JP3796881B2 - 3レベルインバータの制御方法とその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は直流を3レベルの電位を有する交流相電圧に変換する電流変換器である3レベルインバータの制御方法とその制御装置に係り、特に、直流電源電圧を最大限に利用し、かつ中性点電位の変動抑圧が可能な3レベルインバータの制御方法とその方法を実施する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、自己消弧可能な特性を有するスイッチング素子の実用化等から、高調波歪みの少ない高圧大容量の交流出力が容易に得られるインバータとして、多レベルインバータが使用されるようになってきた。
多レベルインバータは、供給される直流電圧を分圧する直列接続された複数のコンデンサを備え、このコンデンサ同士の接続点を所定の電位、例えば、3レベルインバータの場合は中性点電位になるように構成し、3以上の電位を有する交流相電圧に変換する電力変換機能を備えている。
多レベルの中で最近注目されるようになってきた3レベルインバータのPWM(パルス巾変調)方式の出力スイッチング回路の基本的構成は、一般的に図10に示すように構成されている。
【0003】
図10において、DAは3相交流の電源線、40は整流回路である。
整流回路40で整流された交流は、プラス電源線DPとマイナス電源線DNに供給される。
プラス電源線DPとマイナス電源線DNの間には、直列接続する2個のコンデンサ15と16が接続される。プラス電源線DPとマイナス電源線DNの間には、さらに、3相交流出力のU相、V相、W相として、各相の回路に自己消弧可能な特性を有する、例えばIGBT、GTO等のスイッチング素子が夫々4個直列接続されている。
即ち、各相のスイッチング素子としては、U相には25U、26U、36U、35U、V相には25V、26V、36V、35V、W相には25W、26W、36W、35Wが並列に接続されている。
【0004】
また、コンデンサ15と16の接続点と、U相のスイッチング素子25Uと26Uの接続点との間にはダイオード27Uが、スイッチング素子36Uと35Uの接続点との間にはダイオード37Uが、コンデンサ15と16の接続点と、V相のスイッチング素子25Vと26Vの接続点との間にはダイオード27Vが、スイッチング素子36Vと35Vの接続点との間にはダイオード37Vが、コンデンサ15と16の接続点と、W相のスイッチング素子25Wと26Wの接続点との間にはダイオード27Wが、スイッチング素子36Wと35Wの接続点との間にはダイオード37Wが、夫々接続されている。
U相のスイッチング素子26Uと36Uの接続点、V相のスイッチング素子26Vと36Vの接続点、W相のスイッチング素子26Wと36Wの接続点に対して夫々交流負荷装置41、例えば誘導電動機が接続されている。
【0005】
上図の回路において、図示しない制御装置から、所定の周波数で交流負荷装置41に対応した周波数と電圧を出力するために、上記の各スイッチング素子にスイッチングパルスを出力している。
従って、例えば、U相から交流負荷装置41に電力を供給するタイミングにおいては、スイッチング素子26Uはその期間中オンされ、スイッチング素子25Uは制御装置から出力されるスイッチングパルスがハイの間オンされる。従って、スイッチング素子25Uがオンされると、交流負荷装置41のU相回路には、プラス電源線DPからプラス電圧が供給され、スイッチング素子25Uがオフされると、スイッチング素子26Uのオン状態が継続しているので、ダイオード27Uを経由してプラス電源線DPとマイナス電源線DNの間に接続されたコンデンサ15と16の接続点である中性点電位が交流負荷装置41のU相回路に接続される。
【0006】
交流負荷装置41からU相に電流が流出するタイミングにおいては、スイッチング素子36Uはその期間中オンされ、スイッチング素子35Uは制御装置から出力されるスイッチングパルスがハイの間オンされる。従って、スイッチング素子35Uがオンされると、交流負荷装置41のU相回路からはマイナス源線DNに電流が流れ、スイッチング素子35Uがオフされると、スイッチング素子36Uのオン状態が継続しているので、ダイオード37Uを経由してコンデンサ15と16の接続点である中性点電位が交流負荷装置41のU相回路に接続される。
V相、W相も上記と同様に動作し、交流負荷装置には所定の3相交流電力が供給される。
【0007】
ところで、上述した3レベルインバータのスイッチング回路であると、コンデンサ15と16の接続点である中性点電位は、スイッチングの状況に対応する中性点から各コンデンサを流れる電流変化の影響で、絶対的な中性点電位にならないで変動する。
そのために、スイッチング素子の両端には、基準値以上の電圧が印加されることになり、時にはスイッチング素子を過電圧によって破壊させる危険性がある。また、電圧がアンバランスになるので、所望される正常な出力電圧が得られなくなる恐れもある。
中性点電位の変動を防止するには、上記のコンデンサ15、16の容量を大きくすれば良いが、コンデンサを大きくすると、コストと配置スペースを大きくするので実用上の制限がある。そのために、種々の中性点電位変動を抑制する技術が提案されている。
例えば、制御装置(図示せず)から出力するスイッチングパルスを、正常な正弦波ではなく、3次高調波や偶数次調波を加算した変調波で制御するようにしている。
【0008】
また、特開平5−227796号公報、特開平7−79574号公報に開示された技術がある。
特開平5−227796号公報に開示のものは、中性点電圧の変動の中でも特に大きな3次調波成分のみを抑制し、抑制用の3次調波成分の基本波に対する振幅の比及び位相をインバータ周波数に拘らず一定値とし、この3次調波成分を基本波の指令に与えるように構成している。
また、特開平7−79574号公報に開示のものは、インバータの各相出力電圧指令にインバータ基本周波数の偶数次調波(例えば、6次調波や2次調波)を加算するためのテーブル、乗算器、加算器等の手段と、直流電源回路の中性点の電位変動を直流入力コンデンサの電圧偏差により検出し、その大きさに基づいて、出力電圧指令に加算するべき偶数次調波の大きさを決定する加算器、調節器、乗算器等の手段を備えるようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した例えば、制御装置から出力するスイッチングパルスを、3相高調波や偶数次調波を加算した変調波で制御すると、電圧変動を抑制するために出力電圧の変化を利用するため、例えば、図11、図12に示す従来の補正方法による補正波形例のように、プラスとマイナスの最大電圧は供給される直流電圧で頭打ちになるので、出力可能な電圧範囲が狭くなるという問題がある。
図11、図12はいずれも、横軸はU相の一周期に対応し、縦軸には、ゼロボルト点を0にして、プラス電源線DPの電圧を+1に、マイナス電源線DNの電圧を−1で示している。
図11において、AXは各相の所定の60度区間をオンに固定する補正信号、AU、AV、AWは夫々U相、V相、W相の補正されたPWM処理前の出力操作信号を示しており、図12において、BXは3倍の周波数で中性点の電位変動を与える補正信号、BU、BV、BWは夫々U相、V相、W相の補正されたPWM処理前の出力操作信号を示している。
【0010】
特開平5−227796号公報に開示された装置及び特開平7−79574号公報に開示された回路によると、いずれも、中性点電位の変動を抑制するために、出力電圧全体を平行移動するようにゼロ相をふらせるようにしている。しかしながら、出力電圧をプラス、マイナス方向にふると、ふられた側の最大電圧は印加直流電圧で制限される。従って、必要な交流ピーク電圧を出力しようとすると、印加直流電圧を高くする必要があり、直流電圧の利用率が低下することになる。
【0011】
ところで、中性点の電位変動をゼロにすることができたとして、コンデンサを限りなく小さくしてスペースの利用効率を高めようとしても、コンデンサの許容リップル電流の制限から無理である。
また、高調波を補正信号に利用する場合の制御情報としては基本波に対する位相信号が必要である。
本発明は従来のものの上記課題(問題点)を解決し、許容されるリップル電流から計算した適正なコンデンサ容量で実用上問題のない範囲に、中性点電位変動を抑制し、位相情報を必要としない簡易な手段で、直流電源の利用率を高めて出力可能な電圧範囲を向上することができる3レベルインバータの制御方法とその装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
ところで、本願出願人は本願と同一の発明者が発明したインバータの制御方法とその装置に関する発明を特開平9−9643号公報に記載のように、既に特許出願している。
この先願明細書に記載の技術は、設定された所定振幅値の交流電力を制御出力する2レベルのインバータとしての技術であった。
しかし、この先願の技術を3レベルインバータに拡張適用すれば、3レベルインバータにおける上記従来技術の課題が解決できることに着目し、本発明を完成したものである。
即ち、本発明の請求項1に記載の3レベルインバータの制御方法においては、3相交流電力における各相の瞬間値を指定する電圧指令の内の最大値と最小値の和が0Vもしくは零電圧指令値(直流電圧の1/2に相当する指令値)と等しくなるように各相の電圧指令にオフセットを加算するようにした。
この場合、位相情報が得られるときは、請求項3に記載のように、上述の方法を3相交流電力の各電圧指令の1/2の振幅で同一周期の交流信号の位相角の−30度(330度)乃至30度及び150度乃至210度の成分を3相分加算した値を各相の電圧指令に加算するようにしても良い。
【0013】
また、上述の方法を実施する制御装置は、請求項2に記載のように、3相交流電力の各電圧指令の内の最大値を検出する最大値検出機能と、3相交流電力の各電圧指令の内の最小値を検出する最小値検出機能と、最大値検出機能の出力と最小値検出機能の出力とを加算する加算機能と、この加算機能の加算結果を1/2にする割算機能と、この割算機能の出力を前記の3相交流電力の各電圧指令から減算し、又は加算する3組の電圧指令補正用計算機能とを備え、3組の電圧指令補正用計算機能の出力を3相交流電力の夫々の補正された真の電圧指令とするように構成した。
【0014】
この場合、位相情報が得られるときは、請求項4に記載のように、3相交流電力の各電圧指令を作成する電圧指令作成機能に対応し、3相交流電力の各電圧指令の1/2の振幅で同一周期の交流信号の位相角の−30度(330度)乃至30度及び150度乃至210度の範囲の成分を3相分加算した連続信号を作成出力する補正信号作成機能と、この補正信号作成機能の出力を3相交流電力の各電圧指令から減算し、又は加算する3組の電圧指令補正用計算機能とを備えるように構成しても良い。
【0015】
本発明は上述のような方法にし、また制御装置を構成したので、中性点電位変動を抑制しながら、直流電源の利用率を100%まで高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明を従来技術の説明で用いた図10に示す多レベルインバータの代表的な存在である3相PWM式3レベルインバータに対して適用した第1及び第2の実施の形態を図1乃至図7を用いて詳細に説明する。
第1の実施の形態:
図1は、本発明を実行するための3レベルインバータの制御装置の第1の実施の形態の構成を示すもので、3レベルインバータ(以下インバータと略称する)を構成するスイッチング素子をオン/オフするゲート信号作成機能までを示してスイッチング素子で構成したインバータ回路自体は省略し、図2にインバータ回路部を示している。
【0017】
図1において、1は、このインバータの上位制御装置等によって指令又は設定されてインバータ出力の周波数と電圧を指定する各相の電圧指令を作成する3相の電圧指令作成機能である。
電圧指令作成機能1で作成され出力するU相、V相、W相の各電圧指令は、この3個の電圧指令の内の最大値を検出して出力する最大値検出機能(以下MAX検出機能という)2と、最小値を検出して出力する最小値検出機能(以下MIN検出機能という)3に入力している。
MAX検出機能2の検出値とMIN検出機能3の検出値とは加算機能4に入力して加算される。加算機能4による加算値は、割算機能5に入力して2で割られる。即ち、加算機能4と割算機能5によって、各瞬間における3相の電圧指令の内の最大値と最小値の平均値を算出する。
また、電圧指令作成機能1で作成され出力するU相の電圧指令は、第1の電圧指令補正用計算機能6に入力し、V相の電圧指令は第2の電圧指令補正用計算機能7に入力し、W相の電圧指令は第3の電圧指令補正用計算機能8に入力している。
【0018】
前述した平均値は本発明に基づく電圧指令の補正信号であって、第1の電圧指令補正用計算機能6、第2の電圧指令補正用計算機能7、第3の電圧指令補正用計算機能8に夫々入力している。
第1の電圧指令補正用計算機能6からはU相の補正された真の電圧指令である出力操作信号SUを出力し、第2の電圧指令補正用計算機能7からはV相の補正された出力操作信号SVを出力し、第3の電圧指令補正用計算機能8からはW相の補正された出力操作信号SWを出力している。
補正された各相の出力操作信号は、図2、図3によって後述するインバータの主回路を構成するスイッチング回路に入力する。
【0019】
図2にインバータの主回路を構成するスイッチング回路を示している。図2はU、V、W相の各回路は共通なので、代表的に示したものである。
従って、各相の直列接続される4個の第1乃至第4のスイッチング素子を25、26、36、35で、各相2個のダイオードを27、37で、出力操作信号SU、SV、SWをSSで代表して示している。
図2において、出力操作信号SSは第1の比較回路21のプラス端子と第2の比較回路31のマイナス端子に入力している。この第1の比較回路21のマイナスス端子と第2の比較回路31のプラス端子には図示しない基準信号作成機能で、図3に示すように所定振幅所定周波数の三角波形の各3相に対応するPWMのための基準信号TP、TNが作成されて、夫々入力している。
【0020】
図3において、TPは0レベル以上に変化する三角波形のプラス側基準信号、SSは出力操作信号である。従って、第1の比較回路21からは、出力操作信号SSがプラス側基準信号TPよりも大きい範囲で、ローレベルGPnからハイレベルGPpの間変化するプラス側ゲート信号GPが出力している。
TNは0レベル以下に変化する三角波形のマイナス側基準信号であって、マイナス側基準信号TNが入力する第2の比較回路31からは、出力操作信号SSが基準信号TNよりも小さい範囲でローレベルGNnからハイレベルGNpの間変化するマイナス側ゲート信号GNが出力する。
従って、出力操作信号のレベルに比例したディユティ比で、プラス側ゲート信号GPとマイナス側ゲート信号GNが変化する。
【0021】
図2において、第1の比較回路21から出力するプラス側ゲート信号GPは第1のデッドタイム回路22と第1の極性反転回路23に入力し、第1の極性反転回路23の出力は第2のデッドタイム回路24に入力している。
また、第2の比較回路31から出力するマイナス側ゲート信号GNは第3のデッドタイム回路32と第2の極性反転回路33に入力し、第2の極性反転回路33の出力は第4のデッドタイム回路34に入力している。
さらに、第1のデッドタイム回路22は第1のスイッチング素子25の制御用ゲートに接続し、第2のデッドタイム回路24は第3のスイッチング素子36の制御用ゲートに接続し、第3のデッドタイム回路32は第4のスイッチング素子35の制御用ゲートに接続し、第4のデッドタイム回路34は第2のスイッチング素子26の制御用ゲートに接続している。
【0022】
各デッドタイム回路はスイッチング素子のほぼ起動遅れ時間、例えば、スイッチング素子がIGBTの場合は10マイクロ秒前後、夫々の入力パルスを切り取って各スイッチング素子に対するゲート信号の働きをマスクし、夫々のスイッチング素子の同時動作を禁止している。
次に、図3も参照して動作を説明する。上記の各ゲート信号によって、例えば、プラス側ゲート信号GPが出力している期間においては、マイナス側ゲート信号GNが出力していないので第2のスイッチング素子26はオン状態が継続され、プラス側ゲート信号GPがGPpのタイミングにおいては、第1のスイッチング素子25がオンし、プラス側ゲート信号GPがGPnのタイミングにおいては、第3のスイッチング素子36がオンする。
【0023】
また、マイナス側ゲート信号GNが出力している期間においては、プラス側ゲート信号GPが出力していないので、第3のスイッチング素子36はオン状態が継続され、マイナス側ゲート信号GNがGNpのタイミングにおいては、第4のスイッチング素子35がオンし、マイナス側ゲート信号GNがGNnのタイミングにおいては、第2のスイッチング素子26がオンする。
従って、プラス側ゲート信号GPが出力している期間においては、このインバータのスイッチング回路から電力負荷装置に、出力操作信号SSに対応する電流+ISが供給され、マイナス側ゲート信号GNが出力している期間においては、このインバータのスイッチング回路には電力負荷装置から、出力操作信号SSに対応する電流−ISが流れる。
即ち、電圧指令作成機能1で作成され出力するU相、V相、W相の各電圧指令のレベルに対応した3相交流電圧が、図10に示す電力負荷装置41に印加される。
【0024】
次に、図1に示した機能構成における働きを図1及び図4乃至図6を参照して説明する。
上述の機能構成において、電圧指令作成機能1からは、図4に示すような各相の電圧指令が出力されている。
図4は電圧指令の時間的変移(波形)を示していて、横軸にU相の電圧指令の1周期分を1周期を360度とする角度を単位として示し、縦軸には各相の電圧指令をフルスケール+1乃至−1で示している。
同図において、VUはU相の電圧指令、VVはV相の電圧指令、VWはW相の電圧指令である。
U相の電圧指令VU、V相の電圧指令VV、W相の電圧指令VWは夫々MAX検出機能2と、MIN検出機能3に入力する。MAX検出機能2とMIN検出機能3夫々の検出値は、加算機能4に入力して加算され、その加算値は、割算機能5に入力して2で割られる。即ち、加算機能4と割算機能5によって、各瞬間における3個の電圧指令の内の最大値と最小値の平均値である図5のRに示すような電圧指令の補正信号が得られる。
【0025】
補正信号は第1の電圧指令補正用計算機能6に入力し、第1の補正用計算機能6においてはU相の電圧指令から補正信号を減算して、図5のSUに示す補正されたU相の出力操作信号が得られ、第2の電圧指令補正用計算機能7に入力し、第2の補正用計算機能7においてはV相の電圧指令から補正信号を減算して図5のSVに示す補正されたV相の出力操作信号が得られ、第3の電圧指令補正用計算機能8に入力し、第3の電圧指令補正用計算機能8においてはW相の電圧指令から補正信号を減算して図5のSWに示す補正されたW相の出力操作信号が得られる。
なお、図5に示す補正信号Rは、電圧指令の補正信号と各相の補正された出力操作信号の夫々の時間的変化波形をU相の電圧指令1周期分について1周期を360度とする角度を単位として示している。
上述のように各相の電圧指令を補正することによって、各相電圧指令の中性点が操作されて、インバータから出力する線間電圧の最大値は直流電圧の最大値まで利用可能になる。
【0026】
上述した演算の結果得られる補正信号は、理論的に図6に示すような形状をなしている。
図6は補正信号の時間的変移(波形)を示していて、横軸には、任意の電圧指令を示す相電圧の時間変移を1周期を360度とする角度を単位として示しており、縦軸に示す曲線aは相電圧の振幅を最大振幅+1乃至−1で示している。
同図に示す曲線bは曲線aの1/2であって、曲線bの位相角の−30度(330度)乃至30度及び150度乃至210度の範囲を連続させた曲線cが前述した補正信号である。
上述した補正信号の時間的変化が、補正された出力操作信号に基づいてインバータで変換され出力する3相交流の中性点電位の時間的変化になる。
【0027】
上述の実施の形態の説明では各電圧指令補正用計算機能においては、夫々電圧指令から補正信号を減算するように説明したが、図6から明らかなように、補正信号算出機能の関係で、図6に示す曲線cに対して位相が180度偏位した(又は逆極性の)補正信号が得られる場合は、電圧指令補正用計算機能を加算機能にすれば、図5に示した各相の補正された出力操作信号と同一電圧指令が得られることは言うまでもない。
【0028】
上述の補正手段によって得られる結果の例を、図7、図8に示している。図7には、電力負荷装置の特性を示していて、横軸には電力負荷装置の出力トルクをパーセントで、縦軸に中性点電位変動の波高値を示している。
また、j1は従来のPWM方式の場合、k1は本発明に基づいて補正された状態を示している。
図8は、横軸に変調率を示し、縦軸には電圧利用率を示している。
また、j2は従来のPWM方式の場合、k2は本発明に基づいて補正された状態を示している。
即ち、本発明によると、補正をしないPWM方式出力電圧に対して、理論上2/(3)1/2倍まで、線形で出力が可能である。
さらに、上述の補正手段によると、許容されるリップル電流から計算したコンデンサ容量で実用上問題のない範囲に中性点電位変動を抑制できる。
【0029】
第2の実施の形態:
次に、図9を用いて本発明の第2の実施の形態を説明する。
同図において、1Aはディジタル処理によってU相の電圧指令VU、V相の電圧指令VV、W相の電圧指令VWを夫々構成し出力する3相の電圧指令作成機能であって、1Aaは上述と同様にディジタル処理によって図5に示した時間変化をなす補正信号Rを作成し出力する補正信号作成機能である。
補正信号RはU相に対応する第1の電圧指令補正用計算機能6A、V相に対応する第2の電圧指令補正用計算機能7A、W相に対応する第3の電圧指令補正用計算機能8Aに入力している。
また、3相の電圧指令作成機能1Aから出力するU相の電圧指令は第1の電圧指令補正用計算機能6Aに入力し、V相の電圧指令は第2の電圧指令補正用計算機能7Aに入力し、W相の電圧指令は第3の電圧指令補正用計算機能8Aに入力している。
各電圧指令補正用計算機能は、各相の電圧指令と補正信号との位相関係が図6に示したような場合は減算機能として、図6に対して電圧指令と補正信号との位相関係が180度偏位している(又は逆極性の)場合は加算機能とすれば良い。第1の電圧指令補正用計算機能6AからはU相の補正された出力操作信号SUが、第2の電圧指令補正用計算機能7AからはV相の補正された出力操作信号SVが、第3の電圧指令補正用計算機能8AからはW相の補正された出力操作信号SWが出力する。
なお、各電圧指令補正用計算機能以降は、前述した第1の実施の形態と同様なので説明は省略する。
【0030】
第3の実施の形態:
本発明の第3の実施の形態としては、図示しないが第1及び第2の実施の形態で示した電圧指令作成機能が第2の実施の形態と同様ディジタル処理によって実行するような実施の形態が考えられる。
このような構成の実施の形態の場合は、各相の電圧指令と補正信号を作成することなく、直接補正された操作出力信号と同等の電圧指令を作成するようにすれば良い。
【0031】
上述の説明は本発明の技術思想を実現するための基本方法を示したものであって、本発明を適用するインバータの条件と仕様に対応して適切に応用改変すれば良いことは当然である。
例えば、第1の実施の形態を実行する装置の機能構成例は、図1にハードウェアによって構成するように説明したが、インバータ本体の制御機能とも対応して、本発明に基づく技術思想をソフトウェアによって実現するようにしても、適宜ハードウェアとソフトウェアを混合させても良い。
【0032】
【発明の効果】
本発明は上述したような方法にし、また装置を構成するようにしたので、次のような優れた効果を有する。
(1)位相情報を必要としない手段によって、どのような構成と目的の3レベルインバータに対しても広範囲に適用できる。
(2)許容されるリップル電流から計算したコンデンサ容量で実用上問題のない範囲に中性点電位変動を抑制できる。
(3)直流電源の利用率を100%まで高めることができたので、交流ピーク電圧を印加直流電圧いっぱいまで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の基本構成を示す概要構成ブロック図である。
【図2】本発明が適用されるインバータの主回路を構成するPWMスイッチング回路の基本構成を示す概要構成ブロック図である。
【図3】図2に示すPWMスイッチング回路の基本動作を示す主要部の波形図である。
【図4】第1の実施の形態における各相の電圧指令を説明する時間的変移の波形図である。
【図5】第1の実施の形態における各相の補正された電圧指令と補正信号との関係を説明する時間的変移の波形図である。
【図6】第1の実施の形態における補正信号を説明する時間的変移の波形図である。
【図7】第1の実施の形態と従来方式との間の中性点電位変動を比較する特性図である。
【図8】第1の実施の形態と従来方式との間の電圧利用率を比較する特性図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の構成を示す概要構成ブロック図である。
【図10】本発明と従来技術とが適用されるインバータの概要構成ブロック図である。
【図11】従来の電圧指令補正手段の1例による、補正された各相の電圧指令と補正信号の時間的変移の波形図である。
【図12】従来の電圧指令補正手段の図12とは別の例による補正された各相の電圧指令と補正信号の時間的変移の波形図である。
【符号の説明】
1、1A:電圧指令作成機能
1Aa:補正信号作成機能
2:MAX検出機能(最大値検出機能)
3:MIN検出機能(最小値検出機能)
4:加算機能
5:割算機能
6、7、8、6A、7A、8A:電圧指令補正用計算機能(加算機能又は減算機能)
15、16:コンデンサ
21、31:比較回路
23、33:極性反転回路
22、24、32、34:デッドタイム回路
25、26、35、36:スイッチング素子
27、37:ダイオード
SU、SV、SW、SS:出力操作信号
TP、TN:基準信号
Claims (4)
- 直流電力を3相交流電力に変換する3レベルインバータにおいて、
3相交流電力における各相の瞬間値を指定する電圧指令の内の最大値と最小値の和が0Vもしくは零電圧指令値(直流電圧の1/2に相当する指令値)と等しくなるように各相の電圧指令にオフセットを加算することを特徴とする3レベルインバータの制御方法。 - 3相交流電力における各相の瞬間値を指定する各電圧指令の内の最大値を検出する最大値検出機能と、
前記3相交流電力の各電圧指令の内の最小値を検出する最小値検出機能と、
前記最大値検出機能の出力と最小値検出機能の出力とを加算する加算機能と、
該加算機能の加算結果を1/2にする割算機能と、
該割算機能の出力値を前記3相の各電圧指令値から減算し、又は加算する3組の電圧指令補正用計算機能とを備え、
前記3組の電圧指令補正用計算機能の出力を3相交流電力の夫々の真の電圧指令とすることを特徴とする3レベルインバータの制御装置。 - 直流電力を3相交流電力に変換する3レベルインバータにおいて、
3相交流における各相の瞬間値を指定する各電圧指令の1/2の振幅で、同一周期の交流信号の位相角の−30度(330度)乃至30度及び150度乃至210度の成分を3相分加算した値を各相の電圧指令に加算することを特徴とする3レベルインバータの制御方法。 - 3相交流電力における各相の瞬間値を指定する各電圧指令を作成する電圧指令作成機能に対応し、該3相交流電力の各電圧指令の1/2の振幅で、同一周期の交流信号の位相角の−30度(330度)乃至30度及び150度乃至210度の範囲の成分を3相分加算した連続信号を作成出力する補正信号作成機能と、
該補正信号作成機能の出力値を前記3相交流電力の各電圧指令値から減算し、又は加算する3組の電圧指令補正用計算機能とを備えることを特徴とする3レベルインバータの制御装置。
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