JP3619444B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関し、さらに詳しくは、特定のアミン化合物を含有する電子写真感光体の感光層に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術は、即時性があり、高画質の画像が得られるので、近年では複写機の分野に留まらず、各種プリンターの分野でも使用され、その応用範囲はますます広がっている。電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称す)の分野では、その光導電性材料として古くは、セレニウム、ヒ素、セレニウム合金、セレニウム−テルル合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛などの無機系の材料が用いられていた。しかしながら、近年ではこのような無機系の材料に代わって、無公害で、良好な成膜性、製造の容易性などの利点を有する有機系の光導電性材料を主体とする有機感光体が開発されるようになった。
【0003】
有機感光体の中でも電荷発生物質より構成される電荷発生層と電荷移動物質より構成される電荷移動層との2層を順次積層した、いわゆる積層型感光体が考案され、研究の主流となっている。積層型感光体ではそれぞれ効率の良い電荷発生物質および電荷移動物質を組み合わせることによって、
1)より高感度な感光体が得られる。
2)材料の選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られる。
3)塗布の生産性が高く、比較的原価面でも有利である。
などの利点が得られるので、積層型感光体が感光体の主流となっている。また耐刷性能も高く、総コピー枚数が20万枚以上、1分間のコピー速度が70枚以上といった、高耐刷、高速性能を有する複写機も上市されている。
【0004】
このように、これまで実用化されている有機系積層型感光体の中には、優れた性能を有する感光体もあるが、大部分はその性能を追求する上で、感光体製造に関する種々の問題点を今なお抱えているのが現状である。
【0005】
これらの問題点の中で、電荷移動物質に関わるものを幾つか列挙すると、
1)バインダ樹脂に対する相溶性が低い。
2)結晶が析出しやすい。
3)繰り返し使用した場合に感度変化が生じる。
4)帯電能、繰り返し特性が悪い。
5)残留電位特性が悪い。
などが挙げられる。
【0006】
電荷移動物質に関する先行技術の中から代表的なものを、構造的な特徴によって分類すると、まず初期においては、アリレン基(ほとんどが単なるフェニレン基である)をその中心母核に持つヒドラゾン系化合物(特開昭54−59143)、スチルベン・スチリル系化合物(特開昭58−198043)およびトリアリールアミン系化合物(特公昭58−32372)が精力的に研究された。その後、単環式の複素環系をその中心母核に持つ一連の化合物群、フェノチアジン系化合物、トリアゾール系化合物、キノキサリン系化合物、オキサジアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、ジヒドロニコチンアミド化合物、インドリン化合物およびセミカルバゾン化合物などが開発されるようになった。最近では縮合多環式炭化水素系化合物をその中心母核に持つピレン誘導体、ナフタレン誘導体およびターフェニル誘導体(特開平7−48324)などが開発されている。
【0007】
しかしながら、このように電荷移動物質として数多くの有機化合物が開発されているにもかかわらず、前述の問題点を全て満足する有機化合物はなく、感光体として要求される基本的な性質、さらには機械的強度、高耐久性などを満足するものは未だ充分に得られていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電荷移動物質として新規なベンゾフラン、ベンゾチオフェンまたはインドール環を持つアミン化合物を用いて、高感度で高耐久性を有する電子写真感光体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高感度および高耐久性を有する光導電性物質の研究を行った結果、特定のアミン化合物を感光層中に含有せしめることが有効であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、導電性支持体上に設けられた感光層が、下記一般式(I)で表されるアミン化合物を、電荷移動物質として含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0011】
【化8】
【0012】
(式中、aは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは、1〜4の整数を示す。ただしmが2以上のとき、aの各々は同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。R1は、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基または水素原子を示す。Xは、酸素原子、硫黄原子またはN−R2を示し、R2は、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基または置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。Ar1は、置換基を含んでいてもよいアリール基、置換基を含んでいてもよい複素環基、置換基を含んでいてもよいアラルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基または置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。nは、1〜2の整数を示す。)
【0013】
本発明に従えば、一般式(I)で表されるアミン化合物を電荷移動物質として感光層に含有させることによって、光に対する感度が高く、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。すなわち該アミン化合物は、芳香環に基づくπ電子の広い共役系を有しているので、電荷移動度を高くして電子写真感光体の残留電位特性を向上させることができる。また該アミン化合物は、バインダ樹脂との相溶性に優れているため、感光層中に多量に含有させて電子写真感光体の光感度を向上させることができる。さらに該アミン化合物は、結晶として析出しにくいので、電子写真感光体の繰返し使用時の特性を安定させることができる。
【0014】
また本発明は、前記一般式(I)で表されるアミン化合物が、下記一般式(II)〜(V)のいずれかで表されるアミン化合物であることを特徴とする。
【0015】
【化9】
【0016】
(式中、Ar2は、置換基を含んでいてもよいアリール基、置換基を含んでいてもよい複素環基、置換基を含んでいてもよいアラルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基または炭素数1〜3のジアルキルアミノ基を示す。a,R1,X,mおよびnは、一般式(I)で示したものと同義である。)
【0017】
【化10】
【0018】
(式中、bは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、lは、1〜5の整数を示す。ただしlが2以上のとき、bの各々は同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。a,R1,X,mおよびnは、一般式(I)で示したものと同義である。)
【0019】
【化11】
【0020】
(式中、cは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、kは、1〜5の整数を示す。ただしkが2以上のとき、cの各々は同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。a,R1,Xおよびmは、一般式(I)で示したものと同義である。)
【0021】
【化12】
【0022】
(式中、dおよびeは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、iおよびjは、1〜4の整数を示す。ただしiおよびjが2以上のとき、対応するdおよびeはそれぞれ同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。a,R1,Xおよびmは、一般式(I)で示したものと同義である。)
【0023】
本発明に従えば、前記一般式(II)〜(V)で表されるアミン化合物を電荷移動物質として感光層に含有させることによって、前述の一般式(I)で表されるアミン化合物を含有する感光体の特性を備えた電子写真感光体を提供することができる。
【0024】
また本発明は、前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記電荷移動物質を含有する電荷移動層との積層構造から成ることを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、電荷移動物質として前記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるアミン化合物を使用することによって、電荷発生層と電荷移動層とを積層した、高感度で耐久性に優れた機能分離型の電子写真感光体を提供することができる。
【0026】
また本発明は、前記感光層が、電荷発生物質と前記電荷移動物質とを含有する単一層から成ることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、バインダ樹脂中に電荷発生物質と、電荷移動物質として前記一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるアミン化合物とを分散させた単一層からなる感光層を有する電子写真感光体を提供することができる。該電子写真感光体は、正帯電においても優れた感度および繰返し特性を有するという特徴を有する。
【0028】
また本発明は、導電性支持体と前記感光層との間に中間層を設けたことを特徴とする。
【0029】
本発明に従えば、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることによって、感光層の保護機能や導電性支持体との接着機能を付与するとともに、感光層の塗工性を高め、さらには導電性支持体から感光層への電荷注入やレーザー光の基板反射が主原因と考えられる干渉縞の発生などを防止することができる。
【0030】
また本発明は、前記電荷移動層または前記感光層が、ビニル化合物の重合体およびその共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂ならびにエポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をバインダ樹脂として含有することを特徴とする。
【0031】
本発明に従えば、バインダ樹脂がこれらの樹脂である場合は、前記一般式(I)〜(V)で表されるアミン化合物との相溶性が高いため、感光層中に多量にアミン化合物を含有させることができ、光感度の高い電子写真感光体を提供することができる。
【0032】
また本発明は、下記一般式(IV)または(V)で表されるアミン化合物である。
【0033】
【化13】
【0034】
(式中、cは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、kは、1〜5の整数を示す。ただしkが2以上のとき、cの各々は同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。a,R1,Xおよびmは、一般式(I)で示したものと同義である。)
【0035】
【化14】
【0036】
(式中、dおよびeは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、iおよびjは、1〜4の整数を示す。ただしiおよびjが2以上のとき、対応するdおよびeはそれぞれ同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。a,R1,Xおよびmは、一般式(I)で示したものと同義である。)
【0037】
本発明に従えば、広い共役系を有していて、バインダ樹脂との相溶性が優れており、バインダ樹脂中に分散させても結晶として析出しにくい、光導電性物質として好適なアミン化合物を提供することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明によるアミン化合物は、下記一般式(I)で表される。
【0039】
【化15】
【0040】
式(I)において、aは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは、1〜4の整数を示す。ただしmが2以上のとき、aの各々は同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。
【0041】
ここで、aの置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルなどが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基および1,1,1−トリフルオロエチル基などが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基などが、炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシなどが、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−i−プロピルアミノなどが、またハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが、それぞれ挙げられる。一般的には電子供与性の置換基が好ましい。
【0042】
R1は、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基または水素原子を示す。
【0043】
R1の置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピルなどが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基および1,1,1−トリフルオロエチル基などが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基などが、炭素数1〜3のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシなどが、また炭素数1〜3のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが、それぞれ挙げられる。
【0044】
Xは、酸素原子、硫黄原子またはN−R2を示し、R2は、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基または置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。
【0045】
R2の置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基の具体的例としては、メチル基およびエチル基などが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基および1,1,1−トリフルオロエチル基などが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基などが、それぞれ挙げられる。
【0046】
Ar1は、置換基を含んでいてもよいアリール基、置換基を含んでいてもよい複素環基、置換基を含んでいてもよいアラルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基または置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。
【0047】
Ar1の置換基を含んでいてもよいアリール基の具体例としては、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ピレニル、ビフェニルなどが、置換基を含んでいてもよい複素環基の具体例としては、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、N−エチルカルバゾリルなどが挙げられる。
nは、1〜2の整数を示す。
【0048】
特に一般式(I)で表されるアミン化合物のうち、電子写真特性、製造原価、および製造などの観点から優れた化合物としては、Ar1がフェニル基、p−トリル基、p−アニシル基、ビフェニル基またはナフチル基、R1およびaが水素原子、Xが酸素または硫黄原子およびnが2である化合物が挙げられる。
【0049】
前記一般式(I)に含まれるアミン化合物としては、具体的には、下記一般式(II)〜(V)で表されるアミン化合物を挙げることができる。
【0050】
【化16】
【0051】
式(II)において、Ar2は、置換基を含んでいてもよいアリール基、置換基を含んでいてもよい複素環基、置換基を含んでいてもよいアラルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基または炭素数1〜3のジアルキルアミノ基を示す。
a,R1,X,mおよびnは、一般式(I)で示したものと同義である。
【0052】
Ar2の置換基を含んでいてもよいアリール基および置換基を含んでいてもよい複素環基の具体例としては、Ar1と同様の官能基を挙げることができる。
【0053】
【化17】
【0054】
式(III)において、bは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、lは、1〜5の整数を示す。ただしlが2以上のとき、bの各々は同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。
a,R1,X,mおよびnは、一般式(I)で示したものと同義である。
【0055】
【化18】
【0056】
式(IV)において、cは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、kは、1〜5の整数を示す。ただしkが2以上のとき、cの各々は同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。
a,R1,Xおよびmは、一般式(I)で示したものと同義である。
【0057】
【化19】
【0058】
式(V)において、dおよびeは、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、iおよびjは、1〜4の整数を示す。ただしiおよびjが2以上のとき、対応するdおよびeはそれぞれ同一でも異なってもよく、互いに環を形成してもよい。
a,R1,Xおよびmは、一般式(I)で示したものと同義である。
【0059】
一般式(III)〜(V)において、b、c、dおよびeの置換基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルなどが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基および1,1,1−トリフルオロエチル基などが、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基などが、炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシなどが、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−i−プロピルアミノなどが、またハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが、それぞれ挙げられる。
【0060】
一般式(II)〜(V)で表されるアミン化合物は、前述のように一般式(I)で表されるアミン化合物に包含される化合物である。これらのアミン化合物を具体的に挙げれば、たとえば表1および2に示す化合物を例示することができるが、これによって本発明のアミン化合物が限定されるものではない。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
一般式(II)〜(V)で表されるアミン化合物を含む一般式(I)で表されるアミン化合物は、下記一般式(VI)で表される複素環化合物の2位のヨウ素誘導体と、1級または2級アミン化合物とを反応することによって合成することができる。一般式(VI)のヨウ素誘導体は、下記一般式(VII)で表される複素環化合物を、従来公知の方法により、たとえば酸触媒の存在下などで、ヨウ素と反応させることによって得られる。
【0064】
【化20】
【0065】
式(VI)および(VII)において、a、R1、Xおよびmは、一般式(I)において定義したのと同義である。
【0066】
一般式(IV)および(V)で表されるアミン化合物は、次式に示すように(VI)のヨウ素誘導体とアニリン化合物(VIII)やビフェニルアミン化合物(IX)とを、銅触媒などの存在下で反応させることによって得られる。
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
式(VIII)および(IX)において、c,d,e、k、iおよびjは、一般式(IV)および(V)において定義したのと同義である。
【0070】
本発明の電子写真感光体は、前述の一般式(I)〜(V)で表されるアミン化合物を電荷移動物質として用いるものであり、種々の実施態様がある。以下、図面に沿って詳細に説明する。図1は、本発明の実施の一形態による積層型電子写真感光体を示す断面図で、導電性支持体1の上に、電荷発生物質2を主成分としてバインダ樹脂中に分散させた電荷発生層5と、電荷移動物質3を主成分としてバインダ樹脂中に分散させた電荷移動層6とを積層した感光層4を有する機能分離型感光体である。電荷発生層5の表面上に電荷移動層6が形成されており、この電荷移動層6中に電荷移動物質3として、前述の一般式(I)〜(V)で表されるアミン化合物を含有する。
【0071】
図2は、本発明の実施の第2の形態による積層型電子写真感光体を示す断面図で、図1と同一の電荷発生層5と、電荷移動層6との積層構造より成る機能分離型感光体であるが、図1とは逆に、電荷移動層6の表面に電荷発生層5が形成されている。この電荷移動層6中に電荷移動物質3として、前述の一般式(I)〜(V)で表されるアミン化合物を含有する。
【0072】
図3は、本発明の実施の第3の形態による単層型電子写真感光体を示す断面図で、導電性支持体1の上に、電荷発生物質2と、一般式(I)〜(V)のいずれかで表される電荷移動物質3とをバインダ樹脂中に分散させた単層より成る感光層14を有する。
【0073】
本発明の実施形態による電子写真感光体は、前述の一般式(I)〜(V)のいずれかで表されるアミン化合物を電荷移動物質3として含有するが、該アミン化合物は、1種単独で、または2種以上混在してもよいし、また他の電荷移動物質をも併せて含有してもよい。他の電荷移動物質としては、たとえばβ−フェニル−[4−(ベンジルアミノ)]スチルベン、β−フェニル−[4−(N−エチル−N−フェニルアミノ)]スチルベンおよび1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニルブタジエンなどのスチリル化合物、4−(ジベンジルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、4−(エチルフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、4−(N,N−ビス(4−トリル)アミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、3,3−ビス−(4’−ジエチルアミノフェニル)−アクロレイン−N,N−ジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン化合物または4−メトキシ−4’−(4−メトキシスチリル)トリフェニルアミンおよび4−メトキシ−4’−スチリルトリフェニルアミン などのトリフェニルアミン化合物などが挙げられる。
【0074】
本発明の実施形態による電子写真感光体においては、電荷発生物質2として光吸収によって極めて高い効率で電荷を発生させる光導電性の顔料を用いる。具体的には、各種金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンおよびハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、ペリレンイミドやペリレン酸無水物などのペリレン酸顔料、ビスアゾ系顔料やトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、その他キナクリドン系顔料およびアントラキノン系顔料などが挙げられる。とくに電荷を発生する顔料に無金属フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、フルオレンやフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンから成るビスアゾ顔料およびトリスアゾ顔料を用いた場合は、高い感度を示す秀れた電子写真感光体を与える。
【0075】
前記感光層4および14中には、光増感剤として染料を添加してもよい。添加する染料としては、たとえばメチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどで代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルー、メチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルー、メルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、その他シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料およびチオピリリウム塩染料などを挙げることができる。
【0076】
なおこれらの染料は、前記電荷発生物質2として用いてもよい。その場合、これらの染料は、単独で使用してもよいが、顔料を共存させることによりさらに高い効率で電荷を発生させることができる。
【0077】
図1〜3の電荷発生層5、電荷移動層6および感光層14は、電荷発生物質2や電荷移動物質3をバインダ樹脂中に分散させて形成する。これらのバインダ樹脂は、利用分野に応じて種々の材料が用いられる。たとえば、複写機用またはプリンタ用感光体の分野では、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂およびポリアリレート樹脂などが用いられる。これらの樹脂は、単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。なかでも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドなどの樹脂は、体積抵抗値が1013Ω以上であり、また皮膜性、電位特性などにも優れている。
【0078】
これらのバインダ樹脂の添加量は、前記アミン化合物に対し、重量比で0.2〜20倍量で、好ましくは0.5〜5倍量の範囲である。添加量が、0.2倍量未満であると前記アミン化合物が感光体表面より析出してくる。また、20倍量を超えると著しく感度の低下をまねく。
【0079】
印刷版の分野では、特にアルカリ性バインダ樹脂を用いる。アルカリ性バインダ樹脂とは、水またはアルコール性のアルカリ性溶剤(混合系も含む)に可溶な酸性基、たとえば、酸無水物基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、スルホンアミド基、またはスルホンイミド基を有する高分子物質をいう。これらのアルカリ性バインダ樹脂は、酸価が100以上の高い値を持っていることが好ましい。酸価の大きなバインダ樹脂は、アルカリ性溶剤に易溶もしくは容易に膨潤化する。このようなバインダ樹脂としては、たとえば、スチレン:無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル:無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル:クロトン酸共重合体、メタクリル酸:メタクリル酸エステル共重合体、フェノール樹脂およびメタクリル酸:スチレン:メタクリル酸エステル共重合体などを挙げることができる。これらのアルカリ性バインダ樹脂の添加量は、前述の複写機用感光体の場合と大略同じでよい。
【0080】
また前記感光層4および14中には、繰返し使用に対しての残留電位の増加、帯電電位の低下および感度の低下などを防止する目的で、種々の化学物質を添加してもよい。これらの添加剤としては、たとえば1−クロルアントラキノン、ベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、ナフトキノン、4,4’−ジニトロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)アクリル酸エチル、9−アントラセニルメチルマロンジニトリル、1−シアノ−1−(p−ニトロフェニル)−2−(p−クロルフェニル)エチレンおよび2,7−ジニトロフルオレノンなどの電子吸引性化合物が挙げられる。
【0081】
その他の添加物として、酸化防止剤、カール防止剤、レベリング剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0082】
図4は、本発明の実施の第4の形態による単層型電子写真感光体を示す断面図で、図3の感光層14上に、感光層表面の保護を目的として表面保護層7を設けたものである。表面保護層7には、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂を用いることができる。また表面保護層7には、紫外線防止剤、酸化防止剤、シリコン樹脂などのレベリング剤、金属酸化物などの無機材料、有機金属化合物および電子受容性物質などを含有させてもよい。
【0083】
また表面保護層7や前記感光層4および14には、必要に応じて、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステルおよび塩素化パラフィンなどの可塑剤を混合させて、加工性および可撓性を付与し、機械的物性の改良を施してもよい。
【0084】
図5は、本発明の実施の第5の形態による積層型電子写真感光体を示す断面図で、図1の感光層4と導電性支持体1との間に中間層8を設けた機能分離型感光体である。
【0085】
図6は、本発明の実施の第6の形態による単層型電子写真感光体を示す断面図で、図3の感光層14と導電性支持体1との間に中間層8を設けたものである。
【0086】
導電性支持体1と感光層4または14との間に設けられる中間層8は、感光層の保護機能や導電性支持体との接着機能を付与するとともに、感光層の塗工性を高め、さらには導電性支持体1から感光層への電荷注入防止を目的とするものである。このような中間層8を構成する材料としては、カゼイン、ゼラチン、でんぷん、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ニトロセルロースなどのセルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン、アルコキシメチル化ナイロンなど)、ポリウレタン、ポリイミドなどの有機材料およびアルミニウム陽極酸化膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化チタンなどの無機材料が好ましい。また残留電位の低減などのために、これらの有機材料に酸化チタン、酸化スズおよび酸化アルミニウムなどの粒子を分散させてもよい。
【0087】
中間層8の膜厚としては、好ましくは0.01μm以上20μm以下、より好ましくは0.05μm以上10μm以下の範囲である。中間層8の膜厚が0.01μmより薄ければ、実質的に中間層として機能しなくなり、導電性支持体1の欠陥を被覆して均一な表面性が得られず、導電性支持体1からの電荷の注入を防止することができなくなり、帯電性が低下する。20μmより厚くすると中間層を浸漬塗布法などで製造するのが困難になり、塗布膜の機械的強度が低下するので好ましくない。
【0088】
本発明の実施の一形態による電子写真感光体は、金属ドラム、金属板、導電性加工を施した紙およびプラスチックフィルムなどの導電性支持体1上に、前述のバインダ樹脂を用いて、感光層4または14を形成して構成する。感光体の感度を上げるためには、前記増感剤およびバインダ樹脂に対する可塑性を付与する物質を加えて均一な感光層皮膜を形成するのが好ましい。
【0089】
図3のような単層型電子写真感光体の場合は、たとえば電荷移動物質3として前述のアミン化合物と、電荷発生物質2とを、バインダ樹脂とともに、溶媒に溶解または分散させた感光層用塗布液を用いて、導電性支持体1上に感光層14を形成する。感光層用塗布液には、必要に応じて化学増感剤や電子吸引性化合物などの前述の添加剤を添加し、溶解または分散させる。感光層14の形成は、前記感光層用塗布液を導電性支持体1上に、浸漬塗布法などの方法によって塗布し、塗布液を乾燥して行う。
【0090】
感光層14の膜厚としては、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下の範囲である。
【0091】
図1のような電荷発生効率の高い電荷発生層5と電荷移動層6とから成る積層型電子写真感光体の場合は、まず導電性支持体1上に、電荷発生物質2としての増感染料、アゾ系顔料またはフタロシアニン系顔料などを、バインダ樹脂とともに溶媒に溶解または分散させた電荷発生層用塗布液を用いて、電荷発生層5を形成する。電荷発生層用塗布液には、必要に応じて前述の添加剤を添加し、溶解または分散させる。電荷発生層5の形成は、前記電荷発生層用塗布液を導電性支持体1上に、浸漬塗布法などの方法によって塗布し、塗布液を乾燥して行う。電荷発生層5の膜厚としては、好ましくは0.05μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上1μm以下の範囲である。
【0092】
次いで、前述のようにして形成した電荷発生層5上に、電荷移動物質3として前記アミン化合物を、バインダ樹脂とともに溶媒に溶解または分散させた電荷移動層用塗布液を用いて、電荷移動層6を形成する。電荷移動層用塗布液には、必要に応じて酸化防止剤や電子吸引性化合物などの前述の添加剤を添加し、溶解または分散させる。電荷移動層6の形成は、導電性支持体1上に形成した電荷発生層5の表面上に、前記電荷移動層用塗布液を浸漬塗布法などの方法によって塗布し、塗布液を乾燥して行う。電荷移動層6の膜厚としては、好ましくは5μm以上60μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下の範囲である。
【0093】
前述の感光層14や電荷発生層5、電荷移動層6の形成に用いる塗布液の溶媒としては、たとえばベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシメチルエーテル、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独または2種以上混合して、または必要に応じてアルコール類、アセトニトリル、メチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加え使用してもよい。
【0094】
以下、本発明の電子写真感光体について、実施例にもとづいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
【0095】
(製造例1)例示化合物No.2のアミン化合物の製造
ベンゾフラン59.02g(3.3当量)にヨウ素42.0g(1.0当量)を加え良く攪拌し、その溶液に硝酸28.0ml(3.0当量)/水28.0ml溶液を、氷冷下激しく攪拌しながら滴下した。滴下後、30分環流を行い、反応を完結させ、放冷した反応混合物にクロロホルム200mlを加えて、有機層を抽出した。その有機層を希NaOH水溶液で良く洗浄した後、塩化カルシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、減圧蒸留を行い、中間体である2−ヨードベンゾフランを得た(収率:60%)。
【0096】
次に、合成した2−ヨードベンゾフランを10.25g(2.1当量)およびp−メチルアニリン2.15g(1.0当量)、18−クラウン−6−エーテル1.06g(0.2当量)、銅粉末5.1g(4.0当量)、無水炭酸カリウム22.1g(8.0当量)をo−ジクロロベンゼン150mlに混合し30時間、激しく加熱/攪拌/還流させる。反応終了後、熱時セライト濾過を行い濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマト(n−ヘキサン/塩化メチレン=3/7から塩化メチレンのみで溶出)により精製することにより目的のアミン化合物(例示化合物No2)5.0gが白色粉末化合物として得られた(収率:74%)。得られたアミン化合物(例示化合物No2)の1H−NMRスペクトルは2.29ppm(s,3H,Me)、6.8−7.7ppm(m,14H,
Benzene and Benzofurane)を示した。また、元素分析値は、C:80.9%、H:5.0%、N:4.2%(計算値C:81.40%、H:5.05%、N:4.13%)で、目的化合物であることが確認できた。
【0097】
(製造例2)例示化合物No.17のアミン化合物の製造
ベンゾフランをベンゾチオフェン67.05gに変更した以外は、製造例1と同様にして合成を行い、中間体である2‐ヨードベンゾチオフェンを合成した。次にこの2‐ヨードベンゾチオフェンとp−ビフェニルアミンとを製造例1と同様にして反応し、例示化合物No.17に示したアミン化合物を製造した(収率:70%)。得られたアミン化合物の1H−NMRスペクトル(CDCl3)は、6.8−7.7ppm(m、Benzene and Benzothiophene)を示した.また、元素分析値は、C:77.0%、H:4.6%、N:3.5%(計算値:C:77.56%、H:4.42%、N:3.23%)で、目的化合物であることが確認できた。
【0098】
(実施例1〜4、比較例)
前述の図1に示した電荷移動層6に含有される電荷移動物質3として例示化合物No.2,7,15および23に示したアミン化合物、および従来公知の電荷移動物質である4−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒド−N,N,−ジフェニルヒドラゾンを比較例として用いて、各々を含有させた積層構造の感光層4を形成して、5種類の電子写真感光体を製造した。
【0099】
アルミ蒸着のポリエステルフィルム(膜厚80μm)を支持体とし、その上に下記構造式(VI)で表されるビスアゾ顔料をフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製:PKHH)の1%THF溶液中に重量比で樹脂と同量加え、ついでペイントコンディショナー(レッドデビル社製)の中で直径1〜5mmのガラスビーズと一緒の状態で約2時間分散を行い、ドクターブレイド法により塗布して、乾燥した。乾燥後の膜厚は0.2μmであった。
【0100】
【化23】
【0101】
この顔料層(電荷発生層)の上に本発明の例示化合物No.2,No.7,No.15,No.23または4−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾンを1gと、ポリアリレート樹脂(ユニチカ製:U−100)1.2gをテトラヒドロフランに溶かした溶液(15%)をスキージングドクターにより塗布し、乾燥膜厚25μmの樹脂−アミン化合物固溶相(電荷移動層)を作成した。
【0102】
上記のように作成した積層型電子写真感光体の電子写真特性は、静電記録紙試験装置(川口電機製:SP−428)により評価した。測定条件は、加電圧:−6kV、スタティック:No.3であり、白色光照射(照射光:5ルックス)による−700Vから−100Vに減衰させるに要する露光量E100(ルックス・秒)および初期電位V0(−ボルト)を測定し、その値を表3に示した。さらに同装置を用いて、加電―除電(除電光:40ルックスの白色光を1秒照射)を1サイクルとして1万回同様の操作を行った後の露光量E100(ルックス・秒)および初期電位V0(−ボルト)を測定し、E100およびV0の変化を調べた。
【0103】
【表3】
【0104】
表3より、本発明のアミン化合物は、従来公知の化合物と比較して感度および繰返し特性も良好であることがわかった。
【0105】
(実施例5)
前述の図5に示した電荷移動層6に含有される電荷移動物質3として、例示化合物No.8に示したアミン化合物を含有させた積層構造の感光層4を形成して、電子写真感光体を製造した。
【0106】
実施例1と同様のアルミ蒸着のポリエステルフィルムを導電性支持体として、この支持体上に、酸化チタン2.1gと共重合ナイロン3.9g(東レ社製:CM8000)をメチルアルコール32.9gとジクロロエタン61.1gの混合溶媒に溶解した溶液を塗布し、乾燥して、膜厚1μmの中間層を形成した。この中間層の上に、下記構造式(VII)で表されるx型無金属フタロシアニン(大日本インキ社製:ファストゲンブルー8120)0.4gを、塩化ビニル:酢酸ビニル共重合体樹脂(積水化学社製:エスレックスM)0.3gを溶かした酢酸エチル溶液30ml中に加え、ペイントコンディショナー中で約20分間分散を行い、ドクターブレイド法により塗布し、乾燥後の膜厚が0.4μmになるように電荷発生層を形成させた。
【0107】
【化24】
【0108】
この電荷発生層の上に、本発明の例示化合物No.8のアミン化合物を重量比で50%含有したポリアリレート層を積層して2層から成る感光体を作成した。
【0109】
本感光体の780nmの光を用いて電位半減に要したエネルギー(E50)および初期電位(−V0)を求めたところ、V0=−725(ボルト)、E50=0.20(uj)と非常に感度の高い、かつ高帯電性の感光体であった。
【0110】
また、シャープ社製レーザプリンタ(WD−580P)を改造し、ドラム部に本感光体を張り付け、連続空コピー(Non Copy Aging)を1万回行った後、その初期電位低下、感度の低下の度合いを調べた。
【0111】
その結果、V0=−715(ボルト)、E50=0.21(uj)と第1回目と比べてほとんど値の変動が見られなかった。
【0112】
(実施例6〜9)
前述の図3に示した電荷移動物質3として、例示化合物No.3、9、17および24に示したアミン化合物の各々を含有させた単一層の感光層14を形成して、4種類の電子写真感光体を製造した。
【0113】
アルミ基盤表面をアルマイト加工(アルマイト層:7μm)した支持体上に、本発明の例示化合物No.3、No.9、No.17またはNo.24を1g、下記構造式(VIII)で表されるポリカーボネート樹脂1.1g、N,N−3,5−キシリル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシルイミド0.15gおよび紫外線吸収剤0.05gを塩化メチレンに溶かした(イミド化合物は一部分分散状態)溶液をアプリケーターにより塗布し、乾燥膜厚20μmの単層感光体を得た。
【0114】
【化25】
【0115】
上記のようにして作成した感光体の電子写真特性は、静電記録紙試験装置によって評価した。測定条件は、加電圧:5.5kV、スタティック:No.3で行った。白色光照射による+700Vから+100Vに減衰させるに要する露光量E100(ルックス・秒)を測定し、その値を表3に示した。また、一万回の空コピーテストを行い、感度(E100)の低下の度合いも表4に示した。
【0116】
【表4】
【0117】
表4より本発明のアミン化合物を用いた感光体は、正帯電においても優れた感度および繰返し特性を有する感光体であることが判った。
【0118】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、前述のアミン化合物を含有する感光体は高感度で、高耐久性を有する有機系の電子写真感光体であり、従来の無機系の感光体に比べて毒性がなく、有機材料を利用できるという点で資源的にも問題がない。さらに本発明の電子写真感光体は、正負の両帯電性を有し、繰返し使用しても光感度の低下がほとんど起こらないという優れた特性を備えている。
【0119】
また、前記アミン化合物を用いると、成膜性が優れているので感光体の製造も容易であり、透明性がよく、軽量の電子写真感光体を提供することができる。
【0120】
さらに本発明によれば、広い共役系を有していて、バインダ樹脂との相溶性が優れており、バインダ樹脂中に分散させても結晶として析出しにくい、光導電性物質として好適なアミン化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態による積層型電子写真感光体を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の第2の形態による積層型電子写真感光体を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の第3の形態による単層型電子写真感光体を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の第4の形態による表面保護層7を有する単層型電子写真感光体を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の第5の形態による中間層8を設けた積層型電子写真感光体を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の第6の形態による中間層8を設けた単層型電子写真感光体を示す断面図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 電荷発生物質
3 電荷移動物質
4,14 感光層
5 電荷発生層
6 電荷移動層
7 表面保護層
8 中間層
Claims (12)
- 導電性支持体上に設けられた感光層が、下記一般式(I)で表されるアミン化合物を、電荷移動物質として含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記アミン化合物が、下記一般式(V)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記電荷移動物質を含有する電荷移動層との積層構造から成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質と前記電荷移動物質とを含有する単一層から成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体と前記感光層との間に中間層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記電荷移動層が、ビニル化合物の重合体およびその共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂ならびにエポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をバインダ樹脂として含有することを特徴とする請求項6記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、ビニル化合物の重合体およびその共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂ならびにエポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂をバインダ樹脂として含有することを特徴とする請求項7記載の電子写真感光体。
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