JP3805836B2 - アニオン型艶消し電着塗料 - Google Patents

アニオン型艶消し電着塗料 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、仕上り外観、各種性能に優れた塗膜が形成できるアニオン型艶消し電着塗料に係わる。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来、陽極酸化処理したアルミニウム材は軽量で強度が強いこと、及び耐蝕性などが優れることからサッシなどの建材関係に多く使用されている。また、落ち着いた雰囲気をかもしだす艶消し電着塗膜も多く塗装されるようになってきている。
【0003】
艶消し塗膜を形成する電着塗料として、特開昭62−24519号公報、特開平2−255871号公報等に記載されているものが公知である。しかしながら、このような塗料では貯蔵安定性が十分でないこと、艶消し塗膜外観が十分でないこと、耐モルタル性、耐酸性、耐アルカリ性及び加工性等の塗膜性能が十分でないこと等の問題点が残されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記した問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、基体樹脂として、特にラクトン類化合物で変性されたエステル結合を有する水分散性ビニル系共重合体を使用することにより、上記した問題点のない塗料が提供できることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、水酸基含有ラクトン変性ビニル系モノマー、該水酸基含有ラクトン変性ビニル系モノマー以外の水酸基含有ビニル系モノマー、アルコキシシラン基含有ビニル系モノマー、カルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその他の不飽和モノマーを必須モノマー成分とする酸価15〜150及び水酸基価30〜200の水分散性ビニル系共重合体(A)及びメラミン樹脂架橋剤(B)を熱硬化性樹脂成分として含有することを特徴とするアニオン型艶消し電着塗料に係わる。
【0006】
本発明塗料で使用する共重合体(A)は、酸価約15〜150、水酸基価約30〜200の水分散性ビニル系共重合体である。また、このものの重量平均分子量は約1万〜20万の範囲が好ましい。酸価が約15未満になると水分散性が低下するので塗料の貯蔵安定性が悪くなる、一方、約150を越えると塗膜の耐モルタル性等の性能が劣るので好ましくない。また、水酸基価が約30未満になると硬化性が低下し、一方、約200を越えると反応しない水酸基が塗膜中に多く残るので塗膜の耐久性が悪くなるので好ましくない。重量平均分子量が約1万を下回ると塗料の貯蔵安定性や耐候性、耐モルタル性等の塗膜性能が悪くなり、一方、約20万を上回ると塗膜の平滑性等が悪くなるので好ましくない。
【0007】
水分散性ビニル系共重合体(A)は、(1)水酸基含有ラクトン変性ビニル系モノマー、(2)アルコキシシラン基含有ビニル系モノマー、(3)カルボキシル基含有ビニル系モノマー、(4)該水酸基含有ラクトン変性ビニル系モノマー以外の水酸基含有ビニル系モノマー及び(5)その他の不飽和モノマーをラジカル共重合反応させてなる共重合体等を使用することができる。
【0008】
これらのモノマ−成分としては、下記のものを挙げることができる。
(1)水酸基含有ラクトン変性ビニル系モノマ−類:例えば、下記した水酸基含有ビニル系モノマ−類とβ−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン等のラクトン類化合物との反応物等、商品名としては、プラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA−1(同左)、プラクセルFA2(同左)、プラクセルFA3(同左)等
(2)カルボキシル基含有ビニル系モノマ−類:例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等
(3)アルコキシシラン基含有ビニル系モノマ−類:例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等
(4)上記(1)以外の水酸基含有ビニル系モノマー:例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、(ポリ)エチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、(ポリ)プロピレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシブチルビニルエ−テル、(メタ)アリルアルコ−ル等
(5)その他の不飽和モノマ−類:例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のC1〜18のアルキル又はシクロアルキルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマ−類、(メタ)アクリル酸アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体類、(メタ)アクリロニトリル化合物類等
【0009】
これらのモノマ−の配合割合において、上記(1)及び(4)に記載の水酸基含有ビニル系モノマ−類は、共重合体(A)の水酸基価が約30〜200の範囲に入るように配合すればよいが、上記(1)〜(5)に記載のモノマ−類の総モノマ−量換算で上記(1)及び(4)に記載のモノマ−類の合計量が約3〜40重量%、好ましくは約5〜30重量%の範囲であり、また、(1)に記載のモノマ−類は(1)及び(4)に記載のモノマ−類の総モノマ−量に対して、約1〜90重量%の範囲で配合することが望ましい。
(1)に記載のモノマ−の配合割合が約1重量%を下回ると塗料の貯蔵安定性、艶消し塗膜外観及び耐モルタル性等の塗膜の外観及び性能など劣る。
【0010】
また、上記(2)に記載のカルボキシル基含有モノマ−は、共重合体(A)の酸価が約15〜150の範囲に入るように配合すればよいが、約2〜23重量%、好ましくは約4〜10重量%の範囲である。
【0011】
上記(3)に記載したモノマ−の配合量は上記(1)〜(4)に記載のモノマ−類の総モノマ−量に対して約0.2〜10重量%、好ましくは約0.5〜5重量%の範囲である。
【0012】
その他の不飽和モノマ−類(5)としては、(メタ)アクリル酸のC1 〜C18 のアルキル又はシクロアルキルエステル類及びスチレンなどの芳香族ビニルモノマ−類を使用することが好ましい。
【0013】
上記(1)〜(5)に記載のモノマ−類をラジカル共重合反応させる方法としては、従来から公知の溶液重合方法等で行うことができる。
【0014】
本発明塗料で使用するメラミン樹脂架橋剤(B)は水分散性ビニル系共重合体(A)の水酸基と反応して硬化塗膜を形成するものである。該架橋剤(B)としては、従来から公知のメラミン樹脂を使用することができる。
【0015】
メラミン樹脂架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂のメチロ−ル基の一部もしくは全部が、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、オクチルアルコ−ル、2−エチルヘキシルアルコ−ル等の1種もしくは2種以上のアルコ−ルで変性されたものを使用することができる。メラミン樹脂は1核体〜多(約5)核体のものが50重量%以上を占めるものが好ましい。また、メラミン樹脂中にはイミノ基、メチロ−ル基等の官能基を含んでいても構わない。
【0016】
水分散性ビニル系共重合体(A)及び架橋剤(B)成分の配合割合は両者の総合計量換算で、水分散性ビニル系共重合体(A)が40〜85重量%、好ましくは50〜80重量%の範囲であり、架橋剤(B)は15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲である。水分散性ビニル系共重合体(A)の配合割合が40重量%を下回り、そして架橋剤(B)が60重量%を上回ると耐候性、耐モルタル性、加工性等の塗膜性能が悪くなり、一方、共重合体(A)の配合割合が85重量%を上回り、そして架橋剤(B)が15重量%を下回ると耐候性、加工性等の塗膜性能が悪くなるので好ましくない。
【0017】
本発明塗料には必要に応じて顔料、染料、硬化触媒、流動性調整剤等を配合することができる。
【0018】
本発明塗料は、例えば、共重合体(A)のカルボキシル基に対して0.3〜0.5当量になるように中和剤(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン等)を配合し、次いで架橋剤(B)を配合分散し、続いて水分散を行った後、塗料のPHを7.0以上に調整することにより製造できる。
【0019】
本発明塗料は、特に着色もしくは無着色陽極酸化アルミニウム材を使用するアルミニウム建材分野に適用することが好ましい。
【0020】
本発明塗料の塗装方法は、例えば、本発明塗料をアニオン型電着塗料浴(例えば、固形分約5〜20重量%、好ましくは約6〜12重量%)とし、この浴中にアルミニウム材を浸漬した後、乾燥膜厚が約5〜30ミクロンになるようにアニオン電着塗装を行い、次いで必要に応じて水洗(水道水、透過水等)後、焼付け(例えば、約160〜200℃で約20〜40分間)ることにより行うことができる。
【0021】
【実施例】
本発明について、実施例を掲げて詳細に説明する。本発明は提供した実施例に限定されるものではない。
【0022】
共重合体()の製造例
反応容器中にイソプロピルアルコ−ルを55重量部を仕込み80℃に保持した中へスチレン10g、メチルメタクリレ−ト32g、n−ブチルアクリレ−ト10g、エチルアクリレ−ト10g、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト15g、アクリル酸5g、プラクセルFM−3を15g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3g、及びアゾビスジメチルバレロニトリル1gの混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1gを添加し、80℃で1時間保持して反応を行い共重合体()ワニスを製造した。該共重合体は、重量平均分子量約5万、酸価39、水酸基価90であった。
【0023】
共重合体()の製造例
反応容器中にイソプロピルアルコ−ルを55重量部を仕込み80℃に保持した中へスチレン10g、メチルメタクリレ−ト31g、n−ブチルアクリレ−ト10g、エチルアクリレ−ト30g、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト12g、アクリル酸7g、及びアゾビスジメチルバレロニトリル2gの混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1gを添加し、80℃で1時間保持して反応い共重合体()ワニスを製造した。該共重合体は、重量平均分子量約2万、酸価55、水酸基価58であった。
【0024】
共重合体()の製造例
反応容器中にイソプロピルアルコ−ルを55重量部を仕込み80℃に保持した中へスチレン10g、メチルメタクリレ−ト30g、n−ブチルアクリレ−ト3g、エチルアクリレ−ト30g、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト19g、アクリル酸5g、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン3g、及びアゾビスジメチルバレロニトリル1gの混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1gを添加し、80℃で1時間保持して反応を行い共重合体()ワニスを製造した。該共重合体は、重量平均分子量約5万、酸価39、水酸基価92であった。
【0025】
実施例
上記共重合体(a)70g(固形分量)に共重合体(a)のカルボキシル基に対して0.4当量のトリエチルアミンを配合した後、混合分散し、次いでこのものに、サイメル303(三井サイテック株式会社製、商品名、メトキシ化メラミン樹脂)30gを配合し、混合分散した後、攪拌を行いながら脱イオン水を徐々に滴下し、更にPHが7.0になるようにトリエチルアミンを添加して固形分10重量%の電着塗料を製造した。
【0026】
比較例1
実施例1において、共重合体(a)に代えて共重合体()を使用した以外は実施例1と同様にして電着塗料を製造した。
【0027】
比較例2
実施例において、共重合体(a)に代えて共重合体()を使用した以外は実施例1と同様にして電着塗料を製造した。
【0028】
上記した実施例及び比較例で得られた電着塗料を電着浴とし、このものに被塗物(皮膜厚約10ミクロンの陽極酸化アルミニウム材(Al)、燐酸亜鉛処理した鋼板(Fe)、大きさは150×70×0.5mm)を浸漬し、乾燥膜厚が約10ミクロンになるように電着塗装を行い、次いで塗装物を浴槽から引き上げた後、セッテングを約10分間行い、続いて160℃で30分間焼付けて実施例及び比較例のクリヤ−塗膜を被覆した。
【0029】
表1に結果をまとめて示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003805836
【0031】
塗料貯蔵安定性:塗料を試験管(高さ20cm、容量20cc)に充填し、20℃で7日間静置した後、容器の底に沈殿した残渣の高さを調べた。◎は残渣が0.5mm以下で良好、○は残渣が0.6〜5mmでほぼ良好、△は残渣が6〜10mmでやや不良、×は11mm以上で不良。
【0032】
塗膜性能試験方法
塗膜鏡面反射率:JIS K−5400の60度鏡面反射率を測定した。
塗膜平滑性:塗膜表面(ユズ肌、凹凸等)を目視で評価した。◎は良好、○はほぼ良好、△はやや不良、×は不良。
【0033】
艶消し塗膜外観:塗膜表面の仕上り外観(光沢ムラなど)を肉眼で調べた。◎は良好、○はほぼ良好、△はやや不良、×は不良。
【0034】
エリクセン試験:素地に達するように塗膜にゴバン目を100個作り、ゴバン目を作った塗板の裏側からエリクセン試験機により5mm押出した後の塗膜の外観を観察した。◎は塗膜に異常が全く認められないもの、○は塗膜の1箇所に異常がみとめられたもの、△は塗膜の2〜5箇所に異常がみとめられたもの、×は塗膜の6箇所以上に異常がみとめられたもの。
【0035】
耐モルタル性:試験はクロスカットを入れた試験板をセメント/海砂/水=1/3/0.5(重量比)に混合したモルタルに、50℃で7日間浸漬した。
次いで試験板をモルタルから剥がしとり塗膜の光沢低下、フクレ、剥がれ等の塗膜異常の有無を観察した。◎は全く異常がなく良好、○はほぼ良好、△はやや不良、×は不良。
【0036】
耐酸性:5重量%の塩酸水溶液(20℃)に72時間浸漬後の塗膜外観を調べた。◎は全く異常がなく良好、○はほぼ良好、△はブリスタ−が発生したもの、×はブリスタ−が多く発生したもの。
【0037】
耐アルカリ性:1重量%の苛性ソ−ダ−水溶液(20℃)に72時間浸漬後の塗膜外観を調べた。◎は全く異常がなく良好、○はほぼ良好、△はブリスタ−が発生したもの、×はブリスタ−が多く発生したもの。
【0038】
防食性:JIS K−5400塩水噴霧試験方法に基づいて試験を行った。試験板は素地に達するように塗膜にクロスカットをいれたものを使用した。◎は全く異常がなく良好、○はカット部から幅1.0mm以内、△はカット部から幅1.1〜2.0mm、×は2.0mm以上のもの。
【0039】
【発明の効果】
本発明塗料によると、特に、水酸基及びカルボキシル基を含有する水分散性ビニル系共重合体として、該共重合体中にラクトン類化合物によるエステル結合を含有することから、塗料の貯蔵安定性や塗膜の耐モルタル性、加工性等の性能が優れるといった顕著な効果が得られる。

Claims (1)

  1. 水酸基含有ラクトン変性ビニル系モノマー、該水酸基含有ラクトン変性ビニル系モノマー以外の水酸基含有ビニル系モノマー、アルコキシシラン基含有ビニル系モノマー、カルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその他の不飽和モノマーを必須モノマー成分とする酸価15〜150及び水酸基価30〜200の水分散性ビニル系共重合体(A)及びメラミン樹脂架橋剤(B)を熱硬化性樹脂成分として含有することを特徴とするアニオン型艶消し電着塗料。
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