JPH05295033A - マレイン酸系重合体の製造方法および該重合体を含む組成物 - Google Patents

マレイン酸系重合体の製造方法および該重合体を含む組成物

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JPH05295033A
JPH05295033A JP13021092A JP13021092A JPH05295033A JP H05295033 A JPH05295033 A JP H05295033A JP 13021092 A JP13021092 A JP 13021092A JP 13021092 A JP13021092 A JP 13021092A JP H05295033 A JPH05295033 A JP H05295033A
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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
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    • C08F22/02Acids; Metal salts or ammonium salts thereof, e.g. maleic acid or itaconic acid

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 スケール防止能と腐食抑制能の両方に優れた
水処理剤、あるいは洗浄性能や繊維処理能等の機能に優
れかつ生分解性の良好な洗剤ビルダーや繊維処理剤を提
供し得るマレイン酸重合体またはその塩を製造する方法
を見出すことを目的とする。 【構成】 マレイン酸50〜100 重量%と、マレイン酸以
外の水溶性不飽和単量体50〜0重量%からなる単量体成
分を、該単量体成分に対して鉄イオン、バナジウム原子
含有イオン、銅イオンよりなる群から選ばれる1種また
は2種以上の金属イオンが前記単量体成分に対して0.5
〜500ppm存在する条件下に、重合触媒として前記単量体
成分1モルに対して過酸化水素8〜500gおよび次亜リン
酸および/または次亜リン酸塩0.01〜0.3 モルを用い、
pH2以下で水溶液重合させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、腐食防止能およびスケ
ール防止能の両性能に優れたマレイン酸系重合体または
その塩を製造し、各種熱交換器等に利用できる水処理剤
を提供するものである。また本発明は、洗剤ビルダー、
繊維処理剤として有用な生分解性に優れたマレイン酸系
重合体またはその塩の製造方法、および該重合体を含む
洗浄剤、洗剤組成物、繊維処理剤を提供するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】マレイン酸系重合体は、例えば水処理剤
および洗剤、分散剤、各種キレート剤等の分野で用いら
れている。このようなマレイン酸系重合体の製造方法に
関する公知文献としては、例えば特開昭57−168906号(U
SP4519920,同4555557)、同59−176312号(USP4589995)、
同59−210913号、同59−213714号、同60−212410号、同
62−218407号、同63−114986号、同63−235313号、同63
−236600号、特公昭56-54005号等の公報を挙げることが
できる。
【0003】しかしながら、上記の公知の方法によって
得られるマレイン酸系重合体は分子量が大き過ぎたり分
子量分布が広過ぎるために、水処理剤として用いた場
合、水中のCaイオン等のカチオンとの錯化作用でゲル
化し易いという問題があった。また腐食防止とスケール
防止の両性能が共に優れているものは皆無であった。
【0004】一方、特開昭51−19089 号、特公昭57-574
82号 (USP3919258)、同62-36042号 (USP4212788)
等公報に開示されるように、無水マレイン酸単独あるい
は無水マレイン酸と他の重合性単量体をトルエン、キシ
レン等の有機溶剤中で、過酸化ベンゾイル、アゾビスイ
ソブチロニトリル、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の
油溶性重合開始剤を用いて(共)重合させ、溶剤留去の
後、水を用いて加水分解し、酸型マレイン酸系重合体を
製造する方法が知られている。
【0005】しかしこれらの製造方法は有機溶剤中で重
合を行なうものであるために、工程が繁雑化するだけで
なく、防災面、コスト面、省資源の面から有利な方法と
は言えなかった。また上記重合方法によって得られるマ
レイン酸系重合体のポリマー末端基は、重合溶媒に起因
する芳香族炭化水素末端基や重合開始剤に起因するt−
ブチル基等の極めて疎水性の強い基で構成されるため、
水処理剤として使用した場合、被処理水中のCaイオン
やMgイオン等のアルカリ土類金属イオンと結合して不
溶性塩を生成してしまうので、スケール防止効果や腐食
防止効果が不充分になるという問題があった。
【0006】さらに、特公昭57-61309号公報にはホスフ
ィニコ置換脂肪族カルボン酸の製造法が開示されている
が、次亜リン酸(塩)の使用量が多いため、得られる生
成物はマレイン酸の二量体に近いものとなり1分子当り
のカルボキシル基が少なく、Caイオンの捕捉能、スケ
ール防止能、腐食防止能共に不充分であった。
【0007】これらの問題を解決するために、特開平2-
209908号公報には、分子量分布の狭い酸型マレイン酸系
重合体の製造方法が記載されているが、この重合体はス
ケール防止能の改善に効果を示すのみで腐食防止能は不
充分であった。また特開昭62−207888号公報には、次亜
リン酸(塩)を用いて重合させたポリカルボン酸が水系
での金属の腐食抑制剤として有効であることが開示され
ているが、水質条件の厳しい場所ではさらに強力な腐食
抑制剤が要望されているのが現状である。
【0008】またマレイン酸系共重合体は、洗浄剤、洗
剤組成物、繊維処理剤としても使用可能な水溶性の機能
性高分子である。このような水溶性高分子は固体のプラ
スチックとは異なり、使用後の回収が難しいため、大半
は下水や河川に流出すると考えられる。しかしこれらの
合成水溶性高分子はその多くが生分解性を有していない
ことが明らかになっており、次第に蓄積される上記高分
子が地球環境に与える影響が懸念されている。
【0009】このため合成水溶性高分子の主鎖中に生分
解性基を導入する方法や、易分解性である天然高分子に
官能基を導入して機能性を付与する方法等によって生分
解性を有する機能性高分子を製造する研究がなされては
いるが、まだ充分な生分解性を有する機能性高分子は見
出されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な従来技術の問題を解決するためになされたものであっ
て、優れたスケール防止および腐食防止という両性能を
具備するマレイン酸系重合体またはその塩を製造し、冷
却水系、ボイラー水系等の水処理剤として有効利用する
ことと、さらに生分解性に優れたマレイン酸系重合体
(塩)を製造し、洗剤組成物、繊維処理剤等に応用する
ことを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、マレイン酸5
0〜100重量%と、マレイン酸以外の水溶性不飽和単
量体50〜0重量%からなる単量体成分を、該単量体成
分に対して鉄イオン、バナジウム原子含有イオン、銅イ
オンよりなる群から選ばれる1種または2種以上の金属
イオンが前記単量体成分に対して0.5〜500ppm
存在する条件下に、重合触媒として前記単量体成分1モ
ルに対して過酸化水素8〜500gならびに次亜リン酸
および/または次亜リン酸塩0.01〜0.3モルを用
い、pH2以下で水溶液重合させる点に要旨を有するも
のである。また上記の製造方法によって得られたマレイ
ン酸系重合体またはその塩を含有した組成物に関するも
のである。
【0012】本発明は上記の製造法を採用することによ
り、低pHでも高重合率にマレイン酸を(共)重合させ
ることに成功したもので、得られるマレイン酸系重合体
またはその塩は、400〜5000の数平均分子量およ
びシャープな分子量分布を有し、分子鎖中に効率的にリ
ン酸基が導入されたものとなる。特に過酸化水素の使用
量が8〜50gの場合は、耐熱性に優れ、かつ高度なス
ケール防止能および腐食防止能を有する水処理剤を提供
することができ、特にボイラー用、海水淡水化用、地熱
発電用等の高温で使用される場合に優れた性能を発揮す
る。
【0013】また、過酸化水素の使用量が15〜500
gの場合は、生分解性に優れかつ高機能性を有する洗剤
ビルダーや繊維処理剤として有用なマレイン酸系重合体
(塩)を提供することができる。
【0014】
【作用】本発明において用いられる単量体成分は、マレ
イン酸(A)50〜100重量%とマレイン酸以外の水
溶性不飽和単量体成分(B)50〜0重量%から成り立
つものである。マレイン酸が50重量%より少ない場
合、分子量分布がブロードなものとなってスケールおよ
び腐食防止能が悪化してしまうため好ましくない。な
お、本発明においてはマレイン酸(A)の代わりに無水
マレイン酸も使用できるが、これは無水マレイン酸が水
との反応により極めて容易にマレイン酸となることから
当然である。
【0015】マレイン酸との共重合成分として用いられ
るマレイン酸以外の水溶性不飽和単量体(B)とは、水
に可溶でマレイン酸との共重合が可能なものであれば限
定されないが、100℃の水100gに対する溶解度が
5g以上のものが好ましく使用される。具体的には、ア
クリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、
クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体およびそ
れらの塩;フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコ
ニット酸等の不飽和多カルボン酸系単量体およびそれら
の塩;酢酸ビニル;一般式(I)
【0016】
【化3】
【0017】[ただし式中、R1,R2 およびR3 は少な
くとも1つが水素であって、残りが水素またはメチル基
を表わし、R4 は−CH2 −,−(CH2)2 −または−
C(CH3)2 −を表わし、かつR1,R2,R3 およびR4
の合計炭素数は3であり、Yは炭素数2〜3のアルキレ
ン基を表わし、nは0または1〜100の整数であ
る。]で示される不飽和アルコール系単量体、例えば3
−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノー
ル)、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノー
ル)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレ
ンアルコール)、ならびにこれら単量体1モルに対して
エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイ
ドを1〜100モル付加した単量体等;一般式(II)
【0018】
【化4】
【0019】[ただし式中、R5 は水素またはメチル基
を表わし、a,b,dおよびfはそれぞれ独立に0また
は1〜100の整数を表わし、かつa+b+d+f=0
〜100であり、−OC24 −単位と−OC36
単位とはどのような順序に結合してもよく、d+fが0
である場合にはZは水酸基、スルホン酸基および(亜)
リン酸基を表わし、またd+fが1〜100の整数であ
る場合にはZは水酸基を表わす]で示される不飽和(メ
タ)アリルエーテル系単量体、例えば3−(メタ)アリ
ロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびそれ
らの塩;
【0020】3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン
(亜)リン酸、これら単量体1モルに対してエチレンオ
キサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜1
00モル付加した単量体;グリセロールモノ(メタ)ア
リルエーテルおよびこれら単量体1モルに対してエチレ
ンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを1
〜100モル付加した単量体等の不飽和(メタ)アリル
エーテル系単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン
酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−ア
クリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホ
エチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)
アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)
アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スル
ホン酸基含有単量体およびそれらの塩;
【0021】炭素数1〜20のアルキルアルコールにエ
チレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド
を0〜100モル付加したアルコールと(メタ)アクリ
ル酸、クロトン酸等のモノエステルまたは、マレイン
酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット
酸等とのモノエステルあるいはそれらの塩、またはジエ
ステル等の末端アルキル基含有エステル系不飽和単量
体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボ
ン酸系単量体に対して、エチレンオキサイドおよび/ま
たはプロピレンオキサイドを1〜100モル付加したモ
ノエステル系単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン
酸、シトラコン酸、アコニット酸等不飽和多カルボン酸
系単量体に対してエチレンオキサイドおよび/またはプ
ロピレンオキサイドを1〜100モル付加したモノエス
テルあるいはそれらの塩、またはジエステル等のエステ
ル系不飽和単量体;等を挙げることができ、これらの1
種または2種以上を使用することができる。
【0022】本発明では、鉄イオン、バナジウム原子含
有イオンおよび銅イオンからなる群より選ばれる1種ま
たは2種以上の金属イオンまたは金属含有イオン(以下
単に金属イオンという)の存在下に重合することが重要
である。本発明者等は、マレイン酸を重合する際に、過
酸化水素の量と重合時のpHを後述の様に特定するだけ
でなく上記の金属イオンを特定量存在させることによっ
て、マレイン酸の(共)重合率が向上し、かつ分子量分
布をシャープにする効果を有することを明らかにした。
【0023】金属イオンの使用量は上記において選定さ
れた単量体成分に対して、0.5〜500ppm 、好まし
くは5〜100ppm である。使用量が0.5ppm より少
ないと、(共)重合率が向上せず生分解性も向上しない
ため好ましくなく、また金属イオンの使用量が500pp
m を超える場合は、製品の汚染、着色等の問題を引き起
こすだけでなく、得られるマレイン酸系重合体の分子量
分布がブロードとなり生分解性も低下し、水処理剤、洗
剤ビルダーや繊維処理剤としての性能が悪化するため好
ましくない。
【0024】上記金属イオンとしては、Fe3+、F
2+、V2+、V3+、VO2+、VO3 -、Cu+ 、Cu2+
好ましく使用できる。これらの中でも特にバナジウムイ
オン(VO2+) 、第2鉄イオン(Fe3+) 、第2銅イオ
ン(Cu2+) が好ましく、これらの金属イオンは1種ま
たは2種以上を使用することができる。
【0025】金属イオンの供給形態については特に制限
はなく、重合反応系内でイオン化するものであれば使用
できる。この様な金属化合物としては、例えば、オキシ
三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジ
ウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン
酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス
[(NH4)2 SO4 ・VSO4 ・6H2 O]、硫酸アン
モニウムバナダス[(NH4 )V(SO4)2 ・12H2
O]、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチル
アセテート、塩化第二銅塩化銅アンモニウム、炭酸銅、
塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸
化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、マ
レイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第1銅、シ
アン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン
酸銅、鉄アセチルアセトナート、クエン酸鉄アンモニウ
ム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニ
ウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸
鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタ
カルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶
性金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一
鉄、酸化第二鉄などの金属酸化物;硫化銅(II)、硫化
鉄などの金属硫化物;その他銅粉末、鉄粉末などを挙げ
ることができる。
【0026】さらに金属イオンの濃度調整を行なうため
に、例えば、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸、トリポリ
リン酸などの縮合リン酸系;エチレンジアミン四酢酸、
ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸などの
アミノカルボン酸系;1−ヒドロキシエチリデン−1,
1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−
トリカルボン酸などのホスホン酸系;フマル酸、リンゴ
酸、クエン酸、イタコン酸、シュウ酸、クロトン酸など
の有機酸系;ポリアクリル酸などのポリカルボン酸系等
の錯形成剤を上記金属イオンと併用することも可能であ
る。
【0027】本発明においては、重合触媒である過酸化
水素の供給によって重合反応が進行するが、その際反応
系内のマレイン酸系重合体からの脱離によると見られる
炭酸ガスの発生が認められる。この炭酸ガスの発生は過
酸化水素の投入量に比例するため、過酸化水素の投入量
を制御することによって脱炭酸量を制御することが可能
となり、マレイン酸系重合体中のカルボキシル基の量を
任意にコントロールすることができる。カルボキシル基
の量は重合体の生分解性や物性および性能を大きく変化
させるものであり、この制御によって本発明のマレイン
酸系重合体またはその塩は多種の用途に適応できるとい
う大きな利点を有する。
【0028】本発明における過酸化水素の使用量は単量
体成分(マレイン酸とマレイン酸以外の水溶性不飽和単
量体との合計量)1モルに対して8〜500g とする必
要がある。ただし、水処理剤に適用する場合には、過酸
化水素の使用量は8〜30g、より好ましくは11〜3
0gが適しており、生分解性が重要視される洗剤ビルダ
ーや繊維処理剤等に適用する場合は、過酸化水素の使用
量を15〜500g、より好ましくは30〜500gに
するとよい。
【0029】過酸化水素が8g(対単量体成分1モル)
より少ない場合は残存単量体が多くなり好ましくない。
また、過酸化水素の使用量の多い方が生分解性は向上す
るが、使用量が500gを超えても増量に見合った効果
は得られない。
【0030】過酸化水素以外の重合触媒、例えば、過硫
酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等
の過硫酸塩;2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)
塩酸塩;4,4'−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾ
ビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキ
シ−2,4 −ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物;
過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハ
ク酸、ジ第3級ブチルパーオキサイド、第3級ブチルヒ
ドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の
有機過酸化物を使用した場合は、本発明の目的とする分
子量分布が狭くかつ分子量の比較的低いマレイン酸系重
合体が得られず、また残存単量体が極めて多くなり好ま
しくない。ただし、上記開始剤を本発明の効果を損なわ
ない範囲で過酸化水素と共に使用することは可能であ
る。
【0031】過酸化水素を重合系内に供給する方法とし
ては特に制限はなく、例えば反応の初期に反応系内へ全
量を一括仕込みする方法、反応進行中に少量ずつ連続投
入を行なう方法、全量を幾つかに分割して間欠的に一括
投入する方法などが示されるが、重合反応をより円滑に
進行させるためには、少量ずつの連続投入によるのが好
ましい。
【0032】本発明において用いられる次亜リン酸
(塩)としては、次亜リン酸あるいはそのナトリウム
塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等を挙げる
ことができ、1種または2種以上を用いることができ
る。使用量としては単量体成分1モル(マレイン酸とマ
レイン酸以外の水溶性不飽和単量体との合計量)に対し
て0.01〜0.3モルが適している。次亜リン酸
(塩)の量が0.01モルより少ない場合には、得られ
る重合体の腐食防止能や生分解性が不充分となり、0.
3モルを超える場合には未反応の次亜リン酸(塩)が残
存し易く好ましくない。
【0033】次亜リン酸(塩)の添加方法には特に制限
はない。例えば重合溶媒である水に次亜リン酸(塩)を
溶かしておき所定の温度に昇温した後、単量体成分と重
合触媒を滴下してもよく、単量体成分、重合触媒と共に
水中に滴下してもよく、あるいは単量体成分中に溶解さ
せておくことも可能である。
【0034】本発明の重合はpH2以下の低pH域で行
なうことが重要である。さらに好ましいのはpH1.5
以下である[なお、本発明におけるpHは原液(80
℃)での値である]。pHが2を超えた場合、重合体の
分子量分布が広がると共に生分解性が低下するうえに、
重合率が低くなり未反応マレイン酸量および未反応次亜
リン酸量が増加して水処理剤や洗剤ビルダー、繊維処理
剤としての特性が悪化するため好ましくない。
【0035】本発明においては、酸型で重合することが
好ましいが、重合時pH2以下という条件が満足される
ならば、マレイン酸およびマレイン酸以外の水溶性不飽
和単量体はこれらの塩として併用することも可能であ
る。重合後中和用塩基性化合物を加え、任意に中和する
こともできる。中和用塩基性化合物としては、ナトリウ
ム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や
炭酸塩;アンモニア;モノメチルアミン、ジエチルアミ
ン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルア
ミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;モノエ
タノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノール
アミン、イソプロパノールアミン、第2級ブタノールア
ミン等のアルカノールアミン類;ピリジン等を挙げるこ
とができる。
【0036】ちなみに、従来技術の多くは塩型マレイン
酸を単量体原料として重合を行なっているが、これは低
いpH域ではマレイン酸の水溶液重合が進行しにくく、
重合率を上げることが困難であったためである。しかし
本発明においては、特定の金属イオンの存在と過酸化水
素の量を規定することによって、pH2以下においても
マレイン酸を高収率で重合させることができるため、単
量体を塩型に限定する必要はない。しかも、塩型マレイ
ン酸重合体よりも、酸型で重合したものの方がスケー
ル防止能及び腐食防止能がともに勝っている、水処理
剤として使用する際にスライムコントロール剤や脱酸素
剤等の有機物を配合し易い、ノニオン界面活性剤との
相溶性が良好なのでノニオン界面活性剤と組み合わせて
液体洗剤組成物とした時の安定性に優れている、という
種々の利点を有しているため、本発明においてpH2以
下で重合できるということは非常に有意義である。
【0037】本発明においては重合溶媒として水を単独
で用いることが特徴的要件として挙げられる。重合溶媒
として水単独ではなく、アルコールやケトン類等の親水
性溶媒、あるいは水とこれら親水性溶媒との混合物を用
いると、未反応単量体の残存量が著しく増大して製品純
度が低下することと、残存次亜リン酸(塩)量も大きく
増加してリン酸基を重合体中へ効率的に導入できないた
め、水処理剤としての性能や生分解性が劣ったものとな
る等の理由で好ましくない。
【0038】重合温度は特に制限がなく広い範囲で実施
可能であるが、85〜160℃の範囲が重合時間を短縮
する上で好ましい。85℃未満では重合反応の進行が阻
害されることがある。なお、重合時の固型分濃度は広い
範囲で実施可能であるが、25〜95重量%、より好ま
しくは30〜90重量%の範囲で反応させれば残存単量
体をさらに低減できる。
【0039】本発明の製造方法によれば、得られるマレ
イン酸系重合体またはその塩の数平均分子量は、通常4
00〜5000となる。分子量および分子量分布の測定
はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)
による。また分子量分布を表わすD値(MW/MN)
[MWは重量平均分子量、MNは数平均分子量である]
が2.5以下、好ましくは2.0以下の特性を備えるも
のが得られる。
【0040】本発明で得られるマレイン酸系重合体また
はその塩は、単独でもスケール防止、腐食防止に有用な
水処理剤であるが、さらにこれらの防止効果を向上させ
るために、亜鉛、モリブデン、クロム、アルミニウム、
マンガン等の多価イオンを遊離させ得る化合物を配合し
ても良い。特に亜鉛イオンを遊離させる化合物は好まし
く使用される。また、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、リ
ン酸塩等のリン含有化合物および/またはホウ酸、ホウ
酸塩、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩等のホウ
酸(塩)化合物を配合することもできる。
【0041】本発明のマレイン酸系重合体(塩)を水処
理剤に適用する場合、この水処理剤の使用量は特に限定
はされないが、一般的に水系に対して0.5〜500pp
m 程度であり、より好ましくは1〜200ppm である。
水系のpHは7〜10、カルシウム硬度は5〜1000
mg/l(CaCO3 換算)、より好ましくは10〜300
mg/l(CaCO3 換算)が適している。
【0042】本発明の水処理剤は耐熱性に優れているの
で、200〜300℃付近の使用にも耐えることができ
る。従って、冷却水系はもちろん、高温下の使用となる
ボイラー水系、地熱発電、海水淡水化プラント、ゴミ焼
却炉での廃水濃縮器、パルプ蒸解釜、各種濃縮缶等の幅
広い用途において、スケールの発生および腐食を防止す
る水処理剤として非常に有用なものである。
【0043】本発明において重合時に過酸化水素を15
〜500g使用した時に得られるマレイン酸系重合体ま
たはその塩は良好な生分解性を示す。この重合体はその
ままで洗浄剤、繊維処理剤として使用することができ、
また界面活性剤と酵素を配合して、洗剤組成物として使
用することもできる。
【0044】洗剤組成物中の上記マレイン酸系重合体
(塩)の使用量は、1〜50重量%、より好ましくは2
〜30重量%である。また界面活性剤は5〜70重量%
配合するのが好適であり、10〜30重量%の配合がよ
り好ましい。
【0045】界面活性剤としては、アニオン界面活性
剤、ノニオン界面活性剤、両性およびカチオン界面活性
剤を好ましく使用することができる。アニオン界面活性
剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル
またはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアル
ケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スル
ホ脂肪酸塩またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、
飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニル
エーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−ア
シルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニル
リン酸エステルまたはその塩等が例示される。
【0046】ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシ
アルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオ
キシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸ア
ルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加
物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂
肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイ
ド等が例示される。
【0047】両性界面活性剤としては、カルボキシ型ま
たはスルホベタイン型両性界面活性剤が例示され、カチ
オン界面活性剤としては第4アンモニウム塩等が例示さ
れる。
【0048】酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、
セルラーゼ等を使用することができ、特にアルカリ洗浄
液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ、ア
ルカリセルラーゼ等が好ましい。
【0049】この洗剤組成物には、公知のアルカリビル
ダー、キレートビルダー、再付着防止剤、蛍光剤、漂白
剤、香料等の常用成分を添加しても良い。またゼオライ
トを配合してもよい。アルカリビルダーとしては、珪酸
塩、炭酸塩、硫酸塩等を用いることができる。キレート
ビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸
塩、EDTA、DTPA、クエン酸等を必要に応じて使
用することができる。
【0050】本発明の繊維処理剤は、繊維処理における
精練、染色、漂白、ソーピング等の工程で使用すること
ができる。適用できる繊維は特に限定されないが、例え
ば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエ
ステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹
等の半合成繊維およびこれらの織物または混紡品が挙げ
られる。精練工程に適用する場合は、本発明のマレイン
酸系重合体(塩)とアルカリ剤および界面活性剤を配合
することが好ましく、漂白工程では、アルカリ剤漂白剤
の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤等
を配合するとよい。
【0051】本発明のマレイン酸系重合体またはその塩
は、特定の重合方法を採用することにより良好な生分解
性を有し、洗剤ビルダー、繊維処理剤として非常に好適
に使用され、環境への影響を大幅に削減するものであ
る。
【0052】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。なお「%」および「部」は、それぞれ「重量%」
緒よび「重量部」を示す。実施例1 温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量1リット
ルの四ツ口フラスコに無水マレイン酸 196部(マレイン
酸として 232部)、脱イオン水 140部、硫酸鉄(III) ア
ンモニウム12水和物0.0412部(Fe3+として20ppm /仕込
単量体成分全重量)を仕込んだ後、撹拌しながら該水溶
液を常圧下で沸騰温度まで昇温した。次に撹拌下で35%
過酸化水素水 110部(19.24 g/仕込単量体成分1モ
ル)および次亜リン酸ソーダ14%水溶液 136.4g(0.09
モル%/仕込単量体成分1モル)を3時間にわたって連
続的に滴下し、重合反応を完了した。
【0053】得られたマレイン酸重合体(1) の分子量お
よび分子量分布をゲルパーミエーションクロマトグラフ
ィーを用いて測定した。結果は表1に示す通りであっ
た。なお、カラムは、東ソー社製G−3000PW(XL)
+G−2500PW(XL)を用い、溶離液には、リン酸塩
緩衝液(pH7)を用いた。分子量標準サンプルとして
はポリエチレングリコール(ゼネラルサイエンス社製)
を用いた。
【0054】実施例2 実施例1と同じ原料を仕込んだ後、撹拌しながらpH調
整用の48%水酸化ナトリウム水溶液を16.7部(5モル%/
単量体成分全酸基)を加えた以外は実施例1と同様に重
合しマレイン酸重合体塩(2) を得た。実施例1と同様に
GPC分析を行ない結果を表1に示した。実施例3〜11 金属イオンの種類、使用量、過酸化水素水および次亜リ
ン酸ソーダの使用量を表1および2に示した様に変化さ
せたほかは実施例1と同様にしてマレイン酸重合体(3)
〜(11)を製造し、実施例1と同様に分析した結果を表1
および2に併記した。
【0055】実施例12 温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量1リット
ルの四ツ口フラスコに無水マレイン酸 196部(マレイン
酸として 232部)、脱イオン水 140部、硫酸鉄(III) ア
ンモニウム12水和物0.0412部(Fe3+として20ppm /仕込
単量体成分全重量)を仕込んだ後、撹拌しながら該水溶
液を常圧下で沸騰温度まで昇温した。次に撹拌下で35%
過酸化水素水 110部(19.24g/仕込単量体成分1モ
ル)、次亜リン酸ソーダ14%水溶液 170.5g(0.09モル
%/仕込単量体成分1モル)および水溶性不飽和単量体
としてアクリル酸36.1部を3時間にわたって連続的に滴
下し、重合反応を完了した。得られたマレイン酸共重合
体(12)を実施例1と同様に分析し、結果を表2に示し
た。
【0056】実施例13〜17 実施例13のアクリル酸の代わりに、表1に示した水溶
性不飽和単量体を用いたほかは実施例13と同様にして
マレイン酸共重合体(13)〜(17)を製造し、分析結果を表
2に併記した。
【0057】比較例1 実施例1における金属イオン:硫酸鉄(III) アンモニウ
ム12水和物を使用せず、そのほかは実施例1と同様にし
て比較マレイン酸重合体(1) を製造し、実施例1と同様
に分析して結果を表3に示した。比較例2〜3 実施例1における金属イオンを表3に示す様に変えたほ
かは実施例1と同様にして比較マレイン酸重合体 (2)〜
(3) を製造し、実施例1と同様に分析して結果を表3に
併記した。
【0058】比較例4〜7 実施例1における過酸化水素および次亜リン酸ソーダの
使用量を表3に示した通りに変えたほかは実施例1と同
様にして比較マレイン酸重合体 (4)〜(7) を製造し、実
施例1と同様に分析して結果を表3に併記した。比較例8 実施例2において、仕込み時に48%水酸化ナトリウム水
溶液 167部(50モル%/単量体成分全酸基)を投入した
ほかは実施例2と同様にして比較マレイン酸重合体(8)
を製造し、実施例1と同様に分析して結果を表3に示し
た。
【0059】比較例9 実施例13において、アクリル酸の使用量を表2に示す
様に変えた以外は実施例13と同様にして比較マレイン
酸重合体(9) を製造し、実施例1と同様に分析して結果
を表3に示した。比較例10 温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量1リット
ルの四ツ口フラスコに無水マレイン酸 196部(マレイン
酸として 232部)、脱イオン水 140部、硫酸鉄(III) ア
ンモニウム12水和物0.0412部(Fe3+として20ppm /仕込
単量体成分全重量)、イソプロピルアルコール 100部を
仕込んだ後、撹拌しながら該水溶液を常圧下で沸騰温度
まで昇温した。次に撹拌下で35%過酸化水素水 110部
(19.24 g/仕込単量体成分1モル)および次亜リン酸
ソーダ14%水溶液 136.4g(0.09モル%/仕込単量体成
分1モル)を3時間にわたって連続的に滴下し、重合反
応を完了した。得られた比較マレイン酸共重合体(10)を
実施例1と同様に分析し、結果を表3に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】《性能評価試験1》 (1)スケール抑制剤としての評価 (1-1)スケール抑制率 容量 225mlのガラスビンに水を 170g入れ、1.56%塩化
カルシウム2水塩水溶液10g、および各々のマレイン酸
重合体試料の0.02%水溶液3g(得られる過飽和水溶液
に対して3ppm)を混合し、さらに重炭酸ナトリウム水溶
液10gおよび水7gを加え全量を 200gとした。得られ
た炭酸カルシウム530ppmの過飽和水溶液を密栓して70℃
で8時間の加熱処理を行なった。冷却した後沈殿物を
0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液を JIS
K0101に従って分析した。
【0064】下式により炭酸カルシウムスケール抑制率
(%)を求め、表4および表5に結果を示した。 スケール抑制率(%)=(C−B)/(A−B) ただし A:試験前の液中に溶解していたカルシウム濃
度 B:スケール防止剤無添加濾液中でのカルシウム濃度 C:試験後濾液中のカルシウム濃度
【0065】(1-2)腐食抑制度 容量 500ccのSUS316製セパラブルフラスコに、下記に示
した性状の合成水(姫路市水4倍濃縮に相当)445mlを入
れた。 pH 8.3 カルシウム硬度(CaCO3換算) 220 ppm 全硬度 (CaCO3換算) 310 ppm 硫酸イオン 50 ppm 塩素イオン 120 ppm 溶解性シリカ 65 ppm この中に実施例および比較例の各々のマレイン酸重合体
を合成水に対して固形分換算で50ppm 添加し、水酸化ナ
トリウムを用いてpHを8.5 に調整した後、脱イオン水
を加えて全量を 450mlとし試験液を調整した。得られた
試験液中に25mm×40mm× 1mmの SS-41製テストピース2
枚を吊るし、試験液上に25ml/分の空気を流しながら、
60℃で60時間熱処理した。熱処理後テストピース上の腐
食生成物を除いてテストピースの減量を測定し、2枚の
テストピースの減量の平均値をMDD(mg /dm2/day) 換
算して表4に併記した。
【0066】
【表4】
【0067】実施例18 実施例1において35%化酸化水素水の量を194.3 部(34
g/仕込単量体成分1モル)とした他は実施例1と同様
に重合した。得られたマレイン酸重合体(18)の分子量お
よび分子量分布を実施例1と同様にGPCを用いて測定
した。また生分解試験は JIS K0102に準じて行ない、5
日間での生分解率を次式から求め、表5に示した。 X= 100(A−B)/(C−D) X:5日間の生分解率(%) A:マレイン酸系重合体(塩)の5日間の生物学的酸素
要求量 B:残存単量体(上記GPCで定量)の5日間の生物学
的酸素要求量 C:マレイン酸系重合体(塩)の理論的酸素要求量(元
素分析値から完全酸化に必要な酸素量を計算した) D:残存単量体の理論的酸素要求量
【0068】実施例19 実施例18と同じ原料を仕込んだ後、撹拌しながらpH
調整用の48%水酸化ナトリウム水溶液を16.7部(5モル%
/単量体成分全酸基)を加えた以外は実施例18と同様
に重合しマレイン酸重合体塩(19)を得た。実施例18と
同様にGPC分析と生分解性の評価を行ない、結果を表
5に示した。実施例20〜30 金属イオンの種類、使用量、過酸化水素水および次亜リ
ン酸ソーダの使用量を表5および6に示した様に変化さ
せた他は実施例18と同様にしてマレイン酸重合体(20)
〜(30)を製造し、実施例18と同様にGPC分析と生分
解性の評価を行ない、結果を表5および表6に示した。
【0069】実施例31 実施例12において35%化酸化水素水の量を194.3 部
(34g/仕込単量体成分1モル)とした他は実施例1と
同様に重合した。得られたマレイン酸重合体(31)を実施
例18と同様にGPC分析と生分解性の評価を行ない、
結果を表6に示した。実施例32〜36 実施例31のアクリル酸の代わりに、表1に示した水溶
性不飽和単量体を用いたほかは実施例31と同様にして
マレイン酸共重合体(32)〜(36)を製造し、実施例18と
同様にGPC分析と生分解性の評価を行ない、結果を表
6に示した。
【0070】比較例11 実施例18における金属イオン:硫酸鉄(III) アンモニ
ウム12水和物を使用せず、その他は実施例18と同様に
して比較マレイン酸重合体(11)を製造し、実施例18と
同様にGPC分析と生分解性の評価を行ない、結果を表
7に示した。比較例12〜13 実施例18における金属イオンを表7に示す様に変えた
他は実施例18と同様にして比較マレイン酸重合体(12)
〜(13)を製造し、実施例18と同様にGPC分析と生分
解性の評価を行ない、結果を表7に示した。
【0071】比較例14〜17 実施例18における過酸化水素および次亜リン酸ソーダ
の使用量を表7に示した通りに変えた他は実施例18と
同様にして比較マレイン酸重合体(14)〜(17)を製造し、
実施例18と同様にGPC分析と生分解性の評価を行な
い、結果を表7に示した。比較例18 実施例19において、仕込み時に48%水酸化ナトリウム
水溶液 167部(50モル%/単量体成分全酸基)を投入し
た他は実施例19と同様にして比較マレイン酸重合体(1
8)を製造し、実施例18と同様にGPC分析と生分解性
の評価を行ない、結果を表7に示した。比較例19 実施例31において、アクリル酸の使用量を表7に示す
様に変えた以外は実施例31と同様にして比較マレイン
酸重合体(19)を製造し、実施例18と同様にGPC分析
と生分解性の評価を行ない、結果を表7に示した。
【0072】比較例20 温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量1リット
ルの四ツ口フラスコに無水マレイン酸 196部(マレイン
酸として 232部)、脱イオン水 140部、硫酸鉄(III) ア
ンモニウム12水和物0.0412部(Fe3+として20ppm /仕込
単量体成分全重量)、イソプロピルアルコール 100部を
仕込んだ後、撹拌しながら該水溶液を常圧下で沸騰温度
まで昇温した。次に撹拌下で35%過酸化水素水194.3 部
(34g/仕込単量体成分1モル)および次亜リン酸ソー
ダ14%水溶液 136.4g(0.09モル%/仕込単量体成分1
モル)を3時間にわたって連続的に滴下し、重合反応を
完了した。得られた比較マレイン酸共重合体(20)を実施
例18と同様にGPC分析と生分解性の評価を行ない、
結果を表7に示した。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】《性能評価試験2》実施例18〜36およ
び比較例11〜20で得られた各々のマレイン酸重合体
において、洗剤としての性能および繊維処理剤としての
性能を評価するため、以下の試験を行なった。 (2)洗剤組成物としての評価 (2-1)洗浄率 下記の組成の人工汚垢を四塩化炭素中に分散して作った
液を、綿の白布に通して乾燥させ10cm×10cmの汚染布を
作成した。 〈人工汚垢組成〉 粘土 49.75 % カーボンブラック 0.5 % ミリスチン酸 8.3 % オレイン酸 8.3 % トリステアリン酸 8.3 % トリオレイン 8.3 % コレステリン 4.38 % コレステリンステアレート 1.09 % パラフィンロウ 0.552% スクワレン 0.552%
【0077】上記汚染布を下記の洗剤組成物中、20℃の
水道水中、浴比 1:60、洗剤濃度 0.5%の条件で10分間
洗濯を行なった。 〈洗剤組成物組成〉 LAS 20 % (直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩:C11.5) ポリオキシエチレン 15 % アルキルエーテル(C12:エチレンオキサイド部=8) ゼオライト 20 % 酵素(プロテアーゼ) 0.5% マレイン酸系重合体 20 % 炭酸ナトリウム 15 % 珪酸ナトリウム(1号) 9.5% 洗濯後、布を乾燥させ、反射率を測定した。下式から洗
浄率を求め、表8に結果を示した。 洗浄率=(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(白布
の反射率−洗浄前の反射率)
【0078】《性能評価試験3》 (3) 繊維処理剤としての評価 (3-1) 染色性向上能と染料分散性(染色助剤としての評
価) 木綿ツイル織物を次の条件で染色した。染色向上剤とし
て各マレイン酸系重合体を水1リットルに1gの割合で
用いた。 〈染色条件〉 使用水の硬度 30°DH(ドイツ硬度) 染料(Kayaras Supra Blue 4BL) 1 重量% (日本化薬社製の金属含有型直接染料) 硫酸ナトリウム 10 重量% 浴比 1:30 温度 95℃ 時間 30分
【0079】染色後の布をスガ試験機社製SMカラーコ
ンピューター SM-3 型により側色し、Hue値(マンセ
ル色相環上の値)を求めた。Hue値のPBとはPurple
とBlueの間の青紫の意味で、値の小さい方が青に近い青
紫であり染色性が優れていることを示している。また部
分的な色むらを肉眼で目視観察した。さらに、上記使用
した水、染料(0.1%)、マレイン酸系重合体(0.1%)の
混合液を300g作成し、24時間放置後に東洋ろ紙社製5
Cろ紙を用いてろ過し、ろ過残渣なしを○、ろ過残渣若
干ありを△、ろ過残渣の多いものを×として染料分散性
を評価した。結果を表8に併記した。
【0080】(3-2) 漂白性能と縫製性能(漂白助剤とし
ての評価) 精練した綿天竺編ニットを次の条件で漂白した。漂白助
剤としてマレイン酸系重合体を水1リットルに1gの割
合で用いた。 〈染色条件〉 使用水の硬度 35°DH(ドイツ硬度) 浴比 1:25 温度 85℃ 時間 30分 使用薬剤 過酸化水素 10g/l 水酸化ナトリウム 2g/l 珪酸ナトリウム(3号) 5g/l
【0081】漂白後の布の風合いは官能検査法により決
定し、ソフトな風合いのものを○、ややハードな風合い
のものを△、かなりハードなものを×とした。また、白
色度はスガ試験機社製SMカラーコンピューター SM-3
型により側色し、Lab系の白色度式によって白色度W
を求めた。 W=100−[(100−L)2 +a2 +b21/2 ただし、L=測定された明度 a=測定されたクロマチックネス指数 b=測定されたクロマチックネス指数 さらに、漂白後の布を4枚重ねとし本縫ミシンで針#11
Sを用いて30cm空縫いした場合の地糸切れ箇所の数を調
べた。結果を表8に併記した。
【0082】
【表8】
【0083】
【発明の効果】本発明は以上のような製造方法を採用す
ることにより、低pHでも高重合率にマレイン酸を
(共)重合させることに成功したもので、得られるマレ
イン酸系重合体またはその塩は、400〜5000の数
平均分子量およびシャープな分子量分布を有し、分子鎖
中に効率的にリン酸基が導入されたものとなる。このた
め水処理剤に適用する場合には、耐熱性に優れ、かつ高
度なスケールおよび腐食防止能を有するので、特にボイ
ラー用、海水淡水化用、地熱発電用等の高温で使用され
る場合に優れた性能を発揮するものである。また、触媒
の過酸化水素を多く使用することによって、上記に挙げ
た特徴に加え、高酸化度なマレイン酸系重合体(塩)が
得られた。このため生分解性に優れ、かつ各性能に優れ
た洗浄剤、洗剤組成物や繊維処理剤を提供することが可
能となった。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マレイン酸50〜100重量%と、マレ
    イン酸以外の水溶性不飽和単量体50〜0重量%からな
    る単量体成分を、該単量体成分に対して鉄イオン、バナ
    ジウム原子含有イオン、銅イオンよりなる群から選ばれ
    る1種または2種以上の金属イオンが前記単量体成分に
    対して0.5〜500ppm存在する条件下に、重合触
    媒として前記単量体成分1モルに対して過酸化水素8〜
    500gならびに次亜リン酸および/または次亜リン酸
    塩0.01〜0.3モルを用い、pH2以下で水溶液重
    合させることを特徴とするマレイン酸系重合体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 マレイン酸以外の水溶性不飽和単量体
    が、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和多カルボン
    酸系単量体、一般式(I) 【化1】 [ただし式中、R1,R2 およびR3 は少なくとも1つが
    水素であって、残りが水素またはメチル基を表わし、R
    4 は−CH2 −,−(CH2)2 −または−C(CH3)2
    −を表わし、かつR1,R2,R3 およびR4 の合計炭素数
    は3であり、Yは炭素数2〜3のアルキレン基を表わ
    し、nは0または1〜100の整数である。]で示され
    る不飽和アルコール系単量体、一般式(II) 【化2】 [ただし式中、R5 は水素またはメチル基を表わし、
    a,b,dおよびfはそれぞれ独立に0または1〜10
    0の整数を表わし、かつa+b+d+f=0〜100で
    あり、−OC24 −単位と−OC36 −単位とはど
    のような順序に結合してもよく、d+fが0である場合
    にはZは水酸基、スルホン酸基および(亜)リン酸基を
    表わし、またd+fが1〜100の整数である場合には
    Zは水酸基を表わす。]で示される不飽和(メタ)アリ
    ルエーテル系単量体からなる群から選択される1種また
    は2種以上のものである請求項1に記載のマレイン酸系
    重合体の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1〜2のいずれかに記載の方法に
    よって、マレイン酸系重合体の数平均分子量を400〜
    5000、D値(重量平均分子量/数平均分子量)を
    2.5以下とするマレイン酸系重合体の製造方法。
  4. 【請求項4】 過酸化水素を8〜30g使用する請求項
    1〜3に記載のマレイン酸系重合体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の方法によって得られる
    マレイン酸系重合体を含有する水処理剤。
  6. 【請求項6】 過酸化水素を15〜500g使用する請
    求項1〜3に記載の方法によって、マレイン酸系重合体
    の28日間の生分解率を30%以上とする生分解性の改
    良されたマレイン酸系重合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の方法によって得られる
    マレイン酸系重合体を含有する洗浄剤。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の方法によって得られる
    マレイン酸系重合体と界面活性剤および酵素を含有する
    洗剤組成物。
  9. 【請求項9】 請求項6に記載の方法によって得られる
    マレイン酸系重合体またはその塩を含有する繊維処理
    剤。
JP13021092A 1992-04-22 1992-04-22 マレイン酸系重合体の製造方法および該重合体を含む組成物 Expired - Fee Related JP3295965B2 (ja)

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