JP3796972B2 - ボールねじ用の潤滑装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじ用の潤滑装置に係り、特にボールねじに長期間にわたって潤滑剤を供給可能な潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転運動を直線運動に変換する機構として、ボールねじ機構が知られている。ボールねじ機構は、外周にねじ溝を備えたねじ軸に、複数のボールを介在させつつ、内周にねじ溝を備えたボールナットを対向させ、ねじ軸を回転させることにより、ボールナットを軸線方向へと移動させるものである。
【0003】
ところで、ねじ溝とボールとの間には、通常グリース等の潤滑剤が塗布されており、ねじ溝とボールの摩耗や摩擦による加熱等を防止するようになっている。ところが、グリース等は、温度や、水分、異物、摩耗粉等の影響により、比較的短期間で潤滑剤としての機能が低下するため、定期的にその捕給が必要となる。かかる補給作業の効率化を図るため、潤滑剤の補給を行う装置が開発されている。
【0004】
しかしながら、かかる補給装置は高価であり、また給油のための配管等も新たに設置しなくてはならず、コストが増大する。更に、補給装置の点検・保守作業も必要となるため、取り扱いにおいて不便となっている。
【0005】
このような従来技術に対し、ボールねじのねじ軸とボールナットとの間に潤滑剤含有ポリマ部材を配置する構成も考えられている。かかる潤滑剤含有ポリマ部材は、長期間にわたって徐々に潤滑剤がしみ出るような特性を有しているので、初期にねじ溝に塗布したグリース等の潤滑機能が低下した後も、潤滑剤含有ポリマ部材からしみ出た潤滑剤により、ねじ溝とボールとの間の潤滑を行うことができる。それによりボールねじの潤滑に関しては、ほぼメンテナンス・フリーとすることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる潤滑剤含有ポリマ部材を用いた場合の間題点が、後述するように指摘されている。図16は、潤滑剤含有ポリマ部材を用いたボールねじを示す断面図である。図16において、円筒状のボールナット2が、ねじ軸1の周りに配置されている。ボールナット2の端面に形成された環状凹部5の内周面5aと、ねじ軸1との間には、潤滑剤含有ポリマ部材10が配置されている。なお、潤滑剤含有ポリマ部材10はシール機能も有しており、更にボールナット2の内部にはグリースが封入されている。
【0007】
潤滑剤含有ポリマ部材10の外周面10bには、ガータスプリング15が嵌挿されている。ガータスプリング15は、一定の圧力で潤滑剤含有ポリマ部材10をねじ軸1のねじ溝1bに向かって、ラジアル方向に押圧するため、たとえ長期運転により潤滑剤含有ポリマ部材10の内周面が摩耗しても、常時ねじ軸1との適切な接触が保たれ良好な潤滑が確保されるようになっている。
【0008】
図17は、図16のボ一ルねじをIXV−IXV線で切断して矢印方向に見た図である。図18は、図17のボールねじをXV−XV線で切断して矢印方向に見た図である。図17において、潤滑剤含有ポリマ部材10は、それぞれ略半円筒状の上半部10cと下半部10dとからなる。
【0009】
上半部10cと下半部10dとは、ねじ軸1の外周に内周全体を密着させており、上半部、10cと下半部10dとの間には、スキマAが形成されるようになっている。
【0010】
一方、図18に示すように、ねじ軸1のねじ溝1b外周には、潤滑剤含有ポリマ部材10の凸部10aが密着するように配置されている。
【0011】
ここで、図16,図17に示すように、潤滑剤含有ポリマ部材10の凸部10aがねじ溝1bに密着して、ねじ軸1が往復運動をすると、ねじ溝1b内に付着した潤滑剤が、潤滑剤含有ポリマ部材10の摺動部により、ストローク端に掻き出されるという問題が生ずる。
【0012】
一方、図17に示すように、凸部10aの端部(空間Aに面した部分)がねじ溝1bにスキマなく密着していると、せっかくねじ溝1bに付着した潤滑剤を、かかる端部が空間A内へ掻き出してしまう、いわゆるスクレーパ作用が生じる。空間Aに掻き出された潤滑剤は、ほとんど潤滑に用いられなくなる。
【0013】
このように、潤滑剤含有ポリマ部材10の形状に起因して、本来ねじ溝に供給されるべき潤滑剤の量が低下し、特にボールねじが高荷重を支持する用途においては十分な潤滑が行えなくなり、それによりねじ溝やボールの異常摩耗や早期の表面剥離等を招来する恐れがある。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、高荷重用途においても十分な潤滑を行うことのできるボールねじ用の潤滑装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成すべく、本発明の請求項1に係るボールねじ用の潤滑装置は、ボールナットとねじ軸との間に配置された、グリース封入型のボールねじ用の潤滑装置であって、前記ボールナットの両端と、前記ボールナットの内部におけるボール非通過空間を含む空間との少なくとも何れかに、前記ねじ軸の外径部のみに摺接して潤滑油を供給する潤滑剤含有ポリマ部材を取り付けた。この潤滑装置によれば、潤滑剤含有ポリマ部材によって前記ねじ軸の往復動作時に前記ねじ溝に付着した潤滑剤が掻き落とされることを防止でき、前記ねじ溝に付着した潤滑剤を効果的に保持できるようになっている。
【0016】
また、請求項2に係るボールねじ用の潤滑装置は、請求項1の潤滑装置において、前記ねじ軸外径部と摺接する潤滑剤含有ポリマ部材を円周方向に複数に分割し、その内径寸法をボールねじ外径よりも大きくした。この潤滑装置によれば、前記ねじ軸外径部と潤滑剤含有ポリマ部材との間にスキマが形成されるため、潤滑剤の保持効果をより高めることができる。
【0017】
また、請求項3に係るボールねじ用の潤滑装置は、請求項2の潤滑装置において、前記潤滑剤含有ポリマ部材における分割面の内径側端部に潤滑剤保持用面取りを形成した。この潤滑装置によれば、潤滑剤含有ポリマ部材の回転等によりねじ溝に付着した潤滑剤が掻き落とされても、その潤滑剤が潤滑剤保持用面取りに保持されて潤滑に供される。
【0018】
また、請求項4に係るボールねじ用の潤滑装置は、請求項1〜3の潤滑装置において、前記ボールナットにおける前記潤滑剤含有ポリマ部材の外側部分に密封型シールを設けた。この潤滑装置によれば、密封型シールによりボールナット外への潤滑剤の漏洩やボールナット内への異物の侵入が防止されると共に、潤滑剤含有ポリマ部材からしみ出た潤滑剤により密封型シールのリップ部も潤滑される。
【0019】
また、前記潤滑剤含有ポリマ部材を前記ねじ軸外径部のみに摺接するように形成するのであれば、前記潤滑剤含有ポリマ部材の形伏を前記ねじ溝の形状に一致させる必要はなくなる。ねじ溝に対応した突出部を有する潤滑剤含有ポリマ部材を製造しようとすると、型による成形の場合、まず型を形成する必要がある。ところが、ねじ溝に対応する突出部を精度良く成形できる型を形成するためには、潤滑剤含有ポリマ部材の成型品における収縮率を考慮して、試行錯誤に基づき通常数度の型修正が必要となる。一方、機械加工により潤滑剤含有ポリマ部材に突出部を形成するには、突出部の形伏に合わせた特殊な工具を予め作る必要がある。何れにせよコストは増大することとなる。これに対し、例えばねじ溝に対応する突出部を形成しないですめば、上述した型や工具を作る必要がなくなり、ボールねじ軸の軸径だけを考慮すればよいため、コストダウンにつながることとなる。
【0020】
なお、本発明に適用される潤滑剤含有ポリマは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系樹脂の群から選定された合成樹脂に、潤滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステルのようなエステル油等の何れか単独若しくは混合油の形で混ぜて調製した原料を、樹脂の融点以上で加熱して可塑化し、その後冷却することで固形にしたものであり、潤滑剤の中に予め酸化防止剤、錆止め剤、摩耗防止剤、あわ消し剤、極圧剤等の各種添加剤を加えたものでもよい。
【0021】
上記潤滑剤含有ポリマの組成比は、全重量に対してポリオレフィン系樹脂10〜50重量%、潤滑剤90〜50重量%である。ポリオレフィン系樹脂が10重量%未満の場合は、あるレベル以上の硬さ・強度が得られず、負荷がかかった時に初期の形状を維持するのが難しくなる。また、ポリオレフィン系樹脂が50重量%を超える場合(つまり、潤滑剤が50重量%未満の場合)は、潤滑剤の供給が少なくなり、ボールねじの寿命が短くなる。
【0022】
上記合成樹脂の群は、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、700〜5×106の範囲に及んでいる。平均分子量700〜1×104というワックス(例えばポリエチレンワックス)に分類されるものと、平均分子量1×104〜1×106という比較的低分子量のものと、平均分子量1×106〜5×106という超高分子量のものとを、単独若しくは必要に応じて混合して用いる。
【0023】
比較的低分子量のものと潤滑剤との組合わせによって、ある程度の機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性を持つ潤滑剤含有ポリマが得られる。この中の比較的低分子量のものの一部を、ワックスに分類されるものに置き換えると、ワックスに分類されるものと潤滑油との分子量の差が小さいために潤滑油との親和性が高くなり、結果として潤滑剤含有ポリマの保油性が向上し、長期間にわたっての潤滑剤の供給が可能になる。但し、その反面で機械的強度は低下する。尚、ワックスとしては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系樹脂の他、融点が100〜130℃以上の範囲にある炭化水素系のもの(例えばパラフィン系合成ワックス)であれば使用できる。
【0024】
一方、それに対して超高分子量のものに置き換えた場合、超高分子量のものと潤滑油との分子量の差が大きいために潤滑油との親和性が低くなり、結果として保油性が低下し、潤滑剤含有ポリマからの潤滑剤の滲み出しが速くなる。それによって、潤滑剤含有ポリマから供給可能な潤滑剤量に達する時間が短くなり、ボールねじの寿命が短くなる。ただし、機械的強度は向上する。
【0025】
成形性、機械的強度、保油性、潤滑剤供給量のバランスを考慮すると、潤滑剤含有ポリマの組成比は、ワックスに分類されるもの0〜5重量%、比較的低分子量のもの8〜48重量%、超高分子量のもの2〜10重量%、かつ3つの樹脂分の合計10〜50重量%(残りが潤滑剤90〜50重量%)が好適である。
【0026】
本発明の潤滑剤含有ポリマの機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系樹脂には、以下のような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を添加することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0027】
一方、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、単独または混合して用いてもよい。
【0028】
更に、ポリオレフィン系樹脂とそれ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えても良い。また、機械的強度を向上させるために、充填材を添加しても良い。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、或いはガラス繊維や金属織維等の無機繊維類及びこれらを布状に編組したもの、また有機化合物では、カーボンブラック、黒鉛粉末、カーボン繊維、アラミド繊維やポリエステル繊維等を添加してもよい。
【0029】
更に、ポリオレフィン系樹脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N‘−ジフェニル−P−フェニルジアミン、2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化防止剤、また光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2‘−ヒドロキシ−3‘−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0030】
以上の全ての添加剤(ポリオレフィン系樹脂及び潤滑剤以外)の添加量としては、添加剤全体として、成形原料全量の20重量%以下であることが、潤滑剤の供給能力を維持する上で好ましい。
【0031】
上述した潤滑剤含有ポリマは、グリースや潤滑油と違ってそれ自体固形状のため、中に水や塵埃が混入することがない。そのため、ボールナット端とねじ軸との空間に潤滑剤含有ポリマを充填すると、シール部材に加えてあるいはシール部材の代わりに、ボールねじの寿命低下の原因となる水や塵埃の浸入を大幅に抑制することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明による第1の実施の形態に係るボールねじ用潤滑装置をボールナットに取り付けた状態で示す断面図である。図2は、図1の構成をII−II線で切断して矢印方向に見た図である。図3は、図1の構成のIII部分を拡大して示す図である。
【0033】
図1に示す第1の実施の形態において、ボールナット2は、ねじ軸1を内包するように配置され、ボールナット2の内周に形成されたねじ溝2aと、それに対向するねじ軸1の外周に形成されたねじ溝1bとの間には、複数のボール3が転動自在に配置されている。
【0034】
ボールナット2の右方端には、潤滑剤含有ポリマ部材20を介して、円筒状のシールキャップ4が4本のボルト6により取り付けられている。ボルト6の軸部外周には、スリーブ6aがそれぞれ介装されている。シールキャップ4の端部には、ラビリンスシール7が取り付けられ、ねじ軸1とシールキャップ4との間隙から塵埃等の異物が侵入することを防止している。
【0035】
潤滑剤含有ポリマ部材20は、外周に細い溝20aを形成しており、ここに配置されたガータスプリング15により、潤滑剤含有ポリマ部材20は、一定の圧力でねじ軸1の外周に向かって、ラジアル方向に押圧されるため、たとえ長期間の運転により潤滑剤含有ポリマ部材20の内周面が摩耗しても、常時ねじ軸1との適切な接触が保たれ良好な潤滑が確保されるようになっている。
【0036】
図2に示すように、潤滑剤含有ポリマ部材20は、それぞれ略半円筒状の上半部20bと下半部20cとからなる。ここで、ねじ軸1の外径が40mmであり、上半部20bと下半部20cの内径は40.4mmである。従って、図2においては誇張して示しているが、上半部20bと下半部20cの中央部のみが、ねじ軸1の外周に当接し、その周方向両端部は、ねじ軸1の外周に対してスキマB(4カ所)を形成している。
【0037】
なお、潤滑剤含有ポリマ部材20の外周には、ガータスプリング15を取り付けた後も、ガータスプリング15の弾性力に比し、潤滑剤含有ポリマ部材20のサイズが大きく、またその剛性が比較的高いため、スキマBはなくならない。更に、上半部20bと下半部20cの周方向両端部は、互いに離隔している。
【0038】
一方、図3において明らかなように、潤滑剤含有ポリマ部材20の内周は円筒面状となっており、従ってねじ軸1のねじ溝1bに嵌合する突出部は有していない。
【0039】
上述のように構成された本実施の形態において、ボールナット2に対してねじ軸1が回転すると、潤滑剤含有ポリマ部材20に対してねじ軸1が摺動する。ここで、図2に示すように、潤滑剤含有ポリマ部材20の上半部20bと下半部20cの周方向両端部と、ねじ軸1の外周との間にはスキマBが形成されているので、何れの方向にねじ軸1が回転しても、上半部20bと下半部20cの両端部は、ねじ軸1の外周に付着した潤滑剤を掻き落とさず(即ちスクレーパ作用は生じず)、かかる潤滑剤はスキマB内に侵入するようになっている。従って、ねじ軸1に付着した潤滑剤が保持され、それによりボールとねじ溝との潤滑を確保することができる。
【0040】
更に、潤滑剤含有ポリマ部材20は、ねじ輔1のねじ溝1bに嵌合する突出部を有していないため、ねじ溝1bに付着した潤滑剤を外部に掻き出すことがない。なお、ねじ軸1の回転によりスキマB(図2)に侵入した、ねじ軸1の外周に付着していた潤滑剤は、上半部20bと下半部20cがそれぞれ、その中央部をねじ軸1の外周に当接させているため逃げ場を失い、図3の矢印に示すようにねじ溝1bに流れ込んでくることとなり、それにより潤滑効果をより高めることができる。
【0041】
図4は、潤滑剤含有ポリマ部材の第2の実施の形態を示す、図3と同様な断面図であるが、かかる形態によれば、潤滑剤含有ポリマ部材30は、上述した実施の形態と異なり、ねじ軸1のねじ溝1b内に侵入する凸部30aを設けている。かかる凸部30aは、ねじ溝1bの内面に接しておらず、わずかな間隙で離隔している。
【0042】
かかる構成により、上述した実施の形態と同様に、潤滑剤含有ポリマ部材30は、ねじ溝1bに付着した潤滑剤を外部に掻き出すことがないという効果を有する。加えて、第2の実施の形態においては凸部30aを設けているため、ねじ溝1bと凸部30aとの問にラビリンス空間が形成されることとなり、それにより塵埃等の異物がねじ溝1bに付着することを防止し、かつボールナット2内へ侵入することを防止できる。
【0043】
図5は、本発明による第3の実施の形態に係るボールねじ用潤滑装置をボールナットに取り付けた態で示す断面図である。図5の構成においては、ナット長をより短くするため、第1ナット2Aと第2ナット2Bとの間の、予圧間座2Cにより形成される予圧間座空間内に、潤滑剤含有ポリマ部材40を設けた構成となっている。本実施の形態においては、軸線方向長が短いことを除けば、第1の実施の形態と構成及び作用効果は同じであるので、以下その説明は省略する。なお、キャップ4を設けず、ボルト6を潤滑剤含有部材40に直接当接させるようにしても良い。
【0044】
図6は、本発明による第4の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。なお、第4の実施の形態についても、図2に示す第1の実施の形態と異なる点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
【0045】
本実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材50は、2つに分割されておらず、断面C字状の一体物となっている。しかしながら、その両端部は、ねじ軸1の外周から離隔して、スキマBを形成しているので、第1の実施の形態と同様に、ねじ軸1の外周に付着した潤滑剤を掻き落とすことがない。
【0046】
図7は、本発明による第5の実施の形態に係る潤滑剤合有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。なお、第5の実施の形態についても、図2に示す第1の実施の形態と異なる点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
【0047】
本実施の形態においても、潤滑剤含有ポリマ部材60は、2つに分割されておらず、断面C字伏の一体物となっているが、更にその外周面の一部に、U字状の切欠60aを形成している。従って、第4の実施の形態に比し、本実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材60がより撓みやすくなっている。潤滑剤含有ポリマ部材のサイズが大きく、あるいは剛性の高い材質を用いている場合に、かかる実施の形態は有効となる。
【0048】
図8は、本発明による第6の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。なお、第6の実施の形態についても、上述した実施の形態と異なる点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
【0049】
本実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材70における外周面の一部に形成された切欠70aは、断面V字状を有する。従って、上述した実施の形態に比し、本実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材70がより撓みやすくなっている。
【0050】
図9は、本発明による第7の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。また、図10は、潤滑剤含有ポリマ部材の下半部を示す要部斜視図である。なお、第7の実施の形態についても、上述した実施の形態と異なる点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
【0051】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、潤滑剤含有ポリマ部材20は、それぞれ略半円筒状の上半部20bと下半部20cとからなっているが、これら上半部20bおよび下半部20cにおける分割面の内径側端部にそれぞれ潤滑剤保持用面取り80が形成されている。また、潤滑剤含有ポリマ部材20は、スリーブ6aのナット外径方向に開放されているため、図1に示したガータスプリング15による潤滑剤含有ポリマ部材20のねじ軸1の外周に向かってのラジアル方向の押圧がより有効に行われる。
【0052】
本実施の形態では、ねじ1が回転する際に潤滑剤含有ポリマ部材20が揺動あるいは撓み変形し、前述した分割面によるスクレーパ作用が生じても、潤滑剤がスキマA側に流出することが抑制される。例えば、潤滑剤含有ポリマ部材20の揺動によりねじ1の外周面と下半部20cの内周面とが密着し、スキマBが無くなっても、図10に示したように、下半部20cにより掻き出された潤滑剤は、潤滑剤保持用面取り80内に潤滑油溜り81となって保持され、スキマA側に流出し難くなる。これにより、潤滑剤は空間Aに殆ど流出しなくなり、潤滑油溜り81からねじ溝1b側に潤滑油が徐々に供給され、長期間にわたり良好な潤滑が行われるようになる。
【0053】
図11は、本発明による第8の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。なお、第8の実施の形態についても、上述した実施の形態と異なる点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
【0054】
本実施の形態は、第7の実施の形態とほぼ同様の構成が採られているが、潤滑剤含有ポリマ部材20の上半部20bおよび下半部20cに形成された潤滑剤保持用面取り80がいわゆるR面取りとなっている。本実施の形態においても、ねじ溝1が回転する際に潤滑剤含有ポリマ部材20が揺動あるいは撓み変形し、前述した分割面によるスクレーパ作用が生じても、第7の実施の形態と同様に潤滑剤がスキマA側に流出することが抑制され、長期間にわたり良好な潤滑が行われるようになる。
【0055】
図12は、本発明による第9の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。また、図13は、潤滑剤含有ポリマ部材の下半部を示す要部斜視図である。なお、第9の実施の形態についても、上述した実施の形態と異なる点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
【0056】
本実施の形態においても、第7の実施の形態とほぼ同様の構成が採られているが、潤滑剤保持用面取り80は、上半部20bおよび下半部20cの内径側端部の全長にわたってではなく、軸方向の両端部を隔壁83として残したかたちで形成されている。
【0057】
本実施の作用も、第7の実施の形態とほぼ同様であり、分割面によるスクレーパ作用が生じても、潤滑剤がスキマA側に流出することが抑制されるが、更に、軸方向端面からの潤滑剤の流出も抑制される。すなわち、図13に示したように、下半部20cにより掻き出された潤滑剤は、潤滑剤保持用面取り80内に潤滑油溜り81となって保持されると共に、隔壁83により下半部20cの軸方向端面からも流出し難くなるのである。これにより、潤滑剤は潤滑剤保持用面取り80内に確実に保持され、潤滑油溜り81からねじ溝1b側に潤滑油が徐々に供給され、長期間にわたり良好な潤滑が行われるようになる。
【0058】
図14は、本発明による第10の実施の形態に係るボールねじ用潤滑装置をボールナットに取り付けた態で示す断面図である。図14の構成においては、ボールナット2に左右一対の潤滑剤含有ポリマ部材20が嵌挿されると共に、これら潤滑剤含有ポリマ部材20の外側にそれぞれ密封型シール84が圧入されている。本実施の形態の密封型シール84は、ねじ軸1のねじ溝1bと外径とにわたって連続して接触する公知のもので、ボールナット2の移動時にはねじ軸1と摺接することで内部を確実に密閉する。
【0059】
この潤滑装置によれば、上述したラビリンスシールを用いたものに較べ、ボールナット2外への潤滑剤の漏洩やボールナット2内への異物の侵入がより各軸に防止され、ボールねじの寿命が大幅に延長される。また、密封型シール84は、潤滑剤含有ポリマ部材20からしみ出た潤滑剤により常に潤滑されるため、リップ部等の摩耗や破損が殆ど生じることがなく、極めて高い耐久性が確保される。
【0060】
以上で、具体的な実施の形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこれらの実施の形態に限られるものではない。例えば、上記各実施の形態では、潤滑剤含有ポリマ部材がボールねじの外径にのみ摺接させるようにしたが、図15に示したように、潤滑剤含有ポリマ部材20にねじ軸1のねじ溝1bに一部摺接する突出部85を形成するようにしてもよく、この場合にも上記各実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。また、潤滑剤含有ポリマ部材の配置や固定方法を始め、ボールねじの具体的構造等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【0061】
【発明の効果】
本発明のボールねじ用の潤滑装置によれば、ボールナットの両端と、前記ボールナットの内部におけるボール非通過空間を含む空間との少なくとも何れかに、前記ねじ軸の外径部のみに摺接する潤滑剤含有ポリマ部材を取り付けているので、かかる潤滑剤含有ポリマ部材によって前記ねじ軸の往復動作時に前記ねじ溝に付着した潤滑剤が掻き落とされることを防止でき、前記ねじ溝に付着した潤滑剤を効果的に保持できる。また、前記ねじ軸外径部と摺接する潤滑剤含有ポリマ部材を円周方向に複数に分割し、その内径寸法をボールねじ外径よりも大きくしたものでは、潤滑剤の保持効果をより高めることができる。更に、潤滑剤含有ポリマ部材における分割面の内径側端部に潤滑剤保持用面取りを形成したものでは、潤滑剤含有ポリマ部材の回転等によりねじ軸の外周に付着した潤滑剤が掻き落とされても、その潤滑剤が潤滑剤保持用面取りに保持されて潤滑に供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施の形態に係るボールねじ用潤滑装置をボールナットに取り付けた状態で示す断面図である。
【図2】図1の構成をII−II線で切断して矢印方向に見た図である。
【図3】図1の構成のIII部分を拡大して示す図である。
【図4】 潤滑剤含有ポリマ部材の第2の実施の形態を示す、図3と同様な断面図である。
【図5】本発明による第3の実施の形態に係るボールねじ用潤滑装置をボールナットに取り付けた状態で示す断面図である。
【図6】本発明による第4の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。
【図7】本発明による第5の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。
【図8】本発明による第6の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。
【図9】本発明による第7の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。
【図10】第7の実施の形態の作用を説明するための要部斜視図である。
【図11】本発明による第8の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。
【図12】本発明による第9の実施の形態に係る潤滑剤含有ポリマ部材を示す、図2と同様な断面図である。
【図13】第9の実施の形態の作用を説明するための要部斜視図である。
【図14】本発明による第10の実施の形態に係るボールねじ用潤滑装置をボールナットに取り付けた状態で示す断面図である。
【図15】潤滑剤含有ポリマ部材の一部変形例を示す、図3と同様な断面図である。
【図16】潤滑剤含有ポリマ部材を用いた従来のボールねじを示す断面図である。
【図17】図16のボールねじをIXV一IXV線で切断して矢印方向に見た図である。
【図18】図17のボールねじのXV一XV線で切断して矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
1‥‥ねじ軸
2‥‥ボールナット
2A‥‥第1ナット
2B‥‥第2ナット
2C‥‥予圧間座
3‥‥ボール
4‥‥シールキャップ
6‥‥ボルト
7‥‥ラビリンスシール
15‥‥ガータスプリング
20,30,40,50,60,70‥‥潤滑剤含有ポリマ部材
80‥‥潤滑剤保持用面取り
84‥‥密封型シール

Claims (3)

  1. ボールナットとねじ軸との間に配置された、グリース封入型のボールねじ用の潤滑装置において、
    前記ボールナットの両端と、前記ボールナットの内部におけるボール非通過空間を含む空間との少なくとも何れかに、前記ねじ軸の外径部のみに摺接して潤滑油を供給する潤滑剤含有ポリマ部材を取り付けていることを特徴とするボールねじ用の潤滑装置。
  2. 前記ねじ軸の外径部は該ねじ軸の外周であることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ用の潤滑装置。
  3. 前記ねじ軸の外径部は該ねじ軸の外周およびねじ溝の該外周近傍の部分であることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ用の潤滑装置。
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