JP3821414B2 - X線回折分析方法及びx線回折分析装置 - Google Patents

X線回折分析方法及びx線回折分析装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インプレーン回折( In-Plane 回折)を利用したX線回折分析方法及びその分析に適したX線回折分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インプレーン回折とは、図12に示すように、試料57の表面に微小入射角度δでX線R1を入射すると、試料表面に対して微小角度の所に回折線R3が発生する現象である。これは、X線R1を微小入射角度で試料57に入射すると、試料57の内部に試料表面と平行に走るX線の成分が現れ、それが試料表面に垂直な結晶面によって回折を起こし、その回折線が試料表面すれすれに出て行くという現象に基づくものである。
【0003】
そして、このインプレーン回折は以下のような特徴を持っている。すなわち、
(1) 通常の方法では測定できない薄膜の表面に垂直な結晶格子面からの回折を測定することができ、これにより、試料表面に平行な結晶格子の長さや結晶性を直接に評価することが可能である。
【0004】
(2) X線が試料表面すれすれに入射するため、試料内部に進入する深さは極めて薄く、およそ数十〜数百Å程度である。従って、試料が載っている基板や試料が多層構造である場合の下地層からのバックグラウンドをほとんどなくすことができ、超薄膜からの回折線を測定可能である。
【0005】
このようにインプレーン回折は薄膜評価に適した方法であって、膜厚がますます薄くなるような試料、あるいは基板との関係で面内の配向が現れるような試料等の評価に関して非常に有用である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のようなインプレーン回折を利用したX線回折分析方法は理論的には従来から周知のものであるが、この方法を用いて信頼性の高い測定結果を得るためには、単色化された強度の強い平行X線ビームを試料に入射させなければならず、そのためにはそれ専用の大規模なX線発生源を用意しなければならず、それ故、実験室レベルでは到底実現することができなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、強度の強い平行X線ビームを簡単に作り出すことにより、大規模な設備を構築する必要なく、実験室レベルでも信頼性の高いインプレーン回折測定を行うことができるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るX線回折分析方法は、X線を試料に微小入射角度で入射させたときに、試料表面に垂直な結晶面で回折するインプレーン回折線をX線検出手段によって検出するX 線回折分析方法において、X線源から発生したX線を放物面多層膜モノクロメータで回折させ、さらにソーラスリットを通した後に前記試料に入射し、前記放物面多層膜モノクロメータは重元素層と軽元素層とを交互に複数回積層することによって形成され、前記放物面多層膜モノクロメータの表面であってX線が入射する面は放物面に形成され、前記重元素層と前記軽元素層の1周期分の積層厚さは各層においてX線回折を生じるようにX線出射側の積層厚さがX線入射側の積層厚さよりも大きく設定され、前記放物面多層膜モノクロメータによってX線を平行化させる方向が前記試料に対するX線の入射角度を制御する方向となるように当該放物面多層膜モノクロメータを配置し、インプレーン方向の分解能を高める状態に前記放物面多層膜モノクロメータの後方位置にソーラスリットを配置することを特徴とする。
【0009】
上記の放物面多層膜モノクロメータは、例えば図3に示すように、重元素層2と軽元素層3とを交互に複数回積層すること及びX線源Fから発生して発散するX線Rが入射する表面1aが放物面とされることを要件として形成されている。重元素層2と軽元素層3との積層構造を周期的に複数層繰り返すことにより、特定X線、例えばCuKα線を効率良く回折でき、その結果、出射側に強度の強いX線を得ることができる。さらに、モノクロメータの表面1aを放物面とすることにより、その表面1aの全面において入射X線を平行方向に反射できるようになり、正確な平行ビームを得ることができる。つまり、放物面多層膜モノクロメータを用いれば、単色化された平行X線ビームを非常に強度が高い状態で得ることができる。
【0010】
なお、各層においてX線を回折できるようにするため、一対の重元素層2及び軽元素層3の積層厚さ、すなわち1周期分の積層厚さに関しては、X線出射側の積層厚さT2がX線入射側の積層厚さT1よりも大きくなっている。例えばT1≒30Å、T2≒40Å程度に設定する。また、重元素としては、例えばW(タングステン)等が考えられ、軽元素としては、例えば、Si(シリコン)、C(炭素)、BC 等が考えられる。なお、積層構造としては、2種類の元素を用いた2層構造や、3種類以上の元素を用いた複数層構造が考えられる。
【0011】
発明に係るX線回折分析方法によれば、モノクロメータとして上記のような放物面多層膜モノクロメータを用いることにより、強度の強い平行X線ビームを形成できるので、実験室レベルの簡易な構成により信頼性の高いインプレーン回折測定を行うことができる。
【0012】
次に、上記構成のX線回折分析方法において、前記X線検出手段は点領域X線検出手段とすることができ、その場合には、その点領域X線検出手段は試料表面に直交する軸線である2θφ軸線を中心として試料の回りを回転しながら前記インプレーン回折線を検出する。
「点領域X線検出手段」というのは、X線ビームを点状に取り込んでそのX線強度を検出する構造のX線検出手段のことであり、例えば、比例計数管(Proportional Counter)やシンチレーションカウンタ(Scintillation Counter)等を使用できる。この点領域X線検出手段は、2θφ軸線のまわりに回転移動することにより、各2θφ角度位置におけるインプレーン回折線を検出する。
【0013】
次に、本発明に係るX線回折分析方法において、前記X線検出手段は線領域X線検出手段とすることができ、その場合には、その線領域X線検出手段による線状X線検出領域は試料表面に直交する軸線である2θφ軸線を中心として試料の回りに設定される。
「線領域X線検出手段」というのは、X線ビームを少なくとも線状に取り込んでその線状領域内の個々の点におけるX線強度を検出する構造のX線検出手段のことであり、例えば、(1)X線ビームを線状にとり込む構造のPSPC(Position Sensitive Proportional Counter:位置感応形X線検出手段)、(2)X線を平面的に受け取って感光するX線フィルム、(3)X線が当たった所にエネルギ潜像を蓄積できレーザ光等の照射によってそのエネルギ潜像を光として放出できる構造の平面状蓄積性蛍光体等を使用することができる。
【0014】
本実施態様によれば、X線検出手段を走査移動させることなく固定状態のままで、各2θφ角度位置におけるインプレーン回折線を検出できる。この実施態様によれば、X線検出手段を走査移動させない分だけ、上記点領域X線検出手段を用いる場合に比べて回転光学系が1つ少なくて済む。
【0015】
次に、本発明に係るX線回折分析装置は、(1)X線を発生するX線源と、そのX線を単色化する放物面多層膜モノクロメータと、その放物面多層膜モノクロメータから出るX線が入射するように試料を支持する4軸ゴニオメータと、前記放物面多層膜モノクロメータの後方位置に配置されたソーラスリットとを有し、(2)前記放物面多層膜モノクロメータは重元素層と軽元素層とを交互に複数回積層することによって形成され、(3)前記放物面多層膜モノクロメータの表面であってX線が入射する面は放物面に形成され、(4)前記重元素層と前記軽元素層の1周期分の積層厚さは各層においてX線回折を生じるようにX線出射側の積層厚さがX線入射側の積層厚さよりも大きく設定され、(5)前記放物面多層膜モノクロメータはX線を平行化させる方向が前記試料に対するX線の入射角度を制御する方向となるように配置され、(6)前記4軸ゴニオメータは、(a)前記X線源から出て前記試料へ入射するX線の光軸と直交し前記試料を通るω軸線を中心として回転するω回転台と、(b)そのω回転台上に設けられていて前記ω軸線が試料表面を通るようにその試料を支持し且つω軸線に直交するφ軸線を中心としてその試料を面内回転させるφ回転台と、(c)前記ω軸線を中心として前記ω回転台から独立して回転する2θ回転台と、(d)その2θ回転台上に設けられていて前記ω軸線に直交する2θφ軸線を中心として回転し、さらにX線検出手段を支持する2θφ回転台とを有し、(7)前記ソーラスリットは、前記2θφ軸線を中心として回転する前記X線検出手段による分解能、すなわちインプレーン回折分解能を高める状態に配置されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るX線回折分析装置によれば、モノクロメータとして上記のような放物面多層膜モノクロメータを用いることにより、強度の強い平行X線ビームを形成できるので、実験室レベルの簡易な構成により十分な信頼性をもってインプレーン回折測定を行うことができる。また、本発明に係るX線回折分析装置によれば、インプレーン回折測定に限らず、強度の強い平行X線ビームを試料に照射する必要があると共に、試料を独立した4軸線のまわりに回転移動させる必要がある各種の測定、例えば、逆格子空間内の任意の点近傍のX線回折強度測定を容易に実行することができる。
【0017】
上記構成のX線回折分析装置において、前記φ回転台と前記ω回転台との間に、試料をω軸線に対して進退移動させるためのスライドステージを設けることができる。こうすれば、ω軸線に対する試料の前後位置を調節でき、試料を正確にω軸線に一致させることができる。
【0018】
本発明に係るX線回折分析装置において、前記試料を傾斜移動させるための傾斜移動手段を設けることができる。特に、縦方向及び横方向のそれぞれに傾斜移動させることのできる傾斜移動手段を設けることが望ましい。こうすれば、試料表面の法線を前記φ軸線に正確に一致させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るX線回折分析装置の一実施形態を示している。このX線回折分析装置は、X線焦点すなわちX線源FからX線を発生するX線管4と、入射側光学ユニット6と、試料7及び点領域X線カウンタ8に対して測角を行う4軸ゴニオメータ9とを含んで構成される。
【0020】
X線源Fは、例えば熱電子を放出するフィラメントと、そのフィラメントに対向して配設されるターゲットとによって構成でき、その場合には、フィラメントから放出される熱電子がターゲットに高速度で衝突することによりそのターゲットからX線が放射される。
【0021】
入射側光学ユニット6の内部には、図2に示すように、X線源Fから出て発散するX線Rの進行路に沿って、放物面多層膜モノクロメータ1及び横方向へのX線の発散を規制するソーラスリット11が配設される。放物面多層膜モノクロメータ1は、図3のように重元素層2と軽元素層3とを交互に複数回積層し、さらにその表面1aを放物面とすることによって形成される。重元素層2は、例えばW(タングステン)によって形成され、軽元素層3は、例えばSi(シリコン)、C(炭素)、BC 等によって形成される。
【0022】
図1において、4軸ゴニオメータ9は、X線ビームRに対して所定位置に設定されるω軸線を中心として回転するω回転台12と、そのω回転台12を取り囲むように配設されていて同じくω軸線を中心として回転する2θ回転台13と、その2θ回転台13の上に設けられた2θφ回転台14とを有する。また、ω回転台12の上には、スライドステージ16、φ回転台17及び試料台18が設けられる。試料7は、接着剤による接着、空気吸引による吸着、その他必要に応じた各種の方法によって試料台18に装着される。なお、試料台18には、試料7をω軸線及び水平軸線を中心として傾斜移動させるためのチルト機構が内蔵されている。
【0023】
X線カウンタ8及びその前に配設される出射側光学ユニット10は2θφ回転台14から延びるカウンタアーム19によって支持される。出射側光学ユニット10の内部には、X線の横方向への発散を規制するソーラスリットや受光スリット等が格納される。
【0024】
ω回転台12はω回転駆動装置21によって駆動されてω軸線を中心として回転する。2θ回転台13は2θ回転駆動装置22によって駆動されてω軸線を中心として回転する。この回転はω回転台12とは別個独立に行うことができる。2θφ回転台14には2θφ回転駆動装置23が付設され、この2θφ回転駆動装置23は2θφ回転台14を2θφ軸線を中心として回転移動させる。2θφ軸線は2θ回転台13の2θ回転に従ってω軸線を中心として回転移動するが、その移動の際、2θφ軸線は常にω軸線に対して直角の位置関係を維持する。
【0025】
スライドステージ16にはスライド駆動装置24が付設され、スライドステージ16はそのスライド駆動装置24によって駆動されて矢印Aで示すようにω軸線に近づき又は遠ざかる方向へ進退移動する。φ回転台17にはφ回転駆動装置26が付設される。このφ回転駆動装置26の働きにより、試料7がφ軸線を中心として回転、いわゆる面内回転する。φ軸線はω軸線に直角な平面にあってω軸とともに回転する。試料台18内のチルト機構にはチルト駆動装置27が付設される。チルト駆動装置27に駆動されて上記チルト機構が動作するとき、試料7が矢印Bのようにω軸線を中心として傾斜移動するか、又は矢印Cのように水平軸線を中心として傾斜移動する。
【0026】
ω回転駆動装置21、2θ回転駆動装置22、2θφ回転駆動装置23、スライド駆動装置24、φ回転駆動装置26及びチルト駆動装置27は、いずれも、電動モータ等といった駆動源や、ウオームとウオームホイール等といった動力伝達装置等を用いて構成できる。そしてこれらの駆動装置は図6に示すように、CPU28及びメモリ29を含む制御回路31によってそれらの動作が制御される。メモリ29はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等といった内部メモリ及びハードディスク等といった外部メモリを含む概念である。本X線回折分析装置によって実行されるX線回折分析方法のための一連の動作を実現するためのプログラムソフトは、例えばメモリ29内のROM内に格納される。
【0027】
制御回路31の入力ポートには、オペレータによって操作される入力装置としてのキーボード32や、X線カウンタ8(図1参照)の出力端子に接続されたX線強度演算回路33が接続される。X線強度演算回路33はX線カウンタ8の出力信号に基づいてX線強度を演算する。演算されたX線強度は信号の形でCPU28へ伝送されてそのCPU28による演算処理に供される。そして、必要に応じてその演算されたX線強度がグラフ等の形でディスプレイ34に映像として表示される。
【0028】
本実施形態のX線回折分析装置は以上のように構成されているので、この装置を用いてX線回折測定、例えばインプレーン回折測定を行う場合には、図1において試料台18の所定位置に試料7を装着し、図4に示すように試料7に対するX線入射角度δを試料表面にすれすれの微小角度に設定し、試料7に対するX線カウンタ8の角度2θをX線入射角度δに対応した所定値に設定する。そして、X線源Fから発生するX線を放物面多層膜モノクロメータ1によって単色化、例えばCuKα線に単色化し、同時に発散X線ビームを平行X線ビームに形成する。さらに、ソーラスリット11によって横方向の発散を規制しながら平行X線ビームを微小入射角度δで試料7に入射する。この状態で、図5において2θφ回転台14を2θφ軸線を中心として回転させてX線カウンタ8を試料7まわりに走査回転移動させ、その走査回転中にX線カウンタ8によってインプレーン回折線を検出する。
【0029】
このX線回折分析装置によれば、モノクロメータとして上記のような放物面多層膜モノクロメータ1を用いたので、強度の強い平行X線ビームを形成でき、それ故、大規模で特別なX線源を構築する必要なく、実験室レベルの簡易な構成により信頼性の高いインプレーン回折測定を行うことができる。
【0030】
【実施例】
以下、図1の装置を用いて行ったインプレーン回折測定について説明する。
まず、インプレーン測定光学系を図7に示すように配置した。X線源Fの容量は50KV、40mAとした。インプレーン回折を十分な強度と分解能で測定するため、入射側に放物面多層膜モノクロメータ1を設置してCuKαの特性線を取り出すようにした。このとき、モノクロメータ1によって平行化される方向はX線入射角δを制御する方向として配置した。入射角δはδ=0〜0.35°に設定した。X線カウンタ8としては、シンチレーションカウンタ(SC)を用いた。
【0031】
試料7の表面に平行なインプレーン方向の分解能を出すために、入射側と受光側にそれぞれソーラスリット11を挿入した。本実施例では、入射側ソーラスリット11として発散特性div.=1.0°のものを用い、受光側ソーラスリット11として発散特性div.=0.17°のものを用いた。
【0032】
今回、試料7として選んだのはコンピュータの記憶媒体であるハードディスクであって、Co(コバルト)磁性層を含んだハードディスクである。そして、そのCo磁性層の配向や結晶軸の長さをインプレーン回折によって測定することが主な目的である。Co磁性層とその下地であるCr層の結晶の配向関係は基本的には図8のようになっていると考えられる。つまり、試料表面に垂直にCrの <001> 軸とCoの <11-20> 軸が向くように配向しており、c軸が試料表面に平行に延びる形になっている。これらの配向性は、Cr(001)面とCo(11-20)面の回折線で極点測定をすれば確認できる。
【0033】
しかし、ハードディスクの磁化特性と構造との関連を調べようとしたとき、磁化軸であるCoのc軸についての情報が重要であると考えられる。そのためには、Co(0002)面からの回折によってc軸の長さや面内での配向を測定するのが最も効率が良い。インプレーン回折は、この目的のために最も適した測定方法だといえる。以上の点からCo(0002)反射を捉えるために2θφ=45°付近を中心にインプレーン回折測定を行った。測定手順と得られた結果は以下の通りである。
【0034】
(1) 図1のスライドステージ16を用いて試料7の前後位置の調節を行う。
(2) X線の試料7への入射角δ(図4参照)を決めるため、δ角を変化させてX線反射率を測定する。その結果の例を図9に示す。X線反射率が全反射から徐々に減少していく様子が良く分かる。今回は、特に深さ方向の分布を測定することが目的ではないので、最も強いインプレーン回折強度が得られる角度位置(すなわち、図に矢印Dで示す位置)にδ角の値を設定した。
【0035】
(3) X線カウンタ8をCo(0002)反射が出てくると考えられる2θφ=44〜45°付近を中心にスキャンする。このとき、面内に配向があると考えられるので、試料7の自転(すなわち、φ角回転)も行い、最も強いCo(0002)反射が得られる位置と最も強度が弱い位置を探す。それをφMAX,φMINとする。
【0036】
(4) φMAX,φMINにおいて、2θφスキャンした結果を図10に示す。なお、試料としては市販されている比較的新しい500MB/diskのものと少し古い80MB/diskの記憶容量のものを用いた。但し、φ=0は円周方向に平行にX線が入射する位置を選んだ。図10によれば、通常の方法では測定できない、表面に垂直な結晶面からの回折が、良好なS/N比で測定できていることが分かる。
【0037】
さらに、面内の配向に関する情報も明確に得られ、500MB/diskの試料においては強い配向があり、また80MB/diskには、ほとんど面内配向がなことがわかる。また、前者の場合φMAX=112°、φMIN=22°である。回折角2θφが約44°であることを考慮すると、Coのc軸は主に円周方向に配向していると結論される。
【0038】
図10には、Co(0002)反射以外に、a軸の関係するCo(10-10),Co(10-11)反射と考えられるピークもみられる。このような反射を用いれば、a軸の表面に平行な成分に関する情報も得られる。以上のように、インプレーン回折によれば、非常に薄い膜からの回折をS/N比良く測定できる。但し、今回のCo試料の場合、入射しているCuKα線によって蛍光X線が励起され、40〜50cps程度のバックグラウンドを作っており、散乱線はほとんど来ていないことが確認された。従って、蛍光X線を励起しない条件であれば、インプレーン回折のバックグラウンドは非常に低いものになる。
【0039】
次に、c軸配向の様子を知るため、Co(0002)反射のピークトップに2θφ位置を固定して試料7を自転(すなわち、φ回転)して測定した結果を図11に示す。このデータからc軸が円周方向にどの程度向いているかという点が良く分かる。
【0040】
今回の測定で得られた各ピークの情報をまとめると次の表1の通りである。
【表1】
(各回折線のピーク位置、強度及び半価幅(FWHM))
Figure 0003821414
【0041】
以上の実験から次のことが分かった。すなわち、インプレーン回折は薄膜の結晶評価に有用であり、このインプレーン回折を利用することにより、S/N比に優れたデータを得ることができる。また、放物面多層膜モノクロメータを用いることにより、封入管のように極一般的に用いられるX線発生装置であっても実用上支障のない強度で測定を行うことができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係るX線回折分析方法によれば、インプレーン回折測定においてモノクロメータとして放物面多層膜モノクロメータを用いることにより、強度の強い平行X線ビームを形成できるので、実験室レベルの簡易な構成により十分な信頼性を持ってインプレーン回折測定を行うことができるようになった。
【0043】
また、本発明に係るX線回折分析装置によれば、放物面多層膜モノクロメータを4軸ゴニオメータと組み合わせて用いるようにしたので、インプレーン回折測定あるいはその他のX線回折測定を極めて簡単に行うことができるようになった。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るX線回折分析装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のX線回折分析装置の要部を示す斜視図である。
【図3】放物面多層膜モノクロメータの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図4】図1のX線回折分析装置の平面図である。
【図5】図1のX線回折分析装置の正面図である。
【図6】図1のX線回折分析装置で用いられる電気制御系の一実施形態を示すブロック図である。
【図7】図1のX線回折分析装置を用いる場合の光学的要素の配置形態の一例を示す図である。
【図8】図7の測定系によって測定できる試料の結晶方位関係を示す図である。
【図9】図7の測定系を用いて行われた測定の測定結果を示すグラフである。
【図10】図7の測定系を用いて行われた他の測定の測定結果を示すグラフである。
【図11】図7の測定系を用いて行われたさらに他の測定の測定結果を示すグラフである。
【図12】一般的なインプレーン回折測定を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1.放物面多層膜モノクロメータ、 1a.放物面多層膜モノクロメータの表面、
2.重元素層、 3.軽元素層、 4.X線管、 6.入射側光学ユニット、
7.試料、 8.点領域X線カウンタ、 9.4軸ゴニオメータ、
12.ω回転台、 13.2θ回転台、 14.2θφ回転台、
16.スライドステージ、 17.チルト機構、 18.試料台、
19.カウンタアーム、 F.X線源、 R.X線

Claims (6)

  1. X線を試料に微小入射角度で入射させたときに、試料表面に垂直な結晶面で回折するインプレーン回折線をX線検出手段によって検出するX線回折分析方法において、
    X線源から発生したX線を放物面多層膜モノクロメータで回折させ、さらにソーラスリットを通した後に前記試料に入射し、
    前記放物面多層膜モノクロメータは重元素層と軽元素層とを交互に複数回積層することによって形成され、
    前記放物面多層膜モノクロメータの表面であってX線が入射する面は放物面に形成され、
    前記重元素層と前記軽元素層の1周期分の積層厚さは各層においてX線回折を生じるようにX線出射側の積層厚さがX線入射側の積層厚さよりも大きく設定され、
    前記放物面多層膜モノクロメータによってX線を平行化させる方向が前記試料に対するX線の入射角度を制御する方向となるように当該放物面多層膜モノクロメータを配置し、
    インプレーン方向の分解能を高める状態に前記放物面多層膜モノクロメータの後方位置にソーラスリットを配置する
    ことを特徴とするX線回折分析方法。
  2. 請求項1記載のX線回折分析方法において、前記X線検出手段は点領域X線検出手段であり、その点領域X線検出手段は試料表面に直交する軸線である2θφ軸線を中心として試料の回りを回転しながら前記インプレーン回折線を検出することを特徴とするX線回折分析方法。
  3. 請求項1記載のX線回折分析方法において、前記X線検出手段は線領域X線検出手段であり、その線領域X線検出手段による線状X線検出領域は試料表面に直交する軸線である2θφ軸線を中心として試料の回りに設定されることを特徴とするX線回折分析方法。
  4. X線を発生するX線源と、そのX線を単色化する放物面多層膜モノクロメータと、その放物面多層膜モノクロメータから出るX線が入射するように試料を支持する4軸ゴニオメータと、前記放物面多層膜モノクロメータの後方位置に配置されたソーラスリットとを有し、
    前記放物面多層膜モノクロメータは重元素層と軽元素層とを交互に複数回積層することによって形成され、
    前記放物面多層膜モノクロメータの表面であってX線が入射する面は放物面に形成され、
    前記重元素層と前記軽元素層の1周期分の積層厚さは各層においてX線回折を生じるようにX線出射側の積層厚さがX線入射側の積層厚さよりも大きく設定され、
    前記放物面多層膜モノクロメータはX線を平行化させる方向が前記試料に対するX線の入射角度を制御する方向となるように配置され、
    前記4軸ゴニオメータは、
    前記X線源から出て前記試料へ入射するX線の光軸と直交し前記試料を通るω軸線を中心として回転するω回転台と、
    そのω回転台上に設けられていて前記ω軸線が試料表面を通るようにその試料を支持し且つω軸線に直交するφ軸線を中心としてその試料を面内回転させるφ回転台と、
    前記ω軸線を中心として前記ω回転台から独立して回転する2θ回転台と、
    その2θ回転台上に設けられていて前記ω軸線に直交する2θφ軸線を中心として回転し、さらにX線検出手段を支持する2θφ回転台とを有し、
    前記ソーラスリットは、前記2θφ軸線を中心として回転する前記X線検出手段による 分解能を高める状態に配置される
    ことを特徴とするX線回折分析装置。
  5. 請求項記載のX線回折分析装置において、前記φ回転台と前記ω回転台との間に、前記試料を前記ω軸線に対して進退移動させるためのスライドステージを設けたことを特徴とするX線回折分析装置。
  6. 請求項又は請求項記載のX線回折分析装置において、前記試料を傾斜移動させるための傾斜移動手段を前記φ回転台上に設けたことを特徴とするX線回折分析装置。
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