JP3819579B2 - 生分解性グリース組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性にすぐれ、微生物などの作用によって短期間で分解されるため自然環境に影響を及ぼすおそれの少ない、いわゆる生分解性グリース組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
グリースは、自動車をはじめとする各種機器類、装置類の潤滑やさび止めなどに広く利用されている。グリースの主成分である基油としては、安定性や潤滑性能などを考慮して鉱物油が一般的に使用される。
ところが鉱物油は、その安定性ゆえに、そのまま放置したのでは長期間にわたって分解されないため、たとえばグリースが機器外に流出するなどした際に、海洋、河川、地下水、土壌などを汚染して、自然環境に影響を及ぼすおそれのあることが、近年の研究により明らかとなった。
【0003】
そこでかかる問題を解決すべく、基油として、生分解性にすぐれ、そのまま放置しても微生物などの作用によってごく短期間で、最終的に水と二酸化炭素まで分解されるため自然環境に影響を及ぼすおそれの少ない植物油を用いたグリースが検討された。
しかし、植物油を用いた従来のグリースは、とくに酸化安定性が不十分で、基油に鉱物油を用いた汎用のグリースに比べて潤滑寿命が著しく短いという問題があった。また上記従来の植物油系のグリースは、使用可能温度が80℃以下に制限され、それ以上の高温では使用できないという問題もあった。
【0004】
そこで近時、上記の問題を解決すべく、基油に含有させる各種の添加剤のうち極圧剤として、分子中に硫黄と燐とを含む特定の化合物を使用するとともに、酸化防止剤を併用することで、基油としての植物油のもつすぐれた生分解性を維持しつつ、酸化安定性、潤滑寿命ならびに使用可能温度を向上させた生分解性グリース組成物が提案された(特開平8−20788号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の公報に開示された、基油として植物油を用いた組成物は、それ以前の植物油系のものに比べて上記の各特性が向上しているものの、基油として鉱物油を用いた汎用のグリースに比べれば依然としてその向上効果は不十分であり、かかる汎用のグリースが使用されるあらゆる分野においてこれにとって代わるものとはなりえず、実用できる範囲が制限されるという問題があった。とくに高温下で高速回転する転がり軸受などの、過酷な条件下で使用される機器類には、かかる生分解性グリース組成物を使用できなかった。
【0006】
本発明の目的は、基油として生分解性にすぐれた植物油を使用して、なおかつ従来の生分解性グリースよりもさらに酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性にすぐれるため、基油として鉱物油を用いた汎用のグリースが使用される広い範囲での実用、とくに転がり軸受などの、過酷な条件下で使用される機器類への使用が可能な、新規な生分解性グリース組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、発明者らは、基油として植物油を用いたグリース組成物に含有させる各種の添加剤についてさらに検討を行った。
その結果、
<1> 増ちょう剤として、製造時の加熱温度が低いために、基油としての植物油に及ぼす影響が小さく、かつ安全性の高いカルシウム石けんを使用するとともに、
<2> 酸化防止剤として、植物油の酸化防止にとくに顕著な効果がみられた、(a)一般式(1):
【0008】
【化5】
Figure 0003819579
【0009】
〔式中、Φ1 およびΦ2 は、同一または異なるアリール基を示す。〕
で表される芳香族第2級アミン類、
および
(b) 一般式(2) :
【0010】
【化6】
Figure 0003819579
【0011】
〔式中、R1は水素原子またはアルコキシ基を示す。〕
で表されるキノリン誘導体またはその高分子化物、
の2種の化合物を併用し、かつ
<3> 耐熱性付与剤として、ペンタエリスリトールと、直鎖脂肪酸とのエステルである生分解性を有するエステル油を、好ましくは組成物全量の20重量%以下程度の範囲で含有させると、
これら添加剤の相乗効果によって、基油として植物油を使用しているにもかかわらず、従来の生分解性グリースに比べてさらに酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性にすぐれ、広い範囲での実用、とくに転がり軸受などの、過酷な条件下で使用される機器類への使用が可能な、新規な生分解性グリース組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明の生分解性グリース組成物は、基油として植物油を含有するものであって、
増ちょう剤としてカルシウム石けんを含有するとともに、
(a) 前記一般式(1)で表される芳香族第2級アミン類、および
(b) 前記一般式(2)で表されるキノリン誘導体またはその高分子化物、
を、それぞれ酸化防止剤として含有し、かつペンタエリスリトールと、直鎖脂肪酸とのエステルである生分解性を有するエステル油を、耐熱性付与剤として含有することを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
本発明の生分解性グリース組成物は、基油としての植物油に、前述したように、増ちょう剤としてのカルシウム石けんと、2種の酸化防止剤と、耐熱性付与剤としての生分解性を有するエステル油とを含有させるとともに、従来同様に極圧剤、さび止め剤などの各種の添加剤を含有させることによって構成される。
【0014】
このうち植物油としては、たとえばナタネ油、ヒマワリ油、大豆油などの、植物の果実や種子などから採取される、生分解性を有する種々の植物油がいずれも使用可能であるが、とくにグリースにとってともに重要な特性であるものの、相反してその両立が容易でない、低温流動性と酸化安定性とのバランスにすぐれる上、耐熱性にもすぐれた、ナタネ油が好適に使用される。
【0015】
増ちょう剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムに代表されるカルシウム石けんが使用される。
一般に、上記カルシウム石けんなどの金属石けん系の増ちょう剤を含有するグリースは、基油中で、金属石けんのもとになる脂肪酸と、金属水酸化物などとを反応させて形成されるが、そのグリース化の温度次第では、基油を酸化劣化させるなどの影響を及ぼすおそれがある。
【0016】
とくに鉱物油に比べて安定性の低い植物油系のグリースにおいては、その影響が大きく、かかる植物油系のグリースの酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性を低下させる原因の一つとなる。
しかしカルシウム石けんは、その他の金属石けん類、たとえばリチウム石けんなどに比べてグリース化の温度を低く設定できる。たとえばリチウム石けんの場合、グリース化の温度が200℃を超えるのに対し、脂肪酸と水酸化カルシウムとを反応させるカルシウム石けんの場合には、グリース化の温度がおよそ150℃以下程度である。それゆえカルシウム石けんは、基油としての植物油に及ぼす影響が小さいために、植物油系のグリースの酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性を低下させるおそれがない。
【0017】
また、かかるカルシウム石けんは、その他の金属石けん類に比べて毒性がなく安全性が高いために、機器外に流出するなどした際に、自然環境に及ぼす影響が小さいという利点もある。
増ちょう剤としてのカルシウム石けんの含量は、組成物全量の5〜14重量%であるのが好ましい。
【0018】
前記2種の酸化防止剤のうち(a)の芳香族第2級アミン類としては、前記一般式(1) の構造を有する種々の化合物があげられるが、とくに下記式(1-1) :
【0019】
【化7】
Figure 0003819579
【0020】
で表されるN−フェニル−1−ナフチルアミンが、以下に述べる(b) のキノリン誘導体またはその高分子化物と併用した際に、植物油の酸化防止にとくに顕著な効果を発揮するために、好適に使用される。
また(b) のキノリン誘導体またはその高分子化物としては、前記一般式(2) の構造を有する種々の化合物や、その高分子化物があげられる。具体的にはたとえば、式(2-1) :
【0021】
【化8】
Figure 0003819579
【0022】
で表されるポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)〔JIS K6211「ゴム用老化防止剤」において規定された老化防止剤TMDQに相当するもの、比重1.08〜1.11、軟化点80〜110℃、灰分0.5%以下、加熱減量0.7%以下〕や、あるいは6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン〔上記JIS K6211「ゴム用老化防止剤」において規定された老化防止剤ETMDQに相当するもの〕などがあげられる。
【0023】
中でも前者の、式(2-1) で表されるポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)が、前述した(a)の芳香族第2級アミン類と併用した際に、植物油の酸化防止にとくに顕著な効果を発揮するために、好適に使用される。
なお、前記式(2-1) 中のnは、かかる化合物が、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの単量体だけでなく、当該化合物の2量体以上の、種々の縮合物をも含む混合物(n=1の単量体も含みうる)であることを示しているが、その具体的な数値範囲は明らかでない。
【0024】
これは、
(ア) 上記の化合物が、アセトンとアニリンソルトとを高温、高圧下で縮合反応させて製造される際に、多種の副反応生成物(とくに2量体以上の縮合物)が多量に発生しやすいこと、
(イ) 反応生成物は固形状であって単離が困難であること、
(ウ) 単離しない混合物の状態でも酸化防止剤として十分に機能するため、あえて単離する必要がないこと、
などの理由からである。
【0025】
そこで、前述したJIS K6211「ゴム用老化防止剤」では、nを規定するのでなく、前記のように比重や軟化点などの他の特性でもって化合物を特定しており、本明細書においてもこれに準ずるものとする。
上記(a)(b)の両酸化防止剤の含量は、それぞれ組成物全量の0.5〜3.5重量%であるのが好ましい。
【0026】
両酸化防止剤のうちの少なくとも一方でも、その含量が0.5重量%未満となった場合には、(a)(b)の2種の酸化防止剤を併用したことによる効果が得られず、酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性が低下するおそれがある。また逆に、両酸化防止剤のうちの一方または両方の含量が3.5重量%を超えても、それ以上の添加効果が得られないだけでなく、過剰の酸化防止剤がグリース中に析出するといった問題を生じるおそれもある。
【0027】
なお両酸化防止剤の含量は、それぞれ上記の範囲内でもとくに、1〜3重量%であるのが好ましい。
また両酸化防止剤は、その合計の含量が、組成物全量の2〜5重量%であるのが好ましい。
耐熱性付与剤としては、ペンタエリスリトールと、直鎖脂肪酸とのエステルである、生分解性を有する種々のエステル油がいずれも使用可能であるが、とくにグリース組成物の潤滑特性を考慮すると、基油粘度が高く、かつグリースの低温流動性を損なわないものが好ましい。
【0028】
エステル油の生分解性の程度は、グリース組成物全体としての生分解性を阻害させないために、たとえばCEC規格(欧州規格諮問委員会規格)のL−33−A−93(1993)「Biodegradability of Two-stroke Cycle Outboard Engine Oils in Water(水中での2ストロークサイクル船外エンジン用オイルの生分解性試験方法。以下、CEC法と略記する。)」にて規定された生分解度で表して80%以上、とくに90%以上であるのが好ましい。
【0029】
かかるエステル油の具体例としては、たとえばペンタエリスリトールと、炭素数8〜12の直鎖脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、アジピン酸などの1種または2種以上)とのエステルなどが好適に使用される。
エステル油の含量は、組成物全量の5〜20重量%であるのが好ましい。
エステル油の含量が5重量%未満では、その添加効果が不十分となって、酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性が低下するおそれがある。また逆に、エステル油の含量が20重量%を超えても、それ以上の添加効果がえられないだけでなく、かかるエステル油は、植物油に比べて高価であるために生産コストが高くつきすぎてしまい、価格面で、グリース組成物を実用できる範囲が制限されてしまうおそれがある。
【0030】
なおエステル油の含量は、上記の範囲内でもとくに、5〜12重量%であるのが好ましい。
前述したように、本発明の生分解性グリース組成物には、従来同様に、極圧剤、さび止め剤などの各種の添加剤を含有させることができる。
このうち極圧剤としては、グリース用の極圧剤として使用される種々の化合物がいずれも使用可能であるが、基油として植物油を用いたグリース組成物の生分解性を維持しつつ、酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性を向上させることを考慮すると、前述した、分子中に硫黄と燐とを含む化合物(以下「硫黄−燐系極圧剤」とする)が好適に使用される。
【0031】
かかる硫黄−燐系極圧剤の具体例としては、たとえば日本ルブリゾール(株)製の商品名「アングラモル99」があげられる。
さび止め剤としても、グリース用のさび止め剤として使用される種々の化合物がいずれも使用可能であるが、基油として植物油を用いたグリース組成物の生分解性を低下させないためには、たとえばジノニルナフタレンスルフォン酸カルシウム塩などの有機カルシウム塩系のさび止め剤が好適に使用される。
【0032】
上記各添加剤の含量は、グリースの用途や、あるいは添加剤自体の種類などにあわせて、その好適な範囲が適宜、設定される。
たとえば転がり軸受用のグリースの場合には、組成物全量に対して、極圧剤を0.5〜3重量%、さび止め剤を0.5〜2重量%程度の含量に設定するのが好ましい。
【0033】
上記の各成分からなる本発明の生分解性グリース組成物は、従来と同様にして製造することができる。
すなわち、まず基油としての植物油の一部または全部に、カルシウム石けんの元になる脂肪酸を加えて溶解する。
つぎに上記の溶液に、脂肪酸と等モル量、またはそれより少し過剰量の水酸化カルシウムの水溶液を加え、かく拌しつつ加熱して、脂肪酸と水酸化カルシウムとを脱水反応させる。
【0034】
そして上記の液に、基油の残部と他の添加剤とを加えてかく拌しながら室温まで冷却したのち、ミリング、脱泡処理などを行って、本発明の生分解性グリース組成物が製造される。
かかる本発明の生分解性グリース組成物は、前記CEC法によって求められる生分解度が80%以上、とくに90%以上であって、日本環境協会の定めた生分解度67%以上という基準を上回る、すぐれた生分解性を達成することができる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1〜5、比較例2、4〜10
基油としてのナタネ油およそ50重量部に、12−ヒドロキシステアリン酸8重量部を加えて溶解し、この溶液に、12−ヒドロキシステアリン酸と等モル量より少し過剰量の水酸化カルシウムの水溶液を加えてかく拌しつつ加熱して反応させたのち、脱水した。
【0036】
つぎに上記の溶液に、ナタネ油の残量と、下記の各成分の所定量ずつとを加えてかく拌しながら室温まで冷却したのち、三段ロールを用いてミリングし、ついで脱泡処理して、下記表1〜3に示す各配合組成を有する生分解性グリース組成物を製造した。
(成 分)
*(a) の酸化防止剤:前記式(1-1) で表されるN−フェニル−1−ナフチルアミン。
【0037】
*(b) の酸化防止剤:前記式(2-1) で表されるポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)〔比重1.08〜1.11、軟化点80〜110℃、灰分0.5%以下、加熱減量0.7%以下〕。
*(c) の酸化防止剤:2,2−チオビス〔ジエチル−ビス−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート〕
*生分解性を有するエステル油:前述した、ペンタエリスリトールと、炭素数8〜12の直鎖脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、アジピン酸などの1種または2種以上)とのエステル。CEC法によって求められる生分解度80〜90%、40℃における基油動粘度70〜120mm2 /秒。
【0038】
*硫黄−燐系極圧剤:前出の日本ルブリゾール(株)製の商品名「アングラモル99」。
*さび止め剤:ジノニルナフタレンスルフォン酸カルシウム塩。
比較例1
ナタネ油に代えて、40℃における基油動粘度が130mm2 /秒のナフテン系鉱物油を使用したこと以外は実施例1〜5と同様にして、表2に示す配合組成を有するグリース組成物を製造した。
【0039】
比較例3、11
水酸化カルシウムの水溶液に代えて、12−ヒドロキシステアリン酸と等モル量より少し過剰量の水酸化リチウムの水溶液を加えたこと以外は実施例1〜5と同様にして、表2、3に示す配合組成を有する生分解性グリース組成物を製造した。
【0040】
【表1】
Figure 0003819579
【0041】
【表2】
Figure 0003819579
【0042】
【表3】
Figure 0003819579
【0043】
上記各実施例、比較例のグリース組成物について、以下の各試験を行って、その特性を評価した。
混和ちょう度の測定
各実施例、比較例のグリース組成物の混和ちょう度を、JIS K2220の第5.3項に準拠して測定した。かかる混和ちょう度は、グリースの硬さを表すもので、その値が小さいほど、グリースが硬いことを示している。
【0044】
生分解度の測定
各実施例、比較例のグリース組成物の生分解度を、前記CEC法に準拠して測定した。
すなわち2本の500mlの三角フラスコ中にそれぞれ、サンプルとしての同じグリース組成物7.5μlと、栄養液150mlとを入れるとともに、一方のフラスコには微生物液としての都市下水処理用の活性汚泥1mlを加え、他方のフラスコには上記活性汚泥1mlを加えずに、それぞれの口をフィルタでふさいだ状態で、両フラスコを25℃で21日間、振とう培養法で好気培養したのち、油を25mlの有機溶媒で抽出して、赤外線分光光度計を用いて測定したCH3 −CH2 結合の量から両フラスコ中の残油量を求めて、下記式により生分解度(%)を求めた。
【0045】
【数1】
Figure 0003819579
【0046】
〔式中、Tは活性汚泥を加えた方のフラスコにおける残油量、Pは活性汚泥を加えなかった方のフラスコにおける残油量である。〕
潤滑寿命の試験法
各実施例、比較例のグリース組成物を、あらかじめ洗浄しておいた非接触型ゴムシール付きの玉軸受け〔型番62052RU〕に、その内部空間の容積の40%に相当する2.5g封入した。
【0047】
つぎに、上記のようにしてグリース組成物を封入した2個の玉軸受け1の外輪を、図1に示すように、それぞれハウジング2に固定するとともに、内輪を、それぞれシャフト3に固定した。そして軸受け1に、コイルバネによって、図中白矢印で示すように176.5Nのアキシャル荷重を加えた。この際のラジアル荷重は19.6Nであった。
【0048】
つぎに上記ハウジング2を、100℃に保った恒温槽の中で固定した状態で、玉軸受け1の温度と回転トルクを測定しつつ、シャフト3を毎分3400回転の回転速度で連続回転させた。そして回転開始から、玉軸受けの温度が150℃以上に昇温するか、またはトルクが58.8N・cm以上に増大した時点までの時間を、グリースの潤滑寿命として求めた。
【0049】
以上の結果を表4〜6に示す。
【0050】
【表4】
Figure 0003819579
【0051】
【表5】
Figure 0003819579
【0052】
【表6】
Figure 0003819579
【0053】
表より、各実施例の生分解性グリース組成物は、高い生分解性を維持しつつ、その酸化安定性が向上する結果、潤滑寿命が、比較例12に比べておよそ3〜5倍程度と長寿命化していることが確認された。また各実施例の生分解性グリース組成物は、比較例2、3との比較から、その使用可能温度が100℃まで向上していることも確認された。
【0054】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば、基油として生分解性にすぐれた植物油を使用して、なおかつ従来の生分解性グリースよりもさらに酸化安定性、潤滑寿命および使用可能温度などの特性にすぐれるため、基油として鉱物油を用いた汎用のグリースが使用される広い範囲での実用、とくに転がり軸受などの、過酷な条件下で使用される機器類への使用が可能な、新規な生分解性グリース組成物を提供できるという特有の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例、比較例のグリース組成物の潤滑寿命を測定する装置の概略を示す部分切り欠き正面図である。

Claims (5)

  1. 基油として植物油を含有する生分解性グリース組成物であって、
    増ちょう剤としてカルシウム石けんを含有するとともに、
    (a) 一般式(1):
    Figure 0003819579
    〔式中、Φ1およびΦ2は、同一または異なるアリール基を示す。〕
    で表される芳香族第2級アミン類、および
    (b) 一般式(2):
    Figure 0003819579
    〔式中、R1は水素原子またはアルコキシ基を示す。〕
    で表されるキノリン誘導体またはその高分子化物、
    を、それぞれ酸化防止剤として含有し、かつ、ペンタエリスリトールと、直鎖脂肪酸とのエステルである生分解性を有するエステル油を、耐熱性付与剤として含有することを特徴とする生分解性グリース組成物。
  2. 酸化防止剤としての前記(a)および(b)の2種の化合物をそれぞれ、組成物全量の0.5〜3重量%の範囲で含有している請求項1記載の生分解性グリース組成物。
  3. 耐熱性付与剤としての前記エステル油を、組成物全量の5〜20重量%の範囲で含有している請求項1記載の生分解性グリース組成物。
  4. 前記(a)の化合物が、式(1-1):
    Figure 0003819579
    で表されるN−フェニル−1−ナフチルアミンであり、かつ(b)の化合物が、式(2-1):
    Figure 0003819579
    で表されるポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)である請求項1記載の生分解性グリース組成物。
  5. 植物油がナタネ油である請求項1記載の生分解性グリース。
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