JP4002096B2 - 中性点クランプ式電力変換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、点弧素子を用いた中性点クランプ式電力変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図16は従来の中性点クランプ式電力変換装置の構成図である。図16において、点弧素子S11〜S14,S21〜S24、フライホイールダイオードD11〜D14,D21〜D24及びクランプダイオードD15,D16,D25,D26がフルブリッジ結線されている。そして、交流側のa点及びb点は交流リアクトルLsを介して単相交流電源SUPに接続され、出力端子に平滑用直流コンデンサCd1,Cd2が接続されている。なお、Loadは直流出力端子に接続された負荷である。
差電圧制御回路AVR2は、電圧検出器PT1,PT2で検出した直流コンデンサCd1,Cd2の直流電圧Vd1,Vd2から加減算器A2で演算した差電圧検出値V0=Vd1−Vd2と差電圧指令値V0*とを比較し、偏差ε0=V0*−V0を増幅して補償電圧Δeを作り、符号切替器ASに入力する。符号切替器ASは、電流検出器CT5で検出した交流端子電流Isと電圧検出器PTsで検出した交流側端子電圧Vcとから、乗算器ML2で演算した入力電力Pc=Vc×Isの符号に応じて補償電圧Δeの符号を次のように切り替える。
Pc≧0のとき、Δe’=Δe
Pc<0のとき、Δe’=−Δe
【0003】
この補償電圧Δe’を加減算器A3,A4に入力する。加減算器A3,A4は電圧指令値ea,ebに補償電圧Δe’を加えてPWM制御回路PWMCに新たな電圧指令値ea’,eb’を次のように与える。
ea’=ea+Δe’
eb’=eb+Δe’=−ea+Δe’
図17は図16の動作を説明するタイムチャートである。図17(a)において、X1,X2,Y1,Y2はパルス幅変調制御(PWM制御)の搬送波、ea’,eb’はPWM制御の電圧指令値である。ここで、X1,X2は0〜+Emaxの間で変化する三角波で、そして、X2はX1に対して位相が180°ずれている。また、Y1,Y2は−Emax〜0の間で変化する三角波で、それぞれ三角波X1,X2の反転値である。電圧指令値ea’と三角波X1,Y2とを比較し、点弧素子S11〜S14のゲート信号g11,g12を次のように作る(図17(b)(c)参照)。
ea’>X1のとき、g11=1で、S11をオン、S13をオフ
ea’≦X1のとき、g11=0で、S11をオフ、S13をオン
ea’<Y1のとき、g12=1で、S14をオン、S12をオフ
ea’≧Y1のとき、g12=0で、S14をオフ、S12をオン
【0004】
また、電圧指令値eb’と三角波X2,Y2とを比較し、点弧素子S21〜S24のゲート信号g21,g22を次のように作る(図17(e)(f)参照)。
eb’>X2のとき、g21=1で、S21をオン、S23をオフ
eb’≦X2のとき、g21=0で、S21をオフ、S23をオン
eb’<Y2のとき、g22=1で、S24をオン、S22をオフ
eb’≧Y2のとき、g22=0で、S24をオフ、S22をオン
この結果、交流側のa点の電圧Va,b点の電圧Vbは図17(d)(g)に示すような波形となる。すなわち、a点の電圧平均値は電圧指令値ea’に比例し、b点の電圧Vbの平均値は電圧指令値eb’に比例する。また、交流側端子電圧Vc(図17(h)参照)は、a点の電圧Vaとb点の電圧Vbとの差電圧で、Vc=Va−Vbとなり、平均値Vc(m)は図17(h)の破線で示すように、電圧指令値ea’−eb’=ea−eb=2・ebに比例した値となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の中性点クランプ式電力変換装置は以上のように構成されているので、直流コンデンサCd1,Cd2の容量のばらつきにより各直流コンデンサCd1,Cd2の充放電時間にばらつきが発生して、直流端子電圧Vdにリップルが発生するので、交流端子電流Isの高調波電流が増大して騒音が増大するという問題点があった。
この発明は、以上のような問題点を解消するためになされたもので、交流端子電流の高調波成分を抑制することにより、騒音を低減させることができる中性点クランプ式電力変換装置を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる中性点クランプ式電力変換装置は、点弧素子からなるフルブリッジ結線で出力端子に第1及び第2の直流コンデンサが接続されて、単相電源にリアクトルを介して接続される中性点クランプ式電力変換装置において、上記単相電源の交流電源電圧から電源位相を算出し、直流電圧指令値と上記両直流コンデンサ間の直流電圧との差及び上記電源位相から交流電流指令値を算出し、上記交流電流指令値と上記リアクトルのインピーダンス値と上記電源位相の余弦波成分との積によって電圧低下補償分を算出すると共に、上記交流電流指令値と上記単相電源の交流電流との差及び上記電圧低下補償分並びに上記単相電源の交流電源電圧から演算した電圧指令値を上記両直流コンデンサ間の直流電圧で除して正規化した第1の信号波を演算する信号波発生手段と、上記各直流コンデンサ間の直流電圧の偏差及び上記第1の信号波の符号並びに上記交流電流指令値の符号の積により中性点電位の変動抑制用の中性点電位補正係数を算出すると共に、上記中性点電位補正係数及び上記第1の信号波の絶対値をテーブルの引数とし、戻値を第2の信号波としてテーブル演算を行うことにより零電圧をまたがない値に調整された充放電時間調整用の上記第2の信号波を出力する中性点電位制御手段と、上記単相電源の定格周波数を自然数倍した搬送周波数及び上記電源位相にもとづいて演算され、互いに180°の位相のずれを有し、上記電源位相に同期した2つの搬送波を作成する搬送波発生手段と、上記第1の信号波及び上記第2の信号波並びに上記各搬送波を比較演算して上記各直流コンデンサの充放電時間を演算する動作時間決定手段と、上記各直流コンデンサの充放電時間の組み合わせに応じて上記各点弧素子の点弧信号を作成する点弧信号発生手段とを備えたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は実施の形態1の主回路を示す構成図、及び図2は実施の形態1の制御回路を示すブロック図である。図1及び図2において、1は単相交流電源、2は交流リアクトル、3,4は平滑用直流コンデンサ、5は負荷である。6は中性点クランプ式電力変換装置で、以下のS11〜S14,S21〜S24,7〜12により構成されている。S11〜S14,S21〜S24はトランジスタ、GTOより構成されている。D15,D16,D25,D26はクランプダイオードである。なお、S11〜S14,D11〜D16でU相が構成され、S21〜S24,D21〜D26でV相が構成されている。
7は信号発生手段で、交流電流指令値Is*及び第1の信号波Vc*を作成する。8は中性点電位制御手段で、第2の信号波Vcp*及びVcn*を作成する。9は搬送波発生手段で、電源位相θに同期した第1の搬送波Δp及び第2の搬送波Δnを作成する。10,11は動作時間決定手段で、正極端子Pと中性点端子O間の電圧の充放電時間Sp及び負極端子Nと中性点端子O間の電圧の充放電時間Snを演算により作成する。12は点弧信号発生手段で、各点弧素子S11〜S14,S21〜S24の点弧信号S11g〜S14g,S21 g〜S24gを作成する。
【0008】
次に動作について説明する。図1において、交流側端子電圧Vcは、a点の電圧Vaとb点の電圧Vbとの差電圧で、Vc=Va−Vbとなる。そして、電圧Vcは点弧素子S11〜S14をオン、オフさせることによって、次のように変化する。但し、各直流コンデンサ3,4の直流電圧をそれぞれVdp,Vdn、全体の直流電圧をVdとし、通常2つの直流コンデンサ3,4がバランスしているとき、Vdp=Vdn=Vd/2とする。
S11とS12がオンのとき、Va=+Vd/2
S12とS13がオンのとき、Va =0
S13とS14がオンのとき、Va=−Vd/2
同様に、b点の電圧VbはS21〜S24をオン、オフさせることにより、次のように変化する。
S21とS22がオンのとき、Vb=+Vd/2
S22とS23がオンのとき、Vb=0
S23とS24がオンのとき、Vb=−Vd/2
となり、いずれの場合も3レベルの電圧を発生する。
【0009】
次に制御回路の動作について説明する。図2において、まず電圧検出器(図示せず)で検出した交流電源電圧Vs、電流検出器(図示せず)で検出した交流端子電流Is、同じく電圧検出器(図示せず)で検出した直流コンデンサ3の直流電圧Vdp、直流コンデンサ4の直流電圧Vdn、及び直流電圧指令値Vd*が信号波発生手段7に入力される。信号波発生手段7は、図3に示すように加減算器7aで直流電圧VdをVd=Vdp+Vdnにより求める。次に、直流電圧指令値Vd*と直流電圧Vdとから、加減算器7bにより偏差ΔVd=Vd*−Vdを求めて、直流電圧制御手段7cで比例積分増幅し、交流電流指令値Is*の波高値Imを算出する。交流電流指令値Is*は乗算器7dで波高値Imとsinθとを乗算することにより発生する。なお、sinθは電源位相検出手段7eで、Vs=Vm・sinθに同期した電源位相θを検出する。
次に、加減算器7fにより交流電流指令値Is*と交流端子電流Isとから、偏差ΔIs=Is*−Isを求めて、交流電流制御手段7gで偏差ΔIsを比例増幅した値e’を求める。
【0010】
続いて、波高値Im、電源位相θがcos演算された単位余弦波cosθ、及び交流電源1と交流端子a,bとの間にある交流リアクトル成分Lsを掛け合わせて、交流リアクトル成分による電圧低下補償分VL=ωLSIm・cosθを演算する。ここで、ωは電源角周波数である。
そして、加減算器7hで、e*=Vs−e’−VLにより電圧指令値e*を得る。さらに、乗算器7iで、電圧指令値e*を直流電圧Vd=Vdp+Vdnで除して(Vdの逆数を掛ける)正規化された第1の信号波Vc*を演算する。
次に中性点電位制御手段8では、図4に示すように補正係数演算手段8aに入力された直流コンデンサ3,4の直流電圧Vdp,Vdnから偏差Δdf=Vdp−Vdnを求める。そして、偏差Δdfを比例増幅して参照補正係数f’を演算する。この参照補正係数f’は、ここではVdp>Vdnのとき正の値、逆にVdp<Vdnのとき負の値をとるものとする。
さらに、中性点電位制御手段8に入力された交流電流指令値Is*及び第1の信号波Vc*から、交流電流指令値Is*の符号sgn(Is*)及び第1の信号波Vc*の符号sgn(Vc*)を求める。続いて、乗算器8bで符号sgn(Is*)、符号sgn(Vc*)及び参照補正係数f’を掛け合わせて、中性点電位の変動抑制用の中性点補正係数fを算出する。
【0011】
そして、中性点電位補正係数fと第1の信号波Vc*の絶対値|Vc*|との関係からテーブル演算手段8cで図5に示すテーブルを使用してテーブル演算により第2の信号波Vcp*,Vcn*を作成して出力する。なお、図5のテーブルにおいて、引数として縦軸に中性点電位補正係数f、横軸に第1の信号波Vc*の絶対値|Vc*|をとり、その交差点が戻値である第2の信号波Vcp*,Vcn*となることを示している。なお、図5のテーブルは引数をf及び|Vc*|、戻値をVcp*及びVcn*として、次のように作られている。
|Vc*|>0.5のとき
Vcp*=1.0−((1.0−|Vc*|)×(1.0−f))
Vcn*=1.0−((1.0−|Vc*|)×(1.0+f))
|Vc*|≦0.5のとき
Vcp*=|Vc*|×(1.0−f)
Vcn*=|Vc*|×(1.0+f)
【0012】
ここで、テーブル作成の考え方について説明する。まず、第2の信号波Vcp*,Vcn*は零電圧付近において交流端子電圧Vcに波形歪みを発生させないようにするために、両者が互いに零電圧を跨る値をとらないように制御する。また、PWM変調において、第1の搬送波Δp、第2の搬送波Δnの振幅を超えないように、即ち変調率が1.0を超えたり、あるいは−1.0を下回らないようにして、かつ中性点電位変動が抑制できるように調整する。このようにして、変調率が1.0や0.5や0等の特異点においても、Vcp*及びVcn*に反映される中性点電位補正係数fを同一にして、Vcp*及びVcn*に対する重みづけに差を付けないようにする。
さらに、変調率0.5あるいは−0.5付近において0.5以上と以下では、中性点電位制御を行うことによる正極端子Pと中性点端子O間電圧の充放電時間Sp、及び負極端子Nと中性点端子N間電圧の充放電時間Snの各持続時間の補正を行うための延長短縮方向が逆転するために、第2の信号波Vcp*及びVcn*が互いに0.5あるいは−0.5を跨る値をとらないように制御する必要がある。これらを考慮して第1の信号波Vc*の振幅と中性点電位補正係数fに応じた第2の信号波Vcp*,Vcn*の取り得る範囲が決定される。
第2の信号波Vcp*,Vcn*を中性点電位補正係数fと第1の信号波Vc*の絶対値|Vc*|との関係から演算した波形を図6に示す。図6において、絶対値|Vc*|の最大値が0.5以上で、かつ中性点電位補正係数fが正の場合で、第2の信号波Vcp*,Vcn*は絶対値を挟むように出力されている。この場合、Vcp*の振幅がVcn*の振幅より常に大きくなっている。また、|Vc*|が0.0と0.5のときは特異点扱いとなり両信号波Vcp*,Vcn*とも同じ値が出力される。さらに、図示はされていないが、|Vc*|の振幅が1.0のときも特異点として、両信号波Vcp*,Vcn*が1.0で同じ値が出力される。
【0013】
搬送波発生手段9では電源位相θと、電源定格周波数、例えば60Hzの任意の自然数倍の搬送周波数から演算により、両信号波Vcp*,Vcn*の一周期間に偶数個の波形を有する電源位相θに同期した第1の搬送波Δp,第2の搬送波Δnを作成する。第2の搬送波Δnは第1の搬送波Δpに対して位相が180°ずれている。
動作時間決定手段10,11においてPWM変調を行う。一方の動作時間決定手段10では図7に示すように、入力された第2の信号波Vcp*と第1の搬送波Δpとを比較演算して、Vcp*<ΔpのときSp=1となる正極端子Pと中性点端子O間電圧の充放電時間Spを出力する。同様にして他方の動作時間決定手段11からVcn*<ΔnのときSn=1となる負極端子Nと中性点端子O間電圧の充放電時間Snを出力する。この場合、各充放電時間Sp,Snは互いに異なったパルス幅のパルスが繰り返し出力される。なお、図7は中性点電位補正係数f=0の場合を示している。
【0014】
点弧信号発生手段12では、各点弧素子S11〜S14,S21〜S24のゲートへ出力される点弧信号S11g〜S14g,S21g〜S24gを演算する。即ち各点弧素子S11〜S14,S21〜S24のON、OFFは各充放電時間Sp,Sn及び信号波零クロス信号(即ち、符号sgn(Vc*))の状況の組み合わせに応じて図8に示すように設定される。図8では点弧ケースを8種類に分けて、点弧信号S11g〜S14g、S21g〜S24g、U,V各相の相電圧及び交流端子線間電圧の振幅値が示されている。
【0015】
以上のように、信号波発生手段7で第1の信号波Vc*を作成し、直流コンデンサ3,4間の直流電圧の偏差と交流電圧指令値と交流電流指令値とから中性点電位補正係数を算出し、第1の信号波Vc*と中性点電位補正係数との関係から中性点電位制御手段8から第2の信号波Vcp*,Vcn*を出力し、動作時間決定手段10,11で第1の信号波Vc*と第2の信号波Vcp*,Vcn*と搬送波発生手段9で作成された電源位相θに同期した第1の搬送波Δp,第2の搬送波Δnとから直流コンデンサ3,4の充放電時間Sp,Snを演算して、点弧信号発生手段12で充放電時間により点弧素子の点弧信号を作成することにより、直流コンデンサ3,4間の中性点の電位変動を抑制して交流端子電流Isの高調波を低減できるため、騒音の低下を図ることができる。
【0016】
実施の形態1において、例えば負荷5を直流電動機として、図6に示すように各充放電時間Sp,Snを作成することにより、中性点電位を全体の直流電圧の1/2に維持しながら、電気車の力行運転が可能である。ここで、図10に示すように、図6のVcp*→Vcn*,Vcn*→Vcp*と置き換えて、各充放電時間Sp,Snを作成することにより、中性点電位を全体の直流電圧の1/2に維持しながら、電気車の回生運転を行うことが出来る。
実施の形態1において、中性点電位制御手段8で算出される中性点電位補正係数がf=0の場合の第2の信号波Vcp*の様子を図7に示したが、中性点電位変動の抑制が働いて、中性点電位補正係数fが正の値になったときは図9に示すようになる。即ち、一方の第2の信号波Vcp*は波高値付近が膨らんだ形に変形し、他方の第2の信号波Vcn*は波高値付近が縮んだ形に変形している。これにより、正極端子Pと中性点端子O間の電圧の充放電時間Spの持続時間が短くなり、逆に負極端子Nと中性点端子Oとの間の電圧の充放電時間Snの持続時間が長くなる。そして、交流端子電圧Vcを見てみると、電圧レベルが0.5或いは−0.5の持続時間は、±0.5以外の電圧レベルに変化する区間で挟まれた個々のパルス幅を中性点電位補正係数がf=0(図7参照)と比較すると変化しているが、第2の信号波Vcp*,Vcn*の一周期の合計持続時間で見ると変化していない。また、±0.5以外の電圧レベルの持続時間に関しては変化していない。
さらに、図11に示すように、図9のVcp*→Vcn*,Vcn*→Vcp*と置き換えて、各充放電時間Sp,Snを作成することにより、中性点電位を全体の直流電圧の1/2に維持しながら電力の回生運転を行うことができる。
【0017】
実施の形態2.
図12は実施の形態2のブロック図、及び図13はPWM変調の説明図である。図12及び図13において、7,8,10〜12は実施の形態1のものと同様のものである。13は搬送波発生手段で、各第2の信号波Vcp*、Vcn*の一周期間に偶数個の波形を有する電源位相θに同期した第1の搬送波Δp,第2の搬送波Δnを作成する。搬送波発生手段13は第2の信号波Vcp*の一周期間の第1の搬送波Δpの個数が1/2(図13の場合、4個)となるところで、後半の第1の搬送波Δpの位相を180°進める。そして、第2の搬送波Δnは第1の搬送波Δpを反転させたものとする。このようにすることにより、各充放電時間Sp,Snは同じパルス幅のパルスが発生する位相が異なるが、互いに同じパルス幅の繰り返しになっている。
以上のように、各充放電時間Sp,Snとも互いに同じパルス幅のパルスの繰り返しとすることにより、各第2の信号波Vcp*,Vcn*の一周期単位ではなく、パルス単位の短い時間内で中性点端子Oにおける電位変動を抑制して直流電圧Vdの1/2の電圧を維持することができる。
実施の形態1及び実施の形態2において、U相及びV相で構成された電力変換装置6が1台のものについて説明したが、図14に示すように2台の電力変換装置6を並列に接続して、各電力変換装置6の第1の搬送波Δp1,Δp2の初期位相を互いに90°ずらすことにより、特定の高調波次数の高調波成分を低減させることができる。
【0018】
実施の形態3.
図15は実施の形態3の制御回路を示すブロックである。なお、主回路は実施の形態1と同様で図1を使用する。図1及び図15において、7,8は実施の形態1のものと同様のものである。14は信号波位相検出手段で、入力された第1の信号波Vc*により、Vc*=Vcm・sinθ’に同期した信号波位相θ’を算出する。15は搬送波発生手段で、信号波位相θ’に同期した第1の搬送波Δp,第2の搬送波Δnを作成する。16,17は動作時間決定手段で、正極端子Pと中性点端子O間の電圧の充放電時間Sp及び負極端子Nと中性点端子O間の電圧の充放電時間Snを演算により作成する。18は点弧信号発生手段で、各点弧素子S11〜S14,S21〜S24の点弧信号S11g〜S14g,S21g〜S24gを作成する。
【0019】
上記構成において、信号波位相検出手段14で信号波位相θ’を検出して、搬送波発生手段15で信号波位相θ’に同期した第1の搬送波Δp,第2の搬送波Δnを作成する。続いて動作時間決定手段16,17で各第2の信号波Vcp*,Vcn*と各搬送波Δp,Δnとから実施の形態1と同様にして充放電時間Sp,Snを演算する。そして、点弧信号発生手段18で実施の形態1と同様にして、各点弧素子S11〜S14,S21〜S24の各点弧信号S11g〜S14g,S21g〜S24gを作成して出力する。
以上のように、信号波位相θ’と各搬送波Δp、Δnの位相とが常に同位相でPWN変調されるため、中性点端子Oにおける電圧変動の抑制作用を向上させることができる。
【0020】
実施の形態1から実施の形態3において、単相主回路のものについて説明したが、オープンデルタ結線して3相主回路としても同様の効果を期待することができる。そして、単相では交流架線駆動電車用コンバータシステムとして適用することができる。3相ではアクティブフィルタ、無効電力補償装置、及びオープンデルタ巻線の交流電動機のベクトル制御等に適用することができる。
また、実施の形態1から実施の形態3において、PWM変調における各搬送周波数を一定にしたものについて説明したが、2倍の周波数の各搬送周波数で変調することにより、高調波を低減させることができる。さらに、各搬送周波数をランダムに変化させて高調波の分布を分散させることにより、騒音を低減させることができる。
【0021】
【発明の効果】
この発明によれば、信号発生手段で第1の信号波を作成し、直流コンデンサ間の直流電圧の偏差と交流電圧指令値と交流電流指令値とから中性点補正係数を算出し、第1の信号波と中性点電位補正係数との関係から中性点補正係数発生手段から第2の信号波を出力し、動作時間決定手段で第1の信号波と第2の信号波と搬送波発生手段で作成された電源位相に同期した各搬送波とから直流コンデンサの充放電時間を演算して、点弧信号発生手段で充放電時間により点弧素子の点弧信号を作成することにより、直流コンデンサ間の中性点の電位変動を抑制して交流端子電流の高調波を低減できるため、騒音の低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の主回路を示す構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1の制御回路を示すブロック図である。
【図3】 図2の要部を示すブロック図である。
【図4】 図2の要部を示すブロック図である。
【図5】 図2の第2の信号波を作成するテーブルの説明図である。
【図6】 図2の動作を示す説明図である。
【図7】 図2の動作を示す説明図である。
【図8】 図2の動作を示す説明図である。
【図9】 図2の動作を示す説明図である。
【図10】 図2の動作を示す説明図である。
【図11】 図2の一部を変形した例を示す説明図である。
【図12】 この発明の実施の形態2の制御回路を示すブロック図である。
【図13】 図12の動作を示す説明図である。
【図14】 実施の形態1及び実施の形態2の適用例を示す主回路の構成図である。
【図15】 この発明の実施の形態3の制御回路を示すブロック図である。
【図16】 従来の中性点クランプ式電力変換装置の構成図である。
【図17】 図17の動作を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
1 単相電源、2 リアクトル、3,4 直流コンデンサ、
7 信号発生手段、8 中性点電位制御手段、
9,13,15 搬送波発生手段、
10,11,16,17 動作時間決定手段、12,18 点弧信号発生手段、
14 信号波位相検出手段、S11〜S14,S21〜S24 点弧素子。
Claims (2)
- 点弧素子からなるフルブリッジ結線で出力端子に第1及び第2の直流コンデンサが接続されて、単相電源にリアクトルを介して接続される中性点クランプ式電力変換装置において、上記単相電源の交流電源電圧から電源位相を算出し、直流電圧指令値と上記両直流コンデンサ間の直流電圧との差及び上記電源位相から交流電流指令値を算出し、上記交流電流指令値と上記リアクトルのインピーダンス値と上記電源位相の余弦波成分との積によって電圧低下補償分を算出すると共に、上記交流電流指令値と上記単相電源の交流電流との差及び上記電圧低下補償分並びに上記単相電源の交流電源電圧から演算した電圧指令値を上記両直流コンデンサ間の直流電圧で除して正規化した第1の信号波を演算する信号波発生手段と、上記各直流コンデンサ間の直流電圧の偏差及び上記第1の信号波の符号並びに上記交流電流指令値の符号の積により中性点電位の変動抑制用の中性点電位補正係数を算出すると共に、上記中性点電位補正係数及び上記第1の信号波の絶対値をテーブルの引数とし、戻値を第2の信号波としてテーブル演算を行うことにより零電圧をまたがない値に調整された充放電時間調整用の上記第2の信号波を出力する中性点電位制御手段と、上記単相電源の定格周波数を自然数倍した搬送周波数及び上記電源位相にもとづいて演算され、互いに180°の位相のずれを有し、上記電源位相に同期した2つの搬送波を作成する搬送波発生手段と、上記第1の信号波及び上記第2の信号波並びに上記各搬送波を比較演算して上記各直流コンデンサの充放電時間を演算する動作時間決定手段と、上記各直流コンデンサの充放電時間の組み合わせに応じて上記各点弧素子の点弧信号を作成する点弧信号発生手段とを備えたことを特徴とする中性点クランプ式電力変換装置。
- 請求項1において、動作時間決定手段は2種類の第2の信号波を使用して上記第1の直流コンデンサの正極端子と中性点端子との間の電圧充放電時間、及び上記第2の直流コンデンサの負極端子と中性点端子との間の電圧充放電時間を演算することを特徴とする中性点クランプ式電力変換装置。
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