JP3924860B2 - 軸受ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は軸受ユニットに関し、特に鉄鋼設備等に使用されるプランマブロック等の転がり軸受ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の軸受ユニットの一例としてのプランマブロックは図13に示される構成を有している。本図は、固定軸端側の軸受ユニットの断面を示しており、自由軸端側の軸受ユニットも同様の構成である。
【0003】
図13において、軸90はその端部が縮径されて縮径部91が形成されており、縮径部91には自動調心転がり軸受92が取付けられている。軸受92は、ハウジング93に収容されており、縮径部91に外嵌された内輪94と、ハウジング93の内周部に内嵌された外輪95と、内輪94の外周面上及び外輪95の内周面上の各軌道溝を転動する2列のころ96と、ころ96の保持器97とから主として構成されている。ハウジング93の軸側端面部には当該軸側端面部と軸90の間のシールを確保するためにオイルシール98が設けられている。オイルシール98は、ハウジング93の外部から水や粉塵の侵入を防止するものである。また、ハウジング93の軸端側端面部は開口部を有するが、この開口部は適宜なゴムプレート99で取り外し自在に閉鎖されている。さらに、ハウジング93の周側部の軸側には、軸受92とオイルシール98との間においてグリースニップル100が設けられており、軸受92の内部空間を含むハウジング93内のスペースにはグリースニップル100を介してグリースが注入されている。
【0004】
このような 従来の軸受ユニットは、鉄鋼設備等のように、近傍に製品である圧延板が搬送されていると、オイルシール98のリップの潤滑のために注入したグリースが軸受ユニットの外部に飛散してその圧延板を汚してしまう。さらに、定期的にオイルシール98のためにグリース補給が必要である。これらの問題点を解消するために、軸受92の内部空間にグリースに代えて潤滑剤含有ポリマを充填し軸受92自体のシール性を向上させた軸受ユニットが開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成の軸受ユニットにおいて、軸受92の内部空間にグリースでなく潤滑剤含有ポリマ部材が充填されていてもオイルシール98が用いられる限り、上記問題点は解消されず、オイルシール98のために注入(又は塗布)するグリースが軸受ユニットの外部に漏れて軸受ユニットの周囲環境を汚染するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記従来の技術の問題点に着目してなされたものであり、軸受ユニットの周囲環境を汚染するのを防止することができる軸受ユニットを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の軸受ユニットは、内輪と外輪を有し前記内輪が軸に外嵌された転がり軸受と、前記転がり軸受を収容する軸受箱と、前記軸が前記軸受箱を貫通する部位の少なくとも一方に軸封シール装置とを備える軸受ユニットにおいて、前記軸封シール装置は、前記軸に外嵌されると共に少なくとも1ヶ所で分割されたリング状の潤滑剤含有ポリマ部材と、前記潤滑剤含有ポリマ部材を径方向内側に押圧すべく前記潤滑剤含有ポリマ部材の外周部に嵌められた弾性部材とを備え、前記弾性部材は潤滑剤を滲み込ませた多孔質体からなることを特徴とする。
【0008】
請求項1の軸受ユニットによれば、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材を少なくとも1ヶ所で分割した上でその外周部に嵌められた弾性部材が潤滑剤含有ポリマ部材を径方向内側に押圧すると共に弾性部材が潤滑剤を滲み込ませた多孔質体からなるので、軸封シール装置のシール効果を向上させると共に向上させることができる。
【0009】
前記軸受ユニットは、前記転がり軸受がその内部空間の一部に前記外輪の内周部に当接して潤滑剤含有ポリマ部材を有するタイプでもよく、また、前記転がり軸受内部両側面に接触型リップシールを配して、軸受の内部空間を含む前記軸受箱の中にグリースを充填密封したタイプでもよい。
【0010】
以下、本発明の軸受ユニットにおける潤滑剤含有ポリマの組成について詳細に説明する。
【0011】
本潤滑剤含有ポリマは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系樹脂の群から選定された合成樹脂に、潤滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステルのようなエステル油等の何れか単独若しくは混合油の形で混ぜて調整した原料を、樹脂の融点以上で加熱して可塑化し、その後冷却することで固形状にしたものであり、潤滑剤の中に予め酸化防止剤、錆止め剤、磨耗防止剤、あわ消し剤、極圧剤等の各種添加剤を加えたものでもよい。
【0012】
上記潤滑剤含有ポリマの組成比は、全重量に対してポリオレフィン系樹脂10〜50wt%、潤滑剤90〜50wt%である。ポリオレフィン系樹脂が10wt%未満の場合は、あるレベル以上の硬さ及び強度が得られず、たとえば軸受内部に使用する軸受の回転等によって負荷がかかった時に初期の形状を維持するのが困難になり、軸受の内部空間から脱落する等の不具合が生じる可能性が高くなる。また、ポリオレフィン系樹脂が50wt%を越える場合、すなわち潤滑剤が50wt%未満の場合は、潤滑剤の供給が少なくなり、たとえば軸受の潤滑に使用した場合、軸受の寿命が短くなる。
【0013】
上記合成樹脂の群は、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、700〜5×106の範囲に及んでいる。平均分子量700〜1×104というワックス、例えばポリエチレンワックスに分類されるものと、平均分子量1×104〜1×106という比較的低分子量のものと、平均分子量1×106〜5×106という超高分子量のものとを、単独若しくは必要に応じて混合して用いる。比較的低分子量のものと潤滑剤との組合せによって、ある程度の機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性を持つ潤滑剤含有ポリマが得られる。この中の比較的低分子量のものの一部を、ワックスに分類されるものに置き換えると、ワックスに分類されるものと潤滑油との分子量の差が小さいために潤滑油との親和性が高くなり、結果として潤滑剤含有ポリマの保油性が向上し、長期間にわたっての潤滑剤の供給が可能になる。ただし、その反面機械的強度は低下する。ワックスとしては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系樹脂の他、融点が100〜130℃以上の範囲にある炭化水素系のもの、例えばパラフィン系ワックスであれば使用できる。それに対して、超高分子量のものに置き換えると、超高分子量のものと潤滑油との分子量の差が大きいために潤滑油との親和性が低くなり、その結果保油性が低下し、潤滑剤含有ポリマからの潤滑剤の滲み出しが速くなって、潤滑剤含有ポリマから供給可能な潤滑剤量に達する時間が短くなり、軸受の寿命が短くなる。ただし、機械的強度が向上する。
【0014】
成形性、機械的強度、保油性、潤滑剤供給量のバランスを考慮すると、潤滑剤含有ポリマの組成比は、ワックスに分類されるもの0〜5wt%、比較的低分子量のもの8〜48wt%、超高分子量のもの2〜10wt%、3つの樹脂分の合計10〜50wt%、残り潤滑剤90〜50wt%が好適である。
【0015】
本潤滑剤含有ポリマの機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系樹脂に、以下のような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を添加したものでもよい。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0017】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0018】
これらの樹脂は、単独又は混合して用いてよい。
【0019】
さらに、ポリオレフィン系樹脂とそれ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えてもよい。
【0020】
また、機械的強度を向上させるために充填材を添加してもよい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、又はガラス繊維や金属繊維等の無機繊維類及びこれらを布状に編組したもの、また有機化合物では、カーボンブラック、黒鉛粉末、カーボン繊維、アラミド繊維やポリエステル繊維等を添加してもよい。
【0021】
さらに、ポリオレフィン系樹脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N’−ジフェニル−P−フェニルジアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化防止剤、また光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0022】
以上のすべて添加剤(ポリオレフィン系樹脂+潤滑剤以外)の添加量としては、添加剤全体として、成形原料全量の20wt%以下であることが、潤滑剤の供給能力を維持する上で好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る軸受ユニットの実施の形態について詳述する。
【0024】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る軸受ユニットは図1に示される構成を有している。ここに、図1は本発明の第1の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す。本図は、固定軸端側の軸受ユニットの断面を示しており、自由軸端側の軸受ユニットも同様の構成である。このことは、以下の本発明の実施の形態における図面についても同様である。
【0025】
第1の実施の形態に係る軸受ユニットはプランマブロックであり、図1において、軸10はその端部が縮径されて縮径部11,11aが形成されており、縮径部11には自動調心転がり軸受12が取付けられている。軸受12は、軸受箱としてのハウジング13に収容されており、縮径部11に外嵌された内輪14と、ハウジング13の内周部に内嵌された外輪15と、内輪14の外周面上及び外輪15の内周面上の各軌道溝を転動する2列のころ16と、ころ16の一体型保持器17とから主として構成されている。
【0026】
また、外輪15の内周部に当接して上記各軌道溝の間にリング状の潤滑剤含有ポリマ部材20が内嵌されている。潤滑剤含有ポリマ部材20は各ころ16の列の内側端面によってなる平面に端面が接するように軸受12の内部空間に充填されている。
【0027】
ハウジング13の軸側端面部のシール溝には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するためにオイルシール18が軸10に外嵌されるように設けられており、さらに、ハウジング13の内側においてオイルシール18に隣接してリング状の潤滑剤含有ポリマ部材40が軸10に外嵌するように設けられている。オイルシール18はハウジング13の外部から水や粉塵の侵入を防止し、潤滑剤含有ポリマ部材40はオイルシール18に潤滑剤を供給するものである。また、同様に、ハウジング13の軸端側端面部のシール溝にも、当該軸端側端面部と縮径部11aのシールを確保するためのオイルシール19と、ハウジング13の内側においてオイルシール19に隣接してリング状の潤滑剤含有ポリマ部材41が縮径部11aに外嵌するように設けられている。
【0028】
上記潤滑剤含有ポリマ部材20の潤滑剤含有ポリマの組成は、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類される)5wt%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類される)20wt%、ポリエチレンワックス(ワックスに分類される)5wt%、及びパラフィン系鉱油70wt%からなる。
【0029】
上記潤滑剤含有ポリマ部材40,41の潤滑剤含有ポリマの組成は、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類される)10wt%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類される)20wt%、及びパラフィン系鉱油70wt%からなる。
【0030】
上記第1の実施の形態において、オイルシール18及び潤滑剤含有ポリマ40と、オイルシール19及び潤滑剤含有ポリマ41とは軸封シール装置を構成する。
【0031】
上記第1の実施の形態によれば、外輪15の内周部に当接して軸受12の内部空間の一部に設けられた潤滑剤含有ポリマ部材20により軸受12を潤滑することができる。加えて、オイルシール18,19の内側に隣接して設けられた潤滑剤含有ポリマ部材40、41からオイルシール18,19のリップ部に潤滑剤が供給されることによって、オイルシール18、19のためにグリースのような潤滑剤の補給を不要とすることができ、その結果、軸受ユニットからの余剰の潤滑剤の漏れのような問題がなくなり、軸受ユニットの周囲環境を漏れた潤滑剤で汚染するのを防止することができる。さらに、潤滑剤含有ポリマ部材40,41そのものがシールとして機能するので、オイルシール40,41に加えてより強固なシール効果を得ることができる。
【0032】
上記第1の実施の形態において、軸受ユニットは、潤滑剤含有ポリマ部材20に代えて、軸受内部両側面に接触リップシールを内蔵して軸受12の内部空間にグリースを密封充填したものであってもよい。
【0033】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る軸受ユニットは図2に示される構成を有している。ここに、図2は本発明の第2の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す。
【0034】
第2の実施の形態に係る軸受ユニットは第1の実施の形態のものと同様のプランマブロックであり、ハウジング13の両端面部にオイルシール18,19を設けていない点が第1の実施の形態に係る軸受ユニットと異なる。従って、第1の実施の形態に係る軸受ユニットの構成要素と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0035】
図2において、ハウジング13の軸側端面部のシール溝には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材40が軸10に外嵌するように設けられている。潤滑剤含有ポリマ部材40は、ハウジング13の外部から水や粉塵の侵入を防止するものである。また、同様に、ハウジング13の軸端側端面部には、潤滑剤含有ポリマ部材40と同様の構成を有するリング状の潤滑剤含有ポリマ部材41が縮径部11aに外嵌するように設けられている。
【0036】
上記潤滑剤含有ポリマ部材20の潤滑剤含有ポリマの組成は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0037】
上記潤滑剤含有ポリマ部材40,41の潤滑剤含有ポリマの組成は、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類される)10wt%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類される)20wt%、及びパラフィン系鉱油70wt%からなる。
【0038】
上記第2の実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材40、41が軸封シール装置を構成する。
【0039】
上記第2の実施の形態によれば、潤滑剤含有ポリマ部材20の作用効果に加えて、ハウジング13の両端面部と軸10の間のシールを潤滑剤含有ポリマ部材40,41により確保することができ、シールのためにグリースのような潤滑剤の補給を不要とすることができる。加えて軸受ユニットからの余剰の潤滑剤の漏れのような問題がなくなり、軸受ユニットの周囲環境を漏れた潤滑剤で汚染するのを防止することができる。
【0040】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る軸受ユニットは図3に示される構成を有している。ここに、図3は本発明の第3の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す。
【0041】
第3の実施の形態に係る軸受ユニットは第2の実施の形態のものと同様のプランマブロックであり、オイルシール18,19及び潤滑剤含有ポリマ部材40、41に代えて、潤滑剤含有ポリマ部材50,55等を設けている点が第2の実施の形態に係る軸受ユニットと異なる。従って、第2の実施の形態に係る軸受ユニットの構成要素と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0042】
図3において、ハウジング13の軸側端面部のシール溝には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材50が軸10に外嵌されている。潤滑剤含有ポリマ部材50は、ハウジング13の外部から水や粉塵の侵入を防止するものである。
【0043】
図4は、潤滑剤含有ポリマ部材50の構成を図3のA−A線断面図として示すものである。図4において、潤滑剤含有ポリマ部材50は、1ヶ所で切り割られたリング状をなすと共にその外周部には周方向に沿って深い溝が形成されており、この溝にはガータスプリング52が嵌められている。潤滑剤含有ポリマ部材52の切断部の対向部に円筒状の径方向孔が設けられ、その孔の中にポリエチレン製又はポリオキサイドメチレン製の管状補強部材53が挿入されている。この補強部材53には、ハウジング13に適宜に設けられた貫通孔を介して回り止め54が挿入される。これにより、潤滑剤含有ポリマ部材50が軸10の回転に連れて回るのを防止することができる。なお、潤滑剤含有ポリマ部材50の分割部は1ヶ所以上であってもい。
【0044】
また、ハウジング13の軸端側端面部のシール溝には、潤滑剤含有ポリマ部材50と同様の構成を有するリング状の潤滑剤含有ポリマ部材55が縮径部11aに外嵌するように設けられている。
【0045】
上記潤滑剤含有ポリマ部材20の潤滑剤含有ポリマの組成は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0046】
上記潤滑剤含有ポリマ部材50,55の潤滑剤含有ポリマの組成は、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類される)10wt%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類される)20wt%、及びパラフィン系鉱油70wt%からなってもよく、又は超高分子量ポリエチレン10wt%高密度ポリエチレン40wt%、及びパラフィン系鉱油50wt%からなり、前述の組成より構造部材としての強度を増すような組成としてもよい。
【0047】
上記第3の実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材52(55)及びガータスプリング53が軸封シール部材を構成する。
【0048】
上記第3の実施の形態によれば、潤滑剤含有ポリマ部材20の作用効果に加えて、ハウジング13の両端面部と軸10の間のシールを潤滑剤含有ポリマ部材50,55により確保することができ、シールのためにグリースのような潤滑剤の補給を不要とすることができる。加えて軸受ユニットからの余剰の潤滑剤の漏れのような問題がなくなり、軸受ユニットの周囲環境を漏れた潤滑剤で汚染するのを防止することができる。また、回り止め54により潤滑剤含有ポリマ部材50,55が軸10の回転に連れて回るのを防止することができる。
【0049】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る軸受ユニットは図5に示される構成を有している。ここに、図5は本発明の第4の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す。
【0050】
第4の実施の形態に係る軸受ユニットは第3の実施の形態のものと同様のプランマブロックであり、潤滑剤含有ポリマ部材50,55等に代えて、潤滑剤含有ポリマ部材62,65等を設けている点が第3の実施の形態に係る軸受ユニットと異なる。従って、第3の実施の形態に係る軸受ユニットの構成要素と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0051】
図5において、ハウジング13の軸側端面部のシール溝には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材62が軸10に外嵌されている。潤滑剤含有ポリマ部材62は、ハウジング13の外部から水や粉塵の侵入を防止するものである。
【0052】
図6は、潤滑剤含有ポリマ部材62の構成を図5のB−B線断面図等として示すものである。図6において、潤滑剤含有ポリマ部材62は、1ヶ所で切り割られたリング状をなすと共に潤滑剤含有ポリマ部材62の外周部には周方向に沿って溝が形成されており、この溝にはガータスプリング63が嵌められている。また、潤滑剤含有ポリマ部材62は、互いに等角度間隔、例えば120°間隔で配列され、軸10の長手方向に延長する3本の弾性部材、例えばゴム等の回り止め64によりハウジング13の軸側端面部に固定されている。これにより、潤滑剤含有ポリマ部材62が軸10の回転に連れて回るのを防止することができる。なお、潤滑剤含有ポリマ部材62の分割部は1ヶ所以上であってもよい。
【0053】
また、ハウジング13の軸端側端面部のシール溝には潤滑剤含有ポリマ部材62と同様の構成を有するリング状の潤滑剤含有ポリマ部材65が縮径部11aに外嵌するように設けられている。
【0054】
上記潤滑剤含有ポリマ部材20の潤滑剤含有ポリマの組成は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0055】
上記潤滑剤含有ポリマ部材62,65の潤滑剤含有ポリマの組成は、先の第2の実施の形態における潤滑剤含有部材40,41と同じである。
【0056】
上記第4の実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材62(65)及びガータスプリング63が軸封シール部材を構成する。
【0057】
上記第4の実施の形態によれば、潤滑剤含有ポリマ部材20の作用効果に加えて、ハウジング13の両端面部と軸10の間のシールを潤滑剤含有ポリマ部材62,65により確保することができ、シールのために潤滑剤の補給を不要とすることができる。加えて軸受ユニットからの余剰の潤滑剤の漏れのような問題がなくなり、軸受ユニットの周囲環境を漏れた潤滑剤で汚染するのを防止することができる。また、回り止め64により潤滑剤含有ポリマ部材62,65が軸10の回転に連れて回るのを防止することができる。
【0058】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットは図7に示される構成を有している。ここに、図7は本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す。
【0059】
第5の実施の形態に係る軸受ユニットは第2の実施の形態のものと同様のプランマブロックであり、潤滑剤含有ポリマ部材40、41に代えて、潤滑剤含有ポリマ部材72,75及び弾圧可能リング部材73を設けている点が第2の実施の形態に係る軸受ユニットと異なる。従って、第2の実施の形態に係る軸受ユニットの構成要素と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0060】
図7において、ハウジング13の軸側端面部のシール溝には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材72が軸10に外嵌されている。潤滑剤含有ポリマ部材72は、ハウジング13の外部から水や粉塵の侵入を防止するものである。
【0061】
図8は、潤滑剤含有ポリマ部材72の構成を平面図として示すものである。図8において、潤滑剤含有ポリマ部材72は、1ヶ所で切り割られたリング状をなしていると共に、その外周部には周方向に沿って深い溝が形成されており、この溝には弾圧可能リング部材73が嵌められている。弾圧可能リング部材73の弾性により弾圧可能リング部材73と潤滑剤含有ポリマ部材72に一体的に装着することができ、加えて、潤滑剤含有ポリマ部材72の内周面が軸10と密着し、シール性能を向上させることができる。なお、潤滑剤含有ポリマ部材72の分割部は1ヶ所以上であってもよい。また、あるいは潤滑剤含有ポリマ部材72は1ヶ所も分割されていない完全な閉じたリングであってもよい。この場合も、弾圧可能リング部材73が潤滑剤含有ポリマ部材72を外周から均一に圧縮するので潤滑剤含有ポリマ部材72の内周面は軸10に密着し、その結果良好なシール性能が得られる。
【0062】
潤滑剤含有ポリマ72の切り割り方法としては、軸方向に平行な切断面のみで切断されてもよいが、一部に軸方向に垂直な面を含む切断面で切断すれば潤滑剤含有ポリマ72の切断面同士が軸方向に重なるようになるのでシール性能をさらに向上させることができる。
【0063】
弾圧可能リング部材73は、ゴム等の弾圧材でもよいが特にスポンジのような多孔質体、例えばポリウレタンフォーム等を用いると多孔質体に油等の潤滑剤を滲み込ませることが可能となり、潤滑剤含有ポリマ部材72の潤滑剤のリザーバとして機能する。また、弾圧可能リング部材73の外径は、潤滑剤含有ポリマ72の外径及びハウジング13の軸側端面部の溝径より大きく設定されており、これにより弾圧可能リング部材73は、ハウジング13の軸側端面部の溝底部により径方向内側に押圧され、その結果潤滑剤含有ポリマ部材72の回り止めとしても機能する。
【0064】
また、ハウジング13の軸端側端面部には、潤滑剤含有ポリマ部材72と同様の構成を有するリング状の潤滑剤含有ポリマ部材75が縮径部11aに外嵌するように設けられている。
【0065】
上記潤滑剤含有ポリマ部材20の潤滑剤含有ポリマの組成は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0066】
上記潤滑剤含有ポリマ部材72,75の潤滑剤含有ポリマの組成は、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類される)10wt%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類される)20wt%、及びパラフィン系鉱油70wt%からなってもよく、又は超高分子量ポリエチレン10wt%高密度ポリエチレン40wt%、及びパラフィン系軸受鉱油50wt%からなり、前述の組成より構造部材としての強度を増すような組成としてもよい。
【0067】
上記第5の実施の形態においては、潤滑剤含有ポリマ部材72(75)及び弾圧可能リング部材73が軸封シール装置を構成する。
【0068】
上記第5の実施の形態によれば、潤滑剤含有ポリマ部材20の作用効果に加えて、ハウジング13の両端面部と軸10の間のシールを潤滑剤含有ポリマ部材72,75により確保することができ、シールのためにグリース等の潤滑剤の補給を不要とすることができる。加えて軸受ユニットからの余剰の潤滑剤の漏れのような問題がなくなり、軸受ユニットの周囲環境を漏れた潤滑剤で汚染するのを防止することができる。また、弾圧可能リング部材73は多孔質体からなるのでこの多孔質体にオイル等の潤滑剤を滲み込ませることが可能となり、潤滑剤含有ポリマ部材72の潤滑剤のリザーバとして機能することができ、弾圧可能リング部材73の外径は、潤滑剤含有ポリマ72の外径及びハウジング13の軸側端面部の溝径より大きく設定されており、これにより弾圧可能リング部材73は、ハウジング13の軸側端面部の溝底部により径方向内側に押圧され、その結果潤滑剤含有ポリマ部材72の回り止めとしても機能することができ、潤滑剤含有ポリマ部材72,75が軸10の回転に連れて回るのを防止することができる。
【0069】
以下、上記本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットにおける軸封シール装置の変形例を説明する。
【0070】
図9は、上記本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットにおける軸封シール装置の第1の変形例の構成を示す部分断面図である。
【0071】
図9において、内周面に周溝を有する弾圧可能リング部材73aがハウジング13の軸側端面部のシール溝内に弾圧的に納められており、軸10に外嵌された潤滑剤含有ポリマ部材72aの外周部は前記弾圧可能リング部材73aの周溝に収容されている。潤滑剤含有ポリマ部材72aは少なくとも1ヶ所で切り割られたリング状をなしているか、又は完全な閉じたリング状をなしており、弾圧可能リング部材73の弾性により潤滑剤含有ポリマ部材72aを軸10に密着させてシール効果を向上させている。
【0072】
潤滑剤含有ポリマ部材72aの切り割り方法は上記第5の実施の形態における潤滑剤含有ポリマ部材72のものと同様である。また、潤滑剤含有ポリマ部材72a及び弾圧可能リング部材73aの組成は、それぞれ上記第5の実施の形態における潤滑剤含有ポリマ部材72及び弾圧可能リング部材73のものと同様である。
【0073】
図10は、上記本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットにおける軸封シール装置の第2の変形例の構成を示す部分断面図である。
【0074】
図10において、潤滑剤含有ポリマ部材72bは少なくとも1ヶ所で切り割られたリング状をなすか、あるいは完全に閉じたリング状をなし、且つ軸10に外嵌されていると共にその外周部に断面U字状の突条部74を有し、それらの突条部74はハウジング13の軸側端面部のシール溝内に収容されている。突条部74はばねとして機能し、潤滑剤含有ポリマ部材72bを軸10に密着させてシール効果を向上させることができる。
【0075】
図11は、上記潤滑剤含有ポリマ72bの変形例の構成を示す部分断面図である。図11において、潤滑剤含有ポリマ部材72cは少なくとも1ヶ所で切り割られたリング状をなすか、あるいは完全に閉じたリング状をなし、且つその外周部に長手軸に垂直な断面において断面アーチ状の突出部77を等角度間隔で例えば6個有し、それらの突出部77はハウジング13の軸側端面部のシール溝内に収容されている。突出部77は上記突条部74と同様にばねとして機能し、潤滑剤含有部材72bを軸に密着させてシール効果を向上させることができる。
【0076】
潤滑剤含有ポリマ部材72b,72cの組成は、それぞれ上記第5の実施の形態における潤滑剤含有ポリマ部材72のものと同様である。
【0077】
図12は、上記本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットにおける軸封シール装置の第3の変形例の構成を示す部分断面図である。
【0078】
図12においてハウジング13の軸側端面部のシール溝内にオイルシール76が納められており、このオイルシール76のリップは軸10に摺接している。さらに、オイルシール76には軸10に外嵌された潤滑剤含有ポリマ部材72dが弾圧的に内包されており、潤滑剤含有ポリマ部材72dは少なくとも1ヶ所で切り割られたリング状をなしているか、あるいは完全に閉じたリング状をなしている。これにより、潤滑剤含有ポリマ部材72dが軸10と供回りするのを防止することができると共に、潤滑剤含有ポリマ部材72dを軸10に密着させてシール効果を向上させている。
【0079】
潤滑剤含有ポリマ部材72dの組成は、それぞれ上記第5の実施の形態における潤滑剤含有ポリマ部材72ものと同様である。
【0080】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1の軸受ユニットによれば、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材を少なくとも1ヶ所で分割した上でその外周部に嵌められた弾性部材が潤滑剤含有ポリマ部材を径方向内側に押圧すると共に弾性部材が潤滑剤を滲み込ませた多孔質体からなるので、軸封シール装置の封止性能を安定させると共に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す断面図である。
【図6】(a)は図5のB−B線端面図であり、(b)は図6(a)のC−C線端面図であり、(c)は図6(b)の部分拡大図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す断面図である。
【図8】図7の軸受ユニットにおける潤滑剤含有ポリマ部材72の平面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットにおける軸封シール装置の第1の変形例の構成を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットにおける軸封シール装置の第2の変形例の構成を示す部分断面図である。
【図11】図10における潤滑剤含有ポリマ72bの変形例の構成を示す部分断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態に係る軸受ユニットにおける軸封シール装置の第3の変形例の構成を説明する部分断面図である。
【図13】従来の軸受ユニットの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10 軸
11 縮径部
12 転がり軸受
13 ハウジング
14 内輪
15 外輪
16 ころ
17 保持器
18,19 オイルシール
20 潤滑剤含有ポリマ部材
40,41 潤滑剤含有ポリマ部材
50,55 潤滑剤含有ポリマ部材
62,65 潤滑剤含有ポリマ部材
72,72a、72b,72c,75 潤滑剤含有ポリマ部材
73,73a 弾圧可能リング部材
Claims (4)
- 内輪と外輪を有し前記内輪が軸に外嵌された転がり軸受と、前記転がり軸受を収容する軸受箱と、前記軸が前記軸受箱を貫通する部位の少なくとも一方に軸封シール装置とを備える軸受ユニットにおいて、
前記軸封シール装置は、前記軸を外嵌されると共に少なくとも1ヶ所で分割されたリング状の潤滑剤含有ポリマ部材と、前記潤滑剤含有ポリマ部材を径方向内側に押圧すべく前記潤滑剤含有ポリマ部材の外周部に嵌められた弾性部材とを備え、前記弾性部材は潤滑剤を滲み込ませた多孔質体からなることを特徴とする軸受ユニット。 - 前記潤滑剤含有ポリマ部材は、全重量に対してポリオレフィン系樹脂10〜50wt%、潤滑剤90〜50wt%を含むことを特徴とする請求項1に記載の軸受ユニット。
- 前記ポリオレフィン系樹脂は、ワックスに分類されるもの0〜5wt%、低分子量のもの8〜48wt%、超高分子量のもの2〜10wt%を含むことを特徴とする請求項2に記載の軸受ユニット。
- 前記潤滑油含有ポリマ部材が前記軸の回転に連れて回るのを防止する回り止めを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の軸受ユニット。
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