JP3810823B2 - ポリオキシメチレン組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱安定性、特に成形時の金型付着物の発生が改善され、且つ組成物から発生するギ酸による機能障害(例えば、ゴム浸み出し物からの汚染や金属磁性体の腐食)が改善されたポリオキシメチレン組成物及びその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリオキシメチレンは、ホルムアルデヒド、又はその環状オリゴマーであるトリオキサン、又はトリオキサンと環状エーテル・環状ホルマール等のコモノマーから重合又は共重合され、末端が安定化処理され、且つ酸化防止剤及びその他の熱安定剤が添加されて分解の防止が図られている。
ポリオキシメチレンに添加される酸化防止剤としては、立体障害性フェノール化合物又は立体障害性アミン化合物が、その他の熱安定剤としては、ポリアミド、尿素誘導体、アミジン化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物が提案されているが、これら化合物を配合したポリオキシメチレン樹脂組成物は成形の際、成形機のシリンダーの中で熱や酸素の作用を受けて、ホルムアルデヒド臭を発生し易くなり、労働(衛生)環境を悪化させたり、又長時間にわたり成形を行うと金型面内に微粉状物、タール状物(MD)が付着して成形品外観の悪化を招くなど成形加工上の欠点を有し、これまでに種々の工夫・提案がなされてきているにもかかわらず、必ずしも満足な結果は得られていなかった。
例えば、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物は添加剤のうち有用のものとして知られ、西ドイツ特許出願公開第1694097 号公報には酸化防止剤と水溶性メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物の組合せが、特開昭52−33943 号公報には酸化防止剤と水に不溶性のメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物の組合せが提案されている。これらの提案によってポリオキシメチレン組成物の熱安定性は改善されるものの、ポリオキシメチレンが利用される分野によっては、その材料としての性質にもさらに一層の改良が要求されてきている。
このような要求の例として、電気・電子機器、例えばオーディオ、ビデオ等に使用される機構部品における機能障害の改善がある。
即ち、環境からの汚染を防ぐために無塵室等、高度に清浄化された環境下で製造、組み立てられたオーディオ、ビデオ機構部品も、高温高湿雰囲気に曝されると埃など環境からの汚染がないにもかかわらず実用上の動作に支障をきたすことが多い。これはオーディオ、ビデオ機構部品に使用されているゴムローラー中の添加剤がゴム表面にブリードし、磁気テープを媒介として磁気ヘッドを汚染するためである。この問題に対し、一時的な対策として、高温高湿雰囲気に曝されたオーディオ、ビデオ機構部品中のゴム表面の洗浄が行われており、ある程度の効果が得られている。しかし、この対策は恒久的なものでないばかりでなく、莫大な労働力を必要としている。又、同じくポリオキシメチレン成形品を、光磁気ディスク、金属蒸着テープ等の金属磁性体と比較的密閉された状態で使用すると、それら磁性体が腐食することもあり、根本的な問題の解決が望まれていた。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の如き問題点を解決すべく、ゴムのブリード及び金属磁性体の腐食について詳細な検討を行った結果、このような問題に対しては、オーディオ、ビデオ機構部品の構成材質が大きく関係していることを見出した。即ち、従来、オーディオ、ビデオ機構部品として、シャーシ(基盤)、ギヤ、軸受け等、テープカセット部品として、リール、ガイドローラー等、ディスクカートリッジ部品として、シャッター、カートリッジ本体を中心に使用されてきたポリオキシメチレン成形品が、比較的高温高湿中でローラー、ベルト等ゴム部品のブリードや金属磁性体の腐食を引き起こしていることが明らかとなり、その原因を検討した結果、ポリオキシメチレン成形品に含まれているギ酸が高湿度中の水分を媒体として放出され、それがゴム及び金属磁性体に付着、浸透し、特にゴムの場合では、ギ酸がゴムの中の水に難溶性の酸化マグネシウムと反応することで水に易溶性のギ酸マグネシウムを生成するため、これがゴム表面にブリードし、テープを媒介として磁気ヘッドを汚染していること、並びに金属磁性体の場合では、ギ酸自身が金属を腐食させることが明らかとなった。
ポリオキシメチレンは上述の如く酸化防止剤と各種安定剤添加により熱安定性が改善されているものの、成形加工時に多少の熱分解を起こすことは避け難く、このため成形品の内部にはその分解生成物であるホルムアルデヒド、ギ酸が含有されている。ホルムアルデヒドは成形品が数十℃以上に加熱されたときガスとなって周囲に放出されるので、成形品を高温加熱処理したり真空脱ガス処理したりすることによって大幅に減少せしめることができるが、ギ酸は百数十℃の高温で加熱処理しても熱水中で処理してもさほど減少せしめることはできない。
本発明者等はこの点について更に検討した結果、ポリオキシメチレンに酸化防止剤とメラミン・シアヌル酸塩及び特定の金属化合物を配合することによって、このギ酸の発生量を大幅に低減することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち本発明は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して、(a) 酸化防止剤0.01〜5.0 重量部、(b) メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレムから選ばれる1種以上の窒素含有化合物0.01〜5.0 重量部、(c) マグネシウム又はカルシウムの酸化物又は炭酸塩から選ばれる1種以上の金属含有化合物 0.001〜10重量部を配合してなるポリオキシメチレン組成物、並びに該組成物を成形してなり、当該ポリオキシメチレン組成物の成形体から発生されるギ酸量が成形品表面積1cm2 あたり 1.0マイクログラム以下であることを特徴とするポリオキシメチレン成形品である。
【0004】
以下本発明についての詳細な説明を行う。
本発明に用いるポリオキシメチレンとは、オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物で、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するコポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマーの何れにてもよく、又、分子が線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであってもよい。又、その重合度等に関しても特に制限はない。
【0005】
次に本発明において使用される(a) 酸化防止剤としては、2,2'−メチレンビス(4メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6 −ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5 −トリメチル−2,4,6 −トリス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5' −ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、4,4'−メチレンビス(2,6 −ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチル−フェノール)、ジ−ステアリル−3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)がヒンダードフェノール系酸化防止剤として挙げられ、又、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル)ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト等がリン系酸化防止剤として挙げられる。その他、ヒンダードアミン系の酸化防止剤も使用することができ、これらの少なくとも一種又は二種以上を使用することができる。これらの中でも1,6 −ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)は特に好ましい物質である。
【0006】
本発明で使用される(b) メラミン・シアヌル酸塩は公知の方法で製造される。即ち、メラミンに対するシアヌル酸の仕込みモル数を0.5 〜2.0 、好ましくは0.9 〜1.1 として反応を行った後、塩にならなかった過剰成分を洗浄・除去することで精製され、好ましくは50マイクロメーター以下、特に好ましくは10マイクロメーター以下に粉砕・分級されるものである。また、市販品を使用することも可能である。
また、メラムとメレムも公知の方法で製造される。例えば、メラミンを加熱し、脱アンモニアさせる方法やチオシアン酸アンモニウムを熱分解させる方法により製造することができる。
【0007】
本発明において添加配合される(a) 酸化防止剤の量は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは 0.1〜3重量部、(b) メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレムから選ばれる1種以上の窒素含有化合物の量は、0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。これらの物質の添加量が、過少の場合は充分なる効果が得られず、また過大の場合には、熱安定性の効果が飽和に達し、むしろ変色傾向が生じ好ましくない。
【0008】
本発明で使用される(c) 金属含有化合物とは、マグネシウム又はカルシウムの酸化物又は炭酸塩であり、具体的には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムである。
これらの化合物の配合量は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して 0.001〜10重量部であり、好ましくは0.001 〜5重量部、より好ましくは 0.001〜2重量部、特に好ましくは 0.003〜0.5 重量部である。0.001 重量部より少ない量では所望の効果を殆ど得ることが出来ず、又、10重量部より多い量では、ギ酸発生量抑制の効果が飽和に達し、むしろ変色傾向が生じ好ましくない。
【0009】
本発明の組成物に配合される(c) 金属含有化合物と(a) 酸化防止剤は、ポリマーの重合段階におけるモノマーに添加されても良いし、ポリマーの安定化工程で添加されても良い。
【0010】
又、成形時の金型付着物を微小量に抑える目的で、更に、炭素数10以上の脂肪酸エステル化合物を配合することが好ましく、特に多価アルコールとのエステル化合物が望ましい。その様な化合物としては、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノイソステアレート、グリセリンモノベヘネート、ペンタエリスリトールトリステアレート等が例示される。炭素数10以上の脂肪酸エステル化合物の配合量は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して0.01〜2.0 重量部であり、好ましくは0.05〜1.0 重量部である。
【0011】
又、ギ酸発生量の測定法について説明すると、上記組成物を成形し、かかる成形品を場合により切断し、その表面積を測定した後、その成形品の適当量(表面積30〜60cm2 程度) を1mlの純水に直接浸らないようにして密閉容器(容量100ml)に入れ、60℃に168 時間放置する。この密閉容器中の水を 100mlに希釈し、この溶液のギ酸濃度(μg)をイオンクロマトグラフ(横河ヒューレット・パッカード社製IC500 、有機酸用カラム、0.1mM 過塩素酸水溶液をキャリアとして)で測定し、成形品表面積あたりのギ酸発生量(μg/cm2)を求めた。
本発明において好ましいポリオキシメチレン成形品は、ギ酸発生量が成形品表面積1cm2 あたり 1.0マイクログラム以下、特に好ましくはギ酸発生量が成形品表面積1cm2 あたり 1.0マイクログラム以下であり、且つ樹脂分1グラムあたり 5.0マイクログラム以下のものである。本発明におけるギ酸発生量の数値規定は、通常の安定剤、離型剤等公知の添加剤を含有するポリオキシメチレン組成物を用いた成形品については勿論、無機充填剤あるいは他のポリマーを含有する組成物の成形品においても、その成形品表面の大部分がポリオキシメチレンである限り適用可能である。
【0012】
又、本発明のポリオキシメチレン組成物には、必須ではないが、更にその目的に応じ、本願の(b) メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレム以外の含窒素化合物、(c) マグネシウム又はカルシウムの酸化物又は炭酸塩以外の有機、無機の金属含有化合物を一種以上併用することもできる。
本発明のポリオキシメチレン組成物には、更に公知の各種添加剤を配合し得る。例えば、各種の着色剤、摺動性改良剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、耐候(光)安定剤、その他の界面活性剤、各種ポリマー等である。また、本発明の目的とする成形品の性能を大幅に低下させない範囲内であるならば、公知の無機、有機、金属等の繊維状、板状、粉粒状等の充填剤を1種または2種以上複合させて配合することも可能である。このような無機充填剤の例としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラスビーズ、タルク、マイカ、白マイカ、ウォラストナイト、等が挙げられるが、何等これらに限定されるものではない。又、本発明のポリアセタール樹脂成形品の調製は、従来の樹脂成形品調製法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合後、一軸または、二軸の押出機により、練り込み押出してペレット調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法等、何れも使用できる。又、かかる成形品に用いられる組成物の調製において、基体であるポリアセタール樹脂の一部または全部を粉砕し、これをその他の成分を混合した後、押出等を行うことは、添加物の分散性を良くする上で好ましい方法である。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ギ酸が弊害を引き起こすと考えられる用途には何れも使用可能であるが、電気・電子機器、特にオーディオ機器、ビデオ機器等の構成部品の少なくとも一部がゴム材料あるいは金属磁性体材料とポリオキシメチレン成形品が使用される分野(用途)に好適に使用される。具体的な成形品を以下に例示する。
少なくとも一部がポリオキシメチレン成形品及びゴム部品から構成された、あるいは金属接点が多数存在する電気・電子機器としては、カセットテープレコーダー等のオーディオ機器、VTR、8mmビデオ、ビデオカメラ等のビデオ機器、又はコピー機、ファクシミリ、プリンター、ワードプロセッサー等のOA機器であり、更にはモーター、発条等の駆動力で動く玩具、電話機、コンピュータ等に付随するキーボード等にも適用することができる。具体的な部品としては、シャーシ(基盤)、ギヤー、レバー、カムプーリー、軸受け等が挙げられる。
又、少なくとも一部がポリオキシメチレン成形品から構成された光および磁気メディアソフトとしては、例えば、金属薄膜型磁気テープカセット、磁気ディスクカートリッジ、光磁気ディスクカートリッジ、光ディスクカートリッジ等であり、更に詳しくは、音楽用メタルテープカセット、デジタルオーディオテープカセット、8mmビデオテープカセット、フロッピーディスクカートリッジ、ミニディスクカートリッジであり、具体的な部品としては、テープカセットの本体、リール、ハブ、ガイド、ローラー、ストッパー、リッド等、ディスクカートリッジの本体(ケース)、シャッター、ハブ、クランピングプレート等が挙げられる。その他、本発明のポリオキシメチレン成形品は、ウインドレギュレーターのキャリアプレートに代表される金属と接触する部品や、燃料系統、電気系統部品等の自動車部品、注射針のホルダー等の医用関係部品、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器等の生活用品等に好適に使用される。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、以下の例に示した評価の方法は次の通りである。
1)成形品からのギ酸発生量
ギ酸発生量は、総表面積約10cm2 の切断されたポリオキシメチレン成形品10gを1mlの純水に直接浸らないようにして密閉容器(容量100ml)に入れ、60℃/90%RHに168 時間放置後、この密閉容器中の水を100ml に希釈し、この溶液のギ酸濃度をイオンクロマトグラフ(横河ヒューレット・パッカード(株)製IC500 、有機酸用カラム、0.1mM 過塩素酸水溶液をキャリアとして)で測定することにより求めた。ギ酸発生量は、このイオンクロマトグラフによって得られた値を単位表面積に換算して表した。
2)ゴムのブルーミング
ポリオキシメチレン成形品が装着された基盤にゴム部品を組み込んだ音声画像再生機構部をポリエチレン袋で包装したものを用い、高温高湿中で下記要領でゴムのブルーミング試験を行った場合のゴム部品表面の浸み出し量(ゴム表面の顕微鏡観察により10段階にランク付け)と成形基盤のギ酸発生量との関係を表に示す。
ゴム部品としては、クロロプレンゴムを円筒状に成形したローラーを使用し、それをポリアセタール樹脂で成形された音声画像再生機構部用基盤に組み込み、ポリエチレン袋で包装した状態で60℃/90%RH雰囲気中に1週間放置後、ゴム表面に浸み出したものを顕微鏡観察し、その度合いを目視で10段階(無しを1、非常に多いを10)にランク付けした。尚、この試験は3回行ない、表にはその平均値を示した。
3)成形性(金型付着物の量)
試料ポリアセタール樹脂組成物を、射出成形機を用いて下記条件で特定形状の成形品を連続成形(24Hr)し、金型付着物の量を評価した。即ち、連続成形を行った時の金型の汚れを目視観察にて下記5段階で評価した。
(成形条件)
射出成形機;東芝IS30EPN(東芝機械(株)製)
シリンダー温度;210 ℃
射出圧力;750kg/cm2
射出時間;4sec
冷却時間;3sec
金型温度;30℃
実施例1〜11
ポリオキシメチレン共重合体(ポリプラスチックス(株)製、ジュラコン)に表1に示した酸化防止剤、メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレムとマグネシウム及びカルシウムの酸化物及び炭酸塩、更には脂肪酸エステル化合物を表1に示した割合(対ポリオキシメチレン100 重量部)で添加混合し押出機にてペレット状の組成物を得て上記評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1〜8
また、比較のため、表1に示すように、金属酸化物又は炭酸塩を添加しない場合、本発明の規定外の他の金属酸化物を添加した場合等について、実施例1と同様にしてペレット状の組成物を調製し、上記評価を行った。結果を表1に示す。
又、使用した酸化防止剤、メラミン・シアヌル酸塩、金属酸化物及び炭酸塩は以下の通りである。
1.酸化防止剤
a-1) トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
a-2) ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
2.メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレム
b-1) メラミン1モルに対してシアヌル酸1モルの割合で混合された混合物を 300 ℃で加熱した後、微粉砕し、純水で3回、アセトンで1回洗浄し、乾燥することにより得られたメラミン・シアヌル酸塩微粉末
b-2) 以下の如くして得られたメラムとメレムの混合物
メラミンを350 ℃に加熱し、発生してくるアンモニアガスを反応系外でフェノールフタレインを滴下した純水に吸収させた。これを塩酸で滴定しながら反応の終点を決めた。この反応物を冷却し、微粉砕した後、純水で3回、アセトンで1回洗浄し、乾燥することによりメラムとメレムの混合物を得た。
3.金属酸化物及び炭酸塩
c-1) 酸化マグネシウム
c-2) 酸化カルシウム
c-3) 炭酸マグネシウム
c'-1)酸化バリウム
c'-2)酸化亜鉛
4.脂肪酸エステル化合物
d-1) グリセリンモノステアレート
d-2) グリセリンモノイソステアレート
5.その他の化合物
e-1) メラミン
e-2) ジシアンジアミド
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
以上の説明及び実施例にて明らかなごとく、本発明の樹脂組成物からなる成形品のギ酸発生量が 1.0μg /cm2 以下ではポリアセタール樹脂成形品がゴムのブルーミングにほとんど影響していないことが明らかである。本発明によると以上のように成形品からのギ酸発生量を 1.0μg /cm2 以下に抑えることができるため、例えばゴム部品のブルーミング問題を根本的に解決することができ、上述の如き各種用途に好適に用いられる。
【産業上の利用分野】
本発明は、熱安定性、特に成形時の金型付着物の発生が改善され、且つ組成物から発生するギ酸による機能障害(例えば、ゴム浸み出し物からの汚染や金属磁性体の腐食)が改善されたポリオキシメチレン組成物及びその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリオキシメチレンは、ホルムアルデヒド、又はその環状オリゴマーであるトリオキサン、又はトリオキサンと環状エーテル・環状ホルマール等のコモノマーから重合又は共重合され、末端が安定化処理され、且つ酸化防止剤及びその他の熱安定剤が添加されて分解の防止が図られている。
ポリオキシメチレンに添加される酸化防止剤としては、立体障害性フェノール化合物又は立体障害性アミン化合物が、その他の熱安定剤としては、ポリアミド、尿素誘導体、アミジン化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物が提案されているが、これら化合物を配合したポリオキシメチレン樹脂組成物は成形の際、成形機のシリンダーの中で熱や酸素の作用を受けて、ホルムアルデヒド臭を発生し易くなり、労働(衛生)環境を悪化させたり、又長時間にわたり成形を行うと金型面内に微粉状物、タール状物(MD)が付着して成形品外観の悪化を招くなど成形加工上の欠点を有し、これまでに種々の工夫・提案がなされてきているにもかかわらず、必ずしも満足な結果は得られていなかった。
例えば、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物は添加剤のうち有用のものとして知られ、西ドイツ特許出願公開第1694097 号公報には酸化防止剤と水溶性メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物の組合せが、特開昭52−33943 号公報には酸化防止剤と水に不溶性のメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物の組合せが提案されている。これらの提案によってポリオキシメチレン組成物の熱安定性は改善されるものの、ポリオキシメチレンが利用される分野によっては、その材料としての性質にもさらに一層の改良が要求されてきている。
このような要求の例として、電気・電子機器、例えばオーディオ、ビデオ等に使用される機構部品における機能障害の改善がある。
即ち、環境からの汚染を防ぐために無塵室等、高度に清浄化された環境下で製造、組み立てられたオーディオ、ビデオ機構部品も、高温高湿雰囲気に曝されると埃など環境からの汚染がないにもかかわらず実用上の動作に支障をきたすことが多い。これはオーディオ、ビデオ機構部品に使用されているゴムローラー中の添加剤がゴム表面にブリードし、磁気テープを媒介として磁気ヘッドを汚染するためである。この問題に対し、一時的な対策として、高温高湿雰囲気に曝されたオーディオ、ビデオ機構部品中のゴム表面の洗浄が行われており、ある程度の効果が得られている。しかし、この対策は恒久的なものでないばかりでなく、莫大な労働力を必要としている。又、同じくポリオキシメチレン成形品を、光磁気ディスク、金属蒸着テープ等の金属磁性体と比較的密閉された状態で使用すると、それら磁性体が腐食することもあり、根本的な問題の解決が望まれていた。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の如き問題点を解決すべく、ゴムのブリード及び金属磁性体の腐食について詳細な検討を行った結果、このような問題に対しては、オーディオ、ビデオ機構部品の構成材質が大きく関係していることを見出した。即ち、従来、オーディオ、ビデオ機構部品として、シャーシ(基盤)、ギヤ、軸受け等、テープカセット部品として、リール、ガイドローラー等、ディスクカートリッジ部品として、シャッター、カートリッジ本体を中心に使用されてきたポリオキシメチレン成形品が、比較的高温高湿中でローラー、ベルト等ゴム部品のブリードや金属磁性体の腐食を引き起こしていることが明らかとなり、その原因を検討した結果、ポリオキシメチレン成形品に含まれているギ酸が高湿度中の水分を媒体として放出され、それがゴム及び金属磁性体に付着、浸透し、特にゴムの場合では、ギ酸がゴムの中の水に難溶性の酸化マグネシウムと反応することで水に易溶性のギ酸マグネシウムを生成するため、これがゴム表面にブリードし、テープを媒介として磁気ヘッドを汚染していること、並びに金属磁性体の場合では、ギ酸自身が金属を腐食させることが明らかとなった。
ポリオキシメチレンは上述の如く酸化防止剤と各種安定剤添加により熱安定性が改善されているものの、成形加工時に多少の熱分解を起こすことは避け難く、このため成形品の内部にはその分解生成物であるホルムアルデヒド、ギ酸が含有されている。ホルムアルデヒドは成形品が数十℃以上に加熱されたときガスとなって周囲に放出されるので、成形品を高温加熱処理したり真空脱ガス処理したりすることによって大幅に減少せしめることができるが、ギ酸は百数十℃の高温で加熱処理しても熱水中で処理してもさほど減少せしめることはできない。
本発明者等はこの点について更に検討した結果、ポリオキシメチレンに酸化防止剤とメラミン・シアヌル酸塩及び特定の金属化合物を配合することによって、このギ酸の発生量を大幅に低減することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち本発明は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して、(a) 酸化防止剤0.01〜5.0 重量部、(b) メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレムから選ばれる1種以上の窒素含有化合物0.01〜5.0 重量部、(c) マグネシウム又はカルシウムの酸化物又は炭酸塩から選ばれる1種以上の金属含有化合物 0.001〜10重量部を配合してなるポリオキシメチレン組成物、並びに該組成物を成形してなり、当該ポリオキシメチレン組成物の成形体から発生されるギ酸量が成形品表面積1cm2 あたり 1.0マイクログラム以下であることを特徴とするポリオキシメチレン成形品である。
【0004】
以下本発明についての詳細な説明を行う。
本発明に用いるポリオキシメチレンとは、オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物で、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するコポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマーの何れにてもよく、又、分子が線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであってもよい。又、その重合度等に関しても特に制限はない。
【0005】
次に本発明において使用される(a) 酸化防止剤としては、2,2'−メチレンビス(4メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6 −ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5 −トリメチル−2,4,6 −トリス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5' −ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、4,4'−メチレンビス(2,6 −ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチル−フェノール)、ジ−ステアリル−3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)がヒンダードフェノール系酸化防止剤として挙げられ、又、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル)ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト等がリン系酸化防止剤として挙げられる。その他、ヒンダードアミン系の酸化防止剤も使用することができ、これらの少なくとも一種又は二種以上を使用することができる。これらの中でも1,6 −ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)は特に好ましい物質である。
【0006】
本発明で使用される(b) メラミン・シアヌル酸塩は公知の方法で製造される。即ち、メラミンに対するシアヌル酸の仕込みモル数を0.5 〜2.0 、好ましくは0.9 〜1.1 として反応を行った後、塩にならなかった過剰成分を洗浄・除去することで精製され、好ましくは50マイクロメーター以下、特に好ましくは10マイクロメーター以下に粉砕・分級されるものである。また、市販品を使用することも可能である。
また、メラムとメレムも公知の方法で製造される。例えば、メラミンを加熱し、脱アンモニアさせる方法やチオシアン酸アンモニウムを熱分解させる方法により製造することができる。
【0007】
本発明において添加配合される(a) 酸化防止剤の量は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは 0.1〜3重量部、(b) メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレムから選ばれる1種以上の窒素含有化合物の量は、0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。これらの物質の添加量が、過少の場合は充分なる効果が得られず、また過大の場合には、熱安定性の効果が飽和に達し、むしろ変色傾向が生じ好ましくない。
【0008】
本発明で使用される(c) 金属含有化合物とは、マグネシウム又はカルシウムの酸化物又は炭酸塩であり、具体的には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムである。
これらの化合物の配合量は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して 0.001〜10重量部であり、好ましくは0.001 〜5重量部、より好ましくは 0.001〜2重量部、特に好ましくは 0.003〜0.5 重量部である。0.001 重量部より少ない量では所望の効果を殆ど得ることが出来ず、又、10重量部より多い量では、ギ酸発生量抑制の効果が飽和に達し、むしろ変色傾向が生じ好ましくない。
【0009】
本発明の組成物に配合される(c) 金属含有化合物と(a) 酸化防止剤は、ポリマーの重合段階におけるモノマーに添加されても良いし、ポリマーの安定化工程で添加されても良い。
【0010】
又、成形時の金型付着物を微小量に抑える目的で、更に、炭素数10以上の脂肪酸エステル化合物を配合することが好ましく、特に多価アルコールとのエステル化合物が望ましい。その様な化合物としては、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノイソステアレート、グリセリンモノベヘネート、ペンタエリスリトールトリステアレート等が例示される。炭素数10以上の脂肪酸エステル化合物の配合量は、ポリオキシメチレン 100重量部に対して0.01〜2.0 重量部であり、好ましくは0.05〜1.0 重量部である。
【0011】
又、ギ酸発生量の測定法について説明すると、上記組成物を成形し、かかる成形品を場合により切断し、その表面積を測定した後、その成形品の適当量(表面積30〜60cm2 程度) を1mlの純水に直接浸らないようにして密閉容器(容量100ml)に入れ、60℃に168 時間放置する。この密閉容器中の水を 100mlに希釈し、この溶液のギ酸濃度(μg)をイオンクロマトグラフ(横河ヒューレット・パッカード社製IC500 、有機酸用カラム、0.1mM 過塩素酸水溶液をキャリアとして)で測定し、成形品表面積あたりのギ酸発生量(μg/cm2)を求めた。
本発明において好ましいポリオキシメチレン成形品は、ギ酸発生量が成形品表面積1cm2 あたり 1.0マイクログラム以下、特に好ましくはギ酸発生量が成形品表面積1cm2 あたり 1.0マイクログラム以下であり、且つ樹脂分1グラムあたり 5.0マイクログラム以下のものである。本発明におけるギ酸発生量の数値規定は、通常の安定剤、離型剤等公知の添加剤を含有するポリオキシメチレン組成物を用いた成形品については勿論、無機充填剤あるいは他のポリマーを含有する組成物の成形品においても、その成形品表面の大部分がポリオキシメチレンである限り適用可能である。
【0012】
又、本発明のポリオキシメチレン組成物には、必須ではないが、更にその目的に応じ、本願の(b) メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレム以外の含窒素化合物、(c) マグネシウム又はカルシウムの酸化物又は炭酸塩以外の有機、無機の金属含有化合物を一種以上併用することもできる。
本発明のポリオキシメチレン組成物には、更に公知の各種添加剤を配合し得る。例えば、各種の着色剤、摺動性改良剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、耐候(光)安定剤、その他の界面活性剤、各種ポリマー等である。また、本発明の目的とする成形品の性能を大幅に低下させない範囲内であるならば、公知の無機、有機、金属等の繊維状、板状、粉粒状等の充填剤を1種または2種以上複合させて配合することも可能である。このような無機充填剤の例としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラスビーズ、タルク、マイカ、白マイカ、ウォラストナイト、等が挙げられるが、何等これらに限定されるものではない。又、本発明のポリアセタール樹脂成形品の調製は、従来の樹脂成形品調製法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合後、一軸または、二軸の押出機により、練り込み押出してペレット調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法等、何れも使用できる。又、かかる成形品に用いられる組成物の調製において、基体であるポリアセタール樹脂の一部または全部を粉砕し、これをその他の成分を混合した後、押出等を行うことは、添加物の分散性を良くする上で好ましい方法である。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ギ酸が弊害を引き起こすと考えられる用途には何れも使用可能であるが、電気・電子機器、特にオーディオ機器、ビデオ機器等の構成部品の少なくとも一部がゴム材料あるいは金属磁性体材料とポリオキシメチレン成形品が使用される分野(用途)に好適に使用される。具体的な成形品を以下に例示する。
少なくとも一部がポリオキシメチレン成形品及びゴム部品から構成された、あるいは金属接点が多数存在する電気・電子機器としては、カセットテープレコーダー等のオーディオ機器、VTR、8mmビデオ、ビデオカメラ等のビデオ機器、又はコピー機、ファクシミリ、プリンター、ワードプロセッサー等のOA機器であり、更にはモーター、発条等の駆動力で動く玩具、電話機、コンピュータ等に付随するキーボード等にも適用することができる。具体的な部品としては、シャーシ(基盤)、ギヤー、レバー、カムプーリー、軸受け等が挙げられる。
又、少なくとも一部がポリオキシメチレン成形品から構成された光および磁気メディアソフトとしては、例えば、金属薄膜型磁気テープカセット、磁気ディスクカートリッジ、光磁気ディスクカートリッジ、光ディスクカートリッジ等であり、更に詳しくは、音楽用メタルテープカセット、デジタルオーディオテープカセット、8mmビデオテープカセット、フロッピーディスクカートリッジ、ミニディスクカートリッジであり、具体的な部品としては、テープカセットの本体、リール、ハブ、ガイド、ローラー、ストッパー、リッド等、ディスクカートリッジの本体(ケース)、シャッター、ハブ、クランピングプレート等が挙げられる。その他、本発明のポリオキシメチレン成形品は、ウインドレギュレーターのキャリアプレートに代表される金属と接触する部品や、燃料系統、電気系統部品等の自動車部品、注射針のホルダー等の医用関係部品、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器等の生活用品等に好適に使用される。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、以下の例に示した評価の方法は次の通りである。
1)成形品からのギ酸発生量
ギ酸発生量は、総表面積約10cm2 の切断されたポリオキシメチレン成形品10gを1mlの純水に直接浸らないようにして密閉容器(容量100ml)に入れ、60℃/90%RHに168 時間放置後、この密閉容器中の水を100ml に希釈し、この溶液のギ酸濃度をイオンクロマトグラフ(横河ヒューレット・パッカード(株)製IC500 、有機酸用カラム、0.1mM 過塩素酸水溶液をキャリアとして)で測定することにより求めた。ギ酸発生量は、このイオンクロマトグラフによって得られた値を単位表面積に換算して表した。
2)ゴムのブルーミング
ポリオキシメチレン成形品が装着された基盤にゴム部品を組み込んだ音声画像再生機構部をポリエチレン袋で包装したものを用い、高温高湿中で下記要領でゴムのブルーミング試験を行った場合のゴム部品表面の浸み出し量(ゴム表面の顕微鏡観察により10段階にランク付け)と成形基盤のギ酸発生量との関係を表に示す。
ゴム部品としては、クロロプレンゴムを円筒状に成形したローラーを使用し、それをポリアセタール樹脂で成形された音声画像再生機構部用基盤に組み込み、ポリエチレン袋で包装した状態で60℃/90%RH雰囲気中に1週間放置後、ゴム表面に浸み出したものを顕微鏡観察し、その度合いを目視で10段階(無しを1、非常に多いを10)にランク付けした。尚、この試験は3回行ない、表にはその平均値を示した。
3)成形性(金型付着物の量)
試料ポリアセタール樹脂組成物を、射出成形機を用いて下記条件で特定形状の成形品を連続成形(24Hr)し、金型付着物の量を評価した。即ち、連続成形を行った時の金型の汚れを目視観察にて下記5段階で評価した。
(成形条件)
射出成形機;東芝IS30EPN(東芝機械(株)製)
シリンダー温度;210 ℃
射出圧力;750kg/cm2
射出時間;4sec
冷却時間;3sec
金型温度;30℃
実施例1〜11
ポリオキシメチレン共重合体(ポリプラスチックス(株)製、ジュラコン)に表1に示した酸化防止剤、メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレムとマグネシウム及びカルシウムの酸化物及び炭酸塩、更には脂肪酸エステル化合物を表1に示した割合(対ポリオキシメチレン100 重量部)で添加混合し押出機にてペレット状の組成物を得て上記評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1〜8
また、比較のため、表1に示すように、金属酸化物又は炭酸塩を添加しない場合、本発明の規定外の他の金属酸化物を添加した場合等について、実施例1と同様にしてペレット状の組成物を調製し、上記評価を行った。結果を表1に示す。
又、使用した酸化防止剤、メラミン・シアヌル酸塩、金属酸化物及び炭酸塩は以下の通りである。
1.酸化防止剤
a-1) トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
a-2) ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
2.メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレム
b-1) メラミン1モルに対してシアヌル酸1モルの割合で混合された混合物を 300 ℃で加熱した後、微粉砕し、純水で3回、アセトンで1回洗浄し、乾燥することにより得られたメラミン・シアヌル酸塩微粉末
b-2) 以下の如くして得られたメラムとメレムの混合物
メラミンを350 ℃に加熱し、発生してくるアンモニアガスを反応系外でフェノールフタレインを滴下した純水に吸収させた。これを塩酸で滴定しながら反応の終点を決めた。この反応物を冷却し、微粉砕した後、純水で3回、アセトンで1回洗浄し、乾燥することによりメラムとメレムの混合物を得た。
3.金属酸化物及び炭酸塩
c-1) 酸化マグネシウム
c-2) 酸化カルシウム
c-3) 炭酸マグネシウム
c'-1)酸化バリウム
c'-2)酸化亜鉛
4.脂肪酸エステル化合物
d-1) グリセリンモノステアレート
d-2) グリセリンモノイソステアレート
5.その他の化合物
e-1) メラミン
e-2) ジシアンジアミド
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
以上の説明及び実施例にて明らかなごとく、本発明の樹脂組成物からなる成形品のギ酸発生量が 1.0μg /cm2 以下ではポリアセタール樹脂成形品がゴムのブルーミングにほとんど影響していないことが明らかである。本発明によると以上のように成形品からのギ酸発生量を 1.0μg /cm2 以下に抑えることができるため、例えばゴム部品のブルーミング問題を根本的に解決することができ、上述の如き各種用途に好適に用いられる。
Claims (5)
- ポリオキシメチレン 100重量部に対して、(a) 酸化防止剤0.01〜5.0 重量部、(b) メラミン・シアヌル酸塩、メラム及び/又はメレムから選ばれる1種以上の窒素含有化合物0.01〜5.0 重量部、(c) マグネシウム又はカルシウムの酸化物又は炭酸塩から選ばれる1種以上の金属含有化合物 0.001〜10重量部を配合してなるポリオキシメチレン組成物。
- 更に炭素数10以上の脂肪酸エステル化合物をポリオキシメチレン 100重量部に対して0.01〜2.0 重量部配合してなる請求項1記載のポリオキシメチレン組成物。
- 請求項1又は2記載の組成物を成形してなり、当該ポリオキシメチレン組成物の成形体から発生されるギ酸量が成形品表面積1cm2 あたり 1.0マイクログラム以下であることを特徴とするポリオキシメチレン成形品。
- 成形品が、電気・電子機器部品である請求項3記載のポリオキシメチレン成形品。
- 請求項4記載のポリオキシメチレン成形品及びゴム部品を構成の一部とする電気・電子機器。
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