JP3800310B2 - 渦電流減速装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は主として車両の摩擦ブレーキを補助する渦電流減速装置、特に電磁石および/または永久磁石を用いた渦電流減速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石を用いた渦電流減速装置は、永久磁石を制動ドラムの内外に移動させるか(特願平1−218499号)、制動ドラムの内部で永久磁石を周方向等間隔に結合する磁石支持筒を正逆回動させる(特願平2−201820号)などして、非制動位置と制動位置とに切り換える構造のものであり、磁石支持筒を動かすのにアクチユエータを必要とする。アクチユエータには空圧シリンダ、油圧シリンダ、回転モータ、リニアモータなどが採用される。一方、電磁石を用いた渦電流減速装置は電磁石を動かす必要はなく、電磁コイルへ加える電流の制御だけで、非制動と制動とに切り換えることができるが、永久磁石を用いた渦電流減速装置に比べて形状が大きく、重くなるなどの問題があつた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は多極化しやすい構造の電磁石を用いた渦電流減速装置を提供することにある。
【0004】
本発明の他の課題は従来の電磁石を利用した渦電流減速装置よりも小型・軽量であり、磁石支持環を動かすことなく、電磁コイルの電流を制御するだけで非制動と制動とに切り換えできる渦電流減速装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成は、回転軸に結合した制動ドラムの内部に配置した非磁性体からなる不動の磁石支持環に、多数の電磁石の両端に1対の磁極片を密着させて1つの電磁石組立体を形成したうえ周方向等間隔に支持し、前記磁極片を制動ドラムの内周面と対向させて配設し、前記電磁石に通電することにより電磁石からの磁界に基づく渦電流により前記制動ドラムに制動力を発生させることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の構成は、回転軸に結合した制動ドラムの内部に配置した非磁性体からなる不動の磁石支持環に、中空の鉄心に電磁コイルを巻装してなる多数の電磁石と、制動ドラムの内周面と対向する磁極片とを周方向に交互に密着させて配設し、前記鉄心の中空部に永久磁石を嵌合し、前記電磁石に通電することにより電磁石と永久磁石からの磁界に基づく渦電流により前記制動ドラムに制動力を発生させることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明では回転軸に結合した制動ドラムの内部に、非磁性体からなる不動の磁石支持環を配設する。磁石支持環に、制動ドラムの内周面と対向するように電磁石と磁極片を周方向に交互に密着させて配設する。電磁石の鉄心の中空部に永久磁石を嵌合する。電磁石に通電することにより電磁石と永久磁石からの磁界に基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる。
【0008】
【実施例】
図1,2に示すように、渦電流減速装置は回転軸1に結合したボス部から放射状に突出する複数の支持腕5の先端に、外周面に放熱フイン2aを有する制動ドラム2の基端部が溶接などにより結合される。鉄などからなる制動ドラム2の両端部には銅などの良導体からなる環状体3,4が結合され、渦電流の軸方向への広がりを促し、制動能力を高めるようになつている。電磁石20は中空の鉄心12に外嵌した巻枠10に、電磁コイル9を巻装してなる。鉄心12は制動ドラム2の周方向に延び、周方向の両端に磁極片8を密着される。径方向に延びる磁極片8は前後(軸方向の)両端を、固定板7aと一体をなす非磁性体からなる円板状の磁石支持環7と環状の磁石支持環7との間に挟まれ、磁石支持環7、磁極片8、磁石支持環7を貫通する複数のボルト6にナツト6aを螺合して締結される。固定板7aは車両の非回転部分に固定される。こうして、多数の電磁石組立体Aが磁石支持環7に周方向等間隔に結合され、磁極片8が制動ドラム2の内周面に接近して対向される。図2に示す渦電流減速装置では、制動ドラム2の内周面に対向する磁極片8の極性が、周方向交互に異なるように配設されるが、図3に示すように、制動ドラム2の内周面に対向する磁極片8の極性が、周方向に2ずつ異なるように配設されてもよい。
【0009】
図4に電磁石組立体Aの1つを示すように、磁極片8は径内方部分の周方向寸法よりも、径外方部分の周方向寸法が長い扇状のものである。相対向する1対の磁極片8の側面には窪み8aが設けられ、窪み8aに中空の鉄心12が嵌合するように密着され、電磁コイル9の巻枠10が鉄心12に外嵌される。鉄心12の中空部に好ましくは合成樹脂などの筒状の非磁性材13を嵌合し、非磁性材13の一端部に永久磁石14が磁極片8に密着するように嵌合され、中空部の他端部には磁性体15が嵌合される。しかし、非磁性材13はなくても相当の作用効果が得られる。
【0010】
永久磁石14は鉄心12の軸方向端部が磁極をなすように着磁されており、電磁コイル9の非通電時、図4に示すように、永久磁石14のN極からの磁界は磁極片8、鉄心12、他方の磁極片8、磁性体15へと短絡的磁気回路wを形成し、制動ドラム2には磁界を及ぼさない。
【0011】
図5に示すように、制動時、電磁コイル9に通電すると、例えば鉄心12の左端が永久磁石14と同じくN極に、右端がS極になり、制動ドラム2との間に磁気回路zを形成する。回転する制動ドラム2が電磁石20と永久磁石14からの磁界を横切る時、制動ドラム2の内部に渦電流が発生し、制動ドラム2に制動トルクを発生する。制動トルクの大きさは電磁コイル9へ加える電流により加減される。
【0012】
図6,7に示すように、鉄心12の一端側(図示の左端側)に中空部を形成し、該中空部に永久磁石14だけを嵌合するようにしても、図4,5に示す電磁石組立体Aと同様の作用効果が得られる。また、左右1対の磁極片8は互いに平行な内側面に電磁石20と永久磁石14を挟持するようにし、磁極片8の外側面を内側面に対して傾斜させて、径内方部分の周方向寸法よりも径外方部分の周方向寸法が大なる扇形に形成してもよい。
【0013】
上述の実施例では、円筒体をなす鉄心12の中空部の一端側に永久磁石14が、他端側に磁性体15がそれぞれ嵌合されているが、図8に示すように、鉄心12を断面長方形をなす中空のものとし、中空部の一端側に断面長方形の永久磁石14を嵌合するようにしてもよく、また、図9に示すように、断面長円形の鉄心12に複数の断面円形または断面長方形の中空部を構成し、該中空部に中空断面と同形の永久磁石14を嵌合してもよい。
【0014】
また、図10に示すように、周方向に並ぶ1対の磁極片8の間の内周部と外周部とに2つの電磁石20を、さらには3つの電磁石20を挟持するようにしても、上述の実施例と同様の作用効果が得られる。さらに、以上の実施例では、電磁石組立体Aが磁石支持環7に周方向等間隔に、かつ互いに所定の間隔を存して配設されているが、周方向に隣接する磁極片8を互いに密着させて配設してもよく、この場合には隣接する電磁石20の電磁コイル9への通電方向を互いに逆にして、周方向に密着された1対の磁極片8の制動ドラム2の内周面に対向する極性が周方向交互に異なるように構成する(図11を参照)。
【0015】
図11,12に示す実施例では、中空の鉄心12に電磁コイル9を巻装して電磁石20を構成し、磁極片8と電磁石20とを周方向交互に密着させて、磁石支持筒19Aの外周面に支持し、磁極片8をボルト18により結合したものである。特に、図12に示す実施例では、各磁極片8の外周縁に軸方向の溝23を設けて多極化したものである。
【0016】
図13に示す実施例では、電磁石20と磁極片8は断面溝形をなす非磁性体からなる磁石支持筒19の内部へ収容され、磁石支持筒19の内筒部ないし底部からボルト18を磁極片8に螺合して締結される。電磁石20と磁極片8の外周面は、磁極片8と対向する部分のみが磁性体であり残余の部分が非磁性体である筒形の覆板21により覆われ、電磁コイル9の内部へ泥水などが浸入するのを防止する。
【0017】
【発明の効果】
本発明は上述のように、回転軸に結合した制動ドラムの内部に配置した非磁性体からなる不動の磁石支持環に、多数の電磁石の両端に1対の磁極片を密着させて1つの電磁石組立体を形成したうえ周方向等間隔に支持し、前記磁極片を制動ドラムの内周面と対向させて配設し、前記電磁石に通電することにより電磁石からの磁界に基づく渦電流により前記制動ドラムに制動力を発生させるものであるから、従来の電磁石式渦電流減速装置よりも小型・軽量になり、永久磁石式渦電流減速装置よりも大きく、重くなるが、永久磁石を動かす必要がなく、電磁コイルの電流を制御するだけで、渦電流減速装置の非制動と制動の切換えが得られ、また制動力を加減することができる。
【0018】
周方向に延びる多数の電磁石と、制動ドラムの内周面と対向する磁極片との組合せにより、多極化(制動ドラムの内周面と対向する極数を多くする)が容易になり、制動能力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る渦電流減速装置の部分的側面断面図である。
【図2】同渦電流減速装置の部分的正面断面図である。
【図3】本発明の変更実施例に係る渦電流減速装置の部分的正面断面図である。
【図4】図2に示す渦電流減速装置の電磁石組立体の非制動時の正面断面図である。
【図5】同電磁石組立体の制動時の正面断面図である。
【図6】図3に示す渦電流減速装置の電磁石組立体の非制動時の正面断面図である。
【図7】同電磁石組立体の制動時の正面断面図である。
【図8】電磁石組立体の変更実施例を示す側面断面図である。
【図9】電磁石組立体の他の変更実施例を示す側面断面図である。
【図10】電磁石組立体の他の変更実施例を示す正面断面図である。
【図11】本発明の第2実施例に係る渦電流減速装置の正面断面図である。
【図12】本発明の第3実施例に係る渦電流減速装置の正面断面図である。
【図13】本発明の第4実施例に係る渦電流減速装置の磁石支持筒の側面断面図である。
【符号の説明】
A:電磁石組立体 w:短絡的磁気回路 z:磁気回路 1:回転軸 2:制動ドラム 2a:放熱フイン 3:良導体の環状体 4:良導体の環状体 5:支持腕 6:ボルト 6a:ナツト 6b:通孔 7:磁石支持環 7a:固定板8:磁極片 8a:窪み 9:電磁コイル 10:巻枠 12:鉄心 13:非磁性材 14:永久磁石 15:磁性体 18:ボルト 19,19A:磁石支持筒 20:電磁石 21:覆板 23:溝

Claims (11)

  1. 回転軸に結合した制動ドラムの内部に配置した非磁性体からなる不動の磁石支持環に、多数の電磁石の両端に1対の磁極片を密着させて1つの電磁石組立体を形成したうえ周方向等間隔に支持し、前記磁極片を制動ドラムの内周面と対向させて配設し、前記電磁石に通電することにより電磁石からの磁界に基づく渦電流により前記制動ドラムに制動力を発生させることを特徴とする渦電流減速装置。
  2. 前記電磁石組立体における相隣接する磁極片は、制動ドラムの内周面に対する極性が互いに異なる、請求項1に記載の渦電流減速装置。
  3. 前記電磁石組立体における相隣接する磁極片は、制動ドラムの内周面に対する極が同じである、請求項1に記載の渦電流減速装置。
  4. 前記電磁石は中空の鉄心に電磁コイルを巻装してなり、前記鉄心の中空部に嵌合した永久磁石の周方向の一端面を前記磁極片に密着した、請求項1〜3に記載の渦電流減速装置。
  5. 回転軸に結合した制動ドラムの内部に配置した非磁性体からなる不動の磁石支持環に、中空の鉄心に電磁コイルを巻装してなる多数の電磁石と、制動ドラムの内周面と対向する磁極片とを周方向に交互に密着させて配設し、前記鉄心の中空部に永久磁石を嵌合し、前記電磁石に通電することにより電磁石と永久磁石からの磁界に基づく渦電流により前記制動ドラムに制動力を発生させることを特徴とする渦電流減速装置。
  6. 前記磁極片は径外方端部の周方向寸法が径内方端部の周方向寸法よりも大なる扇形をなす、請求項1〜5に記載の渦電流減速装置。
  7. 前記磁極片は軸方向の一端面を前記磁石支持環に固着され、前記各磁極片の周方向の一端面に設けた窪みに、前記電磁石の鉄心が係合される、請求項1〜5に記載の渦電流減速装置。
  8. 前記電磁石は非磁性体からなる断面溝型の筒状の磁石支持環の内部に収容され、外周部を非磁性体からなる覆板により覆われる、請求項1〜5に記載の渦電流減速装置。
  9. 前記電磁石は前記磁極片に密着されて前後2つの非磁性板からなる不動の磁石支持環の間に挟持され、前記磁極片と前記磁石支持環とを貫通するボルトなどの締結手段により締結される、請求項1〜5に記載の渦電流減速装置。
  10. 前記電磁石と前記磁極片は前記制動ドラムの内部に配置した非磁性板からなる不動の磁石支持環に重ね合され、前記磁石支持環と前記磁極片とを貫通するボルトなどの締結手段により締結される、請求項1〜5に記載の渦電流減速装置。
  11. 前記鉄心の中空部に非磁性材を介して永久磁石を嵌合した、請求項1〜5に記載の渦電流減速装置。
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