JP3809958B2 - ゼオライト系触媒の部分的脱アルミニウム方法 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、ゼオライトを含むゼオライト系触媒を水蒸気処理して該ゼオライトを部分的に脱アルミニウムする方法に関する。更に詳細には、本発明は、石油化学や石油精製の分野で広く利用されているゼオライト系触媒の安定性、特に活性安定性、を向上させるためのゼオライト系触媒の脱アルミニウムの方法であって、ゼオライトを含有するゼオライト系触媒を特定の温度分布条件下で水蒸気と接触させ、該ゼオライトの均一な部分的脱アルミニウムを行なう方法に関する。
従来技術
ゼオライトを含有する触媒を安定化するために水蒸気処理することは公知である。例えば、日本国特開昭60−153944号(米国特許第4,429,176号に対応)には、ゼオライト系触媒を、その活性が新鮮活性の25%より低くならない程度に減少させる条件下、すなわち低温条件下で、水蒸気処理して該ゼオライト系触媒を安定化する方法が開示されており、又日本国特開昭63−14732号には、ZSM−5型ゼオライトを600〜800℃の温度、0.1〜1気圧の水分圧、0.2〜20時間の処理時間で加熱処理するとコーク様物質の蓄積による経時活性低下が少なくなり、触媒の安定性が向上することが開示されている。さらに、日本国特開平2−115134号は、結晶性アルミノシリケート、亜鉛成分およびアルミナからなる触媒を、水蒸気分圧0.1〜10Kg/cm2、処理温度500〜800℃、処理時間0.1〜50時間で水蒸気処理すると亜鉛が安定化され、反応条件下での亜鉛の蒸発損失を大幅に低減するできることを開示している。また、日本国特開昭60−156793号は、C2〜C4炭化水素を含む炭化水素原料から芳香族炭化水素を製造する方法において用いられるアルミノシリケート触媒を水蒸気処理することによって僅かに初期活性は低下するが、炭素の析出を有意に低下できることを開示している。
しかし、これらの従来技術の方法で該水蒸気処理を行なうと、日本国特開昭60−153944の実施例におけるような低温水蒸気処理では反応熱が発生するため触媒床の中に不均一な温度分布が生じて均一な処理条件を維持できないという問題があり、日本国特開昭63−14732におけるような高温水蒸気を用いる方法でも、ゼオライトの脱アルミニウムを工業的な規模で安定かつ均一に実施できず、これらの問題解決が強く望まれていた。
発明の開示
本発明者は、上記問題点を克服し、工業的規模で安定かつ均一に実施できるゼオライトの脱アルミニウム方法を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、反応器内で、特定の温度分布条件下でゼオライトを含むゼオライト系触媒の触媒床を水蒸気処理すると、触媒床中のゼオライトが均一に部分脱アルミニウムされ、安定化された活性を均一に有するゼオライト系触媒を得ることができることを知見した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
従って、本発明の1つの目的は、ゼオライト系触媒のゼオライトを均一に部分脱アルミニウムして安定且つ均一な活性を有するゼオライト系触媒を得る方法を提供することにある。
本発明の他の1つの目的は、ゼオライト系触媒のゼオライトの上記の均一な部分的脱アルミニウムを効果的、効率的に、且つ簡便に実施するための方法を提供することにある。
本発明の上記及び他の諸目的、諸特徴及び諸利益は、以下に添付の図面を参照しながら記載する詳細な説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
添付の図面において:
図1は、本発明の方法によるゼオライト系触媒の水蒸気熱処理時の触媒床内の温度分布の一例を示す概略図であり;
図2は、本発明の方法の実施に用いる反応器の一例である等温型反応装置の概略図であり;
図3は、本発明の方法によって得られるゼオライト系触媒を用いて、オレフィンおよび/またはパラフィンを含む軽質炭化水素を接触環化反応に付し、芳香族炭化水素を製造する方法の一例を示すフローシートである。
発明の詳細な説明
基本的には、本発明によれば、ゼオライト系触媒を部分的に脱アルミニウムして安定化した活性を有する部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒を得る方法にして、ゼオライト骨格のSi/Al原子比が2〜60であるゼオライトを含むゼオライト系触媒を反応器に仕込んで該反応器中に触媒床を形成し、次いで水蒸気を該反応器に供給・流通させて上記触媒床のゼオライト系触媒を該水蒸気と0.1〜50時間、次の要件(1)及び(2)を満足する温度分布条件下で接触させ、それによって該ゼオライトを水蒸気処理して部分的に脱アルミニウムする方法が提供される。
本発明の方法におけるゼオライトは、そのゼオライト骨格のSi/Al比が2〜60であり、たとえば、β−ゼオライト、Ω−ゼオライト、Y−ゼオライト,L−ゼオライト,エリオナイト,オフレタイト,モルデナイト,フェリエライト,ZSM−5,ZSM−8,ZSM−11,ZSM−12,ZSM−35,ZSM−38などがあげられるが、ZSM−5,ZSM−8,ZSM−11などのZSM−5型の結晶性アルミノシリケートまたはメタロシリケートが好ましい。ZSM−5型のゼオライトについては、例えば、米国特許第5,268,162号明細書を参照することができる。なおこれらゼオライトは、いずれもH型あるいは金属置換型として用いることができ、該金属置換型の金属はVIII族,Ib族,IIb族,IIIb族に属する金属であることが好ましい。また、さらに、アルミナなどのバインダーおよび/または酸化亜鉛などの脱水素を促進する金属酸化物などと併用することもできる。またこれらH型あるいは金属置換型ゼオライト中に残存するNaの濃度によって活性が変化する事が知られており、水蒸気処理前のゼオライト系触媒中のNa濃度は低い方がよく、特に500重量ppm以下であることが好ましい。Si/Al原子比が12以上の場合には、このことが特に重要である。
本発明の方法において用いられるVIII族,Ib族,IIb族,IIIb族に属する金属は、Zn,Cu,Ag,Ni,Pt,Pd,Gaが好ましく、このうちZn,Ag,Ni,Gaがより好適に用いられる。これらの金属はゼオライト結晶格子内に金属置換してあってもよく、金属酸化物の形で担持されていても良い。水蒸気処理前のゼオライト系触媒としては、上記したゼオライトと、これらの金属類から選ばれた少なくとも一種の金属との混合物が好ましく、更に、バインダーとしてアルミナ、シリカを併用すると、より好ましい。
本発明でいうゼオライト骨格のSi/Al原子比とは29Si−NMRから求めたSi/Al原子比を指す。29Si−NMRを用いてゼオライト中のSi/Al原子比を求める方法については「実験化学講座5,NMR」,第4版(日本国丸善株式会社,1992)232〜233頁に説明されている。
本発明の方法においては、水蒸気は分圧0.1kg/cm2以上で反応器を流通させることが好ましく、その際水蒸気をイナートガスで希釈しても良い。この場合の水蒸気の濃度は10容量%以上が好ましく、特に好ましくは20%〜80%である。イナートガスとしては、ゼオライトと接触しH2Oを発生する、例えばアルコール,エーテル等以外から選ばれるが、窒素が特に好適である。水蒸気の重量時間空間速度(WHSV)については、ゼオライト系触媒の触媒床において水蒸気分圧が変化せず、また偏流等の問題が起きない値に設定するのが好ましく、具体的には、WHSVを0.01〜10hr-1に設定するのが好ましい。
本発明の方法を実施するのに用いられる反応器としては、橋本健治編著「工業反応装置」(日本国培風館,1984)20〜26頁記載の、(I)反応装置壁あるいは反応管壁を通して熱が反応物質に伝達される間接伝熱方式、(II)反応物質が熱源となる熱媒体と直接接触する直接伝熱方式、(III)周囲とは熱交換がない断熱方式の反応器をいい、いずれの形式の反応器でも固定床反応器が好ましい。また、断熱型反応器としては、固定床断熱型反応器、移動床断熱型反応器、流動床断熱型反応器があげられるが、本発明の方法においては、触媒床が一段だけの固定床一段断熱型反応器がより好ましいが、触媒床を数段に分割して段間に熱交換器を設けて熱の供給または除去を行う中間熱交換・多段断熱型反応器であってもよい。
ゼオライトの安定性、特に活性安定性、を向上させるためのゼオライトの水蒸気処理において、該水蒸気処理の過酷度により該水蒸気処理後のゼオライトの安定度およびその活性に差が生じることはよく知られている。すなわち、該水蒸気処理時の水蒸気の分圧あるいは該水蒸気処理時の触媒温度が高いか、水蒸気供給時間が長いと、該水蒸気処理後のゼオライトはより安定化されるが、その一方で該水蒸気処理時の水蒸気の分圧あるいは触媒の温度が高すぎたり、水蒸気供給時間が長すぎると該水蒸気処理後のゼオライトの活性は要求される活性より低くなる。従って、該水蒸気処理を実施する場合は、その後の反応に使用するに十分安定でかつ反応活性も高くなるよう、該水蒸気処理の過酷度を適度な値に決定する必要がある。
水蒸気処理によるゼオライトの安定化は、ゼオライト中のアルミニウムが水蒸気処理により脱離させられる反応のためである事が知られているが、工業的規模で、反応器の全域にわたって、十分安定でかつ高い反応活性を有する触媒を、反応器の温度が該反応器の耐熱温度を越えない条件での脱アルミニウム反応により得るためには、該水蒸気処理時に発生する反応熱が大きく、かつ、脱アルミニウム速度の温度依存性が大きいため、上記過酷度のうち該水蒸気処理時の触媒温度コントロールが非常に重要である。
該水蒸気処理によりゼオライト中のアルミニウムは以下の過程を経て脱離すると推定される。
(1)脱アルミニウム反応は2段階で進行する。
(2)第1の反応は可逆反応であり、水蒸気(H2O)の供給を停止すれば上式中間体はゼオライト骨格内のアルミニウムとなる。
(3)第1の反応は第2の反応に比べ非常に速い。また、水蒸気処理時に発生する反応熱は該第1反応により生じる。
(4)第2の反応は不可逆反応であり非常に遅い。
第1反応に起因する反応熱は大きくその反応が非常に速いため、水蒸気を過剰に触媒床に供給した場合、水蒸気供給直後に該触媒床全域にわたって温度が上昇し、その後は上記温度上昇が継続せず流通される水蒸気あるいはイナートガスにより冷却される。
本発明の方法を工業的に実施する場合の一実施態様を示す図1に従って、本発明の方法を以下に詳細に説明する。
本発明の方法における反応器内の温度とは、反応器内の触媒床に供給される流体(スチーム,イナートガス)の流れ方向の距離が全て等しくなるようにn等分し、n等分したそれぞれの触媒床(以下、ブロックという)の流れ方向の中央部の温度を、該水蒸気処理中に連続的または間欠的に測定した温度を指し、触媒床をn等分したときの第iブロックの触媒時間平均温度(Ti)とは、各ブロックにおいて、上記該水蒸気処理中に連続的または間欠的に測定した温度を平均した値をいう。また、触媒床平均温度(T)とは、各ブロックの触媒時間平均温度(Ti)をブロック数n個で平均した値をいい、下式で表わされる。
さらに、触媒床の最高温度(T2)とは、各ブロックの触媒時間平均温度(Ti)の温度分布曲線(以下、時間平均温度分布曲線という)を描いたときの最高温度を指し、供給する水蒸気の温度(T0)は反応器に充填されている触媒床に供給流体が最初に接する部分(以下、触媒床の入口という)の温度である。
本発明においては、上記、反応器内温度の測定にはエネルギー管理技術[熱管理編]編集委員会編「エネルギー管理技術」(日本国、省エネルギーセンター,1989)384〜389頁記載の熱電温度計を使用する。
図1は、固定床一段断熱型反応器を用いて温度T0の水蒸気を反応器上部から60分間供給・流通して水蒸気処理を行なった例である。図1において、実線はそれぞれ水蒸気供給開始後からのある時間における反応器内温度分布であり、点線は水蒸気供給開始直後から60分後までのそれぞれの位置における時間平均温度分布である。長時間水蒸気処理した時間の時間平均温度分布が点線の如き分布であると、反応器入り口に近い触媒の活性は反応器出口、すなわち、反応器に充填されている触媒床に供給流体が最初に接する部分、の近傍の触媒の活性より高くなり、該水蒸気処理後の活性に分布ができる。つまり、点線で表される時間平均温度分布で水蒸気処理を実施したときの触媒活性を全層にわたって平均した値は、一点鎖線で表される触媒床平均温度(T)で等温で水蒸気処理したときの触媒の活性値と同一になるが、前者の点線の温度分布で処理した場合は、その活性に分布ができる。そのため、該水蒸気処理後の触媒を用いた接触環化反応等において反応器入り口付近触媒でのコーキングが激しくなりコーキングによる劣化が大きくなる等の問題がある。従って、十分に活性が安定でかつ高い反応活性を有する触媒を触媒床全域にわたって得るためには、一点鎖線の如き一定温度で水蒸気処理を行なうことが好ましい。
上記したように、本発明の方法によるゼオライト系触媒の触媒床の水蒸気処理は、次の要件(1)及び(2)を満足する温度分布条件下で行なうことが必要である。
本発明の方法においては、反応器内の温度、すなわち、供給する水蒸気の温度(T0)、触媒床平均温度(T)および触媒床の最高温度(T2)は、いずれも500℃から700℃の間になければならず、好ましくは600℃〜700℃、さらに好ましくは600℃〜680℃である。T0、T、T2が500℃以下の低温であると、本発明の方法により、望まれる長期間の活性安定性と高い反応活性を持つ触媒を得るためには、長時間水蒸気を流通しなければならず、T0、T、T2が700℃以上の高温であると、該水蒸気処理で発生する反応熱により触媒床温度が非常に上昇するため、更に高温耐食性に優れた材質を使用する必要がある等の問題がある。また、700℃以上の高温での水蒸気処理時間が長いと、発生する反応熱により触媒床内に大きな温度分布が生じるため、触媒床内で脱アルミニウムの程度に差ができ該水蒸気処理後の触媒活性に分布が生じ、例えば固定床一段断熱型反応器を用いた場合は、触媒床上部の触媒の活性が下部の触媒の活性より高くなり、該水蒸気処理後の反応時に触媒床上部の触媒のコーキングが激しく活性が非常に早く劣化したり、あるいは、処理温度が高いために活性そのものが低くなりすぎる等の問題がある。
本発明の方法においては、水蒸気は0.1〜50時間の間で供給する必要がある。水蒸気供給時間が0.1時間より短いと該水蒸気処理後の活性が高く、その後の反応時にコーキングによる劣化が激しくなるという問題があり、50時間より長いと該水蒸気処理後の活性が低くなりすぎ、その後の反応時の生産性が低くなる問題がある。
本発明の方法における、触媒時間平均温度の変動係数とは、石川ら著「化学者および化学技術者のための統計的方法」(日本国、東京化学同人,1984)9〜10頁記載の如き、純粋に統計学で定義される変動係数をいい、変動係数により平均値を単位として相対的なバラツキの大きさを表わすことができる。従って、この値が大きいと触媒床内における温度に大きなバラツキができていることになり、変動係数×1000の値が10を越えると、該水蒸気処理時の温度分布が大きくなり、該水蒸気処理後の活性に分布ができ、該水蒸気処理後の触媒を用いた接触環化反応等において活性の高い触媒床でのコーキングが激しくなりコーキングによる劣化が大きくなる等の問題がある。
本発明の方法を実施する場合、後に詳しく述べる、水蒸気の反応器への流通及びそれによる水蒸気とゼオライト系触媒との接触を、それぞれ特定条件下で2段階以上のステップで行なう方法のほかに、図1に示す如く、反応器内温度のうち反応器入り口付近の温度が水蒸気供給開始直後から時間の経過とともに低下していくことを防ぐために、供給する水蒸気の温度(T0)を時間の経過とともに上昇させたり、あるいは、触媒をできるだけ薄く充填した径の非常に大きい反応器を用いて水蒸気処理をしたり、あるいはまた、各々の反応器内の触媒床長さが短い多数の移動床型反応器で水蒸気処理を行なう等の方法を採用することができる。
本発明の一つの好ましい態様においては、上記した水蒸気の反応器への流通及びそれによる水蒸気とゼオライト系触媒との接触を次の工程(A)及び(B)で行なうことにより、本発明の方法を効果的に実施することができる。
(A)水蒸気分圧0.1kg/cm2以上,温度500〜650℃の水蒸気を反応器に流通させてゼオライト系触媒に0.1時間〜3時間接触させ、続いて、
(B)水蒸気の流通を停止し、反応器内の残留水蒸気を除去した後、さらに水蒸気分圧0.1〜10kg/cm2,温度500〜700℃の水蒸気であって、上記工程(A)での流通水蒸気温度より高い温度の水蒸気を少なくとも1回反応器に流通させて該工程(A)で水蒸気処理されたゼオライト系触媒に接触させる。
上記の好ましい態様の方法においては、以下のように水蒸気を2段階以上に分けて流通させると触媒床の上層部と下層部の温度差を低減できるため、安定かつ均一な水蒸気処理を実施することができる。
この好ましい態様の方法における、2段階の水蒸気熱処理の1段階目の工程では、
(A)水蒸気分圧0.1kg/cm2以上、望ましくは0.5〜1Kg/cm2、温度500℃〜650℃、望ましくは550〜650℃、さらに望ましくは600〜620℃の水蒸気をゼオライトに0.1時間〜3時間、望ましくは0.1〜1時間接触させる。
水蒸気温度500℃以下では2段階目以降の処理時の反応熱抑制効果が少なく、650℃以上の温度で水蒸気を投入すると、該水蒸気処理で発生する反応熱により触媒床温度が非常に上昇するため、更に高温耐食性に優れた材質を使用する必要がある等の問題もある。また、上記方法による水蒸気処理時間が長いと、発生する反応熱により触媒床間に大きな温度分布が生じるため、触媒床間で脱アルミニウムの程度に差ができ該水蒸気処理後の触媒活性に分布が生じる。
この2段階の水蒸気熱処理における2段階目の方法の工程では、
(B)上記1段階目の工程(A)に続けて水蒸気の供給・流通を停止し、20〜700℃、好ましくは20〜600℃の前記イナートガスで残留水蒸気を除去し、好ましくは触媒床の平均温度が2段階目の水蒸気供給温度と等しくなるよう、かつ、触媒床の温度分布が最高温度と最低温度の温度差が10℃以下になるまで均一化させる。水蒸気の供給・流通を停止した後、残留水蒸気を除去しないと、この残留水蒸気によって脱アルミニウムが進行し、均一脱アルミニウムに好ましくない。続いて、水蒸気分圧0.1〜10kg/cm2、望ましくは0.5〜1kg/cm2、処理温度500〜700℃、望ましくは1段階目の水蒸気処理時に上昇した触媒床の最高温度±10℃の温度の水蒸気を0.1〜50時間、望ましくは0.1〜20時間だけ接触させる。
上記工程(B)の処理は、上記処理工程を含めて2回以上実施してもよい。この2段階目以降の処理で発生する反応熱は1段階目の工程(A)での反応熱量の1/4〜3/5程度になるため、触媒床内温度差も1段階目より小さく抑えることができ、工業的規模で、反応器の温度が該反応器の耐熱温度を越えない条件で、反応器の全域にわたって、十分安定でかつ高い反応活性を有する触媒を得ることができる。
本発明の方法において、触媒の初期のn−ヘキサンの分解1次反応速度定数とは、図2に示す装置を用いて得られる反応生成物中のn−ヘキサン収率を、下式に、代入して求めた、ガス・オイル採取時間0.25時間の平均のゼオライト基準のn−ヘキサン分解1次反応速度定数をいう。すなわち、図2に示す石英反応管(1)中に下から石英ウール(8)、触媒(7)、ラシヒリング(4)の順で充填し、温度計(2)で測定した触媒(7)の温度が500℃の等温になるように温度調節用熱電対(6)で温度が調整できる電気炉(5)にて石英反応管(1)を加熱し、大気圧、重量時間空間速度(WHSV)4hr-1の条件で、原料流入口(3)よりラシヒリング(4)を通じて触媒(7)へn−ヘキサンを供給し、n−ヘキサン供給後0.75時間から1時間後の反応生成物をコンデンサー(9)にて冷却した後、オイルトラップ(10)にてさらにドライアイス・エタノール冷媒で冷却し、オイルトラップ(10)中に分離したオイル成分および発生ガス捕集用バック(11)中に分離したガス成分をそれぞれ全量採取し、米国、ヒューレット・パッカード社製のFID−TCDガスクロマトグラフィー(HP−5890 シリーズII)にてガス組成を、日本国、島津製作所社製のFIDガスクロマトグラフィー(GC−17A)にてオイル組成を分析して得られる反応生成物中のn−ヘキサン収率を、下式に代入して求めた、上記ガス・オイル採取時間0.25時間の平均のゼオライト基準のn−ヘキサン分解1次反応速度定数をいう。
本発明の方法においては、上記と同様の方法にて求めた水蒸気処理前のゼオライト系触媒の初期のn−ヘキサン分解一次反応速度定数を基準に、前記水蒸気処理を施した各触媒の比活性を下式にて求めた。
本発明の方法においては、水蒸気処理後の部分的脱アルミニウムゼオライトを含むゼオライト系触媒の比活性が、次の式を満足することが好ましい。
反応器内にある全ての部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒の比活性の変動係数≦0.1。
本発明の方法における、反応器内にある全ての触媒の比活性の変動係数とは以下の式で定義されるものをいい、石川ら著「化学者および化学技術者のための統計的方法」(日本国、東京化学同人,1984)9〜10頁記載の如く、変動係数により平均値を単位として相対的なバラツキの大きさを表すことができる。従って、この値が大きいと触媒床内における比活性に大きなバラツキができていることになり、変動係数が0.1を越えると、該水蒸気処理後の活性に分布ができ、該水蒸気処理後の触媒を用いた接触環化反応等において活性の高い触媒床でのコーキングが激しくなりコーキングによる劣化が大きくなる等の問題がある。
本発明の方法によって、ゼオライト系触媒を部分的に脱アルミニウムする際の脱アルミニウムの程度は、得られる部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒の上記式で表わされる比活性の平均値(kave)に換算して、0.05〜0.5、好ましくは0.06〜0.3、更に好ましくは0.15〜0.3の範囲にあるのがよく、それにより、スチーミング処理後の接触環化反応等においてコーキングも少なく、かつ、副生成物も少ない安定な反応が可能である。
本発明の方法において、亜鉛金属及びその化合物から選ばれる少なくとも一種(以下、屡々“亜鉛成分”という)としては、たとえば、亜鉛金属、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、あるいは硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛などの塩、あるいはアルキル亜鉛などの有機亜鉛化合物が挙げられる。
本発明の方法において、アルミナとしては、無水アルミナまたはアルミナの水和物があるが、そのほかにたとえば、アルミニウム塩のように加水分解または加熱分解、酸化などにより、無水アルミナまたはアルミナ水和物を生成する原料を使用する事もできる。
本発明の方法においてアルミナを含む場合のアルミナ含有率は、Al2O3として全触媒に対し5〜50重量%、好ましくは20〜40重量%であり、かつ、アルミナと亜鉛を含む場合は、アルミナと亜鉛のモル比(Al2O3/Zn)が1以上である。
本発明の方法においては、水蒸気処理前の触媒が、ゼオライト、亜鉛成分、およびアルミナの混合物であって、水蒸気を用いて上記記載の方法で処理したものであるか、もしくは水蒸気処理前の触媒が、亜鉛成分およびアルミナの混合物を水蒸気で処理した後、ゼオライトと混合したものを、水蒸気を用いて上記記載の方法で処理したものであると、亜鉛成分とアルミナが反応しアルミン酸亜鉛に変化するため亜鉛が安定化され、反応条件下での亜鉛の飛散損失を大幅に低減する事ができる。また、水蒸気処理前の触媒がゼオライトとアルミン酸亜鉛とを混合したものを水蒸気を用いて上記記載の方法で処理したものである場合でも同様の効果が得られる。ここでいうアルミン酸亜鉛とは、島津製作所のXD−610等のX線回折装置で観察した場合にJCPDS 5−0669 NBS Circ.,539,Vol.II,38(1953)に示されるパターンと同一のX線回折パターンを持つものを意味する。
本発明の方法によって脱アルミニウムしたゼオライトを含むゼオライト系触媒として、富永博夫編「ゼオライトの化学と応用」(日本国、講談社サイエンティフィック,1993)190〜211頁記載の如き接触環化、接触分解、水素化分解、パラフィンの異性化、オレフィンの2量化、キシレンの異性化、トルエンの不均化、エチルベンゼンの合成等の反応に用いる事ができる。上記反応に使用する反応器は、本発明の方法によって水蒸気処理前のゼオライト系触媒を部分的脱アルミニウムとして安定化した活性を有する部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒を得る時に用いる反応器と同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。
上記の種々の反応のうち、接触環化反応、すなわちオレフィンおよび/またはパラフィンを含む軽質炭化水素から高収率で芳香族炭化水素を製造する方法について詳細に説明する。
オレフィンおよび/またはパラフィンを含む軽質炭化水素とは、炭素数2以上、90%留出温度190℃以下の炭化水素である。たとえば、パラフィンとしてはエタン,プロパン,ブタン,ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタン,ノナンであり、オレフィンとしてはエチレン,プロピレン,ブテン,ペンテン,ヘキセン,ヘプテン,オクテン,ノネンがあげられる。上記以外にシクロペンタン,シクロペンテン,メチルシクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロペンテン,シクロヘキセン,シクロヘキサジエンなどのナフテンを含んでもよく、ブタジエン,ペンタジエン,シクロペンタジエンなどのジエン類を含んでいてもよい。上記のそれぞれの混合物を原料として用いてもよく、該混合物には希釈剤としてN2,CO2,CO等のイナートガスや、反応にともない触媒上に蓄積する炭素質(コーク)の生成を抑えるためにH2,CH4を含んでいてもよい。これら希釈剤は、好ましくは0〜20体積%、さらに好ましくは0〜10体積%含んでいても良い。さらに該混合物中の飽和炭化水素と不飽和炭化水素の重量比が0.43〜2.33であると特によい。ここでいう飽和炭化水素と不飽和炭化水素の重量比とは、供給される混合物中の重量比を意味し、図3に示す如く該反応器の出口生成物の一部をリサイクルしている場合はフレッシュフィード(12)とリサイクル成分(13)を混合した後の混合物(14)中の重量比を意味する。
混合物としては、上記のそれぞれの混合物、あるいはナフサなどの石油系炭化水素の高温熱分解生成物のC4留分、前記C4留分よりブタジエンまたはブタジエンとi−ブテンを除いた留分、高温熱分解生成物のC5留分、前記C5留分からジエン類を除いた留分、熱分解ガソリン、熱分解ガソリンより芳香族炭化水素抽出を行ったラフィネート、FCC−LPG、FCC分解ガソリン、リフォーメートより芳香族炭化水素を抽出したラフィネート、コーカーのLPG、直留ナフサがあげられるが、この内、ナフサなどの石油系炭化水素の高温熱分解生成物のC4留分、C5留分、該C4,C5留分からブタジエン,i−ブテン,イソプレン,シクロペンタジエンの一部もしくは全部を除いた留分が特に好適に利用でき、該C4留分、C5留分の重量比が3/7〜7/3である原料が特に好ましい。ここで言う高温熱分解生成物とは、スチームクラッキングと呼称される管式熱分解法で用いられる熱分解装置にて生成されたものを意味し、スチームクラッキングについては「ザ・オイル・アンド・ガスジャーナル誌」P220〜222,MAY12,1969に記載されている。
またC4留分とC5留分の重量比とは供給される混合物中の重量比を意味し、図3に示す如く該反応器の出口生成物の一部をリサイクルしている場合はフレッシュフィード(12)とリサイクル成分(13)を混合した後の混合物(14)中の重量比を意味する。さらに、該原料中に不純物としてTBA(ターシャリーブチルアルコール),メタノール等の含酸素化合物が含まれる事もある。
上記の如き原料を重量時間空間速度(WHSV)が0.1〜50hr-1の条件で供給し、450℃〜650℃、好ましくは490℃〜600℃、さらに好ましくは500℃〜580℃の温度で、2〜10kg/cm3・Gの圧力にて接触環化反応を実施することができる。
また該接触環化反応に伴って触媒上に蓄積する炭素質(コーク)を、酸素を含有するイナートガスで燃焼除去することにより再生しても良い。酸素を含有するイナートガスは反応器にフィードしそのまま大気放出してもよいし、循環圧縮機を用いて循環させてもよい。いずれの場合も、水分吸着剤と接触させる事により水分量を低下させた酸素を含有するイナートガスを用いるとより好適である。該酸素を含有するイナートガスは0.1〜10体積%、好ましくは0.5〜2体積%の酸素を含み、350℃〜600℃、好ましくは390℃〜580℃、更に好ましくは420℃〜480℃に加熱されてコークの付着した該触媒を有する反応器に導入される。イナートガスとしてはゼオライトと接触しH2Oを発生する、例えばアルコール、エーテル等以外から選ばれるが、窒素がより好適である。
本発明の方法においては、該触媒の水蒸気処理の際に、上記の、該触媒の再生に用いる循環圧縮機、加熱炉、熱交換器および配管をそのまま使用する事もできる。
反応器として固定床断熱型反応器を用い、オレフィンおよび/またはパラフィンを含む軽質炭化水素から芳香族炭化水素を高収率で製造する接触環化反応の際に、本発明の方法によって部分的脱アルミニウムしたゼオライト系触媒を触媒として用いると、該環化反応時に生成する芳香族の選択率及び収率を高く長期間にわたって維持することができ、かつコーキングによる触媒劣化が起きることなく、触媒の活性が長期間にわたって維持される。
流通させる水蒸気の温度(T0)、触媒床の最高温度(T2)、触媒床平均温度(T)が700℃より大きかったり、水蒸気供給時間が50時間より長いと、該水蒸気処理後の触媒の活性が全床で低くなり、水蒸気処理後の該環化反応時の芳香族収率が低くなる。また、水蒸気供給時間が0.1時間より短いと、該水蒸気処理後の活性が高く、その後の該環化反応時にコーキングが激しくなる。あるいは、温度の変動係数×1000が10を越える条件で水蒸気処理を実施すると、該水蒸気処理時の温度分布が大きくなり、該水蒸気処理後の触媒活性に分布ができ、その後の該環化反応時に活性の高い触媒床でのコーキングが激しく、その部分の活性劣化が早くなるといった問題がある。
発明を実施するための最良の形態
次に、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
(1)アンモニウムイオン型ZSM−5結晶性アルミノシリケート(Si/Alモル比46)60部とγ−アルミナ15部および硝酸亜鉛25部を混練後、押し出し成形を実施し、直径1.6mm,長さ4〜6mmに成形した。次いで、120℃、4時間乾燥後、500℃,3時間焼成し、亜鉛を10重量%含むZSM−5ゼオライト成形触媒を得た。
(2)次に第1段階処理として、この触媒を固定床断熱型反応器に触媒床として充填し、窒素流通下で触媒床温度を600℃に加熱し、水蒸気を40容量%含む水蒸気−窒素混合ガスを、圧力1Kg/cm2・G(水蒸気分圧0.8Kg/cm2),温度600℃,水蒸気の重量時間空間速度(WHSV)0.08hr-1の条件下で該触媒床に10分間供給・流通した。触媒床を水蒸気の流通方向に沿って21等分し、それぞれの触媒床での水蒸気供給後の温度の経時変化を測定した。ついで第2段階処理として水蒸気の供給・流通を停止し、窒素で反応器内に残存する水蒸気を除去し、触媒床全体の温度を640℃に一定にした。さらに、640℃に加熱した水蒸気を40容量%含む水蒸気−窒素混合ガスを圧力1Kg/cm2・G(水蒸気分圧0.8Kg/cm2),温度640℃に一定にされた触媒床に14分間供給・流通した。この時も上記と同様に触媒床の温度変化を測定した。
尚、上記水蒸気処理は、触媒の再生に用いる循環圧縮機、熱交換器、加熱炉、配管を使用して実施した。
(3)次にこのゼオライト成型触媒の脱アルミニウムの状態を評価するため、n−ヘキサンの転化反応試験を行った。ゼオライト触媒のSi/Al原子比とn−ヘキサンの一次反応速度定数とは比例関係にあることはよく知られている。よって、上記等分した触媒床の各ブロックから触媒を抜き出し、それぞれの触媒について本文前記記載の装置を用いて、圧力大気圧,温度500℃,重量時間空間速度(WHSV)4hr-1の条件で、n−ヘキサンの分解反応を0.25時間実施し、その間の平均のn−ヘキサン一次反応速度定数を求めた。
同様の方法にて求めた水蒸気処理前のフレッシュ触媒のn−ヘキサン一次反応速度定数を基準に、上記水蒸気処理を施した各触媒の比活性を求めた。
この触媒の比活性、および比活性の変動係数をその他の反応条件、結果とともに表1に示す。ここで、表1中の比活性はゼオライトの脱アルミニウム率と対応する。
尚、ここでいう上部触媒比活性とは21等分した触媒床のもっとも上層部のブロックから3番目のブロックまでの触媒比活性の平均を意味し、中部触媒比活性とは21等分した触媒床の10番目のブロックから12番目のブロックまでの触媒比活性の平均を意味し、下部触媒比活性とは21等分した触媒床の18番目のブロックからもっとも下層部までの触媒比活性の平均を意味する。また、触媒床比活性平均は、21等分したブロックの触媒の比活性を平均したものであり、触媒床平均温度(T)は21等分したそれぞれのブロックの触媒時間平均温度の平均値である。従って、該触媒床平均温度(T)で、等温で、上記処理と同一時間、同一水蒸気分圧で水蒸気処理すれば、該触媒床比活性平均と同じ比活性を持つ触媒が得られる。さらに、比活性変動係数を下式により求めた。
比較例1
水蒸気の供給を一次停止する工程後の第2段階処理を行わない他は、実施例1と同様に操作した。すなわち、実施例1の工程(1)と同様の方法で得られたZSM−5ゼオライト成形触媒を固定床断熱型反応器に充填し、水蒸気を40容量%含む水蒸気−窒素混合ガスを、圧力1Kg/cm2・G(水蒸気分圧0.8Kg/cm2),温度600℃,水蒸気の重量時間空間速度(WHSV)0.08hr-1の条件下で1時間供給・流通した。触媒床を21等分し、それぞれの触媒床での水蒸気供給後の温度変化を測定した。次に実施例1の工程(3)と同様の方法で触媒の活性評価を実施した。反応器上部,中部,下部の触媒の反応結果をその他の条件、結果とともに表1に示す。
実施例2
実施例1の工程(1)と同様の方法で得られたZSM−5ゼオライト成形触媒を固定層断熱型反応器に充填し、水蒸気を40容量%含む水蒸気−窒素混合ガスを、圧力1Kg/cm2・G(水蒸気分圧0.8Kg/cm2),温度600℃,水蒸気の重量時間空間速度(WHSV)0.08hr-1の条件下で1時間供給した。触媒床を21等分し、それぞれの触媒床での水蒸気供給後の温度変化を測定した。ついで水蒸気の供給・流通を停止し、窒素で反応器内に残存する水蒸気を除去した。さらに、水蒸気を40容量%含む水蒸気−窒素混合ガスを圧力1Kg/cm2・G(水蒸気分圧0.8Kg/cm2),温度640℃,水蒸気の重量時間空間速度(WHSV)0.08hr-1の条件下で4時間供給・流通した。この時も上記と同様に触媒床の温度変化を測定した。次に実施例1の工程(3)と同様の方法で触媒の活性評価を実施した。
(4)次に、表2に示すC4留分と表3に示すC5留分を4:6(重量比)に混合した原料を530℃に加熱し、反応器に5日間供給・流通して接触環化反応を実施し、C6〜C9芳香族の収率を求めると共に下式にて5日間のコーキングによる劣化速度を求めた。
【数11】
反応器上部,中部,下部の触媒の比活性、およびC4,C5留分を用いた接触環化反応開始後5時間の時の反応結果をその他の条件、結果とともに表4に示す。
比較例2
実施例1の工程(1)と同様の方法で得られたZSM−5ゼオライト成形触媒を固定床断熱型反応器に充填し、水蒸気を40容量%含む水蒸気−窒素混合ガスを、圧力1Kg/cm2・G(水蒸気分圧0.8Kg/cm2),温度640℃,水蒸気の重量時間空間速度(WHSV)0.08hr-1の条件下で1.5時間供給・流通した。触媒床を水蒸気の流通方向に沿って21等分し、それぞれのブロックの触媒床での水蒸気供給後の温度変化を測定した。次に、実施例2の工程(4)と同一の方法でC4,C5留分を用いた反応を実施した。反応器上部,中部,下部の触媒の比活性、およびC4,C5留分の反応結果をその他の条件、結果とともに表4に示す。
比較例3
実施例1の工程(1)と同様の方法で得られたZSM−5ゼオライト成形触媒を固定床断熱型反応器に充填し、水蒸気を40容量%含む水蒸気−窒素混合ガスを、圧力1Kg/cm2・G(水蒸気分圧0.8Kg/cm2),温度640℃,水蒸気の重量時間空間速度(WHSV)0.08hr-1の条件下で5時間供給・流通した。触媒床を水蒸気の流通方向に沿って21等分し、それぞれの触媒床での水蒸気供給後の温度変化を測定した。次に、実施例2の工程(4)と同一の方法でC4,C5留分を用いた反応を実施した。反応器上部,中部,下部の触媒の比活性、およびC4,C5留分の反応結果をその他の条件、結果とともに表4に示す。
表1及び表4より、比較例2、3の如く高温で水蒸気処理を実施すると、触媒床の温度が700℃以上になり高温水蒸気に耐え得る材質の反応器を使用する必要があり、比較例3の如く、長時間水蒸気処理を実施すると、平均比活性が小さくなり、C4,C5留分を用いた接触環化反応時のC6〜C9芳香族の収率が低くなる。一方、実施例1と比較例1あるいは実施例2と比較例2の如く、2段階の水蒸気処理と同じ平均活性を得るように水蒸気処理を1段階で実施する場合は、
で表される値が10を越え、結果として
で表される比活性の変動係数も0.1より大きくなり、均一な水蒸気処理が実施できず、触媒床上部では下部より処理温度が低く活性が高くなるため、水蒸気処理後の触媒を用いた接触環化反応において触媒床上部でのコーキングが激しくなる。例えば実施例2と比較例2において最上部触媒のコーキングによる劣化速度は比較例2の方が約2倍大きくなる。
産業上の利用可能性
以上の如き本発明の方法に従えば、高温水蒸気を用いたゼオライトの脱アルミニウムを実施する場合でも、触媒床内の温度差が小さい条件下でゼオライト系触媒の水蒸気処理を行なうことになるため、該水蒸気処理後の部分的脱アルミニウムされたゼオライト系触媒は、その触媒活性が均一であり、又、接触環化反応のような各種の反応に触媒として用いた時にその活性低下が少なくて長期間にわたって安定した活性を維持することができる。従って、本発明の方法により、上記のような優れた触媒を工業的規模で安定かつ均一に製造する事ができる。
Claims (12)
- ゼオライト系触媒を部分的に脱アルミニウムして安定化した活性を有する部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒を得る方法にして、ゼオライト骨格のSi/Al原子比が2〜60であるゼオライトを含むゼオライト系触媒を反応器に仕込んで該反応器中に触媒床を形成し、次いで水蒸気を該反応器に供給・流通させて上記触媒床のゼオライト系触媒を該水蒸気と0.1〜50時間、次の要件(1)及び(2)を満足する温度分布条件下で接触させ、それによって該ゼオライトを水蒸気処理して部分的に脱アルミニウムする方法において、
上記の水蒸気の反応器への流通及びそれによる水蒸気とゼオライト系触媒との接触を次の工程(A)及び(B)で行なうことを特徴とするゼオライト系触媒の部分的脱アルミニウム方法。
(A)水蒸気分圧0.1Kg/cm2以上,温度500〜650℃の水蒸気を反応器に流通させてゼオライト系触媒に0.1時間〜3時間接触させ、続いて、
(B)水蒸気の流通を停止し、反応器内の残留水蒸気を除去した後、さらに水蒸気分圧0.1〜10Kg/cm2,温度500〜700℃の水蒸気であって、上記工程(A)での流通水蒸気温度より高い温度の水蒸気を少なくとも1回反応器に流通させて該工程(A)で水蒸気処理されたゼオライト系触媒に接触させる。 - 該反応器が固定層反応器である請求項1に記載の方法。
- 該水蒸気を、重量時間空間速度(WHSV)が0.01〜10hr-1で反応器に流通させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 上記の部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒の比活性が、次の式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
反応器内にある全ての部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒の比活性の変動係数≦0.1
(但し、部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒の初期の比活性は、水蒸気処理前のゼオライト系触媒のn−ヘキサン分解1次反応速度定数に対する該部分的脱アルミニウムゼオライト系触媒の初期のn−ヘキサン分解1次反応速度定数の比として定義される) - 水蒸気処理前のゼオライト系触媒が、ZSM−5型ゼオライトよりなることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 該ゼオライトが、Si/Al原子比が12以上のゼオライト骨格を有しており、かつ、Naを500重量ppm以下の濃度で含有している請求項4に記載の方法。
- 水蒸気処理前のゼオライト系触媒が、該ゼオライトと、周期律表VIII族,Ib族,IIb族及びIIIb族に属する金属及びその化合物から選ばれる少なくとも一種とを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 少なくとも一種の金属が亜鉛であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
- 水蒸気処理前のゼオライト系触媒が、該ゼオライト、亜鉛及びその化合物から選ばれる少なくとも一種、ならびにアルミナの混合物であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
- 水蒸気処理前のゼオライト系触媒が、該ゼオライトと、亜鉛及びその化合物から選ばれる少なくとも一種ならびにアルミナの混合物を水蒸気中で熱処理したものとの混合物であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
- 水蒸気処理前のゼオライト系触媒が、該ゼオライトとアルミン酸亜鉛との混合物であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
- 水蒸気処理前のゼオライト系触媒中の亜鉛及びその化合物から選ばれる少なくとも一種の濃度が、亜鉛として5〜25重量%である請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
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