JP3695922B2 - ポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホルムアルデヒド発生量が著しく抑制され、成形加工性に優れたポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法、並びに前記樹脂組成物で形成したポリアセタール樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、機械的性質、耐疲労性、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性及び成形性に優れているため、自動車部品、電気・電子機器部品、その他の精密機械部品、建材・配管部材、生活・化粧用部品、医用部品などの分野において広く利用されている。しかし、用途の拡大、多様化に伴い、その品質に対する要求はより高度化する傾向を示している。ポリアセタール樹脂に要求される特性としては、成形工程などの加工工程における機械的強度が低下しないこと、金型への微粉状やタール状付着物(モールドデポジット)が発生しないこと、長期加熱条件下(ヒートエージング)における機械的物性が低下しないこと、成形品のシルバーストリークやボイドなどの成形不良が生じないことなどが挙げられる。特に、ポリアセタール樹脂は、その化学構造から本質的に、加熱酸化雰囲気下、酸性やアルカリ性条件下では容易に分解されやすい。そのため、ポリアセタール樹脂の本質的な課題として、熱安定性が高く、成形加工過程又は成形品からのホルムアルデヒドの発生を抑制することが挙げられる。ホルムアルデヒドは化学的に活性であり、酸化によりギ酸となり耐熱性に悪影響を及ぼしたり、電気・電子機器の部品などに用いると、金属製接点部品が腐食したり有機化合物の付着により変色し、接点不良を生じる。さらにホルムアルデヒド自体が、部品組立工程での作業環境や最終製品の使用周辺の生活環境を汚染する。
【0003】
化学的に活性な末端を安定化するため、ホモポリマーについては、重合体の末端をアセチル化などによりエステル化する方法、コポリマーについては、重合時にトリオキサンと環状エーテル、環状ホルマールなどの隣接炭素結合を有するモノマーとを共重合した後、不安定な末端部分を分解除去して不活性な安定末端とする方法などが知られている。しかしながら、加熱時にはポリマーの主鎖部分での解裂分解も起こり、その防止には、上記処理のみでは対処できず、実用的には安定剤の添加が必須とされている。
【0004】
ポリアセタール樹脂のホルムアルデヒドの発生を抑制する方法として、安定剤、例えば、立体障害を有するフェノール化合物(ヒンダードフェノール)、立体障害を有するアミン化合物(ヒンダードアミン)や、尿素誘導体、グアニジン誘導体、メラミン誘導体、アミジン化合物、ポリアミド、ポリアクリルアミドなどの窒素含有化合物、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物、有機又は無機酸塩などを添加する方法が知られている。これらの安定剤のうち、メラミン誘導体は比較的有効である。しかし、これらの添加剤を添加すると、成形工程でモールドデポジットやブルーミングが生じやすくなり、多量に添加することができない。また、このような添加剤を用いても、ポリアセタール樹脂に対して高い熱安定性を付与し、ホルムアルデヒドの発生を大きく低減させることは困難である。
【0005】
特公昭55−50502号公報および特開平6−73267号公報には、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合による高分子量化メラミン誘導体を用いることにより、熱安定性を向上させ、モールドデポジットとブルーミング性を改善することが提案されている。しかし、高分子量化メラミン誘導体を用いても、未だホルムアルデヒドの生成を顕著に抑制することが困難である。
【0006】
特開昭48−88136号公報には、ポリアセタールの熱安定性および抗酸化性を改善するため、フェノール化合物と、ヒダントインおよびその誘導体などの含窒素化合物とで構成された安定化剤を含むポリアセタール組成物が開示されている。しかし、ヒダントイン化合物を添加しても、ポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒド発生量を極めて低いレベルに維持することが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ポリアセタール樹脂の熱安定性、特に成形加工時の溶融安定性を改善できる樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形品を提供することにある。
本発明の他の目的は、少量の添加でホルムアルデヒドの生成を著しく抑制でき、作業環境を改善できるポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法、並びに成形品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、過酷な条件下であってもホルムアルデヒドの生成を抑制して、金型への分解物などの付着、成形品からの分解物の浸出や成形品の熱劣化を抑制でき、成形性や成形品の品質を向上できるポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法、並びに成形品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、ポリアセタール樹脂の熱安定剤に関して鋭意検討した結果、特定の化学構造を有するグリオキシジウレイド化合物と塩基性窒素含有化合物とを組み合わせると、ポリアセタール樹脂の熱安定剤、特に成形加工時の安定剤として顕著な効果が発現し、過酷な条件下であってもホルムアルデヒドの生成量を極めて低レベルに維持できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂、グリオキシジウレイド化合物及び塩基性窒素含有化合物で構成されている。前記グリオキシジウレイド化合物には、グリオキシジウレイド、グリオキシジウレイドの金属塩などが含まれる。塩基性窒素含有化合物には、種々の化合物、例えば、メラミン,メラミン樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアクリルアミドなどが含まれる。グリオキシジウレイド化合物の使用量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部程度であり、塩基性窒素含有化合物の使用量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部程度である。前記組成物は、さらに酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0010】
本発明の方法では、ポリアセタール樹脂とグリオキシジウレイド化合物と塩基性窒素含有化合物とを混合することにより、加工安定性が改善されたポリアセタール樹脂組成物を製造する。
さらに、本発明には、前記ポリアセタール樹脂組成物で構成された成形品も含まれる。
なお、本明細書において、「グリオキシジウレイド化合物」とは、グリオキシジウレイドに限らず、グリオキシジウレイドから誘導される誘導体も含む意味に用いる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂とグリオキシジウレイド化合物と塩基性窒素含有化合物とで構成されている。
【0012】
ポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン基(−CH2 O−)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリアセタールホモポリマー(例えば、米国デュポン社製,商品名「デルリン」、旭化成(株)製、商品名「テナック4010」など)、オキシメチレン基以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマー(例えば、ポリプラスチックス(株)製,商品名「ジュラコン」など)が含まれる。コポリマーにおいて、コモノマー単位には、炭素数2〜6程度(好ましくは炭素数2〜4程度)のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(−CH2 CH2 O−)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基など)が含まれる。コモノマー単位の含有量は、少量、例えば、ポリアセタール樹脂全体に対して、0.01〜20モル%、好ましくは0.03〜10モル%(例えば、0.05〜5モル%)、さらに好ましくは0.1〜5モル%程度の範囲から選択できる。
【0013】
ポリアセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどであってもよい。ポリアセタールコポリマーは、ランダムコポリマーの他、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなどであってもよい。また、ポリアセタール樹脂は、線状のみならず分岐構造であってもよく、架橋構造を有していてもよい。さらに、ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸とのエステル化などにより安定化してもよい。ポリアセタールの重合度、分岐度や架橋度も特に制限はなく、溶融成形可能であればよい。
【0014】
前記ポリアセタール樹脂は、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなど)及びトリオキサンから選択された少なくとも一種を重合することにより、あるいは前記アルデヒド類及びトリオキサンから選択された少なくとも一種と環状エーテル(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)又は環状ホルマール(例えば、1,3−ジオキソランなど)とを共重合することにより製造できる。
【0015】
本発明の特色は、特定の尿素誘導体であるグリオキシジウレイド化合物と塩基性窒素含有化合物とを組み合わせて添加することにより、過酷な条件下であっても、ホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制し、ポリアセタール樹脂の熱安定性、加工安定性を著しく向上させる点にある。前記グリオキシジウレイド化合物と塩基性窒素含有化合物との組み合わせにより、従来の安定剤からは予想もできない極めて高い安定性が発現し、加工性に優れたポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【0016】
グリオキシジウレイド化合物には、グリオキシジウレイド(すなわち、アラントイン)、およびグリオキシジウレイド誘導体が含まれ、グリオキシジウレイド誘導体については成書「DICTIONARY OF ORGANIC COMPOUNDS Vol.1, p60 (1965 EYRE & SPOTTISWOODE-PUBLISHERS-LTD)」を参照できる。グリオキシジウレイド誘導体には、例えば、アルキル基,シクロアルキル基,アリール基などの各種の置換基が置換した置換グリオキシジウレイド誘導体(例えば、1−メチル体、3−メチル体、3−エチル体、5−メチル体、1,3−ジメチル体、1,6−ジメチル体、1,8−ジメチル体、3,8−ジメチル体、1,3,6−トリメチル体、1,3,8−トリメチル体などのモノ,ジまたはトリ−C1-4 アルキル置換体、5−フェニル体などのアリール置換体など)、グリオキシジウレイドと金属との塩[Li,Na,Kなどのアルカリ金属塩(周期表1A族金属塩),Mg,Ca,Sr,Baなどのアルカリ土類金属塩(周期表2A族金属塩),Cu,Agなどの周期表1B族金属との塩,Znなどの周期表2B族金属との塩,Al,Ga,Inなどの周期表3B族金属との塩,Sn,Pbなどの周期表4B族金属との塩,Fe,Co,Ni,Pd,Ptなどの周期表8族金属との塩など]、グリオキシジウレイドと窒素含有化合物(アミノ基又はイミノ基含有化合物など)との反応生成物[例えば、2−ピロリドン−5−カルボン酸塩との化合物(塩,分子化合物(錯体)など)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、オルニチンなど)との化合物(塩,分子化合物(錯体)など)、グリオキシジウレイドとイミダゾール化合物との化合物(塩,分子化合物(錯体)など]、有機酸塩が挙げられる。
【0017】
グリオキシジウレイドと2−ピロリドン−5−カルボン酸塩との化合物については、特開昭51−36453号公報を参照でき、グリオキシジウレイドと塩基性アミノ酸との反応生成物については、特開昭52−102412号公報、特開昭52−25771号公報、特開昭52−25772号公報、特開昭52−31072号公報、特開昭51−19771号公報などを参照できる。グリオキシジウレイドとイミダゾール化合物との化合物については、特開昭57−118569号公報などを参照できる。グリオキシジウレイド及びその誘導体の立体構造は特に制限されず、d体,l体及びdl体のいずれであってもよい。これらのグリオキシジウレイド及びその誘導体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
好ましいグリオキシジウレイド化合物には、グリオキシジウレイド、グリオキシジウレイドの金属塩[アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩,周期表1B族金属塩,周期表2B族金属塩,周期表3B族金属塩,周期表4B族金属塩,周期表8族金属塩など、特に2〜4価程度の多価金属塩]、グリオキシジウレイドとアミノ基又はイミノ基含有化合物との反応生成物などが含まれる。グリオキシジウレイドの金属塩の具体例としては、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アラントインクロロヒドロキシアルミニウム(川研ファインケミカル(株)製など)などが例示でき、アミノ基又はイミノ基含有化合物との反応生成物としては、アラントインソジウム−dlピロリドンカルボキシレート(川研ファインケミカル(株)製など)などが例示できる。
【0019】
グリオキシジウレイド化合物の添加量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部(例えば、0.01〜5重量部)、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜2.5重量部(特に0.05〜2重量部)程度であり、0.05〜1.5重量部(例えば、0.1〜1.5重量部)程度であってもホルムアルデヒドの生成を顕著に抑制できる。
【0020】
塩基性窒素含有化合物は、低分子化合物や高分子化合物(窒素含有樹脂)であってもよい。窒素含有低分子化合物としては、例えば、モノエタノールアミン,ジエタノールアミンなどの脂肪族アミン,芳香族アミン類(o−トルイジン,p−トルイジン,p−フェニレンジアミンなどの芳香族第2級アミン又は第3級アミン)、アミド化合物(マロンアミド,イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド,p−アミノベンズアミドなど)、ヒドラジン又はその誘導体(ヒドラジン、ヒドラゾン、多価カルボン酸ヒドラジドなどのヒドラジドなど)、グアニジン又はその誘導体(3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール,アミジン、ジシアンジアミド又はそれらの誘導体)、尿素類(尿素,エチレン尿素,チオ尿素又はそれらの誘導体)、ポリアミノトリアジン類(グアナミン,アセトグアナミン,ベンゾグアナミンなどのグアナミン類又はそれらの誘導体、メラミン又はその誘導体)、ウラシル又はその誘導体(ウラシル,ウリジンなど)、シトシン又はその誘導体(シトシン,シチジンなど)などが例示できる。
【0021】
窒素含有樹脂としては、例えば、ホルムアルデヒドとの反応により生成するアミノ樹脂(尿素樹脂,チオ尿素樹脂,グアナミン樹脂,メラミン樹脂,グアニジン樹脂などの縮合樹脂、尿素−メラミン樹脂,尿素−ベンゾグアナミン樹脂,フェノール−メラミン樹脂,ベンゾグアナミン−メラミン樹脂,芳香族ポリアミン−メラミン樹脂などの共縮合樹脂など)、芳香族アミン−ホルムアルデヒド樹脂(アニリン樹脂など)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン3,ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11,ナイロン12,ナイロンMXD6,ナイロン4−6,ナイロン6−10,ナイロン6−11,ナイロン6−12,ナイロン6−66−610などの単独又は共重合ポリアミド、メチロール基やアルコキシメチル基を有する置換ポリアミドなど)、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルアミド、ポリアミノチオエーテルなどが例示できる。
これらの含窒素化合物は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0022】
好ましい窒素含有化合物には、尿素類(尿素またはその誘導体)、ポリアミノトリアジン類(メラミン又はその誘導体)、窒素含有樹脂(尿素樹脂,メラミン樹脂などのアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミドなど)が含まれる。特にメラミン,アミノ樹脂(メラミン樹脂など),ポリアミド樹脂,ポリアクリルアミドが好ましく、アミノ樹脂、なかでも架橋アミノ樹脂が好ましい。さらには、メラミン樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂)、特に架橋メラミン樹脂が好ましい。架橋アミノ樹脂、特に架橋メラミン樹脂は、通常、40〜100℃(特に50〜80℃)程度の温水に不溶である。
【0023】
メラミン樹脂は、少なくともメラミンと、必要に応じて共縮合成分(フェノール化合物,尿素,チオ尿素,グアナミン類など)と、ホルムアルデヒドとの反応により得ることができ、メラミン樹脂はホルムアルデヒドとの初期縮合物であってもよい。また、メチロール基を有するメチロールメラミン樹脂であってもよく、少なくとも一部のメチロール基がアルコール類(例えば、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,ブタノールなど)でエーテル化されたアルコキシメチルメラミン樹脂であってもよい。
【0024】
メラミン樹脂は水溶性メラミン樹脂であってもよいが、水不溶性メラミン樹脂であるのが好ましい。メラミン樹脂には、通常、1つのメラミン骨格に少なくとも1つのアミノ基又はイミノ基が残存している。
【0025】
特に好ましいメラミン樹脂には、縮合度が高く、1つのメラミン骨格に複数のアミノ基又はイミノ基が残存している架橋メラミン樹脂、例えば、(1)温水に不溶であり、ジメチルスルホキシドに可溶なメラミン樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド縮合物)、(2)温水及びジメチルスルホキシドに不溶なメラミン樹脂(架橋メラミン−ホルムアルデヒド縮合物)が含まれる。前記メラミン樹脂(1)は、 1H−NMR分析により、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物1モル中の平均メラミン単位数(平均重合度又は平均縮合度)が2〜10(好ましくは2〜5、さらに好ましくは2.2〜3.8)程度であり、メラミン単位中の3つのアミノ基に結合している平均水素原子数(平均NH数)が3以上(好ましくは3.5以上)である。
【0026】
前記メラミン樹脂(1)は、特開平6−73267号公報に開示されており、メラミン1モルに対してホルムアルデヒド0.8〜10モル(好ましくは0.8〜5モル、さらに好ましくは1〜3モル、特に1〜2モル)程度を用いて水溶液又は水分散液中で反応させることにより得ることができる。例えば、メラミンとホルムアルデヒド水溶液との混合液を、pH8〜9程度、温度50〜90℃程度で反応させ、縮合反応の進行に伴って溶液が白濁したら、適当な段階で冷却などにより縮合反応を停止する。この反応混合液を噴霧乾燥などの方法で乾燥し、粗製メラミン−ホルムアルデヒド縮合物の粉粒体を得る。粉粒状の粗製メラミン−ホルムアルデヒド縮合物を温水(50〜70℃程度)で適当な時間(例えば、10分〜3時間、好ましくは30分〜1時間程度)洗浄し、濾過した後、残渣をジメチルスルホキシドに溶解させる。ジメチルスルホキシド混合液中の不溶分を濾過除去した後、ジメチルスルホキシド可溶成分を大過剰のアセトンに注入し、沈殿物を濾過乾燥することにより、白色粉末の精製メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物を得ることができる。
【0027】
前記メラミン樹脂(2)は、特公昭55−50502号公報に開示されており、メラミン1モルに対してホルムアルデヒド0.8〜10モル(好ましくは1〜5モル、さらに好ましくは1〜3モル、特に1〜2モル)程度を用いて水溶液又は水分散液中で、前記と同様にアルカリ領域で反応させて、予備縮合体(可溶性縮合体)を調製し、pH5〜6.9程度の酸性条件下、例えば、70〜100℃程度の温度で撹拌し、さらに縮合させて架橋(網状化)することにより得ることができる。メラミン樹脂(2)は、前記と同様にして生成したメラミン樹脂の粉粒体を温水で洗浄して濾過した後、残渣をジメチルスルホキシドと混合し、ジメチルスルホキシド不溶成分を、アセトンなどの溶媒で洗浄し、乾燥することにより得ることができる。
前記塩基性窒素含有化合物は、通常、粉粒体として使用される。
【0028】
塩基性窒素含有化合物の使用量は、前記グリオキシジウレイド化合物の使用量などに応じて選択でき、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部(例えば、0.01〜5重量部)、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜2.5重量部(特に0.1〜1重量部)程度であり、0.1〜0.5重量部程度であってもホルムアルデヒドの生成を顕著に抑制できる。
【0029】
前記グリオキシジウレイド化合物と塩基性窒素含有化合物との割合は広い範囲から選択でき、通常、前者/後者=5/95〜95/5(重量比)、好ましくは10/90〜90/10(重量比)、さらに好ましくは20/80〜80/20(重量比)程度の範囲から選択できる。特にグリオキシジウレイド化合物の割合が多くなると、ホルムアルデヒドの生成量を大きく改善できる。そのため、好ましい両者の割合(重量比)は、前者/後者=0.5〜10、好ましくは0.7〜8、さらに好ましくは1〜5程度である。
【0030】
グリオキシジウレイド化合物および塩基性窒素含有化合物の総量は、通常、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.02〜10重量部程度の範囲から選択でき、0.02〜5重量部(例えば、0.1〜5重量部)程度、好ましくは0.05〜3重量部(例えば、0.2〜3重量部)程度、さらに好ましくは0.1〜2重量部程度、特に0.1〜1.5重量部(例えば、0.3〜1.5重量部)程度である。
【0031】
前記グリオキシジウレイド化合物と塩基性窒素含有化合物とで構成された安定化剤は少量であってもポリアセタール樹脂に対して顕著な安定性を付与できるが、酸化防止剤と組み合わせて使用してもよい。
【0032】
酸化防止剤には、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール類など)、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤などが含まれる。
【0033】
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール類、例えば、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−3−(4′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタンなどが含まれる。
【0034】
アミン系酸化防止剤には、ヒンダードアミン類、例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギサレート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる。
【0035】
リン系酸化防止剤には、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−ジ(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイトなどが含まれる。
【0036】
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれ,イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが含まれる。
これらの酸化防止剤は一種又は二種以上併用することができる。
【0037】
好ましい酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤(特に、ヒンダードフェノール類)などが含まれる。ヒンダードフェノール類の中でも、特に、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2-4 アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8 アルキレントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8 アルキレンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが好ましい。
【0038】
酸化防止剤の含有量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、特に0.1〜1重量部程度の範囲から選択できる。
【0039】
本発明の樹脂組成物には、他の安定剤、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、金属酸化物、有機カルボン酸塩、長鎖脂肪酸又はその塩、多価アルコール脂肪酸エステルなどを添加してもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて各種添加剤、例えば、染料及び顔料を含む着色剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、各種ポリマー、充填剤などを1種又は2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0041】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、粉粒状混合物や溶融混合物(ペレットなど)であってもよく、ポリアセタール樹脂と、グリオキシジウレイド化合物と、塩基性窒素含有化合物と、必要により他の添加剤とを慣用の方法で混合することにより調製できる。ポリアセタール樹脂組成物の成形に際しては、例えば、▲1▼各成分を混合して、一軸又は二軸の押出機により混練して押出してペレットを調製した後、成形する方法、▲2▼一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、▲3▼ポリアセタール樹脂のペレットにグリオキシジウレイド化合物や塩基性窒素含有化合物を散布などにより付着させた後、成形し、所定の組成の成形品を得る方法などが採用できる。また、成形品に用いられる組成物の調製において、基体であるポリアセタール樹脂の粉粒体(例えば、ポリアセタール樹脂の一部又は全部を粉砕した粉粒体)と他の成分(グリオキシジウレイド化合物や塩基性窒素含有化合物など)を混合して溶融混練すると、添加物の分散を向上させるのに有利である。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、成型加工(特に溶融成型加工)工程において、ポリアセタール樹脂の酸化又は熱分解などによるホルムアルデヒドの生成を顕著に抑制でき、作業環境を改善できる。また、金型への分解物などの付着(モールドデポジット)、成形品からの分解物の浸出、成形品の熱劣化を顕著に抑制し、ヒートエージング性を大幅に改善でき、成形加工時の諸問題を改善できる。そのため、本発明の樹脂組成物は、慣用の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形などの方法で、種々の成形品を成形するのに有用である。
【0043】
前記ポリアセタール樹脂組成物で構成された本発明のポリアセタール樹脂成形品は、グリオキシジウレイド化合物および塩基性窒素含有化合物を含んでおり、ホルムアルデヒド発生量が極めて少ない。例えば、一般に市販されているポリアセタール樹脂成形品からのホルムアルデヒド発生量は、乾式(恒温乾燥雰囲気下)において、表面積1cm2 当たり2〜5μg程度であり、湿式(恒温湿潤雰囲気下)において、表面積1cm2 当たり3〜6μg程度である。また、成形条件を制御しても、乾式(恒温乾燥雰囲気下)において表面積1cm2 当たり1.5μg以下、湿式(恒温湿潤雰囲気下)において、表面積1cm2 当たり2.5μg以下の成形品を得ることが困難である。
【0044】
これに対して、本発明のポリアセタール樹脂成形品は、乾式において、ホルムアルデヒド発生量が成形品の表面積1cm2当たり1.5μg以下(0〜1.5μg程度)、好ましくは1.2μg以下(0〜1.2μg程度)、さらに好ましくは1μg以下(0〜1μg程度)であり、特に好ましくは0.01〜1μg程度である。また、湿式において、ホルムアルデヒド発生量が成形品の表面積1cm2当り2.5μg以下(0〜2.5μg程度)、好ましくは2μg以下(0〜2μg程度)、さらに好ましくは1.5μg以下(0〜1.5μg程度)であり、特に好ましくは0.01〜1.2μg程度(例えば、0.01〜1μg程度)である。
【0045】
本発明のポリアセタール樹脂成形品は、乾式及び湿式の少なくともいずれか一方において、前記ホルムアルデヒド発生量を有していればよく、通常、乾式及び湿式の双方において、前記ホルムアルデヒド発生量を有している。
【0046】
なお、乾式でのホルムアルデヒド発生量は、次のようにして測定できる。
ポリアセタール樹脂成形品を、必要により切断して表面積を測定した後、その成形品の適当量(例えば、表面積10〜50cm2 となる程度)を密閉容器(容量20ml)に入れ、温度80℃で24時間放置する。その後、この密閉容器中に水を5ml注入し、この水溶液のホルマリン量をJIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、成形品の表面積当たりのホルムアルデヒド発生量(μg/cm2 )を求める。
【0047】
また、湿式でのホルムアルデヒド発生量は、次のようにして測定できる。
ポリアセタール樹脂成形品を、必要により切断して表面積を測定した後、その成形品の適当量(例えば、表面積10〜100cm2 となる程度)を、蒸留水50mlを含む密閉容器(容量1L)の蓋に吊下げて密閉し、恒温槽内に温度60℃で3時間放置する。その後、室温で1時間放置し、密閉容器中の水溶液のホルマリン量をJIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って、定量し、成形品の表面積当たりのホルムアルデヒド発生量(μg/cm2 )を求める。
【0048】
本発明における前記ホルムアルデヒド発生量の数値規定は、ポリアセタール樹脂、グリオキシジウレイド化合物および塩基性窒素含有化合物を含む限り、慣用の添加剤(通常の安定剤、離型剤など)を含有するポリアセタール樹脂組成物の成形品についてだけでなく、無機充填剤、他のポリマーを含有する組成物の成形品においても、その成形品の表面の大部分(例えば、50〜100%)がポリアセタール樹脂で構成された成形品(例えば、多色成形品や被覆成形品など)についても適用可能である。
【0049】
本発明の成形品は、ホルムアルデヒドが弊害となるいずれの用途(例えば、自転車部品としてのノブ、レバーなど)にも使用可能であるが、自動車分野や電気・電子分野の機構部品(能動部品や受動部品など)、建材・配管分野、日用品(生活)・化粧品分野、及び医用分野(医療・治療分野)の部品・部材として好適に使用される。
【0050】
より具体的には、自動車分野の機構部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーターやコネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などが例示できる。
【0051】
電気・電子分野の機構部品としては、ポリアセタール樹脂成形品で構成され、かつ金属接点が多数存在する機器の部品又は部材[例えば、カセットテープレコーダなどのオーディオ機器、VTR(ビデオテープレコーダー)、8mmビデオ、ビデオカメラなどのビデオ機器、又はコピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA(オフィスオートメーション)機器、更にはモーター、発条などの駆動力で作動する玩具、電話機、コンピュータなどに付属するキーボードなど]などが例示できる。具体的には、シャーシ(基盤)、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。さらに、少なくとも一部がポリアセタール樹脂成形品で構成された光及び磁気メディア部品(例えば、金属薄膜型磁気テープカセット、磁気ディスクカートリッジ、光磁気ディスクカートリッジなど)、更に詳しくは、音楽用メタルテープカセット、デジタルオーディオテープカセット、8mmビデオテープカセット、フロッピーディスクカートリッジ、ミニディスクカートリッジなどにも適用可能である。光及び磁気メディア部品の具体例としては、テープカセット部品(テープカセットの本体、リール、ハブ、ガイド、ローラー、ストッパー、リッドなど)、ディスクカートリッジ部品(ディスクカートリッジの本体(ケース)、シャッター、クランピングプレートなど)などが挙げられる。
【0052】
さらに、本発明のポリアセタール樹脂成形品は、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、文具、リップクリーム・口紅容器、洗浄器、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器、エアゾール容器、一般的な容器、注射針のホルダーなどの広範な生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品に好適に使用される。
【0053】
【発明の効果】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、グリオキシジウレイド化合物および塩基性窒素化合物を含んでいるので、ポリアセタール樹脂の熱安定性(特に成形加工時の溶融安定性)を大幅に改善できる。また、少量の添加でホルムアルデヒドの発生量を極めて低レベルに抑制でき、作業環境を大きく改善できる。さらには、過酷な条件下であってもホルムアルデヒドの生成を抑制でき、金型への分解物の付着(モールドデポジット)、成形品からの分解物の浸出や成形品の熱劣化を抑制でき、成形品の品質や成形性を向上できる。
【0054】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、溶融体からのホルムアルデヒドの発生量、乾式および湿式での成形品からのホルムアルデヒドの発生量や成形環境の臭気、及びヒートエージング性について、以下のようにして評価した。
【0055】
[溶融体からのホルムアルデヒド発生量]
5gのペレットを正確に秤取し、金属製容器中に200℃で5分間保持した後、容器内の雰囲気を蒸留水中に吸収させる。この水溶液のホルムアルデヒド量をJIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、ペレットから発生するホルムアルデヒドガス量(ppm)として計算した。
【0056】
[乾式での成形品からのホルムアルデヒド発生量]
試験片(2mm×2mm×50mm)10個(総表面積約40cm2)の樹脂サンプルを密閉容器(容量20ml)に入れ、温度80℃で24時間、恒温槽内で加熱した後、室温に空冷し、蒸留水5mlをシリンジにて注入した。この水溶液のホルマリン量を、JIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、表面積1cm2当たりのホルムアルデヒドガス発生量(μg)として計算した。
【0057】
[湿式での成形品からのホルムアルデヒド発生量]
試験片(100mm×40mm×2mm;総表面積85.6cm2)を、蒸留水50mlを含むポリエチレン製瓶(容量1L)の蓋に吊下げて密閉し、恒温槽内に温度60℃で3時間放置した後、室温で1時間静置する。ポリエチレン製瓶中の水溶液のホルマリン量をJIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、成形品の表面積1cm2当たりのホルムアルデヒドガス発生量(μg)として計算した。
【0058】
[成形時の環境臭気]
試料ポリアセタール樹脂組成物のペレットを用いて、下記の条件で、射出成形機により特定形状の成形品を連続成形(24時間)し、連続成形時の成形機周辺のホルムアルデヒド臭気を下記のように評価した。
(成形条件)
射出成形機:東芝 IS30 EPN[東芝機械(株)製]
シリンダー温度:200℃
射出圧力:750kg/cm2
射出時間:4秒
冷却時間:3秒
金型温度:30℃
(連続成形時の成形機周辺のホルムアルデヒド臭気の評価)
A:ほとんどホルムアルデヒド臭が無い
B:少しホルムアルデヒド臭がする
C:相当ホルムアルデヒド臭がし、喉、目が刺激される
D:ホルムアルデヒド臭が非常に激しく、その場にいられない
【0059】
[ヒートエージング性(成形品表面のクラック発生の評価)]
平板状成形品(120mm×120mm×2mm)を、ギヤオーブン中、温度140℃で30日間放置してヒートエージングを行った後、成形品の表面を観察し、クラックの有無と程度を目視観察して下記の3段階で評価した。
A:クラックが全く無い
B:クラックが部分的に認められる
C:クラックが全面に認められる
【0060】
実施例1〜11及び比較例1〜5
ポリアセタール樹脂100重量部に、酸化防止剤[ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部と、グリオキシジウレイド化合物と、塩基性窒素含有化合物(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂,メラミン,ポリアミド樹脂)とを表1に示す割合で混合した後、二軸押出機により溶融混合し、ペレット状の組成物を調製した。このペレットを用いて、射出成型機により試験片を作製した。前記ペレット及び試験片を用いて、溶融体及び成形品からのホルムアルデヒド発生、連続成形時のホルムアルデヒド臭気、及びヒートエージング性(成形品表面のクラック発生)について評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較のため、グリオキシジウレイド化合物未添加の例、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂未添加の例について、上記と同様にして評価した。
【0061】
実施例および比較例で使用したポリアセタール樹脂、グリオキシジウレイド化合物、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、および他の安定化剤は以下の通りである。
【0062】
1.ポリアセタール樹脂
(a):ポリアセタール樹脂コポリマー
(ポリプラスチックス(株)製、「ジュラコン」)
2.グリオキシジウレイド化合物
(b−1):グリオキシジウレイド
(b−2):アラントインジヒドロキシアルミニウム
(川研ファインケミカル(株)製)
3.塩基性窒素含有化合物
(c−1)〜(c−5):メラミン−ホルムアルデヒド樹脂
(c−1):メラミン1モルに対してホルムアルデヒド1モルを用い、水溶液中、pH8.5、温度75℃で反応させ、反応系が白濁した後、所定時間経過後に冷却してメラミン樹脂を生成させ、乾燥により粗製メラミン樹脂の粉粒体を得た。この粉粒体を60℃の温水で30分間洗浄し、濾過した後、残渣をアセトンで洗浄し、室温で乾燥させた。乾燥物を0.5重量%の濃度でジメチルスルホキシドに2時間に亘り溶解させ、不溶分を濾過除去した後、20重量倍のアセトンに注入し、沈殿物を濾過し、室温で乾燥することにより、白色粉末の精製メラミン樹脂を得た。そして、このメラミン樹脂の平均縮合度と平均NH数を 1H−NMR法により測定したところ、平均縮合度2.51,平均NH数4.26,1量体含有量4.1重量%であった。
(c−2):メラミン1モルに対してホルムアルデヒド2.0モルを用いる以外、上記(c−1)と同様にして白色粉末の精製メラミン樹脂を得た(平均縮合度2.71,平均NH数3.62,1量体含有量3.5重量%)。
(c−3):メラミン1モルに対してホルムアルデヒド1.1モルを用い、水溶液中、pH8.0、温度70℃で反応させ、反応系を白濁させることなく水溶性初期縮合体のメラミン樹脂を生成させた。次いで、撹拌しながら反応系をpH6.5に調製して、撹拌を継続し、メラミン樹脂を析出させ、乾燥により粗製メラミン樹脂の粉粒体を得た。この粉粒体を60℃の温水で30分間洗浄し、濾過した後、残渣をアセトンで洗浄し、室温で乾燥させた。乾燥物を0.5重量%の濃度でジメチルスルホキシドに2時間に亘り分散させ、濾過により可溶成分を除去し、残渣をアセトンで洗浄し、室温で乾燥することにより白色粉末の精製メラミン樹脂を得た(不溶不融のため、平均縮合度および平均NH数は測定不能。1量体含有量0.05重量%)。
(c−4):メラミン1モルに対してホルムアルデヒド1.2モルを用いる以外、上記(c−3)と同様にして粗製メラミン樹脂の粉粒体を得た。この粉粒体を60℃の温水で30分間洗浄し、濾過した後、残渣をアセトンで洗浄し、室温で乾燥することにより白色粉末の精製メラミン樹脂を得た(不溶不融のため、平均縮合度及び平均NH数は測定不能。1量体含有量0.03重量%)。
(c−5):メラミン1モルに対してホルムアルデヒド2.0モルを用いる以外、上記(c−4)と同様にして白色粉末の精製メラミン樹脂を得た(不溶不融のため、平均縮合度及び平均NH数は測定不能。1量体含有量0.01重量%)。
(c−6):メラミン
(c−7):ナイロン6
(c−8):ナイロン6−66−610
4.他の安定化剤
(d−1):シアノグアニジン
(d−2):5,5−ジメチルヒダントイン
【0063】
【表1】
Figure 0003695922
表より明らかなように、比較例に比べて、実施例の樹脂組成物は、ホルムアルデヒドの発生量が極めて小さく、ヒートエージング性も高い。そのため、作業環境を大きく改善できるとともに、成形性を向上できる。

Claims (16)

  1. ポリアセタール樹脂、グリオキシジウレイド化合物及び塩基性窒素含有化合物を含むポリアセタール樹脂組成物。
  2. グリオキシジウレイド化合物が、グリオキシジウレイド又はその金属塩である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  3. グリオキシジウレイド化合物が、グリオキシジウレイドと、アルカリ金属,アルカリ土類金属,周期表1B族金属,周期表2B族金属,周期表3B族金属,周期表4B族金属,周期表8族金属から選択された少なくとも一種の金属との塩である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  4. グリオキシジウレイド化合物が、アラントインジヒドロキシアルミニウムである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  5. 塩基性窒素含有化合物が、窒素含有樹脂である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  6. 塩基性窒素含有化合物が、メラミン,メラミン樹脂,ポリアミド樹脂又はポリアクリルアミドである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  7. メラミン樹脂が、架橋メラミン樹脂である請求項6記載のポリアセタール樹脂組成物。
  8. ポリアセタール樹脂100重量部に対して、グリオキシジウレイド化合物0.01〜10重量部、塩基性窒素含有化合物0.01〜10重量部を含む請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  9. さらに、酸化防止剤を含む請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  10. ポリアセタール樹脂100重量部に対して、グリオキシジウレイド、グリオキシジウレイド誘導体及びそれらの金属塩から選択された少なくとも一種のグリオキシジウレイド化合物0.05〜2.5重量部と、酸化防止剤0.05〜2.5重量部と、メラミン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアクリルアミドから選択された少なくとも一種の塩基性窒素含有化合物0.05〜2.5重量部とを含む請求項9記載のポリアセタール樹脂組成物。
  11. グリオキシジウレイドの金属塩及びグリオキシジウレイド誘導体の金属塩が、2〜4価の金属塩である請求項10記載のポリアセタール樹脂組成物。
  12. グリオキシジウレイド又はその誘導体が、グリオキシジウレイド、C1-4 アルキル置換グリオキシジウレイド、アリール置換グリオキシジウレイド、グリオキシジウレイドとアミノ基又はイミノ基含有化合物との反応生成物から選択された少なくとも一種である請求項10記載のポリアセタール樹脂組成物。
  13. ポリアセタール樹脂、グリオキシジウレイド化合物及び塩基性窒素含有化合物とを混合するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  14. 請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物で構成された成形品。
  15. (1)温度80℃で24時間密閉空間で保存したとき、発生ホルムアルデヒド量が成形品の表面積1cm2 当たり1.5μg以下、及び/又は(2)温度60℃,飽和湿度の密閉空間で3時間保存したとき、発生ホルムアルデヒド量が成形品の表面積1cm2 当たり2.5μg以下である請求項14記載のポリアセタール樹脂成形品。
  16. 成形品が、自動車部品、電気・電子部品、建材・配管部品、生活・化粧品用部品および医用部品から選択された少なくとも一種である請求項14記載のポリアセタール樹脂成形品。
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