JP3812081B2 - 車両用空気調和装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車室内の前席側の第1空調ゾーンと後席側の第2空調ゾーンとの温度調節を互いに独立して行うことが可能な車両用空気調和装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の車室内の後席側の空調ゾーンの快適性を重視するという要望が強く、車室内の前席側の第1空調ゾーンと車室内の後席側の第2空調ゾーンとを独立して温度調節するために、前席側と後席側とにそれぞれ別個の空調ユニットを配設することで、一年を通じて前席側と後席側とを自由自在に温度調節するようにした車両用空気調和装置が提案されている。このような車両用空気調和装置の中で、前席側の吹出口モードに応じて第2空調ユニットから吹き出される空調風の吹出温度に補正を加えるものがある。この従来の技術は、前席側の吹出口モードがフェイスモードの時、最も多く後席側の吹出温度に補正を加えるようにしているので、大変有効である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の技術において、前席側フェイス吹出口から第2空調ゾーン内に温度到達率の良い車両では、前席側フェイス吹出口から吹き出される空調風の吹出範囲(風速分布)が一定であると、前席側フェイス吹出口から吹き出された空調風(主に冷風)が直接後席側の乗員の頭胸部に当たってしまう。したがって、このような車両においては、前席側フェイス吹出口から吹き出された空調風の影響が第2空調ゾーン内の乗員に出てしまうので、車室内の前席側と後席側との温度調節を独立して行うことができなくなるという問題が生じている。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、第1空調ユニットの第1吹出口から吹き出された空調風の影響が第2空調ゾーン内の乗員に出難くすることのできる車両用空気調和装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、第1空調ユニット内で温度調節された空調風が第1吹出口から車室内の一方側の第1空調ゾーン内の乗員に向けて吹き出されることにより、第1空調ゾーン内が空調される。また、第1空調ユニット内で温度調節された空調風が第2吹出口から車室内の他方側の第2空調ゾーン内の乗員に向けて吹き出されることにより、第2空調ゾーン内が空調される。
【0006】
このとき、第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と第2温度設定手段にて設定された第2設定温度とが異なる場合には、吹出範囲可変手段を制御することにより、第1吹出口から吹き出される空調風の吹出範囲が拡散吹出側に可変する。それによって、第1吹出口から第1空調ゾーン内に略全体的に空調風が吹き出されるので、第1吹出口からの空調風の影響が第2空調ゾーン内の乗員に出るのを抑えることができる。この結果、車室内の一方側の第1空調ゾーンと他方側の第2空調ゾーンとの温度調節を独立して行うことができ、第1、第2空調ゾーン毎の温度独立コントロール性を確保することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、第1吹出口から吹き出される空調風の吹出範囲を第1、第2設定温度の温度差に応じて変更する前に、第1吹出口から吹き出される空調風の吹出範囲を、第1目標吹出温度決定手段にて決定された第1目標吹出温度または日射量検出手段にて検出した日射量のうちの何れか一方の値によって決定することにより、第1空調ゾーン内の温度環境状態に応じた空調風の吹出範囲を選択できるので、第1空調ゾーン内の乗員の空調感を向上することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と第2温度設定手段にて設定された第2設定温度との温度差が大きくなればなる程、吹出範囲可変手段を制御することにより、第1吹出口から吹き出される空調風の吹出範囲が連続的または段階的に広くなる。それによって、第1空調ゾーン内の乗員が略局所的に空調風を得たい時のその乗員の空調感の低下を抑えることができる。
【0009】
そして、請求項4に記載の発明によれば、第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と第2温度設定手段にて設定された第2設定温度との温度差が大きくなればなる程、吹出方向揺動手段を制御することにより、吹出方向変更手段の揺動角度が大きくなる。それによって、請求項3に記載の発明と同様な効果を達成できる。また、請求項5に記載の発明によれば、第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と第2温度設定手段にて設定された第2設定温度との温度差が大きくなればなる程、開口面積変更手段を制御することにより、第1吹出口の開口面積が大きくなる。それによって、請求項3に記載の発明と同様な効果を達成できる。さらに、請求項6に記載の発明によれば、第1内気温度検出手段にて検出した第1内気温度と第1温度設定手段にて設定された第1設定温度との温度差が所定値以上の時には、吹出範囲可変手段による吹出範囲の補正(請求項1に記載の「第1吹出口からの空調風の吹出範囲を拡散吹出側に可変するように吹出範囲可変手段を制御する空調制御」)を行わないことにより、請求項1に記載の「第1、第2空調ゾーン毎の温度独立コントロール性」よりも「第1空調ゾーン内の乗員の快適性を優先する。
【0010】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態の構成〕
図1ないし図17は本発明の第1実施形態を示したもので、図1(a)は第1空調ユニットからの空調風の吹出範囲を集中吹出に切り替えた状態を示した図で、図1(b)は第1空調ユニットからの空調風の吹出範囲を拡散吹出に切り替えた状態を示した図で、図2は車両用空気調和装置の全体構成を示した図で、図3は車両用空気調和装置を搭載した車両の車室内を示した図である。
【0011】
本実施形態の車両用空気調和装置は、主として車両100の前部座席側の乗員(運転席の乗員および助手席の乗員:第1の乗員)を空調するための第1空調ゾーンを温度調節する第1空調ユニット1と、主として車両100の中間座席側、後部座席側の乗員(第2の乗員、第3の乗員)を空調するための第2空調ゾーンを温度調節する第2空調ユニット2と、第1、第2空調ユニット1、2の空調機能部品を制御する空調制御装置(以下エアコンECUと言う)6とを備える。なお、本実施形態の車両100は、RV車(レジャー用車)で、前部座席(フロントシート:以下前席と略す)101、中間座席(セカンドシート:以下中席と略す)102および後部座席(サードシート:以下後席と略す)103を備えている。
【0012】
第1空調ユニット1は、車両100の車室内の最前方に配置されており、車室内に空気を導くための第1空調ダクト10を有している。この第1空調ダクト10の空気最上流側には、車室内に開口した内気導入口10aと、車室外と連通した外気導入口10bと、これらの内気導入口10aと外気導入口10bとの開口状態(所謂内外気モード)を切り替える内外気切替ドア11が設けられている。そして、この内外気切替ドア11は、駆動手段としてのサーボモータ11aによって駆動される。これによって、第1空調ユニット1は、第1空調ダクト10内に取り入れられる空気が内気100%である内気循環モードと、外気100%である外気導入モードが切替可能となっている。
【0013】
第2空調ユニット2は、車両100の車室内の最後方に配置されており、車室内に空気を導くための第2空調ダクト20を有している。この第2空調ダクト20の空気最上流側には、車室内に開口した内気導入口20aが設けられており、上述の第1空調ダクト10とは異なり第2空調ダクト20内に取り込まれる空気は内気のみとなり、常に内気循環モードとなる。ここで、上述の第1空調ユニット1が、外気導入モードである場合は、図3に示したように、第1空調ダクト10から空調風が吹き出されると、この空調風の吹出に伴って、例えば車室内最後方に位置するリヤパッケージトレー(図示せず)で開口し、車室外と連通した排出孔20bから車室内の空気が排出されることになる。
【0014】
そして、第1、第2空調ダクト10、20との内部にて、それぞれ通過する空気を温度調節するのであるが内部構成はほぼ同様であるため一緒に説明する。第1、第2空調ダクト10、20の内気導入口10a、20aの空気下流側部位には、各第1、第2空調ダクト10、20内に空気流を発生させる空気流発生手段である第1、第2送風機12、22が配設されている。これらの第1、第2送風機12、22は、それぞれ駆動手段としての電動モータ12a、22aにて駆動される。
【0015】
そして、第1、第2空調ダクト10、20内の、第1、第2送風機12、22の空気下流側には、通過する空気を冷却する空気冷却手段としての第1、第2エバポレータ(冷媒蒸発器)13、23が各空気通路全体を塞ぐように配設されている。これらの第1、第2エバポレータ13、23は、車両100に搭載された冷凍サイクル(図示せず)の一構成部品である。
【0016】
この冷凍サイクルは、車両100に搭載されたエンジンの回転動力を受けて冷媒を高温高圧のガス冷媒とするコンプレッサ(冷媒圧縮機)と、このコンプレッサより吐出されたガス冷媒を凝縮液化させるコンデンサ(冷媒凝縮器)と、このコンデンサより流入した液冷媒を減圧膨張する第1、第2膨張弁(減圧手段)と、この膨張弁より流入した冷媒を蒸発気化させる上述の第1、第2エバポレータ13、23とからなる周知の構成である。
【0017】
なお、本実施形態の冷凍サイクルは、コンデンサと膨張弁との間に、並列に第1、第2エバポレータ13、23が接続されており、各第1、第2エバポレータ13、23の冷媒上流側には、それぞれの冷媒の流れを断続する第1、第2電磁弁(図示せず)が設けられており、これらの第1、第2電磁弁の開閉状態によって第1、第2エバポレータ13、23に冷媒が供給されるか否かが決定される。第1、第2エバポレータ13、23と第1、第2電磁弁との間には、上述の第1、第2膨張弁が接続されている。
【0018】
そして、第1、第2空調ダクト10、20内の、第1、第2エバポレータ13、23の空気下流側には、車室内に吹き出される空気の吹出温度を調節する第1、第2温度調節手段が配設されている。第1、第2温度調節手段は、空気加熱手段である第1、第2ヒータコア14、24と、第1、第2ヒータコア14、24を通過する空気量と第1、第2ヒータコア14、24を迂回する空気量との風量割合を調節することで第1、第2エバポレータ13、23を通過した空気の加熱量を調節する加熱量調節手段である第1、第2エアミックスドア15、25とから構成されている。第1、第2ヒータコア14、24は、エンジンの冷却水を熱源とし、冷却水温度に応じた加熱能力を得ることができる。また、第1、第2エアミックスドア15、25は、それぞれ駆動手段としてのサーボモータ15a、25aによって駆動される。
【0019】
次に、第1、第2空調ダクト10、20の空気最下流側には、上述の空調機能部品によって温度調節された空調風を車室内に吹き出すための吹出口が設けられている。この吹出口は、第1空調ユニット1と第2空調ユニット2とでその形成位置が異なることから2つに分けて説明する。
【0020】
先ず、第1空調ダクト10の空気最下流側には、車室内の最前方のインストルメントパネル104内で、車室内の異なる位置に向かって空調風を吹き出すための前席側吹出口が配設されている。具体的には、車両100の前席側の乗員の上半身(頭胸部)に向かって空調風(主に冷風)を吹き出すための4個の前席側フェイス(FACE)吹出口16と、車両100のフロントウインドガラスの内面に向かって空調風(主に温風)を吹き出すためのデフロスタ(DEF)吹出口17と、車両100の前席側の乗員の下半身(足元部)に向かって空調風(主に温風)を吹き出すための2個の前席側フット(FOOT)吹出口18とが前席側吹出口の一例として挙げられる。
【0021】
なお、4個の前席側FACE吹出口16は、本発明の第1吹出口に相当するもので、インストルメントパネル104の車両幅方向の中央部で開口した運転席側、助手席側センタFACE吹出口と、車両幅方向の最も両端側に配置された運転席側、助手席側サイドFACE吹出口とからなる。これらのうち4個の前席側FACE吹出口16および2個の前席側FOOT吹出口18は、第1吹出口開閉手段として第1吹出口切替ドア19によって、その開口状態(所謂吹出口モード)が調節される。そして、この第1吹出口切替ドア19は、駆動手段としてのサーボモータ19aによって駆動される。
【0022】
これによって、第1空調ユニット1は、4個の前席側FACE吹出口16のみを開口させるフェイス(FACE)モード、2個の前席側FOOT吹出口18のみを開口させるフット(FOOT)モード、および4個の前席側FACE吹出口16と2個の前席側FOOT吹出口18の両方を開口させるバイレベル(B/L)モード等の吹出口モードが切替可能となる。
【0023】
次に、4個の前席側FACE吹出口16に設置されるスイングルーバ装置を図1、図2、図5ないし図7に基づいて説明する。ここで、図5はスイングルーバ装置の全体構成を示した図である。
【0024】
スイングルーバ装置は、本発明の吹出範囲可変手段に相当するもので、4個のフロントフェイス(FrFACE)グリル30内にそれぞれ設けられている。なお、4個のFrFACEグリル30内に形成される空気通路は、それぞれ上述の4個の前席側FACE吹出口16として利用される。そして、4個のFrFACEグリル30内には、左右方向揺動機構(図6参照)および上下方向揺動機構(図7参照)がそれぞれ設けられている。
【0025】
各左右方向揺動機構は、4個のFrFACEグリル30内において車両100の進行方向に対して左右方向に複数列設されたルーバフィン31と、このルーバフィン31を、支点を中心にして左右方向(水平方向)に所定の揺動範囲(スイング範囲)にて揺動運動(スイング)させるリンクレバー32と、アームプレート33を介してリンクレバー32を左右方向に往復運動させる吹出方向揺動手段(アクチュエータ)としてのルーバモータ31aとから構成されている。なお、複数のルーバフィン31は、本発明の吹出方向変更手段に相当するもので、4個の前席側FACE吹出口16から吹き出される空調風の吹出方向をそれぞれ左右方向に変更する。
【0026】
各上下方向揺動機構は、4個のFrFACEグリル30内において車両100の進行方向に対して上下方向に複数列設されたルーバフィン34と、このルーバフィン34を、支点を中心にして上下方向に所定の揺動範囲(スイング範囲)にて揺動運動(スイング)させるリンクレバー35と、アームプレート36を介してリンクレバー35を上下方向に往復運動させる吹出方向揺動手段(アクチュエータ)としてのルーバモータ34aとから構成されている。なお、複数のルーバフィン34は、本発明の吹出方向変更手段に相当するもので、4個の前席側FACE吹出口16から吹き出される空調風の吹出方向を上下方向に変更する。
【0027】
一方、第2空調ダクト20の空気最下流側には、第2吹出口として、車両100の中席側の乗員の上半身(頭胸部)に向かって空調風(主に冷風)を吹き出すための2個の中席側フェイス(FACE)吹出口26と、車両100の後席側の乗員の上半身(頭胸部)に向かって空調風(主に冷風)を吹き出すための4個の後席側フェイス(FACE)吹出口27と、車両100の中席側、後席側の乗員の下半身(足元部)に向かって空調風(主に温風)を吹き出すための4個の中席側、後席側フット(FOOT)吹出口28とが配設されている。
【0028】
4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27は、例えば車両100の中席102および後席103に対応した後席側の天井部の、後席側の車両幅方向の両側に設けられている。また、4個の中席側、後席側FOOT吹出口28は、例えば車両100の中席102の下部で、車両100のフロア近傍で開口するように設けられており、上述の中席側、後席側FACE吹出口26、27と同様に車両幅方向の両側に設けられている。
【0029】
これらの中席側、後席側FACE吹出口26、27および中席側、後席側FOOT吹出口28は、第2吹出口開閉手段として第2吹出口切替ドア29によって、その開口状態(所謂吹出口モード)が調節される。そして、この第2吹出口切替ドア29は、駆動手段としてのサーボモータ29aによって駆動される。これによって、第2空調ユニット2は、4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27のみを開口させるフェイス(FACE)モード、4個の中席側、後席側FOOT吹出口28のみを開口させるフット(FOOT)モード、および4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27と4個の中席側、後席側FOOT吹出口28の両方を開口させるバイレベル(B/L)モード等の吹出口モードが切替可能となる。
【0030】
次に、エアコンECU6を図1、図2、図5ないし図7に基づいて説明する。
エアコンECU6は、本発明の空調制御手段に相当するもので、内部にCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータが設けられ、各センサからのセンサ信号が図示しない入力回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。そして、エアコンECU6は、車両100のイングニッションスイッチ(図示せず)またはアクセサリースイッチ(図示せず)がONされることにより、車両100に搭載されたバッテリから給電され、演算処理が可能となる。
【0031】
エアコンECU6の入力端子には、第1空調ユニット1および第2空調ユニット2の空調制御に必要であり、第1空調ゾーンおよび第2空調ゾーンの空調状態に影響を及ぼす空調環境因子を検出する各種センサが電気的に接続されている。具体的には、車室外の空気温度(以下外気温度と言う)を検出する外気温度センサ61と、エンジンの冷却水の温度(以下冷却水温度と言う)を検出する冷却水温度センサ62と、主として第1空調ゾーン内に進入する日射量を検出する日射センサ63と、第1、第2空調ゾーン内の空気温度(以下第1、第2内気温度と言う)を検出する第1、第2内気温度センサ64、65とが電気的に接続されている。
【0032】
そして、第1、第2エバポレータ13、23を通過した直後の空気温度(以下第1、第2エバ後温度と言う)を検出する第1、第2エバ後温度センサ66、67と、4個の前席側FACE吹出口16から吹き出される空調風の吹出方向を検出する4個の左右方向風向センサ68および4個の上下方向風向センサ69と、第1、第2空調ゾーン内の空気温度を所望の温度(以下第1、第2設定温度と言う)に設定する第1、第2温度設定器71、72とが電気的に接続されている。これらのうち日射センサ63は、本発明の日射量検出手段に相当するもので、第1内気温度センサ64は、本発明の第1内気温度検出手段に相当するもので、第2内気温度センサ65は、本発明の第2内気温度検出手段に相当するものである。
【0033】
4個の左右方向風向センサ68は、ルーバフィン31の左右方向の揺動角度(左右方向のルーバ角度)を検出するルーバ角度検出手段(吹出方向検出手段)で、左右方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられている。具体的には、4個の左右方向風向センサ68は、図6に示したように、リンクレバー32と一体的に左右方向に往復移動する可動接点68a、およびこの可動接点68aの移動により分圧比を変える抵抗素子68b等よりなるポテンショメータである。
【0034】
4個の上下方向風向センサ69は、ルーバフィン34の上下方向の揺動角度(上下方向のルーバ角度)を検出するルーバ角度検出手段(吹出方向検出手段)で、上下方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられている。具体的には、4個の上下方向風向センサ69は、図7に示したように、リンクレバー35と一体的に上下方向に往復移動する可動接点69a、およびこの可動接点69aの移動により分圧比を変える抵抗素子69b等よりなるポテンショメータである。
【0035】
第1温度設定器71は、本発明の第1温度設定手段に相当するもので、上述のインストルメントパネル104上に設置されており、このインストルメントパネル104上にはその他に吹出口モードを切り替える吹出口切替スイッチ(図示せず)、内外気モードを切り替える内外気切替スイッチ(図示せず)、第1空調ゾーンを自動的に温度調節するように指令するAUTOスイッチ(図示せず)、および第1空調ユニット1の作動を停止させるOFFスイッチ(図示せず)等が設置されている。
【0036】
第2温度設定器72は、本発明の第2温度設定手段に相当するもので、車両100の後席側で、例えば天井部分に配設されたコントローラ(図示せず)またはリモートコントローラ(図示せず)の操作パネル上に設置されており、この操作パネル上にはその他に吹出口モードを切り替える吹出口切替スイッチ(図示せず)、第2空調ゾーンを自動的に温度調節するように指令するAUTOスイッチ(図示せず)、および第2空調ユニット2の作動を停止させるOFFスイッチ(図示せず)等が設置されている。
【0037】
一方、エアコンECU6の出力端子には、上述のサーボモータ11a、電動モータ12a、22a、図示しないコンプレッサの電磁クラッチ、冷凍サイクルの第1、第2電磁弁、サーボモータ15a、19a、25a、29a、4個のルーバモータ31aおよび4個のルーバモータ34aが電気的に接続されている。つまり、エアコンECU6は、上述の入力端子から取り入れられた空調情報に基づいて、演算処理を行い、所望の空調状態となるように出力端子から制御信号を出力し、上記各空調機能部品を制御する。これによって、この車両用空気調和装置は自動的に車室内の温度、内外気モードの切り替え、吹出口モードの切り替え、空調風の吹出方向の変更、空調風の吹出方向の揺動範囲の変更および送風量を自動コントロールする。
【0038】
〔第1実施形態の空調制御方法〕
次に、本実施形態のエアコンECU6による空調制御方法を、図1ないし図20に基づいて簡単に説明する。ここで、図8はエアコンECU6の制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【0039】
先ず、データやフラグなどの初期化(リセット)を行う(ステップS1)。
次に、第1、第2温度設定器71、72から空調情報としてそれぞれ第1空調ゾーンの第1設定温度Tset(Fr)および第2空調ゾーンの第2設定温度Tset(Rr)を読み込み、一時的にRAMに記憶する(第1、第2温度設定手段:ステップS2)。
【0040】
上述の各センサから、第1空調ゾーンの空調処理に必要な外気温度TAM、第1内気温度TR(Fr)、日射量TS、第1エバ後温度TE(Fr)および冷却水温度TWと、第2空調ゾーンの空調処理に必要な第2内気温度TR(Rr)および第2エバ後温度TE(Rr)とを読み込み、一時的にRAMに記憶する(第1、第2内気温度検出手段:ステップS3)。なお、外気温度TAM、日射量TSおよび冷却水温度TWは第2空調ゾーンの空調処理にも必要である。
次に、下記に示す数1の式に基づいて、第1空調ユニット1の吹出口から吹き出される空調風の第1目標吹出温度TAO(Fr)を算出する(第1目標吹出温度決定手段:ステップS4)。
【0041】
【数1】
TAO(Fr)=Kset(Fr)・Tset(Fr)−KR(Fr)・TR(Fr)−KAM(Fr)・TAM−KS(Fr)・TS+C(Fr)
ここで、Kset(Fr)、KR(Fr)、KAM(Fr)、KS(Fr)はそれぞれ第1設定温度Tset(Fr)、第1内気温度TR(Fr)、外気温度TAMおよび日射量TSの補正ゲインであり、C(Fr)は補正定数である。
【0042】
次に、上述のステップS4にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図9の特性図から第1空調ユニット1の内外気モードを決定する(ステップS5)。なお、図9中、SW1は内外気切替ドア11の目標開度であり、本実施形態においては内気導入口10aを全開し、外気導入口10bを全閉する場合を目標開度SW1=0%とし、内気導入口10aを全閉し、外気導入口10bを全開する場合を目標開度SW1=100%とする。
【0043】
次に、上述のステップS4にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図10の特性図から第1空調ユニット1の吹出口モードを決定する(ステップS6)。次に、第1空調ユニット1の第1送風機12の送風量を決定する。実際には、上述のステップS4にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図11の特性図から電動モータ12aに印加されるブロワ電圧(V)を決定する(ステップS7)。
次に、下記に示す数2の式に基づいて、第2空調ユニット2の吹出口から吹き出される空調風の第2目標吹出温度TAO(Rr)を算出する(第2目標吹出温度決定手段:ステップS8)。
【0044】
【数2】
TAO(Rr)=Kset(Rr)・Tset(Rr)−KR(Rr)・TR(Rr)−KAM(Rr)・TAM−KS(Rr)・TS+C(Rr)
ここで、Kset(Rr)、KR(Rr)、KAM(Rr)、KS(Rr)はそれぞれ第2設定温度Tset(Rr)、第2内気温度TR(Rr)、外気温度TAMおよび日射量TSの補正ゲインであり、C(Rr)は補正定数である。
【0045】
次に、上述のステップS8にて算出されたTAO(Rr)に基づいて図12の特性図から第2空調ユニット2の吹出口モードを決定する(ステップS9)。次に、第2空調ユニット2の第2送風機22の送風量を決定する。実際には、上述のステップS8にて算出されたTAO(Rr)に基づいて図13の特性図から電動モータ22aに印加されるブロワ電圧(V)を決定する(ステップS10)。
【0046】
次に、上述のステップS4およびステップS8にて算出されたTAO(Fr)、TAO(Rr)に基づいて第1、第2エアミックスドア15、25の各目標開度θ(Fr)、θ(Rr)を下記の数3の式および数4の式から算出する(ステップS11)。
【0047】
【数3】
θ(Fr)=〔{TAO(Fr)−TE(Fr)}/{TW−TE(Fr)}〕×100%
【数4】
θ(Rr)=〔{TAO(Rr)−TE(Rr)}/{TW−TE(Rr)}〕×100%
【0048】
次に、図14のルーチンが起動して、第1空調ユニット1の4個の前席側FACE吹出口16、つまり4個のFrFACEグリル30からの空調風の吹出範囲(風速分布)を決定する(吹出範囲決定手段:ステップS12)。
次に、上述のステップS4〜ステップS12にて決定または算出された空調制御状態となるように、上記の各種空調機能部品に制御信号を出力する(ステップS13)。
次に、所定の制御周期時間(τ)が経過したか否かを判定する(ステップS14)。この判定結果がYESの場合には、ステップS2にリターンされ、その判定結果がNOの場合には、制御周期時間(τ)の経過を待つ。
【0049】
次に、エアコンECU6によるオートルーバ制御(吹出範囲決定ルーチン)を図14ないし図17に基づいて説明する。ここで、図14はエアコンECU6による吹出範囲決定ルーチンを示したフローチャートである。
【0050】
先ず、第1空調ユニット1の吹出口モードがFACEモードまたはB/Lモードであるか否かを判定する(ステップS21)。この判定結果がNOの場合には、図14のルーチンを抜ける。
また、ステップS21の判定結果がYESの場合には、前述のステップS4にて算出したTAO(Fr)に基づいて図15の特性図から、第1空調ユニット1から第1空調ゾーン内に吹き出される空調風の基本風速(V1)を算出する(ステップS22)。ここで、図15の風速とは前席側FACE吹出口16から手前側に50cm離れた部位での風速のことである。
【0051】
次に、日射センサ63により検出した日射量(TS)に基づいて図16の特性図から、第1空調ユニット1から第1空調ゾーン内に吹き出される空調風の基本風速(V2)を算出する(ステップS23)。ここで、図16の風速とは前席側FACE吹出口16から手前側に50cm離れた部位での風速のことである。
次に、空調風の風速(V1)よりも空調風の風速(V2)が大きいか否かを判定する(ステップS24)。この判定結果がNOの場合には、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Rr)とが同じ時の風速(V)を基本風速(V1)とする(ステップS25)。
また、ステップS24の判定結果がYESの場合には、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Rr)とが同じ時の風速(V)を基本風速(V2)とする(ステップS26)。
【0052】
次に、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Rr)とが異なるか否かを判定する(ステップS27)。この判定結果がNOの場合には、第1空調ユニット1の4個の前席側FACE吹出口16、つまり4個のFrFACEグリル30からの空調風の吹出範囲(風速分布)を狭い範囲内に集中させる集中吹出(スポット)モードとする。具体的には、基本風速(V1)または基本風速(V2)に応じたスイング範囲(ルーバ角度)を決定する。すなわち、基本風速(V1)または基本風速(V2)が大きければ大きい程、ルーバフィン31、34のルーバ角度を狭く(例えば10°〜40°)設定する(ステップS28)。その後に、図14のルーチンを抜ける。
【0053】
また、ステップS27の判定結果がYESの場合には、ステップS25で決定した基本風速(V1)またはステップS26で決定した基本風速(V2)に図17の特性図に応じた補正をかける。具体的には、基本風速から、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Rr)との温度差に応じた吹出角度補正量(V)を引いた値を補正風速(V0)とする(ステップS29)。ここで、図16の風速とは前席側FACE吹出口16から手前側に50cm離れた部位での風速のことである。
【0054】
次に、第1空調ユニット1の4個の前席側FACE吹出口16、つまり4個のFrFACEグリル30からの空調風の吹出範囲(風速分布)を広域に渡らせる拡散吹出(ワイドフロー)モードとする。具体的には、補正風速(V0)に応じたスイング範囲(ルーバ角度)を決定する。すなわち、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Fr)との温度差が大きければ大きい程、ルーバフィン31、34のルーバ角度を広く(例えば40°〜80°)設定する(ステップS30)。その後に、図14のルーチンを抜ける。
【0055】
〔第1実施形態の作用〕
次に、本実施形態の車両用空気調和装置の作用を図1ないし図17に基づいて簡単に説明する。
【0056】
例えば4個のスイングルーバ装置の作動を開始するためのスイングスイッチ(図示せず)がONされ、第1空調ユニット1の吹出口モードがFACEモード(B/Lモードでも良い)の場合には、第1送風機12の作用によって内気導入口10aから第1空調ダクト10内に吸い込まれた内気が第1エバポレータ13で例えば4℃程度まで冷やされた後に、第1エアミックスドア15の開度に応じて第1ヒータコア14を通過する空気量が調節されて、前席側の乗員が設定した第1設定温度Tset(Fr)に応じた最適な温度の空調風となる。その後に、空調風(冷風)は、第1空調ダクト10の最下流側端で開口した4個の前席側FACE吹出口16から、車両100の車室内の前席側の第1空調ゾーン内に吹き出される。特に冷風は、第1空調ゾーン内の前席側の乗員の頭胸部に向けて吹き出される。
【0057】
一方、第2空調ユニット2の吹出口モードがFACEモード(B/Lモードでも良い)の場合には、第1空調ユニット1と同様にして、第2送風機22の作用によって内気導入口20aから第2空調ダクト20内に吸い込まれた内気が第2エバポレータ23で例えば4℃程度まで冷やされた後に、第2エアミックスドア25の開度に応じて第2ヒータコア24を通過する空気量が調節されて、中席側、後席側の乗員が設定した第2設定温度Tset(Rr)に応じた最適な温度の空調風となる。その後に、空調風(冷風)は、第2空調ダクト20の最下流側端で開口した4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27から、車両100の車室内の後席側の第2空調ゾーン内に吹き出される。特に冷風は、第2空調ゾーン内の第2の乗員(例えば中席102の乗員および後席103の乗員)の頭胸部に向けて吹き出される。
【0058】
このような空調状態のとき、図1(a)に示したように、前席側の乗員が第1空調ゾーンの第1設定温度Tset(Fr)を25℃に設定し、中席側、後席側の乗員が第2空調ゾーンの第2設定温度Tset(Fr)を25℃に設定している場合には、すなわち、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Fr)とが同じ温度に設定されている場合には、4個のFrFACEグリル30から吹き出される空調風の吹出範囲を集中吹出(スポット)モードとする。
【0059】
具体的には、4個のFrFACEグリル30にそれぞれ設けられた4個のスイングルーバ装置のルーバフィン31のルーバ角度を10°〜40°に設定することにより、第1空調ユニット1の4個の前席側FACE吹出口16から第1空調ゾーン内に吹き出される空調風の吹出範囲が狭くなる。したがって、図1(a)に示したように、第1空調ユニット1から吹き出す空調風が第2空調ゾーンの中席側の乗員の頭胸部にも影響するが、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Fr)とが同じ温度に設定されているため、第1空調ゾーンに対する第2空調ゾーンの独立した温度環境を阻害するものではない。なお、ルーバフィン34も同様である。
【0060】
また、図1(b)に示したように、前席側の乗員が第1空調ゾーンの第1設定温度Tset(Fr)を24℃に設定し、中席側、後席側の乗員が第2空調ゾーンの第2設定温度Tset(Fr)を26℃に設定している場合には、すなわち、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Fr)とが異なる温度に設定されている場合には、4個のFrFACEグリル30から吹き出される空調風の吹出範囲を拡散吹出(ワイドフロー)モードとする。
【0061】
具体的には、4個のFrFACEグリル30にそれぞれ設けられた4個のスイングルーバ装置のルーバフィン31のルーバ角度を40°〜80°に設定することにより、第1空調ユニット1の4個の前席側FACE吹出口16から第1空調ゾーン内に吹き出される空調風の吹出範囲が広域に行き渡るようにする。なお、このとき第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Fr)との温度差が大きくなればなる程、ルーバフィン31のスイング範囲を広く設定する。したがって、図1(b)に示したように、第1空調ユニット1から吹き出す空調風が第2空調ゾーンの中席側の乗員の頭胸部への影響がなくなるため、第1空調ゾーンに対する第2空調ゾーンの独立した温度環境が阻害されない。なお、ルーバフィン34も同様である。
【0062】
〔第1実施形態の効果〕
以上のように、本実施形態の車両用空気調和装置は、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Fr)とが異なる場合に、ルーバフィン31、34のスイング範囲を広くすることにより、第1空調ユニット1の4個の前席側FACE吹出口16から吹き出された空調風の吹出範囲(風速分布)が広域に渡るようにして、各前席側FACE吹出口16から吹き出された空調風が第2空調ゾーン内の中席側の乗員の頭胸部に当たるのを防止している。
【0063】
したがって、4個の前席側FACE吹出口16から第2空調ゾーン内への温度到達率の良い車両100において、第1設定温度Tset(Fr)と第2設定温度Tset(Fr)とが異なる場合でも、第1空調ユニット1の4個の前席側FACE吹出口16からの空調風が、第2空調ゾーン内の中席側の乗員に影響することを防止することにより、車室内の前席側の第1空調ゾーンと後席側の第2空調ゾーンとでの温度独立コントロール性を確保することができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
図18および図19は本発明の第2実施形態を示したもので、図18は車両のインストルメントパネルを示した図で、図19は第1空調ユニットのフェイスダクロを示した図である。
【0065】
本実施形態では、前席側FACE吹出口として、第1空調ダクト10に連結されたフェイスダクト40の最空気下流側で開口すると共に、車両100の幅方向の略全域に渡って開口したワイドフローFACE吹出口(本発明の第1吹出口に相当する)39を採用している。フェイスダクト40の空気下流側には、図19に示したように、4本のスポット用ダクト41、42と2本のワイドフロー用ダクト43とが設けられている。
【0066】
スポット用ダクト41の最空気下流側には、インストルメントパネル104前面の中央部で開口するセンタFACE吹出口44が設けられている。また、スポット用ダクト41の最空気下流側には、インストルメントパネル104の車両幅方向の両側、すなわち、車両のサイドガラス近傍で開口するサイドFACE吹出口45が設けられている。そして、ワイドフロー用ダクト43の最空気下流側には、センタFACE吹出口44とサイドFACE吹出口45との間で開口するミドルFACE吹出口46が設けられている。
【0067】
なお、運転席側のミドルFACE吹出口46は、図18に示したように、車両のメータパネル105やハンドル106のために助手席側のミドルFACE吹出口46と同じ開口形状が実現できないために、メータパネル105のメータフード107に開口部分が設けられている。また、各FACE吹出口44〜46には、乗員の手動操作により空調風の吹出方向を変更するための複数のルーバフィンがそれぞれ設けられている。
【0068】
そして、フェイスダクト40の空気上流側には、各FACE吹出口44〜46を開閉するための前席側FACEドア47が回動自在に取り付けられており、ワイドフロー用ダクト43の空気上流側には、2個のミドルFACE吹出口46をそれぞれ開閉するための前席側ミドルFACEドア48が回動自在に取り付けられている。これらの前席側FACEドア47および前席側ミドルFACEドア48は、本発明の開口面積変更手段に相当するもので、ワイドフローFACE吹出口39の開口面積を変更することにより、ワイドフローFACE吹出口39から吹き出される空調風の吹出範囲(風速分布)を変える吹出範囲可変手段である。
【0069】
本実施形態では、前席側の乗員により設定された第1設定温度Tset(Fr)と中席側、後席側の乗員により設定された第2設定温度Tset(Fr)とが同じ温度の場合には、エアコンECU6の出力により前席側FACEドア47を開放側に動かし前席側ミドルFACEドア48を閉塞側に動かす。それによって、2個のセンタFACE吹出口44と2個のサイドFACE吹出口45を開放し、2個のミドルFACE吹出口46を閉塞することにより、ワイドフローFACE吹出口39の開口面積を小さくすることで、ワイドフローFACE吹出口39から吹き出される空調風の吹出範囲(風速分布)を小さくする(集中吹出モード)。なお、2個のセンタFACE吹出口44または2個のサイドFACE吹出口45を開閉する吹出切替ドアを追加して集中吹出モード時に閉塞するFACE吹出口を増加しても良い。
【0070】
また、第1設定温度Tset(Fr)と中席側、後席側の乗員により設定された第2設定温度Tset(Fr)とが異なる温度の場合には、エアコンECU6の出力により前席側FACEドア47および前席側ミドルFACEドア48を開放側に動かす。それによって、各FACE吹出口44〜46全てを開放することにより、ワイドフローFACE吹出口39の開口面積を大きくすることで、ワイドフローFACE吹出口39から吹き出される空調風の吹出範囲(風速分布)を大きくする(拡散吹出モード)。
【0071】
〔他の実施形態〕
本実施形態では、本発明をRV車(レジャー用車)等の車両100に搭載される車両用空気調和装置に適用した例を説明したが、本発明をバス車両や鉄道車両等の大型車両に搭載される車両用空気調和装置に使用しても良い。
本実施形態では、集中吹出(スポット)モードの時のルーバフィン31、34のルーバ角度を10°〜40°とし、拡散吹出(ワイドフロー)モードの時のルーバフィン31、34のルーバ角度を40°〜80°としたが、集中吹出モードの時のルーバフィン31、34のルーバ角度が0°〜80°まで可変可能な場合には、拡散吹出モードの時にルーバ角度が集中吹出モードよりも大きければ良い。
【0072】
本実施形態では、車両100の車室内の前席側の第1空調ゾーンと後席側の第2空調ゾーンとの温度調節(空調制御)を互いに独立して行うことが可能な車両用空気調和装置に本発明を適用したが、車両100の車室内の右側(運転席側)の第1空調ゾーンと左側(助手席側)の第2空調ゾーンとの温度調節(空調制御)を互いに独立して行うことが可能な車両用空気調和装置に本発明を適用しても良い。また、スイングルーバ装置を後席側の中席側、後席側FACE吹出口26、27に設置しても良い。さらに、中席側の空調ゾーンと後席側の空調ゾーンとの温度調節(空調制御)を互いに独立して行うようにしても良い。
【0073】
本実施形態では、第2空調ユニット2の吹出口モードを内気循環モードに固定したが、第2空調ユニット2の吹出口モードを外気導入モードと内気循環モードとに切替可能に構成しても良い。
本実施形態では、第1空調ユニット1と第2空調ユニット2とを空調制御するために、共通の日射センサ63を使用したが、第1空調ゾーンと第2空調ゾーンとのそれぞれに日射センサを配置し、これらの日射センサにて検出された日射量に基づいて、第1空調ユニット1と第2空調ユニット2とのそれぞれを空調制御しても良い。
【0074】
本実施形態では、第1空調ゾーンの第1設定温度Tset(Fr)と、第2空調ゾーンの第2設定温度Tset(Rr)とに基づいて第1空調ユニット1から吹き出す空調風の影響を打ち消すようにしたが、第1空調ユニット1から吹き出される空調風の送風量が大きければ大きい程、第1空調ゾーンから第2空調ゾーンに流れ込む空気量が大きくなり、第2空調ゾーンを第1空調ゾーンに対して独立して空調制御できない。
【0075】
このため、第1空調ユニット1から吹き出される空調風の送風量の大きさに基づいて前席側FACE吹出口16からの空調風の吹出範囲を補正しても良い。また、第1空調ユニット1から吹き出される空調風の風速が第2空調ユニット2から吹き出される空調風の風速よりも大きければ大きい程、前席側FACE吹出口16からの空調風の吹出範囲を広くするように補正しても良い。
【0076】
本実施形態では、4個のFrFACEグリル30をインストルメントパネル104の所定の開口部に固定して、ルーバフィン31、34を左右方向(左右方向)および上下方向にスイングさせるようにしたが、各グリルを左右方向または上下方向に回動自在にインストルメントパネル104等の格納部材に取り付けるようにして、各グリルを吹出方向変更手段として利用して左右方向または上下方向にスイングさせるようにしても良い。
【0077】
本実施形態では、左右方向に一文字状にスイングするルーバフィン31と、上下方向に一文字状にスイングするルーバフィン34とを設けたが、何れか一方でも良い。また、吹出方向変更手段として、8の字型、∞の字型や×の字型にスイングするルーバフィンを設けても良い。
【0078】
そして、集中吹出と拡散吹出とを連続的に可変可能なものにおいては、Tset(Fr)≠Tset(Rr)のときに拡散吹出にするようにしても良い。また、集中吹出として1個または2個の吹出口から吹き出される空調風が所定の吹出範囲以下の場合を集中吹出とし、それよりも広い場合を拡散吹出としても良い。例えば2個の吹出口からこれらの吹出口の内側(2個の吹出口の中間側)に向かって空調風を吹き出す(例えばルーバフィン同士を内側に向ける)場合を集中吹出とし、2個の吹出口から外側に向かって吹き出す(例えばルーバフィン同士を外側に向ける)場合を拡散吹出としても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は第1空調ユニットからの空調風の吹出範囲を集中吹出に切り替えた状態を示した説明図で、(b)は第1空調ユニットからの空調風の吹出範囲を拡散吹出に切り替えた状態を示した説明図である(第1実施形態)。
【図2】車両用空気調和装置の全体構成を示した構成図である(第1実施形態)。
【図3】車両用空気調和装置を搭載した車両の車室内を示した概略図である(第1実施形態)。
【図4】車両のインストルメントパネルを示した正面図である(第1実施形態)。
【図5】スイングルーバ装置の全体構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図6】左右方向揺動機構の構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図7】上下方向揺動機構の構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図8】エアコンECUの制御プログラムの一例を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図9】TAO(Fr)と内外気モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図10】TAO(Fr)と吹出口モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図11】TAO(Fr)とブロワ電圧との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図12】TAO(Rr)と吹出口モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図13】TAO(Rr)とブロワ電圧との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図14】吹出範囲決定ルーチンを示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図15】TAO(Fr)と風速との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図16】日射量と風速との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図17】{Tset(Fr)−Tset(Rr)}と吹出角度補正量との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図18】車両のインストルメントパネルを示した正面図である(第2実施形態)。
【図19】第1空調ユニットのフェイスダクトを示した概略図である(第2実施形態)。
【符号の説明】
1 第1空調ユニット
2 第2空調ユニット
6 エアコンECU(空調制御手段)
16 前席側FACE吹出口(第1吹出口)
26 中席側FACE吹出口(第2吹出口)
27 後席側FACE吹出口(第2吹出口)
30 FrFACEグリル
31 ルーバフィン(吹出方向変更手段)
34 ルーバフィン(吹出方向変更手段)
39 ワイドフロー吹出口(第1吹出口)
47 前席側FACEドア(吹出範囲可変手段、開口面積変更手段)
48 前席側ミドルFACEドア(吹出範囲可変手段、開口面積変更手段)
63 日射センサ(日射量検出手段)
64 第1内気温度センサ(第1内気温度検出手段)
65 第2内気温度センサ(第2内気温度検出手段)
71 第1温度設定器(第1温度設定手段)
72 第2温度設定器(第2温度設定手段)
31a ルーバモータ(吹出方向揺動手段)
34a ルーバモータ(吹出方向揺動手段)

Claims (6)

  1. 車両の車室内の一方側の第1空調ゾーンと車室内の他方側の第2空調ゾーンとの温度調節を互いに独立して行うことが可能な車両用空気調和装置において、
    (a)前記第1空調ゾーン内の乗員に向けて空調風を吹き出すための第1吹出口を有する第1空調ユニットと、
    (b)前記第2空調ゾーン内の乗員に向けて空調風を吹き出すための第2吹出口を開口した第2空調ユニットと、
    (c)前記第1吹出口からの空調風の吹出範囲を、前記第1吹出口から前記第1空調ゾーン内に略局所的に空調風を吹き出す集中吹出と前記第1吹出口から前記第1空調ゾーン内に略全体的に空調風を吹き出す拡散吹出とに連続的に可変する吹出範囲可変手段と、
    (d)前記第1空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定する第1温度設定手段と、
    (e)前記第2空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定する第2温度設定手段と、
    (f)前記第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と前記第2温度設定手段にて設定された第2設定温度とが異なる時に、前記第1吹出口からの空調風の吹出範囲を前記拡散吹出側に可変するように前記吹出範囲可変手段を制御する空調制御手段と
    を備えたことを特徴とする車両用空気調和装置。
  2. 請求項1に記載の車両用空気調和装置において、
    前記第1空調ゾーン内の温度を検出する第1内気温度検出手段と、
    前記第2空調ゾーン内の温度を検出する第2内気温度検出手段と、
    少なくとも前記第1内気温度検出手段にて検出された第1内気温度および前記第1温度設定手段にて設定された第1設定温度に基づいて、前記第1吹出口から吹き出される空気の第1目標吹出温度を決定する第1目標吹出温度決定手段と、
    少なくとも前記第2内気温度検出手段にて検出された第2内気温度および前記第2温度設定手段にて設定された第2設定温度に基づいて、前記第2吹出口から吹き出される空気の第2目標吹出温度を決定する第2目標吹出温度決定手段と、
    前記第1空調ゾーン内に進入する日射量を検出する日射量検出手段と
    を備え、
    前記空調制御手段は、前記第1吹出口からの空調風の吹出範囲を変更する前に、前記第1吹出口からの空調風の吹出範囲を、前記第1目標吹出温度決定手段にて決定された第1目標吹出温度または前記日射量検出手段にて検出した日射量のうちの何れか一方の値によって決定することを特徴とする車両用空気調和装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車両用空気調和装置において、
    前記空調制御手段は、前記第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と前記第2温度設定手段にて設定された第2設定温度との温度差が大きくなる程、前記第1吹出口からの空調風の吹出範囲が広くなるように前記吹出範囲可変手段を制御することを特徴とする車両用空気調和装置。
  4. 請求項3に記載の車両用空気調和装置において、
    前記吹出範囲可変手段は、前記第1吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を変更する吹出方向変更手段、およびこの吹出方向変更手段の揺動角度を変更する吹出方向揺動手段よりなり、
    前記空調制御手段は、前記第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と前記第2温度設定手段にて設定された第2設定温度との温度差が大きくなる程、前記吹出方向変更手段の揺動角度が大きくなるように前記吹出方向揺動手段を制御することを特徴とする車両用空気調和装置。
  5. 請求項3に記載の車両用空気調和装置において、
    前記吹出範囲可変手段は、前記第1吹出口の開口面積を変更する開口面積変更手段よりなり、
    前記空調制御手段は、前記第1温度設定手段にて設定された第1設定温度と前記第2温度設定手段にて設定された第2設定温度との温度差が大きくなる程、前記第1吹出口の開口面積が大きくなるように前記開口面積変更手段を制御することを特徴とする車両用空気調和装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用空気調和装置において、
    前記第1空調ゾーン内の温度を検出する第1内気温度検出手段を備え、
    前記空調制御手段は、前記第1内気温度検出手段にて検出した第1内気温度と前記第1温度設定手段にて設定された第1設定温度との温度差が所定値以上の時には、前記吹出範囲可変手段による吹出範囲の補正を行わないことを特徴とする車両用空気調和装置。
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