JP3802515B2 - 重荷重用タイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビード部でのカーカスプロファイルを改善することにより、タイヤ接地面形状を悪化させることなく、ビード耐久性を向上させた重荷重用タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】
例えばトラック、バス用等の重荷重用タイヤでは、充填する空気圧が高く、かつ負荷荷重が大きいなど使用条件が特に過酷である。そのため、図3(A)に示すように、ビード部aは、ビードエーペックスゴムbの大型化等によって強化され、その肉厚は非常に厚いものとなっている。従って、カーカスプライcは、一般に、ビードコアdの上方領域yにおいて、タイヤ外側に円弧中心oを有する凹円弧状に湾曲するなど、タイヤ軸方向線に対して大きな角度で立ち上がる。
【0003】
しかしこのようなタイヤでは、正規内圧充填時、カーカスプライcが凸円弧状に丸く膨らもうとするため、前記湾曲する部分c1に大きな歪みが集中的に発生するなど、ビード損傷を招きやすいという問題がある。
【0004】
これに対して近年、図3(B)に示すように、ビードエーペックスゴムbのボリュウム及び高さを大巾に減じ、ビード部aをスリム化したタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−11715号
【0006】
このスリム化したタイヤは、軽量化を達成する以外に、カーカスプライcが、前記上方領域yにおいても凹円弧状或いは略直線状をなすため、正規内圧充填時の歪みの発生を低く抑えることができ、ビード損傷を効果的に抑制しうるという利点を有する。しかしその反面、正規内圧充填時、カーカスプライcの全体が丸く膨らもうとするため、トレッドショルダー域のカーカスプライcを半径方向内側に押し下げる力が働く。その結果、トレッド曲率半径が減じ、トレッドショルダー域における接地長さを短くするなど、該トレッドショルダー域に偏摩耗を発生させるという問題が生じる。
【0007】
そこで本発明は、トレッドショルダー域における偏摩耗を抑制しつつ、ビード損傷を防止でき、ビード耐久性を向上しうる重荷重用タイヤの提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部に、前記ビードコアの廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部を一連に設けたカーカスプライを有する重荷重用タイヤであって、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧の5%の内圧を充填した状態におけるタイヤ子午断面において、
前記ビードコアは、その子午断面において正規リムJのリムシートJ1と平行となる半径方向内面Sを有し、
前記ビードコアの中心点を通って半径方向にのびる縦基準線が前記プライ本体部の外面にビード部の側で交わる交点Paと、ビードコアの前記中心点を通って前記ビードコアの前記半径方向内面と平行にのびる横基準線が前記プライ本体部の外面に交わる交点Pbとを通る傾き線が前記横基準線となす角度θを52〜58°としたことを特徴としている。
【0009】
又請求項2の発明では、前記プライ本体部は、該プライ本体部の外面がタイヤ軸方向外方に最も張り出す最大幅点から半径方向内方にのびる円弧状部A1と、前記最大幅点から半径方向外方にのびる円弧状部A2とを有するとともに、前記円弧状部A1の曲率半径r1を、円弧状部A2の曲率半径r2よりも大としたことを特徴としている。
【0010】
又請求項3の発明では、前記カーカスプライのプライ折返し部は、前記ビードコアの周面に沿って巻き付けられるとともにビードコアとビードエーペックスゴムとの間に狭持されて途切れることを特徴としている。
【0011】
なお本明細書において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。また前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" を意味する。
【0012】
又本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、前記正規内圧の5%の内圧を充填した5%正規内圧状態で特定される値とする。なお前記5%正規内圧状態でのタイヤ形状は、通常、加硫金型内でのタイヤ形状と略一致している。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。
図1は、本発明の重荷重用タイヤが、トラック・バス用等のチューブレスタイヤである場合の5%正規内圧状態を示す断面図、図2はそのビード部を拡大して示す断面図である。
【0014】
図1において、重荷重用タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内方に配されるベルト層7とを具備して構成される。
【0015】
前記ベルト層7は、ベルトコードを用いた2枚以上(重荷重用タイヤの場合は3枚以上)のベルトプライから形成される。本例では、ベルト層7が、スチールコードをタイヤ周方向に対して例えば60±15°の角度で配列した半径方向最内側の第1のベルトプライ7Aと、タイヤ周方向に対して例えば10〜35°の小角度で配列した第2〜4のベルトプライ7B〜7Dとの4枚構造の場合を例示している。このベルトプライ7A〜7Dは、ベルトコードがプライ間で互いに交差する箇所を1箇所以上設けて重置されることにより、ベルト剛性を高めトレッド部2をタガ効果を有して補強している。
【0016】
又前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して70〜90°の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aから形成される。カーカスコードとして、スチールコードが好適であるが、必要に応じてナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミドなどの有機繊維コードも使用される。又前記カーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間に跨るプライ本体部6aの両側に、前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されて係止されるプライ折返し部6bを一連に具える。
【0017】
前記ビードコア5は、図2に示すように、例えばスチール製のビードワイヤを多段多列に巻回してなるリング状体であって、本例では、断面横長の偏平六角形状のものを例示する。このビードコア5は、その子午断面における半径方向内面Sが正規リムJのリムシートJ1と略平行となることによって、リムとの嵌合力を広範囲に亘って高めている。なおビードコア5の断面形状としては、必要に応じて、正六角形、矩形状なども採用できるが、正規リムJのリムシートJ1と平行となる子午断面における半径方向内面Sを具える。なお平行とはいわゆる略平行であることをいう。
【0018】
又本例では、前記カーカス6のプライ折返し部6bが、このビードコア5の周面に沿って巻き付けられるとともに、その端部Eが前記ビードコア5とビードエーペックスゴム8との間で狭持されて途切れるものを例示している。なおビードエーペックスゴム8は、ゴム硬度(デュロメータA硬さ)を60〜99度とした断面三角形状の硬質ゴムからなり、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外方に延在し、ビード部4からサイドウォール部3にかけて補強する。
【0019】
このような巻き付けのカーカスプライ6Aでは、そのプライ折返し部6bがビードコア5の周囲で途切れるため、タイヤ変形時の応力がその端部Eに作用し難くなる。従って、該端部Eを起点としたコードルースを効果的に抑制できる。しかも、プライ折返し部6bを実質的に短く形成しうるためタイヤ軽量化にも大きく貢献しうる。又前記端部Eが、ビードコア5とビードエーペックスゴム8との間で挟まれて強固に係止されるため、カーカスプライ6Aの吹き抜け現象を確実に防止でき、又加硫成形時にカーカスコードテンションが不均一に弛んでユニフォミティーが低下するのを抑制しうる。
【0020】
そして本発明では、ビードコア5上でのプライ本体部6aの傾きを適正化することによって、トレッドショルダー域における偏摩耗の抑制と、ビード損傷の抑制との両立を達成している。
【0021】
詳しくは、前記ビードコア5の中心点5Cを通って半径方向にのびる縦基準線Xが、前記プライ本体部6aの外面にビード部4の側で交わる交点をPaとし、かつ前記中心点5Cを通ってビードコア5の前記半径方向内面Sと平行にのびる横基準線Yが前記プライ本体部6aの外面に交わる交点をPbとしたとき、前記交点Paと交点Pbとを通る傾き線Kが前記横基準線Yとなす角度θを50〜60°の範囲に規制している。なお前記「中心点5C」とは、ビードコア5の断面における重心、即ち図心を意味する。
【0022】
このように前記角度θを60°以下とすることにより、ビードコア5の上方領域yにおいて、プライ本体部6aのプロファイルを正規内圧充填時におけるプロファイルに適度に近づけることができる。その結果、正規内圧充填時、前記上方領域yに発生するプライ本体部6aの歪みが低く抑えられ、該領域yでのビード損傷を抑制することが可能となる。特に、前記角度θが58°以下の時、ビード損傷の抑制効果がより高く発揮できる。
【0023】
なお前記角度θが60°を越えると、前記上方領域yでのプライ本体部6aの歪みが大となり、ビード損傷を抑制することができなくなる。
【0024】
逆に前記角度θは、50°以上であることにより、正規内圧充填時にトレッドショルダー域Ts(図1に示す)のカーカスプライ6aを半径方向内側に押し下げる力が小となる。その結果、トレッド曲率半径Rtの減少が抑えられ、トレッドショルダー域Tsにおける接地長さが維持されるなど、該トレッドショルダー域Tsでの偏摩耗を抑制できる。特に、前記角度θが52°以上の時、偏摩耗の抑制効果的がより高く発揮できる。なお前記角度θが50°未満では、トレッド曲率半径Rtの減少を抑えることができなくなる。
【0025】
このような観点から、本願発明では前記角度θは52〜58°を採用している。
【0026】
なおビード損傷の抑制のためには、本例の如く、前記プライ本体部6aを、前記上方領域yにおいて略直線状に形成するのも好ましい。又前記プライ本体部6aの外面がタイヤ軸方向外方に最も張り出す最大幅点をPmとしたとき、本例では、サイドウォール部3におけるプライ本体部6aが、前記最大幅点Pmから半径方向内方にのびる円弧状部A1の曲率半径r1を、半径方向外方にのびる円弧状部A2の曲率半径r2よりも大、好ましくは比r1/r2を1.5〜2.0(指示書図面では約1.75)とした上膨れの輪郭形状を有する場合を例示している。このとき、前記最大幅点PmのビードベースラインBLからの距離h1は、タイヤ断面高さHの50%よりも大であり、このような上膨れの輪郭形状は、正規内圧充填時におけるトレッド曲率半径Rtの減少を抑えるのに好ましい。なお前記「ビードベースラインBL」とは、タイヤが基づく規格で定まるリム径位置を通るタイヤ軸方向線を意味する。
【0027】
又前記ビード部4にはビード外皮をなすリムズレ防止用のクリンチゴム9が配されるが、このクリンチゴム9のゴム硬度(デュロメータA硬さ)は、70〜85°かつ前記ビードエーペックスゴム8のゴム硬度よりも小としている。そして本例では、このクリンチゴム9と前記ビードエーペックスゴム8とは接することがなく、この間に、前記クリンチゴム9よりもさらに軟質のサイドウォールゴム3Gの下端部分が剣先状に介在することにより、剪断応力を緩和し三者の層間剥離を抑制している。
【0028】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることはなく、例えばカーカス6のプライ折返し部6bを、ビードエーペックスゴム8のタイヤ軸方向外側面に沿って巻き上げる従来的な構造としても良い。又5%正規内圧状態におけるトレッド面の輪郭形状は、単一円弧とした所謂シングルラジアス、或いはトレッドショルダー域Tsの曲率半径をトレッド中央域Tcの曲率半径よりも大とした所謂ダブルラジアスとしたものでも良く、さらにはトレッドショルダー域Tsを直線状に形成したものでも良いなど、発明は種々の態様に変形して実施することができる。
【0029】
【実施例】
図1の構造をなすタイヤサイズが11R22.5の重荷重用ラジアルタイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤの、偏摩耗性能及びビード耐久性をテストし互いに比較した。表1以外の仕様は互いに同仕様としている。なお実施例1、2、傾き角θが51度であり請求項1の要件とは僅かに異なる参考例1,及び傾き角度θが62度、48度である比較例1,2を合わせて示している。比較例1、2では、カーカスのプライ折返し部は、図2の如くビードコアの周面に沿って巻き付けた構造をなす。又実施例3は、ビードエーペックスゴムの外側面に沿って巻き上げる従来的な構造としている。
【0030】
又各タイヤは、14mmの溝深さを有する4本の縦主溝からなる5本のリブタイプのトレッドパターンを具え、5%正規内圧状態におけるトレッド曲率半径Rtは700mmとしている。
【0031】
(1)偏摩耗性能;
タイヤをリム(7.50×22.5)、内圧(700kPa)にて、2/2−D車両(積載荷重10トン積み)の全輪に装着し、定積状態においてアスファルト路を10万km走行した。走行後、タイヤ軸方向最内側の縦主溝における残溝量δcと、タイヤ軸方向最外側の縦主溝における残溝量δsとの差(δc−δs)を、比較例1を100とした指数で示した。値が小さいほど、ショルダー摩耗が少なく偏摩耗性に優れている。
【0032】
(2)ビード耐久性;
ドラム試験機を用い、タイヤをリム(7.50×22.5)、内圧(700kPa)、荷重(26.72kN×3)の条件下にて、速度30km/hで走行させ、ビード部に損傷が発生するまでの走行時間を、比較例1を100とした指数で示した。値が大なほど耐久性に優れている。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明は叙上の如く構成しているため、トレッドショルダー域における偏摩耗を抑制しつつ、ビード損傷を防止でき、ビード耐久性を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の空気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。
【図2】 そのビード部を拡大して示す断面図である。
【図3】 (A)、(B)は、従来のビード構造を説明するビード部の断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
5C 中心点
6A カーカスプライ
6a プライ本体部
6b プライ折返し部
8 ビードエーペックスゴム
K 傾き線
X 縦基準線
Y 横基準線
Claims (3)
- トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部に、前記ビードコアの廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部を一連に設けたカーカスプライを有する重荷重用タイヤであって、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧の5%の内圧を充填した状態におけるタイヤ子午断面において、
前記ビードコアは、その子午断面において正規リムJのリムシートJ1と平行となる半径方向内面Sを有し、
前記ビードコアの中心点を通って半径方向にのびる縦基準線が前記プライ本体部の外面にビード部の側で交わる交点Paと、ビードコアの前記中心点を通って前記ビードコアの前記半径方向内面と平行にのびる横基準線が前記プライ本体部の外面に交わる交点Pbとを通る傾き線が前記横基準線となす角度θを52〜58°としたことを特徴とする重荷重用タイヤ。 - 前記プライ本体部は、該プライ本体部の外面がタイヤ軸方向外方に最も張り出す最大幅点から半径方向内方にのびる円弧状部A1と、前記最大幅点から半径方向外方にのびる円弧状部A2とを有するとともに、前記円弧状部A1の曲率半径r1を、円弧状部A2の曲率半径r2よりも大としたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記カーカスプライのプライ折返し部は、前記ビードコアの周面に沿って巻き付けられるとともにビードコアとビードエーペックスゴムとの間に狭持されて途切れることを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
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