JP3805922B2 - 薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも誘導型磁気変換素子を有する薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録ヘッドと読み出し用の磁気抵抗(以下、MR(Magneto-resistive)とも記す。)素子を有する再生ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。MR素子としては、異方性磁気抵抗(以下、AMR(Anisotropic Magneto-resistive)と記す。)効果を用いたAMR素子と、巨大磁気抵抗(以下、GMR(Giant Magneto-resistive)と記す。)効果を用いたGMR素子とがある。AMR素子を用いた再生ヘッドはAMRヘッドあるいは単にMRヘッドと呼ばれ、GMR素子を用いた再生ヘッドはGMRヘッドと呼ばれる。AMRヘッドは、面記録密度が1ギガビット/(インチ)2を超える再生ヘッドとして利用され、GMRヘッドは、面記録密度が3ギガビット/(インチ)2を超える再生ヘッドとして利用されている。
【0003】
再生ヘッドの性能を向上させる方法としては、MR膜をAMR膜からGMR膜等の磁気抵抗感度の優れた材料に変える方法や、MR膜のパターン幅、特に、MRハイトを適切化する方法等がある。このMRハイトとは、MR素子のエアベアリング面側の端部から反対側の端部までの長さ(高さ)をいい、エアベアリング面の加工の際の研磨量によって制御されるものである。なお、ここにいうエアベアリング面は、薄膜磁気ヘッドの、磁気記録媒体と対向する面であり、トラック面とも呼ばれる。
【0004】
一方、再生ヘッドの性能向上に伴って、記録ヘッドの性能向上も求められている。記録ヘッドの性能を決定する要因としては、パターン幅、特に、スロートハイト(Throat Height:TH)がある。スロートハイトは、2つの磁極層が記録ギャップ層を介して対向する部分の、エアベアリング面側の端部から反対側の端部までの長さ(高さ)をいう。記録ヘッドの性能向上のためには、スロートハイトの縮小化が望まれている。このスロートハイトも、エアベアリング面の加工の際の研磨量によって制御される。
【0005】
記録ヘッドの性能のうち、記録密度を高めるには、磁気記録媒体におけるトラック密度を上げる必要がある。このためには、記録ギャップ層を挟んでその上下に形成された下部磁極および上部磁極のエアベアリング面での幅を数ミクロンからサブミクロン寸法まで狭くした狭トラック構造の記録ヘッドを実現する必要があり、これを達成するために半導体加工技術が利用されている。
【0006】
このように、薄膜磁気ヘッドの性能の向上のためには、記録ヘッドと再生ヘッドをバランスよく形成することが重要である。
【0007】
ここで、図16ないし図22を参照して、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例として、複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例について説明する。なお、図16ないし図21において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。
【0008】
この製造方法では、まず、図16に示したように、例えばアルティック(Al2O3・TiC)よりなる基板101の上に、例えばアルミナ(Al2O3)よりなる絶縁層102を、約5〜10μm程度の厚みで堆積する。次に、絶縁層102の上に、磁性材料よりなる再生ヘッド用の下部シールド層103を形成する。
【0009】
次に、図17に示したように、下部シールド層103の上に、例えばアルミナを100〜200nmの厚みにスパッタ堆積し、絶縁層としての下部シールドギャップ膜104を形成する。次に、下部シールドギャップ膜104の上に、再生用のMR素子105を形成するためのMR膜を、数十nmの厚みに形成する。次に、このMR膜の上に、MR素子105を形成すべき位置に選択的にフォトレジストパターンを形成する。このとき、リフトオフを容易に行うことができるような形状、例えば断面形状がT型のフォトレジストパターンを形成する。次に、フォトレジストパターンをマスクとして、例えばイオンミリングによってMR膜をエッチングして、MR素子105を形成する。なお、MR素子105は、GMR素子でもよいし、AMR素子でもよい。次に、下部シールドギャップ膜104の上に、同じフォトレジストパターンをマスクとして、MR素子105に電気的に接続される一対の電極層106を形成する。
【0010】
次に、下部シールドギャップ膜104およびMR素子105の上に、絶縁層としての上部シールドギャップ膜107を形成し、MR素子105をシールドギャップ膜104,107内に埋設する。
【0011】
次に、上部シールドギャップ膜107の上に、磁性材料からなり、再生ヘッドと記録ヘッドの双方に用いられる上部シールド層兼下部磁極層(以下、下部磁極層と記す。)108を、約3μmの厚みに形成する。次に、下部磁極層108の上に、絶縁膜、例えばアルミナ膜よりなる記録ギャップ層109を0.2μmの厚みに形成する。
【0012】
次に、図18に示したように、磁路形成のために、記録ギャップ層109を部分的にエッチングして、コンタクトホール109aを形成する。次に、磁極部分における記録ギャップ層109の上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えば高飽和磁束密度材料のパーマロイ(NiFe)またはFeNよりなる上部磁極チップ110を、0.5〜1.0μmの厚みに形成する。このとき、同時に、磁路形成のためのコンタクトホール109aの上に、磁路形成のための磁性材料からなる磁性層119を形成する。
【0013】
次に、図19に示したように、上部磁極チップ110をマスクとして、イオンミリングによって、記録ギャップ層109と下部磁極層108をエッチングする。図19(b)に示したように、上部磁極部分(上部磁極チップ110)、記録ギャップ層109および下部磁極層108の一部の各側壁が垂直に自己整合的に形成された構造は、トリム(Trim)構造と呼ばれる。このトリム構造によれば、狭トラックの書き込み時に発生する磁束の広がりによる実効トラック幅の増加を防止することができる。
【0014】
次に、全面に、例えばアルミナ膜よりなる絶縁層111を、約3μmの厚みに形成する。次に、この絶縁層111を、上部磁極チップ110および磁性層119の表面に至るまで研磨して平坦化する。この際の研磨方法としては、機械的な研磨またはCMP(化学機械研磨)が用いられる。この平坦化により、上部磁極チップ110および磁性層119の表面が露出する。
【0015】
次に、図20に示したように、平坦化された絶縁層111の上に、例えば銅(Cu)よりなる誘導型の記録ヘッド用の第1層目の薄膜コイル112を形成する。次に、絶縁層111およびコイル112の上に、フォトレジスト層113を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層113の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。次に、フォトレジスト層113の上に、第2層目の薄膜コイル114を形成する。次に、フォトレジスト層113およびコイル114上に、フォトレジスト層115を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層115の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。
【0016】
次に、図21に示したように、上部磁極チップ110、フォトレジスト層113,115および磁性層119の上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えばパーマロイよりなる上部磁極層116を形成する。次に、上部磁極層116の上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層117を形成する。最後に、スライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面118を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。図22は、この薄膜磁気ヘッドの平面図である。なお、この図では、オーバーコート層117を省略している。
【0017】
図21において、THは、スロートハイトを表し、MR−Hは、MRハイトを表している。また、P2Wは、磁極幅、すなわち記録トラック幅を表している。薄膜磁気ヘッドの性能を決定する要因として、スロートハイトやMRハイト等の他に、図21においてθで示したようなエイペックスアングル(Apex Angle)がある。このエイペックスアングルは、フォトレジスト層113,115で覆われて山状に盛り上がったコイル部分(以下、エイペックス部と言う。)における磁極側の側面の角部を結ぶ直線と絶縁層111の上面とのなす角度をいう。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
近年、コンピュータ等に使用されるハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドにおける記録再生情報の周波数が高くなってきている。記録情報の周波数が高くなると、誘導型磁気変換素子の磁路を形成する磁性層における渦電流損失が大きくなる。それに伴い、記録ギャップ層を介して対向する磁極部分より発生される記録磁界の強度の低下や、コイルに供給される記録電流に対する記録磁界の遅延の増加や、記録磁界の立ち上がりの時間勾配の低下等の問題が発生する。これらの問題は、具体的には、例えば、非線形トランジションシフト(Non-linear Transition Shift;NLTS)の増加として現れる。
【0019】
従来、磁性層における渦電流損失を減少させ、薄膜磁気ヘッドの高周波特性を向上させる技術として、例えば、特開平6−139521号公報や特開昭60−35315号公報には、誘導型磁気変換素子の磁路を形成する磁性層を、軟磁性層と絶縁層とを交互に積層した構造とした技術が示されている。
【0020】
しかしながら、この技術では、磁性層全体を上述の積層構造にしているため、磁束の通過領域が狭くなり、磁束の通過が妨げられて、磁性層を通過する磁束の量が低下するという問題点がある。
【0021】
また、特開平6−139521号公報には、誘導型磁気変換素子の磁路を形成する磁性層を、記録ギャップ層に垂直な方向に沿うように軟磁性層と絶縁層とを交互に配置した構造とした技術も示されている。
【0022】
しかしながら、磁性層をこのような構造とすると、磁性層の磁化(磁歪)の方向を一定にしにくくなり、効率よく磁束を通過させることが難しくなるという問題点がある。
【0023】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁束の通過を妨げることなく、誘導型磁気変換素子の磁路を形成する磁性層における渦電流損失を減少させて、高周波特性を改善できるようにした薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に、この第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で配設された薄膜コイルとを有する誘導型磁気変換素子を備えた薄膜磁気ヘッドであって、
第1および第2の磁性層は、それぞれ、薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置されると共に磁極部分に連結されたヨーク部分を有し、
少なくとも一方の磁性層におけるヨーク部分は、積層された複数の磁性材料層と、隣接する2つの磁性材料層の間に配置され、磁性材料層よりも電気抵抗の大きい抵抗層とを有し、
抵抗層は、記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有するものである。
【0025】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に、この第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で配設された薄膜コイルとを有する誘導型磁気変換素子を備え、第1および第2の磁性層は、それぞれ、薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置されると共に磁極部分に連結されたヨーク部分を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
第1の磁性層を形成する工程と、
第1の磁性層の上にギャップ層を形成する工程と、
ギャップ層の上に第2の磁性層を形成する工程と、
第1の磁性層と第2の磁性層の間に配置されるように薄膜コイルを形成する工程とを含み、
第1の磁性層を形成する工程と第2の磁性層を形成する工程の少なくとも一方は、積層された複数の磁性材料層と、隣接する2つの磁性材料層の間に配置され、磁性材料層よりも電気抵抗の大きい抵抗層とを有するヨーク部分を形成し、
抵抗層は、記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有するものである。
【0026】
本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法では、少なくとも一方の磁性層におけるヨーク部分が、複数の磁性材料層と抵抗層とを有するように形成されると共に、抵抗層が、記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有する。これにより、磁束の通過が妨げられることなく、磁性層における渦電流損失が減少する。
【0027】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法では、抵抗層は、例えば、ヨーク部分のうち、磁極部分との連結部の近傍および他の磁性層との連結部の近傍を除いた一部の 領域に配置される。
【0028】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法では、抵抗層は、例えば絶縁材料によって形成される。この場合、絶縁材料は、例えば無機材料よりなる。また、本発明の第1の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、例えば、抵抗層は、無機材料よりなる層を反応性イオンエッチングによって選択的にエッチングすることによって所定のパターンに形成される。
【0029】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法では、例えば、第1の磁性層は、薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置された第1の部分と、この第1の部分における薄膜コイル側の面に接続され、磁極部分を形成する第2の部分とを有し、薄膜コイルの少なくとも一部は、第1の磁性層の第2の部分の側方に配置され、第2の磁性層のヨーク部分は、複数の磁性材料層と抵抗層とを有する。
【0030】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法では、更に、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、磁気抵抗素子をシールドするための第1および第2のシールド層とを備えていてもよい。この場合、第2のシールド層は、第1の磁性層を兼ねていてもよい。
【0031】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法において、少なくとも一方の磁性層におけるヨーク部分は、磁性材料層を介して隣接する2つの抵抗層を含み、2つの抵抗層は、それぞれ記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有していてもよい。
【0032】
この場合、一方の抵抗層の複数の部分と他方の抵抗層の複数の部分とは、ほぼ互い違いに配置されていてもよい。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1ないし図12を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法について説明する。なお、図1ないし図7において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。
【0034】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、図1に示したように、例えばアルティック(Al2O3・TiC)よりなる基板1の上に、例えばアルミナ(Al2O3)よりなる絶縁層2を、約5μmの厚みで堆積する。次に、絶縁層2の上に、磁性材料、例えばパーマロイよりなる再生ヘッド用の下部シールド層3を、約3μmの厚みに形成する。下部シールド層3は、例えば、フォトレジスト膜をマスクにして、めっき法によって、絶縁層2の上に選択的に形成する。次に、全体に、例えばアルミナよりなる絶縁層20を、例えば4〜6μmの厚みに形成し、例えばCMP(化学機械研磨)によって、下部シールド層3が露出するまで研磨して、表面を平坦化処理する。
【0035】
次に、図2に示したように、下部シールド層3の上に、例えばアルミナまたはチッ化アルミニウムをスパッタ堆積し、絶縁層としての下部シールドギャップ膜4を形成する。次に、下部シールドギャップ膜4の上に、再生用のMR素子5を、数十nmの厚みに形成する。MR素子5は、例えば、スパッタによって形成したMR膜を選択的にエッチングすることによって形成する。なお、MR素子5には、AMR素子、GMR素子、あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。次に、下部シールドギャップ膜4の上に、MR素子5に電気的に接続される一対の電極層6を、数十nmの厚みに形成する。次に、下部シールドギャップ膜4およびMR素子5の上に、絶縁層としての上部シールドギャップ膜7を形成し、MR素子5をシールドギャップ膜4,7内に埋設する。
【0036】
次に、上部シールドギャップ膜7の上に、磁性材料からなり、再生ヘッドと記録ヘッドの双方に用いられる上部シールド層兼下部磁極層(以下、下部磁極層と記す。)の第1の部分8aを、約1.0〜2.0μmの厚みで、選択的に形成する。下部磁極層の第1の部分8aは、下部磁極層のうち、後述する薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置される部分である。
【0037】
次に、図3に示したように、下部磁極層の第1の部分8aの上に、下部磁極層の第2の部分8bおよび第3の部分8cを、約1.5〜2.5μmの厚みに形成する。第2の部分8bは、下部磁極層の磁極部分を形成し、第1の部分8aの薄膜コイル側の面に接続される。第3の部分8cは、第1の部分8aと後述する上部磁極層とを接続するための部分である。本実施の形態において、第2の部分8bのエアベアリング面とは反対側(図において右側)の端部の位置は、磁極部分のエアベアリング面とは反対側の端部の位置であるスロートハイトゼロ位置となる。
【0038】
下部磁極層の第2の部分8bおよび第3の部分8cは、NiFe(Ni:80重量%,Fe:20重量%)や、高飽和磁束密度材料であるNiFe(Ni:45重量%,Fe:55重量%)の材料を用い、めっき法によって形成してもよいし、高飽和磁束密度材料であるFeN,FeZrN等の材料を用い、スパッタによって形成してもよい。この他にも、高飽和磁束密度材料であるCoFe,Co系アモルファス材等を用いてもよい。
【0039】
次に、図4に示したように、全体に、例えばアルミナよりなる絶縁膜9を、約0.3〜0.6μmの厚みに形成する。
【0040】
次に、フレームめっき法によって、例えば銅(Cu)よりなる薄膜コイル10を、例えば約1.0〜2.0μmの厚みに形成する。なお、図中、符号10aは、薄膜コイル10と後述する電極用パッドとを接続するための導電層が接続される接続部を示している。
【0041】
次に、図5に示したように、全体に、例えばアルミナよりなる絶縁層11を、約3〜4μmの厚みで形成する。次に、例えばCMPによって、下部磁極層の第2の部分8bおよび第3の部分8cが露出するまで、絶縁層11を研磨して、表面を平坦化処理する。ここで、図5では、薄膜コイル10は露出していないが、薄膜コイル10が露出するようにしてもよい。薄膜コイル10が露出するようにした場合には、薄膜コイル10および絶縁層11の上に他の絶縁層を形成する。
【0042】
次に、図6に示したように、露出した下部磁極層の第2の部分8bおよび第3の部分8cと絶縁層11の上に、絶縁材料よりなる記録ギャップ層12を、例えば0.2〜0.3μmの厚みに形成する。記録ギャップ層12に使用する絶縁材料としては、一般的に、アルミナ、窒化アルミニウム、シリコン酸化物系材料、シリコン窒化物系材料、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等がある。
【0043】
次に、磁路形成のために、下部磁極層の第3の部分8cの上の部分において、記録ギャップ層12を部分的にエッチングしてコンタクトホールを形成する。
【0044】
次に、記録ギャップ層12の上に、以下の手順で上部磁極層13を形成する。すなわち、まず、記録ギャップ層12の上に、磁性材料よりなる第1の磁性材料層13aを、例えば約0.5〜1.5μmの厚みで、所定のパターンに形成する。次に、第1の磁性材料層13aの上に、第1の磁性材料層13aよりも電気抵抗の大きい第1の抵抗層21を、例えば数十〜数百nmの厚みで、所定のパターンに形成する。図8は、上部磁極層13の第1の磁性材料層13aと第1の抵抗層21とを示す平面図である。次に、第1の抵抗層21の上に、第1の磁性材料層13aと同じ磁性材料よりなる第2の磁性材料層13bを、例えば約0.5〜1.5μmの厚みで、所定のパターンに形成する。次に、第2の磁性材料層13bの上に、第2の磁性材料層13bよりも電気抵抗の大きい第2の抵抗層22を、例えば数十〜数百nmの厚みで、第1の磁性材料層13aと同じパターンに形成する。図9は、上部磁極層13の第2の磁性材料層13bと第2の抵抗層22とを示す平面図である。次に、第2の抵抗層22の上に、第1の磁性材料層13aと同じ磁性材料よりなる第3の磁性材料層13cを、例えば約0.5〜1.5μmの厚みで、第1の磁性材料層13aと同じパターンに形成する。
【0045】
磁性材料層13a〜13cは、NiFe(Ni:80重量%,Fe:20重量%)や、高飽和磁束密度材料であるNiFe(Ni:45重量%,Fe:55重量%)の材料を用い、めっき法によって形成してもよいし、高飽和磁束密度材料であるFeN,FeZrN等の材料を用い、スパッタによって形成してもよい。この他にも、高飽和磁束密度材料であるCoFe,Co系アモルファス材等を用いてもよい。
【0046】
抵抗層21,22は、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、シリコン酸化物系材料、シリコン窒化物系材料、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の無機絶縁材料によって形成される。また、抵抗層21,22は、例えば、スパッタによって上記無機絶縁材料よりなる膜を形成した後、この膜を例えば反応性イオンエッチング(RIE)によって選択的にエッチングすることによって、所定のパターンに形成される。
【0047】
このように、本実施の形態における上部磁極層13は、積層された複数の磁性材料層13a〜13cと、隣接する2つの磁性材料層の間に配置された抵抗層21,22とによって構成される。この上部磁極層13の特徴については、後で詳しく説明する。
【0048】
次に、上部磁極層13をマスクとして、ドライエッチングにより、記録ギャップ層12を選択的にエッチングし、更に、例えばアルゴンイオンミリングによって、下部磁極層の第2の部分8bを選択的に約0.3〜0.6μm程度エッチングして、図6(b)に示したようなトリム構造とする。このトリム構造によれば、狭トラックの書き込み時に発生する磁束の広がりによる実効トラック幅の増加を防止することができる。
【0049】
次に、図7に示したように、全体に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層17を、20〜40μmの厚みに形成し、その表面を平坦化して、その上に、図示しない電極用パッドを形成する。最後に、スライダの研磨加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドが完成する。図10は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。この図では、オーバーコート層17を省略している。なお、図10において、符号8Bは、トリム構造とするため下部磁極層の第2の部分8bがエッチングされている部分を表している。
【0050】
本実施の形態では、第1の部分8a、第2の部分8bおよび第3の部分8cよりなる下部磁極層が、本発明における第1の磁性層に対応し、磁性材料層13a〜13cおよび抵抗層21,22よりなる上部磁極層13が、本発明における第2の磁性層に対応する。また、下部シールド層3は、本発明における第1のシールド層に対応する。また、下部磁極層は、上部シールド層を兼ねているので、本発明における第2のシールド層にも対応する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドは、MR素子5と、記録媒体に対向する側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置され、MR素子5をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層(下部磁極層)とを有している。
【0052】
記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層12を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる下部磁極層および上部磁極層13と、この下部磁極層および上部磁極層13の間に、これらに対して絶縁された状態で配設された薄膜コイル10とを有している。下部磁極層と上部磁極層13は、それぞれ、薄膜コイル10に対向する領域を含む領域に配置されると共に磁極部分に連結されたヨーク部分を有している。
【0053】
本実施の形態では、下部磁極層は、薄膜コイル10に対向する領域を含む領域に配置された第1の部分8aと、この第1の部分8aにおける薄膜コイル10側の面に接続され、磁極部分を形成する第2の部分8bとを有し、薄膜コイル10は、下部磁極層の第2の部分8bの側方に配置されている。
【0054】
ここで、本実施の形態における上部磁極層13の特徴について説明する。図7ないし図9に示したように、上部磁極層13は、磁極部分13Aと、薄膜コイル10に対向する領域を含む領域に配置されると共に磁極部分13Aに連結されたヨーク部分13Bとを有している。図7に示したように、磁極部分13Aとヨーク部分13Bと連結部の位置は、スロートハイトゼロ位置またはその近傍の位置になっている。図8および図9に示したように、磁極部分13Aは、狭い一定の幅を有している。この磁極部分13Aの幅が記録ヘッドのトラック幅を規定する。ヨーク部分13Bは、磁極部分13Aとの連結部の近傍の部分23では、磁極部分13Aよりも大きい一定の幅を有し、その部分23よりもエアベアリング面とは反対側(図における右側)の部分では、エアベアリング面から遠ざかるにつれて幅が大きくなり、やがて一定の幅を有するような形状になっている。
【0055】
上部磁極層13は、積層された複数の磁性材料層13a〜13cと、隣接する2つの磁性材料層の間に配置された抵抗層21,22とによって構成されている。図8および図9に示したように、抵抗層21,22は、上部磁極層13のヨーク部分13Bのうち、磁極部分13Aとの連結部の近傍の部分23および他の磁性層すなわち下部磁極層との連結部の近傍の部分24を除いた一部の領域に配置されている。
【0056】
また、抵抗層21,22は、それぞれ、分割された複数の領域に配置されている。本実施の形態では、特に、抵抗層21,22は、それぞれ、ストライプ状に形成されている。また、本実施の形態では、図8と図9を比較すると分かるように、抵抗層21の各部分と抵抗層22の各部分は、ほぼ互い違いになるように配置されている。なお、抵抗層21の各部分と抵抗層22の各部分が、上から見て同じ位置に配置されていてもよい。
【0057】
なお、図6(a)および図7(a)は、図8および図9におけるA−A´線で切断した断面を表している。
【0058】
本実施の形態によれば、上部磁極層13を、積層された複数の磁性材料層13a〜13cと、隣接する2つの磁性材料層の間に配置された抵抗層21,22とで構成したので、上部磁極層13における渦電流損失を減少させることができる。
【0059】
ところで、上部磁極層13のヨーク部分13Bのうち、磁極部分13Aとの連結部の近傍の部分23および他の磁性層すなわち下部磁極層との連結部の近傍の部分24は、ヨーク部分13Bの他の部分に比べて、元々、磁束の通過領域が狭い。そのため、これらの部分23,24に抵抗層が存在すると、抵抗層によって磁束の通過が妨げられる。これに対し、本実施の形態では、抵抗層21,22は、上部磁極層13のヨーク部分13Bのうち、上記の部分23,24を除いた一部の領域に配置されているので、磁束の通過を妨げることなく、上部磁極層13における渦電流損失を減少させることができる。
【0060】
また、抵抗層が上部磁極層の全体にわたって形成されていると、磁束の通過領域が狭くなり、磁束の通過が妨げられる。これに対し、本実施の形態では、抵抗層21,22は、分割された複数の領域に配置されているので、抵抗層が上部磁極層の全体にわたって形成されている場合に比べて、磁束の通過領域が広くなり、磁束の通過を妨げることなく、上部磁極層13における渦電流損失を減少させることができる。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、上部磁極層13における渦電流損失を減少させることができることから、薄膜磁気ヘッドにおける高周波特性を改善でき、例えば非線形トランジションシフトを小さくすることが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、薄膜コイル10を、下部磁極層の第1の部分8aの上であって、第2の部分8bの側方に配置し、薄膜コイル10を覆う絶縁層11の上面を平坦化したので、上部磁極層13を平坦な面の上に形成することができる。従って、本実施の形態によれば、積層構造を有する上部磁極層13の形成が容易になる。また、本実施の形態によれば、上部磁極層13の磁極部分13Aを、例えばハーフミクロン寸法やクォータミクロン寸法にも微細に形成可能となり、記録ヘッドのトラック幅の縮小が可能となる。
【0063】
また、本実施の形態では、記録ヘッドのトラック幅を規定する上部磁極層13の磁極部分13Aがスロートハイトを規定するのではなく、下部磁極層の第2の部分8bがスロートハイトを規定する。従って、本実施の形態によれば、トラック幅が小さくなっても、スロートハイトを精度よく、均一に規定することが可能となる。
【0064】
更に、本実施の形態によれば、薄膜コイル10を、平坦な面の上に形成することができるので、薄膜コイル10を微細に形成することが可能になる。これにより、記録ヘッドの磁路長の縮小が可能になる。
【0065】
また、本実施の形態では、図10に示したように、上部磁極層13は、スロートハイトゼロ位置TH0またはその近傍の位置よりもエアベアリング面30とは反対側(図における右側)の部分では、例えば3μm以上の一定の幅を有し、スロートハイトゼロ位置TH0またはその近傍の位置よりもエアベアリング面30側の部分では、ハーフミクロン寸法やクォータミクロン寸法の一定の幅を有している。そのため、上部磁極層13を通過する磁束は、スロートハイトゼロ位置TH0またはその近傍の位置よりもエアベアリング面30とは反対側の部分では飽和せず、スロートハイトゼロ位置TH0またはその近傍の位置よりもエアベアリング面30側の部分で飽和する。これにより、非線形トランジションシフトやオーバーライト特性を向上させることができる。
【0066】
図11は、上部磁極層の抵抗層のパターンの他の例を示す平面図である。この例では、抵抗層21(図8)の代りに抵抗層31が設けられている。この抵抗層31は、ストライプ状ではなく、島状に分割された複数の領域に配置されている。また、この例では、抵抗層22(図9)の代りに、抵抗層31と同様のパターンの抵抗層を設けてもよいし、抵抗層31の各部分に対してほぼ互い違いになるように配置される複数の部分を有するパターンの抵抗層を設けてもよい。
【0067】
図12は、上部磁極層の抵抗層のパターンの更に他の例を示す平面図である。この例では、抵抗層21(図8)の代りに抵抗層32が設けられている。この抵抗層32は、分割された複数の領域に配置されておらず、ヨーク部分13Bのうち、磁極部分13Aとの連結部の近傍の部分23および他の磁性層すなわち下部磁極層との連結部の近傍の部分24を除くほぼ全域に配置されている。また、この例では、抵抗層22(図9)の代りに、抵抗層32と同様のパターンの抵抗層を設けてもよいし、抵抗層32とは異なるパターンの抵抗層を設けてもよい。
【0068】
図12に示した例では、抵抗層が分割された複数の領域に配置される場合の効果は得られないが、抵抗層が、ヨーク部分13Bのうち、磁極部分13Aとの連結部の近傍の部分23および他の磁性層すなわち下部磁極層との連結部の近傍の部分24を除いた一部の領域に配置されることによる効果が得られる。
【0069】
[第2の実施の形態]
次に、図13および図14を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法について説明する。なお、図13において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。図14は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。この図では、オーバーコート層は省略している。
【0070】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、2層の薄膜コイルを設けた例である。なお、本実施の形態では、符号10は、薄膜コイルの第1層部分を表す。本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、記録ギャップ層12を形成する工程までは、第1の実施の形態と同様である。本実施の形態では、次に、記録ギャップ層12の上に、上部磁極層の磁極部分を形成する磁極部分層41を1.0〜3.0μmの厚みに形成すると共に、下部磁極層の第3の部分8cの上に形成されたコンタクトホールの位置に、磁性層42を1.0〜3.0μmの厚みに形成する。磁性層42は、後述する上部磁極層のヨーク部分層と下部磁極層とを接続するための部分である。なお、磁性層42は、下部磁極層の第3の部分8cよりも大きくなっている。本実施の形態では、上部磁極層の磁極部分層41の長さは、下部磁極層の第2の部分8bの長さ以上に形成される。
【0071】
上部磁極層の磁極部分層41および磁性層42は、NiFe(Ni:80重量%,Fe:20重量%)や、高飽和磁束密度材料であるNiFe(Ni:45重量%,Fe:55重量%)の材料を用い、めっき法によって形成してもよいし、高飽和磁束密度材料であるFeN,FeZrN等の材料を用い、スパッタによって形成してもよい。この他にも、高飽和磁束密度材料であるCoFe,Co系アモルファス材等を用いてもよい。
【0072】
次に、上部磁極層の磁極部分層41をマスクとして、ドライエッチングにより、記録ギャップ層12を選択的にエッチングする。このときのドライエッチングには、例えば、BCl2,Cl2等の塩素系ガスや、CF4,SF6等のフッ素系ガス等のガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が用いられる。次に、例えばアルゴンイオンミリングによって、下部磁極層の第2の部分8bを選択的に約0.3〜0.6μm程度エッチングして、図13(b)に示したようなトリム構造とする。
【0073】
次に、記録ギャップ層12の上のコイル形成領域に、例えばアルミナよりなる絶縁膜14を、約0.3〜0.6μmの厚みに形成する。
【0074】
次に、フレームめっき法によって、例えば銅(Cu)よりなる薄膜コイルの第2層部分15を、例えば約1.0〜2.0μmの厚みに形成する。なお、図中、符号15aは、薄膜コイルの第1層部分10の接続部10aと接続される接続部を示している。
【0075】
次に、全体に、例えばアルミナよりなる絶縁層16を、約3〜4μmの厚みで形成する。次に、例えばCMPによって、上部磁極層の磁極部分層41および磁性層42が露出するまで、絶縁層16を研磨して、表面を平坦化処理する。
【0076】
次に、平坦化された上部磁極層の磁極部分層41および磁性層42と絶縁層16の上に、上部磁極層のヨーク部分を形成するヨーク部分層43を形成する。このヨーク部分層43は、積層された複数の磁性材料層43a〜43cと、隣接する2つの磁性材料層の間に配置された抵抗層21,22とによって構成されている。ヨーク部分層43の形成方法は、第1の実施の形態における上部磁極層13の形成方法と同様である。また、抵抗層21,22のパターンも第1の実施の形態と同様である。
【0077】
本実施の形態では、上部磁極層のヨーク部分層43の記録媒体に対向する側(エアベアリング面側)の端面は、薄膜磁気ヘッドの記録媒体に対向する面から離れた位置(図において右側)に配置されている。
【0078】
次に、全体に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層17を、20〜40μmの厚みに形成し、その表面を平坦化して、その上に、図示しない電極用パッドを形成する。最後に、スライダの研磨加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0079】
本実施の形態では、磁極部分層41、磁性層42およびヨーク部分層43よりなる上部磁極層が、本発明における第2の磁性層に対応する。
【0080】
本実施の形態によれば、上部磁極層の磁極部分層41を平坦な面の上に形成することができるので、磁極部分層41を、例えばハーフミクロン寸法やクォータミクロン寸法にも微細に形成可能となり、記録ヘッドのトラック幅の縮小が可能となる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、薄膜コイルの第2層部分15を、上部磁極層の磁極部分層41の側方に配置したので、上部磁極層のヨーク部分層43を、平坦な面の上に形成することができる。そのため、本実施の形態によれば、積層構造を有するヨーク部分層43の形成が容易になる。また、本実施の形態によれば、ヨーク部分層43を微細に形成可能となり、いわゆるサイドライトの発生を防止することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態では、上部磁極層のヨーク部分層43のエアベアリング面側の端面を、薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面から離れた位置に配置している。そのため、スロートハイトが小さい場合でも、上部磁極層のヨーク部分層43がエアベアリング面に露出することがなく、その結果、いわゆるサイドライトの発生を防止することができる。
【0083】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0084】
[第3の実施の形態]
次に、図15を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法について説明する。図15は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。この図では、オーバーコート層は省略している。
【0085】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、下部磁極層の第2の部分8bを、薄膜コイルの第1層部分10の周囲を囲うように形成したものである。下部磁極層の第2の部分8bをこのような形状とすることにより、絶縁層11の平坦化処理が容易になる。
【0086】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。なお、第1の実施の形態における下部磁極層の第2の部分8bを、本実施の形態のような形状に形成してもよい。
【0087】
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上記各実施の形態では、上部磁極層のヨーク部分のみを、複数の磁性材料層の間に抵抗層を配置した構造としたが、下部磁極層のヨーク部分も同様の構造としてもよい。
【0088】
また、上記各実施の形態では、下部磁極層によってスロートハイトを規定するようにしたが、上部磁極層によってスロートハイトを規定するようにしてもよい。
【0089】
また、上記各実施の形態では、基体側に読み取り用のMR素子を形成し、その上に、書き込み用の誘導型磁気変換素子を積層した構造の薄膜磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。
【0090】
つまり、基体側に書き込み用の誘導型磁気変換素子を形成し、その上に、読み取り用のMR素子を形成してもよい。このような構造は、例えば、上記実施の形態に示した上部磁極層の機能を有する磁性膜を下部磁極層として基体側に形成し、記録ギャップ膜を介して、それに対向するように上記実施の形態に示した下部磁極層の機能を有する磁性膜を上部磁極層として形成することにより実現できる。この場合、誘導型磁気変換素子の上部磁極層とMR素子の下部シールド層を兼用させることが好ましい。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法によれば、少なくとも一方の磁性層におけるヨーク部分を、複数の磁性材料層と抵抗層とを有するように形成すると共に、抵抗層が、記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有するようにしたので、磁束の通過を妨げることなく、誘導型磁気変換素子の磁路を形成する磁性層における渦電流損失を減少させて、高周波特性を改善することができるという効果を奏する。
【0092】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法において、抵抗層を、ヨーク部分のうち、磁極部分との連結部の近傍および他の磁性層との連結部の近傍を除いた一部の領域に配置した場合には、より一層、磁束の通過を妨げることがなくなるという効果を奏する。
【0093】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法において、第1の磁性層が、薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置された第1の部分と、この第1の部分における薄膜コイル側の面に接続され、磁極部分を形成する第2の部分とを有し、薄膜コイルの少なくとも一部が、第1の磁性層の第2の部分の側方に配置され、第2の磁性層のヨーク部分が、複数の磁性材料層と抵抗層とを有するようにした場合には、更に、積層構造を有する第2の磁性層のヨーク部分の形成が容易になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図2】 図1に続く工程を説明するための断面図である。
【図3】 図2に続く工程を説明するための断面図である。
【図4】 図3に続く工程を説明するための断面図である。
【図5】 図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】 図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】 図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】 本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける上部磁極層の第1の磁性材料層と第1の抵抗層とを示す平面図である。
【図9】 本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける上部磁極層の第2の磁性材料層と第2の抵抗層とを示す平面図である。
【図10】 本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図11】 本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける上部磁極層の抵抗層のパターンの他の例を示す平面図である。
【図12】 本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける上部磁極層の抵抗層のパターンの更に他の例を示す平面図である。
【図13】 本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの断面図である。
【図14】 本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図15】 本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図16】 従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図17】 図16に続く工程を説明するための断面図である。
【図18】 図17に続く工程を説明するための断面図である。
【図19】 図18に続く工程を説明するための断面図である。
【図20】 図19に続く工程を説明するための断面図である。
【図21】 図20に続く工程を説明するための断面図である。
【図22】 従来の薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…絶縁層、3…下部シールド層、5…MR素子、8a…下部磁極層の第1の部分、8b…下部磁極層の第2の部分、9…絶縁膜、10…薄膜コイル、11…絶縁層、12…記録ギャップ層、13…上部磁極層、13a〜13c…磁性材料層、21,22…抵抗層、17…オーバーコート層。
Claims (17)
- 磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に、この第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で配設された薄膜コイルとを有する誘導型磁気変換素子を備えた薄膜磁気ヘッドであって、
前記第1および第2の磁性層は、それぞれ、前記薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置されると共に前記磁極部分に連結されたヨーク部分を有し、
少なくとも一方の磁性層における前記ヨーク部分は、積層された複数の磁性材料層と、
隣接する2つの磁性材料層の間に配置され、前記磁性材料層よりも電気抵抗の大きい抵抗層とを有し、
前記抵抗層は、記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有することを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 前記抵抗層は、前記ヨーク部分のうち、前記磁極部分との連結部の近傍および他の磁性層との連結部の近傍を除いた一部の領域に配置されていることを特徴とする請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記抵抗層は、絶縁材料によって形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記絶縁材料は、無機材料よりなることを特徴とする請求項3記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記第1の磁性層は、前記薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置された第1の部分と、この第1の部分における前記薄膜コイル側の面に接続され、磁極部分を形成する第2の部分とを有し、
前記薄膜コイルの少なくとも一部は、前記第1の磁性層の第2の部分の側方に配置され、
前記第2の磁性層のヨーク部分は、前記複数の磁性材料層と前記抵抗層とを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。 - 更に、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が前記磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、前記磁気抵抗素子をシールドするための第1および第2のシールド層とを備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記第2のシールド層は、前記第1の磁性層を兼ねていることを特徴とする請求項6記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記少なくとも一方の磁性層における前記ヨーク部分は、前記磁性材料層を介して隣接する2つの前記抵抗層を含み、前記2つの抵抗層は、それぞれ記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有し、一方の抵抗層の複数の部分と他方の抵抗層の複数の部分とは、ほぼ互い違いに配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
- 磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に、この第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で配設された薄膜コイルとを有する誘導型磁気変換素子を備え、
前記第1および第2の磁性層は、それぞれ、前記薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置されると共に前記磁極部分に連結されたヨーク部分を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記第1の磁性層を形成する工程と、
前記第1の磁性層の上に前記ギャップ層を形成する工程と、
前記ギャップ層の上に前記第2の磁性層を形成する工程と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の間に配置されるように前記薄膜コイルを形成する工程とを含み、
前記第1の磁性層を形成する工程と前記第2の磁性層を形成する工程の少なくとも一方は、積層された複数の磁性材料層と、隣接する2つの磁性材料層の間に配置され、前記磁性材料層よりも電気抵抗の大きい抵抗層とを有するヨーク部分を形成し、
前記抵抗層は、記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有する
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記第1の磁性層を形成する工程と前記第2の磁性層を形成する工程の少なくとも一方は、前記抵抗層を、前記ヨーク部分のうち、前記磁極部分との連結部の近傍および他の磁性層との連結部の近傍を除いた一部の領域に配置することを特徴とする請求項9記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記抵抗層は、絶縁材料によって形成されることを特徴とする請求項9または10記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記絶縁材料は、無機材料よりなることを特徴とする請求項11記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記抵抗層は、前記無機材料よりなる層を反応性イオンエッチングによって選択的にエッチングすることによって所定のパターンに形成されることを特徴とする請求項12記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記第1の磁性層を形成する工程は、前記薄膜コイルに対向する領域を含む領域に配置された第1の部分と、この第1の部分における前記薄膜コイル側の面に接続され、磁極部分を形成する第2の部分とを有する第1の磁性層を形成し、
前記薄膜コイルを形成する工程は、前記薄膜コイルの少なくとも一部を、前記第1の磁性層の第2の部分の側方に配置されるように形成し、
前記第2の磁性層を形成する工程は、前記第2の磁性層のヨーク部分を、前記複数の磁性材料層と前記抵抗層とを有するように形成する
ことを特徴とする請求項9ないし13のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 更に、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が前記磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、前記磁気抵抗素子をシールドするための第1および第2のシールド層とを形成する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし14のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記第2のシールド層は、前記第1の磁性層を兼ねていることを特徴とする請求項15記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記少なくとも一方の磁性層における前記ヨーク部分は、前記磁性材料層を介して隣接する2つの前記抵抗層を含み、前記2つの抵抗層は、それぞれ記録媒体に対向する面に平行な方向および垂直な方向に分離された複数の領域に配置された複数の部分を有し、一方の抵抗層の複数の部分と他方の抵抗層の複数の部分とは、ほぼ互い違いに配置されることを特徴とする請求項9ないし16のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
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