JP3796410B2 - 管状体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、釣竿あるいはゴルフシャフト等に用いる管状体に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
通常、天然の竹で竿管を形成した和竿は、その節の部分を平滑に研削し、更に漆を塗布して形成している。このような和竿は、ヘラ竿等で好まれているものの、大量生産することは困難であると共に、高価である。一方、繊維強化合成樹脂製の管状体で形成した竿管に和竿の外観を模した模様を施そうとすると、このような和竿は、生えたままの自然の状態の竹節の外観を持つものではなく、竹節の部分を研磨した状態であるため、このような竹節を研磨した状態の模様を施しても、竹の質感を生じさせることはできない。このため、自然に生えたままの竹の節の特徴を持った種々の釣竿が提案されている。
【0003】
しかし、繊維強化合成樹脂製の竿管を、自然に生えたままの竹の節と同じ外観の模様を持った状態で工業生産することは極めて困難である。
【0004】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、外観が、より自然な竹の節の感じを持つ管状体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回形成した管状体本体を備え、この管状体本体の外側に竹節状の節付け模様を形成した管状体であって、管状体本体の外周部に配置され、前記節付け模様を形成する膨出部を備え、この膨出部は、この膨出部の周部に沿い、かつ、その少なくとも一部が管状体本体の軸芯に直交する面に対して傾斜した面に沿って延びる段差状部を有する管状体が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1から図3は、本発明の実施形態による管状体10の一部を示す。
この管状体10は、例えば釣竿用として好適なものであり、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを芯金に巻回することで形成された中空薄肉構造あるいは中実管状体構造の管状体本体部12(図3)を有する。この管状体本体部12の外側には、それぞれ竹節状の節付け模様を形成する2つの膨出部14を設けてある。このような膨出部14は、必要に応じて1カ所に設けるだけでもよいが、例えば釣竿のような長尺の管状体を形成する場合には、所要の節間隔を隔てて2カ所以上設けることが好ましい。3カ所以上設ける場合には、全ての節間隔を同じ長さに形成することは必ずしも必要なことではなく、天然の竹と同様に、根元に近い部分の節間隔を短く形成し、一方、先端に近い部分の節間隔は長く形成してもよい。
【0008】
本実施形態では、図1の上方を天然の竹の先端側に模し、下方を根元側に模した竹節状の節付け模様として形成してある。勿論、これは釣竿あるいはゴルフクラブのシャフト等に使用する場合の使用方向を示すものではなく、実際に使用する部材の必要に応じて使用方向は自由に選択することができる。
【0009】
本実施形態の膨出部14は、その周部に沿って延びる段差状部16を有する。この段差状部16は、図1の根元側から先端側に向けて次第に拡径する先太部18と、この先太部の先端側で管状体本体12の周部に沿って延びる谷部20との間に形成され、少なくとも一部が、管状体本体12の軸芯に直交する横方向面Hに対して傾斜した傾斜面Tに沿って延在する。図1では、図を簡略化するため、この面Tを直線で示してあり、符号αは、この横方向面Hに対する傾斜面Tの傾斜角度を示す。この傾斜角度αは、1度から25度の範囲であるのが好ましく、3度から20度であるのが更に好ましい。なお、この段差状部16は、最も根元側に位置する部分と、最も先端側に位置する部分とを、互いに径方向に対向する位置に配置する必要はなく、互いに径方向にずれた位置に配置してもよい。また、この段差状部16は、少なくとも一部が傾斜面Tに沿って延びるものであれば、その全体が平坦面である傾斜面T内に位置するものでなくても、例えば管状体本体12の側方から見たときに、この段差状部16が傾斜面Tに対して先端側あるいは根元側に突出した曲面状に配置されるものであってもよく、更に、例えば左右非対称形状等の任意形状に設定することができる。
【0010】
なお、複数の膨出部14を形成する場合は、管状体本体12の側方から見たときに、隣接する膨出部14のそれぞれの傾斜面Tが形成する傾斜角度αの符号あるいは値を相違させ、これにより隣接する傾斜面Tを互いに交差させた状態に配置するのが好ましい。これにより、傾斜面Tの向きが管状体本体12の周方向に沿って順に変化し、より天然の竹に模した節付け模様を形成することができる。勿論、多数の膨出部14を形成する場合には、例えば根元側の節密度の高い部分では、傾斜角度αをほぼ0度に近い角度に形成してもよい。
【0011】
本実施形態の段差状部16は、先太部18の先端縁部で形成される大径部と、谷部20の後端縁部で形成される小径部との間に延在しかつ管状体本体12の先端側に向く端面19を有する。本実施形態における端面19は、図3に示すように、管状体本体12の長手方向に沿う断面で見たときに、軸芯に対してほぼ垂直に形成してある。この端面19は、膨出部14の全周にわたって同一の幅すなわち半径方向寸法を等しく形成し、その全体を上述の傾斜面T内に配置することが好ましいが、しかし、このように形成することは必ずしも必要なことではなく、天然の竹節の形態が強調できるものであれば適宜の形状に形成してもよい。
【0012】
図2および図3に示すように、谷部20は先端側に向けて次第に拡径させて形成されている。この谷部20の先端側には、先端側に向けて次第に縮径する先細部22が配置されており、この先細部22と谷部20との間に稜線部24が形成される。この稜線部24は、図1および図2には、図示を明瞭にするために線状に記載してあるが、図3に示すように小さな半径を持つ円弧状断面を有してもよく、この場合には、図1および図2に示すような明瞭な線として表れてこないことは明らかである。この稜線部24の外径は、端面19の外径よりも小径に形成するのが好ましい。一方、この稜線部24は、段差状部16あるいは端面19と平行に形成する必要はなく、このように非平行に形成した場合には、谷部20の軸方向寸法がその周部に沿って変化する。この場合には、図示のように、段差状部16あるいは端面19が最も根元側に位置する部位で最も広く形成することが、天然の竹節を模する上で好ましい。
【0013】
更に、膨出部14の谷部20と先細部22とには、段差状部16の端面19から離隔する方向に向けて、軸方向に延びる凹部26が形成されている。この凹部26は、稜線部24の近部で最も幅広に形成され、先端側および根元側に向けて次第に幅狭に形成され、その深さは先端側および根元側に向けて次第に浅く形成される。この凹部26の根元側の底壁には、色あるいは材質を膨出部14の他の部分と相違させた埋め込み部28を配置してある。
【0014】
このような凹部26は、管状体本体12上に上述のような膨出部14を形成した後、例えば球形のエンドミル(図示しない)を用いて加工することができる。この凹部26は根元側端部を、段差状部16の端面19から例えば0.3〜3mmで0.5〜0.8mmであるのが好ましい距離に離隔して配置するのが好ましい。また、凹部26の底壁に形成する埋め込み部28は、同様なエンドミルで例えば管状体本体12に達する小凹部を形成し、この小凹部に他の部分よりも濃い色の塗料等を充填することにより、形成することができる。この埋め込み部28も、軸芯方向に細長く形成することが好ましい。
【0015】
この凹部26は、竹の芽の跡を摸した模様を形成するものであり、本実施形態では段差状部16あるいは端面19が最も根元側に位置する部位から延設されており、したがって、隣接する膨出部14の凹部26は、互いに周方向にずれた位置に配置される。また、埋め込み部28は、他の部分よりも濃い色に形成することにより、枝の付け根跡を模した模様を形成する。
【0016】
更に、本実施形態による膨出部14は、図1に示すように、先太部18の先端側の外周に、微細な長手方向溝、線条あるいは凹凸部を形成した縁部18aを有する。この縁部18aを他の部分よりも濃い色に形成することにより、竹節の模様をより強調させることができる。
【0017】
図4は、上述の膨出部14における傾斜した段差状部16あるいは端面19を形成する方法を示す。
図示の実施形態では、予め管状体本体12に肉盛成形して先細部22および谷部20を形成する。このような谷部20および先細部22は、管状体本体12を軸芯を中心として回転しつつ例えばエポキシ、ウレタン系の塗料あるいは肉盛剤を塗布し、例えば刷毛を用いて所要の形状に形成することができる。このように管状体本体12に肉盛りして谷部20および先細部22を所要形状に形成し、硬化させた後、この谷部20および先細部22上にマスキング材30を配置する。このとき、マスキング材30の根元側縁部は、所要の傾斜面Tに沿わせて管状体本体12をマスキングする。このマスキング材30は、段差状部16の端面19に対応した壁厚を有するものであれば、通常のマスキング材の他、例えば熱収縮チューブ等のチューブ類を用いることも可能である。
【0018】
このように形成する段差状部16の段差高さ、すなわち管状体本体12の軸芯と直交する垂直面内で測定したときの端面19の外径半径と内径半径との寸法差は、0.3〜2.0mmで特に0.5〜1.5mmの範囲にあるのが好ましい。また、このような段差状部16における段差の高さは、複数の膨出部14を形成する場合に、先端側で小さく、かつ根元側で大きく形成するのが好ましい。このような複数の段差状部16の段差高さは、例えば一竿管の場合のように隣接する膨出部14毎に変化させてもよく、例えば複数竿管を継ぐ場合のように同じ竿管内の複数の膨出部14のそれぞれの段差高さを等しくしつつ、先端側の竿管の膨出部14の段差高さを小さくしてもよい。
【0019】
管状体本体12に所要形状のマスキングを施した後、先太部18を、先細部22と同様な塗料あるいは肉盛剤を用いて肉盛り成形する。マスキング材30の根元側縁部が段差状部16の端面19に対応した壁厚で所要の傾斜面Tに沿って配置されているため、このマスキング材30の外周面と同一面となるまで肉盛り形成することにより、この膨出部14に所要形状の段差状部16および端面19が簡単に形成される。勿論、塗料あるいは肉盛剤は、所要の段差あるいは端面が形成できる限り、マスキング材30の外周面に至るまで肉盛りする必要はなく、その外周面に至る途中まででもよい。
【0020】
そして、所要の形状あるいは厚さまで肉盛して先太部18を形成した後、この先太部18を例えば加熱することにより、硬化する。この後、マスキング材30を除去し、先太部18の表面を例えばバレル研磨あるいはバフ仕上げ等により、平滑な鏡面状に形成する。そして、最後に、先太部18の先端側の縁部18aに微細な長手方向溝等を形成し、更に、膨出部14の各部を天然の竹節を強調した所要の色彩に着色する。
【0021】
この方法は、チューブあるいはマスキング材30の厚さを利用して段差状部16を形成したものであり、このようなマスキング材30を用いることに代え、NC工作機等により、機械的に加工することも可能である。この場合には、予め膨出部14の全体を肉盛り形成し、硬化しておく。更に、上述の実施形態のように谷部20および先細部22を形成した後に、先太部18を形成することに代え、例えば管状体本体12に段差状部16あるいは端面19の形成に必要な壁厚および傾斜角度を有するマスキングを直接施し、最初に、先太部18を肉盛り形成することも可能である。
【0022】
図5および図6は他の実施形態による膨出部を示す。この膨出部も基本的には上述の実施形態と同様であり、したがって、同様な部位には同様な符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の膨出部14は、管状体本体12に肉盛り形成した後に、機械加工して形成したものである。この膨出部14は、段差状部16を軸芯Nに対して直交する平面内に配置してあり、先太部18と谷部20との間に形成される端面19は、その半径方向に延びる半径方向線19aが軸芯Nに対して90°±20°の範囲で90°±10°であるのが好ましい略垂直な角度βを形成する。
【0023】
このような段差状部16は、図6に示す研磨工具32を用いることにより、形成することができる。
本実施形態の研磨工具32は、段差状部16の端面19と共に、先太部18の先端側と、谷部20と先細部22の根元側とを同時に形成することができるもので、先太部18の先端側を研磨する直線状部34と、段差状部16あるいは端面19を研磨する凸部36と、谷部20および先細部の根元側を研磨する曲線状部38とを有する。このような研磨工具32で段差状部16およびその近部を研磨する場合は、管状体本体12をその軸芯を中心として回転しつつ、この管状体本体12上に硬化させた膨出部14に半径方向外方から近接させる。これにより、膨出部14が段差部16の軸方向前後にわたって研磨され、所要の外径を持つ段差状部16が先太部18と谷部20と先細部22と共に形成される。
【0024】
本実施形態の段差状部16では、研磨工具32の凸部36の形状を適宜に選定することにより、端面19の半径方向線19aを、径方向に沿う直線状あるいは緩やかな曲面状に形成することができる。また、この端面19の外周部および内周部の縁部が小さな半径を持つ曲面状に形成される。
【0025】
段差状部16が所要の形状に研磨された後、先太部18および先細部22を上述の実施形態と同様に、例えばバレル研磨あるいはバフ仕上げ等により、平滑な鏡面状に形成する。そして、最後に、先太部18の先端側の縁部18aに微細な長手方向溝等を形成し、更に、膨出部14の各部を天然の竹節を強調した所要の色彩に着色する。
【0026】
なお、本実施形態では、段差状部16を軸芯Nに対して直交する面内に配置したが、これに限らず、軸芯Nに対して傾斜する状態に形成することも可能である。この場合には、例えば管状体本体12の回転と同期させて研磨工具32を軸芯方向に移動することで、形成することができる。
【0027】
なお、本発明はいずれかの実施形態に限定されるものではなく、種々の変形あるいは変更が可能なことは明らかである。例えば、図5に示す膨出部14にも図2に示すような凹部26を形成してもよく、また、図1から図3に示す管状体10の端面19も、図5に示す実施形態と同様に、軸芯に対して70°〜110°で80°〜100°の範囲が好ましい角度に形成し、あるいは曲面状に形成してもよい。いずれの場合も、自然に生えた竹の節に近い模様を形成すると共に、竹の節そのものではなく、竹の節の特徴を強調した模様を形成することにより、外観がより自然な竹の質感を持つ管状体10を形成することが可能となる。
【0028】
【発明の効果】
以上明らかなように、本発明によると、竹の節そのものではなく、竹の節の特徴を強調した模様を形成することにより、外観が、より自然な竹の節の感じを持つ管状体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施形態による管状体の一部を示す説明図。
【図2】図1に示す管状体の膨出部を拡大した説明図。
【図3】図1に示す管状体の膨出部の形状を説明する概略的な断面図。
【図4】図1の管状体の製造過程の一部を示す説明図。
【図5】他の実施形態による管状体の一部を示す説明図。
【図6】図5の管状体の製造過程の一部を示す説明図。
【符号の説明】
10…管状体、12…管状体本体、14…膨出部、16…段差状部、19…端面。

Claims (3)

  1. 強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回形成した管状体本体を備え、この管状体本体の外側に竹節状の節付け模様を形成した管状体であって、
    管状体本体の外周部に配置され、前記節付け模様を形成する膨出部を備え、この膨出部は、この膨出部の周部に沿い、かつ、その少なくとも一部が管状体本体の軸芯に直交する面に対して傾斜した面に沿って延びる段差状部を有することを特徴とする管状体。
  2. 前記膨出部は、管状体本体の周部に沿って延びる谷部を有し、この谷部は前記段差状部の小径部を形成することを特徴とする請求項に記載の管状体。
  3. 前記段差状部の大径部から離隔する方向に向け、前記谷部から管状体本体の軸芯方向に沿って延びる長手方向凹部を有することを特徴とする請求項に記載の管状体。
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