JP4010702B2 - 薄膜磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも読み出し用の磁気抵抗素子を有する薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録ヘッドと読み出し用の磁気抵抗(以下、MR(Magneto-resistive)とも記す。)素子を有する再生ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。MR素子としては、異方性磁気抵抗(以下、AMR(Anisotropic Magneto-resistive)と記す。)効果を用いたAMR素子と、巨大磁気抵抗(以下、GMR(Giant Magneto-resistive )と記す。)効果を用いたGMR素子とがあり、AMR素子を用いた再生ヘッドはAMRヘッドあるいは単にMRヘッドと呼ばれ、GMR素子を用いた再生ヘッドはGMRヘッドと呼ばれる。AMRヘッドは、面記録密度が1ギガビット/(インチ)2 を超える再生ヘッドとして利用され、GMRヘッドは、面記録密度が3ギガビット/(インチ)2 を超える再生ヘッドとして利用されている。
【0003】
再生ヘッドの性能を向上させる方法としては、MR膜をAMR膜からGMR膜等の磁気抵抗感度の優れた材料あるいは構造に変える方法や、MR膜のMRハイトを最適化する方法等がある。このMRハイトとは、MR素子のエアベアリング面側の端部から反対側の端部までの長さ(高さ)をいい、エアベアリング面の加工の際の研磨量によって制御されるものである。なお、ここにいうエアベアリング面は、薄膜磁気ヘッドの、磁気記録媒体と対向する面であり、トラック面とも呼ばれる。
【0004】
ここで、図14ないし図20を参照して、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例として、複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例について説明する。なお、図14ないし図20において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。
【0005】
この製造方法では、まず、図14に示したように、例えばアルティック(Al2 O3 ・TiC)よりなる基板101上に、例えばアルミナ(Al2 O3 )よりなる絶縁層102を、約5〜10μm程度の厚みで堆積する。次に、絶縁層102上に、磁性材料よりなる再生ヘッド用の下部シールド層103を、2〜3μmの厚みに形成する。
【0006】
次に、図15に示したように、下部シールド層103上に、例えばアルミナまたはチッ化アルミニウムを50〜100nmの厚みにスパッタ堆積し、絶縁層としての下部シールドギャップ膜104を形成する。次に、下部シールドギャップ膜104上に、再生用のMR素子105を形成するためのMR膜を、数十nmの厚みに形成する。次に、このMR膜上に、MR素子105を形成すべき位置に選択的にフォトレジストパターン106を形成する。このとき、リフトオフを容易に行うことができるような形状、例えば断面形状がT型のフォトレジストパターン106を形成する。次に、フォトレジストパターン106をマスクとして、例えばイオンミリングによってMR膜をエッチングして、MR素子105を形成する。なお、MR素子105は、GMR素子でもよいし、AMR素子でもよい。
【0007】
次に、図16に示したように、下部シールドギャップ膜104上に、フォトレジストパターン106をマスクとして、MR素子105に電気的に接続される一対の第1の電極層107を、数十nmの厚みに形成する。第1の電極層107は、例えば、TiW,CoPt,TiW,Taを積層して形成される。
【0008】
次に、図17に示したように、フォトレジストパターン106をリフトオフする。次に、図17では図示しないが、第1の電極層107に電気的に接続される一対の第2の電極層を、50〜100nmの厚みで、所定のパターンに形成する。第2の電極層は、例えば、銅(Cu)によって形成される。第1の電極層107および第2の電極層は、MR素子105に電気的に接続される電極(リードとも言う。)を構成する。
【0009】
次に、図18に示したように、下部シールドギャップ膜104およびMR素子105上に、絶縁層としての上部シールドギャップ膜108を、50〜150nmの厚みに形成し、MR素子105をシールドギャップ膜104,108内に埋設する。次に、上部シールドギャップ膜108上に、磁性材料からなり、再生ヘッドと記録ヘッドの双方に用いられる上部シールド層兼下部磁極層(以下、上部シールド層と記す。)109を、約3μmの厚みに形成する。
【0010】
次に、図19に示したように、上部シールド層109上に、絶縁膜、例えばアルミナ膜よりなる記録ギャップ層110を、0.2〜0.3μmの厚みに形成し、この記録ギャップ層110上に、スロートハイトを決定するフォトレジスト層111を、約1.0〜2.0μmの厚みで、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層111上に、誘導型の記録ヘッド用の第1層目の薄膜コイル112を、3μmの厚みに形成する。次に、フォトレジスト層111およびコイル112上に、フォトレジスト層113を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層113上に、第2層目の薄膜コイル114を、3μmの厚みに形成する。次に、フォトレジスト層113およびコイル114上に、フォトレジスト層115を、所定のパターンに形成する。
【0011】
次に、図20に示したように、コイル112,114よりも後方(図20(a)における右側)の位置において、磁路形成のために、記録ギャップ層110を部分的にエッチングする。次に、記録ギャップ層110、フォトレジスト層111,113,115上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えば高飽和磁束密度材のパーマロイ(NiFe)またはFeNよりなる上部磁極層116を、約3μmの厚みに形成する。この上部磁極層116は、図におけるコイル112,114よりも後方の位置において、上部シールド層(下部磁極層)109と接触し、磁気的に連結している。
【0012】
次に、上部磁極層116をマスクとして、イオンミリングによって、記録ギャップ層110と上部シールド層(下部磁極層)109をエッチングする。次に、上部磁極層116上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層117を、20〜30μmの厚みに形成する。最後に、スライダの機械加工(研磨)を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。図20に示したように、上部磁極層116、記録ギャップ層110および上部シールド層(下部磁極層)109の一部の各側壁が垂直に自己整合的に形成された構造は、トリム(Trim)構造と呼ばれる。このトリム構造によれば、狭トラックの書き込み時に発生する磁束の広がりによる実効トラック幅の増加を防止することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
薄膜磁気ヘッドでは、高記録密度化のために狭トラック化が要求されることから、MR素子を微細に形成することが要求されている。
【0014】
ところで、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、図15ないし図17にも示したように、例えば、MR素子に接続される電極層をリフトオフ法によって形成するために、MR膜の上に断面形状がT型のフォトレジストパターンを形成し、このフォトレジストパターンをマスクとして、例えばイオンミリングによってMR膜をエッチングして、MR素子を形成していた。
【0015】
MR膜をエッチングする際には、MR膜の下には50〜100nm程度の極薄い下部シールドギャップ膜が存在するため、下部シールドギャップ膜の絶縁性を損なうことなく、MR素子を所定のパターンに形成する必要がある。そのため、過度のオーバーエッチはできない。その結果、例えば特開平8−221719号公報に示されるように、MR素子の端部には、なだらかな斜面を有するテーパー部が形成される。従来の薄膜磁気ヘッドでは、このようにMR素子の端部にテーパー部が形成されるために、以下のような問題点があった。
【0016】
従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、複数のスライダを含む素材を研磨して、各スライダのエアベアリング面を形成する。その際、例えば、各スライダに含まれるMR素子の抵抗値をモニタリングし、複数のMR素子の抵抗値が所定の値になるように研磨の制御を行うようにしている。これにより、平坦度に優れたエアベアリング面を形成することが可能となる。
【0017】
しかしながら、MR素子のエアベアリング面とは反対側の端部にテーパー部が形成されていると、MRハイトが不均一になると共に、MR素子の抵抗値とMRハイトとの関係が安定しない。そのため、従来は、スライダの研磨の精度が低下し、薄膜磁気ヘッドの歩留りが低下するという問題点があった。
【0018】
また、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、断面形状がT型のフォトレジストパターンをマスクとしてMR膜をエッチングしてMR素子を形成する。この方法では、T型のフォトレジストパターンの根元部分を、形成しようとするMR素子のパターンよりも微細に形成する必要がある。そのため、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、MR素子の微細化が難しいという問題点があった。
【0019】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置が正確に決定され、MRハイトが均一になるようにした薄膜磁気ヘッドおよび磁気抵抗素子を微細に且つ正確に形成することができるようにした薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、磁気抵抗素子と、この磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、磁気抵抗素子をシールドするための2つのシールド層と、磁気抵抗素子と各シールド層との間に設けられた絶縁層と、磁気抵抗素子に接続された電極層と、磁気抵抗素子の一方の面と一方のシールド層との間に配置され、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するための基準として用いられる位置基準層とを備えたものである。
【0021】
本発明の薄膜磁気ヘッドでは、磁気抵抗素子の一方の面と一方のシールド層との間に配置された位置基準層によって、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置が決定される。これにより、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置が正確に決定され、MRハイトが均一になる。
【0022】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、位置基準層は、例えば、エッチングによって磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するためのエッチング用マスクとして用いられる。
【0023】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、例えば、磁気抵抗素子と一方のシールド層との間に配置された絶縁層は、磁気抵抗素子の一方の面と位置基準層の一方の面との間に配置された第1の部分と、位置基準層の他方の面と一方のシールド層との間に配置された第2の部分とを含む。この場合、位置基準層は、例えば磁性材料によって形成される。
【0024】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、更に、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる2つの磁性層と、この2つの磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有する書き込み用の誘導型磁気変換素子を備えていてもよい。この場合、一方のシールド層は、2つの磁性層のうちの一方の磁性層を兼ねていてもよい。
【0025】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁気抵抗素子と、この磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、磁気抵抗素子をシールドするための第1および第2のシールド層と、磁気抵抗素子と第1および第2のシールド層との間に設けられた第1および第2の絶縁層と、磁気抵抗素子に接続された電極層とを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
第1のシールド層を形成する工程と、
第1のシールド層の上に、第1の絶縁層を形成する工程と、
第1の絶縁層の上に、磁気抵抗素子を形成するための材料よりなる磁気抵抗膜を形成する工程と、
磁気抵抗膜の上に、エッチングによって磁気抵抗素子の概略の形状を決定すると共に電極層をリフトオフ法によって形成するためのリフトオフ用マスクを形成する工程と、
リフトオフ用マスクを用いて磁気抵抗膜をエッチングして、概略の形状が決定された磁気抵抗素子を形成する工程と、
リフトオフ用マスクを用いて、リフトオフ法により、電極層を形成する工程と、
概略の形状が決定された磁気抵抗素子の上に、エッチングによって磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するためのマスクとして用いられるエッチング用マスク層を形成する工程と、
エッチング用マスク層を用いて、概略の形状が決定された磁気抵抗素子をエッチングして、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定する工程と、
磁気抵抗素子および第1の絶縁層の上に、第2の絶縁層を形成する工程と、
第2の絶縁層の上に、第2のシールド層を形成する工程と
を含むものである。
【0026】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、磁気抵抗膜の上に形成されたリフトオフ用マスクによって、磁気抵抗素子の概略の形状が決定されると共に電極層が形成される。そして、概略の形状が決定された磁気抵抗素子の上に形成されたエッチング用マスク層によって、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置が決定される。これにより、磁気抵抗素子を微細に且つ正確に形成することが可能となる。
【0027】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、例えば、第2の絶縁層を形成する工程は、電極層を形成する工程の後に、概略の形状が決定された磁気抵抗素子の上に第2の絶縁層の第1の部分を形成する工程と、磁気抵抗素子の端部の位置を決定する工程の後に、エッチング用マスク層の上に第2の絶縁層の第2の部分を形成する工程とを含む。この場合、エッチング用マスク層は、例えば磁性材料によって形成される。
【0028】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、更に、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる2つの磁性層と、この2つの磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有する書き込み用の誘導型磁気変換素子を形成する工程を含んでいてもよい。この場合、第2のシールド層は、誘導型磁気変換素子における2つの磁性層のうちの一方の磁性層を兼ねていてもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、図1ないし図13を参照して、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法について説明する。なお、図1ないし図9において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。
【0030】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、図1に示したように、例えばアルティック(Al2 O3 ・TiC)よりなる基板1上に、例えばアルミナ(Al2 O3 )よりなる絶縁層2を、約5〜10μm程度の厚みで堆積する。次に、絶縁層2上に、磁性材料よりなる再生ヘッド用の下部シールド層3を、2〜3μmの厚みに形成する。
【0031】
次に、図2に示したように、下部シールド層3上に、例えばアルミナまたはチッ化アルミニウムを約50〜100nmの厚みにスパッタ堆積し、絶縁層としての下部シールドギャップ膜4を形成する。次に、下部シールドギャップ膜4上に、再生用のMR素子5を形成するための材料よりなるMR膜を、数十nmの厚みに形成する。次に、このMR膜上に、MR素子5を形成すべき位置に選択的にフォトレジストパターンを形成することによって、リフトオフ用マスク6を形成する。このリフトオフ用マスク6は、エッチングによってMR素子5の概略の形状を決定すると共に後述する電極層をリフトオフ法によって形成するためのものである。リフトオフ用マスク6の形状は、リフトオフを容易に行うことができるような形状、例えば断面形状がT型の形状とする。
【0032】
次に、リフトオフ用マスク6を用いて、例えばイオンミリングによってMR膜をエッチングして、概略の形状が決定されたMR素子5を形成する。図12は、図2におけるMR素子5の近傍を拡大して示したものである。この図に示したように、この時点におけるMR素子5の記録媒体に対向する側(エアベアリング面側)とは反対側(図において右側)の端部25には、なだらかな斜面を有するテーパー部25aが形成されている。なお、MR素子5には、AMR素子、GMR素子、あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。
【0033】
次に、図3に示したように、下部シールドギャップ膜4上に、リフトオフ用マスク6を用いて、MR素子5に電気的に接続される一対の第1の電極層7を、数十nmの厚みに形成する。第1の電極層7は、例えば、TiW,CoPt,TiW,Taを積層して形成される。
【0034】
次に、図4に示したように、リフトオフ用マスク6をリフトオフする。次に、図4では図示しないが、第1の電極層7に電気的に接続される一対の第2の電極層を、50〜100nmの厚みで、所定のパターンに形成する。第2の電極層は、例えば、銅(Cu)によって形成される。第1の電極層7および第2の電極層は、MR素子5に電気的に接続される電極(リードとも言う。)を構成する。図4に示した状態に対応する平面図を図10に示す。この図10では、第2の電極層18を示している。
【0035】
次に、図5に示したように、下部シールドギャップ膜4およびMR素子5上に、例えばスパッタにより、例えばアルミナまたはチッ化アルミニウムからなる絶縁層としての第1の上部シールドギャップ膜21を、約50〜150nmの厚みに形成し、MR素子5をシールドギャップ膜4,21内に埋設する。
【0036】
次に、第1の上部シールドギャップ膜21のうち、MR素子5および第1の電極層7の上に位置する部分の上に、エッチングによってMR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側(図において右側)の端部25の位置を決定するためのマスクとして用いられるエッチング用マスク層22を、約0.3〜0.6μmの厚みに形成する。このエッチング用マスク層22は、MR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するための基準として用いられ、本発明における位置基準層に対応する。エッチング用マスク層22は、例えば後述する上部シールド層と同様の磁性材料によって形成する。エッチング用マスク層22の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置は、MR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の所望の位置とする。また、エッチング用マスク層22は、例えば、めっき法によって形成してもよいし、スパッタによって形成した膜を選択的にエッチングすることによって形成してもよい。
【0037】
次に、図6に示したように、エッチング用マスク層22を用いて、例えばイオンミリングによって、第1の上部シールドギャップ膜21とMR素子5とをエッチングする。図13は、図6におけるMR素子5の近傍を拡大して示したものである。この図に示したように、上記エッチングにより、MR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側(図における右側)の端部25では、テーパー部が除去され、下部シールドギャップ膜4の面に対してほぼ垂直な端面が形成される。また、MR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置が正確に決定される。
【0038】
次に、エッチング用マスク層22および露出した下部シールドギャップ膜4の上に、例えばスパッタにより、例えばアルミナまたはチッ化アルミニウムからなる絶縁層としての第2の上部シールドギャップ膜23を、約50〜150nmの厚みに形成する。これにより、MR素子5、第1の上部シールドギャップ膜21およびエッチング用マスク層22が、下部シールドギャップ膜4と第2の上部シールドギャップ膜23の間に埋設される。
【0039】
次に、図7に示したように、第2の上部シールドギャップ膜23上に、磁性材料からなり、再生ヘッドと記録ヘッドの双方に用いられる上部シールド層兼下部磁極層(以下、上部シールド層と記す。)9を、約3μmの厚みに形成する。これにより、MR素子5の上に、第1の上部シールドギャップ膜21、エッチング用マスク層22、第2の上部シールドギャップ膜23および上部シールド層9が順に積層された構造が得られる。
【0040】
次に、図8に示したように、上部シールド層9上に、絶縁膜、例えばアルミナ膜よりなる記録ギャップ層10を、0.2〜0.3μmの厚みに形成し、この記録ギャップ層10上に、スロートハイトを決定するフォトレジスト層11を、約1.0〜2.0μmの厚みで、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層11上に、誘導型の記録ヘッド用の第1層目の薄膜コイル12を、3μmの厚みに形成する。次に、フォトレジスト層11およびコイル12上に、フォトレジスト層13を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層13上に、第2層目の薄膜コイル14を、3μmの厚みに形成する。次に、フォトレジスト層13およびコイル14上に、フォトレジスト層15を、所定のパターンに形成する。
【0041】
次に、図9に示したように、コイル12,14よりも後方(図9(a)における右側)の位置において、磁路形成のために、記録ギャップ層10を部分的にエッチングする。次に、記録ギャップ層10、フォトレジスト層11,13,15上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えば高飽和磁束密度材のパーマロイ(NiFe)またはFeNよりなる上部磁極層16を、約3μmの厚みに形成する。この上部磁極層16は、図におけるコイル12,14よりも後方の位置において、上部シールド層(下部磁極層)9と接触し、磁気的に連結している。
【0042】
次に、上部磁極層16をマスクとして、イオンミリングによって、記録ギャップ層10と上部シールド層(下部磁極層)9をエッチングする。図9(b)に示したように、上部磁極層16、記録ギャップ層10および上部シールド層(下部磁極層)9の一部の各側壁が垂直に自己整合的に形成された構造は、トリム(Trim)構造と呼ばれる。このトリム構造によれば、狭トラックの書き込み時に発生する磁束の広がりによる実効トラック幅の増加を防止することができる。
【0043】
次に、上部磁極層16上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層17を、20〜30μmの厚みに形成する。最後に、スライダの機械加工(研磨)を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0044】
ここで、下部シールド層3は、本発明における第1のシールド層に対応し、上部シールド層(下部磁極層)9は、本発明における第2のシールド層に対応する。また、下部シールドギャップ膜4は、本発明における第1の絶縁層に対応し、第1の上部シールドギャップ膜21は、本発明における第2の絶縁層の第1の部分に対応し、第2の上部シールドギャップ膜23は、本発明における第2の絶縁層の第2の部分に対応する。また、上部シールド層(下部磁極層)9、記録ギャップ層10、上部磁極層16および薄膜コイル12,14は、本発明における誘導型磁気変換素子に対応する。
【0045】
図11は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。なお、図11では、オーバーコート層17を省略している。なお、図1ないし図9における(a)は、図11におけるA−A´線断面を表し、(b)は、図11におけるB−B´線断面を表している。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドは、MR素子5と、記録媒体に対向する側の一部が、絶縁層を介してMR素子5を挟んで対向するように配置され、MR素子5をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層(下部磁極層)9と、MR素子5に接続された電極層7,18とを有している。記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層10を介して互いに対向する磁極部分を含む下部磁極層(上部シールド層9)および上部磁極層16と、この下部磁極層(上部シールド層9)および上部磁極層16の間に、これらに対して絶縁された状態で配設された薄膜コイル12,14とを有している。
【0047】
本実施の形態における再生ヘッドは、更に、MR素子5の一方の面(図における上側)と上部シールド層9との間に配置され、エッチングによってMR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するためのマスクとして用いられるエッチング用マスク層22を有している。MR素子5の一方の面とエッチング用マスク層22の一方の面との間には、第1の上部シールドギャップ膜21が設けられ、エッチング用マスク層22の他方の面と上部シールド層9との間には、第2の上部シールドギャップ膜23が設けられている。
【0048】
本実施の形態では、MR膜の上に形成されたリフトオフ用マスク6を用いて、MR素子5の概略の形状が決定されると共に第1の電極層7が形成される。そして、概略の形状が決定されたMR素子5の上に、第1の上部シールドギャップ膜21を介して形成されたエッチング用マスク層22によって、MR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置が正確に決定される。従って、本実施の形態によれば、MRハイトが均一になり、薄膜磁気ヘッドの歩留りが向上する。
【0049】
また、本実施の形態によれば、断面形状がT型のリフトオフ用マスク6ではなく、概略の形状が決定されたMR素子5の上に薄い第1の上部シールドギャップ膜21を介して形成されたエッチング用マスク層22によって、MR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するようにしたので、MR素子5を微細に形成することができる。
【0050】
以上のことから、本実施の形態によれば、MR素子5を微細に且つ正確に形成することが可能となると共に、薄膜磁気ヘッドの歩留りを向上させることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、MR素子5と記録ヘッドのコイル12,14との間に、MR素子5側から順に、第1の上部シールドギャップ膜21、エッチング用マスク層22、第2の上部シールドギャップ膜23および上部シールド層9が設けられる。ここで、エッチング用マスク層22は、磁性材料によって形成されている。従って、このエッチング用マスク層22は、シールド機能を有する。そのため、本実施の形態では、MR素子5と記録ヘッドのコイル12,14との間に、独立した2層のシールド層が存在する構造が得られる。この構造により、本実施の形態によれば、MR素子5と記録ヘッドのコイル12,14との間において、MR素子5に対するシールド機能が向上し、例えば、MR素子5に対する、記録ヘッドにおけるコイル12,14から発生する磁気の影響を低減することができる。従って、本実施の形態によれは、再生ヘッドの性能を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されない。例えば、上記実施の形態では、エッチング用マスク層22を磁性材料によって形成して、エッチング用マスク層22に、MR素子5の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定する機能の他に、シールド層の機能を持たせている。しかし、エッチング用マスク層22にシールド層の機能を持たせなければ、エッチング用マスク層22を、磁性材料以外の材料、例えば金属や絶縁材料によって形成してもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、基体側に読み取り用のMR素子を形成し、その上に、書き込み用の誘導型磁気変換素子を積層した構造の薄膜磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。
【0054】
つまり、基体側に書き込み用の誘導型磁気変換素子を形成し、その上に、読み取り用のMR素子を形成してもよい。このような構造は、例えば、上記実施の形態に示した上部磁極層の機能を有する磁性膜を下部磁極層として基体側に形成し、記録ギャップ膜を介して、それに対向するように上記実施の形態に示した下部磁極層の機能を有する磁性膜を上部磁極層として形成することにより実現できる。この場合、誘導型磁気変換素子の上部磁極層とMR素子の下部シールド層を兼用させることが好ましい。
【0055】
なお、このような構造の薄膜磁気ヘッドでは、凹部を形成した基体を用いることが好ましい。そして、基体の凹部に、コイル部を形成することによって、薄膜磁気ヘッド自体の大きさを更に縮小化することができる。
【0056】
更に、異なる形態としては、誘導型磁気変換素子のコイル部を構成する各薄膜コイル間に形成される絶縁層を、全て無機絶縁層としてもよい。
【0057】
また、読み取り専用として用いる場合には、薄膜磁気ヘッドを、読み取り用の磁気抵抗素子だけを備えた構成としてもよい。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし4のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、磁気抵抗素子と一方のシールド層との間に配置されるエッチング用マスク層によって、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するようにしたので、磁気抵抗素子を微細に且つ正確に形成することが可能になるという効果を奏する。
【0061】
また、請求項2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、磁気抵抗素子とエッチング用マスク層との間、およびエッチング用マスク層と一方のシールド層との間に、それぞれ絶縁層の第1の部分と第2の部分を設けると共に、エッチング用マスク層を磁性材料によって形成するようにしたので、更に、磁気抵抗素子に対するシールド機能を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図2】図1に続く工程を説明するための断面図である。
【図3】図2に続く工程を説明するための断面図である。
【図4】図3に続く工程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】図7に続く工程を説明するための断面図である。
【図9】図8に続く工程を説明するための断面図である。
【図10】図4に対応して本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための平面図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図12】図2におけるMR素子の近傍を拡大して示す断面図である。
【図13】図6におけるMR素子の近傍を拡大して示す断面図である。
【図14】従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図15】図14に続く工程を説明するための断面図である。
【図16】図15に続く工程を説明するための断面図である。
【図17】図16に続く工程を説明するための断面図である。
【図18】図17に続く工程を説明するための断面図である。
【図19】図18に続く工程を説明するための断面図である。
【図20】図19に続く工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…絶縁層、3…下部シールド層、4…下部シールドギャップ膜、5…MR素子、6…リフトオフ用マスク、7…第1の電極層、9…上部シールド層、10…記録ギャップ層、12,14…薄膜コイル、16…上部磁極層、17…オーバーコート層、18…第2の電極層、21…第1の上部シールドギャップ膜、22…エッチング用マスク層、23…第2の上部シールドギャップ膜。
Claims (4)
- 磁気抵抗素子と、この磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、前記磁気抵抗素子をシールドするための第1および第2のシールド層と、前記磁気抵抗素子と前記第1および第2のシールド層との間に設けられた第1および第2の絶縁層と、前記磁気抵抗素子に接続された電極層とを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
第1のシールド層を形成する工程と、
前記第1のシールド層の上に、第1の絶縁層を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の上に、磁気抵抗素子を形成するための材料よりなる磁気抵抗膜を形成する工程と、
前記磁気抵抗膜の上に、エッチングによって磁気抵抗素子の概略の形状を決定すると共に電極層をリフトオフ法によって形成するためのリフトオフ用マスクを形成する工程と、
前記リフトオフ用マスクを用いて前記磁気抵抗膜をエッチングして、概略の形状が決定された磁気抵抗素子を形成する工程と、
前記リフトオフ用マスクを用いて、リフトオフ法により、電極層を形成する工程と、
概略の形状が決定された磁気抵抗素子の上に、エッチングによって磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定するためのマスクとして用いられるエッチング用マスク層を形成する工程と、
前記エッチング用マスク層を用いて、概略の形状が決定された磁気抵抗素子をエッチングして、磁気抵抗素子の記録媒体に対向する側とは反対側の端部の位置を決定する工程と、
前記磁気抵抗素子および第1の絶縁層の上に、第2の絶縁層を形成する工程と、
前記第2の絶縁層の上に、第2のシールド層を形成する工程とを含み、
前記第2の絶縁層を形成する工程は、前記電極層を形成する工程の後に、前記概略の形状が決定された磁気抵抗素子の上に第2の絶縁層の第1の部分を形成する工程と、前記磁気抵抗素子の端部の位置を決定する工程の後に、前記エッチング用マスク層の上に第2の絶縁層の第2の部分を形成する工程とを含むことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記エッチング用マスク層は、磁性材料によって形成されることを特徴とする請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 更に、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部が記録ギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる2つの磁性層と、この2つの磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有する書き込み用の誘導型磁気変換素子を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記第2のシールド層は、前記誘導型磁気変換素子における前記2つの磁性層のうちの一方の磁性層を兼ねていることを特徴とする請求項3記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
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