JP3808234B2 - ウエハ支持部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温雰囲気下においてウエハを支持する静電チャックやサセプタの如きウエハ支持部材に関するものであり、特に半導体装置や液晶の製造工程における、PVD、CVD等の成膜装置用やエッチング装置用として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造工程において、半導体ウエハ(以下、ウエハと言う)に成膜を施すPVD、CVD等の成膜装置や、ウエハに微細なエッチング加工を施すドライエッチング装置には、ウエハを支持するために静電チャックやサセプタの如きウエハ支持部材が用いられている。
【0003】
例えば、図5(a)(b)に示すウエハ支持部材31は、静電チャックと呼ばれるもので、円盤状をした板状セラミック体32からなり、その上面をウエハWの載置面32aとするとともに、板状セラミック体32中には載置面32a側から順に、プラズマ発生用電極としての1枚の円板状をした内部電極33と 静電吸着用電極としての2枚の半円状をした内部電極34をそれぞれ埋設したもので、これらの内部電極33,34は、板状セラミック体32の下面に開口する下穴32bに銀(Ag)及び/又は銅(Cu)を主体とするロウ材を用いて接合された金属製の外部端子35,36とそれぞれ電気的に接続したものがあった(特開平11−74336号公報参照)。
【0004】
なお、図5(b)に示す41は、ウエハ支持部材31に備えるプラズマ発生用電極と対をなすもう一方のプラズマ発生用の電極であり、これらの電極33,41間に高周波電力を印加することでプラズマを発生させるようになっていた。
【0005】
そして、このウエハ支持部材31によりウエハWを保持するには、載置面32a上にウエハWを載せたあと、外部端子36間に通電して誘電分極によるクーロン力や微小な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力などの静電吸着力を発現させることにより、ウエハWを載置面32a上に吸着固定するようになっていた。
【0006】
なお、図5(a)(b)では、内部電極33としてプラズマ発生用電極と内部電極34として静電吸着用電極をそれぞれ備えたウエハ支持部材31の例を示したが、これ以外に、内部電極としてヒータ用電極を備えたサセプタと呼ばれるウエハ支持部材や、ヒータ用電極とプラズマ発生用電極、あるいは静電吸着用電極とヒータ用電極を備えたウエハ支持部材、さらには静電吸着用電極、プラズマ発生用電極、及びヒータ用電極の3つの内部電極を備えたウエハ支持部材などもあり、いずれの内部電極も、板状セラミック体に銀や銅を主体とするロウ材にて接合された外部端子と電気的に接続されるようになっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ウエハWに成膜処理を施すには、処理温度としてウエハWを100℃以上の高温に加熱する必要があり、また、エッチング処理においても100℃以上の高温に加熱されることがあるため、図5に示すウエハ支持部材31には室温から処理温度の範囲内で熱サイクルが加わることになる。
【0008】
ところが、このような高温雰囲気下で静電吸着力を発現させるために外部端子36間に直流電圧を通電し続けると、外部端子36を板状セラミック体32に接合するロウ材の構成成分である銀イオンや銅イオンがマイグレーションを起こし、銀イオンや銅イオンが陽極側から陰極側へ移動するといった課題があった。具体的には、外部端子36間に250Vの直流電圧を印加すると、外部端子36間の距離が約10mmのときには約10分程度で、外部端子36間の距離が約5mmのときには約30秒程でマイグレーションが発生した。
【0009】
そして、このマイグレーションによって外部端子36間が導通されて絶縁性が保てなくなると、静電吸着力を発現させることができなくなり、静電チャックとして機能しなくなるといった課題があった。
【0010】
また、このマイグレーションの問題は、プラズマ発生用電極をなす内部電極33と電気的に接続された外部端子35と、静電吸着用電極をなす内部電極34と電気的に接続された外部端子36との間にも発生し、両者間の絶縁性が保てなくなるとプラズマを発生させることができなかった。
【0011】
一方、このようなマイグレーションを防止する方法として、外部端子35,36と板状セラミック体32との接合部を構成するロウ材層を、絶縁性の樹脂膜やニッケル膜で被覆したり、ロウ材としてイオンマイグレーションを起こし易い銀や銅などを含まないロウ材を用いることが考えられるが、樹脂膜を被覆する方法では耐熱温度が低すぎて使用することができず、ニッケル膜を被覆する方法では板状セラミック体32との熱膨張差が大きいためにニッケル膜が剥離するといった不都合があり、また、銀や銅を含まないロウ材を用いたものでは、ロウ付け温度が高く、ロウ材の剛性も高いために接合部に発生する応力を緩和できず、板状セラミック体32を破損させる恐れがある、というように、いずれも実用に供するものではなかった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、ウエハが載置される載置面を有する板状セラミック体中に、少なくとも一つの内部電極を有し、該内部電極と電気的に接続される外部端子を、前記板状セラミック体に銀及び/又は銅を含むロウ材を用いて植設してなるウエハ支持部材において、前記外部端子の外周に、該外部端子よりも熱膨張係数が大きなセラミックス、Ni又はNi合金、或いはNi、Au、Ptのいずれかを被覆した金属部材よりなる筒状体を取着するとともに、前記筒状体の端部を、前記板状セラミック体の表面に100℃以上の高温雰囲気下で、前記筒状体を外部端子よりも大きく熱膨張させて気密に密着することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記板状セラミック体の表面で、筒状体の端部が対向する位置に環状溝を形成し、前記筒状体の端部を、前記環状溝の底面より所定距離離間させた位置に配したことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、前記内部電極として、静電吸着用電極、ヒータ用電極、プラズマ発生用電極として用いたことを特徴とする。
【0015】
なお、本発明において、所定距離とは、高温雰囲気において、筒状体が外部端子よりも大きく熱膨張して板状セラミック体の表面と当接するとともに、筒状体の押圧力によって外部端子が板状セラミック体より外れない程度に密着させることができる距離のことを言う。また、高温雰囲気とは、ウエハに成膜処理やエッチング処理を施す100℃以上の処理温度のことを言い、その加熱手段としてはウエハ支持部材を直接発熱させたり、間接的にウエハ支持部材を加熱することを含むものである。
【0016】
【作用】
本発明のウエハ支持部材によれば、静電吸着用電極、ヒータ用電極、プラズマ発生用電極をなす内部電極と電気的に接続され、板状セラミック体の表面に銀及び/又は銅を含むロウ材にて接合された外部端子の外周に、該外部端子よりも熱膨張係数が大きな筒状体を取着するとともに、前記筒状体の端部を、前記板状セラミック体の表面より所定距離離間させた位置に設け、100℃以上の高温雰囲気下では、筒状体を外部端子よりも大きく熱膨張させて板状セラミック体と気密に密着するように構成したことから、高温雰囲気下において、内部電極への通電を繰り返すことにより、外部端子を接合するロウ材の銀イオンや銅イオンがマイグレーションを起こしたとしても、前記筒状体によってその移動を防ぎ、閉じ込めることができるため、外部端子同士が導通することがなく絶縁性を保つことができる。
【0017】
その為、本発明のウエハ支持部材を用いれば、板状セラミック体中に埋設する、静電吸着用電極、ヒータ用電極、プラズマ発生用電極としての内部電極へ安定して通電し続けることができる。
【0018】
また、室温下では、筒状体の端部を板状セラミック体の表面より離間させてあることから、高温雰囲気下で筒状体が板状セラミック体の表面と密着しても、外部端子のロウ付け部に、ロウ付け強度より大きな引張応力が作用することを防ぎ、外部端子の抜けを防止することができる。
【0019】
さらに、前記筒状体をセラミックス、Ni又はNi合金、或いはNi、Au、Ptのいずれかを被覆した金属部材により形成してあることから、腐食性を有するハロゲンガスやプラズマに曝されたとしてもロウ材層や外部端子の腐食を防ぐことができる。
【0020】
また、本発明によれば、前記板状セラミック体の表面で、筒状体の端部が対向する位置に環状溝を形成し、前記筒状体の端部を、前記環状溝の底面より所定距離離間させた位置に設置したことから、板状セラミック体と筒状体との接触面積を増やして気密性を高めることができるため、マイグレーションの進行を効果的に防ぐことができるとともに、ハロゲンガス等の腐食性ガスやプラズマからのロウ材層や外部端子の腐食も効果的に防ぐことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0022】
図1(a)は本発明のウエハ支持部材の一例を示す斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図であり、図2(a)は図1(b)の主要部を拡大した室温下での断面図、(b)は図1(b)の主要部を拡大した高温雰囲気下での断面図である。
【0023】
このウエハ支持部材1は、静電チャックと呼ばれるもので、円盤状をした板状セラミック体2からなり、その上面をウエハWの載置面2aとするとともに、板状セラミック体2中には載置面2a側から順に、円板状をしたプラズマ発生用電極としての内部電極3と 静電吸着用電極としての内部電極4をそれぞれ埋設したもので、これらの内部電極3,4は、板状セラミック体2の下面に開口する下穴2bに銀(Ag)及び/又は銅(Cu)を主体とするロウ材を用いて接合した金属製の外部端子5,6と電気的に接続されている。
【0024】
なお、図1(b)において41は、ウエハ支持部材1に備える内部電極3と対をなすもう一方のプラズマ発生用の電極であり、これらの電極3,41間に高周波電力を印加することでプラズマを発生させるようになっている。
【0025】
板状セラミック体2中に埋設する内部電極4は、図3(a)に示すように半円状をした2枚の電極4aを、円を構成するように配置してあり、内部電極4の最外径がウエハWの外径とほぼ同等あるいは若干大きくすることにより、ウエハWの全面を均一に吸着固定することができる。
【0026】
静電吸着用電極をなす内部電極4のパターン形状としては、図3(a)に示すパターン形状以外に、例えば図3(b)に示すような扇状をした電極4aを円を構成するように配置したものや図3(c)に示すようなリング状をした電極4aを同心円状に配置したものなど、ウエハWのほぼ全面を均一な吸着力でもって固定できるようなパターン形状であれば良い。
【0027】
また、プラズマ発生用電極をなす内部電極3の最外径も、ウエハWの全面に対して均一な密度のプラズマを発生させるために、ウエハWの外径とほぼ同等あるいは若干大きくすることが良い。そして、これらの内部電極3,4の形態としては、膜、メッシュ、あるいは箔等のいずれの形態であっても構わない。
【0028】
さらに、外部端子5,6の外周には、図2(a)に示すように、外部端子6,(5)よりも熱膨張係数の大きなセラミックス、Ni又はNi合金、或いはNi、Au、Ptのいずれかを被覆した金属部材よりなる筒状体8,(7)を取着してあり、筒状体8,(7)の端部は、成膜やエッチングなどの処理を施す高温雰囲気下では、図2(b)に示すように、筒状体8,(7)と板状セラミック体2との熱膨張差によって筒状体8,(7)の端部が板状セラミック体2の下面と気密に密着する程度の距離tだけ離間させてある。
【0029】
なお、筒状体8,(7)の端部を板状セラミック体2の下面より離間させるとは、筒状体8,(7)の端部全体が板状セラミック体2の下面より離れている必要はなく、部分的に板状セラミック体2と当接していても構わない。
【0030】
筒状体8,(7)の端部を板状セラミック体2の下面より所定距離離間させるにあたっては、外部端子6,(5)の外周に備えるネジ部6a(5a)と、筒状体8,(7)の内周に備えるネジ部8aとを螺合させ、ねじの送り量を調整することにより距離tを管理するようにしてある。
【0031】
そして、このウエハ支持部材1によりウエハWを吸着固定するには、載置面2a上にウエハWを載せた状態で外部端子6間に直流電圧を印加して誘電分極によるクーロン力や微小な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力などの静電吸着力を発現させることにより、ウエハWを載置面2a上に吸着固定することができ、この状態でヒータやランプ等によりウエハ支持部材1を間接的に加熱し、ディポジッション用ガスやエッチング用ガスを供給することにより、ウエハWに精度の良い成膜処理やエッチング処理を施すことができる。
【0032】
この時、ウエハ支持部材1はヒータやランプ等により加熱されることで、外部端子6を接合するロウ材の構成成分である銀イオンや銅イオンがマイグレーションを起こして陽極側から陰極側へ向けて板状セラミック体2の下面を移動することになるが、外部端子6の外周に取着された筒状体8は、図2(b)に示すように、高温雰囲気下では外部端子6より大きく熱膨張するとともに、外部端子6の一端が板状セラミック体2にロウ付け固定されているため、板状セラミック体2の表面と気密に密着し、銀イオンや銅イオンの移動を筒状体8内に閉じ込め、陰極側の外部端子6との導通を阻止することができる。
【0033】
また、マイグレーションは、プラズマ発生用電極をなす内部電極3と電気的に接続された外部端子5と、静電吸着用電極をなす内部電極4と電気的に接続された外部端子6との間にも発生するが、外部端子5の外周にも図2(a)に示す筒状体7を取着してあることから、銀イオンや銅イオンの移動を筒状体7内に閉じ込め、両者間の導通を阻止することができる。
【0034】
このように、本発明によれば、ウエハ支持部材1が高温雰囲気に曝されることにより、外部端子5,6を接合するロウ材の銀イオンや銅イオンがマイグレーションを起こしたとしても、各外部端子5,6間の絶縁性を維持することができるため、長期間にわたり安定した静電吸着力や均一なプラズマを発生させることができ、長寿命のウエハ支持部材1とすることができる。
【0035】
ただし、筒状体7,8の端部が、板状セラミック体2の下面と当接した際の気密性を高める観点から、筒状体7,8及び板状セラミック体2の各々の当接面は、中心線平均粗さ(Ra)で0.01〜0.8μmの面精度に仕上げておくことが好ましい。
【0036】
また、成膜装置やエッチング装置の構造によっては、ウエハ支持部材1の外部端子5,6がディポジッション用ガスやエッチング用ガス中のハロゲンガスに曝されたり、プラズマに曝されることもあるが、本発明によれば、耐食性や耐プラズマ性の高いセラミックス、Ni又はNi合金、或いはNi、Au、Ptのいずれかを被覆した金属部材よりなる筒状体7,8により外部端子5,6の外周を覆ってあることから、外部端子5,6を接合するロウ材層9や外部端子5,6の腐食摩耗を抑えることがきる。
【0037】
なお、図2(a)(b)では、筒状体8,(7)を外部端子6,(5)の外周に取着する手段として、ねじ止めによるものを示したが、予め処理温度や筒状体8,(7)と外部端子6,(5)の熱膨張の度合いを考慮し、筒状体8,(7)を外部端子6,(5)の外周に一体的に接合しておいても構わない。
【0038】
ところで、このような板状セラミック体2を形成する材質としては、耐摩耗性、耐熱性、耐熱衝撃性、耐プラズマ性、耐食性に優れたものが良く、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、窒化アルミニウム、炭化硼素を主成分とするセラミックスを用いることができ、これらの中でも、アルミナ(A12 O3 )の含有量が99重量%以上で、他の成分としてシリカ(SiO2 )、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)等の焼結助剤を含有するアルミナセラミックスや、窒化アルミニウム(AIN)を主成分とし、周期律表第2a,3a族元素の酸化物を0.5〜10重量%の範囲で含有する窒化アルミニウム質セラミックス、あるいは窒化アルミニウム(AIN)の含有量が99.8重量%以上である高純度の窒化アルミニウム質セラミックスは、成膜装置やエッチング装置で使用されるハロゲンガス雰囲気下での耐プラズマ性に優れ、好適である。
【0039】
また、外部端子5,6を形成する材質としては、板状セラミック体2との熱膨張係数が近似したものがよく、Mo(5.2〜6.5×10-6/℃)、Fe−Ni合金(5.0〜5.5×10-6/℃)、Fe−Co−Ni合金(4.5〜5.0×10-6/℃)を用いることができる。
【0040】
さらに、筒状体7,8の材質としては、前述したように、外部端子5,6よりも大きな熱膨張係数を有するセラミックス、Ni又はNi合金(10.0〜14.0×10-6/℃)、あるいはNi、Au、Ptのいずれかを被覆した金属部材の中から適宜選択すれば良く、セラミックスとしては、アルミナセラミックス(7.0〜7.9×10-6/℃)、窒化アルミニウム質セラミックス(4.2〜5.5×10-6/℃)、炭化硼素質セラミックス(4.0〜4.5×10-6/℃)等を用いることができる。また、筒状体7,8の形状としては、断面形状が円形、四角形等の多角形、楕円形など様々な形状をとることができる。
【0041】
ところで、このような図1(a)(b)に示すウエハ支持部材1を製造するには、まず板状セラミック体2を構成する前述したセラミックスの粉末に対してバインダーと溶媒を添加して泥しょうを作製し、ドクターブレード法等のテープ成形法により複数枚のセラミックグリーンシートを形成し、このうち1枚のセラミックグリーンシートに導体ペーストを円板状に印刷するとともに、もう1枚のセラミックグリーンシートに導体ペーストを図3(a)に示すパターン形状のように印刷したあと積層し、さらに残りのセラミックグリーンシートを重ねて積層する。次いで得られたセラミック積層体を円盤状に切削したあと、各セラミック粉末を焼結させることができる温度で焼成するか、あるいは前記泥しょうを乾燥造粒して顆粒を製作し、一軸加圧成形法や等加圧成形法にて円板状の成形体を成形したあと、導体ペーストを図3(a)に示すパターン形状に印刷するか、あるいは図3(a)に示すパターン形状を有する箔板を敷設したあと、顆粒を充填して一軸加圧成形法や等加圧成形法にて成形し、さらに導体ペーストを円板状に印刷するか、あるいは円板状の箔板を敷設したあと、顆粒を充填して一軸加圧成形法や等加圧成形法にて成形し、しかるのち各セラミック粉末を焼結させることができる温度で焼成することにより、プラズマ発生用電極をなす内部電極3と静電吸着用電極をなす内部電極4を埋設してなる板状セラミック体2を製作する。
【0042】
次に、内部電極3が埋設されている側の板状セラミック体2の主面に研磨加工を施して載置面2aを形成するとともに、他方の主面には内部電極3,4まで貫通する下孔2bを設け、下穴2b内にメタライズ処理を施したあと、外周にネジ部5a,6aを有する外部端子5,6を銀や銅を主体とするロウ材を用いてロウ付け固定する。
【0043】
そして、上記外部端子5,6より熱膨張係数が大きなセラミックス、Ni又はNi合金、あるいはNi又はPtを被覆した金属部材のいずれかよりなる筒状体7,8を外部端子5,6に螺合し、筒状体7、8の端部が板状セラミック体2の下面より所定距離tだけ離間するように設置する。具体的には、外部端子5,6と筒状体7,8との熱膨張差が10×10-6/℃程度ある時には、所定距離tを100μm以下の範囲で設ければ良い。
【0044】
かくして、図1(a)(b)に示すウエハ支持部材1を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態を図4をもって説明する。
【0046】
この実施形態は、板状セラミック体2の下面で、筒状体8,(7)の端部と対向する位置に環状溝2cを形成し、筒状体8,(7)の端部を前記環状溝2cの底面より所定距離t離間させて設置したものである。このような構造とすることで板状セラミック体2と筒状体8,(7)との接触面積を増やすことができるため、気密性をよりいっそう高めることができ、マイグレーションの進行を防ぐことができることは勿論のこと、ハロゲンガス等の腐食性ガスやプラズマによるロウ材層9や外部端子6,(5)の腐食を効果的に防ぐことができる。
【0047】
なお、本発明は、図2や図4に示した構造だけに限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で改良や設計変更できることは言うまでもない。
【0048】
また、図1では板状セラミック体2中にプラズマ発生用電極をなす内部電極3と静電吸着用電極をなす内部電極4を埋設したウエハ支持部材1を例にとって説明したが、この構造だけに限定されるものではなく、内部電極がヒータ用電極であって直流電圧を印加して使用するウエハ支持部材にも適用することができ、また、この他に静電吸着用電極とヒータ用電極や、ヒータ用電極とプラズマ発生用電極をなす内部電極を備えたウエハ支持部材、さらには静電吸着用電極、ヒータ用電極、及びプラズマ発生用電極の3つの内部電極を備えたウエハ支持部材にも好適に用いることができることは言うまでもない。
【0049】
【実施例】
ここで、図1に示す本発明のウエハ支持部材1と図5に示す従来のウエハ支持部材31を試作し、550℃の高温に加熱した状態でシリコンウエハを吸着保持させた時に、イオンマイグレーションによる外部端子5,6,35,36間の導通の有無について調べる実験を行った。
【0050】
本実験にあたり、ウエハ支持部材1,31を構成する板状セラミック体2,32及び筒状体7,8は、AlN含有量が99.9重量%である熱膨張係数が5×10-6/℃の窒化アルミニウム質セラミックスにより形成し、板状セラミック体2,32中に埋設するプラズマ発生用電極としての内部電極3,33及び静電吸着用電極としての内部電極4,34はそれぞれタングステン膜により形成した。ただし、内部電極3は円板状とし、内部電極4は図3(a)に示すパターン形状とするとともに、板状セラミック体2,32の外径は200mmとした。
【0051】
また、各内部電極3,4と電気的に接続される外部端子5,6,35,36は、熱膨張係数が4.7×10-6/℃であるFe−Ni−Co合金により形成し、Cu−Ag−Ti系のロウ材を用いて各板状セラミック体2,32にロウ付け固定するとともに、本発明にあっては、外部端子5,6と筒状体7,8との所定距離tを5μm程度に設定した。
【0052】
そして、これらのウエハ支持部材1,31をPVD装置の真空処理室内にセットし、ウエハ支持部材1,31中のプラズマ発生用電極をなす内部電極3,33とプラズマ発生用の電極41との間に、13.56MHzの高周波電力を印加してプラズマを発生させた状態でフッ素ガスを供給するとともに、別に設けたヒータでもってウエハ支持部材1,31を550℃に間接的に加熱し、外部端子6,36間に250Vの直流電圧を印加して載置面2a,32a上に載せたシリコンウエハWを1時間吸着固定させ、イオンマイグレーションによる外部端子5,6,35,36間の導通の有無について調べる実験を行った。
【0053】
この結果、従来のウエハ支持部材31では、外部端子35,36を覆う筒状体を備えておらず、ロウ材層が大気中に露出しているため、外部端子36間にCuイオンのマイグレーションが発生してCuの導体層が形成され、実験後には静電吸着力を発現させることができなかった。
【0054】
また、プラズマ発生用電極と電気的に接続された外部端子35と静電吸着用電極と電気的に接続された外部端子36との間にもCuイオンのマイグレーションが見られた。
【0055】
これに対し、本発明のウエハ支持部材1は、マイグレーションの発生は見られたものの、Cuイオンの移動が板状セラミック体2と密着している筒状体7,8により阻止し、外部端子5,6間の導通を防止することができ、実験後においても安定して静電吸着力を発現させることができた。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ウエハの載置面を有する板状セラミック体中に、少なくとも一つの内部電極を有し、該内部電極と電気的に接続される外部端子を、前記板状セラミック体に銀及び/又は銅を含むロウ材を用いて植設してなるウエハ支持部材において、前記外部端子の外周に、該外部端子よりも熱膨張係数が大きなセラミックス、Ni又はNi合金、或いはNi、Au、Ptのいずれかを被覆した金属部材よりなる筒状体を取着するとともに、前記筒状体の端部を、前記板状セラミック体の表面より所定距離離間させた位置に配し、100℃以上の高温雰囲気下では、筒状体を外部端子よりも大きく熱膨張させて板状セラミック体と気密に密着するように構成したことから、高温雰囲気下において、外部端子を接合するロウ材の銀イオンや銅イオンがマイグレーションを起こして移動したとしても、板状セラミック体に密着した筒状体によりその移動を阻止することができるため、外部端子間の導通を阻止し、絶縁性を保つことができる。
【0057】
かくして、内部電極が静電吸着用電極である時には、常に安定した静電吸着力を発現してウエハを載置面に精度良く吸着固定することができ、内部電極がヒータ用電極である時には、載置面上のウエハを常に所定の温度に加熱することができ、さらに内部電極がプラズマ発生用電極である時には、常に均一な密度のプラズマを発生させることができるため、このウエハ支持部材を成膜装置やエッチング装置に用いれば、ウエハに対して精度の良い成膜処理やエッチング処理を施すことができる。
【0058】
また、本発明によれば、前記板状セラミック体の表面で、筒状体の端部が対向する位置に環状溝を形成し、前記筒状体の端部を、前記板状セラミック体の表面に100℃以上の高温雰囲気下で、前記筒状体を外部端子よりも大きく熱膨張させて気密に密着することから、板状セラミック体と筒状体との接触面積を増やして気密性を高めることができるため、マイグレーションの進行を効果的に防ぐことができるとともに、ハロゲンガス等の腐食性ガスやプラズマからのロウ材層や外部端子の腐食摩耗も効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のウエハ支持部材の一例を示す斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】(a)は図1(b)の主要部を拡大した室温下での断面図、(b)は図1(b)の主要部を拡大した高温雰囲気下での断面図である。
【図3】(a)〜(c)は静電吸着用電極をなす内部電極のさまざまなパターン形状を示す図である。
【図4】本発明の他のウエハ支持部材における主要部を拡大した室温下での断面図である。
【図5】(a)は従来のウエハ支持部材の一例を示す斜視図、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
1,31:ウエハ支持部材 2,32:板状セラミック体
3,33:プラズマ発生用電極をなす内部電極 3a.33b:載置面
3b,33b:下穴 4,34:静電吸着用電極をなす内部電極
5,6,35,36:外部端子 7,8:筒状体 W:ウエハ
Claims (3)
- ウエハが載置される載置面を有する板状セラミック体中に、少なくとも一つの内部電極を有し、該内部電極と電気的に接続される外部端子を、前記板状セラミック体の表面に銀及び/又は銅を含むロウ材を用いて植設してなるウエハ支持部材において、前記外部端子の外周に、該外部端子よりも熱膨張係数が大きなセラミックス、Ni又はNi合金、或いはNi、Au、Ptのいずれかを被覆した金属部材よりなる筒状体を取着するとともに、前記筒状体の端部を、前記板状セラミック体の表面に100℃以上の高温雰囲気下で、前記筒状体を外部端子よりも大きく熱膨張させて気密に密着することを特徴とするウエハ支持部材。
- 前記板状セラミック体の表面で、筒状体の端部が対向する位置に環状溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウエハ支持部材。
- 前記内部電極が、静電吸着用電極、ヒータ用電極、プラズマ発生用電極のいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウエハ支持部材。
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