JP3806531B2 - ベーンポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ベーンポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図4、5に、従来例のベーンポンプを示す。
図4に示すように、ボディ1に収納穴2を形成し、この収納穴2に、サイドプレート3を収納している。さらに、収納穴2にはカムリング4を挿入して、図5に示すように、このカムリング4をピン5によって固定している。
上記カムリング4には、図5に示すように、略楕円形のリング孔4aを形成している。そして、このリング孔4aに、ロータ6を回転自在に組み込んでいる。ロータ6には、突出自在とした複数枚のベーン7を放射状に組み込んでいる。
【0003】
また、図4に示すように、上記ボディ1には軸孔8を形成し、この軸孔8に、シャフト9を回転自在に挿入している。そして、このシャフト9をロータ6の中心部分に貫通させて、ロータ6に固定している。したがって、シャフト9を回転させれば、ロータ6を回転させることができる。
さらに、上記ボディ1の端面にはカバー10を固定し、ボディ1の収納穴2を塞いでいる。そして、このカバー10に形成した軸受穴11内で、上記シャフト9の先端を回転自在に支持している。
【0004】
このようにしたベーンポンプでは、図示しない駆動源によってシャフト9を回転させれば、ロータ6を回転させることができる。
ロータ6が回転すると、その遠心力によって、ベーン7がロータ6から突出しようとする。したがって、ベーン7が、カムリング4の内壁に押し付けられて、この内壁に沿って出たり入ったりする。
【0005】
このようにベーン7が出たり入ったりするので、図5に示すように、各ベーン7間には独立した室が形成され、ロータ6の回転とともに、その室の容積が順次変化することになる。
ロータ6を、図5の矢印k方向に回転させる場合、ベーン7間の室の容積が大きくなる工程、すなわち、図5の一点鎖線Sで示す吸い込み部分では、作動油を吸い込むことになる。
そこで、上記カバー10には、図4に示すように、紙面奥側と手前側とに二股状に分岐させた吸い込み通路12を形成している。そして、この吸い込み通路12によって、図5の一点鎖線Sで示す吸い込み部分に、タンクの作動油を導くようにしている。
【0006】
なお、図5に示すように、カムリング4の左右両側の吸い込み側部分には、連通孔13を形成している。これら連通孔13は、吸い込み通路12の作動油を、ボディ1側に導くためのものである。そして、ベーン7間の室に作動油が吸い込まれるとき、カバー10側からだけでなく、ボディ1側からも吸い込ませるようにして、吸い込み効率を向上させている。
【0007】
一方、ベーン7間の室の容積が小さくなる工程、すなわち、図5の一点鎖線Tで示す吐出部分では、上記吸い込んだ作動油を吐出することになる。
なお、ボディ1には、図4に示すように、サイドプレート3の背面側に高圧室14を形成している。そして、この高圧室14に吐出油を導き、その圧力作用によってサイドプレート3をロータ6側に押し付けて、ローディングバランスを保つようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなベーンポンプでは、カムリング4の吐出側部分において、その吐出圧が、図5の矢印Fに示すように、カムリング4を内壁側から押し広げようとする力として作用する。
そして、カムリング4を内壁側から押し広げようとする力が作用すると、カムリング4の吐出側部分ではなく、吸い込み側部分で、亀裂が生じてしまうことがあった。
【0009】
具体的に説明すれば、カムリング4は、径方向の力に対しては、十分な抗力を発揮することができる。したがって、吐出圧が、図5の矢印Fに示すように、カムリング4を内壁側から押し広げようとする力として作用しても、この吐出側部分で亀裂が生じることはほとんどない。
ところが、その力が作用する方向から約90度だけ位相のずれた部分、つまり、カムリング4の吸い込み側部分には、図5の矢印fに示すように、両接線方向へ引っ張られるような大きな力が作用してしまう。そのため、カムリング4の吸い込み側部分に、亀裂が生じてしまうことがあった。そして、いったん亀裂が生じると、その亀裂部分に応力が集中することになり、いずれはカムリング4が割れてしまうおそれがある。
【0010】
しかも、カムリング4の吸い込み側部分では、前述したように、連通孔13を形成することがある。そして、連通孔13を形成すると、カムリング4がそれだけ肉薄となり、亀裂が生じやすくなってしまう。
この発明の目的は、ポンプ機能を損なうことなく、カムリングの吸い込み側部分に亀裂が生じるのを防ぐことのできるベーンポンプを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ケーシングと、ケーシング内に設けたカムリングと、カムリングのリング孔に回転自在に組み込んだロータと、ロータに突出自在に組み込んだ複数枚のベーンと、上記ロータを回転させるシャフトとを備え、一対の吐出部分と一対の吸い込み部分とを、ロータの回転軸線に対して対称的に配置してなるベーンポンプを前提とする。
そして、第1の発明は、上記カムリングのリング孔が、ロータ外径とほぼ同じ内径を有する一対の第1円弧部分と、ロータ外径より内径を大きくした一対の第2円弧部分と、さらに、これら第1円弧部分及び第2円弧部分を連続させる一対の吸い込み側コーナー部分と、一対の吐出側コーナー部分とを備えるとともに、上記一対の吸い込み側コーナー部分の径方向外側には、上記カムリングを軸方向に貫通する連通孔を形成し、上記リング孔の一対の吸い込み側コーナー部分が第2円弧部分に連続する箇所であって、その内壁の両エッジ部分に面取り加工を施して、面取り部を形成した点に特徴を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜3に、この発明のベーンポンプの一実施例を示す。ただし、このベーンポンプの基本的な構造は、上記従来例のものと同じなので、以下では、従来例と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図1〜3に示すように、カムリング4の吸い込み側部分で、その内壁の両エッジに面取り加工を施し、面取り部15を形成している。
【0013】
ここで、上記面取り部15を形成する箇所について、具体的に説明する。
カムリング4のリング孔4aの略楕円形について説明すると、リング孔4aは、図2に示すように、ロータ6外径とほぼ同じ内径を有する一対の第1円弧部分aと、ロータ6外径より内径を大きくした一対の第2円弧部分bとを有する。さらに、これら第1円弧部分a及び第2円弧部分bを、一対の吸い込み側コーナー部分c1と、一対の吐出側コーナー部分c2とで滑らかに連続させている。また、上記カムリング4の左右両側の吸い込み側部分には、連通孔穴13を形成し、ベーン7間の室に作動油が吸い込まれるとき、カバー10側からだけでなく、ボディ1側からも吸い込ませるようにして、吸い込み効率を向上させている。
そして、一対の吸い込み側コーナー部分c1が、第2円弧部分bに連続する箇所で、前述したように、カムリング4内壁の両エッジに、面取り部15を形成している。
【0014】
以上述べたように、カムリング4の吸い込み側部分で、その内壁の両エッジ側に面取り部15を形成しておけば、その部分に亀裂が生じるのを防ぐことができる。
すなわち、この実施例のベーンポンプでも、上記従来例と同じく、カムリング4の吸い込み側部分に、図2の矢印fに示すように、両接線方向へと引っ張られるような大きな力が作用する。
【0015】
ここで、上記従来例では、カムリング4内壁の両エッジが直角となっているため、矢印fに示す引っ張り力が作用すると、このカムリング4の直角となった両エッジに応力が集中することになる。そのため、カムリング4の吸い込み側部分で生じる亀裂は、その内壁の両エッジから発生するものと考えられる。
それに対して、この実施例では、その両エッジをなくし、面取り部15を形成したので、矢印fに示す引っ張り力が作用したとしても、応力は分散されることになる。したがって、部分的に応力が集中するようなことがなく、カムリング4の吸い込み側部分に亀裂が生じるのを効果的に抑えることができる。
【0016】
なお、ロータ6が回転する過程で、図1に示すように、あるベーン7が面取り部15部分に位置した状態では、瞬間的に、そのベーン7両側の室が、面取り部15を介して互いに連通することになる。
ただし、上記ベーン7両側の室は、もともと低圧となっている室である。したがって、これらベーン7両側の室が、面取り部15を介して瞬間的に連通したとしても、ベーンポンプとしての機能は損なわれない。
【0017】
なお、上記実施例では、ボディ1及びカバー10が相まって、この発明でいうケーシングを構成する。
また、上記実施例では、カムリング4内壁の両エッジを、平面的に削るようにして面取り部15を形成したが、曲面的に削るようにしてもかまわない。このように曲面的に面取り部15を形成すれば、その加工は難しくなるものの、応力を分散させるといった効果いっそう高めることができる
【0018】
【発明の効果】
この発明によれば、カムリングの吸い込み側部分で、両エッジをなくし、面取り部を形成したので、接線方向への引っ張り力が作用したとしても、応力は分散されることになる。したがって、部分的に応力が集中するようなことがなく、カムリングに亀裂が生じるのを効果的に抑えることができる。
しかも、ロータが回転する過程で、あるベーンが面取り部部分に位置し、そのベーン両側の室が面取り部を介して互いに連通したとしても、これらベーン両側の室はもともと低圧となっている室なので、ベーンポンプとしての機能はなんら損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のベーンポンプを示す断面図である。
【図2】カムリング4を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】従来例のベーンポンプを示す断面図である。
【図5】図4のV−V線矢視図である。
【符号の説明】
1 ボディ
4 カムリング
4a リング孔
6 ロータ
7 ベーン
9 シャフト
10 カバー
15 面取り部
S 吸い込み部分
T 吐出部分

Claims (1)

  1. ケーシングと、ケーシング内に設けたカムリングと、カムリングのリング孔に回転自在に組み込んだロータと、ロータに突出自在に組み込んだ複数枚のベーンと、上記ロータを回転させるシャフトとを備え、一対の吐出部分と一対の吸い込み部分とを、ロータの回転軸線に対して対称的に配置してなるベーンポンプにおいて、上記カムリングのリング孔は、ロータ外径とほぼ同じ内径を有する一対の第1円弧部分と、ロータ外径より内径を大きくした一対の第2円弧部分と、さらに、これら第1円弧部分及び第2円弧部分を連続させる一対の吸い込み側コーナー部分と、一対の吐出側コーナー部分とを備えるとともに、上記一対の吸い込み側コーナー部分の径方向外側には、上記カムリングを軸方向に貫通する連通孔を形成し、上記リング孔の一対の吸い込み側コーナー部分が第2円弧部分に連続する箇所であって、その内壁の両エッジ部分に面取り加工を施して、面取り部を形成したことを特徴とするベーンポンプ。
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