JP3804058B2 - インクジェットプリンタ、ならびにインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置および方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はノズル部からインク滴を吐出して記録用紙に記録を行うインクジェットプリンタ、ならびにインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インク室に連通したノズル部からインク滴を吐出して記録用紙に記録を行うインクジェットプリンタが普及している。従来、この種のインクジェットプリンタでは、つぎのようにしてインク滴の吐出制御を行っていた。
【0003】
図23は従来のインクジェットプリンタにおける記録ヘッドおよびその駆動回路の概略構成を表すものである。この図に示したように、この記録ヘッド500は、ノズル501と、ノズル501に対応して設けられた圧電素子502とを備えている。圧電素子502は、図示しないインク流路を介してインクが供給されるインク室(図示せず)の一壁面に固設されている。この圧電素子502には、オンオフスイッチ503を介して、所定波形の駆動信号504が選択的に入力されるようになっている。すなわち、オンオフスイッチ503がオン状態のときにのみ圧電素子502に駆動信号504が印加される。圧電素子502は、駆動信号504が印加されると、図示しないインク室の容積を縮小させる方向にたわみ、これにより、ノズル501からインク滴を吐出させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のプリンタにおいて、中間階調の画像表現を行うためには、画素ドット間でインク滴サイズを変化させる必要がある。しかしながら、図23に示した従来の記録ヘッド駆動回路では、圧電素子に対してただ1種類の駆動信号504が入力され、単に、吐出を行うか吐出を行わないか、という制御を行っているに過ぎなかったため、記録ドットの間隔を調整することはできても、吐出されるインク滴ごとにサイズを異ならせるという制御を行うことができず、結果として、より自然な中間階調を表現する等、多様な画像表現を忠実に行うことが困難であった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、異なる波形の駆動信号によるインク滴吐出を行うことにより多様な画像表現を忠実に行うことができるインクジェットプリンタ、ならびにインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置および方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インク滴を吐出するためのノズル部と、ノズル部からインク滴を吐出させるためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生手段と、一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中から、いずれかを時分割的に選択すると共に、選択した駆動信号をインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えて吐出エネルギー発生手段に供給する選択手段とを備えている。ここで、選択手段は、さらに、インク滴の吐出周期ごとに駆動信号の選択を切り替えるようにしてもよい。
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置は、ノズル部からインク滴を吐出させるためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生手段に対し、一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中からいずれかを時分割的に選択すると共に、選択した駆動信号をインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えて供給する選択手段を備えている。
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法は、ノズル部からインク滴を吐出させるためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生手段に対し、一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中からいずれかを時分割的に選択すると共に、選択した駆動信号をインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えて供給するようにしたものである。
【0009】
本発明に係るインクジェットプリンタ、ならびにインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置および方法では、一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中から時分割的に選択されると共に、選択された駆動信号がインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えられて吐出エネルギー発生手段に供給され、この駆動信号によってノズル部からのインク滴吐出の制御が行われる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
図2は本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの要部の概略構成を表すものである。本実施の形態では、複数のノズルを有するマルチノズルヘッドを備えたインクジェットプリンタについて説明するが、本発明は単一のノズルを有するシングルノズルヘッドを備えたインクジェットプリンタについても適用可能である。なお、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置および方法は本実施の形態に係るインクジェットプリンタによって具現化されるので、以下併せて説明する。
【0012】
このインクジェットプリンタ1は、記録用紙2に対してインク滴を吐出して記録を行う記録ヘッド11と、この記録ヘッド11にインクを供給するインクカートリッジ12と、記録ヘッド11の位置と記録用紙2の紙送りとを制御するヘッド位置・紙送りコントローラ13と、駆動信号21により記録ヘッド11のインク滴吐出動作を制御するヘッドコントローラ14と、入力される画像データに所定の画像処理を行い、印画データ22としてヘッドコントローラ14に供給する画像処理部15と、制御信号23,24,25によってそれぞれヘッド位置・紙送りコントローラ13、ヘッドコントローラ14および画像処理部15を制御するシステムコントローラ16とを備えている。
【0013】
図3は図2における記録ヘッド11の斜視断面構造を表し、図4は図3における記録ヘッド11を矢印Aの方向から見た断面図である。これらの図に示したように、記録ヘッド11は、薄いノズルプレート板111と、ノズルプレート111上に積層された流路プレート112と、流路プレート112上に積層された振動プレート113とを備えて構成されている。これらの各プレートは、例えば、図示しない接着剤により相互に貼り合わされている。
【0014】
流路プレート112の上面側には選択的に凹部が形成されており、これらの凹部と振動プレート113とによって、複数のインク室114とこれらのインク室に連通する共同流路115とを構成している。共同流路115と各インク室114との連通部分は挟路となっており、ここから各インク室114の方向に向かうに従って流路幅が拡がるような構造となっている。各インク室114の真上部分の振動プレート113上には、それぞれ、例えばピエゾ素子等からなる圧電素子116が固着されている。各圧電素子116上には、図示しない電極がそれぞれ積層配置されており、これらの電極にヘッドコントローラ14(図2)からの駆動信号を印加することによって各圧電素子116をたわませ、インク室114の容積を増大(膨張)させたり減少(収縮)させることができるようになっている。ここで、圧電素子116が本発明における「吐出エネルギー発生手段」に対応する。
【0015】
各インク室114における共同流路115に連通した側と反対側の部分は、流路幅が次第に狭まっていく構造になっており、その終端部の流路プレート112には、厚み方向に穿たれた流路孔117が設けられている。そして、この流路孔117は、最下層のノズルプレート111に形成された微小なノズル118へと連通しており、このノズル118からインク滴が吐出されるようになっている。本実施の形態では、記録ヘッド11には、記録用紙2(図2)の紙送り方向(図3の矢印X)に沿って、複数のノズル118が千鳥状に2列に等間隔で形成されているが、その他の配列(例えば一列)としてもよい。ここで、ノズル118が本発明における「ノズル部」に対応する。
【0016】
共同流路115は、図2に示したインクカートリッジ12(図3および図4では図示せず)に連通している。そして、このインクカートリッジ12から共同流路115を経て各インク室114に常時一定速度でインクが供給されるようになっている。このインクの供給は、例えば毛細管現象を利用して行うことができるが、そのほか、インクカートリッジ12に所定の加圧機構を設けて加圧することで行うようにしてもよい。
【0017】
このような構成の記録ヘッド11は、図示しないキャリッジ駆動モータおよびこれに付随するキャリッジ機構によって記録用紙2の紙送り方向Xと直交する方向Yに往復移動しながらインク滴を吐出することにより、記録用紙2に画像を記録するようになっている。
【0018】
図1は図2におけるヘッドコントローラ14の回路構成を表すものである。この図に示したように、ヘッドコントローラ14は、複数の波形選択部141−1〜141−nと、互いに異なる波形からなるN個の駆動信号145−1〜145−Nを生成する駆動波形生成部142と、波形選択部141−1〜141−nの動作を制御する駆動波形選択制御部143とを備えている。ここで、N,nは共に正の整数である。
【0019】
駆動波形生成部142から出力される駆動信号145−1〜145−Nはそれぞれn個ずつに分岐されて、それぞれ波形選択部141−1〜141−nに入力されるようになっている。駆動波形選択制御部143は、所定のタイミングで波形選択部141−1〜141−nに選択信号146−1〜146−nをそれぞれ対応するように入力する。各波形選択部141−1〜141−nは、これらの選択信号に応じてそれぞれ駆動信号145−1〜145−Nのいずれか一つを選択してそれぞれ駆動信号21−1〜21−nとして記録ヘッド11に供給するようになっている。なお、駆動信号21−1〜21−nは図1の駆動信号21に相当する。ここで、波形選択部141−1〜141−nがそれぞれ本発明における「選択手段」に対応する。
【0020】
駆動波形生成部142は、例えば、いずれも図示しないが、マイクロプロセッサと、このマイクロプロセッサが実行するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、マイクロプロセッサによる所定の演算や一時的なデータ記憶等に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、不揮発性メモリからなる駆動波形記憶部と、駆動波形記憶部から読み出されたディジタルデータをアナログに変換するためのディジタルアナログ(D/A)コンバータと、D/Aコンバータの出力を増幅するアンプとを備えて構成される。ここで、駆動波形記憶部は、記録ヘッド11を駆動する駆動信号145−1〜145−Nの電圧波形を示す波形データを記憶しており、この波形データが、マイクロプロセッサによって読み出されてD/Aコンバータでアナログ信号に変換されたのちアンプで増幅され、駆動信号145−1〜145−Nとして出力されるようになっている。ただし、この駆動波形生成部142は、上記のような構成に限られることはなく、これと異なる構成とすることも可能である。
【0021】
図5は駆動波形生成部142から出力される駆動信号145−1〜145−Nの各一周期分の波形例を表すものである。この図の(a)は駆動信号145−1、(b)は駆動信号145−2、(c)は駆動信号145−3、(d)は駆動信号145−Nを表す。ここで、縦軸は電圧、横軸は時間を表し、時間は図の左から右方向へと進むものとする。これらのうち、駆動信号145−Nは、一定電圧ではないがインク滴を吐出させることのない起伏の緩やかな波形である。一方、他の駆動信号145−1〜145−Nは、それぞれ、インク滴を吐出させ得るだけの固有の起伏を有する波形であり、基準の電圧V1のほかに0VとV2(i)とを取り得るようになっている。ここで、i=1,2,…Nである。
【0022】
図5に示したように、一周期の両端部は、周期ごとに波形の選択を切り替える場合の切換タイミングtsに対応する。これらの各駆動信号は、波形選択部141−1〜141−nによって周期ごとに選択の切り替えが適宜行われるほか、周期内の複数の切替タイミングts′においても選択の切り替えが可能になっている。ここで、各切替タイミングts′によって1周期を分割したときの各期間を後ろから順にそれぞれτ1〜τMと表す。ここに、N=2のときはM=5、Nが3以上のときはM=N+2である。
【0023】
次に、図6を参照して、図5(a)に示した駆動信号145−1の波形の意義について説明する。この図6は、駆動信号145−1と、圧電素子116の挙動と、ノズル118内におけるインクの先端部の位置(以下、メニスカス位置という。)の変化との関係を表すものである。この図の(a)は駆動信号145−1の波形を表し、このうち、切替タイミングtsによって区切られた部分がその1周期分に相当する。ここで、図5にも示したように、符号tsは周期ごとの切替タイミングを表す。(b)は図6(a)に示したような波形の駆動信号145−1がそのまま圧電素子116に印加されたときのインク室114の状態変化を表し、(c)はそのときのノズル118内におけるメニスカス位置の変化を表す。なお、(a)では、説明の便宜上、同一波形の駆動信号145−1の周期的繰り返しを図示し、また、(c)では、ノズルの先端部(以下、ノズル開口端という。)を上にしてノズル118を描いている。
【0024】
図6(a)において、まず、駆動電圧を第1の電圧V1(=一定)から電圧0Vに変化させる行程(AからBまで)を第1行程とし、これに要する時間をt1とする。また、電圧0Vを保持して待機する行程(BからCまで)を第2行程とし、これに要する時間をt2とする。さらに、電圧0Vから第2の電圧V2に変化させる行程(CからDまで)を第3行程とし、これに要する時間をt3とする。なお、以下の説明では、第1の電圧V1を引き込み電圧といい、第2の電圧V2を吐出電圧という。
【0025】
この記録ヘッド11は、一定の周波数(例えば1〜10kHz程度)で駆動されるようになっており、この駆動周波数に対応してインク滴の吐出周期Tが定まる。第3行程の開始時点である時点Cおよび時点G等は、吐出が開始されるタイミング(吐出開始タイミングte)であり、この吐出開始に先立って第1および第2行程が行われるようになっている。
【0026】
まず、時点Aおよびそれ以前においては、図6(b)の状態PA のように、圧電素子122への電圧V1の印加により振動プレート113は内側にわずかにたわんだ状態で静止し、インク室114は収縮状態となっている。時点Aにおいて、ノズル118内におけるメニスカス位置は、図6(c)の状態MA に示したように、ノズル118のノズル開口端とほぼ同位置になっているものとする。
【0027】
次に、時点Aの電圧V1から時点Bの電圧0へと駆動電圧を減少させる第1行程を行うと、圧電素子116への印加電圧が0になるので振動プレート113のたわみがなくなり、インク室114は膨張する(図6(b)の状態PB )。このため、ノズル118内におけるメニスカスはインク室114の方向に引き込まれ、時点Bでは、例えば図6(c)のMB の状態にまで後退する(すなわち、ノズル開口端から遠ざかる)。
【0028】
ここで、時点Aと時点Bとにおける電位差(引き込み電圧V1)の大きさを変更することにより第1行程におけるメニスカスの引き込み量を変えることができるので、間接的に、次の第2行程の終了時点、すなわち第3行程の開始時点におけるメニスカス位置を調整することが可能である。このメニスカス位置、すなわちノズル開口端からメニスカスまでの距離は、第3行程において吐出されるインク滴のサイズに大きく影響するので、これを調整することでインク滴のサイズを制御することができる。すなわち、この第1行程におけるメニスカスの引き込み量(より具体的には、引き込み電圧V1)を変えることによってインク滴のサイズを制御することが可能である。
【0029】
次に、時点Bから時点Cまでの時間t2の間、駆動電圧を0Vに固定して振動プレート113cをたわみがない状態に維持することでインク室114の容積を一定に保つ第2行程を行う(図6(c)の状態PB 〜PC )。ところが、この間もインクカートリッジ12からのインク供給は連続的に行われているので、ノズル118内におけるメニスカス位置はノズル開口端に向かって変位し、時点Cでは、例えば図6(c)のMC の状態にまで前進する。
【0030】
ここで、第2行程の所要時間t2を変更することによりメニスカス位置の前進量を変えることができるので、これにより第3行程の開始時点におけるメニスカス位置を調整することができる。すなわち、第2行程の所要時間t2を調整することでインク滴のサイズを制御することが可能である。
【0031】
次に、時点Cの電圧0から時点Dの吐出電圧V2へと駆動電圧を急激に増大させる第3行程を行う。ここで、時点Cは、上記したように、吐出開始タイミングteである。この場合、時点Dでは圧電素子122に大きな吐出電圧V2が印加されるので、振動プレート113は図6(b)の状態PD に示したように内側に大きくたわみ、インク室114は急激に収縮する。このため、図6(c)の状態MD に示したように、ノズル118内のメニスカスはノズル開口端に向かって一気に押され、ここからインク滴として吐出される。吐出されたインク滴は空気中を飛翔し、記録用紙2(図2)上に着弾する。この場合、第3行程の開始時点Cにおけるメニスカス位置がノズル開口端から離れているほど、インク滴のサイズは小さくなる。
【0032】
その後、駆動電圧を再びV1まで減少させて振動プレート113を僅かに内側にたわませて初期状態にし(図6(b)の状態PE )、この状態を次の吐出動作の第1行程開始時点Fまで維持する。駆動電圧を再びV1に減少させた時点Eにおいては、図6(c)の状態ME に示したように、吐出されたインク滴の体積とインク室114の容積増加分との和にほぼ対応する分だけメニスカス位置が後退した状態となるが、その後も行われるインクの充填(リフィル)により、次回の吐出動作の第1行程開始時点Fのメニスカス位置は、図6(c)の状態MF に示したように、ノズル開口端と同じ位置にまで回復し、時点Aにおける状態MA と同じになる。
【0033】
このようにして1回の吐出動作が終了する。以下、このようなサイクル動作を各ノズル118ごとに並行してそれぞれ繰り返し行うことで、記録用紙2(図2)への画像記録が連続的に行われる。なお、以上の行程説明(図6)は、インク滴吐出を目的として駆動信号145−1〜145−Nから合成される駆動信号(例えば、後述する図9の波形のうち「吐出せず」を除く波形α1,α2,β1,β2)にも当てはまるものである。
【0034】
さて、再び図5に戻って、駆動信号145−1〜145−Nの各波形の特徴について説明する。この図の(a)に示したように、駆動信号145−1は図6で説明した波形の信号である。また、同図(b),(c)等に示した駆動信号145−2〜145−(N−1)は、駆動信号145−1における第1,第2行程に相当する部分をそれぞれ少しずつ前方へ移動させると共に、この第2行程に相当する部分と第3行程に相当する部分との間を一定電圧V1に保持した形となっている。具体的には、駆動信号145−i(i=2〜N−1)は、サフィックスiが大きくなるほど、後述する波形合成後に第2行程所要時間となるべき時間t1(i)が長くなるように作られている。また、吐出電圧V2(i)については、サフィックスiが大きい駆動信号145−iほど、値が小さくなるように設定されている。また、駆動信号145−Nは、(M−1)個の切替タイミングts′のうち最も早い切替タイミングts′(区間τMの後端)で電圧V1から0Vに変化したのち、吐出開始時点となるべき時点を先端とする区間τ2の後端(すなわち、区間τ1の先端)に向かってV2(N)まで緩やかに増加するような波形を有し、この駆動信号によってはインク滴吐出が行われないようになっている。
【0035】
但し、ここで、波形合成後に第2工程所要時間となるべき時間の最大値であるt1(N)は、第1工程で引き込まれたメニスカスがノズル開口端に到達するまでの所要時間以下であるとする。また、第3工程の吐出電圧となるべき電圧の最小値(V2(N)−1)は、インク滴を吐出させるに足る範囲に入っているものとし、第3工程となるべき部分の電圧変化の傾きはいずれも等しいものとする。
【0036】
図5において、第2行程所要時間となるべき時間t1(i)(但し、i=1〜N−1)に着目すれば、サフィックスiが大きい駆動信号ほど、それを用いて合成される駆動信号はより大きなサイズのインク滴を吐出するものとなる。一方、吐出電圧となるべき電圧V2(i)(但し、i=1〜N−1)に着目すれば、サフィックスiが大きい駆動信号ほど、それを用いて合成される駆動信号はより小さなサイズのインク滴を吐出するものとなる。したがって、後述するように、第2行程所要時間となるべき時間t1(i)および吐出電圧となるべき電圧V2(i)の大きさを両者のバランスを適切に考慮して設定すると共に、これらの駆動信号の選択を周期ごとに(すなわち、切替タイミングtsで)、および周期内の所定タイミング(切替タイミングts′)で切り替えて各ノズルの圧電素子に印加することにより、様々なサイズのインク滴が吐出可能となる。
【0037】
次に、図7を参照して、図1のインクジェットプリンタ1の全体動作を説明する。ここで、図7はヘッドコントローラ14(図1)における1回の吐出動作の要部を表すものである。
【0038】
図1において、図示しないパーソナルコンピュータ等の情報処理装置から印刷データがインクジェットプリンタ1に入力されると、画像処理部15は、この入力データに対して所定の画像処理(例えば圧縮されたデータの伸長等)を行ったのち、これを印画データ22としてヘッドコントローラ14に送出する。
【0039】
ヘッドコントローラ14の駆動波形選択制御部143は、記録ヘッド11のノズル数に対応したnドット分の印画データ22が入力されると(図7ステップS101)、これらの印画データ22を基に、各ノズル118ごとに、ドットを形成するためのインク滴サイズを判定し、この判定結果から、各波形選択部141−1〜141−nにおいてそれぞれ選択すべき駆動信号波形を決定する。より具体的には、変数jを“1”から“n”まで順次インクリメントしながら、波形選択部141−jによって選択すべき駆動信号波形を決定する(ステップS102〜S105)。このとき、駆動信号145−1〜145−Nの選択を周期ごとに(切替タイミングtsで)切り替えて元の波形をそのまま用いるように決定することも可能であるし、あるいは、駆動信号145−1〜145−Nを周期内の切替タイミングts′で切り替えて新たな合成波形を作るように決定することも可能である。さらに、周期ごとおよび周期内の両方で切り替えるように決定することも可能である。ここで、例えば、高濃度を表現するにはインク滴サイズを大きくし、低濃度を表現する場合や高解像度表現を行う場合にはインク滴サイズを小さくする。また、微妙な中間階調を表現する場合には、隣接するドット間でインク滴サイズを少しずつ異ならせるようにする。また、例えば、各ノズル間でインク吐出特性がばらついている場合には、これを補正することとなるような波形の駆動信号を選択する。
【0040】
n個の波形選択部141−1〜141−nのすべてについて、駆動信号の選択パターンが決定すると(ステップS105;Y)、駆動波形選択制御部143は、周期ごとの切替タイミングtsもしくは周期内の切替タイミングts′、またはその両方のタイミングにおいて、波形選択部141−1〜141−nに対して、それぞれ、決定された波形の駆動信号を選択するための波形選択信号146−1〜146−nを出力する(ステップS106)。
【0041】
波形選択部141−1〜141−nは、上記の各切替タイミングにおいて入力された波形選択信号146−1〜146−nに基づき、駆動信号145−1〜145−Nの中からそれぞれ該当するものを選択して出力する。これにより、例えば図5(a)〜(d)に示したような波形の駆動信号145−1〜145−Nのいずれか、またはこれらを周期内の切替タイミングts′で切り替えて合成した波形の信号が、駆動信号21−1〜21−nとして、記録ヘッド11における各ノズルの圧電素子116にそれぞれ供給される。記録ヘッド11の各ノズルでは、供給された駆動信号の電圧波形に基づいて、図6で説明したような3つの行程がそれぞれ行われ、これにより、各ノズルごとに指定された通りのサイズのインク滴が吐出される。
【0042】
なお、図3に示したようにノズル118を千鳥状に2列に配列した場合、記録ヘッド11の走行方向の同じ位置で全ノズルのインク滴吐出を行うためには、奇数番目のノズルからなる列と偶数番目のノズルからなる列との間で所定の時間差をもってインク滴吐出を行う必要がある。これは、駆動波形選択制御部143が、この時間差に対応した分だけ、奇数番目の波形選択信号146−1,146−3,…の出力タイミングと、偶数番目の波形選択信号146−2,146−4,…の出力タイミングとをずらすように制御することで可能である。
【0043】
図8は駆動波形生成部142(図1)から出力される駆動信号の一具体例を表すもので、図5においてN=2とした場合を示している。この例では、駆動波形生成部142は、駆動信号145−1(図8(a))および一定電圧ではないがインク滴吐出はなし得ない程度の緩やかな勾配をもった駆動信号145−2(同図(b))という2つの駆動信号を出力する。また、この例では、周期内の切替タイミングts′を4カ所設定し、これにより、1つの周期を5つの区間τ1〜τ5に分割できるようになっている。すなわち、これらの2つの駆動信号145−1,145−2の選択の切り替えは、周期ごとの切替タイミングtsのみならず吐出周期内の切替タイミングts′においても行われるようになっている。
【0044】
この例では、周期ごとの切替タイミングtsおよび周期内の切替タイミングts′において駆動信号145−1,145−1の選択を切り替えて出力することにより、図9に示したように、基本の駆動信号の数よりも多い5種類の駆動信号波形が得られる。この図で、「合成波形の作り方τ1,τ2」の各欄に記載した「1」,「2」は、それぞれ、駆動信号145−1,145−2を選択することを意味する。具体的には、波形α1は、区間τ5およびτ4において駆動信号145−2を選択すると共に区間τ3〜τ1において駆動信号145−1を選択して合成したものであり、波形α2はすべての区間について駆動信号145−1を選択したものである。また、波形β1は、区間τ5,τ4およびτ1において駆動信号145−1を選択すると共に区間τ3およびτ2において駆動信号145−1を選択して合成したものであり、波形β2は、区間τ5〜τ2において駆動信号145−1を選択すると共に区間τ1において駆動信号145−2を選択して合成したものである。また、「吐出せず」なる波形はすべての区間で駆動信号145−2を選択したものである。したがって、波形α1,β1およびβ2は新たに作られた合成波形であり、波形α2および「吐出せず」なる波形はそれぞれ図8に示した元の駆動信号145−1および145−2と同じになる。ここで、波形α1と波形α2とを比較すると、波形α2の第2行程所要時間t1(1)は波形α1の第2行程所要時間t1(2)よりも小さいので、得られるインク滴のサイズは波形α2の方が小さくなる。同様に、波形β1の場合よりも波形β2の場合の方が得られるインク滴サイズは小さくなる。また、上記したように、「吐出せず」なる波形では、電圧V2(2)の値が小さく、かつ0Vから電圧V2(2)まで変化する勾配が緩いため、ノズル118からインク滴は吐出されない。
【0045】
図10は駆動波形生成部142から出力される駆動信号の他の具体例を表すもので、図5においてN=3とした場合を示している。この場合、駆動波形生成部142は、駆動信号145−1(図10(a))、駆動信号145−2(同図(b))および駆動信号145−3(同図(c))という3つの駆動信号を出力する。これらのうち、駆動信号145−3は、一定電圧波形ではないがインク滴吐出はなし得ない程度の緩やかな勾配をもった波形の信号である。この例では、上記の具体例と同様に、周期内の切替タイミングts′を4カ所設定し、これにより、1つの周期を5つの区間τ1〜τ5に分割可能になっている。すなわち、これらの3つの駆動信号の選択は、周期ごとの切替タイミングtsのみならず吐出周期内の切替タイミングts′においても切り替えられるようになっている。
【0046】
この例では、周期ごとの切替タイミングtsおよび周期内の切替タイミングts′において駆動信号145−1〜145−3の選択を切り替えて出力することにより、図11に示したような13種類の駆動信号波形が得られる。この図で、「合成波形の作り方τ1,τ2」の各欄に記載した「1」,「2」,「3」は、それぞれ、駆動信号145−1,145−2,145−3を選択することを意味する。例えば、波形α1は、区間τ5,τ4およびτ1において駆動信号145−1を選択すると共に区間τ3およびτ2において駆動信号145−2を選択して合成したものである。また、波形α2は、区間τ5において駆動信号145−3を選択し、区間τ4において駆動信号145−2を選択し、区間τ3〜τ1において駆動信号145−1を選択して合成したものである。その他の波形も同様にして作られる。但し、波形α4および「吐出せず」なる波形は、それぞれ、基本の駆動信号145−1,145−3の波形と同じものである。
【0047】
図11に示したように、波形α2〜α4のグループについて見ると、吐出電圧はV2(1)で同一であるが、波形α2からα4に向かうにつれて第2行程所要時間t1(i)は徐々に小さくなっているので、吐出されるインク滴のサイズはα2からα4に向かって次第に小さくなる。同様に、波形β2〜β4のグループについて見ると、吐出電圧はV2(2)で同一であるが、波形β2からβ4に向かうにつれて第2行程所要時間t1(i)は徐々に小さくなっているので、吐出されるインク滴のサイズはβ2からβ4に向かって次第に小さくなる。波形γ2〜γ4のグループについても同様である。但し、図11に示した例では、波形α1,β1,γ1における実質的な吐出電圧は、それぞれ、(V2(1)−V1),(V2(2)−V1),(V2(3)−V1)となるので、波形α1により得られるインク滴のサイズと波形α2〜α4により得られるインク滴のサイズとの比較、波形β1により得られるインク滴のサイズと波形β2〜β4により得られるインク滴のサイズとの比較、および波形γ1により得られるインク滴のサイズと波形γ2〜γ4により得られるインク滴のサイズとの比較を一義的に行うことはできない。但し、波形α1の吐出電圧(V2(1)−V1)と波形α2〜α4の吐出電圧V2(1)とのバランスや、波形α2〜α4におけるそれぞれの第2工程所要時間t1(3),t1(2),t1(1)の大きさ等を適切に設定することによって、波形α1〜α4のグループの中で、吐出されるインク滴のサイズを自由にコントロールすることは可能である。波形β1〜β4のグループや波形γ1〜γ4のグループについても同様である。また、波形α1〜α4,波形β1〜β4および波形γ2〜γ4の各グループにおける同一サフィックスの波形同士を比較すると、3者の第2行程所要時間t1(i)は等しいが、αグループからγグループに向かうにつれて吐出電圧V2(i)は徐々に小さくなるので、この順でインク滴サイズも小さくなる。
【0048】
このように、図10および図11に示した例では、基本の3つの駆動信号を周期ごとおよび周期内の所定のタイミングで切り替えるようにしたので、元の信号数よりもはるかに多い13種類の駆動信号波形を作り出すことができる。
【0049】
図12は、N=3の場合における、ある波形選択部(例えば、波形選択部141−1)に入力される駆動信号と、そこから出力される駆動信号(ここでは、駆動信号21−1)の波形の一例を表すものである。この図の(a)〜(c)は、それぞれ、波形選択部141−1に入力される駆動信号145−1〜145−2の波形を示し、(d)は波形選択部141−1から出力される駆動信号21−1を示す。ここで、(a)〜(c)に示した波形のうち、太実線で示した部分は波形選択部141−1によって選択された部分を示し、黒丸点「・」は、実際に切り替えの行われた時点を表す。
【0050】
この例では、周期ごとの切替タイミングtsおよび周期内の切替タイミングts′において駆動信号145−1〜145−2の選択を切り替えて出力することにより、駆動信号21−1(同図(d))として、図中の最初の周期で波形α2が得られ、その次の周期では波形γ3が得られている。さらに、それに続いて各種の波形(図示せず)が合成されて出力される。この図では、一例として駆動信号21−1の波形のみを示したが、その他の駆動信号21−2〜21−nについても同様である。
【0051】
なお、ある1周期に着目したときの駆動信号21−1〜21−nの波形は互いに独立したものとなっているので、すべてのノズルにおいて、吐出開始タイミングteに同期しつつ、それぞれ独立した吐出動作が行われる。これにより、全ノズルの吐出動作を同期させつつ、各ノズルから吐出されるインク滴のサイズをそれぞれ異ならせるようにしたり、あるいは、各ノズルの吐出特性に合わせて駆動波形を変えてノズル間のばらつきを補正することも可能となる。
【0052】
以上の例では、N=2およびN=3の場合について説明したが、より一般的には、一定電圧波形ではないがインク滴を吐出することのない所定波形の駆動信号を含むN個の駆動信号を基本波形として用いて波形合成を行うことにより、[(N+1)N+1]個の波形を得ることができる。以下、この点を詳しく説明する。
【0053】
図13は、N個(但し、ここではNは3以上)の駆動信号を基本波形として用いたときの合成波形の作り方を表すものである。この図で、「合成波形の作り方τ1〜τM」の各欄に記載した「1」,「2」,「3」,…「N」は、それぞれ、駆動信号145−1,145−2,145−3,…145−Nを選択することを意味する。
【0054】
この図に示したように、本例では、合成波形として、αグループからζグループまでのN個のグループの波形と、1個の「吐出せず」なる波形とが作られる。αグループの波形はすべて、図5の区間τ1として駆動信号145−1を選択して作られたものである。このうち、波形α1は、区間τ3およびτ2として駆動信号145−2を選択すると共に区間τ4〜τ7として駆動信号145−1を選択して作られたものである。また、波形α2〜波形α(N+1)は、区間τ2としてすべて駆動信号145−1を選択すると共に、区間τ3〜τMについては図中の対角線方向に右下から左上に向かって駆動信号145−iのサフィックスiを1から順にインクリメントするように設定することによって作られる。
【0055】
また、βグループの波形はすべて、区間τ1として駆動信号145−2を選択して作られたものであり、その他の区間についての作り方はαグループと同様である。また、ζグループの波形はすべて、区間τ1として駆動信号145−Nを選択して作られたものであり、その他の区間についての作り方はαグループと同様である。
【0056】
その他のグループの波形の作り方も同様である。このようにして、αグループからζグループまで、それぞれ(N+1)個の波形からなるN個のグループが作られる。したがって、これに「吐出せず」なる波形を加えると、作られる合成波形の総数は、上記したように、[N(N+1)+1]個となる。
【0057】
図13において、波形α2〜α(N+1)のグループについて見ると、吐出電圧はV2(1)で同一であるが、波形α2からα(N+1)に向かうにつれて第2行程所要時間t1(i)は徐々に小さくなっているので、吐出されるインク滴のサイズはα2からα(N+1)に向かって次第に小さくなる。同様に、波形β2〜β(N+1)のグループについて見ると、吐出電圧はV2(2)で同一であるが、波形β2からβ(N+1)に向かうにつれて第2行程所要時間t1(i)は徐々に小さくなっているので、吐出されるインク滴のサイズはβ2からβ(N+1)に向かって次第に小さくなる。波形ζ2〜ζ(N+1)のグループ、およびその他のグループについても同様である。但し、図13に示した例では、波形α1,β1,…ζ1における実質的な吐出電圧は、それぞれ、(V2(1)−V1),(V2(2)−V1),…,(V2(N)−V1)となるので、波形α1により得られるインク滴のサイズと波形α2〜α(N+1)より得られるインク滴のサイズとの比較や、β1により得られるインク滴のサイズと波形β2〜β(N+1)により得られるインク滴のサイズとの比較等を一義的に行うことはできない。また、波形α1〜α(N+1)のグループから波形ζ2〜ζ(N+1)までの各グループにおける同一サフィックスの波形同士を比較すると、各々の第2行程所要時間t1(i)は等しいが、αグループからζグループに向かうにつれて吐出電圧V2(i)は徐々に小さくなるので、この順でインク滴サイズも小さくなる。
【0058】
図14および図15は本発明の実施の形態に対する比較例を表すものである。ここで、図14は駆動波形生成部142から出力される駆動信号の一比較例を表すもので、N=3の場合を示している。この比較例では、インク滴を吐出しない波形として一定電圧(V1)波形の駆動信号545−1(図14(a))を基本の信号として使用すると共に、一定電圧ではない起伏をもった駆動信号545−2,545−3(同図(b),(c))を基本の信号として使用する。ここで、これらの3つの駆動信号の選択は、周期ごとの切替タイミングtsのみならず吐出周期内の切替タイミングts′においても切り替えるものとする。
【0059】
この例では、周期ごとの切替タイミングtsおよび周期内の切替タイミングts′において駆動信号545−1〜545−3の選択を切り替えて出力することにより、図15に示したような7種類の駆動信号波形が得られる。この図で、「合成波形の作り方τ1,τ2」の各欄に記載した「1」,「2」,「3」は、それぞれ、駆動信号545−1,545−2,545−3を選択することを意味する。例えば、波形α1は、駆動信号545−1の前半部分τ2と駆動信号545−2の後半部分τ1とを選択して合成したものであり、波形α2は駆動信号545−3の前半部分τ2と駆動信号545−2の後半部分τ1とを選択して合成したものである。その他の波形も同様にして作られる。但し、波形α3,β2および「吐出せず」なる波形は、それぞれ、基本の駆動信号545−2,545−3,545−1の波形と同じものである。
【0060】
これに対し、本実施の形態では、インク滴の吐出を行わない波形として、一定電圧波形ではなく、第2行程所要時間t1(i)および第3行程での吐出電圧V2(i)に影響を与え得る所定の起伏をもった波形を用意し、これを波形合成に用いるようにしたので、インク滴を吐出しない波形として一定電圧波形を用いるようにした上記の比較例(図14,図15)と比べると、得られる合成波形の数が増大する。例えばN=3の場合、比較例では図15に示したように7種類の合成波形が得られるにとどまるのに対して、本実施の形態では図11に示したように13種類の合成波形を得ることができる。これは、吐出を行わない波形として一定波形を用いた場合には、この一定波形は、吐出をなし得る波形の合成に寄与しないのに対し、吐出を行わない波形として所定の起伏をもった波形を用いた場合には、この起伏が部分的に波形合成に寄与し得るからである。例えば、図15に示した比較例では、一定波形である駆動信号145−1が寄与して新たに合成された波形はα1,β1の2つだけであるのに対し、図11の例では、基本の駆動信号145−3が寄与して新たに合成された波形はα2,β2およびγ1〜γ4の6つの波形であり、後者では、基本の駆動信号145−3が多くの新たな波形の合成に寄与している。すなわち、基本波形の数が同じならば、より多くの駆動信号波形を合成することができ、得られるインク滴サイズの種類も増加する。言い換えると、画像表現に必要なインク滴サイズの種類数が同じであれば、用意すべき基本の駆動信号数は少なくて済むことになる。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、元の基本波形数をはるかに超える数の波形を得ることができるので、駆動波形生成部142によってさほど多数の波形を生成しなくとも多様なインク滴吐出制御が可能となる。このため、駆動波形生成部142、ひいてはヘッドコントローラ14の負荷を軽減することができる。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
【0063】
本実施の形態は、図1に示した駆動波形生成部142が、図5に示した駆動信号145−1〜145−Nに代えて図16に示したような波形の駆動信号245−1〜245−Nを生成し出力するようにしたものである。その他の基本構成は上記実施の形態の場合と同様である。なお、以下の説明では、駆動信号245−1〜245−Nおよびその他必要な場合を除き、上記第1の実施の形態で用いた符号と同符号を使用するものとする。
【0064】
図16において、(a)は駆動信号245−1、(b)は駆動信号245−2、(c)は駆動信号245−3、(d)は駆動信号245−Nを表す。この図で、縦軸は電圧、横軸は時間を表し、時間は図の左から右方向へと進むものとする。これらの駆動信号245−1〜245−Nは、それぞれ固有の起伏を有する波形であり、基準の電圧0Vのほかに電圧V1とV2(i)とを取り得るようになっている。ここで、i=1,2,…Nである。
【0065】
図16に示したように、各駆動信号の一周期の両端部は、周期ごとに波形の選択を切り替える場合の切替タイミングtsに対応する。これらの各駆動信号の選択は、波形選択部141−1〜141−nによって周期ごとに(切替タイミングtsで)適宜切り替えられるほか、周期内の複数の切替タイミングts′においても切り替え可能になっている。ここで、各切替タイミングts′によって1周期を分割したときの各期間を後ろから順にそれぞれτ1〜τMと表す。ここに、N=2のときはM=5、Nが3以上のときはM=N+2である。
【0066】
次に、図17を参照して、駆動信号245−1〜245−Nの波形の意義について説明する。この図は、上記第1の実施の形態における図6に対応するもので、駆動信号245−1〜245−Nを一般化した波形と、圧電素子116の挙動と、ノズル118内におけるメニスカス位置の変化との関係を表すものである。この図の(a)は駆動信号の波形を表し、このうち、切替タイミングtsによって区切られた部分がその1周期分の波形に相当する。図16にも示したように、符号tsは周期ごとの切替タイミングを表し、符号ts′は周期内での切替タイミングを表す。(b)は図16(a)に示したような駆動信号がそのまま圧電素子116に印加されたときのインク室114の状態変化を表し、(c)はそのときのノズル118内におけるメニスカス位置の変化を表す。なお、(a)では、説明の便宜上、同一波形の駆動信号の繰り返しを図示し、また、(c)では、ノズル開口端を上にしてノズル118を描いている。
【0067】
図17(a)において、まず、駆動電圧を基準の電圧0Vから第1の電圧V1(=一定)に変化させる行程(AからBまで)を第1の前行程とし、電圧V1を一定時間保持する行程(BからCまで)を第2の前行程とする。また、駆動電圧を第1の電圧V1から電圧0Vに変化させる行程(CからDまで)を第1行程とし、これに要する時間をt1とする。また、電圧0Vを保持して待機する行程(DからEまで)を第2行程とし、これに要する時間をt2とする。さらに、電圧0Vから第2の電圧V2に変化させる行程(EからFまで)を第3行程とし、これに要する時間をt3とする。なお、以下の説明では、上記第1の実施の形態と同様、第1の電圧V1を引き込み電圧といい、第2の電圧V2を吐出電圧という。
【0068】
本実施の形態において、第3行程の開始時点である時点E等は、吐出が開始されるタイミング(吐出開始タイミングte)であると同時に、切替タイミングts′にもなっており、このタイミングに先立って第1の前行程、第2の前行程、第1行程、および第2行程が行われるようになっている。
【0069】
まず、時点Aおよびそれ以前においては、圧電素子122への印加電圧は0Vであるので、図17(b)の状態PA のように、振動プレート113にたわみはなく、インク室114の容積は最大となっている。時点Aにおいて、ノズル118内におけるメニスカス位置は、図17(c)の状態MA に示したように、ノズル開口端から所定距離だけ後退した所に位置しているものとする。
【0070】
次に、時点Aの電圧0Vから時点Bの電圧V1へと駆動電圧をゆっくりと増加させる第1の前行程を行うと、振動プレート113が内側にたわみ、インク室114は少し収縮する(図17(b)の状態PB )。このときのインク室114の収縮速度はゆっくりとしたものなので、インク室114の容積の減少分は、ノズル118内のメニスカス位置を前進させると同時に、図3に示した共同流路115へのインクの逆流をも引き起こす。このときのインクの前進量と逆流量との比は、主として、ノズル118内の流路抵抗と、インク室114と共同流路115とをつなぐ狭路における流路抵抗との比によって決まるが、これを最適化することにより、図17(c)の状態MB で示したように、時点Bでのメニスカス位置がノズル開口端から突出することなく、ノズル開口端とほぼ同じ位置にくるように設定することができる。
【0071】
次に、時点Bから時点Cまでの間、駆動電圧をV1に保持することでインク室114の容積を一定に保つ第2の前行程を行う。ところが、この間もインクカートリッジ12からのインク供給は連続的に行われているので、ノズル118内におけるメニスカス位置はノズル開口端に向かって変位し、時点Cでは、例えば図17(c)の状態MC で示したように、ノズル開口端よりもやや突出した位置まで前進する。
【0072】
次に、時点Cの電圧V1から時点Bの電圧0Vへと駆動電圧を減少させる第1行程を行うと、圧電素子116への印加電圧が0になるので振動プレート113のたわみがなくなり、インク室114は膨張する(図17(b)の状態PD )。このため、ノズル118内のメニスカスはインク室114の方向に引き込まれ、時点Dでは、例えば図17(c)の状態MD に示したように後退する(すなわち、ノズル開口端から遠ざかる)。
【0073】
ここで、第1の実施の形態の場合と同様に、時点Cと時点Dとにおける電位差(引き込み電圧V1)の大きさを変更することにより第1行程におけるメニスカスの引き込み量が変化するので、これによりインク滴のサイズを制御することが可能である。
【0074】
次に、時点Dから時点Eまでの時間t2の間、駆動電圧を0Vに固定して振動プレート113cをたわみがない状態に維持することでインク室114の容積を一定に保つ第2行程を行う(図17(c)の状態PD 〜PE )。ところが、この間もインクカートリッジ12からのインク供給は連続的に行われているので、ノズル118内のメニスカス位置はノズル開口端に向かって変位し、時点Eでは、例えば図17(c)の状態ME に示した位置まで前進する。
【0075】
ここで、第1の実施の形態の場合と同様に、第2行程の所要時間t2を変更することによりメニスカス位置の前進量が変化し、第3行程の開始時点におけるメニスカス位置を調整することができるので、これにより、吐出されるインク滴のサイズを制御することが可能である。
【0076】
次に、時点Eの電圧0Vから時点Fの吐出電圧V2へと駆動電圧を急激に増大させる第3行程を行う。ここで、時点Eは、上記したように、吐出開始タイミングteである。このとき、時点Fにおいて振動プレート113は図17(b)の状態PF に示したように内側に大きくたわみ、インク室114は急激に収縮するので、図17(c)の状態MF に示したように、ノズル118内のメニスカスはノズル開口端に向かって一気に押され、ここからインク滴として吐出される。吐出されたインク滴は空気中を飛翔し、記録用紙2(図2)上に着弾する。
【0077】
その後、駆動電圧を再び0Vまで減少させて振動プレート113をたわみのない状態に戻し(図17(b)の状態PG )、この状態を次の吐出動作における第1前行程の開始時点Hまで維持する。駆動電圧を再び0Vに減少させた直後の時点Gにおいては、図17(c)の状態MG に示したように、吐出されたインク滴の体積とインク室114の容積の増加分とを加えた体積に相当する分だけメニスカス位置が後退した状態となるが、その後も行われるインクの充填(リフィル)により、次回の吐出動作における第1の前行程の開始時点Hのメニスカス位置は、図17(c)の状態MH に示したように、当初の時点Aにおける状態MA と同じになる。
【0078】
このようにして1回の吐出動作が終了する。以下、このようなサイクル動作を各ノズル118ごとに並行してそれぞれ繰り返し行うことで、記録用紙2(図2)への画像記録が連続的に行われる。
【0079】
さて、再び図16に戻って、駆動信号245−1〜245−Nの特徴について説明する。この図に示した例では、駆動信号245−i(i=1〜(N−1))は、サフィックスiが大きくなるほど、後述する波形合成後に第2行程所要時間となるべき時間t1(i)が長くなるように(すなわち、図17の時点A〜Dで示した行程区間がより前方にくるように)設定されている。また、第3行程における吐出電圧となるべき電圧V2(i)については、サフィックスiが大きい駆動信号245−iほど、値が小さくなるように設定されている。また、駆動信号245−Nは、(M−1)個の切替タイミングts′のうち最も早い切替タイミングts′(区間τMの後端)で電圧V1から0Vに変化したのち、吐出開始時点となるべき時点を先端とする区間τ2の後端(すなわち、区間τ1の先端)に向かってV2(N)まで緩やかに増加するような波形を有し、この駆動信号によってはインク滴吐出が行われないようになっている。
【0080】
但し、合成後に第2工程所要時間となるべき時間の最大値t1(N)は第1工程で引き込まれたメニスカスがノズル開口端に到達するまでの所要時間以下であるとし、第3工程の吐出電圧となるべき電圧の最小値V2(N)はインク滴を吐出させるに足る範囲に入っているものとし、第3工程となるべき区間の電圧変化の傾きはすべて等しいものとする。
【0081】
図16において、第2行程所要時間となるべき時間t1(i)に着目すれば、サフィックスiが大きい駆動信号ほど、それにより合成される駆動信号はより大きなサイズのインク滴を吐出するものとなる。一方、吐出電圧となるべき電圧V2(i)に着目すれば、サフィックスiが大きい駆動信号ほど、それにより合成される駆動信号はより小さなサイズのインク滴を吐出するものとなる。したがって、後述するように、第2行程所要時間となるべき時間t1(i)および吐出電圧となるべき電圧V2(i)の大きさを両者のバランスを適切に考慮して設定すると共に、後述するように、これらの駆動信号の選択を周期ごとに(すなわち、切替タイミングtsで)、および周期内の所定のタイミング(切替タイミングts′)で切り替えて各ノズルの圧電素子に印加することにより、様々なサイズのインク滴が吐出可能となる。
【0082】
図18は駆動波形生成部142から出力される駆動信号の一具体例を表すもので、図16においてN=2とした場合を示している。この場合、駆動波形生成部142は、駆動信号245−1(図8(a))および一定電圧ではないがインク滴吐出をなし得ない程度の緩やかな勾配をもった駆動信号245−2(同図(b))という2つの駆動信号を出力する。この例では、周期内の切替タイミングts′を4カ所設定し、これにより、1つの周期を5つの区間τ1〜τ5に分割するようになっている。ここで、これらの2つの駆動信号245−1,245−2の選択の切り替えは、周期ごとの切替タイミングtsのみならず吐出周期内の切替タイミングts′においても行われるものとする。
【0083】
この例では、周期ごとの切替タイミングtsおよび周期内の切替タイミングts′において駆動信号245−1,245−2の選択を切り替えて出力することにより、図19に示したように、基本の駆動信号の数よりも多い7種類の駆動信号波形が得られる。この図で、「合成波形の作り方τ1〜τ5」の各欄に記載した「1」,「2」は、それぞれ、駆動信号245−1,245−2を選択することを意味する。具体的には、波形α1は、区間τ4として駆動信号245−2を選択すると共に他のすべての区間として駆動信号245−1を選択して作られており、また、波形α2は、区間τ5およびτ4として駆動信号245−2を選択すると共に他のすべての区間として駆動信号245−1を選択して作られている。波形α3はすべての区間で駆動信号245−1を選択して作られている。波形β1〜β3についても同様である。「吐出せず」なる波形はすべての区間で駆動信号245−2を選択したものである。したがって、波形α1,α2,およびβ1〜β3は新たに作られた合成波形であり、波形α3および「吐出せず」なる波形はそれぞれ図18に示した駆動信号245−1および245−2と同じものとなる。ここで、αグループについて見ると、波形α1ではメニスカスの引き込み工程を行わずに吐出を行うようになっており、また、波形α3の第2行程所要時間t1(1)は波形α2の第2行程所要時間t1(2)よりも小さいので、得られるインク滴のサイズは波形α1からα3に向かうにつれて次第に小さくなる。同様に、βグループについて見ると、得られるインク滴のサイズは波形β1からβ3に向かうにつれて次第に小さくなる。また、「吐出せず」なる波形では、電圧V2(2)の値が小さく、かつ0Vから電圧V2(2)まで変化する勾配が緩いため、ノズル118からインク滴は吐出されない。
【0084】
図20は駆動波形生成部142から出力される駆動信号の他の具体例を表すもので、図16においてN=3とした場合を示している。この場合、動波形生成部142は、駆動信号245−1(図20(a))、駆動信号245−2(同図(b))および駆動信号245−3(同図(c))という3つの駆動信号を出力する。この例では、周期内の切替タイミングts′を4カ所設定し、これにより、1つの周期を5つの区間τ1〜τ5に分割可能になっている。ここで、これらの3つの駆動信号の選択は、周期ごとの切替タイミングtsのみならず吐出周期内の切替タイミングts′においても切り替えられるものとする。
【0085】
この例では、周期ごとの切替タイミングtsおよび周期内の切替タイミングts′において駆動信号245−1〜245−3の選択を切り替えて出力することにより、図21に示したような13種類の駆動信号波形が得られる。この図で、「合成波形の作り方τ1〜τ5」の各欄に記載した「1」,「2」,「3」は、それぞれ、駆動信号245−1,245−2,245−3を選択することを意味する。ここで、但し、波形α4,β3および「吐出せず」なる波形は、それぞれ、基本の駆動信号245−1,245−2,245−3の波形と同じものである。
【0086】
図21に示したように、波形α1〜α4のグループについて見ると、吐出されるインク滴のサイズはα1からα4に向かって次第に小さくなる。同様に、波形β1〜β4のグループでは、吐出されるインク滴のサイズはβ1からβ4に向かって次第に小さくなり、波形γ1〜γ4のグループでは、吐出されるインク滴のサイズはγ1からγ4に向かって次第に小さくなる。また、波形α1〜α4のグループから波形γ1〜γ4までの各グループにおける同一サフィックスの波形同士を比較すると、αグループからγグループに向かうにつれてインク滴は小さくなる。
【0087】
このように、図20および図21に示した例では、基本の3つの駆動信号を周期ごとおよび周期内の所定のタイミングで切り替えるようにしたので、元の信号数よりもはるかに多い13種類の駆動信号波形を作り出すことができる。
【0088】
以上の例(図18〜図21)では、N=2およびN=3の場合について説明したが、より一般的には、一定電圧波形ではないがインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含むN個の駆動信号を基本波形として用いて波形合成を行うことにより、[(N+1)N+1]個の波形を得ることができる。以下、この点を詳しく説明する。
【0089】
図22は、N個の駆動信号を基本波形として用いたときの合成波形の作り方を表すものである。この図で、「合成波形の作り方τ1〜τM」の各欄に記載した「1」,「2」,「3」,…「N」は、それぞれ、駆動信号245−1,245−2,245−3,…245−Nを選択することを意味する。
【0090】
この図に示したように、本例では、合成波形として、αグループからζグループまでのN個のグループの波形と、1個の「吐出せず」なる波形とが作られる。αグループの波形はすべて、区間τ2,τ1として共に駆動信号245−1を選択して作られたものである。このうち、波形α1からαNについて見ると、区間τ3としてはいずれも駆動信号245−2が選択されているが、区間τM〜τ4については、波形αNの区間τ4を起点として図中の対角線に沿って右下から左上の方向へ駆動信号245−iのサフィックスiが2からNまで順にインクリメントするように設定されると共に、その他の部分ではすべて駆動信号245−1が選択されている。また、波形α(N+1)は、区間τM〜τ3としてすべて駆動信号245−1を選択して作られている。
【0091】
また、βグループの波形はすべて、区間τ2,τ1として共に駆動信号245−2を選択して作られたものであり、その他の区間についての作り方はαグループと同様である。また、ζグループの波形はすべて、区間τ2,τ1としてそれぞれ駆動信号245−1,245−Nを選択して作られたものであり、その他の区間についての作り方はαグループと同様である。
【0092】
その他のグループの波形の作り方も同様である。このようにして、αグループからζグループまで、それぞれ(N+1)個の波形からなるN個のグループが作られる。したがって、これに「吐出せず」なる波形を加えると、作られる合成波形の総数は、上記したように、[N(N+1)+1]個となる。
【0093】
図22において、波形α1〜α(N+1)のグループについて見ると、吐出電圧はV2(1)で同一であるが、波形α1ではメニスカスの引き込みを行わず、また、波形α2からα(N+1)に向かうにつれて第2行程所要時間t1(i)は徐々に小さくなっているので、吐出されるインク滴のサイズはα1からα(N+1)に向かって次第に小さくなる。同様に、波形β1〜β(N+1)のグループについて見ると、吐出されるインク滴のサイズはβ1からβ(N+1)に向かって次第に小さくなる。波形ζ1〜ζ(N+1)のグループ、およびその他のグループについても同様である。また、波形α1〜α(N+1)のグループから波形ζ1〜ζ(N+1)までの各グループにおける同一サフィックスの波形同士を比較すると、各々の第2行程所要時間t1(i)は等しいが、αグループからζグループに向かうにつれて吐出電圧V2(i)は徐々に小さくなるので、この順でインク滴サイズも小さくなる。
【0094】
このように、本実施の形態においても、元の基本波形の数をはるかに超える数の波形を得ることができるので、駆動波形生成部142によってさほど多数の波形を生成しなくとも多様なインク滴吐出制御が可能となり、駆動波形生成部142、ひいてはヘッドコントローラ14の負荷を軽減することができる。
【0095】
以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、種々変更可能である。例えば、上記の各実施の形態では、図5および図16に示したような駆動信号を基本波形として採用することとしたが、他の波形の信号を用いるようにしてもよい。
【0096】
また、上記の各実施の形態では、インク滴サイズの制御に重点を置いて波形の選択合成等を行う場合について説明したが、これとは異なり、インク滴の飛翔速度の制御に重点を置いて波形の選択合成等を行うようにしてもよい。さらに、インク滴のサイズおよび飛翔速度の双方を制御する目的で波形の選択合成等を行うようにすることも可能である。
【0097】
また、上記の各実施の形態では、吐出周期ごとのみならず吐出周期内においても駆動信号の選択を切り替えるようにしたが、いずれか一方のタイミングでのみ切り替えるようにしてもよい。但し、両方のタイミングで切り替えを行うようにした方が、より多くの波形を得ることができる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1および請求項2記載のインクジェットプリンタ、ならびに請求項3および請求項4記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置および請求項5および請求項6記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法によれば、一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中から時分割的に選択すると共に、選択した駆動信号をインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えて吐出エネルギー発生手段に供給し、この駆動信号によってノズル部からのインク滴吐出を制御するようにしたので、時間的に異なる波形の駆動信号による吐出動作が可能となるだけでなく、元の駆動信号の波形と異なる波形の駆動信号を得ることが可能となり、インク滴の吐出状態を様々に変化させることができる。
【0099】
特に、本請求項では、一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を用いるようにしたので、この所定波形の一部も新たな波形の合成に利用されることとなり、非吐出用駆動信号として一定電圧波形を用いた場合と比べると、少ない種類の駆動信号からより多くの駆動波形を合成することができる。このため、より多様性のあるインク滴吐出制御を行うことができ、例えば自然な階調表現等、多様な画像表現を忠実に行うことができる。したがって、より高品質の印刷出力を得ることが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置としてのヘッドコントローラの概略構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を表すブロック図である。
【図3】記録ヘッドの一構造例を表す斜視断面図である。
【図4】記録ヘッドの一構造例を表す断面図である。
【図5】図1における駆動波形生成部から出力される駆動信号の波形の一例を表す図である。
【図6】図5に示した駆動信号の波形とインク室の状態およびノズル内のメニスカス位置の変化との関係を説明するための図である。
【図7】ヘッドコントローラの主な動作を説明するための流れ図である。
【図8】図5に示した駆動信号の一具体例を表す図である。
【図9】図8に示した駆動信号から合成される波形の一例を表す図である。
【図10】図5に示した駆動信号の他の具体例を表す図である。
【図11】図10に示した駆動信号から合成される波形の一例を表す図である。
【図12】図10に示した3つの駆動信号から新たな駆動信号が合成される様子を表す図である。
【図13】図5の複数の駆動信号を基にした合成波形の作り方を表す図である。
【図14】本実施の形態に対する比較例における駆動信号の波形を表す図である。
【図15】図14に示した駆動信号から合成される駆動信号の波形を表す図である。
【図16】本発明の他の実施の形態に係るインクジェットプリンタ、ならびにインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置および方法に使用される駆動信号の波形を表す図である。
【図17】図16に示した駆動信号の波形とインク室の状態およびノズル内のメニスカス位置の変化との関係を説明するための図である。
【図18】図16に示した駆動信号の一具体例を表す図である。
【図19】図18に示した駆動信号から合成される波形の一例を表す図である。
【図20】図16に示した駆動信号の他の具体例を表す図である。
【図21】図20に示した駆動信号から合成される波形の一例を表す図である。
【図22】図16の複数の駆動信号を基にした合成波形の作り方を表す図である。
【図23】従来のインクジェットプリンタにおける記録ヘッドおよびその駆動回路の概略構成を表すブロック図である。
【符号の説明】
1…インクジェットプリンタ、2…記録用紙、11…記録ヘッド、12…インクカートリッジ、14…ヘッドコントローラ、21…駆動信号、22…印画データ、113…振動プレート、114…インク室、115…共同流路、116…圧電素子、118…ノズル、141−1〜141−n…波形選択部、142…駆動波形生成部、143…駆動波形選択制御部、145−1〜145−N…駆動信号、146−1〜146−n…波形選択信号、V1…引き込み電圧、V2…吐出電圧、t1…第1行程の所要時間、t2…第2行程の所要時間、t3…第3行程の所要時間、ts,ts′…切替タイミング、te…吐出開始タイミング
Claims (6)
- インク滴を吐出するためのノズル部と、
前記ノズル部からインク滴を吐出させるためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生手段と、
一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中から、いずれかを時分割的に選択すると共に、選択した駆動信号をインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えて前記吐出エネルギー発生手段に供給する選択手段と
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記選択手段は、さらに、インク滴の吐出周期ごとに駆動信号の選択を切り替える
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。 - インク滴を吐出するためのノズル部と、前記ノズル部からインク滴を吐出させるためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生手段とを備えたインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置であって、
一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中から、いずれかを時分割的に選択すると共に、選択した駆動信号をインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えて前記吐出エネルギー発生手段に供給する選択手段
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置。 - 前記選択手段は、さらに、インク滴の吐出周期ごとに駆動信号の選択を切り替える
ことを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動装置。 - インク滴を吐出するためのノズル部と、前記ノズル部からインク滴を吐出させるためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生手段とを備えたインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法であって、
一定電圧波形ではないがそれ単独ではインク滴を吐出させることのない所定波形の駆動信号を含む複数の駆動信号の中から、いずれかを時分割的に選択すると共に、選択した駆動信号をインク滴の吐出周期内において所定タイミングで切り替えて前記吐出エネルギー発生手段に供給する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。 - 前記駆動信号の選択は、さらに、インク滴の吐出周期ごとに切り替えられる
ことを特徴とする請求項5記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
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- 1998-08-24 US US09/138,977 patent/US6283568B1/en not_active Expired - Lifetime
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JPH1178005A (ja) | 1999-03-23 |
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