク内に原料を所定量収容した状態でこれを加熱するバッチ殺菌法などがある。これらの殺菌法により、原料を例えば110℃で10分間加熱する。
加熱殺菌された原料は、その後,30℃前後まで冷却される。香料、ナタデココは、この時点で原料中に添加される。
(3)乳酸菌スターターの接種
前記加熱殺菌を経て香料等の添加された原料は、乳酸菌スターターが接種され、発酵が好適に行われるよう攪拌混合される。
前記加熱殺菌を経て香料等の添加された原料は、乳酸菌スターターが接種され、発酵が好適に行われるよう攪拌混合される。
前記乳酸菌スターターは、前記原料と混合した状態において当該スターターを成す各乳酸菌の菌体濃度がそれぞれ107〜108cell/mlとなるように接種することとし、例えば、全量が100〜130gの発酵原料に対して、109cell/mlの菌体濃度を有する乳酸菌スターターを1wt%加えることができる。上記菌体濃度よりも低いと、各乳酸菌ごとの成育のバランスが崩れるため好ましくない。
(4)発酵
前記乳酸菌スターターが接種された原料は、所定条件下で発酵処理される。
前記乳酸菌スターターが接種された原料は、所定条件下で発酵処理される。
発酵温度は前述の30℃を保つこととし、発酵時間は、フレッシュカルチャーの場合が約12〜16時間、凍結菌体及び凍結乾燥菌体を用いる場合は約14〜20時間である。発酵の状態はpHで確認することとし、pHが4.4〜4.3となった時点で発酵終了とする。
このように30℃という比較的低温で発酵することにより、他の乳酸菌を用いた高温発酵のように単純な酸味が生成されることを防ぐことができ、また、当該低温発酵によれば発酵に長時間を要するところ、これによってまろやかな酪農製品に近い風味を呈する豆乳発酵食品を製造することができる。
(5)充填
発酵の終了した豆乳発酵食品を所定の容器に充填する。果実や果汁、野菜等は、この工程で添加することが好ましい。
発酵の終了した豆乳発酵食品を所定の容器に充填する。果実や果汁、野菜等は、この工程で添加することが好ましい。
充填の際は、発酵設備から充填用容器まで豆乳発酵食品を移すことから、当該豆乳発酵製品が開放され、空気等と接触することとなる。そのため、殺菌処理の施されている前記豆乳発酵食品に対して雑菌が混入することのないよう、容器、充填機器、環境等の衛生管理を徹底する必要がある。方法としては、充填機器をブースで囲い、局所的に滅菌された空間を形成することが挙げられる。また、容器については、使用する前に殺菌するか、射出成形後外気に触れさせていないものを使用することなどが挙げられる。
なお、上述する手順では、容器への充填に先立って原料の発酵が行われており、前記充填は発酵処理後の豆乳発酵食品について行っているが、当該発酵と充填は必ずしもこの順序とする必要はなく、混合・殺菌され乳酸菌スターターが接種された発酵系原料を先に所定の容器に充填、密閉しておき、その後発酵工程を経ることとしてもよい。本発明で使用する乳酸菌スターターを成す各種乳酸菌はCO2をほとんど発生しないため、容器の膨張等の問題も生じない。
このように充填後に発酵工程を経ることにした場合、発酵終了後に豆乳発酵食品を移す必要がないことから食品完成後の衛生管理が容易であるという利点がある。ただし、発酵処理前の原料の容器への充填に関しては、前述の発酵終了後の充填と同様、厳重な衛生管理が必要である。
(6)冷却
上記工程を経て製造された豆乳発酵食品は、これを4〜5℃に冷却し、発酵を停止させ、熟成させる。当該冷却は、発酵系原料が所望状態にまで発酵した時点でそれ以上発酵が進まないように抑制して品質を一定に保ち、仕上がりの調製をするためのものであるため、例えば発酵後に所定の容器に充填する場合などには、必要に応じて充填の前に冷却を行ってもよい。特に果物や野菜を充填する場合は発酵後充填までに時間を要するため、発酵が終了した時点で一度冷却しておくことが好ましい。
上記工程を経て製造された豆乳発酵食品は、これを4〜5℃に冷却し、発酵を停止させ、熟成させる。当該冷却は、発酵系原料が所望状態にまで発酵した時点でそれ以上発酵が進まないように抑制して品質を一定に保ち、仕上がりの調製をするためのものであるため、例えば発酵後に所定の容器に充填する場合などには、必要に応じて充填の前に冷却を行ってもよい。特に果物や野菜を充填する場合は発酵後充填までに時間を要するため、発酵が終了した時点で一度冷却しておくことが好ましい。
以下、前述の本発明の豆乳発酵食品の製造方法に基づいて、4パターンの豆乳発酵食品の製造例を示す。
〔実施例1;食物繊維添加型飲むタイプ〕
この豆乳発酵飲料をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表3のようになる。
この豆乳発酵飲料をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表3のようになる。
本実施例では、上記表に記載の原料の全量を100gとし、これに前述した5種の乳酸菌よりなる乳酸菌スターターを接種させ、発酵を行う。なお、本実施例における乳酸菌スターター接種量は、109cell/mlの菌体濃度を有するスターターを全量に対して1wt%とする。
製造方法は、豆乳と水を混合したものに、食物繊維、大豆オリゴ糖、スクラロース、乳化剤等の粉末混合物を加えて攪拌混合し、次に液糖、蜂蜜、ココナッツミルク、NaCl溶液を添加して90℃で10分間攪拌して均一化する。その後、110℃で10分間殺菌した後室温まで冷却させ、香料及び乳酸菌スターターを加え、殺菌水で全量を調整し、殺菌済み容器に充填して30℃で発酵させた。発酵終了後は5℃に冷却して保存した。
このようにして製造された豆乳発酵飲料は、所定割合で混合された前記乳酸菌スターターの働きにより、豆乳の有する大豆臭さが大幅に低減された、くせのないまろやかな風味のヨーグルト様発酵飲料となる。
また、主原料である豆乳が食物繊維を豊富に含んでいるのに加え、さらに約5%の食物繊維が付加されているため、大腸疾患やコレステロール代謝、糖代謝の改善、ミネラルバランスの維持、毒性の制御といった食物繊維の有する各種作用を効果的に発揮することができる。
さらに、乳酸菌のほか、甘味料として添加された大豆オリゴ糖によって整腸作用が強化されているだけでなく、高甘味でノンカロリーのスクラロースを糖類の一部と代替することで清涼感のある甘味を与えるとともにカロリーを低減させることができる。また、蜂蜜は殺菌等の各種効果を発揮する上、本豆乳発酵飲料にこくを与える。
〔実施例2;果実添加型飲むタイプ〕
この豆乳発酵飲料をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表4のようになる。
この豆乳発酵飲料をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表4のようになる。
本実施例では、前記原料の全量を110gとし、乳酸菌スターター接種量は、菌体濃度が109cell/mlのものを当該全量に対して1wt%とする。
上記原料から成る豆乳発酵飲料の製造手順は前記実施例1とほぼ同様である。前記濃縮ブルーベリーは、発酵系原料の発酵が終了した後に添加する。
これによって製造された豆乳発酵飲料は、前記実施例1の豆乳発酵飲料と同様の整腸作用等を発揮するとともに、ブルーベリーによってより一層の風味の向上が図られている。
また、当該ブルーベリーの有する坑酸化作用や、目の健康維持、視力回復、尿路感染症予防、発ガン抑制等の効果が発揮されるため、機能性も付加されたものとなる。
〔実施例3;コラーゲンペプチド添加型食べるタイプ〕
本実施例の豆乳発酵食品をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表5のようになる。なお、本実施例の豆乳発酵食品は、実施例1,2の飲料タイプとは異なり、食べるタイプであるため、豆乳の配合比が高く、したがって豆乳の有する各種効果がより好適に発揮されるといえる。
本実施例の豆乳発酵食品をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表5のようになる。なお、本実施例の豆乳発酵食品は、実施例1,2の飲料タイプとは異なり、食べるタイプであるため、豆乳の配合比が高く、したがって豆乳の有する各種効果がより好適に発揮されるといえる。
本実施例では、上記表5に記載の原料の全量を110gとし、これに菌体濃度109cell/mlの乳酸菌スターターを全量に対して1wt%接種させる。
上記原料から成る豆乳発酵食品の製造手順は前記実施例1とほぼ同様であるが、異なる点としては、原料の混合工程において本実施例の特徴であるコラーゲンペプチドを添加する点が挙げられる。
このようにして製造された豆乳発酵食品は、コラーゲンペプチドが含まれていることから、当該コラーゲンペプチドの働きにより、表皮の水分蒸発量の減少、角質のバリア機能の正常化、肌の粘弾性の改善、老化の抑制、などの美肌効果が発揮される。また、乳酸菌もコラーゲンも坑潰瘍性、血圧抑制などの生理調節機能を有していることから、これらの効果も期待できるほか、コラーゲンと、豆乳に含有されており乳酸菌の発酵作用でより吸収されやすくなっているイソフラボンとの相互作用により、骨や関節の強化・形成等の効果も図られ、高い機能性が付加されたものとなる。
〔実施例4;ナタデココ添加型食べるタイプ〕
本実施例の豆乳発酵食品をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表6のようになる。
本実施例の豆乳発酵食品をなす原料及びその配合割合を示すと下記の表6のようになる。
本実施例では、原料の全量を130gとし、菌体濃度109cell/mlの乳酸菌スターターを全量に対して1wt%接種する。
製造手順は前記実施例3とほぼ同様であるが、前記コラーゲンペプチドと異なり、ナタデココは、他の原料が加熱殺菌された後、すなわち香料と同じ段階で添加するものとする。
このようにして製造された豆乳発酵食品は、ナタデココにより風味、食感が良好なものとなり嗜好性が大幅に向上する。また、本実施例ではナタデココが添加された後に発酵が行われるため、当該ナタデココが乳酸菌の増殖に最適な生息場となり、食品中の乳酸菌数が多く、かつ、食品保存時においても生菌数を高い状態で維持する効果も期待できる。
Claims (8)
- 豆乳発酵食品の製造に使用される乳酸菌スターターであって、
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)の5種類の乳酸菌株を混合してなることを特徴とする乳酸菌スターター。 - 前記乳酸菌スターターを成す各乳酸菌株の混合比率が、
ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)が0.5〜1.5%、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)が0.5〜1.5%、ラクトコッカス ・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ディアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)が95〜98%、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)が0.5〜1.5%、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)が0.1〜0.5%であることを特徴とする請求項1記載の乳酸菌スターター。 - 前記各乳酸菌株の菌体濃度がそれぞれ107〜108cell/mlとなるように接種されることを特徴とする請求項1又は2記載の乳酸菌スターター。
- 豆乳を主原料とする豆乳発酵食品の製造方法であって、
原料の発酵に用いるスターターを請求項1〜3いずれか1項に記載の乳酸菌スターターとすることを特徴とする豆乳発酵食品の製造方法。 - 前記発酵の際、発酵温度を25〜35℃、発酵時間を12〜20時間とすることを特徴とする請求項4記載の豆乳発酵食品の製造方法。
- 前記豆乳発酵食品の原料として、甘味料、乳化剤、食物繊維、香料、NaClを含むことを特徴とする請求項4又は5いずれか1項に記載の豆乳発酵食品の製造方法。
- 前記豆乳発酵食品の原料として、さらにコラーゲンペプチド、果実、ナタデココのうちいずれか1以上を含むことを特徴とする請求項6記載の豆乳発酵食品の製造方法。
- 前記請求項4〜7いずれか1項に記載の方法によって製造された豆乳発酵食品。
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