JP3739483B2 - 重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な重合体およびその製造方法並びに重合体を含有する新規な組成物に関するものである。上記組成物は、例えば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤(スケール防止剤)、および、木材パルプの漂白助剤等に好適に供される。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、洗剤組成物、分散剤、凝集剤、水処理剤(スケール防止剤)、キレート試薬、繊維処理剤、木材パルプの漂白助剤、pH調整剤、および、洗浄剤等の用途に、種々の有機系キレート剤および無機系キレート剤が使用されている。
【0003】
このうち、マレイン酸やアクリル酸等の単量体を重合してなるカルボン酸系重合体(有機系キレート剤の一種)は、無機粒子に対して優れたキレート作用および分散作用を示すことが知られており、広範囲にわたって使用されている。また、エチレンジアミン四酢酸塩やニトリロ三酢酸塩等の有機系キレート剤は、重金属イオンを効果的に捕捉する能力が比較的高いことが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マレイン酸やアクリル酸等の単量体を重合してなるカルボン酸系重合体は、カルボキシル基が主鎖に直接結合しているので、カルボキシル基の自由な回転が主鎖によって阻害される。このため、上記のカルボン酸系重合体は、金属イオンを捕捉する能力が充分ではなく、特に、重金属イオンを捕捉する能力が不充分である。
【0005】
また、エチレンジアミン四酢酸塩やニトリロ三酢酸塩等の有機系キレート剤は、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が比較的少なく、さらに、各種用途(分野)で要求される、無機粒子に対する分散作用も不充分である。
【0006】
従って、各種用途に好適なキレート剤、即ち、無機粒子に対する分散作用に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、かつ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い化合物が切望されている。また、一般に、該キレート剤には、優れた生分解性が求められている。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、各種用途に好適に供される新規な重合体、およびその製造方法、並びに上記重合体を含有する新規な組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記目的を達成すべく、新規な重合体、およびその製造方法、並びに上記重合体を含有する新規な組成物について鋭意検討した。その結果、特定の構造単位を有する重合体が水溶性を備えており、無機粒子に対する分散作用に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、かつ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多いことを見い出した。また、該重合体が優れた生分解性を備えていることを確認した。そして、上記重合体を含有する組成物が、例えば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤(スケール防止剤)、および、木材パルプの漂白助剤等に好適に供されることを見い出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、一般式(1)
【0010】
【化2】
Figure 0003739483
【0011】
で表される構造単位を有する重量平均分子量300〜8,000,000の重合体に関するものである。
【0012】
また、本発明の重合体は、上記の課題を解決するために、カルボキシル基を2つ〜4つ有する原子団を複数有すると共に、該カルボキシル基を構成する炭素原子と主鎖を構成する炭素原子との間に他の原子が3つ以上存在するようにして、上記原子団群が該主鎖に結合しており、かつ、重合体全体に占める該原子団群の割合が5重量%以上であることを特徴としている。
【0013】
本発明の重合体は、上記の課題を解決するために、カルボキシル基を2つ〜4つ有する原子団を複数有すると共に、該カルボキシル基を構成する炭素原子と主鎖を構成する炭素原子との間にエステル結合が存在するようにして、上記原子団群が該主鎖に結合しており、かつ、重合体全体に占める該原子団群の割合が5重量%以上であることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、重合体は、主鎖に直接結合していないカルボキシル基を多数有する分子構造を有している。そして、該カルボキシル基は、その自由な回転が主鎖によって阻害されることがない。このため、該重合体は、水溶性を備えており、従来のキレート剤と比較して、無機粒子に対する分散作用に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、かつ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い。また、該重合体は、優れた生分解性を備えている。即ち、上記の重合体は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている。
【0015】
また、本発明の重合体は、上記の課題を解決するために、生分解率が40%以上、カルシウムイオン捕捉能が200mgCaCO3 /g以上、カルシウムイオン安定度定数が4.0以上、鉄イオン捕捉能が9.0以上、かつ、クレイ分散能が0.5以上であることを特徴としている。
【0016】
本発明の重合体は、上記の課題を解決するために、生分解率が10%以上、カルシウムイオン捕捉能が350mgCaCO3 /g以上、カルシウムイオン安定度定数が4.2以上、かつ、クレイ分散能が0.5以上であることを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、重合体は、水溶性を備えており、従来のキレート剤と比較して、無機粒子に対する分散作用に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、かつ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い。また、該重合体は、優れた生分解性を備えている。即ち、上記の重合体は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている。
【0018】
本発明の重合体の製造方法は、上記の課題を解決するために、水性媒体を用いて、一般式(2)
【0019】
【化3】
Figure 0003739483
【0020】
で表される単量体を含む単量体成分を重合させることを特徴としている。
【0021】
上記の方法によれば、主鎖に直接結合していないカルボキシル基を多数有する分子構造を有する重合体を容易に得ることができる。それゆえ、上記の方法によれば、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている重合体を得ることができる。
【0022】
また、本発明の組成物は、上記の課題を解決するために、上述の重合体を含有してなることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、組成物は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている重合体を含有している。これにより、上記組成物は、例えば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤(スケール防止剤)、および、木材パルプの漂白助剤等に好適に用いることができる。
【0024】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明にかかる前記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体は、特に限定されるものではないが、式中、R1 で示される置換基が、水素原子、−OH基、−COOR5 基または
【0025】
【化4】
Figure 0003739483
【0026】
で構成され、R2 で示される置換基が、水素原子、−CH3 基または−CH2 COOR4 基で構成され、R3 で示される置換基が、水素原子、−OH基または−CH2 COOR4 基で構成され、R4 で示される置換基が、ナトリウム原子、カリウム原子または−NH4 基で構成され、かつ、上記R5 で示される置換基が、ナトリウム原子、カリウム原子または−NH4 基で構成される重合体である。また、上記重合体の重量平均分子量(Mw)は、300〜8,000,000の範囲内である。
【0027】
また、本発明にかかる重合体の製造方法において原料として用いられる前記一般式(2)で表される単量体は、特に限定されるものではないが、式中、R1 〜R4 で示される置換基が、上記例示の置換基で構成される単量体である。上記の単量体は、エチレン性不飽和カルボン酸と、水酸基含有多価カルボン酸とを反応させることにより得られる。
【0028】
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸およびそれらの塩、並びにそれらのエステル化物;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和多価カルボン酸およびそれらの塩、並びにそれらのエステル化物;等が挙げられる。上記エステル化物としては、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸メチル等が挙げられる。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0029】
上記の水酸基含有多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、およびそれら化合物の塩や水和物等が挙げられる。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0030】
上記例示の化合物のうち、エチレン性不飽和カルボン酸としては無水マレイン酸がより好ましく、水酸基含有多価カルボン酸としてはクエン酸がより好ましい。無水マレイン酸とクエン酸とのエステル化反応は容易であり、かつ、得られるエステル化物である単量体を重合してなる重合体は、キレート剤としての物性に特に優れている。また、エチレン性不飽和カルボン酸エステル(エステル化物)と水酸基含有多価カルボン酸とをエステル交換反応させることにより、単量体をより高純度で得ることができる。
【0031】
上記の反応においては、必要に応じて、反応系に溶媒を添加することができる。上記の溶媒としては、具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤が挙げられるが、反応を阻害するものでなければよく、特に限定されるものではない。また、その使用量も特に限定されるものではない。尚、上記エチレン性不飽和カルボン酸として無水マレイン酸を用いる場合には、無溶媒でエステル化反応を行うことが好ましい。これにより、相当する単量体の収率を向上させることができる。
【0032】
また、上記の反応においては触媒を用いることができる。上記の触媒としては、具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸;パラトルエンスルホン酸等の有機酸;ヘテロポリ酸等の固体酸;酸型イオン交換樹脂等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0033】
また、上記エステル化反応の反応温度は、特に限定されるものではないが、10℃〜180℃の範囲内に設定することが好ましく、単量体の収率を向上させるためには、50℃〜160℃の範囲内にすることがより好ましい。そして反応時間は、上記反応が充分に進行するように、エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基含有多価カルボン酸、溶媒および触媒の種類や組合せ、使用量、或いは反応温度等に応じて適宜設定すればよい。また、反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであってもよい。
【0034】
また、上記の反応においては、得られる単量体が重合し易い性質を備えているので、該重合反応を防止するために、ハイドロキノン等の重合防止剤を添加してもよい。さらに、上記反応において、エチレン性不飽和カルボン酸としてマレイン酸および/または無水マレイン酸を用いる場合には、得られる単量体が着色することを防止するために、硫酸第一鉄アンモニウム等の金属化合物を添加してもよい。
【0035】
そして、前記一般式(2)中のR4 で示される置換基が、ナトリウム原子、カリウム原子または−NH4 基で構成される単量体は、エチレン性不飽和カルボン酸と、水酸基含有多価カルボン酸とを反応させた後、生成する化合物を、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水等の塩基性化合物水溶液で処理することにより、容易に得ることができる。尚、上記処理方法は、特に限定されるものではない。
【0036】
本発明にかかる重合体は、前記一般式(2)で表される単量体(単量体成分)を単独に重合させるか、或いは、上記単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体とを含む単量体成分を共重合させることにより容易に製造される。
【0037】
上記のエチレン性不飽和単量体は、水溶性を有することが好ましく、100℃の水100gにおいて、溶解度が5g以上であることがより好ましい。そして、前記一般式(2)で表される単量体と上記エチレン性不飽和単量体との割合は、両者の合計量に対する一般式(2)で表される単量体のモル比が、1/100以上、1/1未満となるようにすればよい。
【0038】
また、本発明にかかる重合体の重量平均分子量は、300〜8,000,000の範囲内が好ましく、500〜100,000の範囲内がより好ましく、1,000〜20,000の範囲内がさらに好ましい。特に、重合体、即ち、組成物を洗剤組成物(洗剤ビルダー)として使用する場合には、重量平均分子量は500〜100,000の範囲内が好ましく、3,000〜15,000の範囲内がより好ましい。尚、重量平均分子量が上記の範囲外である場合には、得られる重合体を含有してなる組成物の物性が低下するため、好ましくない。
【0039】
上記エチレン性不飽和単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸およびそれらの塩;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和多価カルボン酸およびそれらの塩;酢酸ビニル等が挙げられる。
【0040】
また、エチレン性不飽和単量体として、一般式(3)
【0041】
【化5】
Figure 0003739483
【0042】
(式中、R6 、R7 はH原子または−CH3 基を表し、かつ、R6 およびR7 は同時に−CH3 基になることはなく、R8 は−CH2 −、− (CH2)2 −または−C (CH3)2 −を表し、かつ、R6 、R7 およびR8 に含まれる炭素数は合計3であり、Yは炭素数2〜3のアルキレン基を表し、nは0〜100の整数である)
で表される水酸基含有不飽和化合物、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、および、これら化合物1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1モル〜100モル付加した化合物等を用いることもできる。
【0043】
さらに、エチレン性不飽和単量体として、一般式(4)
【0044】
【化6】
Figure 0003739483
【0045】
(式中、R9 はH原子または−CH3 基を表し、a、b、cおよびdは0〜100の整数であり、かつ、a+b+c+d=0〜100であり、また、−OC2 4 −および−OC3 6 −の結合の順序は限定されず、さらに、c+d=0の場合に、Zは水酸基、スルホン酸基または(亜)リン酸基を表し、c+d=1〜100の場合に、Zは水酸基を表す)
で表される化合物、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、およびその塩;グリセロールモノアリルエーテル、および、この化合物1モルに対してエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1モル〜100モル付加した化合物等の不飽和(メタ)アリルエーテル系化合物;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸基含有化合物およびそれらの塩;炭素数1〜20のアルキルアルコールにエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを0モル〜100モル付加したアルコールと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸とのエステル、または、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の多価カルボン酸とのモノエステル、或いはモノエステルの塩、並びにジエステル等の末端アルキル基含有エステル系不飽和化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸1モルに対して、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1モル〜100モル付加したエステル系化合物、または、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸1モルに対して、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1モル〜100モル付加したモノエステル系化合物、或いはモノエステル系化合物の塩、並びにジエステル系化合物等のエステル系不飽和化合物;等を用いることもできる。
【0046】
上記のエチレン性不飽和単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。これら例示の化合物のうち、重合反応性や、得られる重合体の各種物性等の点から、(メタ)アクリル酸(塩)が特に好ましい。
【0047】
本発明にかかる重合体を製造する際に用いられる重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0048】
重合反応時のpHは、任意の値とすることができるが、単量体が酸性であるため、反応性を向上させる面で、反応液を塩基性化合物によって中和することが好ましい。中和に用いるのに好適な塩基性化合物としては、具体的には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、イソブタノールアミン等のアルカノールアミン類;ピリジン;等が挙げられる。これら塩基性化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0049】
また、単量体を多価金属イオンの存在下で重合させると、重合終了後、反応液中に残存する単量体の量を低減させることができ、従って、重合体の分子量分布を狭くすることができる。上記の多価金属イオンとしては、具体的には、例えば、鉄イオン、バナジウム原子含有イオン、銅イオン等が挙げられる。これら例示のイオンのうち、Fe3+、Fe2+、Cu+ 、Cu2+、V2+、V3+、VO2+が好ましく、Fe3+、Cu2+、VO2+が特に好ましい。これら多価金属イオンは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0050】
多価金属イオンの濃度としては、反応液全量に対して0.1ppm〜100ppmが好適である。多価金属イオンの濃度が0.1ppm未満である場合には、上述した効果が殆ど期待できないので好ましくない。多価金属イオンの濃度が100ppmを越える場合には、例えば、マレイン酸系単量体を共重合して得られるマレイン酸系共重合体が着色し、洗剤組成物等として使用することが困難となるので好ましくない。尚、多価金属イオンの存在下で重合させた重合体は、鉄イオン捕捉能(いわゆる鉄粒子沈着防止能)に優れており、洗剤組成物等として特に好適に用いることができる。
【0051】
多価金属イオンを反応液中に存在させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、反応液中でイオン化する金属化合物や金属を、該反応液に添加すればよい。上記の金属化合物や金属としては、具体的には、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[ (NH4)2 SO4 ・VSO4 ・6H2 O]、硫酸アンモニウムバナダス[ (NH4)V (SO4)2 ・12H2 O]、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセトネート、塩化第二銅、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセトネート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の金属酸化物;硫化銅(II)、硫化鉄等の金属硫化物;銅粉末、鉄粉末;等が挙げられるが、特に限定されるのものではない。
【0052】
上記の重合反応に用いる水性媒体としては、具体的には、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル等のエーテル類;エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;メチルエチルケトン等のケトン類;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0053】
上記重合反応の反応条件としては、例えば、反応温度は100℃程度、反応時間は3時間程度に設定すればよいが、特に限定されるものではなく、単量体や触媒、水性媒体の種類や量等に応じて、適宜設定すればよい。また、反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであってもよい。
【0054】
以上のように、本発明にかかる重合体は、前記一般式(1)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が300〜8,000,000の範囲内である。また、該重合体は、前記一般式(1)で表される構造単位から明らかなように、カルボキシル基を2つ〜4つ有する原子団を複数有すると共に、該カルボキシル基を構成する炭素原子と主鎖を構成する炭素原子との間に他の原子が3つ以上存在する(つまり、−C−O−C−)ようにして、上記原子団群が該主鎖に結合している構成である。さらに、該重合体は、前記一般式(1)で表される構造単位から明らかなように、カルボキシル基を2つ〜4つ有する原子団を複数有すると共に、該カルボキシル基を構成する炭素原子と主鎖を構成する炭素原子との間にエステル結合(つまり、−COO−)が存在するようにして、上記原子団群が該主鎖に結合している構成である。そして、単量体成分の組成から明らかなように、本発明にかかる重合体は、該重合体全体に占める上記原子団群の割合が5重量%以上となっている。
【0055】
それゆえ、重合体は、主鎖に直接結合していないカルボキシル基を多数有する分子構造を有している。そして、該カルボキシル基は、その自由な回転が主鎖によって阻害されることがない。
【0056】
上記の重合体は、水溶性を備えており、従来のキレート剤と比較して、無機粒子に対する分散作用に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、かつ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い。また、該重合体は、優れた生分解性を備えている。即ち、上記の重合体は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている。
【0057】
そして、本発明にかかる重合体は、生分解率が40%以上、カルシウムイオン捕捉能が200mgCaCO3 /g以上、カルシウムイオン安定度定数が4.0以上、鉄イオン捕捉能が9.0以上、かつ、クレイ分散能が0.5以上であるか、或いは、生分解率が10%以上、カルシウムイオン捕捉能が350mgCaCO3 /g以上、カルシウムイオン安定度定数が4.2以上、かつ、クレイ分散能が0.5以上である。
【0058】
上記のカルシウムイオン捕捉能とは、重合体1gが捕捉するカルシウムイオンの量を炭酸カルシウムに換算した数値(mgCaCO3 /g)として定義される物性である。該カルシウムイオン捕捉能は、例えば、重合体を含む洗剤組成物(後述する)の洗浄性(洗浄力)の程度を表し、数値が高いほど、洗浄性が良好であることを示す。カルシウムイオン捕捉能が200mgCaCO3 /g未満であると、例えば、洗剤組成物や無機顔料分散剤、繊維処理剤等に用いた場合に、満足な性能が得られないので好ましくない。
【0059】
上記のカルシウムイオン安定度定数は、水中のカルシウムイオンをキレート化するキレート化能を表す数値であり、数値が高いほど、キレート化能に優れていることを示す。つまり、該カルシウムイオン安定度定数は、例えば、洗剤組成物においては、数値が高いほど、洗濯時に、泥の中に存在するカルシウムイオンを引き剥がすことによって泥汚れを繊維から引き剥がす能力が高いことを示す。カルシウムイオン安定度定数が4.0未満であると、例えば、洗剤組成物等に用いた場合に、満足な性能が得られないので好ましくない。
【0060】
上記の鉄イオン捕捉能は、水中の鉄イオンを捕捉する捕捉能を表す数値であり、数値が高いほど、該捕捉能に優れていることを示す。つまり、該鉄イオン捕捉能は、例えば、洗剤組成物においては、数値が高いほど、洗濯時に、衣類の黄ばみを防止する能力が高いことを示す。鉄イオン捕捉能は、11.0以上がより好ましく、13.0以上がさらに好ましい。鉄イオン捕捉能が9.0未満であると、例えば、洗剤組成物等に用いた場合に、満足な性能が得られないので好ましくない。
【0061】
上記のクレイ分散能とは、クレイを分散させてなる懸濁液を一定時間、静置した後における該懸濁液の上澄みの濁度で表され、数値が高いほど、該分散能に優れていることを示す。つまり、該クレイ分散能は、例えば、洗剤組成物においては、数値が高いほど、洗濯時に、泥汚れ等を繊維から引き剥がして該泥を分散させる能力が高いことを示す。クレイ分散能は、1.2以上がより好ましく、泥汚れの沈着を防止するには1.4以上がさらに好ましい。クレイ分散能が0.5未満であると、例えば、洗剤組成物等に用いた場合に、満足な性能が得られないので好ましくない。
【0062】
尚、上記の生分解率、カルシウムイオン捕捉能、カルシウムイオン安定度定数、鉄イオン捕捉能、および、クレイ分散能の測定方法については、実施例にて詳述する。
【0063】
また、以上のように、本発明にかかる重合体の製造方法は、水性媒体を用いて、前記一般式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合させる方法である。
【0064】
これにより、主鎖に直接結合していないカルボキシル基を多数有する分子構造を有する重合体を容易に得ることができる。それゆえ、上記の方法によれば、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている重合体を得ることができる。
【0065】
次に、本発明にかかる組成物について説明する。本発明にかかる組成物は、前記の重合体を含有してなり、例えば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤(スケール防止剤)、および、木材パルプの漂白助剤等に好適に用いられる。これら用途に用いられる組成物について以下に詳述する。
【0066】
上記の洗剤組成物は、該重合体、界面活性剤、および、必要に応じて酵素を配合してなっている。洗剤組成物に占める重合体の割合は、0.1重量%〜20重量%が好適であり、0.5重量%〜15重量%がより好ましい。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、およびカチオン界面活性剤が好ましい。
【0067】
アニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
【0068】
ノニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0069】
両性界面活性剤としては、具体的には、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、第四アンモニウム塩等が挙げられる。
【0070】
洗剤組成物に占める上記界面活性剤の割合は、5重量%〜70重量%が好適であり、20重量%〜60重量%がより好ましい。
【0071】
上記の酵素としては、具体的には、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が挙げられる。特に、アルカリ洗浄液中での活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルカリセルラーゼ等が好ましい。洗剤組成物に占める上記酵素の割合は、0.01重量%〜5重量%が好ましい。酵素の配合量がこの範囲から外れると、界面活性剤とのバランスが崩れて、洗浄力を向上させることができなくなるおそれがある。
【0072】
洗剤組成物は、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、蛍光剤、漂白剤、香料等の、洗剤組成物に常用される成分がさらに配合されていてもよい。アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン六酢酸)、クエン酸等が挙げられる。また、ゼオライトをさらに配合して洗浄力を向上させてもよい。
【0073】
上記の繊維処理剤は、該重合体の他に、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分を含んでなっている。該繊維処理剤は、繊維処理における精練、染色、漂白、およびソーピング等の工程で使用することができる。尚、染色剤、過酸化物および界面活性剤としては、公知の繊維処理剤に使用されているものを転用することができる。
【0074】
染色剤、過酸化物および界面活性剤と、重合体との配合比は、例えば、重合体がマレイン酸系共重合体である場合には、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度を向上させるために、重合体1重量部に対して、上記染色剤等を0.1重量部〜100重量部の割合で配合すればよい。繊維処理剤を使用することができる繊維は特に限定されるものではないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ポリアミド、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維;並びに、これら繊維を用いた織物および混紡品が挙げられる。
【0075】
例えばマレイン酸系共重合体を重合体として含む繊維処理剤を、精練工程に適用する場合には、該繊維処理剤は、公知のアルカリ剤および界面活性剤を含有していることが好ましい。また、例えばマレイン酸系共重合体を重合体として含む繊維処理剤を、漂白工程に適用する場合には、該繊維処理剤は、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤である珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを含有していることが好ましい。
【0076】
上記の無機顔料分散剤は、該重合体の他に、必要に応じて、重合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコール、アニオン化変性ポリビニルアルコールを配合してなっている。
【0077】
該無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質若しくは軽質炭酸カルシウムや、クレイ等に供される無機顔料の分散剤として、良好な性能を発揮する。即ち、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加した後、水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、これら性能の経時変化が生じない、安定な高濃度無機顔料スラリー、例えば、高濃度炭酸カルシウムスラリーを製造することができる。無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05重量部〜2.0重量部が好ましい。
【0078】
上記の水処理剤は、該重合体の他に、必要に応じて重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を配合してなっている。該水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。
【0079】
上記木材パルプの漂白助剤は、該重合体を含有してなっている。該漂白助剤は、木材パルプの漂白時の前処理剤として用いてもよく、また、木材パルプの漂白時に過酸化水素、塩素系漂白剤、オゾン等と併用してもよい。
【0080】
以上のように、本発明にかかる組成物は、前記の重合体を含有してなる構成である。つまり、組成物は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている重合体を含有している。従って、上記の組成物は、例えば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤(スケール防止剤)、および、木材パルプの漂白助剤等に好適に用いることができる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示す。
【0082】
〔実施例1〕
温度計、攪拌機および還流冷却器を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、無水マレイン酸490.3部(単量体の原料であるエチレン性不飽和カルボン酸として196部、共重合体であるエチレン性不飽和単量体として294.3部)、クエン酸1水和物(単量体の原料である水酸基含有多価カルボン酸)420部、パラトルエンスルホン酸(触媒)3部、および、硫酸第一鉄アンモニウム6水和物(金属化合物)0.01部を仕込み、攪拌しながら120℃まで昇温させ、30分間その温度を保った。
【0083】
次に、この反応液を80℃まで冷却した後、反応液に、塩基性化合物としての水酸化ナトリウム48重量%水溶液93.75部、水性媒体としての純水406.3部をさらに仕込んだ。そして、この水溶液を攪拌しながら沸騰する温度まで常圧で加熱した。これにより、単量体であるマレイン酸−クエン酸ハーフエステル(モノエステル)を調製した。
【0084】
次に、攪拌しながら、この水溶液に重合開始剤としての35重量%過酸化水素水257.2部を180分間かけて滴下した。また、この滴下操作と並行して、該水溶液に、エチレン性不飽和単量体としてのアクリル酸ナトリウム30重量%水溶液2,350部を140分間かけて滴下し、重合反応を行った。尚、上記単量体と無水マレイン酸とアクリル酸ナトリウムとのモル比は、この順に、24:16:60である。また、上記各化合物の使用量(モル比)を表1に示す。
【0085】
反応終了後、上記の反応液に水酸化ナトリウム48重量%水溶液209.2部を加えて中和した。これにより、固形分を38重量%含有する水溶液を得た。該水溶液を所定の方法で分析した結果、本発明にかかる新規な重合体が含まれていることを確認した。
【0086】
以上のようにして得た重合体(以下、重合体(a) と称する)の重量平均分子量(Mw)、および未反応の単量体の量(重量%)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。上記の測定において、カラムは、旭化成アサヒパックGFA−7MF(商品名;旭化成工業株式会社製)を用い、溶離液には、0.5重量%リン酸水溶液を用いた。また、分子量標準サンプルとして、ポリアクリル酸ソーダ標準サンプル(創和科学株式会社製)を用いた。その結果、重合体(a) の重量平均分子量は13,000であり、未反応の単量体の量は0.4重量%であった。
【0087】
また、上記重合体(a) の生分解率(%)を、以下に示す生分解試験を行うことにより算出した。さらに、該重合体(a) のキレート化能等の諸性能を調べるために、カルシウムイオン捕捉能(mgCaCO3 /g)、カルシウムイオン安定度定数、鉄イオン捕捉能、および、クレイ分散能を、以下に示す測定条件下で測定した。
【0088】
(a)生分解試験
生分解試験は、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に基づく修正MITI(Ministry of International Trade and Industry)試験に従って実施した。
【0089】
先ず、基礎培養地を以下に示す方法で調製した。即ち、JIS K 0102(工場排水試験方法)における生物化学的酸素消費量の項に規定されているA液、B液、C液、およびD液を調製した。A液は、水1Lに、リン酸二カリウム21.75g、リン酸一カリウム8.5g、リン酸二ナトリウム12水和物44.6g、および、塩化アンモニウム1.7gを溶解してなる水溶液である。B液は、水1Lに、硫酸マグネシウム7水和物22.5gを溶解してなる水溶液である。C液は、水1Lに、無水塩化カルシウム27.5gを溶解してなる水溶液である。D液は、水1Lに、塩化鉄(III )6水和物0.25gを溶解してなる水溶液である。そして、蒸留水1Lに、上記のA液〜D液をこの順に各々3mlずつ添加することにより、基礎培養地を調製した。
【0090】
次に、容量500mlのフラスコに、上記の基礎培養地と、試験物質としての重合体(a) とを各々所定量仕込むと共に、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整した。そして、この混合液のTOC(全有機性炭素:Total Organic Carbon)を測定した。次いで、該フラスコに、生物源としての純水培養汚泥(6,000ppm)を所定量仕込んだ。これにより、重合体(a) の濃度が100ppm、汚泥の濃度が30ppmに調整された試験液300mlを得た。
【0091】
また、容量500mlのフラスコに、上記の基礎培養地を所定量仕込むと共に、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整した。これにより、空試験液300mlを得た。そして、この空試験液のTOCを測定した。
【0092】
その後、フラスコに綿栓を施し、該フラスコを25±3℃に温度調節された恒温振盪培養機内に設置した。そして、試験液を、150回/分で回転振盪させながら、28日間にわたって培養した。また、同様にして、空試験液を用いて空試験を行った。
【0093】
培養後、直ちに、試験液を遠心分離機を用いて3,000rpmで10分間、遠心分離することにより、汚泥を沈降させて上澄み液を得た。そして、該上澄み液のTOCを測定すると共に、空試験液のTOCを測定した。
【0094】
得られた測定値、つまり、培養前の試験液の測定値S0 (mg/L)、培養前の空試験液の測定値B0 (mg/L)、培養後の試験液の測定値St (mg/L)、および、培養後の空試験液の測定値Bt (mg/L)から、次式、
生分解率(%)=〔{(S0 −B0 )−(St −Bt )}/(S0 −B0 )〕×100
に従って、生分解率(%)を算出した。その結果、重合体(a) の生分解率は25%であった。
【0095】
(b)カルシウムイオン捕捉能
カルシウムイオン捕捉能は、以下に示す測定方法で測定した。即ち、先ず、水に炭酸カルシウム(CaCO3 )を溶解させることにより、カルシウムイオン(Ca2+)の濃度が1.0×10-3モル/Lである炭酸カルシウム水溶液を調製した。次に、容量100mlのビーカーに、重合体(a) 10mg(固形分換算)を入れた後、上記の炭酸カルシウム水溶液50mlを添加した。そして、得られた測定液をマグネチックスターラーを用いて25℃で10分間、攪拌した。
【0096】
攪拌後、測定液のカルシウムイオン濃度を、カルシウム電極(93−20;オリオン社製)を備えたイオンアナライザー(EA920;オリオン社製)を使用して測定した。また、攪拌前の測定液のカルシウムイオン濃度も同様にして測定した。そして、攪拌の前後におけるカルシウムイオン濃度の差を算出した。
【0097】
算出された数値(モル/L)から、重合体(a) 1gが捕捉するカルシウムイオンの量を求め、さらに、この量を炭酸カルシウムの量(mgCaCO3 /g)に換算した。そして、この換算値を以てカルシウムイオン捕捉能とした。その結果、重合体(a) のカルシウムイオン捕捉能は480mgCaCO3 /gであった。
【0098】
(c)カルシウムイオン安定度定数
カルシウムイオン安定度定数は、以下に示す測定方法で測定した。即ち、先ず、水に塩化カルシウム(CaCl2 )を溶解させることにより、濃度が0.002モル/L、0.003モル/L、0.004モル/Lである塩化カルシウム水溶液をそれぞれ調製した。
【0099】
次に、容量100mlの3つのビーカーに、上記の水溶液50gを入れた後、これら3種類の水溶液に、重合体(a) 50mg(固形分換算)をそれぞれ添加した。そして、得られた各測定液のpHを10に調整した後、これら測定液に、カルシウムイオン電極安定剤としての塩化ナトリウム(NaCl)0.15gを加えた。その後、測定液中の遊離のカルシウムイオン濃度を、カルシウム電極を使用して測定した。
【0100】
ここで、遊離のカルシウムイオンの濃度を[Ca]、重合体(a) によって固定化されたカルシウムイオンの濃度を[CaS]、重合体(a) における全キレートサイトの数を[S0 ]、重合体(a) における遊離のキレートサイトの数を[S]、カルシウムイオン安定度定数を logKとすると、
[Ca]・[S]/[CaS]=1/K
[S]=[S0 ]−[CaS]
となる。従って、上記両式より、
[Ca]/[CaS]=(1/[S0 ])・[Ca]+1/([S0 ]・K)
となる。
【0101】
それゆえ、[Ca]/[CaS]を縦軸とし、[Ca]を横軸としてプロットすると、直線の傾きおよび切片から、[S0 ]およびKを計算により容易に求めることができる。つまり、上記カルシウムイオン安定度定数( logK)を容易に算出することができる。
【0102】
上記遊離のカルシウムイオン濃度の測定結果を用いて、カルシウムイオン安定度定数を算出した。その結果、重合体(a) のカルシウムイオン安定度定数は6.2であった。
【0103】
(d)鉄イオン捕捉能
鉄イオン捕捉能は、以下に示す測定方法で測定した。即ち、先ず、水に塩化第二鉄6水和物を溶解させることにより、塩化第二鉄6水和物0.1重量%水溶液を調製した。また、水に水酸化ナトリウムを溶解させることにより、水酸化ナトリウム0.1重量%水溶液を調製した。さらに、水に重合体(a) を溶解させることにより、固形分換算で重合体(a) 0.1重量%水溶液を調製した。
【0104】
次に、容量500mlのビーカーに、上記塩化第二鉄水溶液150ml、水酸化ナトリウム水溶液150ml、および、重合体(a) 水溶液150mlを入れることにより、試験液を調製した。そして、得られた試験液をマグネチックスターラーを用いて5分間、攪拌した後、2時間静置した。
【0105】
静置後、試験液を5C濾紙を用いて濾過し、該濾紙を乾燥させた。そして、乾燥した濾紙を、裏面が黒い文鎮を用いて押さえ、さらに、ブラックボックスを用いてカバーをした。上記濾紙のL値を、NIHON DENNSYOKU LTD. CO.製のSZオプティカルセンサー (color measuring system) を用いて測定した。
【0106】
また、容量500mlのビーカーに、上記塩化第二鉄水溶液150ml、水酸化ナトリウム水溶液150ml、および、純水150mlを入れることにより、ブランク試験液を調製した。そして、得られたブランク試験液についても同様の操作を行い、濾紙のブランクL値を測定した。
【0107】
上記のL値およびブランクL値から、次式、
鉄イオン捕捉能=L値−ブランクL値
に従って、鉄イオン捕捉能を算出した。その結果、重合体(a) の鉄イオン捕捉能は14.0であった。
【0108】
(e)クレイ分散能
クレイ分散能は、以下に示す測定方法で測定した。即ち、先ず、水に重合体(a) を溶解させることにより、固形分換算で重合体(a) 0.5重量%水溶液を調製した。次に、容量100mlのメスシリンダーに、上記重合体(a) 水溶液1mlと、上水(姫路市の上水)100gとを入れた後、アマゾンクレー(クレイ)1.0gを添加した。そして、得られた測定液をマグネチックスターラーを用いて10分間、攪拌した後、18時間静置した。
【0109】
静置後、測定液の上澄みを10ml採取し、1cmセルを用いて、波長380nmの紫外線の吸光度(濁度)を測定した。そして、得られた測定値を以てクレイ分散能とした。その結果、重合体(a) のクレイ分散能は1.5であった。
【0110】
上記の測定結果、即ち、重合体(a) の重量平均分子量、未反応の単量体の量、重合体(a) の生分解率、カルシウムイオン捕捉能、カルシウムイオン安定度定数、鉄イオン捕捉能、および、クレイ分散能をまとめて、表2に示す。
【0111】
〔実施例2〜8〕
実施例1における水酸基含有多価カルボン酸またはエチレン性不飽和単量体の種類、および/または、これらの使用量(モル比)を、表1に示した種類や使用量に変更した以外は、実施例1の反応・操作と同様の反応・操作を行い、相当する重合体(以下、順に重合体(b) 〜(h) と称する)を得た。そして、これら重合体(b) 〜(h) について、実施例1の測定と同様の測定を行った。測定結果をまとめて、表2に示す。
【0112】
〔実施例9〕
温度計、攪拌機および還流冷却器を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、溶媒としてのトルエン500部、エチレン性不飽和カルボン酸としてのアクリル酸メチル172部、クエン酸1水和物420部、パラトルエンスルホン酸3部、および、重合防止剤であるハイドロキノン0.035部を投入し、100℃で3時間攪拌すると共に、反応副生物であるメタノールを留去した。
【0113】
次に、上記の反応液を減圧下で加熱することにより、トルエンを留去した。その後、該反応液に、硫酸第一鉄アンモニウム6水和物0.01部、水酸化ナトリウム48重量%水溶液93.75部、および、純水406.3部を仕込んだ。次いで、攪拌しながら、該水溶液を沸騰する温度まで常圧で加温した。これにより、単量体であるアクリル酸−クエン酸エステルを調製した。
【0114】
次に、攪拌しながら、この水溶液に、重合開始剤としての35重量%過酸化水素水257.2部と、過硫酸ナトリウム15重量%水溶液100部とを180分間かけて滴下した。また、この滴下操作と並行して、該水溶液にアクリル酸ナトリウム30重量%水溶液2,506部を180分間かけて滴下した。これにより、重合反応を行った。上記単量体とアクリル酸ナトリウムとのモル比は、この順に20:80である。また、上記各化合物の使用量(モル比)を表1に示す。
【0115】
反応終了後、上記の反応液に水酸化ナトリウム48重量%水溶液209.2部を加えて中和した。これにより、固形分を36重量%含有する水溶液を得た。該水溶液には、本発明にかかる新規な重合体が含まれていた。
【0116】
以上のようにして得た重合体(以下、重合体(i) と称する)について、実施例1の測定と同様の測定を行った。測定結果をまとめて、表2に示す。
【0117】
〔比較例1〕
従来公知の化合物であるポリアクリル酸ナトリウムについて、実施例1の測定と同様の測定を行った。上記ポリアクリル酸ナトリウムの重量平均分子量は2,200であった。測定結果をまとめて、表2に示す。
【0118】
〔比較例2〕
従来公知の化合物であるクエン酸ナトリウムについて、実施例1の測定と同様の測定を行った。上記クエン酸ナトリウムの重量平均分子量は2,500であった。測定結果をまとめて、表2に示す。
【0119】
〔比較例3〕
従来公知の化合物であるポリマレイン酸ナトリウムについて、実施例1の測定と同様の測定を行った。上記ポリマレイン酸ナトリウムの重量平均分子量は800であった。測定結果をまとめて、表2に示す。
【0120】
【表1】
Figure 0003739483
【0121】
【表2】
Figure 0003739483
【0122】
〔実施例10〕
上記の重合体(a) 〜(i) を用いて、本発明にかかる組成物を形成した。即ち、上記の重合体を20重量%(固形分換算)含有する組成物としての洗剤組成物を形成した。洗剤組成物に配合した各種成分および配合量(重量%)を表3に示す。
【0123】
【表3】
Figure 0003739483
【0124】
また、上記各洗剤組成物の性能を評価するために、人工汚垢を作成した。この人工汚垢に含まれる各種成分および配合量(重量%)を表4に示す。
【0125】
【表4】
Figure 0003739483
【0126】
そして、上記の人工汚垢を用いて洗浄性試験を行った。先ず、人工汚垢を四塩化炭素中に分散した後、この分散液に綿製の白布を通した。次に、該布を、乾燥・切断することにより、10cm×10cmの汚染布を作製した。次いで、表5に示す洗浄条件下で上記汚染布の洗浄を行った。
【0127】
【表5】
Figure 0003739483
【0128】
洗浄後、この布を乾燥させ、所定の方法により該布の反射率(%)を測定した。その後、下式、
洗浄率(%)=(洗浄後の汚染布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)/
(白布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)×100
に基づいて、反射率から洗浄率(%)を算出した。結果を表6に示す。
【0129】
〔比較例4〕
比較例1に記載のポリアクリル酸ナトリウムを洗剤組成物として用いて、実施例10と同様の洗浄性試験を行い、洗浄率を算出した。結果を表6に示す。
【0130】
〔比較例5〕
比較例2に記載のクエン酸ナトリウムを洗剤組成物として用いて、実施例10と同様の洗浄性試験を行い、洗浄率を算出した。結果を表6に示す。
【0131】
〔比較例6〕
比較例3に記載のポリマレイン酸ナトリウムを洗剤組成物として用いて、実施例10と同様の洗浄性試験を行い、洗浄率を算出した。結果を表6に示す。
【0132】
【表6】
Figure 0003739483
【0133】
上記実施例10および比較例4〜6の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(a) 〜(i) を用いた洗剤組成物は、従来公知の化合物を洗剤組成物として用いた場合と比較して、洗浄率が高いことがわかる。
【0134】
〔実施例11〕
上記の重合体(a) 〜(i) を用いて、本発明にかかる組成物を形成した。即ち、上記の重合体を2g/L(固形分換算)含有する組成物としての繊維処理剤を形成した。繊維処理剤に配合した各種成分および配合量を下記に示す。尚、該繊維処理剤は水溶液である。
【0135】
(成分)
重合体(a) 〜(i) の何れか1つ 2g/L
過酸化水素 10g/L
水酸化ナトリウム 2g/L
3号珪酸ナトリウム 5g/L
そして、上記の繊維処理剤を用いて漂白試験を行った。試験布として、精練した綿天竺製ニットを用いた。漂白条件を下記に示す。
【0136】
(漂白条件)
使用した水の硬度 35・DH(ドイツ硬度)
浴 比 1:25
温 度 85℃
時 間 20分間
そして、漂白処理した布の風合いを、官能検査法により判定した。
【0137】
また、白色度は、スガ試験機株式会社製の3MカラーコンピューターSM−3型を用いて測色し、Lab系の白色度式、
W=100−〔(100−L)2 +a2 +b2 1/2
L : 測定された明度
a : 測定された赤色のクロマチックネス指数
b : 測定された青色のクロマチックネス指数
によって白色度(W値)を求め評価した。
【0138】
さらに、縫製性は、布を4枚重ねにし、針#11Sを用いた本縫ミシンで30cm空縫いした場合の地糸切れの箇所数で評価した。結果を表7に示す。
【0139】
〔比較例7〜9〕
上記比較例4〜6で用いた化合物をこの順に繊維処理剤として用いて、実施例11と同様の漂白試験を行い、風合いを判定すると共に、白色度、地糸切れの箇所数を測定した。結果を表7に示す。
【0140】
【表7】
Figure 0003739483
【0141】
上記実施例11および比較例7〜9の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(a) 〜(i) を用いた繊維処理剤は、従来公知の化合物を繊維処理剤として用いた場合と比較して、風合いおよび白色度に優れ、かつ、地糸切れの箇所数も大幅に減少していることがわかる。
【0142】
〔実施例12〕
上記の重合体(a) 〜(i) を用いて、本発明にかかる組成物を形成した。即ち、上記の重合体を無機顔料分散剤として用い、以下のようにして分散液を調製した。
【0143】
先ず、容量1L(材質:SUS304、内径90mm、高さ160mm)のビーカーに、カルサイト系立方体状の軽質炭酸カルシウム(1次粒子径0.15μm)をフィルタープレスにより脱水して得たケーキ(固形分65.3重量%)400部を入れた。次に、該ビーカーに、無機顔料分散剤としての重合体40重量%水溶液3.26部(炭酸カルシウムの重量に対する重合体の割合は0.5重量%)、および、固形分の濃度を調整するための水6.9部を加え、ディゾルバー攪拌羽根(50mmφ)を用いて低速で3分間混練した。その後、3,000rpmで10分間分散し、固形分の濃度が64重量%の分散液を得た。
【0144】
得られた分散液について、分散直後の粘度(cP)と、室温で1週間放置した後の粘度(cP)とを、B型粘度計を使用して25℃で測定した。測定結果を表8に示す。
【0145】
〔比較例10〜12〕
上記比較例4〜6で用いた化合物をこの順に無機顔料分散剤として用いて、実施例12と同様にして分散液を調製し、粘度を測定した。測定結果を表8に示す。
【0146】
【表8】
Figure 0003739483
【0147】
上記実施例12および比較例10〜12の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(a) 〜(i) を用いた分散液は、従来公知の化合物を用いた分散液と比較して、分散力が高く、しかも、一週間放置した後においても、良好な分散性を保持していることがわかる。
【0148】
〔実施例13〕
上記の重合体(a) 〜(i) を用いて、本発明にかかる組成物を形成した。即ち、上記の重合体を木材パルプの漂白助剤(前処理剤)として用い、以下のようにして木材パルプを漂白した。
【0149】
先ず、容量5Lのビーカーに、グランドパルプをいわゆる絶乾重量として30部入れると共に、温度50℃の水3,000部および漂白助剤としての重合体0.06部(パルプの重量に対する重合体の割合は0.2重量%)を加え、50℃で15分間攪拌した。次に、該パルプをいわゆるNo.2の濾紙で濾過して上記処理液から分離した後、パルプに水1,500部を通液して洗浄し、その後、脱水した。
【0150】
次に、上記の前処理を施して得られたパルプを、容量5Lのビーカーに入れ、パルプ濃度が最終的に14重量%となるように水を加えると共に、過酸化水素(パルプの重量に対する割合は4重量%)、3号珪酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを加えて、処理液のpHを11.0に調整した。
【0151】
この処理液をポリエチレン製の袋に移し替え、水分が蒸発しないようにその口を折り返した後、予め65℃に調整されたウォーターバスにて5時間熱処理することによりパルプの漂白を行った。その後、漂白されたパルプを420メッシュの濾布で濾過し、脱水した。そして、濾液に残存する過酸化水素の濃度を測定した。その後、下式、
過酸化水素の消費率(%)=〔(B−C)/B〕×100
B : 漂白前の処理液中の過酸化水素の濃度(重量%)
C : 漂白後の処理液中の過酸化水素の濃度(重量%)
に基づいて、過酸化水素の消費率(%)を算出した。
【0152】
また、漂白されたパルプの一部を水で3重量%に希釈した後、亜硫酸水を用いてpH4.5に調整することによりパルプスラリーを得た。そして、このパルプスラリーを用いて、TAPPI標準法(Technical Association of the Pulp and Paper Industry)により2枚の手抄きシートを作成した。該シートを風乾した後、ハンター白色度計によりハンター白色度(%)を測定した。測定結果を表9に示す。
【0153】
〔比較例13〜15〕
上記比較例4〜6で用いた化合物をこの順に木材パルプの漂白助剤として用いて、実施例13と同様にしてパルプの漂白を行い、過酸化水素の消費率および白色度を測定した。測定結果を表9に示す。
【0154】
【表9】
Figure 0003739483
【0155】
上記実施例13および比較例13〜15の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体(a) 〜(i) を用いた漂白助剤は、従来公知の化合物を用いた漂白助剤と比較して、白色度が優れ、しかも過酸化水素の消費率が低いため、用いる過酸化水素の量を少なくすることができ、経済的であることがわかる。
【0156】
【発明の効果】
本発明は、以上のように、一般式(1)
【0157】
【化7】
Figure 0003739483
【0158】
で表される構造単位を有する重量平均分子量300〜8,000,000の重合体に関するものである。
【0159】
また、本発明の重合体は、以上のように、カルボキシル基を2つ〜4つ有する原子団を複数有すると共に、該カルボキシル基を構成する炭素原子と主鎖を構成する炭素原子との間に他の原子が3つ以上存在するようにして、上記原子団群が該主鎖に結合しており、かつ、重合体全体に占める該原子団群の割合が5重量%以上である構成である。
【0160】
本発明の重合体は、以上のように、カルボキシル基を2つ〜4つ有する原子団を複数有すると共に、該カルボキシル基を構成する炭素原子と主鎖を構成する炭素原子との間にエステル結合が存在するようにして、上記原子団群が該主鎖に結合しており、かつ、重合体全体に占める該原子団群の割合が5重量%以上である構成である。
【0161】
上記の構成によれば、重合体は、主鎖に直接結合していないカルボキシル基を多数有する分子構造を有している。そして、該カルボキシル基は、その自由な回転が主鎖によって阻害されることがない。このため、該重合体は、水溶性を備えており、従来のキレート剤と比較して、無機粒子に対する分散作用に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、かつ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い。また、該重合体は、優れた生分解性を備えている。即ち、上記の重合体は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えているという効果を奏する。
【0162】
また、本発明の重合体は、以上のように、生分解率が40%以上、カルシウムイオン捕捉能が200mgCaCO3 /g以上、カルシウムイオン安定度定数が4.0以上、鉄イオン捕捉能が9.0以上、かつ、クレイ分散能が0.5以上である構成である。
【0163】
本発明の重合体は、以上のように、生分解率が10%以上、カルシウムイオン捕捉能が350mgCaCO3 /g以上、カルシウムイオン安定度定数が4.2以上、かつ、クレイ分散能が0.5以上である構成である。
【0164】
上記の構成によれば、重合体は、水溶性を備えており、従来のキレート剤と比較して、無機粒子に対する分散作用に優れ、重金属イオンを捕捉する能力が高く、かつ、単位重量当りの金属イオンの捕捉量が多い。また、該重合体は、優れた生分解性を備えている。即ち、上記の重合体は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えているという効果を奏する。
【0165】
本発明の重合体の製造方法は、以上のように、水性媒体を用いて、一般式(2)
【0166】
【化8】
Figure 0003739483
【0167】
で表される単量体を含む単量体成分を重合させる方法である。
【0168】
上記の方法によれば、主鎖に直接結合していないカルボキシル基を多数有する分子構造を有する重合体を容易に得ることができる。それゆえ、上記の方法によれば、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている重合体を得ることができるという効果を奏する。
【0169】
また、本発明の組成物は、以上のように、上述の重合体を含有してなる構成である。
【0170】
上記の構成によれば、組成物は、従来のキレート剤と比較して、卓越したキレート作用および分散作用を備えると共に、優れた生分解性を備えている重合体を含有している。これにより、上記組成物は、例えば、洗剤組成物、無機顔料分散剤、繊維処理剤、水処理剤(スケール防止剤)、および、木材パルプの漂白助剤等に好適に用いることができるという効果を奏する。

Claims (1)

  1. 水性媒体を用いて、一般式(2)
    Figure 0003739483
    で表される単量体を含む単量体成分を重合させることを特徴とする重合体の製造方法。
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