JP3817805B2 - 成形用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空成形/圧空成形のように、軟化状態の樹脂シートを比較的低圧で成形する成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空/圧空成形は、軟化状態の樹脂シートを、気体の圧力差を利用して成形面に押圧して成形するものであり、公知である。また、スタンピング成形は、軟化状態の樹脂シートを成形面の前面側に固定した後、該成形面と対を成す押圧部材との間に挟み込むことにより押圧して成形するものであり、公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
種々の樹脂成形品に関して、その外観を良好にしたいという要請がある。
この要請に応えるために、例えば、樹脂成形品の成形時や成形後に、その表面にフィルム層を一体に形成したり、或いは、樹脂成形品の成形後に、その表面に塗装を施したりすることが行われる。しかし、表面にフィルム層を形成した成形品では2種類の樹脂が用いられているため、リサイクル時には該2種類の樹脂を分離する必要があり、リサイクル工程が複雑化・高コスト化するという問題がある。同様に、塗装を施した成形品の場合も、リサイクル時に樹脂と塗装を分離する必要があり、リサイクル工程が複雑化・高コスト化するという問題がある。
この問題を解決するために、例えば、射出成形法のように、成形面の転写性が良好な成形法を用いることも考えられる。しかし、射出成形法は成形圧力が大きいため、比較的小型の樹脂成形品であれば、金型や射出成形機を極端に大型化しなくともよいが、例えばバンパーやドア等のような大型の樹脂成形品を射出成形で得ようとすると、その射出圧力に耐える強度の金型や射出成形機として、非常に大きな構造のものが必要となる。
本発明は、鏡面や絞面等を有する外観の良好な樹脂成形品を、表面にフィルム層を形成したり塗装を施したりすることなく、また、射出成形法のような高圧に耐える大型の装置を用いることなく成形できるようにすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、軟化状態の樹脂シートを負圧で吸引することにより成形面に押圧して成形する真空/圧空成形用金型であって、
(A)前記成形面を表側面に有する型部材の裏側面との間に空間を確保した状態で該型部材を支持する支持部材、
(B)前記成形面を加熱する加熱手段、
(C)前記成形面を冷却する冷却手段、
を有し、前記成形面は前記型部材の表側面上に支持される金属板であって多数の細孔を備えた金属板の表面により構成され、該金属板と該金属板を支持する型部材の表側面との間には間隙が確保されており、該多数の細孔と間隙とを通して前記吸引時の排気が行なわれることを特徴とする真空/圧空成形用金型である。
請求項2の発明は、請求項1に於いて、
前記間隙は、前記金属板の裏面又は該裏面に対向する前記型部材の表側面に形成された凹凸によって確保される、
ことを特徴とする真空/圧空成形用金型である。
請求項3の発明は、請求項1、又は請求項2に於いて、
前記細孔は、前記金属板の表面から裏面に向かって拡がる形状を成す、
ことを特徴とする真空/圧空成形用金型である。
【0005】
支持部材(A)は、成形面裏面との間に空間を確保した状態で、型部材(成形面を有する部材)を支持し得るものである。
支持部材(A)と成形面裏面とで構成される空間は、冷却手段(C)の冷却媒体を供給されることにより成形面を冷却する作用を奏するものでもあるため、冷却効率を良好にする見地からは、冷却媒体の導入/導出部以外は閉じられた空間であることが望ましく、そのためには、支持部材(A)と型部材の結合部がシールされていることが望ましい。一方、成形面の加熱/冷却サイクルの繰り返しに伴って型部材が熱膨張/収縮サイクルを繰り返すことに鑑み、支持部材(A)と型部材の結合部には、支持部材(A)と型部材の熱膨張の差異による歪みや損壊を防止するための遊びが設けられていることが望ましい。このようなシール構造及びシール材料と遊びの構造とについては、後に具体例に即して詳述する。
また、成形面を加熱/冷却するサイクルを短縮するためには、型部材の熱容量が小さいことが望ましく、そのためには、成形面と裏面との間が薄いことが望ましい。また、成形面を加熱/冷却するサイクルを短縮するためには、支持部材(A)と型部材とが断熱されていることが、更に望ましい。このような断熱材料と断熱構造については、後に具体例に即して詳述する。
【0006】
加熱手段(B)は、好ましくは成形面を前記シート状樹脂の(ビカット軟化温度(T))℃以上まで加熱し得るものである。更に好ましくはビカット軟化温度T℃より5℃以上高い温度、特に好ましくはビカット軟化温度T℃より10℃〜50℃高い温度まで加熱し得るものである。
成形面と成形面裏面との間が薄く、その熱容量が小さい場合には、前記空間に加熱蒸気等の加熱媒体を供給する機構によって加熱手段(B)を構成することができる。その加熱効率を良好にする見地からは、前記と同様に、加熱媒体の導入/導出部以外は前記空間が閉じられていることが望ましい。
また、成形面裏面に対向してハロゲンヒータ等の輻射加熱器を配することで加熱手段(B)を構成することもできる。その場合には、成形面裏面の吸熱性を良好にすることが望ましい。輻射加熱器と成形面裏面の吸熱性を向上させる表面処理については、後に、具体例に即して詳述する。
また、成形面に対向してハロゲンヒータ等の輻射加熱器を進入/退避可能に配することで加熱手段(B)を構成することもできる。
また、成形面を金属で構成して、通電加熱したり、或いは誘導加熱したりする機構によって、加熱手段(B)を構成することもできる。
また、成形面表層部を断熱層として構成することで、軟化状態の樹脂シートの熱で成形面を加熱するようにして、加熱手段(B)を構成することもできる。このような断熱層の構造や熱伝導率の望ましい範囲については、後に具体例に即して詳述する。
【0007】
冷却手段(C)は、好ましくは前記空間に冷却媒体を供給することにより成形面を前記シート状樹脂の(ビカット軟化温度(T)−10)℃以下まで冷却し得るものである。更に好ましくは前記空間に冷却媒体を供給することにより(ビカット軟化温度(T)−15)℃より低い温度、特に好ましくは前記空間に冷却媒体を供給することにより(ビカット軟化温度(T)−20)℃〜(ビカット軟化温度(T)−50)℃の範囲の温度まで冷却し得るものである。
冷却媒体としては、冷却空気、冷却水、冷却オイル等、液体/気体の種々の媒体を用いることができる。冷却媒体として冷却水を用いた場合や前記加熱媒体として加熱蒸気を用いた場合には、支持部材(A)や型部材に防錆対策を施すことが望ましい。例えば、これらの材料として、錆難いステンレス鋼、銅合金、セラミックス、アルミ合金等、好ましくはステンレス鋼を用いたり、金属表面に不導態化処理(例:窒化処理)を施したり、防錆塗料、例えば、シリコーン系ゾルゲルタイプ塗料を塗布する等の対策が挙げられる。
【0008】
本発明の成形用金型で成形されるシートの樹脂材料としては、例えば、AS樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム−スチレンから成るグラフト共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム−スチレン−αメチルスチレンから成るグラフト共重合体(耐熱ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン系ゴム−スチレン及び/又はメタクリル酸メチルから成るグラフト共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−水添ジエン系ゴム−スチレン及び/又はメタクリル酸メチルから成るグラフト共重合体、アクリロニトリル−シリコーンゴム−スチレン及び/又はメタクリル酸メチルから成るグラフト共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリフェニレンエ−テル、ポリオキシメチレン、ナイロン、メタクリル酸メチル系重合体、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、塩化ビニル、マレイミド化合物−スチレン及び/又はアクリロニトリル及び/又はα−メチルスチレンからなる共重合体、ゴム状重合体−マレイミド化合物−スチレン及び/又はアクリロニトリル及び/又はメタクリル酸メチル及び/又はα−メチルスチレンからなるグラフト共重合体等、及びこれらの複合物と、これらに充填剤を添加した樹脂が挙げられる。
【0009】
本発明の成形用金型で好適に成形される成形品としては、例えば、各種のハウジング、スポーツ用製品、遊具、車両用製品、家具用製品、サニタリー製品、建材用製品、厨房用製品等がある。
ハウジングとしては、例えば、クーラーボックス、TV、オーディオ機器、プリンタ、FAX、複写機、ゲーム機、洗濯機、エアコン、冷蔵庫、掃除機、アタッシュケース、楽器ケース、工具箱、コンテナ、カメラケース等がある。
スポーツ用製品としては、例えば、スイミングボード、サーフボード、ウインドサーフィン、スキー、スノーボード、スケートボード、アイスホッケースティック、カーリングボール、ゲートボールラケット、テニスラケット、カヌー、ボート等がある。
遊具としては、例えば、バット、ブロック、積木、釣り具ケース、パチンコ台枠等がある。
車両用製品としては、例えば、エアースポイラー、ドアー、バンパー、フェンダー、ボンネット、サンルーフ、リアゲート、ホイールキャップ、インパネ、グローブボックス、コンソールボックス、アームレスト、ヘッドレスト、燃料タンク、運転席カバー、トランク工具ボックス等がある。
家具用製品としては、例えば、引き出し、机天板、ベッド天板・底板、鏡台枠板、げた箱板・前扉、椅子背板・底板、盆・トレー、傘立て、花瓶、薬箱、ハンガー、化粧箱、収納箱板、本立て、事務机天板、OA机天板、OAラック等がある。
サニタリー製品としては、例えば、シャワーヘッド、便座、便板、排水パン、貯水槽蓋、洗面化粧台扉、浴室ドア等がある。
建材用製品としては、例えば、天井板、床板、壁板、窓枠、ドア、ベンチ等がある。
厨房用製品としては、例えば、まな板、キッチン扉等がある。
なお、これらは例示であり、これら以外の成形品も好適に成形され得る。
【0010】
【発明の実施の形態】
(1)真空/圧空成形用金型:例1(図1,図2,図5(b)).
(1-1) 概要.
図1は真空/圧空成形用金型の第1の例を示す縦断面模式図であり、図2は図1の金型のコーナー部分の取付構造(支持部材4 と型部材3 の結合部の構造)の一例を示す模式図である。図1に示す金型は、成形面30を有する型部材3 を、断熱介挿部材1 を介して箱型の支持部材4 により支持する構造を成す。成形面30の裏面31と支持部材4 の内面との間には空間Sが確保されており、また、箱型の支持部材4 の内面には断熱部材2 が設けられている。型部材3 と支持部材4 は、何れも、ステンレス鋼製である。
【0011】
(1-2) 成形面30.
成形面30は、型部材3 の表側面に形成されている。この成形面30に軟化状態の樹脂シートPを負圧で吸引して押し付けることで、成形面30が樹脂シートPに転写される。成形面30には、樹脂シートPを負圧で吸引して成形面30に押圧するために、多数の孔300 があけられている。この多数の孔300 は、成形面30の裏面31側で外部への導出管301 として纏められており、この導出管301 を通して吸引した空気が排気される。なお、孔300 は型部材3 の裏面31でなく、内部で纏められてもよい。この孔300 の径は、図1の金型では0.3mm程度であるが、特に粘度が低く孔300 内に軟化状態の樹脂が進入して成形品の表面に凹凸が形成されてしまう恐れがある樹脂を用いる場合には、図5の(b)のように、表面側39a が略10μm程度で内側が略数10μm程度の細孔を厚さ数10μm〜2mm程度のニッケル薄板39に多数形成した構造を用いてもよい。この構造では、ニッケル薄板39と型部材3 との間に、何れかの側の表面に形成した不図示の凹凸によって間隙が確保されており、この間隙を通して排気が行われる。
成形面30は、樹脂シートPを成形面30に押圧する前に、樹脂シートPのビカット軟化温度(T)℃以上の温度まで加熱される。この熱のため、成形面30に押圧された樹脂シートPの表面は成形面30に密着されて、その形状を良好に転写される。例えば、鏡面や絞面を良好に転写される。また、樹脂シートPは、成形面30に押圧される前に上下のヒータH1,H2 により加熱されて軟化状態とされた後、下面側から予備ブローされて上方へ膨らませられ、その後に、成形面30の側へ吸引される。この予備ブローは、樹脂シートPを膨らませて延ばすことで、更に容易に成形面30に吸引するために行われる。
なお、圧空成形の場合には、真空排気による吸引と併せて、図の上方から空気による加圧が行われる。この工程は公知であるため、説明は省略する。
【0012】
(1-3) 断熱介挿部材1 .
断熱介挿部材1 は、成形面30を有する型部材3 と該型部材3 を支持する支持部材4 を断熱することにより、成形面30の速やかな加熱/冷却を可能にするために設けられている。
断熱介挿部材1 としては、熱伝導率が0.001〜1[kcal/mh℃] 、好ましくは0.005〜0.8[kcal/mh℃] 、更に好ましくは0.01〜0.5[kcal/mh℃] で、且つ、縦弾性係数が0.1×104 〜100×104[kg/cm2] 、好ましくは0.2×104 〜40×104[kg/cm2] 、更に好ましくは1×104 〜20×104[kg/cm2] の材料を用いて構成してもよく、また、熱伝導率が0.001〜1[kcal/mh℃] 、好ましくは0.005〜0.8[kcal/mh℃] 、更に好ましくは0.01〜0.5[kcal/mh℃] の材料と、縦弾性係数が0.1×104 〜100×104[kg/cm2] 、好ましくは0.2×104 〜40×104[kg/cm2] 、更に好ましくは1×104 〜20×104[kg/cm2] の材料を用いた積層構造として構成してもよい。
つまり、断熱介挿部材1 は、型部材3 と支持部材4 を断熱状態で支持でき、且つ、型部材3 の側から支持部材4 の側へ加わる押圧力に抗して、型部材3 を支持部材4 によってガタつき無く確実に支持できればよい。
なお、上記断熱支持部材の熱伝導率として上記の如き範囲が示されている理由は、熱伝導率が0.001[kcal/mh℃] 未満では特殊な材料が必要となって実用的で無くなり、1[kcal/mh℃] を越えると所望の断熱効果が得られないためである。また、上記断熱支持部材の縦弾性係数として上記の如き範囲が示されている理由は、縦弾性係数が0.1×104[kg/cm2] 未満では剛性が不足してシールが十分で無くなり、100×104[kg/cm2] を越えると断熱支持部の加工が困難となるためである。熱伝導率が0.001〜1[kcal/mh℃] で、縦弾性係数が0.1×104 〜100×104[kg/cm2] の材料としては、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、アセタール樹脂、四フッ化エチレン系樹脂、セラミックス、PC、フェノール樹脂、ユリア、メラミン、ガラス、不飽和ポリエステル等がある。好ましくはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン、不飽和ポリエステルであり、更に好ましくはフェノール樹脂である。
【0013】
(1-4) 空間S.
空間Sは、断熱介挿部材1 とともに、成形面30を有する型部材3 を、該型部材3 を支持する支持部材から断熱して、成形面30の速やかな加熱/冷却を可能にする作用を奏する。また、空間Sは、その内部に加熱媒体/冷却媒体を供給されることにより、成形面30を裏面31側から加熱/冷却する作用を奏する。
(1-5) 断熱部材2 .
空間Sの作用をさらに良好に奏することができるように、箱型の支持部材4 の内面(空間Sに曝される面)には、断熱部材2 が設けられている。この断熱部材2 は、空間S内に供給される加熱蒸気や加熱オイルを支持部材4 から断熱することにより、加熱蒸気等の余分な温度低下を防止するものである。また、空間S内に供給される冷却水や冷却空気を支持部材4 から断熱することにより、冷却水等の余分な温度上昇を防止するものである。この断熱部材2 は、図2(b)に示すように、厚さ10[mm]のフェノール樹脂層22と、厚さ2[mm]のアスベスト層21から成る。この断熱部材2 の材料としては、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、アセタール樹脂、四フッ化エチレン系樹脂、セラミックス、PC、フェノール樹脂、ユリア、メラミン、ガラス、不飽和ポリエステル等、アスベスト、硬質ウレタンフォーム、ロックウール、グラスウール、けい酸カルシウム、ポリスチレンフォーム、はっ水性パーライト、コルク、木材(杉)、ゴム、石英ガラス、発泡ビーズ等、及びこれらの2種以上の組み合わせを用いることができる。好ましくは、フェノール樹脂、ユリア、メラミン、不飽和ポリエステル、アスベスト、硬質ウレタンフォーム、発泡ビーズを用いることができる。
【0014】
(1-6) 遊び.
成形面30を有する型部材3 は、加熱/冷却過程を繰り返されて、熱膨張/収縮サイクルを短時間で繰り返す。一方、型部材3 を支持する支持部材4 は、該型部材3 と断熱されている。このため、型部材3 と支持部材4 を強固に結合しておくと、両者間には熱膨張の差異によって歪みが発生し、放置すると損壊に到る恐れがある。このため、型部材3 は、図2のように、上記熱膨張の差異を吸収して歪みの発生を防止し得る遊びの在る状態で、支持部材4 と結合されている。
即ち、型部材3 の周辺に張り出されている被支持板36が、該被支持板36に対応するように支持部材4 に設けられている溝46内に、遊びaの在る状態で緩やかに嵌め入れられて、型部材3 が支持部材4 により支持されている。溝46は、張出部400aを有する支持本体板400 を支持本体部401 にボルト403 で取付けることで構成されている。また、成形面30の上面視で方形に配設された4枚の各支持本体板400 の隅部には、図2の(a)のように、隣接する支持本体板400 との間に、略0.1[mm]の隙間cが設けられている。さらに、溝46内の対向する上下の表面には、厚さ10[mm]のフェノール樹脂製の断熱介挿部材1 が各々設けられ、被支持板36の上下面と各断熱介挿部材1 との間隙にはOリング9 が嵌められている。このため、樹脂成形時の熱で型部材3 と支持部材4 とが熱膨張して被支持板36と溝46との間に相対的なズレが生じた場合でも、該ズレは上述の遊びaによって吸収され、悪影響(型部材3 の撓み、歪、寿命が短くなること等)は防止される。また、型部材3 の撓み等を防止できるため、成形面30を良好な状態に保つことができ、その結果、精密な成形品を得ることができる。また、型部材3 は、前述の条件(縦弾性係数が0.1×104 〜100×104[kg/cm2] の材料)を満たすフェノール樹脂の断熱介挿部材1 を介して支持部材4 に支持されているため、ガタツキ等の不具合も防止できる。
【0015】
(1-7) シール部材.
上記では、シール部材としてOリング9 が用いられているが、他に、オイルシール、合成ゴム、金属、フェルト、皮、コルク等を用いることができる。このシール部材により型部材3 と支持部材4 の連結部をシールできるため、空間内Sに噴射される加熱蒸気や加熱オイル或いは冷却空気や冷却水が、型部材3 と支持部材4 の連結部から漏れ出すことを防止できる。また、加熱蒸気や加熱オイルを空間S内に所望の圧力で密閉できるため、空間S内を所望の圧力に設定することができる。このシール部材は、成形面30がビカット軟化温度(T)℃以上まで加熱されることから、この温度での耐久性を有する材料であることが要求される。
(1-8) 加熱手段・冷却手段.
加熱手段は、弁72・導入配管71・ノズル70を通して、空間S内へ加熱媒体(加熱蒸気、加熱オイル等)を送り込むことで構成される。空間S内へ供給された加熱媒体は、導出配管76・弁77を通して排出される。
圧空成形の場合に於いて、成形面30に吸引されている樹脂Pの上方から印加される空気圧と、空間S内の圧力とを、略同一に保ちたい場合は、加熱媒体供給の圧力を調整するとともに弁77を閉じることで実現可能である。樹脂Pの上方から印加される空気圧と空間S内の圧力を同一に制御すると、成形面30を備えた型部材3 を非常に薄く構成することが可能となり、その熱容量を十分に小さくできるため、加熱/冷却サイクルを更に短縮することができる。樹脂Pの上方から印加する空気圧と空間S内の圧力を略同一に保つ方法としては、例えば、樹脂Pの上方から空気圧を印加する加圧配管と、空間S内へ加熱蒸気を送り込む加圧配管とを連通させる方法がある。また、両加圧配管を直接連通するのではなく、両加圧配管を連通させた管内に容易に変位するピストンを設け、該ピストンを介して両加圧配管を実質的に連通させる方法等がある。
冷却手段は、弁72・導入配管71・ノズル70を通して、空間S内へ冷却媒体(冷却空気、冷却水等)を送り込むことで構成される。空間S内へ供給された冷却媒体は、導出配管76・弁77を通して排出される。
【0016】
(2)真空/圧空成形用金型:例2(図3,図4).
例2の成形用金型は、例1の成形用金型と略同一であるため、同一部分については同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
例2の成形用金型は、加熱手段として、空間S内へ加熱媒体(加熱蒸気、加熱オイル等)を送り込む機構に加えて、又は空間S内へ加熱媒体(加熱蒸気、加熱オイル等)を送り込む機構に代えて、ハロゲンヒータ5 を備えている。即ち、図3に示すように、箱型の支持部材4 の内面には、成形面30の裏面31に対向する位置に、ハロゲンヒータ5 が設けられている。このハロゲンヒータ5 で成形面裏面31を輻射加熱することにより、更に加熱効率を向上させている。
また、ハロゲンランプ5 によって輻射加熱される成形面裏面31には、輻射熱の吸熱特性を改善する目的で、図4の(a)〜(e)の何れかに示す表面処理が施されている。(a)は黒染め処理により吸熱性を増大させた例、(b)は山切り加工により表面積を増大させた例、(b)は溝切り加工により表面積を増大させた例、(d)は上記(a)と(b)の処理を併用したもので図1の(b)に相当する例、(e)は上記(a)と(c)の処理を併用した例である。このように処理することで、ハロゲンランプ5 から輻射される熱量の大部分を、型部材3 にて吸収することができる。
【0017】
(3)真空/圧空成形用金型:例3(図5(a)).
例3の成形用金型は、例1又は例2の成形用金型と略同一であるため、同一部分は同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみ説明する。なお、全体構成は、例1又は例2と略同様であるため、図示は省略する。
例3の成形用金型は、成形面30の表層部又は表層部内の浅い位置に、熱伝導率が0.001〜0.01[cal/cm.s.℃] の断熱層32を有する。即ち、軟化樹脂の熱によって成形面30を昇温させて、該樹脂を成形面に密着させて、その面を転写するようにした金型である。その際の成形面の温度は、密着性を良好にする見地から、当該軟化樹脂のビカット軟化温度(T)℃以上であることが望ましい。このように溶融樹脂の熱により成形面を昇温させるために、成形面30の表層部又は表層部内の浅い位置に断熱層32が形成されている。
断熱層32が成形面30の表層部に形成されている場合は、該断熱層32の表面が転写面となる。また、断熱層が成形面30の表層部内の浅い位置に形成されている場合は、成形面30が転写面となる。表層部内の浅い位置とは、成形面の背後の型部材3 の内部で、軟化樹脂の熱で成形面30を十分に加熱できる深さである。断熱層32の熱伝導率が0.001[cal/cm.s.℃] より小さいと、冷却に非常に時間がかかって、実用的ではない。断熱層32の熱伝導率が0.01[cal/cm.s.℃] を越えると、軟化樹脂が転写面に密着する前に転写面が冷えてしまうため、転写性が良好でなくなる。断熱層32の厚さは、100〜2000μm程度が望ましい。100より薄いと十分な断熱効果が無いため、成形面の表面を十分に昇温できず、得られる成形品の表面は、成形面を良好に転写したものとならない。一方、2000μmより厚いと断熱効果が大きくなりすぎて冷却速度が著しく遅くなり、工業的な生産には適さない。
【0018】
上記構成に於いて、空間S側から成形面30の裏面31を補助的に加熱するようにしてもよい。この補助的な加熱手段としては、例1のように加熱媒体を供給する手段や、例2のように成形面裏面31を輻射加熱する手段がある。
断熱層32は、図5(a)のように、断熱材層320 と金属層321 とで構成してもよい。この場合には、金属層321 の表面が転写面となる。つまり、金属層321 の表面が、軟化樹脂から得られる樹脂成形品の外面形状を形作る。金属層321 に用いられる金属としては、例えば、Ni、Cr、Mg、Cu、Al等の金属、及びそれらを主成分とする合金が挙げられる。好ましくはNi、Cr、及びそれらを主成分とする合金である。金属層321 を設ける目的は、軟化樹脂と接触する金属面の粗さを変えることにより、成形品の外観を、例えば、鏡面や、絞面等に形成して、意匠性を付与することにある。金属層321 の厚さは、好ましくは10〜200μm、更に好ましくは20〜100μmである。10μmより薄いと、目的の意匠性を付与する粗さにできない。また、200μmより厚いと、断熱性が低下する。
【0019】
(4)真空/圧空成形用金型:例4(図6).
例4の成形用金型は、例1の成形用金型と略同一であるため、同一部分については同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみ説明する。なお、例1〜例3の構成を例4に於いても適宜に採用することができる。
例4の成形用金型では、空間Sが隔壁Wによって分割されており、各分割空間S1,S2 には、各々独立に加熱媒体としての加熱蒸気や、冷却媒体としての冷却水及び/又は冷却空気を噴射するための機構が独立に設けられている。即ち、分割空間S1又は分割空間S2の一方のみに加熱媒体や冷却媒体を供給することが可能である。また、各分割空間のコーナー部には、圧力の集中を避けるために、不図示の小さな丸みがつけられている。
隔壁Wは、各々が厚さ5[mm]の2枚の金属(ステンレス鋼)板の間に、断熱板である厚さ10[mm]のフェノール樹脂板を挟み込んで構成されている。即ち、金属板を用いることにより分割空間S1又は分割空間S2の一方のみに加熱蒸気を噴射した場合の両分割空間の圧力差に耐え得る強度にするとともに、断熱板を用いることにより分割空間S1又は分割空間S2の一方のみに加熱蒸気を噴射した場合の熱量の損失を防止している。隔壁Wの内層である断熱板に用いる素材としては、前記断熱介挿部材1 と同様の材料を用いることができる。
このように、例4の成形用金型では、分割空間S1又はS2に面した成形面裏面31のみを適宜に加熱/冷却することが可能であるため、樹脂成形品に適合するように分割を行うことにより、樹脂成形品の外面の一部(所望の部位)のみの転写性を良好にして、所望の意匠の樹脂成形品を得ることも可能である。
また、空間Sを多分割した場合には、各分割空間内への加熱媒体/冷却媒体の供給/排出を一様に行うことができるとともに、供給/排出の速度高めることもできる。
【0020】
(5)スタンピング成形用金型:例5(図7).
例5の成形用金型は、スタンピング成形用金型である。このため、上方に雄型6 が設けられており、雌型の成形面30と雄型6 の外面との間に軟化樹脂シートPを挟み込んで押圧することにより、樹脂成形品を得るものである。例5の成形用金型は、雌型に関しては、例1の成形用金型と略同一である。このため、同一部分については同一の符号を付して示し、説明を省略する。なお、雌型の側に関しては、例1〜例4の構成を例5に於いても適宜に採用することができる。
例5のスタンピング成形用金型では、雄型6 の外面と雌型の成形面30との間に樹脂シートPを挟み込んで押圧する際に、空間S内に、雄型6 からの圧力と略均衡する圧力で加熱媒体を送り込むように制御してもよい。そのように制御する場合には、成形面30を備えた型部材3 を非常に薄く構成することが可能となり、その熱容量を十分に小さくできるため、加熱/冷却サイクルを更に短縮することができる効果がある。同様の効果は、加熱媒体として加熱オイル等の液体を送り込み、空間S内に封入することによって達成することもできる。
【0021】
【実施例】
図1に示した真空/圧空成形用金型を用い、熱可塑性樹脂材料としてABS樹脂製のシ−トを用い、真空成形機としてFCP−2APA−WZ−1(浅野研究所(株)社製)を用いて、下記の条件で、表1のタイミングで、真空成形を行った。すなわち、条件は、
(1)シ−ト加熱温度:160℃,
(2)シ−ト加熱時間:20秒,
(3)予備ブロ−圧力:1kg/cm 2,
(4)予備ブロ−時間:7秒,
(5)真空度:650mmHg,
(6)成形面30の加熱.
ノズル70から噴射する加熱蒸気圧力:2kg/cm2 ,
成形面30の最終到達温度 :130〜140°c,
成形面30の加熱保持時間 :10秒,
(7)成形面30の冷却.
ノズル70から噴射する(冷却水+空気):2kg/cm2 ,
成形面30の最終到達温度 :60℃,
成形面30の冷却保持時間 :40秒,
【表1】
である。このようにして成形した成形品(実施例品)と、上記で(4)成形面30の加熱を行わずに成形した成形品(比較例品)を比較すると、実施例品の表面光沢度は成形品表面の全面に渡って一様に90%で、コ−ナ−部分のRは0.5以下であったのに対して、比較例品の表面光沢度は20%以下で、コ−ナ−部分のRは0.5以上であった。即ち、実施例品の方が比較例品よりも成形面の転写が良好であり、従来の真空成形では得られないコ−ナ−部分のRが小さな成形品を精度良く成形でき、寸法安定性も優れていた。なお、
金型外寸法:300(H)×350(W)×350(L),
成形品寸法:190(H)×200(W)×200(L),
である。
上記実施例は、成形面30の背後の空間S内に加熱蒸気を噴射して加熱した場合であるが、ハロゲンヒータ5 等の輻射加熱手段を空間S内に成形面30の裏面31と対向するように設け、該ハロゲンヒータ5 等を用いて同様に加熱する場合も、上記実施例と同様の成形品を得ることができる。例えばハロゲンヒータ5 の総出力を60KWとして成形面30の最終到達温度を上記実施例と同じにした場合も、上記実施例と同様の効果を得ることができた。
【0022】
【発明の効果】
本発明によると、真空成形/圧空成形により、鏡面や絞面等を有する外観の良好な樹脂成形品を得ることができる。また、比較的大型の成形品であっても、外観の良好な樹脂成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】真空/圧空成形用金型の断面模式図。
【図2】図1の金型の型部材と支持部材の結合部の構造を示す断面模式図。
【図3】成形面裏面を輻射加熱するハロゲンヒータを備えた真空/圧空成形用金型の断面模式図。
【図4】成形面裏面の表面処理の説明図。
【図5】成形面の表層部に断熱層を有する真空/圧空成形用金型の成形面の付近の断面拡大模式図。
【図6】成形面裏面と支持部材の間の空間が分割空間である真空/圧空成形用金型の断面模式図。
【図7】スタンピング成形用金型の断面模式図。
【符号の説明】
1 断熱介挿部材
2 断熱部材
3 型部材
30 成形面
31 成形面裏面
32 断熱表層
39 細孔表層
4 支持部材
5 ハロゲンヒータ
6 雄型
71 導入配管
76 導出配管
S 空間
P 樹脂シート
Claims (3)
- 軟化状態の樹脂シートを負圧で吸引することにより成形面に押圧して成形する真空/圧空成形用金型であって、
(A)前記成形面を表側面に有する型部材の裏側面との間に空間を確保した状態で該型部材を支持する支持部材、
(B)前記成形面を加熱する加熱手段、
(C)前記成形面を冷却する冷却手段、
を有し、前記成形面は前記型部材の表側面上に支持される金属板であって多数の細孔を備えた金属板の表面により構成され、該金属板と該金属板を支持する型部材の表側面との間には間隙が確保されており、該多数の細孔と間隙とを通して前記吸引時の排気が行なわれることを特徴とする真空/圧空成形用金型。 - 請求項1に於いて、
前記間隙は、前記金属板の裏面又は該裏面に対向する前記型部材の表側面に形成された凹凸によって確保される、
ことを特徴とする真空/圧空成形用金型。 - 請求項1、又は請求項2に於いて、
前記細孔は、前記金属板の表面から裏面に向かって拡がる形状を成す、
ことを特徴とする真空/圧空成形用金型。
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