JP3801482B2 - 水平偏向高圧発生回路 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビジョン受像機もしくはディスプレイ装置において用いられる、カソードレイチューブ(CRT)の水平偏向コイルに流れる水平偏向電流を制御すると共に、CRTのアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビジョン受信機もしくはディスプレイ装置などの映像装置は、一般に、フライバックトランスを有する高電圧生成回路を備える。この高電圧生成回路は、CRTの偏向コイルに対して偏向電流を流す機能と、CRTのアノード電極に対して高電圧を供給する機能とを有する。特に、これら2つの機能を1つのフライバックトランスを介して実現するようにしたものが、偏向高圧一体型の電圧制御回路(以下、「水平偏向高圧発生回路」と呼ぶ。)である。
【0003】
CRTのアノード電極に印加される高電圧は、特にカソード電極に印加される映像信号に起因して変動する。水平偏向高圧発生回路を備える映像装置においては、CRTのアノード電極に印加される高電圧の変動は、基本的にはCRTの偏向コイルを流れる偏向電流には影響を及ぼさず、偏向電流は安定である。しかし、CRTのアノード電極に印加される高電圧が変動した場合は偏向感度が変動することになり、CRT管面上の画像が変動してしまう。このようなことから水平偏向高圧発生回路を備える映像装置においては、CRT管面上で画像の大きさを一定に保つように制御する必要がある。
【0004】
一般に、CRT管面上の画像の大きさを一定に保つ方法としては、大きく分けて2つの方法がある。すなわち、CRTのアノード電極(HV:高電圧)と偏向電流とを共に制御する方法と、CRTのアノード電極の変動をある程度許容し、その変動に応じて偏向電流を適切に制御する方法である。
【0005】
図7は、テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示するブロック図である。
【0006】
テレビジョン受信機においては、増幅された映像信号がCRT51のカソード電極に印加される。一方、CRT51のアノード電極には、カソード電極に対し数十キロボルト高い電圧(HV)が印加される。そして、これらカソード電極とアノード電極との間に生じる静電界によって、映像信号により変調されたビーム電流がカソード電極からCRT51内の管面に向けて放出され、管面に映像が形成される。
【0007】
CRT51のアノード電極に印加される高電圧は、フライバックトランス(FBT)52により生成される。フライバックトランス52の1次側巻線の一端には、平滑器55および電流検出器62を介して高圧回路用電源54が接続され、1次巻線の他の一端には、水平偏向コイル55およびコレクタパルス発生部56が接続される。コレクタパルス発生部56はバイポーラトランジスタからなり、バイポーラトランジスタのゲートに水平駆動パルスHDが印加されてコレクタパルスVcpを出力する。これがフライバックトランス52の1次側巻線にも印加されて2次側巻線に高電圧が発生する。
【0008】
フライバックトランス52の2次側巻線に発生したパルス状の高電圧HVは、フライバックトランスに内蔵された高圧コンデンサ(図示せず)およびCRT51のアノード電極が有する浮遊容量によって、ほぼ平滑化される。理想的には、CRT51のアノード電極に印加される高電圧は一定であるが、実際には、CRT51のカソード電極に印加される映像信号の変化により、アノード電極の電位が変動してしまう。
【0009】
CRT51のアノード電極の電位は高圧検出器57で検出される。高圧検出器57は、CRT51のアノード電極の電位を直流的に分圧し、これを検出信号Vhとしてバッファ58に入力する。
【0010】
水平偏向コイル55の一端には、上述のコレクタパルス発生部56が接続され、コレクタパルスVcpが印加される。また、水平偏向コイル55の他の一端には、ピン補正のための信号であって下に凸のV周期パラボラ波形であるイーストウエスト電圧VEWが印加される。これにより、水平偏向コイル55の両端には、フライバックトランス51の1次側の電圧V1とイーストウエスト電圧VEWとの差分の電圧が印加される。
【0011】
なお、このイーストウエスト電圧VEWは、その反転値であるイーストウエスト電圧信号指令値V* EW(図4および8では、EWのバーで示す。)と、CRT51のアノード電極の電位を検出した検出信号Vhと、を加算器61によって加算し、さらに反転バッファ63、WIDTHコイル59およびダイオード変調器60を介して生成される。
【0012】
従来例では、CRT管面上で画像の大きさを一定に保つように制御するオープンループ制御系は以上のように構成される。
【0013】
ここで、上述のオープンループ制御の具体的な動作について簡単に説明する。
【0014】
例えば、CRT51のアノード電極に印加される高電圧が低下する場合を考える。高圧検出器57が検出する検出信号Vhは低下するので、イーストウエスト電圧VEWは上昇する。上述のように水平偏向コイル55の両端にはフライバックトランス51の1次側の電圧V1とイーストウエスト電圧VEWとの差分の電圧が印加されるので、水平偏向コイル55に印加される電圧は低下し、その結果、画面の大きさを安定化する方向に作用することになる。
【0015】
図8は、テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示する回路図である。この図は、上述の図7に示されたブロック図を具体的な回路素子で実現した例を示しており、図7の各ブロックと図8の各回路素子との対応関係は次のとおりである。
【0016】
まず、CRT51は高圧負荷であるといえるので、図8では可変抵抗Rbとして示される。図7のフライバックトランス52は、図8ではFBTとして示され、1次側巻線をL1、2次側巻線をL2とする。2次側巻線L2には整流ダイオードD1が接続されている。
【0017】
図7の平滑回路53、高圧回路用電源54および電流検出器62は、図8ではそれぞれコンデンサC1、電圧源B+および抵抗R1である。
【0018】
水平偏向コイル55は、コイルHDYとS字コンデンサC7との直列回路である。コレクタパルス発生部56は、バイポーラトランジスタTR1で構成され、一般に水平出力トランジスタと呼ばれる。
【0019】
高圧検出器57は、互いに直列接続された抵抗R2およびR3ならびにコンデンサC3およびC4で構成され、抵抗R2およびR3ならびにコンデンサC3およびC4の各中点は互いに接続され、この点の電位が検出信号Vhとなる。
【0020】
図7のWIDTHコイル59は図8のコイルL3である。またダイオード変調器60は、ダイオードD4およびD5ならびに共振コンデンサC5およびC6からなる。
【0021】
図7の加算器61は図8では抵抗R5およびR8からなり、図7の反転バッファ63は図8ではオペアンプOP2および抵抗R6からなる。
【0022】
以上がテレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路1の回路構成である。
【0023】
CRT管面上の画像の大きさの安定化するフィードバックループのパラメータを最適なものにするために、直流分の補正のためには高圧検出器57の抵抗R2およびR3ならびに加算器61の抵抗R5およびR8の各パラメータが、交流分の補正のためには高圧検出器57のコンデンサC3およびC4の各パラメータが、それぞれ調節される。さらに、交流分については、高圧検出器57のコンデンサC3およびC4の調整だけでは十分な補正結果が得られないので、図8に示すように、適当なLCRフィルタを図8の抵抗R7の位置に追加し、検出信号Vhの位相およびゲインを補正している。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
従来例においては、上述のような高圧検出器57の抵抗R2およびR3ならびにコンデンサC3およびC4と、加算器61の抵抗R5およびR8との調整にもかかわらず、CRT管面上の画像の曲がりが残存し、画像の大きさの調整を最適化できない問題がある。この原因は次のとおりである。
【0025】
例えば、図8の負荷Rbが大きくなった例を考える。このときフライバックトランスFBTは、1次側から見たときの入力インピーダンスが低下する。これにより電圧源B+から抵抗R1、フライバックトランスFBTの1次側巻線L1もしくはコイルL3、そしてバイポーラトランジスタTR1へ流れる電流が増加する。この電流経路のうち、抵抗R1、1次側巻線L1、コイルL3、およびバイポーラトランジスタTR1のコレクタ−エミッタ間には、直流抵抗成分などが存在するため、これら各素子において電圧降下が発生することになる。上記では水平偏向コイル55の両端にはフライバックトランス51の1次側の電圧V1とイーストウエスト電圧VEWとの差分の電圧が印加されると説明したが、しかし実際は、この上記電流経路における電圧降下分だけ小さい電圧となる。このように、水平偏向高圧発生回路内部においても、CRTのアノード電極の電位変動が偏向電流に変動を与える要因が存在するのである。さらに、CRTのアノード電極の電位変動による偏向電流の応答に位相遅れが存在する。これらの原因により、上述のような各回路パラメータの調整にもかかわらず、CRT管面上の画像の曲がりがどうしても残存してしまうことになる。
【0026】
このように、従来の水平偏向高圧発生回路を備える映像装置においては、回路内の素子のパラメータ調整のみでは除去しきれない補正誤差が生じる問題があった。
【0027】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、映像装置において、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整できる水平偏向高圧発生回路を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
上記目的を実現するために、本発明においては、CRTの水平偏向コイルに流れる水平偏向電流を制御すると共に、水平偏向コイルに発生するパルス電圧をフライバックトランスの1次側に印加したときにフライバックトランスの2次側から出力される高電圧をCRTのアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路において、CRTのアノード電極において検出された2次側電圧信号を、垂直同期パルスを用いた特定のフィルタ回路で処理して信号を生成し、この信号を用いて偏向電流を制御する。またさらに、フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧のリプル成分信号についても、垂直同期パルスを用いた特定のフィルタ回路で処理して信号を生成し、上記の信号と併せて合わせて偏向電流を制御する。上記特定のフィルタ回路は、次に説明するようなクランプ手段を有する、一種のくし型フィルタである。
【0029】
図1は、本発明による水平偏向高圧発生回路の基本ブロック図である。
【0030】
本発明によれば、CRT51の水平偏向コイル53に流れる水平偏向電流を制御すると共に、水平偏向コイル53に発生するパルス電圧をフライバックトランス52の1次側に印加したときにフライバックトランス52の2次側から出力される高電圧HVを、CRT51のアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路1において、
アノード電極において検出された2次側電圧信号Vhを、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第1のクランプ手段11と、
2次側電圧信号と第1のクランプ手段11の出力信号の反転値とを加算して水平偏向電流を制御するための補正信号Vcを生成する加算手段12と、を備える。
【0031】
また、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrを、映像同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第2のクランプ手段13をさらに備え、加算手段12は、第2のクランプ手段12の出力信号をさらに加算するのが好ましい。
【0032】
またさらに、クランプ手段11および13は、その出力信号の信号レベルを調整する出力調整手段14および15を有するのが好ましい。
【0033】
本発明によれば、映像装置の水平偏向高圧発生回路において、従来のような位相遅れが生じず、出力調整手段でフライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、水平偏向電流の補正が容易であると共に精密に実現可能であり、従来例のような回路パラメータの調整が不要である。このように、本発明によれば、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさの変動を補正することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明による水平偏向高圧発生回路では、図1を参照して説明したように、CRTのアノード電極において検出された2次側電圧信号、および、フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号を、垂直同期信号を用いた特定のフィルタ回路で処理して信号を生成し、この信号を用いて偏向電流を制御する。この特定のフィルタ回路は、入力された信号を、垂直同期信号を用いてクランプするクランプ手段を有する。
【0035】
まず、クランプ手段の動作原理について説明する。なお、入力された信号を垂直同期パルスを用いてクランプするクランプ手段を有するフィルタ回路は、本出願人により、特願2001−00000号として特許出願されたものを応用する。
【0036】
図2は、本発明の実施例におけるクランプ手段の動作を説明するための回路図である。また、図3は、図2のクランプ手段の各個所における波形を示す波形図である。なお、図3中、点線で示される波形は、実線で示されている各波形の平均値を示している。
【0037】
CRTのアノード電極において検出された2次側電圧信号、および、フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧のリプル成分信号は、映像同期信号の周期に関連するリプルを有する電圧信号であり、より詳しく言えば、垂直同期信号(Vパルス)の奇数倍の周期のリプルを有する。図2に示すクランプ手段では、これらの信号を、垂直同期信号を用いてろ波する。
【0038】
図3に示すように、クランプ手段11は、垂直同期信号の奇数倍の周期のリプルを有する信号が入力されるコンデンサCcl1と、このコンデンサCcl1に並列に接続され、垂直同期信号の検出中は所定のクランプ電圧を生成するクランプ電圧源21と、を備える。
【0039】
本実施例においては、クランプ電圧源21は、垂直同期信号の検出中にオンするスイッチSW1と、一端がスイッチSW1に接続されると共に他の一端が接地された、所定のクランプ電圧を出力する電圧源Vcl1とを備える。なお、クランプ電圧源21の構成は図2に示すものに限定されず、垂直同期信号の検出中に所定のクランプ電圧を生成するものであれば他の構成であってもよい。
【0040】
続いて、図2のクランプ手段の動作原理について説明する。
【0041】
図3(a)は、垂直同期信号を示し、図3(b)は、図2の点Aにおける電位であってクランプ手段の入力信号に相当する波形の一例を示しており、例としてのこぎり形波形を有する入力信号が時刻Tで急変した場合を示す。また、図3(c)は、同じく入力信号の波形と、図2の点Bにおける電位であってクランプ手段の出力信号に相当する波形とを示す。
【0042】
ここでは、説明を簡明にするために、入力信号のリプルの周期を、垂直同期信号の周期の1倍としている。
【0043】
まず、垂直同期信号の検出している間はスイッチSW1はオンするので、点Bに現れる電位はクランプ電圧Vcl1で一定値となり、コンデンサCcl1に電荷が急速に充電もしくは放電される。すなわち、本実施例では、垂直同期信号を検出する度に、点Bに現れる電位はクランプ電圧値Vcl1に戻される。
【0044】
一方、垂直同期信号を検出していない間はスイッチSW1がオフするので、スイッチSW1のオン時に蓄えられていた電荷で決定されるコンデンサCcl1の電圧分だけ、点Aに現れる電位より高いもしくは低い電圧値となる。より詳しく説明すれば、クランプ手段11の次段に存在する素子(図示せず、以後に詳しく説明)の入力インピーダンスはハイインピーダンスであるので、スイッチSW1のオフ時にはコンデンサCcl1に蓄えられていた電荷の流出入は発生せず、コンデンサCcl1の両端には、蓄えられた電荷とコンデンサCcl1の容量とで決定される電位差が生じる。従って、図2の点Aに現れる電位は入力信号そのものの電圧値であるので、図2の点Bに現れる電位は、コンデンサCcl1の両端の電位差分だけ、点Aよりも高いかもしくは低いものになる。
【0045】
図3(c)に示す例では、時刻Tよりも前の期間では、入力信号の平均値は、クランプ電圧値Vcl1よりも高い電圧であるので、図2の点Bの電位は点Aの電位よりも、コンデンサCcl1の両端の電位差分だけ低い。一方、時刻Tよりも後の期間では、入力信号の平均値は、クランプ電圧値Vcl1よりも低い電圧であるので、図2の点Bの電位は点Aの電位よりも、コンデンサCcl1の両端の電位差分だけ高い。
【0046】
以上のことから、本実施例では、垂直同期信号の奇数倍の周期のリプルを有する信号であればどのような入力信号であっても、垂直同期信号を検出する度に点Bの電位はクランプ電圧値Vcl1に戻されるので、クランプ手段11からの出力信号は、クランプ電圧値Vcl1の近傍で変動するような波形で推移する。
【0047】
本発明の実施例における水平偏向高圧発生回路は、上述したクランプ手段を有する特定のフィルタ回路を備える。
【0048】
図4は本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の回路図であり、図5は本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路における演算器の回路図である。
【0049】
本実施例による水平偏向高圧発生回路1は、図8を参照して説明した水平偏向高圧発生回路1において、LCRフィルタの代わりに図5に示すような演算器2を設け、さらに、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrを検出するための電圧リプル検出器64を設けたものである。
【0050】
図4に示す電圧リプル検出器64は、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインの1次側電圧V1を検出し、コンデンサC2で交流分を抽出する。そして、ダイオードD2およびD3で抽出した交流波形の上下限値を0ボルトにクランプし、これをリプル成分信号Vrとして演算器2へ出力する。なお本実施例では、交流波形の上下限値を0ボルトにクランプしているが、次段で処理しやすい電位にクランプすればよい。また、コンデンサC2で抽出される交流分がダイオードの順方向電圧の2個分よりも大きい場合は、ダイオードを直列に複数個接続すればよい。
【0051】
演算器2は図3に示すようなクランプ手段を有するものである。演算器2の入力信号は、高圧検出器57で検出された検出信号である2次側電圧信号Vh、および、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vr、である。
【0052】
図5に示すように、本実施例による演算器2は、高圧検出器57で検出された2次側電圧信号Vhを、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第1のクランプ手段11と、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrを、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第2のクランプ手段13と、2次側電圧信号Vhと第1のクランプ手段11の出力信号の反転値と、第2のクランプ手段13の出力信号とを加算して水平偏向電流を制御するための補正信号を生成する加算手段12と、を備える。
【0053】
また、クランプ手段11および13は、その出力信号の信号レベルを調整する出力調整手段14および15をそれぞれ有する。
【0054】
出力調整手段14および15は、例えばボリュームなどを用いた公知技術で実現すればよく、ゲインは任意に調整することができるものとする。
【0055】
このうち、第1のクランプ手段11は、高圧検出器57で検出された検出信号である2次側電圧信号Vhを入力とするコンデンサCcl1と、コンデンサCcl1に並列に接続され、垂直同期信号VDの検出中は所定のクランプ電圧を生成するクランプ電圧源21と、を備える。
【0056】
同じく、第2のクランプ手段13は、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧信号を入力とするコンデンサCcl2と、コンデンサCcl2に並列に接続され、垂直同期信号VDの検出中は所定のクランプ電圧を生成するクランプ電圧源22と、を備える。
【0057】
本実施例においては、クランプ電圧源21は、垂直同期信号VDの検出中にオンするスイッチSW1と、一端がスイッチSW1に接続されると共に他の一端が接地された、所定のクランプ電圧を出力する電圧源Vcl1とを備える。
【0058】
同じくクランプ電圧源22は、垂直同期信号VDの検出中にオンするスイッチSW2と、一端がスイッチSW2に接続されると共に他の一端が接地された、所定のクランプ電圧を出力する電圧源Vcl2とを備える。
【0059】
また、加算手段12は、第1のクランプ手段11の出力信号を反転する反転バッファ16と、反転バッファ16に直列に接続され、反転バッファ16の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出するコンデンサCmix1と、第2のクランプ手段12の出力信号をバッファするバッファ17と、バッファ17に直列に接続され、バッファ17の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出するコンデンサCmix2と、高圧検出器57で検出された2次側電圧信号VhそのものとコンデンサCmix1の出力信号とコンデンサCmix2とを加算する加算器18と、を備える。なお、反転バッファ16、バッファ17および加算器18は、オペアンプなどを用いた公知技術で実現すればよい。また、加算器18を、オペアンプを用いて構成する場合、オペアンプの非反転入力端子を接地せずに所定の電圧を印加するように構成すれば、コンデンサCmix1およびCmix2を省略することもできる。
【0060】
続いて、本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の動作原理について説明する。
【0061】
高圧検出器57で検出された2次側電圧信号Vhは、図5に示す第1のクランプ手段11に入力される。上述したように、第1のクランプ手段11は、垂直同期信号VDを検出する度に入力された信号をクランプ電圧値Vcl1に戻すので、点Bに現れる電位は、クランプ電圧値Vcl1の近傍で変動するようなリプル成分を有する信号となる。この信号は、出力調整手段14によって、後述するような所定の信号レベルになるようにゲイン調整される。
【0062】
第1のクランプ手段11の出力信号は、反転バッファ16に入力される。反転バッファ16は、入力された信号を反転し、コンデンサCmix1へ出力する。
【0063】
コンデンサCmix1は、反転バッファ16の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出し、加算器18へ出力する。
【0064】
加算器18は、高圧検出器57で検出された検出信号である2次側電圧信号Vhと、コンデンサCmix1からの出力信号と、後述するコンデンサCmix2からの出力信号と、を加算する。
【0065】
ところで、加算器18が、コンデンサCmix2からの出力信号は加算せず、2次側電圧信号Vhと、コンデンサCmix1からの出力信号と、のみを加算する場合を考える。
【0066】
第1のクランプ手段11内の出力調整手段14のゲインは任意に調整することができるが、第1のクランプ手段11内の出力調整手段14のゲインが「1」である場合は、図3からもわかるように、第1のクランプ手段11の出力信号に含まれるリプル成分は、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分とほぼ同じ振幅レベルを有する。したがって、このときの第1のクランプ手段の出力信号を反転バッファ16で反転し、コンデンサCmix1で直流成分を除去すれば、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分の反転値を得ることができる。このリプルの反転値を加算器18によって2次側電圧信号Vhに加算すれば、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分を除去することができる。すなわち本構成はくし型フィルタの機能を有していることがわかる。
【0067】
続いて、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrに関する演算器2の動作について説明する。
【0068】
図4に示す電圧リプル検出器64は、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインの1次側電圧V1を検出し、コンデンサC2で交流分を抽出し、そしてダイオードD2およびD3で波形の上下限を0ボルトにクランプし、これをリプル成分信号Vrとして演算器2へ出力する。
【0069】
リプル成分信号Vrは、演算器2内の第2のクランプ手段13に入力される。上述したように、第2のクランプ手段13は、垂直同期信号VDを検出する度に入力された信号をクランプ電圧値Vcl2に戻すので、点Cに現れる電位は、クランプ電圧値Vcl2の近傍で変動するようなリプル成分を有する信号となる。この信号は、出力調整手段15によって、後述するように所定の信号レベルになるようにゲイン調整される。
【0070】
第2のクランプ手段13の出力信号は、バッファ17に入力される。バッファ17は、入力された信号をバッファするものであり、その後コンデンサCmix2へ出力する。
【0071】
コンデンサCmix2は、バッファ17の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出し、加算器18へ出力する。
【0072】
加算器18は、2次側電圧信号Vhと、コンデンサCmix1からの出力信号と、コンデンサCmix2からの出力信号と、を加算する。
【0073】
以上をまとめると、CRTのアノード電極に印加される高電圧の、カソード電極に印加される映像信号に起因する変動について、本発明においては、変動の直流分は2次側電圧信号Vhから検出し、変動の交流分は2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分と1次側電圧V1のリプル成分信号Vrとから検出することになる。
【0074】
そして、変動の交流分に対し、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分と1次側電圧V1のリプル成分信号Vrとをそれぞれ出力調整手段14および15で信号レベルのゲインを調整することで、CRT管面上の画像の曲がりを補正する。つまり、各クランプ手段11および13の出力信号の重み付けを調整することでCRT管面上の画像の曲がりを補正する。
【0075】
図5に示す加算器18からの出力信号、すなわち、図4に示す演算器2からの出力信号Vcは、従来例で説明したようにイーストウエスト電圧指令値V* EWに加算される。
【0076】
以上が本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の動作原理である。
【0077】
従来例では、図7および8を参照して既に説明したように、イーストウエスト電圧信号指令値V* EWに、CRT51のアノード電極の電位を検出した信号であってLCRフィルタによってフィルタされた信号Vhを加算し、これをそのまま用いて水平偏向電流を補正していた。この手法では、「発明が解決しようとする課題」の項で説明した回路上な問題やLCRフィルタを介することによって生じる、電位変動に対する偏向電流の応答の位相遅れの問題などにより、回路内の各パラメータをどのように調整してもCRT管面上の画像の曲がりが残存してしまい、十分な補正結果が得られなかった。
【0078】
しかし、本発明によれば、図5に示すようなクランプ手段を用いるので、LCRフィルタを介することにより生じるような位相遅れは生じない。さらに、出力調整手段14および15で、フライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、水平偏向電流の補正が容易であると共に精密に実現可能であり、従来例のような回路パラメータの調整が不要である。このように、本発明によれば、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整することが可能である。
【0079】
なお、本発明においても、従来技術同様、図4に示すような高圧検出器57を用いている。このような高圧検出器57においては、一般に、時定数「R2×C3」と、「R3×C4」とを等しくし、CRTのアノード電極に印加される高電圧の検出信号が全帯域でフラットに分圧されるように設定する方が、動画像に対する過渡応答が良い。
【0080】
しかし、従来例では、上述のように、高圧検出回路57の回路パラメータを調節しなければCRT管面上の画像の大きさを最適化することができないので、やむを得ず時定数「R2×C3」と「R3×C4」とのバランスを崩していた。したがって、従来例は動画像に対する過渡応答が悪かった。
【0081】
これに対し、本発明によれば、出力調整手段14および15で、フライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、高圧検出器57の時定数「R2×C3」と「R3×C4」とを等しくすることが可能であり、従って、動画像に対する過渡応答が良い。
【0082】
次に、上述の実施例の変形例について説明する。
【0083】
図6は、本発明の実施例の変形例による水平偏向高圧発生回路のブロック図である。
【0084】
本変形例は、上述の水平偏向高圧発生回路内のクランプ手段を1つにしたものである。
【0085】
図6に示すように、本変形例による水平偏向高圧発生回路1は、高圧検出器57によって検出された2次側電圧信号Vhをゲイン調整する第1の調整手段24と、第1の調整手段24の出力信号を反転する反転バッファ16と、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrをゲイン調整する第2の調整手段25と、第2の調整手段25の出力信号をバッファするバッファ17と、反転バッファ16の出力信号とバッファ17の出力信号とを加算する加算器20と、加算器20の出力信号を、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプし、水平偏向電流を制御するための補正信号Vcを生成するクランプ手段12と、を備える。なお、第1の調整手段24と反転バッファ16とを入れ替えて接続してもよい。同様に、第2の調整手段25とバッファ17とを入れ替えて接続してもよい。
【0086】
また、上述の実施例のさらなる変形例として2次側電圧信号Vhのみを演算器2の入力信号とし、演算器2内に、第2のクランプ手段13を設けずに第1のクランプ手段11のみにしてもよい。この場合でも、高圧検出器57で検出された2次側電圧信号にLCRフィルタを用いないので位相遅れが生じず、したがって、従来例に比べてCRT管面上の画像の大きさをより容易かつ精度良く最適化することができる。
【0087】
いずれの変形例による水平偏向高圧発生回路においても、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、映像装置の水平偏向高圧発生回路において、LCRフィルタではなくクランプ手段を用いるので位相遅れが生じず、出力調整手段でフライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、水平偏向電流の補正が容易であると共に精密に実現可能であり、従来例のような回路パラメータの調整が不要である。したがって、本発明によれば、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整することができる。
【0089】
また、本発明によれば、出力調整手段でフライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、CRTのアノード電極に印加される高電圧をフラットな周波数特性で容易に検出できるので、動画像に対する過渡応答が向上する。
【0090】
なお、上述のように、CRT管面上の画像の大きさを一定に保つ方法としては、CRTのアノード電極と偏向電流とを共に制御する方法と、CRTのアノード電極の変動をある程度許容し、その変動に応じて偏向電流を適切に制御する方法がある。本発明は後者の方法であるが、前者の場合に比べて部品点数を低減することができ、なおかつ、前者の場合同様に精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水平偏向高圧発生回路の基本ブロック図である。
【図2】本発明の実施例におけるクランプ手段の動作を説明するための回路図である。
【図3】図2のクランプ手段の各個所における波形を示す波形図であって、(a)は、垂直同期信号を、(b)は、図2の点Aにおける電位であってクランプ手段の入力信号に相当する波形を、(c)は、同じく入力信号の波形と、図2の点Bにおける電位であってクランプ手段の出力信号に相当する波形とを示す波形図である。
【図4】本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の回路図である。
【図5】本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路における演算器の回路図である。
【図6】本発明の実施例の変形例による水平偏向高圧発生回路のブロック図である。
【図7】テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示するブロック図である。
【図8】テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示する回路図である。
【符号の説明】
1…水平偏向高圧発生回路
2…演算器
11…第1のクランプ手段
12…加算手段
13…第2のクランプ手段
14…出力調整手段
15…出力調整手段
16…反転バッファ
17…バッファ
18…加算器
21、22…クランプ電圧源
SW1、SW2…スイッチ
Ccl1、Ccl2…コンデンサ
Vcl1、Vcl2…電圧源
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビジョン受像機もしくはディスプレイ装置において用いられる、カソードレイチューブ(CRT)の水平偏向コイルに流れる水平偏向電流を制御すると共に、CRTのアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビジョン受信機もしくはディスプレイ装置などの映像装置は、一般に、フライバックトランスを有する高電圧生成回路を備える。この高電圧生成回路は、CRTの偏向コイルに対して偏向電流を流す機能と、CRTのアノード電極に対して高電圧を供給する機能とを有する。特に、これら2つの機能を1つのフライバックトランスを介して実現するようにしたものが、偏向高圧一体型の電圧制御回路(以下、「水平偏向高圧発生回路」と呼ぶ。)である。
【0003】
CRTのアノード電極に印加される高電圧は、特にカソード電極に印加される映像信号に起因して変動する。水平偏向高圧発生回路を備える映像装置においては、CRTのアノード電極に印加される高電圧の変動は、基本的にはCRTの偏向コイルを流れる偏向電流には影響を及ぼさず、偏向電流は安定である。しかし、CRTのアノード電極に印加される高電圧が変動した場合は偏向感度が変動することになり、CRT管面上の画像が変動してしまう。このようなことから水平偏向高圧発生回路を備える映像装置においては、CRT管面上で画像の大きさを一定に保つように制御する必要がある。
【0004】
一般に、CRT管面上の画像の大きさを一定に保つ方法としては、大きく分けて2つの方法がある。すなわち、CRTのアノード電極(HV:高電圧)と偏向電流とを共に制御する方法と、CRTのアノード電極の変動をある程度許容し、その変動に応じて偏向電流を適切に制御する方法である。
【0005】
図7は、テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示するブロック図である。
【0006】
テレビジョン受信機においては、増幅された映像信号がCRT51のカソード電極に印加される。一方、CRT51のアノード電極には、カソード電極に対し数十キロボルト高い電圧(HV)が印加される。そして、これらカソード電極とアノード電極との間に生じる静電界によって、映像信号により変調されたビーム電流がカソード電極からCRT51内の管面に向けて放出され、管面に映像が形成される。
【0007】
CRT51のアノード電極に印加される高電圧は、フライバックトランス(FBT)52により生成される。フライバックトランス52の1次側巻線の一端には、平滑器55および電流検出器62を介して高圧回路用電源54が接続され、1次巻線の他の一端には、水平偏向コイル55およびコレクタパルス発生部56が接続される。コレクタパルス発生部56はバイポーラトランジスタからなり、バイポーラトランジスタのゲートに水平駆動パルスHDが印加されてコレクタパルスVcpを出力する。これがフライバックトランス52の1次側巻線にも印加されて2次側巻線に高電圧が発生する。
【0008】
フライバックトランス52の2次側巻線に発生したパルス状の高電圧HVは、フライバックトランスに内蔵された高圧コンデンサ(図示せず)およびCRT51のアノード電極が有する浮遊容量によって、ほぼ平滑化される。理想的には、CRT51のアノード電極に印加される高電圧は一定であるが、実際には、CRT51のカソード電極に印加される映像信号の変化により、アノード電極の電位が変動してしまう。
【0009】
CRT51のアノード電極の電位は高圧検出器57で検出される。高圧検出器57は、CRT51のアノード電極の電位を直流的に分圧し、これを検出信号Vhとしてバッファ58に入力する。
【0010】
水平偏向コイル55の一端には、上述のコレクタパルス発生部56が接続され、コレクタパルスVcpが印加される。また、水平偏向コイル55の他の一端には、ピン補正のための信号であって下に凸のV周期パラボラ波形であるイーストウエスト電圧VEWが印加される。これにより、水平偏向コイル55の両端には、フライバックトランス51の1次側の電圧V1とイーストウエスト電圧VEWとの差分の電圧が印加される。
【0011】
なお、このイーストウエスト電圧VEWは、その反転値であるイーストウエスト電圧信号指令値V* EW(図4および8では、EWのバーで示す。)と、CRT51のアノード電極の電位を検出した検出信号Vhと、を加算器61によって加算し、さらに反転バッファ63、WIDTHコイル59およびダイオード変調器60を介して生成される。
【0012】
従来例では、CRT管面上で画像の大きさを一定に保つように制御するオープンループ制御系は以上のように構成される。
【0013】
ここで、上述のオープンループ制御の具体的な動作について簡単に説明する。
【0014】
例えば、CRT51のアノード電極に印加される高電圧が低下する場合を考える。高圧検出器57が検出する検出信号Vhは低下するので、イーストウエスト電圧VEWは上昇する。上述のように水平偏向コイル55の両端にはフライバックトランス51の1次側の電圧V1とイーストウエスト電圧VEWとの差分の電圧が印加されるので、水平偏向コイル55に印加される電圧は低下し、その結果、画面の大きさを安定化する方向に作用することになる。
【0015】
図8は、テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示する回路図である。この図は、上述の図7に示されたブロック図を具体的な回路素子で実現した例を示しており、図7の各ブロックと図8の各回路素子との対応関係は次のとおりである。
【0016】
まず、CRT51は高圧負荷であるといえるので、図8では可変抵抗Rbとして示される。図7のフライバックトランス52は、図8ではFBTとして示され、1次側巻線をL1、2次側巻線をL2とする。2次側巻線L2には整流ダイオードD1が接続されている。
【0017】
図7の平滑回路53、高圧回路用電源54および電流検出器62は、図8ではそれぞれコンデンサC1、電圧源B+および抵抗R1である。
【0018】
水平偏向コイル55は、コイルHDYとS字コンデンサC7との直列回路である。コレクタパルス発生部56は、バイポーラトランジスタTR1で構成され、一般に水平出力トランジスタと呼ばれる。
【0019】
高圧検出器57は、互いに直列接続された抵抗R2およびR3ならびにコンデンサC3およびC4で構成され、抵抗R2およびR3ならびにコンデンサC3およびC4の各中点は互いに接続され、この点の電位が検出信号Vhとなる。
【0020】
図7のWIDTHコイル59は図8のコイルL3である。またダイオード変調器60は、ダイオードD4およびD5ならびに共振コンデンサC5およびC6からなる。
【0021】
図7の加算器61は図8では抵抗R5およびR8からなり、図7の反転バッファ63は図8ではオペアンプOP2および抵抗R6からなる。
【0022】
以上がテレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路1の回路構成である。
【0023】
CRT管面上の画像の大きさの安定化するフィードバックループのパラメータを最適なものにするために、直流分の補正のためには高圧検出器57の抵抗R2およびR3ならびに加算器61の抵抗R5およびR8の各パラメータが、交流分の補正のためには高圧検出器57のコンデンサC3およびC4の各パラメータが、それぞれ調節される。さらに、交流分については、高圧検出器57のコンデンサC3およびC4の調整だけでは十分な補正結果が得られないので、図8に示すように、適当なLCRフィルタを図8の抵抗R7の位置に追加し、検出信号Vhの位相およびゲインを補正している。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
従来例においては、上述のような高圧検出器57の抵抗R2およびR3ならびにコンデンサC3およびC4と、加算器61の抵抗R5およびR8との調整にもかかわらず、CRT管面上の画像の曲がりが残存し、画像の大きさの調整を最適化できない問題がある。この原因は次のとおりである。
【0025】
例えば、図8の負荷Rbが大きくなった例を考える。このときフライバックトランスFBTは、1次側から見たときの入力インピーダンスが低下する。これにより電圧源B+から抵抗R1、フライバックトランスFBTの1次側巻線L1もしくはコイルL3、そしてバイポーラトランジスタTR1へ流れる電流が増加する。この電流経路のうち、抵抗R1、1次側巻線L1、コイルL3、およびバイポーラトランジスタTR1のコレクタ−エミッタ間には、直流抵抗成分などが存在するため、これら各素子において電圧降下が発生することになる。上記では水平偏向コイル55の両端にはフライバックトランス51の1次側の電圧V1とイーストウエスト電圧VEWとの差分の電圧が印加されると説明したが、しかし実際は、この上記電流経路における電圧降下分だけ小さい電圧となる。このように、水平偏向高圧発生回路内部においても、CRTのアノード電極の電位変動が偏向電流に変動を与える要因が存在するのである。さらに、CRTのアノード電極の電位変動による偏向電流の応答に位相遅れが存在する。これらの原因により、上述のような各回路パラメータの調整にもかかわらず、CRT管面上の画像の曲がりがどうしても残存してしまうことになる。
【0026】
このように、従来の水平偏向高圧発生回路を備える映像装置においては、回路内の素子のパラメータ調整のみでは除去しきれない補正誤差が生じる問題があった。
【0027】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、映像装置において、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整できる水平偏向高圧発生回路を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
上記目的を実現するために、本発明においては、CRTの水平偏向コイルに流れる水平偏向電流を制御すると共に、水平偏向コイルに発生するパルス電圧をフライバックトランスの1次側に印加したときにフライバックトランスの2次側から出力される高電圧をCRTのアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路において、CRTのアノード電極において検出された2次側電圧信号を、垂直同期パルスを用いた特定のフィルタ回路で処理して信号を生成し、この信号を用いて偏向電流を制御する。またさらに、フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧のリプル成分信号についても、垂直同期パルスを用いた特定のフィルタ回路で処理して信号を生成し、上記の信号と併せて合わせて偏向電流を制御する。上記特定のフィルタ回路は、次に説明するようなクランプ手段を有する、一種のくし型フィルタである。
【0029】
図1は、本発明による水平偏向高圧発生回路の基本ブロック図である。
【0030】
本発明によれば、CRT51の水平偏向コイル53に流れる水平偏向電流を制御すると共に、水平偏向コイル53に発生するパルス電圧をフライバックトランス52の1次側に印加したときにフライバックトランス52の2次側から出力される高電圧HVを、CRT51のアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路1において、
アノード電極において検出された2次側電圧信号Vhを、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第1のクランプ手段11と、
2次側電圧信号と第1のクランプ手段11の出力信号の反転値とを加算して水平偏向電流を制御するための補正信号Vcを生成する加算手段12と、を備える。
【0031】
また、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrを、映像同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第2のクランプ手段13をさらに備え、加算手段12は、第2のクランプ手段12の出力信号をさらに加算するのが好ましい。
【0032】
またさらに、クランプ手段11および13は、その出力信号の信号レベルを調整する出力調整手段14および15を有するのが好ましい。
【0033】
本発明によれば、映像装置の水平偏向高圧発生回路において、従来のような位相遅れが生じず、出力調整手段でフライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、水平偏向電流の補正が容易であると共に精密に実現可能であり、従来例のような回路パラメータの調整が不要である。このように、本発明によれば、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさの変動を補正することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明による水平偏向高圧発生回路では、図1を参照して説明したように、CRTのアノード電極において検出された2次側電圧信号、および、フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号を、垂直同期信号を用いた特定のフィルタ回路で処理して信号を生成し、この信号を用いて偏向電流を制御する。この特定のフィルタ回路は、入力された信号を、垂直同期信号を用いてクランプするクランプ手段を有する。
【0035】
まず、クランプ手段の動作原理について説明する。なお、入力された信号を垂直同期パルスを用いてクランプするクランプ手段を有するフィルタ回路は、本出願人により、特願2001−00000号として特許出願されたものを応用する。
【0036】
図2は、本発明の実施例におけるクランプ手段の動作を説明するための回路図である。また、図3は、図2のクランプ手段の各個所における波形を示す波形図である。なお、図3中、点線で示される波形は、実線で示されている各波形の平均値を示している。
【0037】
CRTのアノード電極において検出された2次側電圧信号、および、フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧のリプル成分信号は、映像同期信号の周期に関連するリプルを有する電圧信号であり、より詳しく言えば、垂直同期信号(Vパルス)の奇数倍の周期のリプルを有する。図2に示すクランプ手段では、これらの信号を、垂直同期信号を用いてろ波する。
【0038】
図3に示すように、クランプ手段11は、垂直同期信号の奇数倍の周期のリプルを有する信号が入力されるコンデンサCcl1と、このコンデンサCcl1に並列に接続され、垂直同期信号の検出中は所定のクランプ電圧を生成するクランプ電圧源21と、を備える。
【0039】
本実施例においては、クランプ電圧源21は、垂直同期信号の検出中にオンするスイッチSW1と、一端がスイッチSW1に接続されると共に他の一端が接地された、所定のクランプ電圧を出力する電圧源Vcl1とを備える。なお、クランプ電圧源21の構成は図2に示すものに限定されず、垂直同期信号の検出中に所定のクランプ電圧を生成するものであれば他の構成であってもよい。
【0040】
続いて、図2のクランプ手段の動作原理について説明する。
【0041】
図3(a)は、垂直同期信号を示し、図3(b)は、図2の点Aにおける電位であってクランプ手段の入力信号に相当する波形の一例を示しており、例としてのこぎり形波形を有する入力信号が時刻Tで急変した場合を示す。また、図3(c)は、同じく入力信号の波形と、図2の点Bにおける電位であってクランプ手段の出力信号に相当する波形とを示す。
【0042】
ここでは、説明を簡明にするために、入力信号のリプルの周期を、垂直同期信号の周期の1倍としている。
【0043】
まず、垂直同期信号の検出している間はスイッチSW1はオンするので、点Bに現れる電位はクランプ電圧Vcl1で一定値となり、コンデンサCcl1に電荷が急速に充電もしくは放電される。すなわち、本実施例では、垂直同期信号を検出する度に、点Bに現れる電位はクランプ電圧値Vcl1に戻される。
【0044】
一方、垂直同期信号を検出していない間はスイッチSW1がオフするので、スイッチSW1のオン時に蓄えられていた電荷で決定されるコンデンサCcl1の電圧分だけ、点Aに現れる電位より高いもしくは低い電圧値となる。より詳しく説明すれば、クランプ手段11の次段に存在する素子(図示せず、以後に詳しく説明)の入力インピーダンスはハイインピーダンスであるので、スイッチSW1のオフ時にはコンデンサCcl1に蓄えられていた電荷の流出入は発生せず、コンデンサCcl1の両端には、蓄えられた電荷とコンデンサCcl1の容量とで決定される電位差が生じる。従って、図2の点Aに現れる電位は入力信号そのものの電圧値であるので、図2の点Bに現れる電位は、コンデンサCcl1の両端の電位差分だけ、点Aよりも高いかもしくは低いものになる。
【0045】
図3(c)に示す例では、時刻Tよりも前の期間では、入力信号の平均値は、クランプ電圧値Vcl1よりも高い電圧であるので、図2の点Bの電位は点Aの電位よりも、コンデンサCcl1の両端の電位差分だけ低い。一方、時刻Tよりも後の期間では、入力信号の平均値は、クランプ電圧値Vcl1よりも低い電圧であるので、図2の点Bの電位は点Aの電位よりも、コンデンサCcl1の両端の電位差分だけ高い。
【0046】
以上のことから、本実施例では、垂直同期信号の奇数倍の周期のリプルを有する信号であればどのような入力信号であっても、垂直同期信号を検出する度に点Bの電位はクランプ電圧値Vcl1に戻されるので、クランプ手段11からの出力信号は、クランプ電圧値Vcl1の近傍で変動するような波形で推移する。
【0047】
本発明の実施例における水平偏向高圧発生回路は、上述したクランプ手段を有する特定のフィルタ回路を備える。
【0048】
図4は本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の回路図であり、図5は本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路における演算器の回路図である。
【0049】
本実施例による水平偏向高圧発生回路1は、図8を参照して説明した水平偏向高圧発生回路1において、LCRフィルタの代わりに図5に示すような演算器2を設け、さらに、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrを検出するための電圧リプル検出器64を設けたものである。
【0050】
図4に示す電圧リプル検出器64は、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインの1次側電圧V1を検出し、コンデンサC2で交流分を抽出する。そして、ダイオードD2およびD3で抽出した交流波形の上下限値を0ボルトにクランプし、これをリプル成分信号Vrとして演算器2へ出力する。なお本実施例では、交流波形の上下限値を0ボルトにクランプしているが、次段で処理しやすい電位にクランプすればよい。また、コンデンサC2で抽出される交流分がダイオードの順方向電圧の2個分よりも大きい場合は、ダイオードを直列に複数個接続すればよい。
【0051】
演算器2は図3に示すようなクランプ手段を有するものである。演算器2の入力信号は、高圧検出器57で検出された検出信号である2次側電圧信号Vh、および、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vr、である。
【0052】
図5に示すように、本実施例による演算器2は、高圧検出器57で検出された2次側電圧信号Vhを、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第1のクランプ手段11と、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrを、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第2のクランプ手段13と、2次側電圧信号Vhと第1のクランプ手段11の出力信号の反転値と、第2のクランプ手段13の出力信号とを加算して水平偏向電流を制御するための補正信号を生成する加算手段12と、を備える。
【0053】
また、クランプ手段11および13は、その出力信号の信号レベルを調整する出力調整手段14および15をそれぞれ有する。
【0054】
出力調整手段14および15は、例えばボリュームなどを用いた公知技術で実現すればよく、ゲインは任意に調整することができるものとする。
【0055】
このうち、第1のクランプ手段11は、高圧検出器57で検出された検出信号である2次側電圧信号Vhを入力とするコンデンサCcl1と、コンデンサCcl1に並列に接続され、垂直同期信号VDの検出中は所定のクランプ電圧を生成するクランプ電圧源21と、を備える。
【0056】
同じく、第2のクランプ手段13は、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧信号を入力とするコンデンサCcl2と、コンデンサCcl2に並列に接続され、垂直同期信号VDの検出中は所定のクランプ電圧を生成するクランプ電圧源22と、を備える。
【0057】
本実施例においては、クランプ電圧源21は、垂直同期信号VDの検出中にオンするスイッチSW1と、一端がスイッチSW1に接続されると共に他の一端が接地された、所定のクランプ電圧を出力する電圧源Vcl1とを備える。
【0058】
同じくクランプ電圧源22は、垂直同期信号VDの検出中にオンするスイッチSW2と、一端がスイッチSW2に接続されると共に他の一端が接地された、所定のクランプ電圧を出力する電圧源Vcl2とを備える。
【0059】
また、加算手段12は、第1のクランプ手段11の出力信号を反転する反転バッファ16と、反転バッファ16に直列に接続され、反転バッファ16の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出するコンデンサCmix1と、第2のクランプ手段12の出力信号をバッファするバッファ17と、バッファ17に直列に接続され、バッファ17の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出するコンデンサCmix2と、高圧検出器57で検出された2次側電圧信号VhそのものとコンデンサCmix1の出力信号とコンデンサCmix2とを加算する加算器18と、を備える。なお、反転バッファ16、バッファ17および加算器18は、オペアンプなどを用いた公知技術で実現すればよい。また、加算器18を、オペアンプを用いて構成する場合、オペアンプの非反転入力端子を接地せずに所定の電圧を印加するように構成すれば、コンデンサCmix1およびCmix2を省略することもできる。
【0060】
続いて、本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の動作原理について説明する。
【0061】
高圧検出器57で検出された2次側電圧信号Vhは、図5に示す第1のクランプ手段11に入力される。上述したように、第1のクランプ手段11は、垂直同期信号VDを検出する度に入力された信号をクランプ電圧値Vcl1に戻すので、点Bに現れる電位は、クランプ電圧値Vcl1の近傍で変動するようなリプル成分を有する信号となる。この信号は、出力調整手段14によって、後述するような所定の信号レベルになるようにゲイン調整される。
【0062】
第1のクランプ手段11の出力信号は、反転バッファ16に入力される。反転バッファ16は、入力された信号を反転し、コンデンサCmix1へ出力する。
【0063】
コンデンサCmix1は、反転バッファ16の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出し、加算器18へ出力する。
【0064】
加算器18は、高圧検出器57で検出された検出信号である2次側電圧信号Vhと、コンデンサCmix1からの出力信号と、後述するコンデンサCmix2からの出力信号と、を加算する。
【0065】
ところで、加算器18が、コンデンサCmix2からの出力信号は加算せず、2次側電圧信号Vhと、コンデンサCmix1からの出力信号と、のみを加算する場合を考える。
【0066】
第1のクランプ手段11内の出力調整手段14のゲインは任意に調整することができるが、第1のクランプ手段11内の出力調整手段14のゲインが「1」である場合は、図3からもわかるように、第1のクランプ手段11の出力信号に含まれるリプル成分は、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分とほぼ同じ振幅レベルを有する。したがって、このときの第1のクランプ手段の出力信号を反転バッファ16で反転し、コンデンサCmix1で直流成分を除去すれば、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分の反転値を得ることができる。このリプルの反転値を加算器18によって2次側電圧信号Vhに加算すれば、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分を除去することができる。すなわち本構成はくし型フィルタの機能を有していることがわかる。
【0067】
続いて、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrに関する演算器2の動作について説明する。
【0068】
図4に示す電圧リプル検出器64は、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインの1次側電圧V1を検出し、コンデンサC2で交流分を抽出し、そしてダイオードD2およびD3で波形の上下限を0ボルトにクランプし、これをリプル成分信号Vrとして演算器2へ出力する。
【0069】
リプル成分信号Vrは、演算器2内の第2のクランプ手段13に入力される。上述したように、第2のクランプ手段13は、垂直同期信号VDを検出する度に入力された信号をクランプ電圧値Vcl2に戻すので、点Cに現れる電位は、クランプ電圧値Vcl2の近傍で変動するようなリプル成分を有する信号となる。この信号は、出力調整手段15によって、後述するように所定の信号レベルになるようにゲイン調整される。
【0070】
第2のクランプ手段13の出力信号は、バッファ17に入力される。バッファ17は、入力された信号をバッファするものであり、その後コンデンサCmix2へ出力する。
【0071】
コンデンサCmix2は、バッファ17の出力信号から直流成分を除去してリプル分を抽出し、加算器18へ出力する。
【0072】
加算器18は、2次側電圧信号Vhと、コンデンサCmix1からの出力信号と、コンデンサCmix2からの出力信号と、を加算する。
【0073】
以上をまとめると、CRTのアノード電極に印加される高電圧の、カソード電極に印加される映像信号に起因する変動について、本発明においては、変動の直流分は2次側電圧信号Vhから検出し、変動の交流分は2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分と1次側電圧V1のリプル成分信号Vrとから検出することになる。
【0074】
そして、変動の交流分に対し、2次側電圧信号Vhに含まれるリプル成分と1次側電圧V1のリプル成分信号Vrとをそれぞれ出力調整手段14および15で信号レベルのゲインを調整することで、CRT管面上の画像の曲がりを補正する。つまり、各クランプ手段11および13の出力信号の重み付けを調整することでCRT管面上の画像の曲がりを補正する。
【0075】
図5に示す加算器18からの出力信号、すなわち、図4に示す演算器2からの出力信号Vcは、従来例で説明したようにイーストウエスト電圧指令値V* EWに加算される。
【0076】
以上が本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の動作原理である。
【0077】
従来例では、図7および8を参照して既に説明したように、イーストウエスト電圧信号指令値V* EWに、CRT51のアノード電極の電位を検出した信号であってLCRフィルタによってフィルタされた信号Vhを加算し、これをそのまま用いて水平偏向電流を補正していた。この手法では、「発明が解決しようとする課題」の項で説明した回路上な問題やLCRフィルタを介することによって生じる、電位変動に対する偏向電流の応答の位相遅れの問題などにより、回路内の各パラメータをどのように調整してもCRT管面上の画像の曲がりが残存してしまい、十分な補正結果が得られなかった。
【0078】
しかし、本発明によれば、図5に示すようなクランプ手段を用いるので、LCRフィルタを介することにより生じるような位相遅れは生じない。さらに、出力調整手段14および15で、フライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、水平偏向電流の補正が容易であると共に精密に実現可能であり、従来例のような回路パラメータの調整が不要である。このように、本発明によれば、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整することが可能である。
【0079】
なお、本発明においても、従来技術同様、図4に示すような高圧検出器57を用いている。このような高圧検出器57においては、一般に、時定数「R2×C3」と、「R3×C4」とを等しくし、CRTのアノード電極に印加される高電圧の検出信号が全帯域でフラットに分圧されるように設定する方が、動画像に対する過渡応答が良い。
【0080】
しかし、従来例では、上述のように、高圧検出回路57の回路パラメータを調節しなければCRT管面上の画像の大きさを最適化することができないので、やむを得ず時定数「R2×C3」と「R3×C4」とのバランスを崩していた。したがって、従来例は動画像に対する過渡応答が悪かった。
【0081】
これに対し、本発明によれば、出力調整手段14および15で、フライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、高圧検出器57の時定数「R2×C3」と「R3×C4」とを等しくすることが可能であり、従って、動画像に対する過渡応答が良い。
【0082】
次に、上述の実施例の変形例について説明する。
【0083】
図6は、本発明の実施例の変形例による水平偏向高圧発生回路のブロック図である。
【0084】
本変形例は、上述の水平偏向高圧発生回路内のクランプ手段を1つにしたものである。
【0085】
図6に示すように、本変形例による水平偏向高圧発生回路1は、高圧検出器57によって検出された2次側電圧信号Vhをゲイン調整する第1の調整手段24と、第1の調整手段24の出力信号を反転する反転バッファ16と、フライバックトランス52の1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧V1のリプル成分信号Vrをゲイン調整する第2の調整手段25と、第2の調整手段25の出力信号をバッファするバッファ17と、反転バッファ16の出力信号とバッファ17の出力信号とを加算する加算器20と、加算器20の出力信号を、垂直同期信号VDを検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプし、水平偏向電流を制御するための補正信号Vcを生成するクランプ手段12と、を備える。なお、第1の調整手段24と反転バッファ16とを入れ替えて接続してもよい。同様に、第2の調整手段25とバッファ17とを入れ替えて接続してもよい。
【0086】
また、上述の実施例のさらなる変形例として2次側電圧信号Vhのみを演算器2の入力信号とし、演算器2内に、第2のクランプ手段13を設けずに第1のクランプ手段11のみにしてもよい。この場合でも、高圧検出器57で検出された2次側電圧信号にLCRフィルタを用いないので位相遅れが生じず、したがって、従来例に比べてCRT管面上の画像の大きさをより容易かつ精度良く最適化することができる。
【0087】
いずれの変形例による水平偏向高圧発生回路においても、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、映像装置の水平偏向高圧発生回路において、LCRフィルタではなくクランプ手段を用いるので位相遅れが生じず、出力調整手段でフライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、水平偏向電流の補正が容易であると共に精密に実現可能であり、従来例のような回路パラメータの調整が不要である。したがって、本発明によれば、容易かつ精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整することができる。
【0089】
また、本発明によれば、出力調整手段でフライバックトランスの1次側および2次側の各電圧から抽出される各リプル成分を任意に調整できるので、CRTのアノード電極に印加される高電圧をフラットな周波数特性で容易に検出できるので、動画像に対する過渡応答が向上する。
【0090】
なお、上述のように、CRT管面上の画像の大きさを一定に保つ方法としては、CRTのアノード電極と偏向電流とを共に制御する方法と、CRTのアノード電極の変動をある程度許容し、その変動に応じて偏向電流を適切に制御する方法がある。本発明は後者の方法であるが、前者の場合に比べて部品点数を低減することができ、なおかつ、前者の場合同様に精度良くCRT管面上の画像の大きさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水平偏向高圧発生回路の基本ブロック図である。
【図2】本発明の実施例におけるクランプ手段の動作を説明するための回路図である。
【図3】図2のクランプ手段の各個所における波形を示す波形図であって、(a)は、垂直同期信号を、(b)は、図2の点Aにおける電位であってクランプ手段の入力信号に相当する波形を、(c)は、同じく入力信号の波形と、図2の点Bにおける電位であってクランプ手段の出力信号に相当する波形とを示す波形図である。
【図4】本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路の回路図である。
【図5】本発明の実施例による水平偏向高圧発生回路における演算器の回路図である。
【図6】本発明の実施例の変形例による水平偏向高圧発生回路のブロック図である。
【図7】テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示するブロック図である。
【図8】テレビジョン受像機における従来例による水平偏向高圧発生回路を例示する回路図である。
【符号の説明】
1…水平偏向高圧発生回路
2…演算器
11…第1のクランプ手段
12…加算手段
13…第2のクランプ手段
14…出力調整手段
15…出力調整手段
16…反転バッファ
17…バッファ
18…加算器
21、22…クランプ電圧源
SW1、SW2…スイッチ
Ccl1、Ccl2…コンデンサ
Vcl1、Vcl2…電圧源
Claims (4)
- CRTの水平偏向コイルに流れる水平偏向電流を制御すると共に、前記水平偏向コイルに発生するパルス電圧をフライバックトランスの1次側に印加したときに前記フライバックトランスの2次側から出力される高電圧を、前記CRTのアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路において、
前記アノード電極において検出された2次側電圧信号を、映像同期信号を検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第1のクランプ手段と、
前記2次側電圧信号と前記第1のクランプ手段の出力信号の反転値とを加算して前記水平偏向電流を制御するための補正信号を生成する加算手段と、を備えることを特徴とする水平偏向高圧発生回路。 - 前記フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出された1次側電圧のリプル成分信号を、前記映像同期信号を検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプして出力する第2のクランプ手段をさらに備え、
前記加算手段は、前記第2のクランプ手段の出力信号をさらに加算する請求項1に記載の水平偏向高圧発生回路。 - 前記クランプ手段は、その出力信号の信号レベルを調整する出力調整手段を有する請求項1または2に記載の水平偏向高圧発生回路。
- CRTの水平偏向コイルに流れる水平偏向電流を制御すると共に、前記水平偏向コイルに発生するパルス電圧をフライバックトランスの1次側に印加したときに前記フライバックトランスの2次側から出力される高電圧を、前記CRTのアノード電極に印加する水平偏向高圧発生回路において、
前記アノード電極において検出され、所定の信号レベルに調整されかつ反転された2次側電圧信号の反転値と、前記フライバックトランスの1次側に接続された電源ラインにおいて検出され、所定の信号レベルに調整された1次側電圧のリプル成分信号と、を加算する加算手段と、
該加算手段の出力信号を、映像同期信号を検出した時に、所定のクランプ電圧にクランプし、前記水平偏向電流を制御するための補正信号を生成するクランプ手段と、を備えることを特徴とする水平偏向高圧発生回路。
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