JP3800970B2 - 継目無鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、継目無鋼管の製造方法に係わり、より詳しくはマンネスマンピアサに代表される傾斜ロール式の穿孔圧延機(ピアサ)による継目無鋼管の穿孔圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
継目無鋼管は、マンネスマン方式の場合、中実の丸ビレットを穿孔圧延して中空素管となし、この中空素管を所定寸法に延伸圧延することにより製造される。
【0003】
具体的に説明すると、中実の丸ビレットの穿孔圧延工程では、パスラインのまわりに配設された複数の傾斜ロールの間に被加工材としての丸ビレットを噛み込ませ、この丸ビレットをその軸心線方向へ移動させると共に、丸ビレットの軸心線方向に沿って砲弾形状のプラグを貫入させ、丸ビレットを穿孔して中空素管とする。
【0004】
また、中空素管の延伸圧延工程では、パスラインのまわりに配設された複数のロールの間に前記中空素管を噛み込ませ、この中空素管にその軸心線方向に沿ってプラグもしくはマンドレルバー等の内面拘束工具を貫入させ、延伸圧延して所望の外径、肉厚を有する継目無鋼管とする。
【0005】
前記傾斜ロール式の穿孔圧延機(ピアサ)を用いた穿孔圧延過程においては、プラグは加熱されたビレットおよび中空素管との絶え間ない接触によって常時高温、高負荷にさらされるため、摩耗、溶損しやすい。従って、一般に、プラグには900〜1100℃の高温でスケール付け熱処理を施し、プラグ表面に数十μmから1000μmのスケール被膜を形成させ、損耗防止を図っている。
【0006】
ところで、この穿孔圧延過程においては、中実の丸ビレットが傾斜ロール間に噛み込まれてプラグによって穿孔されるまでの間に、傾斜ロールによる回転鍛造効果により中実の丸ビレットの軸心部にマンネスマン割れと称する割れが発生し、この割れが穿孔圧延後の中空素管の内面疵として残ることがある。
【0007】
内面疵の防止対策としては、噛み込みからプラグにより穿孔されるまでの間の丸ビレットの回転数を減らすことが有効であることが知られている。そして、丸ビレットの回転数を減らすには、例えば、傾斜ロールの傾斜角度を大きくするのが有効である。しかし、傾斜ロールの傾斜角度を大きくする方法は、傾斜ロール間に対する丸ビレットの噛み込み不良を引き起こす原因になるために、その両立は困難である。
【0008】
上記のような問題点の防止対策としては、傾斜ロールと被圧延材の間に珪素化合物等の粉粒体を主成分とした増摩材を介在させる方法が提案されている(特開平5−57307号公報)。しかし、この方法は、傾斜ロールに向けて増摩材を散布する必要があるため、増摩材が傾斜ロールや周辺機器の軸受を構成するベアリング部分等に浸入し、ベアリング部分を損傷させる等の問題がある。
【0009】
また、特開平6−55204号公報には、穿孔圧延中に傾斜ロールの交叉角を変化させる方向も提案されているが、この方法を既存設備に適用する場合には、設備改造が必要で費用が嵩む他、所望の寸法精度を確保することが困難になる等の問題がある。
【0010】
さらに、特開平5−138213号公報や同8−197113号公報には、プラグ表面に黒鉛系や水ガラス系の潤滑剤を塗布する方法が提案されているが、これらの方法の主たる目的はプラグ寿命を向上させることにあり、内面疵が発生するのを十分には防止し得ないという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、スケール付け熱処理を施したプラグを用いる傾斜ロール式の穿孔圧延機による穿孔圧延において、傾斜ロール間に対する丸ビレットの噛み込み性を悪化させることなく内面疵が発生するのを防ぐことができ、内面品質の良好な製品を得ることが可能な継目無鋼管の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の継目無鋼管の製造方法にある。
【0013】
表面に対するスケール付け熱処理をおこなったプラグを用いて穿孔圧延をおこなう継目無鋼管の製造方法であり、熱処理後のプラグ表面に、B2O3に代表される硼酸系の酸化物を塗布して穿孔圧延に供することを特徴とする継目無鋼管の製造方法。
【0014】
上記本発明の方法においては、スケール付け熱処理後のプラグ表面のスケールの厚さは500μm以下であることが好ましく、さらにはプラグ表面のスケールのうち、Fe3O4主体とFe2O3主体の外層スケールを除去した後のプラグ表面にスケール溶融物質を塗布することがより好ましい。
【0015】
ここで、外層スケールとは、地金側から見た時、主として、Fe2MO4(MはFe以外の金属元素で、例えば、Cr、Ni、W等である)、FeO、Fe3O4、Fe2O3の順に積層形成される多層構造のスケール層のうちのFe3O4主体とFe2O3主体の層をいう。
【0016】
また、地金に最も近い部分に、いわゆるスピネル型酸化物と称されるFe2MO4主体のスケール層が形成されるのは、後述するように、穿孔圧延用プラグの材質としては、一般に、Fe−Cr系、Fe−Ni系、Fe−W系等のFe基合金を用いられるからである。
【0017】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意実験研究をおこない、以下に述べる知見を得て、上記の本発明を完成させた。
(1) 内面疵は、スケール付け熱処理した一つのプラグによる1パス目の圧延管(中空素管)に多く発生し、2パス目以降の圧延管では発生頻度が激減する。
(2) また、穿孔効率(穿孔速度/ロール回転速度)は、スケール付け熱処理した一つのプラグによる1パス目の穿孔圧延時の方が2パス目以降の穿孔圧延時よりも低い。
(3) 上記(1)、(2)となる原因は、スケール付け熱処理したままのスケール表面が粗くて摩擦抵抗が大きいのに対し、一度使用されたスケール表面はスケール表層が溶融して滑らかになり、摩擦抵抗が小さくなるためである。
(4) そこで、1パス目においてもプラグ表面のスケール表層を溶融させればよいと考え、スケール付け熱処理後のプラグ表面に、スケールと反応してスケール表層を溶融させるスケール溶融物質を塗布することを試みた。その結果、スケール中のFeOとの共晶温度が1200℃以下のスケール溶融物質を塗布すれば、1パス目の穿孔直前にプラグ表面のスケール表層が溶融してスケール表面が滑らかになって穿孔効率が高くなり、1パス目の圧延管の内面疵の発生頻度が大幅に少なくなることが判明した。
(5) また、スケール付け熱処理後のスケール厚みを500μm以下にすると、内面疵の発生頻度がより少なくなり、さらに外層スケールを除去して上記のスケール溶融物質を塗布すると、内面疵の発生頻度がより一層少なくなることが判明した。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法について詳細に説明する。
【0019】
穿孔圧延に用いられるプラグの材質は、前述したように、Fe−Cr系、Fe−Ni系、Fe−W系等のFe基合金である。したがって、これ等のFe基合金からなるプラグに、スケール付け熱処理を施すと、その表面には、前述したように、プラグ地金側から見た時、主として、Fe2MO4(MはFe以外の金属元素で、例えば、Cr、Ni、W等である)、FeO、Fe3O4、Fe2O3の順に積層した多層構造のスケール層が形成される。
【0020】
ここで、上記多層構造のスケール層のうち、スピネル型酸化物と称されるFe2MO4主体のスケール層とFeO主体のスケール層は緻密であり、Fe3O4主体とFe2O3主体のスケール層はポーラスである。また、FeO、Fe3O4、Fe2O3の融点は、それぞれ、1370℃、1600℃、1570℃である。
【0021】
本発明においては、スケール付け熱処理により上記多層構造のスケールが形成されたプラグを1パス目の穿孔圧延に供する前に、その表面にスケール溶融物質を塗布するが、そのスケール溶融物質は鉄の酸化物である上記多層構造のスケール中のFeOとの共晶温度が1200℃以下の物質でありさえすればよく、その種類は特に規定されない。
【0022】
ここで、その共晶温度を1200℃以下としたのは、共晶温度が1200℃を超える物質を塗布したのでは1パス目の穿孔圧延中、スケール表層の溶融が遅く、所望の効果が得られないからである。
【0023】
上記FeOとの共晶温度が1200℃以下のスケール溶融物質としては、B2O3に代表される硼酸系、SiO2 に代表される珪酸系、WO2 に代表される酸化タングステン系、Na2O に代表される酸化ナトリウム系等の酸化物等を挙げることができるが、B2O3に代表される硼酸系の酸化物を用いるのが好ましい。
【0024】
すなわち、上記SiO2 に代表される珪酸系やWO2 に代表される酸化タングステン系の酸化物は、スケールと過剰に反応しすぎ、スケールの摩耗を助長する。また、Na2O に代表される酸化ナトリウム系の酸化物は、製品に付着した場合、製品の使用環境によっては製品が脆化し、所望の性能を得ることができなくなる場合があるためである。
【0025】
スケール溶融物質の塗布量は、乾燥時の塗膜厚さが10μm以上であれば十分であり、上限塗膜厚さは特に制限しないが、200μmを超えて塗布してもその効果は変わらず、経済的に不利であるので、上限塗膜厚さは200μm以下とするのがよい。
【0026】
上記スケール溶融物質の塗布効果は、前述したように、損耗防止を図る観点から、一般に数十μmから1000μmとされるスケール付け熱処理ままのスケール表面に塗布しても得られる。しかし、厚すぎるスケールは、プラグ搬送中や穿孔圧延の開始直後に剥離しやすく、表面に塗布したスケール溶融物質がスケールととも脱落することがある。このため、スケール厚さは500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下とするのがよい。
【0027】
また、多層構造のスケールのうち、ポーラスな外層スケールは剥離しやすい。このため、上記のスケール溶融物質は、外層スケールを除去した後のスケール表面に塗布するのが望ましく、この場合にはその塗布効果が一段と向上する。
【0028】
外層スケールの除去は、例えば、ハンマーで叩いたり、グラインダーで削ったり、さらにはスケール表面をバーナ火炎で急速して熱衝撃を加える等しておこなえばよく、その除去手段は特に制限されない。
【0029】
なお、スケール厚さの下限は、所望のプラグ使用回数を考慮して定めればよく、特に規定する必要はないが、その下限は50μm以上、より好ましくは100μm以上とするのがよい。
【0030】
【実施例】
Fe−Cr系のFe基合金からなり、表1に示すように、種々厚さのスケール表面に種々異なるスケール溶融物質の皮膜を形成させた15種類のプラグと、スケール付け熱処理のままのプラグを、それぞれ5個準備した。
【0031】
なお、スケール溶融物質の皮膜は、いずれも、スケール溶融物質の濃度が30質量%の水溶液を刷毛を用いて室温状態のプラグ表面に塗布後、室温下に放置して乾燥固化させることにより形成させた。
【0032】
また、スケール厚さは、熱処理時間を変えることで種々変化させ、その厚さは電磁膜厚計(サンコウ電子研究所(株)製のSDM−pico)により測定した。さらに、試番4〜6のプラグの外層スケールは、ベルターにて研削除去した。
【0033】
準備した各プラグは、下記条件の実機による穿孔圧延工程を含む継目無鋼管の製造実験に供し、ストレッチレデューサーミルによる仕上げ圧延後の製品管の内面疵の発生本数を超音波探傷法で調べることによりスケール溶融物質の塗布効果を評価した。その結果を、表1に併せて示した。
【0034】
《実機の製造条件》
SUS304相当鋼の外径187mm、長さ920mmの丸ビレットを1230℃に加熱後、ピアサで外径192mm、肉厚12.19mm、長さ3520mmの中空素管に成形し、続いてマンドレルミルで外径110mm、肉厚3.50mm、長さ約21180mmの仕上圧延用素管に成形し、1000℃に再加熱後、ストレッチレデューサーで外径34.0mm、肉厚3.0mm、長さ83600mmに定径圧延し、長手方向に3分割する。
【0035】
【表1】
表1に示す結果からわかるように、プラグ表面のスケール上にスケールとの共晶温度が1200℃以下のスケール溶融物質の塗膜を形成させたプラグ(試番1〜7)を用いた場合には、1パス目の内面疵発生本数が15本中は4本以下と少なく、なかでも厚さが500μm以下のスケール表面や外層スケール除去後のスケール表面に形成させた場合にその効果が顕著で、特に外層スケール除去後のスケール表面に形成させた場合の効果が一段と著しい。
【0036】
これに対し、プラグ表面のスケール上にスケールとの共晶温度が1200℃を超えるスケール溶融物質の塗膜を形成させたプラグ(試番11〜15)を用いた場合には、1パス目の内面疵発生本数が15本中は9本以上と多く、2パス目以降でも内面疵が多く発生し、スケール付け熱処理のままのプラグ(試番16)を用いた場合とほとんど変わらない。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、傾斜ロールを用いた穿孔機での穿孔圧延において、噛み込み性を悪化させることなく、内面品質の良好な継目無鋼管の製造が可能になる。
Claims (3)
- 表面に対するスケール付け熱処理をおこなったプラグを用いて穿孔圧延をおこなう継目無鋼管の製造方法であり、熱処理後のプラグ表面に、スケール溶融物質としてB2O3に代表される硼酸系の酸化物を塗布して穿孔圧延に供することを特徴とする継目無鋼管の製造方法。
- プラグ表面スケールの厚さが500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の継目無鋼管の製造方法。
- 上記プラグ表面スケールのうち、Fe3O4主体とFe2O3主体の外層スケール除去後のプラグ表面スケール上にスケール溶融物質を塗布することを特徴とする請求項1または2に記載の継目無鋼管の製造方法。
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