JP3811611B2 - 電子写真感光体、それに用いるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真プロセスに使用される電子写真感光体、それに好適に用いられるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術は、即時性があり、高画質の画像が得られるので、近年では複写機の分野に留まらず、各種プリンタの分野でも使用され、その応用範囲はますます広がっている。電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称す)の分野では、その光導電性材料として古くは、セレニウム、ヒ素、セレニウム合金、セレニウム−テルル合金、硫化カドミウムおよび酸化亜鉛などの無機系の材料が用いられていた。しかしながら、近年ではこのような無機系の材料に代わり、無公害、良好な成膜性および製造の容易さなどの利点を有する有機系の光導電性材料を主体とする有機感光体が開発されるようになった。
【0003】
有機感光体の中でも電荷発生物質から構成される電荷発生層と電荷移動物質から構成される電荷移動層との2層を順次積層した、いわゆる積層型感光体が考案され、研究の主流となっている。すなわち積層型感光体では、所望の電荷発生層を効率よく構成し得る電荷発生物質と、所望の電荷移動層を効率よく構成し得る電荷移動物質とを組合わせることによって、
(1)より高感度な感光体が得られること、
(2)材料の選択範囲が広く、安全性の高い感光体が得られること、
(3)塗布の生産性が高く、比較的原価面でも有利であること、
などの点から、感光体の主流となっている。また、その耐刷性能も総コピー枚数が20万枚以上、1分間のコピー速度も70枚以上といった、高耐刷および高速性能を有する複写機まで市販されている。
【0004】
このように、これまで実用化されている有機系積層型感光体の中には優れた性能を有する感光体もあるが、大部分はその性能を追求する上で、感光体製造に関する種々の問題点を今なお抱えているのが現状である。
【0005】
それらの具体的な問題点の中で、電荷移動物質に関わるものをいくつか列挙すると、
(1)バインダ樹脂に対する相溶性が低いこと、
(2)結晶が析出しやすいこと、
(3)繰返し使用した場合に感度変化が生じること、
(4)帯電能および繰返し特性が悪いこと、
(5)残留電位特性が悪いこと、
などが挙げられる。
【0006】
このような電荷移動物質の中から代表的なものについて、その構造的な特徴から分類すると、まず初期においては、アリレン基(その開発初期においてはほとんどが単なるフェニレン基であった)をその中心母核に有するヒドラゾン系(特開昭54−59143号公報)、スチルベン・スチリル系(特開昭58−198043号公報)およびトリアリールアミン系(特公昭58−32372号公報)が精力的に研究された。その後、単環式の複素環系をその中心母核に有する一連の化合物群、フェノチアジン系、トリアゾール系、キノキサリン系、オキサジアゾール系、オキサゾール系、ピラゾリン系、ジヒドロニコチンアミド化合物、インドリン化合物およびセミカルバゾン化合物などが開発されるようになった。最近では縮合多環式炭化水素系をその中心母核に有する、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体およびフェナントレン誘導体(特開平5−148209号公報)などが開発されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように電荷移動物質として、数多くの有機化合物が開発されているにもかかわらず、先に挙げた問題点をすべて満足する有機化合物はなく、感光体として要求される基本的な性質、さらには機械的強度および高耐久性などを充分満足するものは、まだ充分に得られていないのが現状である。
【0008】
またフェナントレン誘導体の場合には、その誘導体化合物を合成する際、
(1)出発原料と推定されるフェナントレン−9−カルボアルデヒドが非常に高価であること、
(2)ヒドラゾン部分とスチリル部分と順次導入するための母核の連結部分がともに同じアルデヒド基であるので、初の側鎖を導入する際にどうしても副生成物として2つの同じ側鎖が導入された化合物が生成し、化合物精製の手間がかかり、反応収率が低下すること、
などの種々の問題点が指摘される。
【0009】
本発明の目的は、高感度かつ高耐久性を有する電子写真感光体、その電荷移動物質として用いられるベンゾ[b]フラン骨格を母核とする新規なベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物、およびその化合物の効率のよい製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性支持体上に設けられた感光層中に、電荷移動物質として下記一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有していることを特徴とする電子写真感光体である。
【0011】
【化9】
【0012】
(式中、Ar1は、置換基を含んでもよいアリレン基または置換基を含んでもよい2価の複素環基を示す。Ar2,Ar3およびAr4は、置換基を含んでもよいアリール基、置換基を含んでもよい複素環基、置換基を含んでもよいアラルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。ただし、Ar3およびAr4は、互いに原子、原子団、置換基を含んでもよいアルキレン基、置換基を含んでもよいビニレン基または2価の連結基により環構造を形成する。aは、置換基を含んでもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、nは1〜4の整数を示す。ただし、nが2以上のとき、複数のaは同一でも異なってもよい。)
【0013】
本発明に従えば、電荷移動物質として一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有することによって、高感度かつ高耐久性を有する電子写真感光体を提供することができる。すなわち該ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物は広い共役系を有しているため、電荷移動度を高くして電子写真感光体の残留電位特性を向上させることができる。また該ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物はバインダ樹脂との相溶性に優れているため、感光層中に多量に含有させて電子写真感光体の光感度を向上させることができる。さらに該ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物は結晶として析出しにくいので、電子写真感光体の繰返し使用時の特性を安定させることができる。
【0014】
また本発明は、前記ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が、下記一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする。
【0015】
【化10】
【0016】
(式中、bは、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜4の整数を示す。ただし、mが2以上のとき、複数のbは同一でも異なってもよい。Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,aおよびnは、一般式(I)において示したものと同義である。)
【0017】
本発明に従えば、電荷移動物質として一般式(I)と同様の特性を有する一般式(II)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有することによって、高感度かつ高耐久性を有する電子写真感光体を提供することができる。
【0018】
また本発明は、前記ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が、下記一般式(III)で示される化合物であることを特徴とする。
【0019】
【化11】
【0020】
(式中、dは、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1−3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、lは1〜5の整数を示す。ただし、lが2以上のとき、複数のdは同一でも異なってもよい。Ar3,Ar4,a,b,nおよびmは、一般式(II)において示したものと同義である。)
【0021】
本発明に従えば、電荷移動物質として一般式(I)と同様の特性を有する一般式(III)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有することによって、高感度かつ高耐久性を有する電子写真感光体を提供することができる。
【0022】
また本発明は、前記ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が、下記一般式(IV)で示される化合物であることを特徴とする。
【0023】
【化12】
【0024】
(式中、eは、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、kは1〜5の整数を示す。ただし、kが2以上のとき、複数のeは同一でも異なってもよい。Ar3,Ar4,a,b,nおよびmは、一般式(II)において示したものと同義である。)
【0025】
本発明に従えば、電荷移動物質として一般式(I)と同様の特性を有する一般式(IV)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有することによって、高感度かつ高耐久性を有する電子写真感光体を提供することができる。
【0026】
また本発明は、前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記電荷移動物質を含有する電荷移動層との積層構造から成ることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、積層構造の感光層の電荷移動層に、前記ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を電荷移動物質として含有することによって、高感度かつ高耐久性を有する積層型の電子写真感光体を提供することができる。
【0028】
また本発明は、前記感光層が、電荷発生物質と前記電荷移動物質とを含有する単一層から成ることを特徴とする。
【0029】
本発明に従えば、単一層の感光層に、前記ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を電荷移動物質として含有することによって、正帯電においても優れた感度および繰返し特性を有する単層型の電子写真感光体を提供することができる。
【0030】
本発明は、下記一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物である。
【0031】
【化13】
【0032】
(式中、Ar1は、置換基を含んでもよいアリレン基または置換基を含んでもよい2価の複素環基を示す。Ar2,Ar3およびAr4は、置換基を含んでもよいアリール基、置換基を含んでもよい複素環基、置換基を含んでもよいアラルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。ただし、Ar3およびAr4は、互いに原子、原子団、置換基を含んでもよいアルキレン基、置換基を含んでもよいビニレン基または2価の連結基により環構造を形成する。aは、置換基を含んでもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、nは1〜4の整数を示す。ただし、nが2以上のとき、複数のaは同一でも異なってもよい。)
【0033】
本発明に従えば、一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物は、広い共役系を有し、バインダ樹脂との相溶性に優れ、結晶として析出しにくいという特徴を有することによって、高感度かつ高耐久性を有する電子写真感光体用の電荷移動物質として用いることができる化合物を提供することができる。すなわち該ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を電子写真感光体の電荷移動物質として用いれば、広い共役系を有することによって、電荷移動度を高くして電子写真感光体の残留電位特性を向上させることができる。またバインダ樹脂との相溶性に優れていることによって、感光層中に多量に含有させて電子写真感光体の光感度を向上させることができる。さらに結晶として析出しにくいことによって、電子写真感光体の繰返し使用時の特性を安定させることができる。
【0034】
本発明は、下記一般式(V)で示されるベンゾ[b]フランアルデヒド化合物と、下記一般式(VI)で示されるヒドラジン化合物とを反応させて、下記一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を生成することを特徴とするベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物の製造方法である。
【0035】
【化14】
【0036】
【化15】
【0037】
【化16】
【0038】
(式(I),(V)および(VI)中、Ar1は、置換基を含んでもよいアリレン基または置換基を含んでもよい2価の複素環基を示す。Ar2,Ar3およびAr4は、置換基を含んでもよいアリール基、置換基を含んでもよい複素環基、置換基を含んでもよいアラルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。ただし、Ar3およびAr4は、互いに原子、原子団、置換基を含んでもよいアルキレン基、置換基を含んでもよいビニレン基または2価の連結基により環構造を形成する。aは、置換基を含んでもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、nは1〜4の整数を示す。ただし、nが2以上のとき、複数のaは同一でも異なってもよい。)
【0039】
本発明に従えば、一般式(V)で示されるベンゾ[b]フランアルデヒド化合物と、一般式(VI)で示されるヒドラジン化合物とを反応させることによって、電子写真感光体の電荷移動物質として優れるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を極めて容易に高収率で製造することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物は、下記一般式(I)で示される。
【0041】
【化17】
【0042】
一般式(I)中、Ar1は置換基を含んでもよいアリレン基または置換基を含んでもよい2価の複素環基を示す。
【0043】
Ar1の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基およびピリジレン基などが挙げられる。
【0044】
前記一般式(I)中、Ar2,Ar3およびAr4は、置換基を含んでもよいアリール基、置換基を含んでもよい複素環基、置換基を含んでもよいアラルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、または置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。ただし、Ar3およびAr4は、互いに原子、原子団、置換基を含んでもよいアルキレン基、置換基を含んでもよいビニレン基または2価の連結基により環構造を形成する。
【0045】
Ar2の具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル、ピレニルおよびビフェニルなどのアリール基、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルおよびN−エチルカルバゾリルなどの複素環基、メチルベンジル、メトキシベンジルおよび2−チエニルメチルなどのアラルキル基、メチル、エチルおよびn−プロピルなどのアルキル基、トリフルオロメチルなどのパーフルオロアルキル基、1,1,1−トリフルオロエチルなどのフルオロアルキル基が挙げられる。
【0046】
Ar3およびAr4の具体例としては、ジヒドロインドリン、テトラヒドロキノリンおよびカルバゾールなどの窒素原子を含んで構成される複素環が挙げられる。
【0047】
また前記一般式(I)中、aは置換基を含んでもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示す。
【0048】
aの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジ−イソプロピルアミノなどのジアルキルアミノ基、ならびに、フッ素、塩素および臭素などのハロゲン原子などが挙げられる。一般的に電子供与性の置換基であるのが好ましい。
【0049】
さらに前記一般式(I)中、nは1,2,3または4を示す。ただし、nが2以上の場合、aは、複数のaが同一でも異なってもよい。
【0050】
特に、前記一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物のうち、電子写真特性、原価および製造などの観点から優れたものとして、Ar1がフェニレン基またはナフチレン基で、Ar2がフェニル基、p−メチルフェニル基またはナフチル基で、Ar3およびAr4が窒素原子を含み構成される複素環である、ジヒドロインドリン、テトラヒドロキノリンまたはカルバゾール環で、aが水素原子であるものが挙げられる。
【0051】
前記一般式(I)で示される本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表3に示す構造を有するベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が挙げられるが、これによって本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が限定されるものではない。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物は、たとえば以下のようにして容易に製造することができる。
【0056】
下記一般式(V)で示されるベンゾ[b]フランアルデヒド化合物と下記一般式(VI)で示されるヒドラジン化合物とを反応させることにより、本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を合成することができる。
【0057】
【化18】
【0058】
【化19】
【0059】
(式(V)および(VI)中、Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,aおよびnは、前記一般式(I)において示したものと同義である。)
【0060】
この反応は、たとえばエタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルおよび1,4−ジオキサンなどの溶液中において、前記一般式(V)で示されるベンゾ[b]フランアルデヒド化合物1.0当量と、前記一般式(VI)で示されるヒドラジン化合物またはその塩酸塩1.0〜1.2当量とを、酢酸などの有機酸、または、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムなどの有機塩の触媒0.001〜0.1当量とともに、60〜110℃で2〜8時間、加熱攪拌することにより行われる。この反応によって、本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が合成される。
【0061】
本発明による電子写真感光体は、感光層の電荷移動物質として、前述のベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を1種類以上含有し、場合によっては他の電荷移動物質として、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物およびトリフェニルアミン化合物などを含有してもよい。スチリル化合物としては、たとえばβ−フェニル−[4−(ベンジルアミノ)]スチルベン、β−フェニル−[4−(N−エチル−N−フェニルアミノ)]スチルベンおよび1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニルブタジエンなどが挙げられる。ヒドラゾン化合物としては、たとえば4−(ジベンジルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、4−(エチルフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、4−ジ(p−トリルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾンおよび3,3−ビス−(4’−ジエチルアミノフェニル)−アクロレイン−N,N−ジフェニルヒドラゾンなどが挙げられる。トリフェニルアミン化合物としては、たとえば4−メトキシ−4’−(4−メトキシスチリル)トリフェニルアミンおよび4−メトキシ−4’−スチリルトリフェニルアミンなどを含有させることもできる。
【0062】
本発明による電子写真感光体の層構成は、以下に示すような種々の態様をとることができる。
【0063】
図1は、電荷発生層5上に電荷移動層6を有する機能分離型感光層を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図である。導電性支持体1上に、感光層4として電荷発生物質2を主成分としてバインダ樹脂中に分散させた電荷発生層5と、電荷移動物質3を主成分としてバインダ樹脂中に分散させた電荷移動層6との積層から成る機能分離型感光体である。電荷発生層5の表面に電荷移動層6が形成され、この電荷移動層6中に電荷移動物質3として、本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が含有される。
【0064】
図2は、電荷移動層6上に電荷発生層5を有する機能分離型感光層を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図である。図1と同様の電荷発生層5と、電荷移動層6との積層から成る機能分離型感光体であるが、図1とは逆に電荷移動層6の表面に電荷発生層5が形成され、この電荷移動層6中に電荷移動物質3として、本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が含有される。
【0065】
図3は、分散型感光層を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図である。導電性支持体1上に、感光層4として電荷発生物質2と電荷移動物質3とをバインダ樹脂中に分散させた単層から成る単層型感光体の構成を示す。
【0066】
図4は、図3の電子写真感光体において表面保護層7を有する例を示す断面図である。導電性支持体1と図3と同様の感光層14上に表面保護層7を設け、単層から成る単層型感光体の構成を示す。
【0067】
図5は、図1の電子写真感光体において中間層8を有する例を示す断面図である。導電性支持体1と図1と同様の感光層4との間に中間層8を設け、積層から成る機能分離型感光体の構成を示す。
【0068】
前述のベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を電子写真感光体に用いるには、種々の方法が考えられる。たとえば、図1のように電荷発生効率の高い電荷発生層5と電荷移動層6とから成る積層構造の形態において、導電性支持体1上に増感染料、または、アゾ系顔料およびフタロシアニン系顔料を代表とする顔料を主体とする電荷発生層5を設ける。該電荷発生層5上に、前述のベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を、必要に応じて酸化防止剤や電子吸引性化合物を添加して、バインダ樹脂中に溶解または分散させた電荷移動層6を設けて成る積層型感光体とする。また前述のベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物と増感染料とを、必要に応じて化学増感剤や電子吸引性化合物を添加して、バインダ樹脂中に溶解または分散させた塗布液を、図3のように導電性支持体1上に塗布して成る単層型感光体とする。このように本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物は、これらのいずれの場合にも適用することが可能である。
【0069】
本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を用いて感光体を作製するに際しては、金属ドラム、金属板、導電性加工を施した紙およびプラスチックフィルムなどの支持体上へ、バインダ樹脂の助けを借りて被膜にする。この場合、さらに感度を上げるためには、後述するような、増感剤およびバインダ樹脂に対する可塑性を付与する物質を加えて、均一な感光体被膜にするのが望ましい。
【0070】
前記バインダ樹脂としては、利用分野に応じて種々のものが挙げられる。すなわち複写機用またはプリンタ用感光体の分野では、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂およびポリアリレート樹脂などが望ましい。これらの樹脂は、単独または2種以上混合して用いてもよい。特にポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂およびポリフェニレンオキサイド樹脂などは、体積抵抗値が1013Ω以上で、また、被膜性および電位特性などにも優れている。
【0071】
これらのバインダ樹脂の添加量は、前述のベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物に対して、重量比で0.2〜20倍の割合が好ましく、より好ましくは0.5〜5倍の範囲である。0.2倍未満になるとベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物が感光体表面から析出してくるという欠点が生じ、20倍を超えると著しい感度低下をまねく。
【0072】
印刷版に使用するためには、特にアルカリ性バインダ樹脂が必要である。アルカリ性バインダ樹脂とは、水または水との混合系を含むアルコール性のアルカリ性溶剤に可溶な酸性基を有する高分子物質である。可溶な酸性基としては、たとえば酸無水物基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、スルホンアミド基およびスルホンイミド基などである。これらのアルカリ性バインダ樹脂は、通常、酸価が100以上の高い値を持っていることが好ましい。酸価の大きなバインダ樹脂は、アルカリ性溶剤に易溶または容易に膨潤化する。そのようなバインダ樹脂としては、たとえばスチレン:無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル:無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル:クロトン酸共重合体、メタクリル酸:メタクリル酸エステル共重合体、フェノール樹脂およびメタクリル酸:スチレン:メタクリル酸エステル共重合体などである。これら樹脂は、光導電性有機物質に対して、複写機用感光体の場合と同程度の割合で加える。
【0073】
前記増感染料としては、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどで代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、その他シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料、ならびにチオピリリウム塩染料などがある。
【0074】
また感光層において、光吸収によって極めて高い効率で電荷を発生させる光導電性の顔料としては、各種金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンおよびハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン酸顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、その他キナクリドン系顔料、ならびにアントラキノン系顔料などがある。特に電荷を発生する顔料に、無金属フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、フロレンやフロレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンから成るビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料を用いたものは高い感度を示す優れた電子写真感光体を与える。
【0075】
また前記増感染料を電荷発生物質として用いてもよい。前述の染料は、単独で使用してもよいが、顔料を共存させることによってさらに高い効率で電荷を発生させる場合が多い。
【0076】
前述のような増感剤とは別に、繰返し使用に対しての残留電位の増加、帯電電位の低下および感度の低下などを防止する目的で、種々の化学物質を添加する必要が生じる場合がある。これらのための添加物質としては、1−クロルアントラキノン、ベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、ナフトキノン、4,4’−ジニトロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)アクリル酸エチル、9−アントラセニルメチルマロンジニトリル、1−シアノ−1−(p−ニトロフェニル)−2−(p−クロルフェニル)エチレンおよび2,7−ジニトロフルオレノンなどの電子吸引性化合物が挙げられる。その他、感光体中への添加物として、酸化防止剤、カール防止剤およびレベリング剤などを必要に応じて添加することができる。
【0077】
本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物は、前述のような感光体の形態に応じて前述の種々の添加物質とともに、適当な溶剤中に溶解または分散しして塗布液を調製し、その塗布液を導電性支持体1上に塗布して乾燥することによって、感光体を製造する。塗布液の溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシメチルエーテル、ジメチルホルムアミドなどの単独溶剤または2種以上の混合溶剤が挙げられる。これらの溶剤には、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルおよびメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することができる。
【0078】
導電性支持体1と感光層4または14との間に設けられる中間層8は、保護機能や接着機能を付与し、塗工性を高め、さらには基板から感光層への電荷注入改善を目的としたものであり、このような材料としては、カゼイン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロンおよびアルコキシメチル化ナイロンなど)、ポリウレタン、ゼラチンおよび酸化アルミニウムなどが適当である。
【0079】
以下、本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物の製造例および本発明による電子写真感光体について、実施例に基づいて具体的に説明する。本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0080】
(製造例)
例示化合物No.1に示したベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を製造した。5−フォルミル−2−(4’−(ビス(p−トリル)アミノ)フェニル)ベンゾ[b]フラン1.2g(1.0当量)をエタノール6mlに溶解し、N−アミノ−12−ジヒドロインドリン0.46g(1.2当量)と、触媒として酢酸0.05mlとを室温にて加え、その後60〜70℃に保って5時間、加熱攪拌した。反応の終了を薄層クロマトグラフィー(TLC)により確認した後、放冷し、生じた固形物を濾別してエタノールで洗浄した。この固形物をエタノールより再結晶し、目的とするベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)1.22gの黄色結晶を得た。収率は93.0%であった。
【0081】
このようにして得られたベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)の構造は、1H−NMR、通常13C−NMRおよびDEPT13513C−NMRを測定することにより確認した。
【0082】
図6は、重クロロホルム中でのベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)の1H−NMRスペクトルである。図7は、重クロロホルム中でのベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)の通常13C−NMRスペクトルである。図8は、重クロロホルム中でのベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)のDEPT135での13C−NMRスペクトルである。これらのNMRシグナルは、目的とするベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)の構造をよく支持している。
【0083】
(実施例1〜4および比較例)
図1に示した電荷移動層6に、電荷移動物質3として、例示化合物No.1,3,10および21に示したベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有する実施例1〜4、ならびに従来公知の4−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾンを含有する比較例の5種類の積層型の電子写真感光体を製造した。として用いて、各々を含有させた積層構造の感光層4を形成して、5種類の電子写真感光体を製造した。
【0084】
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイト社製PKHH)の1%THF(テトラドロフラン)溶液中に、下記構造式(VII)で示されるビスアゾ顔料を、重量比で樹脂と同量加え、ペイントコンディショナ(レッドデビル社製)の中で直径1.5mmのガラスビーズとともに約2時間分散し、電荷発生層用塗布液を調製した。調製した電荷発生層用塗布液を、ドクターブレイド法により、アルミニウム蒸着のポリエステルフィルム(膜厚80μm)の支持体上に塗布して乾燥し、電荷発生層を形成した。乾燥後の電荷発生層の膜厚は0.2μmであった。
【0085】
【化20】
【0086】
例示化合物No.1,No.3,No.10もしくはNo.21で示したベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物、または従来公知の4−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒド−N,N,−ジフェニルヒドラゾンを1gと、ポリアリレート樹脂(ユニチカ社製U−100)1.2gとを、THFに溶解した15%溶液を調製し、5種類の電荷移動層用塗布液とした。各電荷移動層用塗布液を、前述のようにして形成した電荷発生層上に、スキージングドクターにより塗布して乾燥し、膜厚25μmの樹脂−ビスアミン化合物固溶相である電荷移動層をそれぞれ形成し、実施例1〜4および比較例の5種類の積層型電子写真感光体を作製した。
【0087】
前述のようにして作製した積層型電子写真感光体について、その電子写真特性を静電記録紙試験装置(川口電機社製SP−428)により評価した。加電圧:−6kVおよびスタティック:No.3の測定条件で、白色光照射(照射光:5ルックス)による−700V〜−100Vに減衰させるために要する露光量E100(ルックス・秒)および初期電位V0(−ボルト)を測定した。さらに前記静電記録紙試験装置を用いて、加電−除電(除電光:40ルックスの白色光を1秒間照射)を1サイクルとして1万回同様に操作した後の露光量E100(ルックス・秒)および初期電位V0(−ボルト)を測定した。これらの1回目と1万回目とにおけるE100およびV0の測定結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
表4より、本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を用いた実施例1〜4は、従来化合物を用いた比較例と比較して感度だけでなく繰返し特性も良好であることが判った。
【0090】
(実施例5)
図1に示した電荷移動層6に、電荷移動物質3として、例示化合物No.4に示したベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有する実施例5の積層型の電子写真感光体を製造した。
【0091】
下記構造式(VIII)で示されるx型無金属フタロシアニン(大日本インキ社製ファストゲンブルー8120)0.4gを、塩化ビニル:酢酸ビニル共重合体樹脂(積水化学社製エスレックスM)0.3gを溶かした酢酸エチル溶液30ml中に加え、ペイントコンディショナ中で約20分間分散し、電荷発生層用塗布液を調製した。調製した電荷発生層用塗布液を、ドクターブレイド法により、アルミニウム蒸着のポリエステルフィルムの支持体上に塗布し、乾燥後の電荷発生層の膜厚が0.4μmになるように電荷発生層を形成した。
【0092】
【化21】
【0093】
この電荷発生層上に、例示化合物No.4のベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を重量比50%で含有するポリアリレート層の電荷移動層を積層して2層から成る実施例5の積層型電子写真感光体を作製した。
【0094】
実施例5の感光体の780nmの光を用いて電位半減に要したエネルギ(E50)および初期電位(−V0)を求めたところ、V0=−695(ボルト)およびE50=0.21(μJ)で非常に高感度、かつ高帯電性の感光体であった。
【0095】
また、レーザプリンタ(シャープ社製WD−580P)を改造し、ドラム部に実施例5の感光体を張付け、連続空コピー(Non Copy Aging)を1万回行った後、その初期電位低下および感度低下の度合を調べた。その結果、V0=−685(ボルト)およびE50=0.22(μJ)で、第1回目と比べてほとんど値の変動が見られなかった。
【0096】
(実施例6〜9)
図3に示した電荷移動物質3として、例示化合物No.5,9,13または24に示したベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有する単一層の感光層14を有する4種類の電子写真感光体を製造した。
【0097】
例示化合物No.5,No.9,No.15またはNo.24の1g、下記構造式(IX)で示されるポリカーボネート樹脂1.1g、N,N−3,5−キシリル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシルイミド0.15gおよび紫外線吸収剤0.05gを、塩化メチレンに溶かした感光層用塗布液を調製した。なお該感光層用塗布液においてイミド化合物は一部分散状態であった。調製した感光層用塗布液をアプリケータによりアルミニウム基板表面をアルマイト加工(アルマイト層:7μm)した支持体上に塗布し、乾燥後の感光層膜厚20μmの単層型感光体を得た。
【0098】
【化22】
【0099】
前述のようにして作製した単層型電子写真感光体について、その電子写真特性を前記静電記録紙試験装置により評価した。加電圧:5.5kVおよびスタティック:No.3の測定条件で、白色光照射による+700V〜+100Vに減衰させるために要する露光量E100(ルックス・秒)を測定した。また、1万回の連続空コピーテストを行い、感度(E100)低下の度合を調べた。これらの1回目および1万回目におけるE100の測定結果を表5に示した。
【0100】
【表5】
【0101】
表5より、本発明によるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を用いた実施例6〜9の感光体は、正帯電においても優れた感度および繰返し特性を有する感光体であることが判った。
【0102】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電荷移動物質として前記ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有することによって、有機系で高感度かつ高耐久性を有し、無機系に比べて無毒で資源的にも問題がなく、透明性が高く軽量で成膜性にも優れ、正負の両帯電性を有して製造も容易で、繰返し使用でも光感度の低下がほとんど起こらない優れた特性を備える電子写真感光体を提供することができる。
【0103】
また本発明によれば、ベンゾフラン骨格を有する新規なベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を提供することができる。
【0104】
また本発明によれば、前記ベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を極めて容易に高収率で製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電荷発生層5上に電荷移動層6を有する機能分離型感光層を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】電荷移動層6上に電荷発生層5を有する機能分離型感光層を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】分散型感光層を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図3の電子写真感光体において表面保護層7を有する例を示す断面図である。
【図5】図1の電子写真感光体において中間層8を有する例を示す断面図である。
【図6】重クロロホルム中でのベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)の1H−NMRスペクトルである。
【図7】重クロロホルム中でのベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)の13C−NMRスペクトルである。
【図8】重クロロホルム中でのベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物(例示化合物No.1)のDEPT135での13C−NMRスペクトルである。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 電荷発生物質
3 電荷移動物質
4,14 感光層
5 電荷発生層
6 電荷移動層
7 表面保護層
8 中間層
Claims (8)
- 導電性支持体上に設けられた感光層中に、電荷移動物質として下記一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を含有していることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記電荷移動物質を含有する電荷移動層との積層構造から成ることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質と前記電荷移動物質とを含有する単一層から成ることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 下記一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物。
- 下記一般式(V)で示されるベンゾ[b]フランアルデヒド化合物と、下記一般式(VI)で示されるヒドラジン化合物とを反応させて、下記一般式(I)で示されるベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物を生成することを特徴とするベンゾフラン−環状ヒドラゾン化合物の製造方法。
aは、置換基を含んでもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、nは1〜4の整数を示す。ただし、nが2以上のとき、複数のaは同一でも異なってもよい。)
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