JP3812755B2 - 偏光板用接着剤および偏光板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板用接着剤に係わり、特にポリビニルアルコール系偏光フィルムの両面に、酢酸セルロース系フィルムを接着剤層を介して積層してなる偏光板において、該接着剤として好適に使用される偏光板用接着剤およびそれを使用した偏光板に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、各種表示器機等に液晶表示装置が用いられ、これに伴い偏光板の需要も増大している。また、市場の多様化により、特に計器類においては過酷な条件下で使用される場合が多く、耐熱性、耐湿性等の耐久性および高偏光度の偏光板が要求されている。
上記偏光板の代表的なものの一つに、一軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や二色性染料を吸着固定させたものがある。このポリビニルアルコール系フィルムは、薄く強度も弱いため、両面を光学的特性のよい酢酸セルロース系フィルムで保護されているが、ポリビニルアルコール系フィルム自体の耐湿性が劣ることに加え、保護フィルムとしての酢酸セルロース系フィルムの透湿性が高いため、十分な保護機能が得られていない。
かかる偏光板のフィルム相互の接着剤として、従来からポリビニルアルコール系接着剤が知られているが、耐水性が不十分であり、上記保護フィルムの高透湿性により、特に高温高湿下において各フィルムの層間剥離が発生し易いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、偏光板用接着剤として耐水性、耐湿熱性に優れたポリビニルアルコール系接着剤およびこれを用いた偏光板を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、金属アルコキシド化合物の加水分解、縮重合反応によってポリビニルアルコール樹脂の架橋による耐水化を行うことによって、耐水性、耐湿熱性の良好な偏光板用接着剤が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、ポリビニルアルコール樹脂に、β−ジケトン、β−ジケトエステルおよび2価アルコールの群から選ばれる少なくとも一つのキレート剤で修飾された金属アルコキシド化合物を配合してなり、金属アルコキシド化合物の配合量は、ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して1〜20重量部である偏光板用接着剤に係わり金属アルコキシド化合物としては、チタニウムあるいはジルコニウムのアルコキシド化合物が好適である。
この偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムの両面に、酢酸セルロース系フィルムを介して積層して偏光板とするための接着剤として、特に好適なものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるポリビニルアルコール樹脂としては、水溶性のものであればよく、通常のポリビニルアルコール(PVA)使用しうる。これらのPVA樹脂の重合度は特に制限はないが、通常100〜5000の範囲から選ばれ、就中500〜3500が好ましい。ケン化度としては、水溶性の範囲であれば特に制限はないが、通常70〜100モル%の範囲から選ばれ、90〜100モル%が好ましい。
【0006】
本発明に使用される金属アルコキシド化合物としては、一般式;R1 nM(OR2 )m−n(式中、R1 、R2 はアルキル基、Mは金属、mは金属Mの原子価、nは0≦n≦m−1となる整数である)で表される各種金属のアルコキシドであるが、官能基として2つ以上のメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基を持つものであればよく、且つ水溶性のものが好ましい。上記金属Mとしてはアルミニウム、銅、ホウ素、チタニウム、錫、ジルコニウムが用いられるが、就中、チタニウム或いはジルコニウム系が好ましい。
これらの金属アルコキシド化合物の例としては、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド等のチタニウムアルコキシド、およびジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド等のジルコニウムアルコキシドを挙げることができる。
【0007】
金属アルコキシド化合物の配合量は、ポリビニルアルコール樹脂の重合度、ケン化度にもよるが、ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましい。配合量が0.1重量部以下では耐水性が発現せず、20重量部以上では配合系が増粘し、ゲル化する。
また、金属アルコキシド化合物をキレート修飾するためのキレート剤としては、一般式;R1 −COCH2 CO−R2 (R1 、R2 はアルキル基もしくはアリール基)で表されるアセチルアセトン、ベンゾイルアセトンのようなβ−ケトン、R3 −COCH2 COO−R4 (R3 、R4 はアルキル基)で表されるメチルアセトアセテート、エチルアセトアセテートのようなβ−ジケトエステル、およびエチレングリコール、プロピレングリコールのような2価アルコール等が挙げられる。
一般に金属アルコキシド化合物は水との反応性が高いが、キレート剤で修飾することにより、水との反応を抑制することができ、接着剤として使用する際の加熱により、キレート剤は解離するよう作用する。
【0008】
キレート剤の金属アルコキシド化合物への添加比率は、金属アルコキシド化合物1モルに対して0.5〜20モル、就中1〜10モルが好ましい。添加比率が0.5モル以下では、キレート修飾の効果が少なく、水との反応の抑制が不十分であり、また20モル以上では溶媒として残存し、接着時に除去し難くなる。
金属アルコキシド化合物或いはキレート修飾された金属アルコキシド化合物を加水分解、縮重合させる際には、無機または有機の酸や塩基を加えてもよい。かかる無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸等、有機酸としては酢酸、蓚酸等が用いられる。塩基としてはアンモニア、有機のアミノ化合物等が用いられる。
さらに、上記の金属アルコキシド化合物の配合時に、分子末端にアミノ基、グリシジル基、ヒドロキシル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。また、必要に応じて各種の消泡剤、防腐剤、防黴剤、凍結防止剤、粘度安定剤、着色顔料等も任意に添加することができる。
【0009】
【発明の効果】
本発明は、ポリビニルアルコール樹脂を金属アルコキシド化合物の加水分解、縮重合反応により架橋することによって、耐水性や耐湿熱性の良好な偏光板用接着剤が得られ、また金属アルコキシド化合物をキレート剤で修飾することによって、水との反応を抑制することができ、接着剤として反応性の制御が可能である。この接着剤は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムの両面に酢酸セルロース系フィルムを積層するための偏光板用接着剤として、特に好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例および比較例において、部とあるのは重量部を意味する。また耐水性試験および接着性試験は次の方法により評価したものである。
〔耐水性試験〕
各接着剤溶液を80℃で硬化させ、次に60℃の熱水に2時間浸漬後の固形分残渣量により耐水性を評価した。評価の判定基準は、初期に対する残渣の割合を表1に示した。
〔接着性試験〕
各接着剤溶液を用い、ポリビニルアルコール系偏光フィルム(厚さ約30μm)の両面に、三酢酸セルロースフィルム(厚さ約80μm)を貼り合わせ、80℃で接着剤溶液を硬化させて、寸法50mm×150mmの偏光板を作製した。
この偏光板を60℃、湿度95%の雰囲気に500時間放置した後の外観および接着性を観察した結果を表2に示した。外観の項は、発泡および変色の有無を示し、接着性の項は、偏光フィルムとセルロースフィルムとの間の剥離状態を、目視により観察した結果を、次の評価基準で示した。
○;セルロースフィルムの浮き上がり部分が周辺端部から1mm以下
△;セルロースフィルムの浮き上がり部分が周辺端部から1〜5mmの範囲
×;セルロースフィルムの浮き上がり部分が周辺端部から5mm以上
【0011】
実施例1
溶解槽内に、ポリビニルアルコール樹脂(重合度1700、ケン化度98.5%)100部を所定量(1900部)の水に溶解して、PVA水溶液とした。この水溶液を攪拌しながら、チタンテトラプロポキシド/アセチルアセトン混合液3部(前者/後者=1/2モル比)を滴下し、室温において1時間混合して接着剤溶液を調整した。
この接着剤溶液の耐水性試験および接着性試験の結果を、表1および表2に示した。
【0012】
実施例2
実施例1と同様のポリビニルアルコール樹脂100部を含むPVA水溶液を用い、チタンテトラプロポキシド/アセチルアセトン混合液に代えて、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド/アセチルアセトン混合液3部(前者/後者=1/2モル比)を用いる以外は、実施例と同様の操作により接着剤溶液を調整した。
この接着剤溶液の耐水性試験および接着性試験の結果を、表1および表2に示した。
【0013】
実施例3
実施例1と同様のポリビニルアルコール樹脂に代えて、ポリビニルアルコール樹脂(重合度3500、ケン化度99.7%)を使用する以外は、実施例1と同様にして接着剤溶液を調整した。
この接着剤溶液の耐水性試験および接着性試験の結果を、表1および表2に示した。
【0014】
比較例1
実施例1で使用したPVA水溶液を、接着剤溶液として使用した。
この接着剤溶液の耐水性試験および接着性試験の結果を、表1および表2に示した。
【表1】
Figure 0003812755
【表2】
Figure 0003812755

Claims (3)

  1. ポリビニルアルコール樹脂に、β−ジケトン、β−ジケトエステルおよび2価アルコールの群から選ばれる少なくとも一つのキレート剤で修飾された金属アルコキシド化合物を配合してなり、金属アルコキシド化合物の配合量は、ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して1〜20重量部である偏光板用接着剤。
  2. 金属アルコキシド化合物が、チタニウムあるいはジルコニウムのアルコキシド化合物である請求項1記載の偏光板用接着剤。
  3. ポリビニルアルコール系偏光フィルムの両面に、酢酸セルロース系フィルムを接着剤層を介して積層してなる偏光板において、該接着剤として請求項1または2記載の偏光板用接着剤が使用されている偏光板。
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