JP3799668B2 - 自動糸切装置付きミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天秤が上昇した状態で上下両糸の切断を行うように構成された自動糸切装置付きミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば本縫いミシンにおいては、可動刃を往動させることに伴って上下両糸のさばきを行った後、可動刃を復動させることにより、上下両糸を捕捉して固定刃側に引寄せ、固定刃と可動刃との間で切断するように構成された自動糸切装置が具備されている。この構成の場合、可動刃の復動タイミングは、最下点から最上点へ向かう天秤の上昇運動により、下糸に交差する上糸輪が引締められて加工布に上糸と下糸との結接点が形成されるタイミングに設定され、天秤が上昇した状態で上下両糸の捕捉および切断が行われるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来では、可動刃を復動させることにより、上下両糸を捕捉し固定刃側に引寄せる時、上糸量を増やす必要があるため一般には調子皿を開く糸ゆるめ機構により上糸を開放し、必要分の上糸量が糸駒から出されていた。そのような糸ゆるめ機構では、ミシンの上部にある調子皿とミシンの下部にある糸切り機構とを連動させる必要があるため、糸ゆるめ機構の構成が複雑になる、コストが高くなるといった問題があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、糸ゆるめ機構を設けずとも、上糸量を確保し糸切動作を終了し得る自動糸切装置付きミシンを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した問題点を解決するために本発明の請求項1記載の自動糸切り装置付きミシンは、縫針の上下動に連動して上糸を切断する糸切り手段と、糸切り手段による切断の直前に所定時間或いは所定期間上糸を挟持し、糸切り手段の切断前に上糸を解放する挟持手段とを備えている。従って、上糸が糸切り直前の所定時間或いは所定期間挟持され、天秤により新たに上糸が新たに繰り出され、糸切り時には、上糸が解放される。
【0006】
請求項2記載の自動糸切り装置付きミシンは、縫い目形成時において上糸或いは下糸の少なくとも一方を針板下方にて引く下糸案内部材によって挟持またはたぐる挟持手段を備え、下糸案内部材が縫製時の糸を引くことに加え、糸切り時の挟持に用いられている。
【0007】
請求項3記載の自動糸切り装置付きミシンは、下糸を巻かれたボビンを収納する内釜の上面と下糸案内部材とによって下糸を挟持する挟持手段を備え、内釜がボビンの収納に加え、糸切り時の挟持に用いられている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を電子制御式本縫いミシンに適用した一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図2において、ミシンベッドに相当するベッド部1の右端部には脚柱部2が立設され、この脚柱部2の上端部にはアーム部3が設けられている。このアーム部3は、ベッド部1に対向するように水平方向に延びるものであり、その内部には、主軸(図示せず)が収容されている。この主軸は、ミシンモータ(図示せず)に連結されたものであり、ミシンモータにより回転駆動させられ、天秤17、針棒11を駆動する。
【0010】
ミシン本体には糸切スイッチ(図示せず)が設けられている。そして、この糸切スイッチが操作されると、糸切信号発生器(図示せず)から糸切信号が出力され、図8のソレノイド50が通電されるようになっている。これにより、回動部材46の吸着部46aが、図6のトーションスプリング48のばね力に抗してソレノイド50のコア50aに吸引され、回動部材46がピン47を中心に矢印B方向へ回動するようになっている。そして、図8に示す状態から図7に示す状態になる。
【0011】
一方、ベッド部1内には、下軸51が回転可能に設けられ、下軸51の右端部には図示しないギヤプーリが固着され、下軸51の左端部には下糸案内カム52、糸切りカム53が固着され、そして、ギヤプーリは、図示しない歯付ベルトを介して図示しないミシンモータに連結されており、ミシンモータが駆動すると、歯付ベルトおよびギヤプーリを介して下軸51が回転し、下軸51と一体的に下糸案内カム52、糸切りカム53が回転するようになっている。尚、下糸案内カム52は下軸51の軸方向に摺動可能である。
【0012】
下糸案内カム52は、通常の縫製動作のための第1カム52aと糸切り動作のための第2カム52bとを備え、下糸案内カム52に対し、下軸51の回転方向に回転可能で下軸51の軸方向に共に動くピン52cを有し、バネ73により反矢印方向P方向に付勢されている。
【0013】
また、ピン70に回動可能に保持されたクラッチレバー71は、受け部71aを回動部材46に当接し、他端の長孔71bには、下糸案内カム52に保持されたピン52cが挿入されている。回動部材46がピン47を中心に矢印B方向へ回動すると、受け部71aが押されクラッチレバー71がピン70を中心に矢印N方向に回動し、長孔71bに挿入されたピン52cが矢印P方向に移動し、下糸案内42のカムフォロア部42aが圧接される下糸案内カム52がバネ73に抗して第1カム52aから第2カム52bに替わる。
【0014】
支持プレート40には、右方へ突出するピン41が設けられ、ピン41には下糸案内42が回動可能に取り付けられている。そして、ピン41の外周面には、図5に示すように、トーションスプリング43が嵌合されており、下糸案内42は、トーションスプリング43により図9の矢印A方向へ付勢され、下糸案内カム52に下糸案内42のカムフォロア部42aが圧接されている。
【0015】
また、支持プレート40には、図6に示すように、ピン59が設けられ、ピン59には付勢レバー60が回動可能に取付けられている。そして、ピン59の外周面にはトーションスプリング59aが嵌合され、付勢レバー60は、トーションスプリング59aのばね力により矢印K方向へ付勢されている。また、中間レバー58の先端部にはピン58bが設けられている。そして、付勢レバー60の基端側には長孔60aが形成され、中間レバー58のピン58bは長孔60a内に挿入されている。
【0016】
また、支持プレート40には、図6、図7、図8に示すように、ピン57が設けられている。このピン57には中間レバー58が回動可能に取付けられ、中間レバー58にはカムフォロア58aが設けられている。糸切カム53の外周面にはカム溝が形成されており、図8の状態から、ソレノイド50が通電され、ソレノイド50のコア50aにより回動部材46の吸着部46aが吸引され、回動部材46が矢印B方向へ回動すると、回動部材46の押圧部46bにより中間レバー58が押圧されるようになっている。これが図7に示す状態である。これにより、中間レバー58のカムフォロア58aが糸切カム53のカム溝内に挿入される。
【0017】
支持プレート40の上面には、図3に示すように、ポリアセタール等の樹脂からなる樹脂部材62が固定され、この樹脂部材62および支持プレート40には摺動案内孔63が形成されている。また、樹脂部材62の上面には摺動部材64が載置されている。この摺動部材64には2本のピン64aおよび64bが固着され、これら2本のピン64aおよび64bは摺動案内孔63内に挿入されている。この摺動部材64は、2枚の板材をスペーサーを介して連結したものであり、2本のピン64aおよび64bが摺動案内孔63に案内されることにより、摺動案内孔63に沿う矢印M方向および反矢印M方向へ前進後退する。尚、65は、支持プレート40にねじ止めされた押え部材である。この押え部材65は、摺動部材64の上面に接触し、摺動部材64の摺動時の浮上がりを防止するものである。
【0018】
摺動部材64の一方のピン64aは、図6に示すように、付勢レバー60の長孔60bに係合されている。そして、中間レバー58のカムフォロア58aが糸切カム53のカム溝内に挿入されると、図11の糸切カム53の第1カム領域53aによりカムフォロワ58aが押圧され、中間レバー58がピン57を中心に矢印L方向へ回動する。
【0019】
このため、中間レバー58の回動運動が中間レバー58のピン58bを介して付勢レバー60に伝達され、付勢レバー60がピン59を中心に反矢印K方向へ回動する。これにより、摺動部材64が摺動案内孔63に沿って矢印M方向へ前進し、下糸に交差した上糸輪の中に摺動部材64の先端部が侵入し、図1の上下両糸のさばきが行われる。そして、中間レバー58のカムフォロワ58aが糸切カム53の第2カム領域53bから第3カム領域53cに接触すると、糸切カム53の第3カム領域53cに追従してカムフォロワ58aが押圧され、図6において、中間レバー58がピン57を中心に反矢印L方向へ回動する。
【0020】
摺動部材64を構成する上側の板材には、図4に示すように、可動刃64cが形成され、下側の板材には糸捕捉部64dが形成されている。また、支持プレート40の右端部には固定刃66が形成されている。
【0021】
このため、中間レバー58の回動運動が中間レバー58のピン58bを介して付勢レバー60に伝達され、付勢レバー60がトーションスプリング59aのばね力も手伝いピン59を中心に矢印K方向へ回動し、摺動部材64が摺動案内孔63に沿って反矢印M方向へ後退する。これにより、摺動部材64の糸捕捉部64dにより上下両糸が捕捉され、捕捉された上下両糸が固定刃65側へ引寄せられ、摺動部材64の可動刃64cと固定刃66との間で切断される。
【0022】
図1の実線MBは、主軸の回転位相角をパラメータとした天秤17、実線MAは針棒11、実線MCは可動刃64c、実線MDは下糸案内42の変位を示す運動曲線である。
【0023】
内釜80は、その内部に下糸を蓄えるボビン82を収納し、内釜80及びボビン82は外釜に対して停止している。このボビン82は内釜80及び外釜84に対して偏心した位置に配置されており、内釜80と外釜84とは同心に位置している。この内釜80の偏心してボビン82の位置しない部分に縫針11aが下降する針落ちがあり、その針落ちとボビン80との間にその下糸案内42の内釜80への保持部材81が形成されている。
【0024】
次に上記構成の作用について説明する。糸切スイッチが操作されると、図6、図7、図8において、回転位相角180°付近でソレノイド50が通電され、回動部材46の吸着部46aがソレノイド50のコア50aに吸引され、回動部材46がトーションスプリング48のばね力に抗してピン47を中心に矢印B方向へ回動する。すると、回動部材46の押圧部46bにより中間レバー58が押圧され、中間レバー58のカムフォロア58aが糸切カム53のカム溝内に挿入される。
【0025】
また、回動部材46がピン47を中心に矢印B方向へ回動すると、受け部71aが押されクラッチレバー71がピン70を中心に矢印N方向に回動し、長孔71bに挿入されたピン52cが矢印P方向に移動し、下糸案内42のカムフォロア部42aが圧接される下糸案内カム52が第1カム52aから第2カム52bに替わる。中間レバー58のカムフォロア58aが糸切カム53の第1カム領域53aに接触すると、下軸51の回転に伴って、糸切カム53の第1カム領域53aに追従してカムフォロア58aが押圧され、中間レバー58が矢印L方向へ回動する。
【0026】
すると、まず、中間レバー58の矢印L方向への回動運動が中間レバー58のピン58bを介して付勢レバー60に伝達され、付勢レバー60がピン59を中心に反矢印K方向へ回動する。次に、付勢レバー60の反矢印K方向へ回動運動がピン64aを介して摺動部材64に伝達され、図4に示すように、摺動部材64が摺動案内孔63に沿って矢印M方向へ前進し、下糸に交差した上糸輪の中に摺動部材64の先端部が侵入し、上下両糸のさばきが行われる。尚、この状態は、図1の実線MCにおいて、傾斜部αに相当する。
【0027】
そして、中間レバー58のカムフォロア58aが糸切カム53の第2カム領域53bから第3カム領域53cに接触すると、第3カム領域53cに追従してカムフォロワ58aが押圧される。このため、図6において、中間レバー58がピン57を中心に反矢印L方向へ回動し、付勢レバー60がピン59を中心に矢印K方向へ回動し、摺動部材64が摺動案内孔63に沿って反矢印M方向へ後退する。
【0028】
摺動部材64が反矢印M方向へ後退しているときには、図1に示すように、天秤17は最上点に向かって上昇している。この時、下糸案内42は最下点に位置し、内釜80上に形成された平面である保持部材81との間に上糸26を挟持している(図1のタイミングt1:図12参照)。よって、内釜80を渡った上糸26を天秤17が引き上げることができず、糸駒25から上糸26が新たに引き出される。
【0029】
さらに、摺動部材64が摺動案内孔63に沿って反矢印M方向へ後退すると、摺動部材64の糸捕捉部64dにより上下両糸が捕捉され、固定刃66側へ引寄せられる。この時、下糸案内42は上昇し、上糸26を解放する。摺動部材64により手繰られる上糸26は前段階で天秤17が糸駒25から引き出しているため、上糸26の糸量が不足すること無く動作する。この状態は、図1の実線MCにおいて、傾斜部βに相当する。
【0030】
糸捕捉部64dにより捕捉された上下両糸が可動刃64cと固定刃66との間で切断される。尚、図1において、本実施例における糸切断ポイントをCで示す。上下両糸が切断されると、ソレノイド50が断電される。これと共に、ミシンモータ停止信号が出力され、ミシンモータが断電される。よって、糸ゆるめ機構を設けずとも、上糸量を確保し糸切動作を終了し得る。
【0031】
上述した下糸案内42は、通常の縫い目形成時においては、針板の下方において、主軸の回転に同期して上下動し、下糸或いは上糸を下方に引き縫い目を引き締める作用を奏する部材である。本実施の形態においては、その縫い目引き締めの部材と、糸切り時に糸を挟持する部材とを兼用している。また、内釜80についても同様に、下糸の巻かれたボビンを収納する部材と、糸切り時に糸を挟持する部材とを兼用している。
【0032】
尚、下糸案内42の糸切り時に糸を挟持するために位置する最下位置は、通常の上下動往復範囲よりも下側である。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の請求項1記載の自動糸切装置付きミシンによれば、天秤の上下動に関連し挟持手段によって上糸を所定時間或いは所定期間挟持し、糸の切断より前に上糸が解放されるので、糸ゆるめ機構を設けずとも、上糸量を確保し糸切動作を終了することができる。
【0034】
また、請求項2記載の自動糸切断装置付きミシンによれば、縫い目を引き締める部材と、糸切り時に糸を挟持する部材とを兼用しているので、ミシンの構成が簡単になる。
【0035】
更に、請求項3記載の自動糸切断装置付きミシンによれば、下糸の巻かれたボビンを収納する部材と、糸切り時に糸を挟持する部材とを兼用しているので、ミシンの構成が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すタイミングチャート
【図2】ミシンの外観を示す斜視図
【図3】支持プレートを示す上面図
【図4】作用説明用の図3相当図
【図5】支持プレートを示す正面図
【図6】支持プレートを示す下面図
【図7】ソレノイドを拡大して示す正面図
【図8】作用説明用の図7相当図
【図9】内釜を拡大して示す側面図
【図10】作用説明用の図9相当図
【図11】糸切カムを示す展開図
【図12】糸を挟持した状態を示す図
【符号の説明】
1はベッド部(ミシンベッド)、11aは縫針、17は天秤、26は上糸、42は下糸案内、51は下軸、53は糸切カム、64cは可動刃、66は固定刃、81は保持部材を示す。

Claims (3)

  1. 縫針と天秤とを同期して上下動するミシンにおいて、
    前記縫針の上下動に連動して上糸を切断する糸切り手段と、
    前記糸切り手段による切断の直前に所定時間或いは所定期間上糸を挟持し、前記糸切り手段の切断前に上糸を解放する挟持手段と
    を備えることを特徴とする自動糸切装置付きミシン。
  2. 前記挟持手段は、縫い目形成時において上糸或いは下糸の少なくとも一方を針板下方にて引く下糸案内部材によって挟持又はたぐることを特徴とする請求項1記載の自動糸切装置付きミシン。
  3. 前記挟持手段は、前記下糸を巻かれたボビンを収納する内釜の上面と前記下糸案内部材とによって下糸を挟持することを特徴とする請求項2記載の自動糸切り装置付きミシン。
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