JP3814043B2 - 水溶性重合体、その製造方法および用途 - Google Patents
水溶性重合体、その製造方法および用途 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3814043B2 JP3814043B2 JP09422297A JP9422297A JP3814043B2 JP 3814043 B2 JP3814043 B2 JP 3814043B2 JP 09422297 A JP09422297 A JP 09422297A JP 9422297 A JP9422297 A JP 9422297A JP 3814043 B2 JP3814043 B2 JP 3814043B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acid
- polymer
- monomer
- water
- aqueous solution
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
- Emulsifying, Dispersing, Foam-Producing Or Wetting Agents (AREA)
- Detergent Compositions (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性重合体、その製造方法およびその重合体を含む組成物に関する。この組成物は、たとえば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤、木材パルプの漂白助剤である。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、洗剤組成物、分散剤、凝集剤、スケール防止剤、キレート試薬、繊維処理剤、木材パルプの漂白助剤、pH調整剤及び洗浄剤等の用途で種々の有機系キレート剤が使用されている。
有機系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩;ニトリロ三酢酸塩;マレイン酸の単独重合体または共重合体、アクリル酸の単独重合体または共重合体などのカルボン酸系重合体等が挙げられる。エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩は、重金属イオンを効果的に捕捉する能力が比較的高いことで知られている。また、カルボン酸系重合体は、無機粒子に対する優れたキレート作用及び分散作用を示すことが知られており、広範囲にわたり使用されている。
【0003】
他方、特開昭56−61471号公報、米国特許第4172934号明細書、同第4157418号明細書には、不飽和二重結合を形成している炭素原子にアミド結合とアルキレン基またはフェニレン基を介して1個または2個以上のカルボキシル基を導入した単量体が記載されている。これらの単量体は、これらは何れもアクリロイルクロライドあるいはメタクリロイルクロライドとアミノ酸とを反応して得られるアミド化合物である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩は、単位重量当りでみると、多量の金属を捕捉することが出来ず、各種用途分野で要求される無機粒子の分散力も全く不十分である。
前記カルボン酸系重合体は、カルボキシル基が主鎖の炭素原子に直接結合した構造を持つため、カルボキシル基の自由な回転が阻害され、金属イオンの捕捉能力は充分ではない。特に重金属イオンの捕捉能力は不十分である。
【0005】
また、前記アミド化合物は、主鎖から離れた位置にカルボキシル基を有する重合体を生成しうる。しかし、この重合体は、主鎖の近傍に存在するカルボン酸密度(主鎖に直接またはメチレン基を介して結合しているカルボキシル基の密度)が著しく低いため、金属イオンの捕捉能力が低いという問題点を有する。
従って、各種用途分野で有用なキレート剤、即ち、水溶性を備え、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い化合物が切望されている。
【0006】
本発明の課題は、各種用途分野で有用なキレート剤、即ち、水溶性を備え、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い水溶性重合体と、その製造方法と、前記重合体を含有する組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる水溶性重合体は、下記一般式(1):
【0008】
【化3】
【0009】
(式中、R1 はHまたはCOOX1 を表し、R2 はHまたはCH2 COOX2 を表し、R3 はCOOX3 、OHまたはCH2 COOX3 を表し、X1 、X2 、X3 およびX4 は互いに独立にH、Na、KまたはNH4 を表す。但し、R1 とR2 は同時にHとはならない。)
で表される構造単位を有し、重量平均分子量800 〜8,000,000 である。
【0010】
本発明にかかる、水溶性重合体の製造方法は、下記一般式(2):
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R1 はHまたはCOOX1 を表し、R2 はHまたはCH2 COOX2 を表し、R3 はCOOX3 、OHまたはCH2 COOX3 を表し、X1 、X2 、X3 およびX4 は互いに独立にH、Na、KまたはNH4 を表す。但し、R1 とR2 は同時にHとはならない。)
で表される化合物を含む単量体を水性媒体中で重合する工程を含む。
【0013】
本発明にかかる組成物は、たとえば、本発明にかかる上記水溶性重合体を含有する洗剤組成物である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、上記一般式(1)で表される特定の構造単位を有する重合体が、水溶性を備え、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多いことを見出した。そして、この重合体を含有する組成物は、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤、木材パルプの漂白助剤等に好適に用いることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
〔水溶性重合体〕
本発明の水溶性重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位を有する。一般式(1)の構造単位は、たとえば0.1〜100モル%含まれる。一般式(1)の構造単位の量が前記範囲内であると、重合体の性能(水溶性、無機粒子の分散力、重金属イオンを捕捉する能力、または、単位重量当りの金属イオンの捕捉量)の少なくとも1つがより優れている。重合体のこれらの性能の少なくとも1つがより良いという点では、一般式(1)の構造単位の量は、好ましくは1〜100モル%、より好ましくは5〜100モル%、最も好ましくは10〜40モル%である。特に、この重合体を後述の洗剤組成物に使用する場合、10〜40モル%であると性能が高い。なお、残部の構造単位は、後述する単量体(b)に由来する単量体単位である。
【0015】
本発明の水溶性重合体は、上記一般式(1)において:
(i) R1 がCOOX1 であり、R2 がHであり、R3 がCOOX3 である構造単位;
(ii) R1 がCOOX1 であり、R2 がHであり、R3 がOHである構造単位;(iii) R1 がCOOX1 であり、R2 がHであり、R3 がCH2 COOX3 である構造単位;
(iv) R1 がHであり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCOOX3 である構造単位;
(v) R1 がHであり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がOHである構造単位;
(vi) R1 がHであり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCH2 COOX3 である構造単位;
(vii) R1 がCOOX1 であり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCOOX3 である構造単位;
(viii)R1 がCOOX1 であり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がOHである構造単位;または、
(ix) R1 がCOOX1 であり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCH2 COOX3 である構造単位;
を有する。構造単位(i) 〜(ix)ではいずれも、X1 、X2 、X3 およびX4 はいずれも、互いに独立に、H、Na、KまたはNH4 であることができる。
【0016】
本発明にかかる水溶性重合体の重量平均分子量は、800 〜8,000,000 の範囲内であると、重合体の性能(水溶性、無機粒子の分散力、重金属イオンを捕捉する能力、または、単位重量当りの金属イオンの捕捉量)の少なくとも1つがより優れている。重合体のこれらの性能の少なくとも1つがより良いという点では、重合体の重量平均分子量は、800 〜100,000 の範囲内が好ましく、1,000 〜20,000の範囲内がさらに好ましい。特に、この重合体を洗剤ビルダーとして洗剤組成物に使用する場合には、重量平均分子量は800 〜100,000 の範囲内が好ましく、1,000 〜20,000の範囲内がさらに好ましい。
【0017】
本発明の水溶性重合体は、たとえば、
(1) 後述する水溶性重合体の製造方法、
(2) 従来公知の方法で環状の酸無水物を有する重合体を生成し、この重合体とカルボキシル基を含有する第一アミンとを従来公知の方法で開環アミド化反応させる方法、または、
(3) 従来公知の方法でモノエチレン性不飽和多価カルボン酸モノエステルに由来する構造を含む重合体を生成し、この重合体とカルボキシル基を含有する第一アミンとを従来公知の方法でエステルアミド交換反応させる方法、
によって製造されることができる。これらの方法(1) 〜(3) の中でも、(1) の方法が好ましい。
〔水溶性重合体の製造方法〕
本発明にかかる、水溶性重合体の製造方法は、前記一般式(2)で表される化合物(以下、これを単量体(a)と称する)を含む単量体を重合する工程を含む。
【0018】
単量体(a)は、炭素−炭素不飽和二重結合と、二重結合に直接あるいはメチレン基を介して結合している二重結合近傍に存在するカルボキシル基と二重結合から離れた位置に存在するカルボキシル基の2種のカルボキシル基を有する水溶性単量体であり、たとえば、アミン化合物と環状の酸無水物とを反応させる工程を含む製造方法(以下、これを製造方法Aと称する)により得られる。
【0019】
アミン化合物は、カルボキシル基を含有する第一アミン(以下では、単に「第一アミン」と言うことがある)と、カルボキシル基の一部または全部が中和されている第一アミン塩(以下では、単に「第一アミン塩」と言うことがある)とからなる群から選ばれる少なくとも1つである。第一アミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、アラニン、フェニルアラニン等が挙げられる。第一アミン塩としては、これらの第一アミンの有するカルボキシル基の一部または全部が、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、有機アミン類の塩、または、これらの塩の2以上の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である化合物である。第一アミンおよび第一アミン塩は、それぞれ、一種類のみを用いてもよいし、あるいは、二種類以上を併用してもよい。
【0020】
環状の酸無水物は、炭素−炭素不飽和二重結合を有するものであり、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの不飽和ポリカルボン酸の無水物であれば特に限定はされない。環状の酸無水物としては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、1−プロペン1,2ジカルボン酸無水物等が挙げられる。酸無水物は、一種類のみを用いてもよいし、あるいは、二種類以上を併用してもよい。経済的有用性からは、酸無水物は無水マレイン酸が最も好ましい。
【0021】
上記例示化合物のうち、第一アミン塩としては、特にアスパラギン酸ナトリウム塩が好ましく、酸無水物としては、特に無水マレイン酸が好ましい。アスパラギン酸ナトリウム塩と無水マレイン酸とのアミド化反応では、非常に高収率で単量体(a)が得られ、且つ、単量体(a)を重合させて得られる水溶性重合体の物性も非常に優れている。
【0022】
アミン化合物と、炭素−炭素不飽和二重結合を有する環状の酸無水物との反応は水溶液中で行われる。反応条件は特に限定されないが、酸無水物の加水分解、アミン化合物の不飽和二重結合へのマイケル付加等の副反応を抑制し、得られた単量体(a)が加水分解するのを抑え、さらには、単量体(a)を高収率で得るためには、以下に示す条件が好ましい。
【0023】
好ましくは、前記水溶液が塩基性であり、アミン化合物と酸無水物とを前記水溶液中で冷却下に反応させることである。
反応温度は25℃以下が好ましく、10℃以下が最も好ましい。これは、高温であるほど酸無水物の加水分解、アミン化合物の不飽和二重結合へのマイケル付加が速やかに進行するからである。
【0024】
反応pHは、塩基性側である7〜13の範囲が好ましく、8〜13の範囲が最も好ましい。pHの調節は、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などを水に加えることにより行うことができる。なお、pHの調節は酸無水物を添加する前に行うのが好ましい。pHが7未満である酸性側ではアミノ基がカチオン化されて遊離しておらず、単量体(a)の収率が著しく低下するおそれがある。また、過剰の塩基が存在すると得られた単量体(a)が加水分解を受けてアミン化合物と不飽和多価カルボン酸(または塩)に分解され易くなる。この不飽和多価カルボン酸(塩)はアミン化合物と水溶液中で反応しないため、単量体(a)の収率が著しく低下するおそれがある。
【0025】
より好ましくは、アミン化合物が溶解されたpHが7〜13で25℃以下に冷却された水溶液(アミン化合物が溶解されたpHが7〜13で10℃以下に冷却された水溶液、アミン化合物が溶解されたpHが8〜13で25℃以下に冷却された水溶液、アミン化合物が溶解されたpHが8〜13で10℃以下に冷却された水溶液の順により好ましくなる)中に、攪拌下に、環状の酸無水物を徐々に(好ましくは10分以上に渡って、最も好ましくは30分以上に渡って)、連続的にあるいは断続的に定量的に添加することである。酸無水物を水に加えてからアミン化合物を添加したり、酸無水物をアミン化合物と同時に水に加えたり、あるいは、pH7〜13で25℃以下のアミン化合物水溶液に酸無水物の全量を10分未満で添加したりすると、酸無水物が加水分解を受け易くなって単量体(a)の収率が著しく低下することがあるため好ましくない。
【0026】
反応濃度は特に制限されないが、酸無水物の加水分解を抑え、反応を促進させるために、高濃度である方が良く、アミン化合物と環状の酸無水物の合計量が固形分で30重量%以上が好ましく、40重量%以上が最も好ましい。
アミン化合物と環状の酸無水物の添加比率は任意で良い。
アミン化合物に対して、過剰の酸無水物を添加することで、アミン化合物の転化率を100%あるいはほぼ100%に近い値にすることができる。酸無水物がアミン化合物に対して過剰であるとは、等モルよりも多いことを言う。酸無水物の過剰量は任意とすることができる。酸無水物を過剰に使用した場合、反応混合物は、得られた単量体(a)と残存する酸無水物とを含む。この酸無水物は、反応混合物から除去してもよいし、反応混合物中に残しておいてもよい。酸無水物を含む反応混合物を重合に用いると、単量体(a)と酸無水物との共重合体が生成する。
【0027】
また、添加する酸無水物に対して過剰のアミン化合物を予め水に溶解しておくことで、酸無水物の転化率を100%あるいはほぼ100%に近い値にすることができる。アミン化合物が酸無水物に対して過剰であるとは、等モルよりも多いことを言う。アミン化合物の過剰量は任意とすることができる。アミン化合物を過剰に使用した場合、反応混合物は、得られた単量体(a)と残存するアミン化合物とを含む。このアミン化合物は、反応混合物から除去してもよいし、反応混合物中に残しておいてもよい。いずれにして、酸無水物が全くまたはほとんど残存せず単量体(a)を含む反応混合物を重合に用いると、単量体(a)の単独重合体を製造することができる。過剰のアミン化合物は、重合体製造後、透析など従来既知のアミン化合物除去方法により、重合の反応混合物から除くことができる。
【0028】
前記一般式(1)中の置換基X1、X2、X3、またはX4は互いに独立に、H、Na、KまたはNH4 で構成される。たとえば、前記アミン化合物と前記酸無水物とを反応して得られる反応混合物には、置換基X1、X2、X3、およびX4がいずれもHである単量体(a)が含まれている。該反応混合物に、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液などを添加し混合することにより、置換基X1、X2、X3、またはX4が互いに独立に、Na、KまたはNH4 で構成される、部分中和または完全中和された単量体(a)を容易に得ることが出来る。なお、置換基を変えるための処理法はここに述べた方法に限定されるものではない。
【0029】
上記構造単位(i) 〜(ix)となる単量体(a)を製造するために用いるアミン化合物と環状の酸無水物との組み合わせは次のとおりである。
アミン化合物/環状の酸無水物
構造単位(i) :アスパラギン酸/無水マレイン酸
構造単位(ii) : セリン/無水マレイン酸
構造単位(iii) : グルタミン酸/無水マレイン酸
構造単位(iv) :アスパラギン酸/無水イタコン酸
構造単位(v) : セリン/無水イタコン酸
構造単位(vi) : グルタミン酸/無水イタコン酸
構造単位(vii) :アスパラギン酸/無水アコニット酸
構造単位(viii): セリン/無水アコニット酸
構造単位(ix) : グルタミン酸/無水アコニット酸
製造方法Aでは、アミン化合物と、炭素−炭素不飽和二重結合を有する環状の酸無水物とを水溶液中で反応させるので、不飽和二重結合している炭素原子に直接或いはメチレン基を介して結合したカルボキシル基を有し、不飽和二重結合している炭素原子から離れた位置にもカルボキシル基を有する、全体としてカルボン酸密度が高い水溶性エチレン性不飽和単量体(a)を生成する。
【0030】
本発明にかかる重合体は、たとえば、単量体(a)を単独に重合させるか、あるいは、単量体(a)を、それと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体(以下、これを単量体(b)と称する)と共重合させることにより、容易に製造される。
生成した単独重合体または共重合体は、主鎖の炭素原子に直接またはメチレン基を介して結合したカルボキシル基を有するので、主鎖近傍のカルボン酸密度が高く、しかも、主鎖から離れた位置にもカルボキシル基を有するので、後者のカルボキシル基が自由に回転しうるものとなっている。
【0031】
単量体(b)は、水溶性を有することが好ましく、100℃の水100gに対する溶解度が5g以上であることがより好ましい。
単量体(a)と単量体(b)とを共重合させる際の両者の割合は、特に限定はされないが、たとえば、両者の合計量に対する単量体(a)のモル比が1/100以上かつ1未満となるようにすればよい。
【0032】
単量体(b)の具体例としては、特に限定はされないが、アクリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸およびそれらの塩;マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和多価カルボン酸及びそれらの塩;酢酸ビニル等が挙げられる。
また、下記一般式(3):
【0033】
【化5】
【0034】
(式中、R4 、R5 は水素原子または−CH3 基を表し、且つ、R4 及びR5 は同時に−CH3 基になることはなく、R6 は−CH2 −、−(CH2 )2 −または−C(CH3 )2 −を表し、且つ、R4 、R5 及びR6 に含まれる炭素数の合計は3であり、Yは炭素数2〜3のアルキレン基を表し、nは0〜100の整数である。)
で表される水酸基含有不飽和化合物、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール(「イソプレノール」とも言う)、3−メチル−2−ブテン−1−オール(「プレノール」とも言う)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(「イソプレンアルコール」とも言う)、および、これら化合物1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させた化合物等も、単量体(b)として用いることができる。
【0035】
さらに、下記一般式(4):
【0036】
【化6】
【0037】
(式中、R7 は水素原子または−CH3 基を表し、a、b、c及びdは0〜100の整数であり、且つ、a+b+c+d=0〜100である。また、−OC2 H4 −及び−OC3 H6 −の結合の順序は限定されない。さらに、c+d=0の場合に、Zは水酸基、スルホン酸基および(亜)リン酸基を表し、c+d=1〜100の場合に、Zは水酸基を表す。)
で表される化合物、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩;グリセロールモノアリルエーテル、および、この化合物1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させた化合物等の不飽和(メタ)アリルエーテル系化合物;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸基含有化合物およびそれらの塩;炭素数1〜20のアルキルアルコール1モルにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させたアルコールと(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸とのエステル、または、上記アルキルアルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物とマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の多価カルボン酸との、モノエステルあるいはその塩、並びに、ジエステル等の末端アルキル基含有エステル系不飽和化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させたエステル系化合物、または、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和多価カルボン酸1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させてなる、モノエステル系化合物あるいはその塩、並びに、ジエステル系化合物等のエステル系不飽和化合物等も、単量体(b)として用いることができる。
【0038】
単量体(b)は、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い。これら例示化合物のうち、重合反応性や、得られる重合体の各種物性等の点から、(メタ)アクリル酸(塩)及び/またはマレイン酸(塩)が単量体(b)として特に好ましい。
本発明の重合体を製造する際の重合反応においては、必要に応じて、重合開始剤を用いてもよい。使用可能な重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩;4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ第3級ブチルパーオキサイド、第3級ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられるが、特に限定されるものではない。重合開始剤は、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い。
【0039】
重合反応の反応条件としては、例えば、反応温度は100 ℃程度、反応時間は180 分間程度に設定されるが、特に限定されるものではなく、単量体や触媒、水性媒体の種類や量に応じて、適宜設定すれば良い。また、反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであっても良い。
重合反応時のpHは、任意の値とすることができるが、原料の単量体(a)はアミド結合を有しており、このアミド結合の加水分解を防ぐ目的で、塩基性条件下で重合を行うことが好ましく、pHを8〜10に調整して重合を行うのがさらに好ましい。重合中のpH調整に用いる塩基性化合物としては、特に限定はされないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩;アンモニア;モノメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、第2級ブタノールアミン等のアルカノールアミン類;ピリジン等が挙げられる。塩基性化合物は、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い。
【0040】
単量体を多価金属イオンの存在下で重合させると、重合終了後、反応液中に残存する単量体の量を低減させることができるため、重合体の分子量分布を狭くすることができるので、好ましい。使用できる多価金属イオンとしては、特に限定はされないが、たとえば、鉄イオン、バナジウム原子含有イオン、銅イオン等が挙げられる。これら例示のイオンのうち、Fe3+、Fe2+、Cu+ 、Cu2+、V2+、V3+、VO2+が好ましく、特に、Fe3+、Cu2+、VO2+がより好ましい。多価金属イオンは、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い
多価金属イオンの濃度としては、反応液全量に対して0.1〜100ppmが好適である。0.1ppm未満の濃度では、上記のような効果がほとんど見られないので好ましくない。100ppmを超えた濃度では、例えば、マレイン酸系単量体を共重合して得られるマレイン酸系共重合体が着色し、洗剤組成物等として使用できなくなるので好ましくない。なお、多価金属イオンの存在下で重合させた重合体は、いわゆる鉄粒子沈着防止能に優れており、洗剤組成物等として好適に用いることができる。
【0041】
多価金属イオンを反応液中に存在させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、反応液中でイオン化する金属化合物や金属を該反応液に添加すれば良い。上記の金属化合物や金属としては、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2 SO4 ・VSO4 ・6H2 O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4 ) V (SO4)2 ・12H2 O]、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第1銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセトナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄などの金属酸化物;硫化銅(II)、硫化鉄などの金属硫化物;銅粉末、鉄粉末などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0042】
上記の重合反応は、本発明の重合体を含有してなる組成物が主に水系中で用いられるため、重合体製造後そのまま使用できる利便性、また粉末洗剤組成物として用いる場合において、組成物配合後の溶媒の回収が不必要で乾燥が容易である利便性、さらには経済性の点からも、水性媒体中で行うことが好ましい。使用できる水性媒体としては、具体的には、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類等のような親水性溶媒等が挙げられるが、特に限定されるものではない。水性媒体は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
〔用途〕
次に、本発明にかかる組成物について説明する。
【0043】
この組成物は、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体(以下、これを重合体Aと称する)を含有するため、例えば、洗剤組成物、繊維処理剤、無機顔料分散剤、水処理剤及び木材パルプの漂白助剤等として好適に用いられる。以下、各用途ごとに詳述する。
本発明の組成物が洗剤組成物である場合、洗剤組成物は、重合体Aと、界面活性剤と、必要に応じて酵素等とを含む。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤が好ましい。
【0044】
洗剤組成物中に占める重合体Aの割合は、0.5〜80重量%が好適であり、1〜30重量%がより好ましい。重合体Aの割合が少なすぎると、重合体Aを添加した効果が充分現れず洗浄力の向上が期待できないことがある。重合体Aの割合が多すぎると、もはや添加量に見合った洗浄力向上の効果は見られなくなり、経済的にも不利となることがある。
【0045】
アニオン界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
【0046】
ノニオン界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
両性界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、第4アンモニウム塩等が挙げられる。
洗剤組成物中に占める界面活性剤の割合は、5〜70重量%が好適であり、20〜60重量%がより好ましい。界面活性剤の割合が少なすぎると、特に油性汚れ等に対する洗浄力が充分でないことがある。界面活性剤の割合が多すぎると、他の重合体Aとのバランスが崩れ、もはや重合体Aの添加量に見合った洗浄力向上に寄与しないことがある。
【0048】
洗剤組成物に配合できる酵素としては、特に限定はされないが、たとえば、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が挙げられる。特に、アルカリ洗浄液中で活性が高い、プロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルカリセルラーゼ等が好ましい。洗剤組成物中に占める酵素の割合は、0.01〜5重量%が好ましい。酵素の配合量がこの範囲から外れると、界面活性剤とのバランスがくずれて、洗浄力を向上させることができない恐れがある。
【0049】
洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、蛍光剤、漂白剤、香料、液状洗剤組成物の場合には液体洗剤組成物の場合には可溶化剤などの分散媒等の、洗剤組成物に常用される成分がさらに配合されていても良い。前記アルカリビルダーとしては、特に限定はされないが、たとえば、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。前記キレートビルダーとしては、特に限定はされないが、たとえば、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン六酢酸)、クエン酸等が挙げられる。また、ゼオライトをさらに配合して洗浄力を向上させても良い。
【0050】
本発明の組成物が繊維処理剤である場合、この繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分と、重合体Aとを含む。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングのいずれの工程でも使用することができる。なお、重合体Aに配合できる、染色剤、過酸化物および界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、公知の繊維処理剤に使用されるものを転用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤と、重合体Aとの配合比は、特に限定はされないが、例えば、重合体がマレイン酸系共重合体である場合には、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度等を向上させるために、重合体Aの1重量部に対して、上記染色剤等の他の成分を0.1〜100重量部という割合で配合すれば良い。上記繊維処理剤を使用することができる繊維としては、特に限定されないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ナイロン、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維;並びに、これらの繊維を用いた織物および混紡品等が挙げられる。
【0051】
マレイン酸系共重合体を重合体Aとして含む繊維処理剤を精練工程に適用する場合、該繊維処理剤は、アルカリ剤および界面活性剤を含有していることが好ましい。また、マレイン酸系共重合体を重合体Aとして含む繊維処理剤を漂白工程に適用する場合、該繊維処理剤は、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤である珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを含有していることが好ましい。
【0052】
本発明の組成物が無機顔料分散剤である場合、この無機顔料分散剤は、重合体Aを含有してなる。この無機顔料分散剤には、必要に応じて、たとえば、重合リン酸、重合リン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ポリビニルアルコール、アニオン化変性ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物(2以上の場合は、混合物でもよい)を任意の量で配合してもよい。
【0053】
この無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイ等の無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮する。たとえば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加した後、水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、これらの性能の経時変化が生じない安定な高濃度無機顔料スラリー(例えば、高濃度炭酸カルシウムスラリー)を製造することができる。無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して0.05〜2.0重量部が好ましい。無機顔料分散剤の使用量が少なすぎると、充分な分散効果が発揮されない恐れがある。逆に多すぎると、もはや添加量に見合った分散効果の向上が見込めず経済的に不利益となることがある。
【0054】
本発明の組成物が水処理剤である場合、この水処理剤は、重合体Aを含有してなる。この水処理剤には、必要に応じて、たとえば、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物(2以上の場合は、混合物でもよい)を任意の量で配合してもよい。この水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。
【0055】
本発明の組成物が木材パルプの漂白助剤である場合、この漂白助剤は、重合体Aを含有してなる。この漂白助剤は、木材パルプの漂白時の前処理剤として用いてもよいし、あるいは、木材パルプの漂白時に過酸化水素、塩素系漂白剤、オゾン等と共に用いてもよい。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を、その実施例及び比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。なお、下記例中、「%」は「重量%」を示し、「部」は「重量部」を示す。
−実施例1−
まず、単量体(a)として、マレイン酸−アスパラギン酸ナトリウムモノアミド体(以下、「単量体(a1)」と称する。)を次に示す方法で合成した。すなわち、温度計、pH計及び攪拌機を備えた容量500ミリリットルの四つ口フラスコに、DL−アスパラギン酸133部、水酸化ナトリウム48%水溶液167部、イオン交換水54.3部を投入した。次に、フラスコの内容物を10℃以下に保持したまま攪拌しながら、無水マレイン酸98部を60分間に渡って定量的な滴下により添加した。その際、反応水溶液中のpHが9以上に保持されるように、適宜、水酸化ナトリウム48%水溶液を添加した。無水マレイン酸の添加終了後、さらに10℃以下に保持したまま、30分間攪拌を続けた。反応終了後、イオン交換水56.7部を加えた後、水酸化ナトリウム48%水溶液でpHを11.5に調整した。その結果、褐色透明の水溶液を得た。その後、該水溶液から水を除去することにより、粉末状の白色の固体物質を得た。
【0057】
以上の様にして得られた固体物質について、IR測定、 1H−NMR測定により、物質の同定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):
δ2.2〜2.6ppm(m,2H,CH2 )
δ4.2〜4.4ppm(m,1H,NH−CH)
δ5.7〜5.8ppm(d,1H,CH=)
δ6.2〜6.3ppm(d,1H,CH=)
IR測定からアミド結合(CONHR)の存在が確認された。また、 1H−NMRスペクトルの解析により、実施例1で得られた上記生成物は、下記構造式:
【0058】
【化7】
【0059】
で表される化合物、すなわち単量体(a1)であることが確認できた。
また、得られた褐色透明の水溶液の固形分は36%であった。さらに、1 H−NMRのピークの積分比から、DL−アスパラギン酸の転化率は86%、無水マレイン酸の転化率は78%であり、また、副生成物としてイミノジコハク酸が生成していた。そして、これらの存在比率は重量比で、単量体(a1):DL−アスパラギン酸:マレイン酸:副生成物=80:2:7:11(いずれもNa塩であった。)であった。すなわち、該褐色透明の水溶液は単量体(a1)を含有するものであった。
【0060】
この褐色透明の水溶液を用いて重合体を次のようにして合成した。すなわち、該水溶液250部(単量体(a1)を71.2部、単量体(b)としてマレイン酸ナトリウム6.2部を含有している。)を、温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた容量500ミリリットルの四つ口フラスコに投入した。攪拌しながら沸点まで加熱した後に、攪拌しながら35%過酸化水素水12.6部を30分間に渡って、また引き続き15%過硫酸ナトリウム水溶液19.6部を過酸化水素水滴下終了後から70分間に渡って連続的に滴下した。また、この滴下操作と並行して、反応水溶液にさらに単量体(b)としてアクリル酸の80%水溶液37.8部を過酸化水素水の滴下開始時から90分間に渡って連続的に滴下し、全ての滴下終了後、反応液を60分間沸点に保って重合反応を行った。なお、この反応において、単量体(a1)とマレイン酸ナトリウムとアクリル酸とのモル比は34:6:60であった。
【0061】
反応終了後、水酸化ナトリウム48%水溶液を用いてpH8.5に調整して、褐色透明の固形分45.5%を含有する水溶液を得た。次に、重合体の組成比と重量平均分子量を測定するため、残存単量体及び低分子量物を除去する後処理を行った。すなわち、得られた重合体水溶液を、分画分子量1000の透析膜スペクトラポア6(家田貿易製)を用いて、流水下12時間に渡って透析した。これにより、固形分4.5%、pH10.0の淡褐色透明の重合体(以下、「重合体(1)」と称する。)水溶液を得た。該水溶液から水分を除去して白色粉末を得た。
【0062】
得られた白色粉末について、IR測定、 1H−NMR測定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):δ4〜4.4ppm(m,NH−CH)
以上の結果より、重合体中にアミド結合(CONHR)の存在が確認され、単量体(a1)が重合体(1)に導入されていることが明らかであった。また、 1H−NMRスペクトルのプロトンの積分比の解析から、重合体(1)は、下記構造式:
【0063】
【化8】
【0064】
で表され、単量体(a1)構造単位とマレイン酸ナトリウム構造単位とアクリル酸ナトリウム構造単位とを27:27:46のモル比で含有することが確認できた。
また、重合体(1)の平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により測定した。その際、カラムとしてはShodexGF−7MHQ(昭和電工製)を用い、溶離液としては0.5%リン酸ナトリウム水溶液(pH7)を用いた。また、分子量標準サンプルとしては、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学製)を用いた。結果は、重量平均分子量(Mw)4100であった。以上のようにして、水溶性の重合体(1)が合成できたことを確認できた。
【0065】
−実施例2−
まず、単量体(a)として、マレイン酸−L−セリンモノアミド体ナトリウム塩(以下、「単量体(a2)」と称する。)を次に示す方法で合成した。すなわち、温度計、pH計及び攪拌機を備えた容量100ミリリットルの四つ口フラスコに、L−セリン21部、水酸化ナトリウム48%水溶液16.7部、イオン交換水13.1部を投入した。次に、フラスコの内容物を10℃以下に保持したまま攪拌しながら、無水マレイン酸40部を60分間に渡って定量的な滴下により添加した(この反応では無水マレイン酸が過剰に添加されるが、過剰量は重合体合成時の単量体(b)としてそのまま用いる。)。その際、反応水溶液中のpHが9以上に保持されるように、適宜、水酸化ナトリウム48%水溶液を添加した。無水マレイン酸の添加終了後、さらに10℃以下に保持したまま、30分間攪拌を続けた。反応終了後、イオン交換水47部を加えた後、水酸化ナトリウム48%水溶液でpHを12.5に調整した。その結果、無色透明な固形分34.1%の水溶液を得た。その後、該水溶液から水を除去することにより、粉末状の白色の固体物質を得た。
【0066】
以上の様にして得られた固体物質について、IR測定、 1H−NMR測定により、物質の同定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):
δ3.6〜3.8ppm(m,2H,CH 2 −OH)
δ4.0ppm(m,1H,NH−CH)
δ5.8〜5.9ppm(d,1H,CH=)
δ6.2〜6.3ppm(d,1H,CH=)
IR測定からアミド結合(CONHR)の存在が確認された。また、 1H−NMRスペクトルの解析により、実施例2で得られた上記生成物は、下記構造式:
【0067】
【化9】
【0068】
で表される化合物、すなわち単量体(a2)であることが確認できた。
さらに、1 H−NMRのピークの積分比から、L−セリンの転化率は100%、無水マレイン酸の転化率は51%であり、副生成物は生成していなかった。従って、これらの存在比率は重量比で、単量体(a2):マレイン酸=62:38(いずれもNa塩であった。)であった。すなわち、該無色透明の水溶液は単量体(a2)を含有するものであった。
【0069】
この無色透明の水溶液を用いて重合体を次のようにして合成した。すなわち、該水溶液100部(単量体(a2)を20部、単量体(b)としてマレイン酸ナトリウム13部を含有している。)を、温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた容量200ミリリットルの四つ口セパラブルフラスコに投入した。攪拌しながら沸点まで加熱した後に、攪拌しながら35%過酸化水素水4.8部を30分間に渡って、また引き続き15%過硫酸ナトリウム水溶液3.7部を過酸化水素水滴下終了後から70分間に渡って連続的に滴下した。また、この滴下操作と並行して、反応水溶液にさらに単量体(b)としてアクリル酸の80%水溶液21.6部を過酸化水素水の滴下開始時から90分間に渡って連続的に滴下し、全ての滴下終了後、反応液を60分間沸点に保って重合反応を行った。なお、この反応において、単量体(a2)とマレイン酸ナトリウムとアクリル酸とのモル比は20:20:60であった。
【0070】
反応終了後、イオン交換水78部を添加した後、水酸化ナトリウム48%水溶液を用いてpH8.5に調整して、赤褐色透明の固形分24.7%を含有する水溶液を得た。得られた水溶液を実施例1と同様の方法で後処理し、残存単量体及び低分子量物を除去することにより、固形分4.5%、pH10.0の淡褐色透明の重合体(以下、「重合体(2)」と称する。)水溶液を得た。該水溶液から水分を除去して白色粉末を得た。
【0071】
得られた白色粉末について、IR測定、 1H−NMR測定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):δ4〜4.4ppm(m,NH−CH)
以上の結果より、重合体中にアミド結合(CONHR)の存在が確認され、単量体(a2)が重合体(2)に導入されていることが明らかであった。また、 1H−NMRスペクトルのプロトンの積分比の解析から、重合体(2)は、下記構造式:
【0072】
【化10】
【0073】
で表され、単量体(a2)構造単位とマレイン酸ナトリウム構造単位とアクリル酸ナトリウム構造単位とを21:18:61のモル比で含有することが確認できた。
また、重合体(2)の平均分子量を実施例1と同様にして測定した結果、重量平均分子量(Mw)11000であった。以上のようにして、水溶性の重合体(2)が合成できたことを確認できた。
【0074】
−実施例3−
まず、単量体(a)として、マレイン酸−L−グルタミン酸モノアミド体ナトリウム塩(以下、「単量体(a3)」と称する。)を次に示す方法で合成した。すなわち、温度計、pH計及び攪拌機を備えた容量500ミリリットルの四つ口フラスコに、L−グルタミン酸147部、水酸化ナトリウム48%水溶液167部、イオン交換水164部を投入した。次に、フラスコの内容物を10℃以下に保持したまま攪拌しながら、無水マレイン酸49部を60分間に渡って定量的な滴下により添加した(無水マレイン酸の転化率を高くするために過剰にアミン(L−グルタミン酸)を投入した。)。その際、反応水溶液中のpHが9以上に保持されるように、適宜、水酸化ナトリウム48%水溶液を添加した。無水マレイン酸の添加終了後、さらに10℃以下に保持したまま、30分間攪拌を続けた。反応終了後、水酸化ナトリウム48%水溶液でpHを9.5に調整した。その結果、無色透明な固形分54.0%の水溶液を得た。その後、該水溶液から水を除去することにより、粉末状の白色の固体物質を得た。
【0075】
以上の様にして得られた固体物質について、IR測定、 1H−NMR測定により、物質の同定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):
δ1.6〜2.6ppm(m,4H,CH2 −CH2 )
δ3.7〜4.0ppm(m,1H,NH−CH)
δ5.8〜5.9ppm(d,1H,CH=)
δ6.2〜6.3ppm(d,1H,CH=)
IR測定からアミド結合(CONHR)の存在が確認された。また、 1H−NMRスペクトルの解析により、実施例3で得られた上記生成物は、下記構造式:
【0076】
【化11】
【0077】
で表される化合物、すなわち単量体(a3)であることが確認できた。
さらに、1 H−NMRのピークの積分比から、L−グルタミン酸の転化率は41.7%、無水マレイン酸の転化率は73.2%であり、下記構造式:
【0078】
【化12】
【0079】
で表される副生成物が生成していた。これらの存在比率は重量比で、単量体(a3):L−グルタミン酸:マレイン酸:副生成物=48:34:2:16(いずれもNa塩であった。)であった。すなわち、該無色透明の水溶液は単量体(a3)を含有するものであった。
この無色透明の水溶液を用いて重合体を次のようにして合成した。すなわち、該水溶液200部(単量体(a3)を53部、単量体(b)としてマレイン酸ナトリウム2部を含有している。)を、温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた容量500ミリリットルの四つ口セパラブルフラスコに投入した。攪拌しながら沸点まで加熱した後に、攪拌しながら35%過酸化水素水6.7部を30分間に渡って、また引き続き15%過硫酸ナトリウム水溶液10.5部を過酸化水素水滴下終了後から70分間に渡って連続的に滴下した。また、この滴下操作と並行して、反応水溶液にさらに単量体(b)としてアクリル酸の80%水溶液35.1部を過酸化水素水の滴下開始時から90分間に渡って連続的に滴下し、全ての滴下終了後、反応液を60分間沸点に保って重合反応を行った。なお、この反応において、単量体(a3)とマレイン酸ナトリウムとアクリル酸とのモル比は30:1:69であった。
【0080】
反応終了後、水酸化ナトリウム48%水溶液を用いてpH8.5に調整して、暗褐色透明の固形分48.1%を含有する水溶液を得た。得られた水溶液を実施例1と同様の方法で後処理し、残存単量体及び低分子量物を除去することにより、固形分4.5%、pH10.0の淡褐色透明の重合体(以下、「重合体(3)」と称する。)水溶液を得た。該水溶液から水分を除去して白色粉末を得た。
【0081】
得られた白色粉末について、IR測定、 1H−NMR測定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):δ4〜4.4ppm(m,NH−CH)
以上の結果より、重合体中にアミド結合(CONHR)の存在が確認され、単量体(a3)が重合体(3)に導入されていることが明らかであった。また、 1H−NMRスペクトルのプロトンの積分比の解析から、重合体(3)は、下記構造式:
【0082】
【化13】
【0083】
で表され、単量体(a3)構造単位とマレイン酸ナトリウム構造単位とアクリル酸ナトリウム構造単位とを31:27:42のモル比で含有することが確認できた。
また、重合体(3)の平均分子量を実施例1と同様にして測定した結果、重量平均分子量(Mw)4200であった。以上のようにして、水溶性の重合体(3)が合成できたことを確認できた。
【0084】
以下の実施例4と参考例1〜5では、実施例1〜3で得られた重合体(1)〜(3)(後処理を施して残存単量体と副生成物を除去したもの)の粉末を用いた。
−参考例1−
実施例1〜3で得られた重合体(1)〜(3)のキレート化能を調べるために、カルシウムイオンの安定度定数(pKCa)及びカルシウムイオン捕捉能を下記に示す方法で測定した。結果を表1に示す。
【0085】
(カルシウムイオンの安定度定数)
▲1▼ 0.002mol/l、0.003mol/l、0.004mol/lの各濃度のカルシウムイオン溶液を調製し(CaCl2 を使用した。)、各水溶液を50gずつ別の100ccビーカーに投入した。
▲2▼ 重合体(1)の粉末を▲1▼のビーカーにそれぞれ50mgずつ投入した。
▲3▼ 各水溶液のpHを10に調整した(希水酸化ナトリウム水溶液を使用した。)。
▲4▼ カルシウムイオン電極安定剤として、NaCl粉末0.15gを加えた。▲5▼ カルシウムイオン電極を用いて、遊離のカルシウムイオン濃度を測定した。ここで、遊離のカルシウムイオン濃度を[Ca]、重合体によって固定化されたカルシウムイオン濃度を[CaS]、遊離のキレートサイトの数を[S]、キレートサイトの数を[S0 ]、安定度定数をlogKとすると、
[Ca]・[S]/[CaS]=1/K
[S]=[S0 ]−[CaS]
となる。従って、上記両式より、
[Ca]/[CaS]=(1/[S0 ])・[Ca]+1/([S0 ]・K)
となり、[Ca]/[CaS]を縦軸に、[Ca]を横軸にプロットし、傾きと切片より、[S0 ]、K、logKを計算により求めた。logKをpKCa値とした。
▲6▼ 重合体(2)、(3)についても重合体(1)と同様に▲1▼〜▲5▼の操作を行った。
【0086】
(カルシウムイオン捕捉能)
▲1▼ 0.001mol/lのカルシウムイオン溶液を調製し(CaCl2 を使用した。)、該水溶液50gを100ccビーカーに投入した。
▲2▼ 重合体(1)の粉末10mgを▲1▼のビーカーに投入した。
▲3▼ 水溶液のpHを9〜11に調整した(希水酸化ナトリウム水溶液を使用した。)。
▲4▼ カルシウムイオン電極安定剤として、4mol/lのKCl水溶液を1cc加えた。
▲5▼ カルシウムイオン電極を用いて、遊離のカルシウムイオン濃度を測定した。得られた数値から、捕捉されたカルシウムイオンを算出し、重合体1g当たり炭酸カルシウム(CaCO3 )換算で何ミリグラム捕捉されたかを計算で求め、その値をカルシウムイオン捕捉能とした。
▲6▼ 重合体(2)、(3)についても重合体(1)と同様に▲1▼〜▲5▼の操作を行った。
【0087】
−比較例1−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
−比較例2−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
−比較例3−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
−比較例4−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
−比較例5−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
−実施例4−
実施例1〜3で得られた重合体粉末を用いて、本発明にかかる組成物を形成した。即ち、上記の重合体(1)〜(3)を20%(固形分換算)含有する組成物としての洗剤組成物を形成した。洗剤組成物に配合した各種成分及び配合量を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
また、上記各洗剤組成物の性能を評価するために、人工汚垢を作成した。この人工汚垢に含まれる各種成分及び配合量を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
そして、上記の人工汚垢を用いて洗浄性試験を行った。先ず、人工汚垢を四塩化炭素中に分散した後、この分散液に綿製の白布を通した。次に該布を、乾燥、切断することにより、10cm×10cmの汚染布を作製した。次いで、表4に示す洗浄条件下で上記汚染布の洗浄を行った。
【0096】
【表4】
【0097】
洗浄後、この布を乾燥させ、所定の方法により該布の反射率を測定した。その後、下式に基づいて、反射率から洗浄率を算出した。
洗浄率=(洗浄後の汚染布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)/
(白布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)×100
結果を表5に示す。
【0098】
−比較例6−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
−比較例7−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0099】
−比較例8−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0100】
−比較例9−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
−比較例10−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
上記実施例4及び比較例6〜10の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた洗剤組成物は、従来公知の化合物を洗剤組成物として用いた場合と比較して、洗浄率が高いことがわかる。
−参考例2−
実施例1〜3で得られた重合体粉末を含む組成物を形成した。即ち、上記の重合体(1)〜(3)を2g/L(固形分換算)含有する組成物としての繊維処理剤を形成した。繊維処理剤に配合した各種成分及び配合量を下記に示す。なお、該繊維処理剤は水溶液である。
【0103】
(繊維処理剤の成分)
重合体(1)〜(3)の何れか1つ 2g/L
過酸化水素 10g/L
水酸化ナトリウム 2g/L
3号珪酸ナトリウム 5g/L
そして、上記の繊維処理剤を用いて漂白試験を行った。試験布として、精練した綿天竺製ニットを用いた。漂白条件を下記に示す。
【0104】
(漂白条件)
使用水の硬度 35・DH(ドイツ硬度)
浴 比 1:25
温 度 85℃
時 間 20分間
そして、漂白処理した布の風合いを、官能検査法により判定した。また、白色度は、スガ試験機株式会社製3MカラーコンピューターSM−3型を用いて測色し、Lab系の白色度式
W=100−[(100−L)2 +a2 +b2 ]1/2
L:測定された明度
a:測定された赤色のクロマチックネス指数
b:測定された青色のクロマチックネス指数
によって白色度(W値)を求め評価した。さらに、縫製性は、布を4枚重ねにし、本縫ミシンで針♯11Sを用いて30cm空縫いした場合の地糸切れ箇所数で評価した。結果を表6に示す。
【0105】
−比較例11−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
−比較例12−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0106】
−比較例13−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0107】
−比較例14−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
−比較例15−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0108】
【表6】
【0109】
上記参考例2及び比較例11〜15の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた繊維処理剤は、従来公知の化合物を繊維処理剤として用いた場合と比較して、風合い及び白色度に優れ、且つ、地糸切れの箇所数も大幅に減少していることがわかる。
−参考例3−
上記重合体(1)〜(3)を水処理剤として用い、下記に示す条件で加熱処理して炭酸カルシウムスケール抑制能試験を行った。
【0110】
イオン交換水に、炭酸カルシウム濃度530ppmとなるように、塩化カルシウム780ppmと重炭酸ナトリウム1500ppmとを仕込み、さらに、実施例1〜3で得られた各重合体(1)〜(3)粉末を3ppmとなるように加えた水溶液を調製し、各水溶液を70℃で8時間加熱した。加熱処理された水溶液を冷却した後、0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液をJIS K0101に従って分析を行い、下式に基づき炭酸カルシウムスケール抑制能を評価した。
【0111】
スケール抑制能=〔(C−B)/(A−B)〕×100
A:試験前の液中に溶解していたカルシウム濃度
B:水処理剤無添加時の濾液中でのカルシウム濃度
C:試験後濾液中のカルシウム濃度
結果を表7に示す。
【0112】
−比較例16−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
−比較例17−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0113】
−比較例18−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0114】
−比較例19−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
−比較例20−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
上記参考例3及び比較例16〜20の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた水処理剤は、従来公知の化合物を水処理剤として用いた場合と比較して、スケール抑制能に優れていることがわかる。
−参考例4−
上記重合体(1)〜(3)を無機顔料分散剤として用い、以下の様にして無機顔料分散液を調製した。
【0117】
先ず、容量1L(材質:SUS 304、内径90mm、高さ160mm)のビーカーに、カルサイト系立方体状の軽質炭酸カルシウム(1次粒子径0.15μm)のフィルタープレスにより脱水して得たケーキ(固形分65.3%)400部を入れた。次に、該ビーカーに無機顔料分散剤としての重合体1.3部(炭酸カルシウムの重量に対する重合体の割合は0.5%:固形分換算)および固形分濃度を調整するための水8.9部を加え、ディゾルバー攪拌羽根(50mmφ)を用いて低速で3分間混練した。その後、3000rpm で10分間分散し、固形分の濃度が64%の分散液を得た。
【0118】
得られた水分散液について、分散直後の粘度と室温1週間放置した後の粘度とを、B型粘度計を使用して25℃で測定した。測定結果を表8に示す。
−比較例21−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0119】
−比較例22−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
−比較例23−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0120】
−比較例24−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
−比較例25−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0121】
【表8】
【0122】
上記参考例4及び比較例21〜25の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた分散液は、従来公知の化合物を用いた分散液と比較して、分散力が高く、しかも、一週間放置した後においても、良好な分散性を保持していることがわかる。
−参考例5−
上記重合体(1)〜(3)を木材パルプの漂白助剤(前処理剤)として用い、以下のようにして木材パルプを漂白した。
【0123】
先ず、容量5Lのビーカーに、グランドパルプをいわゆる絶乾重量として30部入れると共に、温度50℃の水3000部及び、漂白助剤としての重合体0.06部(パルプの重量に対する重合体の割合は0.2%)を加え、50℃で15分間攪拌した。次に、該パルプをいわゆるNo.2ろ紙でろ過して上記処理液から分離した後、パルプに水1500部を通液して洗浄し、その後、脱水した。
【0124】
次ぎに、上記の前処理を施して得られたパルプを、容量5Lのビーカーに入れ、パルプ濃度が最終的に14%になるように水を加えると共に、過酸化水素(パルプの重量に対する割合は4%)、3号珪酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを加えて、処理液のpH11.0に調整した。
この処理液をポリエチレン製の袋に移し替え、水分が蒸発しないようにその口を折り返した後、予め65℃に調整されたウオーターバスにて5時間熱処理することによりパルプの漂白を行った。その後、漂白されたパルプを420メッシュのろ布でろ過し、脱水した。そして、ろ液に残存する過酸化水素の濃度を測定した。その後、下式に基づいて過酸化水素の消費率を算出した。
【0125】
過酸化水素の消費率(%)=〔(B−C)/B〕×100
B:漂白前の処理液中の過酸化水素の濃度(%)
C:漂白後の処理液中の過酸化水素の濃度(%)
また、漂白されたパルプの一部を水で3%に希釈した後、亜硫酸水を用いて、pH4.5に調整することによりパルプスラリーを得た。そして、このパルプスラリーを用いて、TAPPI標準法(Technical Association of the Pulp and Paper Industry)により2枚の手抄きシートを作成した。該シートを風乾した後、ハンター白色度計により白色度を測定した。測定結果を表9に示す。
【0126】
−比較例26−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
−比較例27−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0127】
−比較例28−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0128】
−比較例29−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
−比較例30−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0129】
【表9】
【0130】
上記参考例5及び比較例26〜30の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた漂白助剤は、従来公知の化合物を用いた漂白助剤と比較して、白色度が優れ、しかも過酸化水素の消費率が低いため、用いる過酸化水素の量を少なくすることができ、経済的であることがわかる。
【0131】
【発明の効果】
本発明にかかる水溶性重合体は、前記一般式(1)で表される構造単位を有し、重量平均分子量800 〜8,000,000 であるので、重合体の主鎖に直接結合しているカルボキシル基と、主鎖に直接結合していないカルボキシル基とを多数含有する分子構造を有している。このため、該重合体は、水溶性を備えており、従来のキレート剤と比較して、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い。たとえば、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えている。
【0132】
本発明にかかる重合体の製造方法は、水性媒体を用いて、前記一般式(2)で表される化合物を含む単量体を重合する工程を含むので、本発明の水溶性重合体を容易に得ることが出来る。
本発明の水溶性重合体、または、これを含有する組成物は、例えば、洗剤組成物、繊維処理剤、無機顔料分散剤、水処理剤及び木材パルプの漂白助剤等に好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性重合体、その製造方法およびその重合体を含む組成物に関する。この組成物は、たとえば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤、木材パルプの漂白助剤である。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、洗剤組成物、分散剤、凝集剤、スケール防止剤、キレート試薬、繊維処理剤、木材パルプの漂白助剤、pH調整剤及び洗浄剤等の用途で種々の有機系キレート剤が使用されている。
有機系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩;ニトリロ三酢酸塩;マレイン酸の単独重合体または共重合体、アクリル酸の単独重合体または共重合体などのカルボン酸系重合体等が挙げられる。エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩は、重金属イオンを効果的に捕捉する能力が比較的高いことで知られている。また、カルボン酸系重合体は、無機粒子に対する優れたキレート作用及び分散作用を示すことが知られており、広範囲にわたり使用されている。
【0003】
他方、特開昭56−61471号公報、米国特許第4172934号明細書、同第4157418号明細書には、不飽和二重結合を形成している炭素原子にアミド結合とアルキレン基またはフェニレン基を介して1個または2個以上のカルボキシル基を導入した単量体が記載されている。これらの単量体は、これらは何れもアクリロイルクロライドあるいはメタクリロイルクロライドとアミノ酸とを反応して得られるアミド化合物である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩は、単位重量当りでみると、多量の金属を捕捉することが出来ず、各種用途分野で要求される無機粒子の分散力も全く不十分である。
前記カルボン酸系重合体は、カルボキシル基が主鎖の炭素原子に直接結合した構造を持つため、カルボキシル基の自由な回転が阻害され、金属イオンの捕捉能力は充分ではない。特に重金属イオンの捕捉能力は不十分である。
【0005】
また、前記アミド化合物は、主鎖から離れた位置にカルボキシル基を有する重合体を生成しうる。しかし、この重合体は、主鎖の近傍に存在するカルボン酸密度(主鎖に直接またはメチレン基を介して結合しているカルボキシル基の密度)が著しく低いため、金属イオンの捕捉能力が低いという問題点を有する。
従って、各種用途分野で有用なキレート剤、即ち、水溶性を備え、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い化合物が切望されている。
【0006】
本発明の課題は、各種用途分野で有用なキレート剤、即ち、水溶性を備え、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い水溶性重合体と、その製造方法と、前記重合体を含有する組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる水溶性重合体は、下記一般式(1):
【0008】
【化3】
【0009】
(式中、R1 はHまたはCOOX1 を表し、R2 はHまたはCH2 COOX2 を表し、R3 はCOOX3 、OHまたはCH2 COOX3 を表し、X1 、X2 、X3 およびX4 は互いに独立にH、Na、KまたはNH4 を表す。但し、R1 とR2 は同時にHとはならない。)
で表される構造単位を有し、重量平均分子量800 〜8,000,000 である。
【0010】
本発明にかかる、水溶性重合体の製造方法は、下記一般式(2):
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R1 はHまたはCOOX1 を表し、R2 はHまたはCH2 COOX2 を表し、R3 はCOOX3 、OHまたはCH2 COOX3 を表し、X1 、X2 、X3 およびX4 は互いに独立にH、Na、KまたはNH4 を表す。但し、R1 とR2 は同時にHとはならない。)
で表される化合物を含む単量体を水性媒体中で重合する工程を含む。
【0013】
本発明にかかる組成物は、たとえば、本発明にかかる上記水溶性重合体を含有する洗剤組成物である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、上記一般式(1)で表される特定の構造単位を有する重合体が、水溶性を備え、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多いことを見出した。そして、この重合体を含有する組成物は、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤、木材パルプの漂白助剤等に好適に用いることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
〔水溶性重合体〕
本発明の水溶性重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位を有する。一般式(1)の構造単位は、たとえば0.1〜100モル%含まれる。一般式(1)の構造単位の量が前記範囲内であると、重合体の性能(水溶性、無機粒子の分散力、重金属イオンを捕捉する能力、または、単位重量当りの金属イオンの捕捉量)の少なくとも1つがより優れている。重合体のこれらの性能の少なくとも1つがより良いという点では、一般式(1)の構造単位の量は、好ましくは1〜100モル%、より好ましくは5〜100モル%、最も好ましくは10〜40モル%である。特に、この重合体を後述の洗剤組成物に使用する場合、10〜40モル%であると性能が高い。なお、残部の構造単位は、後述する単量体(b)に由来する単量体単位である。
【0015】
本発明の水溶性重合体は、上記一般式(1)において:
(i) R1 がCOOX1 であり、R2 がHであり、R3 がCOOX3 である構造単位;
(ii) R1 がCOOX1 であり、R2 がHであり、R3 がOHである構造単位;(iii) R1 がCOOX1 であり、R2 がHであり、R3 がCH2 COOX3 である構造単位;
(iv) R1 がHであり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCOOX3 である構造単位;
(v) R1 がHであり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がOHである構造単位;
(vi) R1 がHであり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCH2 COOX3 である構造単位;
(vii) R1 がCOOX1 であり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCOOX3 である構造単位;
(viii)R1 がCOOX1 であり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がOHである構造単位;または、
(ix) R1 がCOOX1 であり、R2 がCH2 COOX2 であり、R3 がCH2 COOX3 である構造単位;
を有する。構造単位(i) 〜(ix)ではいずれも、X1 、X2 、X3 およびX4 はいずれも、互いに独立に、H、Na、KまたはNH4 であることができる。
【0016】
本発明にかかる水溶性重合体の重量平均分子量は、800 〜8,000,000 の範囲内であると、重合体の性能(水溶性、無機粒子の分散力、重金属イオンを捕捉する能力、または、単位重量当りの金属イオンの捕捉量)の少なくとも1つがより優れている。重合体のこれらの性能の少なくとも1つがより良いという点では、重合体の重量平均分子量は、800 〜100,000 の範囲内が好ましく、1,000 〜20,000の範囲内がさらに好ましい。特に、この重合体を洗剤ビルダーとして洗剤組成物に使用する場合には、重量平均分子量は800 〜100,000 の範囲内が好ましく、1,000 〜20,000の範囲内がさらに好ましい。
【0017】
本発明の水溶性重合体は、たとえば、
(1) 後述する水溶性重合体の製造方法、
(2) 従来公知の方法で環状の酸無水物を有する重合体を生成し、この重合体とカルボキシル基を含有する第一アミンとを従来公知の方法で開環アミド化反応させる方法、または、
(3) 従来公知の方法でモノエチレン性不飽和多価カルボン酸モノエステルに由来する構造を含む重合体を生成し、この重合体とカルボキシル基を含有する第一アミンとを従来公知の方法でエステルアミド交換反応させる方法、
によって製造されることができる。これらの方法(1) 〜(3) の中でも、(1) の方法が好ましい。
〔水溶性重合体の製造方法〕
本発明にかかる、水溶性重合体の製造方法は、前記一般式(2)で表される化合物(以下、これを単量体(a)と称する)を含む単量体を重合する工程を含む。
【0018】
単量体(a)は、炭素−炭素不飽和二重結合と、二重結合に直接あるいはメチレン基を介して結合している二重結合近傍に存在するカルボキシル基と二重結合から離れた位置に存在するカルボキシル基の2種のカルボキシル基を有する水溶性単量体であり、たとえば、アミン化合物と環状の酸無水物とを反応させる工程を含む製造方法(以下、これを製造方法Aと称する)により得られる。
【0019】
アミン化合物は、カルボキシル基を含有する第一アミン(以下では、単に「第一アミン」と言うことがある)と、カルボキシル基の一部または全部が中和されている第一アミン塩(以下では、単に「第一アミン塩」と言うことがある)とからなる群から選ばれる少なくとも1つである。第一アミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、アラニン、フェニルアラニン等が挙げられる。第一アミン塩としては、これらの第一アミンの有するカルボキシル基の一部または全部が、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、有機アミン類の塩、または、これらの塩の2以上の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である化合物である。第一アミンおよび第一アミン塩は、それぞれ、一種類のみを用いてもよいし、あるいは、二種類以上を併用してもよい。
【0020】
環状の酸無水物は、炭素−炭素不飽和二重結合を有するものであり、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの不飽和ポリカルボン酸の無水物であれば特に限定はされない。環状の酸無水物としては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、1−プロペン1,2ジカルボン酸無水物等が挙げられる。酸無水物は、一種類のみを用いてもよいし、あるいは、二種類以上を併用してもよい。経済的有用性からは、酸無水物は無水マレイン酸が最も好ましい。
【0021】
上記例示化合物のうち、第一アミン塩としては、特にアスパラギン酸ナトリウム塩が好ましく、酸無水物としては、特に無水マレイン酸が好ましい。アスパラギン酸ナトリウム塩と無水マレイン酸とのアミド化反応では、非常に高収率で単量体(a)が得られ、且つ、単量体(a)を重合させて得られる水溶性重合体の物性も非常に優れている。
【0022】
アミン化合物と、炭素−炭素不飽和二重結合を有する環状の酸無水物との反応は水溶液中で行われる。反応条件は特に限定されないが、酸無水物の加水分解、アミン化合物の不飽和二重結合へのマイケル付加等の副反応を抑制し、得られた単量体(a)が加水分解するのを抑え、さらには、単量体(a)を高収率で得るためには、以下に示す条件が好ましい。
【0023】
好ましくは、前記水溶液が塩基性であり、アミン化合物と酸無水物とを前記水溶液中で冷却下に反応させることである。
反応温度は25℃以下が好ましく、10℃以下が最も好ましい。これは、高温であるほど酸無水物の加水分解、アミン化合物の不飽和二重結合へのマイケル付加が速やかに進行するからである。
【0024】
反応pHは、塩基性側である7〜13の範囲が好ましく、8〜13の範囲が最も好ましい。pHの調節は、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などを水に加えることにより行うことができる。なお、pHの調節は酸無水物を添加する前に行うのが好ましい。pHが7未満である酸性側ではアミノ基がカチオン化されて遊離しておらず、単量体(a)の収率が著しく低下するおそれがある。また、過剰の塩基が存在すると得られた単量体(a)が加水分解を受けてアミン化合物と不飽和多価カルボン酸(または塩)に分解され易くなる。この不飽和多価カルボン酸(塩)はアミン化合物と水溶液中で反応しないため、単量体(a)の収率が著しく低下するおそれがある。
【0025】
より好ましくは、アミン化合物が溶解されたpHが7〜13で25℃以下に冷却された水溶液(アミン化合物が溶解されたpHが7〜13で10℃以下に冷却された水溶液、アミン化合物が溶解されたpHが8〜13で25℃以下に冷却された水溶液、アミン化合物が溶解されたpHが8〜13で10℃以下に冷却された水溶液の順により好ましくなる)中に、攪拌下に、環状の酸無水物を徐々に(好ましくは10分以上に渡って、最も好ましくは30分以上に渡って)、連続的にあるいは断続的に定量的に添加することである。酸無水物を水に加えてからアミン化合物を添加したり、酸無水物をアミン化合物と同時に水に加えたり、あるいは、pH7〜13で25℃以下のアミン化合物水溶液に酸無水物の全量を10分未満で添加したりすると、酸無水物が加水分解を受け易くなって単量体(a)の収率が著しく低下することがあるため好ましくない。
【0026】
反応濃度は特に制限されないが、酸無水物の加水分解を抑え、反応を促進させるために、高濃度である方が良く、アミン化合物と環状の酸無水物の合計量が固形分で30重量%以上が好ましく、40重量%以上が最も好ましい。
アミン化合物と環状の酸無水物の添加比率は任意で良い。
アミン化合物に対して、過剰の酸無水物を添加することで、アミン化合物の転化率を100%あるいはほぼ100%に近い値にすることができる。酸無水物がアミン化合物に対して過剰であるとは、等モルよりも多いことを言う。酸無水物の過剰量は任意とすることができる。酸無水物を過剰に使用した場合、反応混合物は、得られた単量体(a)と残存する酸無水物とを含む。この酸無水物は、反応混合物から除去してもよいし、反応混合物中に残しておいてもよい。酸無水物を含む反応混合物を重合に用いると、単量体(a)と酸無水物との共重合体が生成する。
【0027】
また、添加する酸無水物に対して過剰のアミン化合物を予め水に溶解しておくことで、酸無水物の転化率を100%あるいはほぼ100%に近い値にすることができる。アミン化合物が酸無水物に対して過剰であるとは、等モルよりも多いことを言う。アミン化合物の過剰量は任意とすることができる。アミン化合物を過剰に使用した場合、反応混合物は、得られた単量体(a)と残存するアミン化合物とを含む。このアミン化合物は、反応混合物から除去してもよいし、反応混合物中に残しておいてもよい。いずれにして、酸無水物が全くまたはほとんど残存せず単量体(a)を含む反応混合物を重合に用いると、単量体(a)の単独重合体を製造することができる。過剰のアミン化合物は、重合体製造後、透析など従来既知のアミン化合物除去方法により、重合の反応混合物から除くことができる。
【0028】
前記一般式(1)中の置換基X1、X2、X3、またはX4は互いに独立に、H、Na、KまたはNH4 で構成される。たとえば、前記アミン化合物と前記酸無水物とを反応して得られる反応混合物には、置換基X1、X2、X3、およびX4がいずれもHである単量体(a)が含まれている。該反応混合物に、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液などを添加し混合することにより、置換基X1、X2、X3、またはX4が互いに独立に、Na、KまたはNH4 で構成される、部分中和または完全中和された単量体(a)を容易に得ることが出来る。なお、置換基を変えるための処理法はここに述べた方法に限定されるものではない。
【0029】
上記構造単位(i) 〜(ix)となる単量体(a)を製造するために用いるアミン化合物と環状の酸無水物との組み合わせは次のとおりである。
アミン化合物/環状の酸無水物
構造単位(i) :アスパラギン酸/無水マレイン酸
構造単位(ii) : セリン/無水マレイン酸
構造単位(iii) : グルタミン酸/無水マレイン酸
構造単位(iv) :アスパラギン酸/無水イタコン酸
構造単位(v) : セリン/無水イタコン酸
構造単位(vi) : グルタミン酸/無水イタコン酸
構造単位(vii) :アスパラギン酸/無水アコニット酸
構造単位(viii): セリン/無水アコニット酸
構造単位(ix) : グルタミン酸/無水アコニット酸
製造方法Aでは、アミン化合物と、炭素−炭素不飽和二重結合を有する環状の酸無水物とを水溶液中で反応させるので、不飽和二重結合している炭素原子に直接或いはメチレン基を介して結合したカルボキシル基を有し、不飽和二重結合している炭素原子から離れた位置にもカルボキシル基を有する、全体としてカルボン酸密度が高い水溶性エチレン性不飽和単量体(a)を生成する。
【0030】
本発明にかかる重合体は、たとえば、単量体(a)を単独に重合させるか、あるいは、単量体(a)を、それと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体(以下、これを単量体(b)と称する)と共重合させることにより、容易に製造される。
生成した単独重合体または共重合体は、主鎖の炭素原子に直接またはメチレン基を介して結合したカルボキシル基を有するので、主鎖近傍のカルボン酸密度が高く、しかも、主鎖から離れた位置にもカルボキシル基を有するので、後者のカルボキシル基が自由に回転しうるものとなっている。
【0031】
単量体(b)は、水溶性を有することが好ましく、100℃の水100gに対する溶解度が5g以上であることがより好ましい。
単量体(a)と単量体(b)とを共重合させる際の両者の割合は、特に限定はされないが、たとえば、両者の合計量に対する単量体(a)のモル比が1/100以上かつ1未満となるようにすればよい。
【0032】
単量体(b)の具体例としては、特に限定はされないが、アクリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸およびそれらの塩;マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和多価カルボン酸及びそれらの塩;酢酸ビニル等が挙げられる。
また、下記一般式(3):
【0033】
【化5】
【0034】
(式中、R4 、R5 は水素原子または−CH3 基を表し、且つ、R4 及びR5 は同時に−CH3 基になることはなく、R6 は−CH2 −、−(CH2 )2 −または−C(CH3 )2 −を表し、且つ、R4 、R5 及びR6 に含まれる炭素数の合計は3であり、Yは炭素数2〜3のアルキレン基を表し、nは0〜100の整数である。)
で表される水酸基含有不飽和化合物、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール(「イソプレノール」とも言う)、3−メチル−2−ブテン−1−オール(「プレノール」とも言う)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(「イソプレンアルコール」とも言う)、および、これら化合物1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させた化合物等も、単量体(b)として用いることができる。
【0035】
さらに、下記一般式(4):
【0036】
【化6】
【0037】
(式中、R7 は水素原子または−CH3 基を表し、a、b、c及びdは0〜100の整数であり、且つ、a+b+c+d=0〜100である。また、−OC2 H4 −及び−OC3 H6 −の結合の順序は限定されない。さらに、c+d=0の場合に、Zは水酸基、スルホン酸基および(亜)リン酸基を表し、c+d=1〜100の場合に、Zは水酸基を表す。)
で表される化合物、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩;グリセロールモノアリルエーテル、および、この化合物1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させた化合物等の不飽和(メタ)アリルエーテル系化合物;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸基含有化合物およびそれらの塩;炭素数1〜20のアルキルアルコール1モルにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させたアルコールと(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸とのエステル、または、上記アルキルアルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物とマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の多価カルボン酸との、モノエステルあるいはその塩、並びに、ジエステル等の末端アルキル基含有エステル系不飽和化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させたエステル系化合物、または、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和多価カルボン酸1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加させてなる、モノエステル系化合物あるいはその塩、並びに、ジエステル系化合物等のエステル系不飽和化合物等も、単量体(b)として用いることができる。
【0038】
単量体(b)は、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い。これら例示化合物のうち、重合反応性や、得られる重合体の各種物性等の点から、(メタ)アクリル酸(塩)及び/またはマレイン酸(塩)が単量体(b)として特に好ましい。
本発明の重合体を製造する際の重合反応においては、必要に応じて、重合開始剤を用いてもよい。使用可能な重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩;4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ第3級ブチルパーオキサイド、第3級ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられるが、特に限定されるものではない。重合開始剤は、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い。
【0039】
重合反応の反応条件としては、例えば、反応温度は100 ℃程度、反応時間は180 分間程度に設定されるが、特に限定されるものではなく、単量体や触媒、水性媒体の種類や量に応じて、適宜設定すれば良い。また、反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであっても良い。
重合反応時のpHは、任意の値とすることができるが、原料の単量体(a)はアミド結合を有しており、このアミド結合の加水分解を防ぐ目的で、塩基性条件下で重合を行うことが好ましく、pHを8〜10に調整して重合を行うのがさらに好ましい。重合中のpH調整に用いる塩基性化合物としては、特に限定はされないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩;アンモニア;モノメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、第2級ブタノールアミン等のアルカノールアミン類;ピリジン等が挙げられる。塩基性化合物は、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い。
【0040】
単量体を多価金属イオンの存在下で重合させると、重合終了後、反応液中に残存する単量体の量を低減させることができるため、重合体の分子量分布を狭くすることができるので、好ましい。使用できる多価金属イオンとしては、特に限定はされないが、たとえば、鉄イオン、バナジウム原子含有イオン、銅イオン等が挙げられる。これら例示のイオンのうち、Fe3+、Fe2+、Cu+ 、Cu2+、V2+、V3+、VO2+が好ましく、特に、Fe3+、Cu2+、VO2+がより好ましい。多価金属イオンは、1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を適宜併用しても良い
多価金属イオンの濃度としては、反応液全量に対して0.1〜100ppmが好適である。0.1ppm未満の濃度では、上記のような効果がほとんど見られないので好ましくない。100ppmを超えた濃度では、例えば、マレイン酸系単量体を共重合して得られるマレイン酸系共重合体が着色し、洗剤組成物等として使用できなくなるので好ましくない。なお、多価金属イオンの存在下で重合させた重合体は、いわゆる鉄粒子沈着防止能に優れており、洗剤組成物等として好適に用いることができる。
【0041】
多価金属イオンを反応液中に存在させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、反応液中でイオン化する金属化合物や金属を該反応液に添加すれば良い。上記の金属化合物や金属としては、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2 SO4 ・VSO4 ・6H2 O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4 ) V (SO4)2 ・12H2 O]、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第1銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセトナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄などの金属酸化物;硫化銅(II)、硫化鉄などの金属硫化物;銅粉末、鉄粉末などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0042】
上記の重合反応は、本発明の重合体を含有してなる組成物が主に水系中で用いられるため、重合体製造後そのまま使用できる利便性、また粉末洗剤組成物として用いる場合において、組成物配合後の溶媒の回収が不必要で乾燥が容易である利便性、さらには経済性の点からも、水性媒体中で行うことが好ましい。使用できる水性媒体としては、具体的には、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類等のような親水性溶媒等が挙げられるが、特に限定されるものではない。水性媒体は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
〔用途〕
次に、本発明にかかる組成物について説明する。
【0043】
この組成物は、前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体(以下、これを重合体Aと称する)を含有するため、例えば、洗剤組成物、繊維処理剤、無機顔料分散剤、水処理剤及び木材パルプの漂白助剤等として好適に用いられる。以下、各用途ごとに詳述する。
本発明の組成物が洗剤組成物である場合、洗剤組成物は、重合体Aと、界面活性剤と、必要に応じて酵素等とを含む。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤が好ましい。
【0044】
洗剤組成物中に占める重合体Aの割合は、0.5〜80重量%が好適であり、1〜30重量%がより好ましい。重合体Aの割合が少なすぎると、重合体Aを添加した効果が充分現れず洗浄力の向上が期待できないことがある。重合体Aの割合が多すぎると、もはや添加量に見合った洗浄力向上の効果は見られなくなり、経済的にも不利となることがある。
【0045】
アニオン界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
【0046】
ノニオン界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
両性界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、第4アンモニウム塩等が挙げられる。
洗剤組成物中に占める界面活性剤の割合は、5〜70重量%が好適であり、20〜60重量%がより好ましい。界面活性剤の割合が少なすぎると、特に油性汚れ等に対する洗浄力が充分でないことがある。界面活性剤の割合が多すぎると、他の重合体Aとのバランスが崩れ、もはや重合体Aの添加量に見合った洗浄力向上に寄与しないことがある。
【0048】
洗剤組成物に配合できる酵素としては、特に限定はされないが、たとえば、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が挙げられる。特に、アルカリ洗浄液中で活性が高い、プロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルカリセルラーゼ等が好ましい。洗剤組成物中に占める酵素の割合は、0.01〜5重量%が好ましい。酵素の配合量がこの範囲から外れると、界面活性剤とのバランスがくずれて、洗浄力を向上させることができない恐れがある。
【0049】
洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、蛍光剤、漂白剤、香料、液状洗剤組成物の場合には液体洗剤組成物の場合には可溶化剤などの分散媒等の、洗剤組成物に常用される成分がさらに配合されていても良い。前記アルカリビルダーとしては、特に限定はされないが、たとえば、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。前記キレートビルダーとしては、特に限定はされないが、たとえば、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン六酢酸)、クエン酸等が挙げられる。また、ゼオライトをさらに配合して洗浄力を向上させても良い。
【0050】
本発明の組成物が繊維処理剤である場合、この繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分と、重合体Aとを含む。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングのいずれの工程でも使用することができる。なお、重合体Aに配合できる、染色剤、過酸化物および界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、公知の繊維処理剤に使用されるものを転用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤と、重合体Aとの配合比は、特に限定はされないが、例えば、重合体がマレイン酸系共重合体である場合には、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度等を向上させるために、重合体Aの1重量部に対して、上記染色剤等の他の成分を0.1〜100重量部という割合で配合すれば良い。上記繊維処理剤を使用することができる繊維としては、特に限定されないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ナイロン、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維;並びに、これらの繊維を用いた織物および混紡品等が挙げられる。
【0051】
マレイン酸系共重合体を重合体Aとして含む繊維処理剤を精練工程に適用する場合、該繊維処理剤は、アルカリ剤および界面活性剤を含有していることが好ましい。また、マレイン酸系共重合体を重合体Aとして含む繊維処理剤を漂白工程に適用する場合、該繊維処理剤は、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤である珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを含有していることが好ましい。
【0052】
本発明の組成物が無機顔料分散剤である場合、この無機顔料分散剤は、重合体Aを含有してなる。この無機顔料分散剤には、必要に応じて、たとえば、重合リン酸、重合リン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ポリビニルアルコール、アニオン化変性ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物(2以上の場合は、混合物でもよい)を任意の量で配合してもよい。
【0053】
この無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイ等の無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮する。たとえば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加した後、水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、これらの性能の経時変化が生じない安定な高濃度無機顔料スラリー(例えば、高濃度炭酸カルシウムスラリー)を製造することができる。無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して0.05〜2.0重量部が好ましい。無機顔料分散剤の使用量が少なすぎると、充分な分散効果が発揮されない恐れがある。逆に多すぎると、もはや添加量に見合った分散効果の向上が見込めず経済的に不利益となることがある。
【0054】
本発明の組成物が水処理剤である場合、この水処理剤は、重合体Aを含有してなる。この水処理剤には、必要に応じて、たとえば、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物(2以上の場合は、混合物でもよい)を任意の量で配合してもよい。この水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。
【0055】
本発明の組成物が木材パルプの漂白助剤である場合、この漂白助剤は、重合体Aを含有してなる。この漂白助剤は、木材パルプの漂白時の前処理剤として用いてもよいし、あるいは、木材パルプの漂白時に過酸化水素、塩素系漂白剤、オゾン等と共に用いてもよい。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を、その実施例及び比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。なお、下記例中、「%」は「重量%」を示し、「部」は「重量部」を示す。
−実施例1−
まず、単量体(a)として、マレイン酸−アスパラギン酸ナトリウムモノアミド体(以下、「単量体(a1)」と称する。)を次に示す方法で合成した。すなわち、温度計、pH計及び攪拌機を備えた容量500ミリリットルの四つ口フラスコに、DL−アスパラギン酸133部、水酸化ナトリウム48%水溶液167部、イオン交換水54.3部を投入した。次に、フラスコの内容物を10℃以下に保持したまま攪拌しながら、無水マレイン酸98部を60分間に渡って定量的な滴下により添加した。その際、反応水溶液中のpHが9以上に保持されるように、適宜、水酸化ナトリウム48%水溶液を添加した。無水マレイン酸の添加終了後、さらに10℃以下に保持したまま、30分間攪拌を続けた。反応終了後、イオン交換水56.7部を加えた後、水酸化ナトリウム48%水溶液でpHを11.5に調整した。その結果、褐色透明の水溶液を得た。その後、該水溶液から水を除去することにより、粉末状の白色の固体物質を得た。
【0057】
以上の様にして得られた固体物質について、IR測定、 1H−NMR測定により、物質の同定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):
δ2.2〜2.6ppm(m,2H,CH2 )
δ4.2〜4.4ppm(m,1H,NH−CH)
δ5.7〜5.8ppm(d,1H,CH=)
δ6.2〜6.3ppm(d,1H,CH=)
IR測定からアミド結合(CONHR)の存在が確認された。また、 1H−NMRスペクトルの解析により、実施例1で得られた上記生成物は、下記構造式:
【0058】
【化7】
【0059】
で表される化合物、すなわち単量体(a1)であることが確認できた。
また、得られた褐色透明の水溶液の固形分は36%であった。さらに、1 H−NMRのピークの積分比から、DL−アスパラギン酸の転化率は86%、無水マレイン酸の転化率は78%であり、また、副生成物としてイミノジコハク酸が生成していた。そして、これらの存在比率は重量比で、単量体(a1):DL−アスパラギン酸:マレイン酸:副生成物=80:2:7:11(いずれもNa塩であった。)であった。すなわち、該褐色透明の水溶液は単量体(a1)を含有するものであった。
【0060】
この褐色透明の水溶液を用いて重合体を次のようにして合成した。すなわち、該水溶液250部(単量体(a1)を71.2部、単量体(b)としてマレイン酸ナトリウム6.2部を含有している。)を、温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた容量500ミリリットルの四つ口フラスコに投入した。攪拌しながら沸点まで加熱した後に、攪拌しながら35%過酸化水素水12.6部を30分間に渡って、また引き続き15%過硫酸ナトリウム水溶液19.6部を過酸化水素水滴下終了後から70分間に渡って連続的に滴下した。また、この滴下操作と並行して、反応水溶液にさらに単量体(b)としてアクリル酸の80%水溶液37.8部を過酸化水素水の滴下開始時から90分間に渡って連続的に滴下し、全ての滴下終了後、反応液を60分間沸点に保って重合反応を行った。なお、この反応において、単量体(a1)とマレイン酸ナトリウムとアクリル酸とのモル比は34:6:60であった。
【0061】
反応終了後、水酸化ナトリウム48%水溶液を用いてpH8.5に調整して、褐色透明の固形分45.5%を含有する水溶液を得た。次に、重合体の組成比と重量平均分子量を測定するため、残存単量体及び低分子量物を除去する後処理を行った。すなわち、得られた重合体水溶液を、分画分子量1000の透析膜スペクトラポア6(家田貿易製)を用いて、流水下12時間に渡って透析した。これにより、固形分4.5%、pH10.0の淡褐色透明の重合体(以下、「重合体(1)」と称する。)水溶液を得た。該水溶液から水分を除去して白色粉末を得た。
【0062】
得られた白色粉末について、IR測定、 1H−NMR測定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):δ4〜4.4ppm(m,NH−CH)
以上の結果より、重合体中にアミド結合(CONHR)の存在が確認され、単量体(a1)が重合体(1)に導入されていることが明らかであった。また、 1H−NMRスペクトルのプロトンの積分比の解析から、重合体(1)は、下記構造式:
【0063】
【化8】
【0064】
で表され、単量体(a1)構造単位とマレイン酸ナトリウム構造単位とアクリル酸ナトリウム構造単位とを27:27:46のモル比で含有することが確認できた。
また、重合体(1)の平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により測定した。その際、カラムとしてはShodexGF−7MHQ(昭和電工製)を用い、溶離液としては0.5%リン酸ナトリウム水溶液(pH7)を用いた。また、分子量標準サンプルとしては、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学製)を用いた。結果は、重量平均分子量(Mw)4100であった。以上のようにして、水溶性の重合体(1)が合成できたことを確認できた。
【0065】
−実施例2−
まず、単量体(a)として、マレイン酸−L−セリンモノアミド体ナトリウム塩(以下、「単量体(a2)」と称する。)を次に示す方法で合成した。すなわち、温度計、pH計及び攪拌機を備えた容量100ミリリットルの四つ口フラスコに、L−セリン21部、水酸化ナトリウム48%水溶液16.7部、イオン交換水13.1部を投入した。次に、フラスコの内容物を10℃以下に保持したまま攪拌しながら、無水マレイン酸40部を60分間に渡って定量的な滴下により添加した(この反応では無水マレイン酸が過剰に添加されるが、過剰量は重合体合成時の単量体(b)としてそのまま用いる。)。その際、反応水溶液中のpHが9以上に保持されるように、適宜、水酸化ナトリウム48%水溶液を添加した。無水マレイン酸の添加終了後、さらに10℃以下に保持したまま、30分間攪拌を続けた。反応終了後、イオン交換水47部を加えた後、水酸化ナトリウム48%水溶液でpHを12.5に調整した。その結果、無色透明な固形分34.1%の水溶液を得た。その後、該水溶液から水を除去することにより、粉末状の白色の固体物質を得た。
【0066】
以上の様にして得られた固体物質について、IR測定、 1H−NMR測定により、物質の同定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):
δ3.6〜3.8ppm(m,2H,CH 2 −OH)
δ4.0ppm(m,1H,NH−CH)
δ5.8〜5.9ppm(d,1H,CH=)
δ6.2〜6.3ppm(d,1H,CH=)
IR測定からアミド結合(CONHR)の存在が確認された。また、 1H−NMRスペクトルの解析により、実施例2で得られた上記生成物は、下記構造式:
【0067】
【化9】
【0068】
で表される化合物、すなわち単量体(a2)であることが確認できた。
さらに、1 H−NMRのピークの積分比から、L−セリンの転化率は100%、無水マレイン酸の転化率は51%であり、副生成物は生成していなかった。従って、これらの存在比率は重量比で、単量体(a2):マレイン酸=62:38(いずれもNa塩であった。)であった。すなわち、該無色透明の水溶液は単量体(a2)を含有するものであった。
【0069】
この無色透明の水溶液を用いて重合体を次のようにして合成した。すなわち、該水溶液100部(単量体(a2)を20部、単量体(b)としてマレイン酸ナトリウム13部を含有している。)を、温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた容量200ミリリットルの四つ口セパラブルフラスコに投入した。攪拌しながら沸点まで加熱した後に、攪拌しながら35%過酸化水素水4.8部を30分間に渡って、また引き続き15%過硫酸ナトリウム水溶液3.7部を過酸化水素水滴下終了後から70分間に渡って連続的に滴下した。また、この滴下操作と並行して、反応水溶液にさらに単量体(b)としてアクリル酸の80%水溶液21.6部を過酸化水素水の滴下開始時から90分間に渡って連続的に滴下し、全ての滴下終了後、反応液を60分間沸点に保って重合反応を行った。なお、この反応において、単量体(a2)とマレイン酸ナトリウムとアクリル酸とのモル比は20:20:60であった。
【0070】
反応終了後、イオン交換水78部を添加した後、水酸化ナトリウム48%水溶液を用いてpH8.5に調整して、赤褐色透明の固形分24.7%を含有する水溶液を得た。得られた水溶液を実施例1と同様の方法で後処理し、残存単量体及び低分子量物を除去することにより、固形分4.5%、pH10.0の淡褐色透明の重合体(以下、「重合体(2)」と称する。)水溶液を得た。該水溶液から水分を除去して白色粉末を得た。
【0071】
得られた白色粉末について、IR測定、 1H−NMR測定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):δ4〜4.4ppm(m,NH−CH)
以上の結果より、重合体中にアミド結合(CONHR)の存在が確認され、単量体(a2)が重合体(2)に導入されていることが明らかであった。また、 1H−NMRスペクトルのプロトンの積分比の解析から、重合体(2)は、下記構造式:
【0072】
【化10】
【0073】
で表され、単量体(a2)構造単位とマレイン酸ナトリウム構造単位とアクリル酸ナトリウム構造単位とを21:18:61のモル比で含有することが確認できた。
また、重合体(2)の平均分子量を実施例1と同様にして測定した結果、重量平均分子量(Mw)11000であった。以上のようにして、水溶性の重合体(2)が合成できたことを確認できた。
【0074】
−実施例3−
まず、単量体(a)として、マレイン酸−L−グルタミン酸モノアミド体ナトリウム塩(以下、「単量体(a3)」と称する。)を次に示す方法で合成した。すなわち、温度計、pH計及び攪拌機を備えた容量500ミリリットルの四つ口フラスコに、L−グルタミン酸147部、水酸化ナトリウム48%水溶液167部、イオン交換水164部を投入した。次に、フラスコの内容物を10℃以下に保持したまま攪拌しながら、無水マレイン酸49部を60分間に渡って定量的な滴下により添加した(無水マレイン酸の転化率を高くするために過剰にアミン(L−グルタミン酸)を投入した。)。その際、反応水溶液中のpHが9以上に保持されるように、適宜、水酸化ナトリウム48%水溶液を添加した。無水マレイン酸の添加終了後、さらに10℃以下に保持したまま、30分間攪拌を続けた。反応終了後、水酸化ナトリウム48%水溶液でpHを9.5に調整した。その結果、無色透明な固形分54.0%の水溶液を得た。その後、該水溶液から水を除去することにより、粉末状の白色の固体物質を得た。
【0075】
以上の様にして得られた固体物質について、IR測定、 1H−NMR測定により、物質の同定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):
δ1.6〜2.6ppm(m,4H,CH2 −CH2 )
δ3.7〜4.0ppm(m,1H,NH−CH)
δ5.8〜5.9ppm(d,1H,CH=)
δ6.2〜6.3ppm(d,1H,CH=)
IR測定からアミド結合(CONHR)の存在が確認された。また、 1H−NMRスペクトルの解析により、実施例3で得られた上記生成物は、下記構造式:
【0076】
【化11】
【0077】
で表される化合物、すなわち単量体(a3)であることが確認できた。
さらに、1 H−NMRのピークの積分比から、L−グルタミン酸の転化率は41.7%、無水マレイン酸の転化率は73.2%であり、下記構造式:
【0078】
【化12】
【0079】
で表される副生成物が生成していた。これらの存在比率は重量比で、単量体(a3):L−グルタミン酸:マレイン酸:副生成物=48:34:2:16(いずれもNa塩であった。)であった。すなわち、該無色透明の水溶液は単量体(a3)を含有するものであった。
この無色透明の水溶液を用いて重合体を次のようにして合成した。すなわち、該水溶液200部(単量体(a3)を53部、単量体(b)としてマレイン酸ナトリウム2部を含有している。)を、温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた容量500ミリリットルの四つ口セパラブルフラスコに投入した。攪拌しながら沸点まで加熱した後に、攪拌しながら35%過酸化水素水6.7部を30分間に渡って、また引き続き15%過硫酸ナトリウム水溶液10.5部を過酸化水素水滴下終了後から70分間に渡って連続的に滴下した。また、この滴下操作と並行して、反応水溶液にさらに単量体(b)としてアクリル酸の80%水溶液35.1部を過酸化水素水の滴下開始時から90分間に渡って連続的に滴下し、全ての滴下終了後、反応液を60分間沸点に保って重合反応を行った。なお、この反応において、単量体(a3)とマレイン酸ナトリウムとアクリル酸とのモル比は30:1:69であった。
【0080】
反応終了後、水酸化ナトリウム48%水溶液を用いてpH8.5に調整して、暗褐色透明の固形分48.1%を含有する水溶液を得た。得られた水溶液を実施例1と同様の方法で後処理し、残存単量体及び低分子量物を除去することにより、固形分4.5%、pH10.0の淡褐色透明の重合体(以下、「重合体(3)」と称する。)水溶液を得た。該水溶液から水分を除去して白色粉末を得た。
【0081】
得られた白色粉末について、IR測定、 1H−NMR測定を行った。その結果は下記の通りである。
IR(KBr法):1700cm-1 (s)(CONHR)
1H−NMR(溶媒D2 O):δ4〜4.4ppm(m,NH−CH)
以上の結果より、重合体中にアミド結合(CONHR)の存在が確認され、単量体(a3)が重合体(3)に導入されていることが明らかであった。また、 1H−NMRスペクトルのプロトンの積分比の解析から、重合体(3)は、下記構造式:
【0082】
【化13】
【0083】
で表され、単量体(a3)構造単位とマレイン酸ナトリウム構造単位とアクリル酸ナトリウム構造単位とを31:27:42のモル比で含有することが確認できた。
また、重合体(3)の平均分子量を実施例1と同様にして測定した結果、重量平均分子量(Mw)4200であった。以上のようにして、水溶性の重合体(3)が合成できたことを確認できた。
【0084】
以下の実施例4と参考例1〜5では、実施例1〜3で得られた重合体(1)〜(3)(後処理を施して残存単量体と副生成物を除去したもの)の粉末を用いた。
−参考例1−
実施例1〜3で得られた重合体(1)〜(3)のキレート化能を調べるために、カルシウムイオンの安定度定数(pKCa)及びカルシウムイオン捕捉能を下記に示す方法で測定した。結果を表1に示す。
【0085】
(カルシウムイオンの安定度定数)
▲1▼ 0.002mol/l、0.003mol/l、0.004mol/lの各濃度のカルシウムイオン溶液を調製し(CaCl2 を使用した。)、各水溶液を50gずつ別の100ccビーカーに投入した。
▲2▼ 重合体(1)の粉末を▲1▼のビーカーにそれぞれ50mgずつ投入した。
▲3▼ 各水溶液のpHを10に調整した(希水酸化ナトリウム水溶液を使用した。)。
▲4▼ カルシウムイオン電極安定剤として、NaCl粉末0.15gを加えた。▲5▼ カルシウムイオン電極を用いて、遊離のカルシウムイオン濃度を測定した。ここで、遊離のカルシウムイオン濃度を[Ca]、重合体によって固定化されたカルシウムイオン濃度を[CaS]、遊離のキレートサイトの数を[S]、キレートサイトの数を[S0 ]、安定度定数をlogKとすると、
[Ca]・[S]/[CaS]=1/K
[S]=[S0 ]−[CaS]
となる。従って、上記両式より、
[Ca]/[CaS]=(1/[S0 ])・[Ca]+1/([S0 ]・K)
となり、[Ca]/[CaS]を縦軸に、[Ca]を横軸にプロットし、傾きと切片より、[S0 ]、K、logKを計算により求めた。logKをpKCa値とした。
▲6▼ 重合体(2)、(3)についても重合体(1)と同様に▲1▼〜▲5▼の操作を行った。
【0086】
(カルシウムイオン捕捉能)
▲1▼ 0.001mol/lのカルシウムイオン溶液を調製し(CaCl2 を使用した。)、該水溶液50gを100ccビーカーに投入した。
▲2▼ 重合体(1)の粉末10mgを▲1▼のビーカーに投入した。
▲3▼ 水溶液のpHを9〜11に調整した(希水酸化ナトリウム水溶液を使用した。)。
▲4▼ カルシウムイオン電極安定剤として、4mol/lのKCl水溶液を1cc加えた。
▲5▼ カルシウムイオン電極を用いて、遊離のカルシウムイオン濃度を測定した。得られた数値から、捕捉されたカルシウムイオンを算出し、重合体1g当たり炭酸カルシウム(CaCO3 )換算で何ミリグラム捕捉されたかを計算で求め、その値をカルシウムイオン捕捉能とした。
▲6▼ 重合体(2)、(3)についても重合体(1)と同様に▲1▼〜▲5▼の操作を行った。
【0087】
−比較例1−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
−比較例2−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
−比較例3−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
−比較例4−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
−比較例5−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
−実施例4−
実施例1〜3で得られた重合体粉末を用いて、本発明にかかる組成物を形成した。即ち、上記の重合体(1)〜(3)を20%(固形分換算)含有する組成物としての洗剤組成物を形成した。洗剤組成物に配合した各種成分及び配合量を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
また、上記各洗剤組成物の性能を評価するために、人工汚垢を作成した。この人工汚垢に含まれる各種成分及び配合量を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
そして、上記の人工汚垢を用いて洗浄性試験を行った。先ず、人工汚垢を四塩化炭素中に分散した後、この分散液に綿製の白布を通した。次に該布を、乾燥、切断することにより、10cm×10cmの汚染布を作製した。次いで、表4に示す洗浄条件下で上記汚染布の洗浄を行った。
【0096】
【表4】
【0097】
洗浄後、この布を乾燥させ、所定の方法により該布の反射率を測定した。その後、下式に基づいて、反射率から洗浄率を算出した。
洗浄率=(洗浄後の汚染布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)/
(白布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)×100
結果を表5に示す。
【0098】
−比較例6−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
−比較例7−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0099】
−比較例8−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0100】
−比較例9−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
−比較例10−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、実施例4と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
上記実施例4及び比較例6〜10の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた洗剤組成物は、従来公知の化合物を洗剤組成物として用いた場合と比較して、洗浄率が高いことがわかる。
−参考例2−
実施例1〜3で得られた重合体粉末を含む組成物を形成した。即ち、上記の重合体(1)〜(3)を2g/L(固形分換算)含有する組成物としての繊維処理剤を形成した。繊維処理剤に配合した各種成分及び配合量を下記に示す。なお、該繊維処理剤は水溶液である。
【0103】
(繊維処理剤の成分)
重合体(1)〜(3)の何れか1つ 2g/L
過酸化水素 10g/L
水酸化ナトリウム 2g/L
3号珪酸ナトリウム 5g/L
そして、上記の繊維処理剤を用いて漂白試験を行った。試験布として、精練した綿天竺製ニットを用いた。漂白条件を下記に示す。
【0104】
(漂白条件)
使用水の硬度 35・DH(ドイツ硬度)
浴 比 1:25
温 度 85℃
時 間 20分間
そして、漂白処理した布の風合いを、官能検査法により判定した。また、白色度は、スガ試験機株式会社製3MカラーコンピューターSM−3型を用いて測色し、Lab系の白色度式
W=100−[(100−L)2 +a2 +b2 ]1/2
L:測定された明度
a:測定された赤色のクロマチックネス指数
b:測定された青色のクロマチックネス指数
によって白色度(W値)を求め評価した。さらに、縫製性は、布を4枚重ねにし、本縫ミシンで針♯11Sを用いて30cm空縫いした場合の地糸切れ箇所数で評価した。結果を表6に示す。
【0105】
−比較例11−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
−比較例12−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0106】
−比較例13−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0107】
−比較例14−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
−比較例15−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例2と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0108】
【表6】
【0109】
上記参考例2及び比較例11〜15の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた繊維処理剤は、従来公知の化合物を繊維処理剤として用いた場合と比較して、風合い及び白色度に優れ、且つ、地糸切れの箇所数も大幅に減少していることがわかる。
−参考例3−
上記重合体(1)〜(3)を水処理剤として用い、下記に示す条件で加熱処理して炭酸カルシウムスケール抑制能試験を行った。
【0110】
イオン交換水に、炭酸カルシウム濃度530ppmとなるように、塩化カルシウム780ppmと重炭酸ナトリウム1500ppmとを仕込み、さらに、実施例1〜3で得られた各重合体(1)〜(3)粉末を3ppmとなるように加えた水溶液を調製し、各水溶液を70℃で8時間加熱した。加熱処理された水溶液を冷却した後、0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液をJIS K0101に従って分析を行い、下式に基づき炭酸カルシウムスケール抑制能を評価した。
【0111】
スケール抑制能=〔(C−B)/(A−B)〕×100
A:試験前の液中に溶解していたカルシウム濃度
B:水処理剤無添加時の濾液中でのカルシウム濃度
C:試験後濾液中のカルシウム濃度
結果を表7に示す。
【0112】
−比較例16−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
−比較例17−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0113】
−比較例18−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0114】
−比較例19−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
−比較例20−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例3と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
上記参考例3及び比較例16〜20の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた水処理剤は、従来公知の化合物を水処理剤として用いた場合と比較して、スケール抑制能に優れていることがわかる。
−参考例4−
上記重合体(1)〜(3)を無機顔料分散剤として用い、以下の様にして無機顔料分散液を調製した。
【0117】
先ず、容量1L(材質:SUS 304、内径90mm、高さ160mm)のビーカーに、カルサイト系立方体状の軽質炭酸カルシウム(1次粒子径0.15μm)のフィルタープレスにより脱水して得たケーキ(固形分65.3%)400部を入れた。次に、該ビーカーに無機顔料分散剤としての重合体1.3部(炭酸カルシウムの重量に対する重合体の割合は0.5%:固形分換算)および固形分濃度を調整するための水8.9部を加え、ディゾルバー攪拌羽根(50mmφ)を用いて低速で3分間混練した。その後、3000rpm で10分間分散し、固形分の濃度が64%の分散液を得た。
【0118】
得られた水分散液について、分散直後の粘度と室温1週間放置した後の粘度とを、B型粘度計を使用して25℃で測定した。測定結果を表8に示す。
−比較例21−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0119】
−比較例22−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
−比較例23−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0120】
−比較例24−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
−比較例25−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例4と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0121】
【表8】
【0122】
上記参考例4及び比較例21〜25の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた分散液は、従来公知の化合物を用いた分散液と比較して、分散力が高く、しかも、一週間放置した後においても、良好な分散性を保持していることがわかる。
−参考例5−
上記重合体(1)〜(3)を木材パルプの漂白助剤(前処理剤)として用い、以下のようにして木材パルプを漂白した。
【0123】
先ず、容量5Lのビーカーに、グランドパルプをいわゆる絶乾重量として30部入れると共に、温度50℃の水3000部及び、漂白助剤としての重合体0.06部(パルプの重量に対する重合体の割合は0.2%)を加え、50℃で15分間攪拌した。次に、該パルプをいわゆるNo.2ろ紙でろ過して上記処理液から分離した後、パルプに水1500部を通液して洗浄し、その後、脱水した。
【0124】
次ぎに、上記の前処理を施して得られたパルプを、容量5Lのビーカーに入れ、パルプ濃度が最終的に14%になるように水を加えると共に、過酸化水素(パルプの重量に対する割合は4%)、3号珪酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを加えて、処理液のpH11.0に調整した。
この処理液をポリエチレン製の袋に移し替え、水分が蒸発しないようにその口を折り返した後、予め65℃に調整されたウオーターバスにて5時間熱処理することによりパルプの漂白を行った。その後、漂白されたパルプを420メッシュのろ布でろ過し、脱水した。そして、ろ液に残存する過酸化水素の濃度を測定した。その後、下式に基づいて過酸化水素の消費率を算出した。
【0125】
過酸化水素の消費率(%)=〔(B−C)/B〕×100
B:漂白前の処理液中の過酸化水素の濃度(%)
C:漂白後の処理液中の過酸化水素の濃度(%)
また、漂白されたパルプの一部を水で3%に希釈した後、亜硫酸水を用いて、pH4.5に調整することによりパルプスラリーを得た。そして、このパルプスラリーを用いて、TAPPI標準法(Technical Association of the Pulp and Paper Industry)により2枚の手抄きシートを作成した。該シートを風乾した後、ハンター白色度計により白色度を測定した。測定結果を表9に示す。
【0126】
−比較例26−
従来公知の化合物である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
−比較例27−
従来公知の化合物である重量平均分子量800のポリマレイン酸ナトリウムを用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0127】
−比較例28−
従来公知の化合物である、重量平均分子量5000、マレイン酸構造単位とアクリル酸構造単位の含有比がモル比で3:7であるマレイン酸−アクリル酸コポリマーのナトリウム塩を用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0128】
−比較例29−
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウム塩を用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
−比較例30−
比較例3で用いたコポリマーと従来公知の化合物であるアスパラギン酸ナトリウムを重量比で7:3の割合で混合した混合物を用いて、参考例5と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0129】
【表9】
【0130】
上記参考例5及び比較例26〜30の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(1)〜(3)を用いた漂白助剤は、従来公知の化合物を用いた漂白助剤と比較して、白色度が優れ、しかも過酸化水素の消費率が低いため、用いる過酸化水素の量を少なくすることができ、経済的であることがわかる。
【0131】
【発明の効果】
本発明にかかる水溶性重合体は、前記一般式(1)で表される構造単位を有し、重量平均分子量800 〜8,000,000 であるので、重合体の主鎖に直接結合しているカルボキシル基と、主鎖に直接結合していないカルボキシル基とを多数含有する分子構造を有している。このため、該重合体は、水溶性を備えており、従来のキレート剤と比較して、無機粒子の分散力に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、且つ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い。たとえば、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えている。
【0132】
本発明にかかる重合体の製造方法は、水性媒体を用いて、前記一般式(2)で表される化合物を含む単量体を重合する工程を含むので、本発明の水溶性重合体を容易に得ることが出来る。
本発明の水溶性重合体、または、これを含有する組成物は、例えば、洗剤組成物、繊維処理剤、無機顔料分散剤、水処理剤及び木材パルプの漂白助剤等に好適に用いることができる。
Claims (3)
- 請求項1に記載の重合体を含有する洗剤組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09422297A JP3814043B2 (ja) | 1996-04-16 | 1997-04-11 | 水溶性重合体、その製造方法および用途 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9392196 | 1996-04-16 | ||
JP8-93921 | 1996-04-16 | ||
JP09422297A JP3814043B2 (ja) | 1996-04-16 | 1997-04-11 | 水溶性重合体、その製造方法および用途 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1045836A JPH1045836A (ja) | 1998-02-17 |
JP3814043B2 true JP3814043B2 (ja) | 2006-08-23 |
Family
ID=26435194
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP09422297A Expired - Fee Related JP3814043B2 (ja) | 1996-04-16 | 1997-04-11 | 水溶性重合体、その製造方法および用途 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3814043B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5326516B2 (ja) * | 2008-11-19 | 2013-10-30 | 日油株式会社 | 分散剤、組成物 |
-
1997
- 1997-04-11 JP JP09422297A patent/JP3814043B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1045836A (ja) | 1998-02-17 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6444771B1 (en) | Acrylic acid-maleic acid copolymer (or its salt), its production process and use, and production process for aqueous maleic salt solution with low impurity content | |
US5733857A (en) | Maleic acid based copolymer and its production process and use | |
JP5178008B2 (ja) | アミノ基含有水溶性共重合体 | |
JP2010132814A (ja) | ポリアルキレングリコール系化合物とその製造方法ならびにその用途 | |
JP2008303347A (ja) | ポリアルキレングリコール系化合物とその製造方法ならびにその用途 | |
JP4408158B2 (ja) | 特定機能を有する、スルホン酸基含有マレイン酸系水溶性共重合体と、その製造方法及びその用途 | |
US5336744A (en) | Process for polymerization of itaconic acid | |
JP2008535933A (ja) | 水溶性重合体組成物 | |
US6107428A (en) | Monomer, polymer of the same, and composition containing the polymer | |
EP0802177B1 (en) | Water-soluble monomer, water-soluble polymer and their production process and use | |
JP2934391B2 (ja) | マレイン酸/(メタ)アクリル酸系共重合体およびその用途 | |
JP3814043B2 (ja) | 水溶性重合体、その製造方法および用途 | |
JP2008266637A (ja) | ポリアルキレングリコール系単量体とそれを含んでなるポリアルキレングリコール系重合体、及び、その用途 | |
JP3112454B2 (ja) | アクリル酸−マレイン酸共重合体(塩)、その製造方法および用途 | |
JP3739483B2 (ja) | 重合体の製造方法 | |
JP2574144B2 (ja) | マレイン酸系共重合体,その製造方法および用途 | |
JP4750935B2 (ja) | 水溶性重合体組成物及びその用途 | |
JP3809037B2 (ja) | 不純物の少ないマレイン酸塩水溶液とその用途 | |
WO2023008367A1 (ja) | エステル結合含有ポリカルボン酸(塩)及びその製造方法 | |
JP3295965B2 (ja) | マレイン酸系重合体の製造方法および該重合体を含む組成物 | |
US20070043178A1 (en) | Water-soluble polymer and its production process and uses | |
JP4009041B2 (ja) | 重金属イオンキレート能を有する新規水溶性重合体とその製造方法および用途 | |
JP2005023308A (ja) | 水溶性重合体およびその製造方法と用途 | |
JP2023181590A (ja) | マルチエステル型ポリアルキレンオキシド含有単量体、及び、それを用いた重合体 | |
MX2007011870A (es) | Composicion polimerica soluble en agua. |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050728 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050816 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060530 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060602 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |