JP3760745B2 - 渦電流減速装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は主として車両の摩擦ブレーキを補助する、電磁石と永久磁石を用いた渦電流減速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石を用いた渦電流減速装置は、永久磁石を制動ドラムの内外に移動させるか(特願平1−218499号)、制動ドラムの内部で偶数個の永久磁石を周方向に結合する磁石支持筒を正逆回動させる(特願平2−201820号)などして、非制動位置と制動位置とに切り換える構造のものであり、磁石支持筒を動かすのにアクチユエータを必要とする。アクチユエータには空圧シリンダ、油圧シリンダ、回転モータ、リニアモータなどが採用される。一方、特開平6−327227号公報などに開示される電磁石を用いた渦電流減速装置は電磁石を動かす必要はなく、電磁コイルへ加える電流の制御だけで、非制動位置と制動位置とに切り換えることができるが、永久磁石を用いた渦電流減速装置に比べて形状が大きく、重量が重くなるなどの問題があつた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上述の問題に鑑み、従来の電磁石を利用した渦電流減速装置よりも小型・軽量であり、磁石支持環を動かすことなく、電磁コイルの電流を制御するだけで非制動位置と制動位置とに切り換えできる渦電流減速装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成は回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部に配設した環状板からなる不動の磁石支持板と、該磁石支持板に周方向等間隔に支持した多数の電磁石とを備えており、前記電磁石は環状板の外周縁から径外方へ突出して前記制動ドラムの内周面に対向する多数の磁極片を有する多数の電磁鋼板を積層してなる鉄心と、前記磁極片に巻装した電磁コイルと、前記鉄心の磁極片の一部の少くとも1つの内空部に埋め込んだ径方向の極性を有する永久磁石とからなり、前記電磁石に通電することにより、前記電磁石と永久磁石からの磁界による渦電流に基づく制動力を前記制動ドラムに発生させることを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明では回転軸に結合した制動ドラムの内部に、不動の磁石支持板を配設する。制動ドラムの内周面と対向する多数の磁極片を有する環状の電磁鋼板を多数枚積層して鉄心を構成し、鉄心を磁石支持板に支持する。鉄心の磁極片に設けた内空部に永久磁石を嵌合する。電磁石に通電することにより、電磁石からの磁界と永久磁石からの磁界とに基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる。電磁石から発生する磁界の方向は永久磁石から発生する磁界の方向と一致させる。
【0006】
電磁コイルに非通電時は、永久磁石からの磁界は鉄心の内部で短絡的磁気回路を形成し、鉄心の外部へは殆ど磁界を及ぼさない。電磁コイルに通電時は、電磁コイルの磁界と永久磁石の磁界の方向が同じであるので、磁極部材のN極から出た磁界は制動ドラムに入り、隣接する磁極部材のS極へ入り、電磁石と制動ドラムとの間に磁気回路を形成する。
【0007】
【実施例】
図1,2に示すように、渦電流減速装置は回転軸61に結合したボス部から放射状に突出する複数の支持腕65の先端に、外周面に放熱フイン62aを有する制動ドラム62の基端部が溶接などにより結合される。鉄などからなる制動ドラム62の両端部には銅などの良導体からなる環状体63,64が結合され、渦電流の軸方向への広がりを促し、制動能力を高めるようになつている。制動ドラム62の内部には多数の電磁石80が周方向等間隔に配設される。電磁石80は多数の電磁鋼板を積層してなる鉄心72と電磁コイル69とからなる。鉄心72を構成する電磁鋼板は、環状板72aと環状板72aから径外方へ突出する多数の磁極片72bとを一体に備えている。多数の磁極片72bは周方向等間隔に配設され、制動ドラム62の内周面に対向する磁極片72bの端部は周方向の広がりを持つている。磁極片72bに内空部76が設けられ、内空部76に断面長方形をなす筒状の非磁性材73を嵌合し、非磁性材73の内部に径方向に並ぶブロツク状の永久磁石74と強磁性体75が埋め込まれている。
【0008】
図3に示すように、上述した多数の電磁鋼板を回転軸61の軸方向に積層してなる鉄心72は、積層体の内側に存する電磁鋼板にのみ、長方形の開口を設けて内空部76が形成される。永久磁石74の極性は径方向外端と径方向内端が磁極をなすように埋め込まれる。磁極片72bに永久磁石74と強磁性体75を取り囲むように巻枠70が配設され、巻枠70に電磁コイル69が巻装される。鉄心72は環状の磁石支持板67へ、鉄心72と磁石支持板67を貫通するボルト78にナツト78aを螺合して締結される。図1に示すように、ボルト78を挿通する通孔78bは、環状板72aに周方向等間隔に設けられる。ボルト78とナツト78aの代りにリベツトを用いることができる。
【0009】
図4に示すように、非制動時、電磁コイル69には通電されず、磁極片72bの内部に埋め込まれた永久磁石74は、磁極片72bとの間に短絡的磁気回路wを形成し、制動ドラム62には磁界を及ぼさない。したがつて、制動ドラム62は制動トルクを受けない。
【0010】
図5に示すように、電磁コイル69に通電すると、電磁石80からの磁界と永久磁石74からの磁界が同方向に制動ドラム62へ磁界を及ぼす。回転する制動ドラム62が電磁石80と永久磁石74からの磁界を横切る時、制動ドラム62の内部に渦電流に基づく制動トルクが発生する。この時、周方向に隣接する磁極片72bの極性は互いに逆になつている。制動ドラム62と電磁石80との間には磁気回路zが生じる。
【0011】
上述の実施例において、電磁石80を構成する鉄心72は、周方向に分割された電磁鋼板を互いに突き合せて環状に並べたものを多数用意し、突合せ部を周方向にずらして多数の電磁鋼板を積層して構成するようにしてもよい。また、磁極片72bの内空部76に永久磁石74と強磁性体75が埋め込まれているが、図6,7に示すように、磁極片72bの内部に径方向の極性をもつ永久磁石74だけを埋め込んでも、図4,5の実施例と同様の作用効果が得られる。また、図8に示すように、磁極片72bに複数の内空部76を軸方向に並べて設け、各内空部76に筒形の非磁性材73を嵌合し、非磁性材73の内部に径方向に並ぶ永久磁石74と強磁性体75を埋め込むか、永久磁石74だけを埋め込むようにしてもよい。
【0012】
図9に示す実施例では、鉄心72の軸方向の端面(図の右端面)に、電磁鋼板と同形で電磁鋼板よりも厚い補強板77を重ね合せ、鉄心72の左端面を磁石支持板67へ重ね合せ、補強板77、鉄心72、磁石支持板67を貫通するボルト78にナツト78aを螺合して締結される。
【0013】
図10に示すように、多数の電磁鋼板を積層してなる鉄心72の両端面に、電磁鋼板と同形で電磁鋼板よりも厚い補強板77を重ね合せたうえ、磁極片72bに補強板77をも取り囲む電磁コイル69を巻装したうえ、ボルト78とナツト78aにより磁石支持板67へ締結するようにしてもよい。
【0014】
【発明の効果】
本発明は上述のように、回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部に配設した環状板からなる不動の磁石支持板と、該磁石支持板に周方向等間隔に支持した多数の電磁石とを備えており、前記電磁石は環状板の外周縁から径外方へ突出して前記制動ドラムの内周面に対向する多数の磁極片を有する多数の電磁鋼板を積層してなる鉄心と、前記磁極片に巻装した電磁コイルと、前記鉄心の磁極片の一部の少くとも1つの内空部に埋め込んだ径方向の極性を有する永久磁石とからなり、前記電磁石に通電することにより、前記電磁石と永久磁石からの磁界による渦電流に基づく制動力を前記制動ドラムに発生させるものであるから、従来の電磁石式渦電流減速装置よりも小型・軽量になり、永久磁石式渦電流減速装置よりも大きくかつ重くなるが、永久磁石を動かす必要がなく、電磁コイルの電流を制御するだけで、渦電流減速装置の非制動と制動の切換えを行うとともに、制動力を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る渦電流減速装置の部分的正面断面図である。
【図2】同渦電流減速装置の部分的側面断面図である。
【図3】同渦電流減速装置の電磁石の平面断面図である。
【図4】同電磁石の非通電時の正面断面図である。
【図5】同電磁石の通電時の正面断面図である。
【図6】本発明の変更実施例に係る電磁石の非通電時の正面断面図である。
【図7】同電磁石の通電時の正面断面図である。
【図8】本発明の他の変更実施例に係る磁極片の側面断面図である。
【図9】本発明の他の変更実施例に係る渦電流減速装置の側面断面図である。
【図10】本発明の他の変更実施例に係る渦電流減速装置の側面断面図である。
【符号の説明】
61:回転軸 62:制動ドラム 63:環状体 64:環状体 65:支持腕67:磁石支持板 69:電磁コイル 72:鉄心 72a:環状板 72b:磁極片 73:非磁性材 74:永久磁石 75:強磁性体 76:内空部 77:補強板 78:ボルト 78a:ナツト 78b:通孔 80:電磁石

Claims (5)

  1. 回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部に配設した環状板からなる不動の磁石支持板と、該磁石支持板に周方向等間隔に支持した多数の電磁石とを備えており、前記電磁石は環状板の外周縁から径外方へ突出して前記制動ドラムの内周面に対向する多数の磁極片を有する多数の電磁鋼板を積層してなる鉄心と、前記磁極片に巻装した電磁コイルと、前記鉄心の磁極片の一部の少くとも1つの内空部に埋め込んだ径方向の極性を有する永久磁石とからなり、前記電磁石に通電することにより、前記電磁石と永久磁石からの磁界による渦電流に基づく制動力を前記制動ドラムに発生させることを特徴とする渦電流減速装置。
  2. 多数の電磁鋼板を重ね合せてなる鉄心の少くとも一方の端面に、前記電磁鋼板と同形の補強板を重ね合せた、請求項1に記載の渦電流減速装置。
  3. 多数の電磁鋼板を重ね合せてなる鉄心の少くとも一方の端面に、前記電磁鋼板と同形の補強板と前記磁石支持板とを重ね合せ、前記電磁鋼板と前記補強板と前記磁石支持板とを貫通するボルトまたはリベツトにより締結した、請求項1に記載の渦電流減速装置。
  4. 前記鉄心は周方向に分割された電磁鋼板を環状に並べかつ積層してなる、請求項1に記載の渦電流減速装置。
  5. 前記制動ドラムの少くとも一方の端面に、銅などの良伝導体からなる環状体を配設した、請求項1に記載の渦電流減速装置。
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