JP3796335B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷潜像を顕在化するためのトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法は、米国特許第2,297,691号に記載されている如く多数の方法が知られており、一般には光導電性物質からなる感光体を利用し、種々の手段により該感光体上に電気的潜像を形成し、ついで該潜像をトナーを用いて現像を行って可視像とし、必要に応じて紙などの転写材にトナー画像を転写した後、熱・圧力などにより転写材上にトナー画像を定着して複写物又は印刷物を得るものである。また、トナーを用いて現像する方法あるいは、トナー画像を定着する方法としては、従来各種の方法が提案されている。
【0003】
従来、これらの目的に使用するトナーは、一般的に熱可塑性樹脂中に染料または顔料からなる着色剤を溶融混練し、均一に分散させた後、微粉砕装置により微粉砕し、微粉砕物を分級機により分級して所望の粒径を有するトナーを製造してきた。
【0004】
この製造方法ではかなり優れたトナーを製造し得るが、ある種の制限、すなわちトナー用材料の選択範囲に制限がある。例えば樹脂着色剤分散体が十分に脆く、経済的に可能な製造装置で微粉砕し得るものでなければならない。ところが、こういった要求を満たすために樹脂着色剤分散体を脆くすると、実際に高速で微粉砕した場合に形成された粒子の粒径範囲が広くなり易く、特に比較的大きな割合の微粒子がこれに含まれるという問題が生じる。更に、このように脆性の高い材料から得られるトナーは、複写機等現像用に使用する際、更なる微粉砕ないしは粉化を受けやすい。また、この方法では、着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合によっては、画像形成時におけるカブリの増大,画像濃度の低下や混色性・透明性の不良の原因となるので、着色剤の分散には十分な注意を払わなければならない。また、破断面に着色剤が露出することにより、現像特性の変動を引き起こす場合もある。
【0005】
一方、これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、特公昭36−10231号公報、同43−10799号公報及び同51−14895号公報等により懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。懸濁重合法においては、重合性単量体,着色剤,重合開始剤、更に必要に応じて架橋剤,荷電制御剤,その他添加剤を、均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続相、例えば水相中に適当な攪拌機を用いて分散し、同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。
【0006】
この方法では、粉砕工程が全く含まれないため、トナーに脆性が必要ではなく、樹脂として軟質の材料を使用することができ、また、粒子表面への着色剤の露出が生ぜず、均一な摩擦帯電性を有するトナーが得られるという利点がある。また、得られるトナーの粒度分布も比較的シャープである。また離型剤として低軟化点物質を多量にトナー中に内包化できるため、得られるトナーが耐オフセット性に優れるという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
該懸濁重合法に使用される分散剤としては、例えばポリビニルアルコール,ゼラチン,メチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩,デンプン等の水溶性高分子が提案されている。しかしながら、これら分散剤を用いた場合、得られるトナー粒子は、微小粒子を多く含みかつ、粒度分布のブロードなものとなってしまう。
【0008】
また、難水溶性無機化合物として、リン酸三カルシウム,リン酸マグネシウム,リン酸アルミニウム,リン酸亜鉛,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム,メタケイ酸カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム,ベントナイト,シリカ,アルミナ等が提案されている。これら分散剤を使用した場合、比較的シャープな粒度分布のトナー粒子が得られるものの、重合反応時の粒子の安定性がやや不安定なため、粒子同士の合一が起こりやすく、粗大粒子が生成しやすい。これらの対策として、特開昭60−117256号公報、特開平2−179650号公報には、重合中あるいは、造粒後に分散剤を追添加する方法が提案されている。これらの方法は、確かに有用であるが、工程の煩雑化、また、反応系内の温度変化等により、得られるトナーの物性(分子量分布など)が安定しにくいという弊害がある。
【0009】
また、難水溶性無機化合物と界面活性剤の併用が、特開平4−195153号公報、特開平6−124000号公報等に提案されているが、重合反応終了後の界面活性剤の除去が完全に行われにくく、得られるトナーの帯電特性が安定しにくい。
【0010】
また、特開平7−49586号公報には、分散剤として用いる難水溶性無機塩を酸で溶解した水溶液に、アルカリを加えて強アルカリ性にして難水溶性無機塩を析出させ、微細な難水溶性無機塩を得る方法が提案されている。さらに特開平9−54457号公報では、該公報の改善方法として、アルカリ水溶液中に、リン酸イオン及びカルシウムイオンを含有するpH4以下の水溶液を添加し、リン酸カルシウムの微粒子を析出させる方法が提案されている。これらの方法によって、確かにトナー粒度分布の改善や、効率的な分散剤の使用が可能となるが、工程の煩雑化を招くこと、また、得られるトナーの粒度分布も未だ十分なものとはいえない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、煩雑な工程を得ることなく、微小粒子や粗大粒子の生成を軽減し、高収率で粒度分布のシャープなトナーの製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、現像性の優れたトナーの製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、定着性に優れたトナーの製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重合性単量体組成物調製工程、分散媒調製工程、該重合性単量体組成物造粒及び重合工程を含むトナーの製造方法において、
該分散媒調製工程が、リン酸カルシウム塩を分散剤(リン酸三カルシウム及びアニオン界面活性剤の組合せよりなる分散剤を除く)として含有する水系媒体を調製する工程であって、該分散媒調製工程において、リン酸イオン含有水溶液にカルシウムイオン含有水溶液を添加する速度が、該リン酸イオン含有水溶液に該カルシウムイオン含有水溶液を添加する前における該リン酸イオン含有水溶液中のリン酸イオンのモル数に対して、カルシウムイオンのモル数の比が0.005〜0.5s-1となる速度であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者等は鋭意検討の結果、上記カルシウムイオン含有水溶液を添加する速度が、リン酸イオン含有水溶液中のリン酸イオンのモル数に対して、カルシウムイオンのモル数の比(Ca2+/PO4 3-)が、0.005〜0.5s-1となる速度で添加されて得られた分散媒中で、重合性単量体組成物を造粒、重合することで、煩雑な工程を経ることなく、微小粒子や粗大粒子の生成を軽減し、高収率で粒度分布のシャープなトナーが得られることを見い出した。
【0016】
これは、Ca2+/PO4 3-が、0.005〜0.5s-1となる速度の場合、非常に微細で均一なリン酸カルシウム塩を生成するためと考えられる。Ca2+/PO4 3-のさらに好ましい範囲としては、0.01〜0.3s-1が好ましい。
【0017】
Ca2+/PO4 3-が、0.005s-1に満たない場合、カルシウムイオンが徐々に添加されることになり、初期に析出した結晶が成長し、得られるリン酸カルシウム塩の結晶が大きくなるばかりか、粒度分布がブロードなものとなってしまう。その結果、最終的に得られるトナーの粒径も大きく、粒度分布もブロードになってしまい、現像剤として使用した場合、耐久後半にカブリの目立つ画像になったり、現像器からトナーが飛散する傾向になる。
【0018】
Ca2+/PO4 3-が、0.5s-1を超える場合、リン酸イオン含有水溶液とカルシウムイオン含有水溶液の混合が困難になる。その結果、得られるリン酸カルシウム塩の結晶は小さいが、粒度分布のブロードなものになってしまう。非常に小さな結晶が含まれることで、分散媒体の粘度が高くなり造粒性が低下する。さらには、微粒子が生成しやすい傾向になり、粒度分布がブロードになってしまう。このように微粒子の多い現像剤は、帯電部材やトナー担持体を汚染しやすく、耐久後半にベタ画像部にムラを発生しやすくなる傾向にある。
【0019】
本発明では該分散媒調製工程の液温が、40℃以上であることが好ましい。液温40℃未満の場合、リン酸カルシウム塩の生成速度が遅くなり、微細で均一な塩が得られにくくなる。
【0020】
本発明では、該分散剤が、高剪断力を有する撹拌手段により生成されることが好ましい。このような高速回転剪断撹拌機としては、T.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA)、スープラトン(月島機械株式会社製)等の機種が挙げられる。
【0021】
本発明では該分散剤が、該重合性単量体組成物に対して、0.2〜10.0重量%になるよう調製されることが好ましい。0.2%に満たない場合、粗粒が多く、逆に10.0%を超えると微粒子が多く生成し、所望の粒度分布が得られない。
【0022】
本発明のリン酸カルシウム塩とは、主として、第三リン酸カルシウム、ヒロドキシアパタイトを指し、混合されるリン酸イオン含有水溶液とカルシウムイオン含有水溶液中の各々のイオンのモル比Ca/Pは、1.5〜1.8になるよう調製されることが好ましい。
【0023】
本発明では該重合性単量体組成物中に、極性樹脂を含有することが好ましい。極性樹脂は、粒子界面に局在化し、分散剤と電気的に作用し、造粒/重合中に粒子を、より安定化せしめるからである。
【0024】
本発明に用いられる極性樹脂としては、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体,マレイン酸共重合体,飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂が好ましく用いられる。該極性樹脂は、重合性単量体と反応しうる不飽和基を分子中に含まないものが特に好ましい。該極性樹脂の分子量としては、Mwで5,000から50,000、Mw/Mnで1.2から5.0が好ましい。Mwが5,000より小さいと、得られるトナーの耐ブロッキング性が低下する。また、50,000を超えると低温定着性が劣ったトナーとなる。ガラス転移温度(Tg)は、外殻樹脂のTgより高めに設定することが好ましい。
【0025】
また、本発明のトナーは、コア/シェル構造をもつことが好ましい。
【0026】
低軟化点物質を内包化せしめる具体的方法としては、水系媒体中での材料の極性を主要単量体より低軟化点物質の方を小さく設定し、更に少量の極性の大きな樹脂又は単量体を添加せしめることで、低軟化点物質を外殻樹脂で被覆した所謂コア/シェル構造を有するトナーを得ることができる。
【0027】
また、コア部の主たる成分が低軟化点物質であり、該低軟化点物質の融点が40〜90℃であることが好ましい。融点の測定は、ASTM D3418−8に準拠し測定された主体極大ピーク値とした。極大ピークが40℃未満であると低軟化点物質の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が弱くなり好ましくない。一方、極大ピークが90℃を超えると定着温度が高くなり、好ましくない。更には、極大ピーク値の温度が高いと、主に造粒中に低軟化点物質が析出してきて懸濁系を阻害するため好ましくない。
【0028】
本発明の極大ピーク値の温度の測定には、例えばパーキンエレマー社製のDSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。サンプルはアルミニウム製パンを用い対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/min.で測定を行った。
【0029】
具体的にはパラフィンワックス,ポリオレフィンワックス,フィッシャートロプッシュワックス,アミドワックス,高級脂肪酸、エステルワックス及びこれらの誘導体又はこれらのグラフト/ブロック化合物等が利用できる。
【0030】
また、低軟化点物質はトナー中へ5〜30重量%添加することが好ましい。仮に5重量%未満の添加では十分な定着性が得られず、また30重量%を超える場合は、重合法による製造においても造粒時にトナー粒子同士の合一が起きやすく、粒度分布の広いものが生成しやすく、本発明には不適当であった。
【0031】
本発明においてトナーの断層面を測定する具体的方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを十分分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ、得られた硬化物を四三酸化ルテニウム、必要により四三酸化オスミウムを併用し染色を施した後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて薄片状のサンプルを切り出し、透過電子顕微鏡(TEM)を用いトナーの断層形態を測定した。本発明においては、用いる低軟化点物質と外殻を構成する樹脂との若干の結晶化度の違いを利用して材料間のコントラストを付けるため、四三酸化ルテニウム染色法を用いることが好ましい。
【0032】
本発明に用いられる重合性単量体としては、スチレン,o(m−,p−)−メチルスチレン,m(p−)−エチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸ステアリル,(メタ)アクリル酸ベヘニル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン,イソプレン,シクロヘキセン,(メタ)アクリロニトリル,アクリル酸アミド等のエン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独または一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−P139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス温度(Tg)が、40〜80℃を示すように単量体を適宜混合し用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合には、トナーの保存安定性やトナーの耐久安定性の面から問題が生じ、一方80℃を超える場合は定着点の上昇をもたらし、特にフルカラートナーの場合においては各色トナーの混色が不十分となり色再現性に乏しく、更にOHP画像の透明性を著しく低下させ高画質の面から好ましくない。
【0033】
外殻樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される。具体的なGPCの測定方法としては、予めトナーをソックスレー抽出器を用いトルエン溶剤で20時間抽出を行った後、ロータリーエバポレーターでトルエンを留去せしめ、更に低軟化点物質は溶解するが外殻樹脂は溶解し得ない有機溶剤(例えばクロロホルム)を加え十分洗浄を行った後、THF(テトラヒドロフラン)に可溶した溶液をポア径が0.3μmの耐溶剤性メンブランフィルターでろ過したサンプルをウォーターズ社製150Cを用い、カラム構成は昭和電工製A−801、802、803、804、805、806、807を連結し標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い分子量分布を測定し得る。得られた樹脂成分の数平均分子量(Mn)は、5000〜1,000,000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、2〜100を示す外殻樹脂が本発明には好ましい。
【0034】
また、本発明においては、トナーの表面にさらに最外殻樹脂層を設けても良い。
【0035】
該最外殻樹脂層のガラス転移温度は、耐ブロッキング性のさらなる向上のため外殻樹脂層のガラス転移温度以上に設計されること、さらに定着性を損なわない程度に架橋されていることが好ましい。また、該最外殻樹脂層には帯電性向上のため極性樹脂や荷電制御剤が含有されていることが好ましい。
【0036】
該最外殻層を設ける方法としては、特に限定されるものではないが例えば以下のような方法が挙げられる。
【0037】
1.重合反応後半、または終了後、反応系中に必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を溶解、分散したモノマーを添加し重合粒子に吸着させ、重合開始剤を添加し重合を行う方法。
【0038】
2.必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を含有したモノマーからなる乳化重合粒子またはソープフリー重合粒子を反応系中に添加し、重合粒子表面に凝集、必要に応じて熱等により固着させる方法。
【0039】
3.必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を含有したモノマーからなる乳化重合粒子またはソープフリー重合粒子を乾式で機械的にトナー粒子表面に固着させる方法。
【0040】
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,磁性体,以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
【0041】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0042】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アンスラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0043】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アンスラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0044】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100重量部に対し1〜20重量部添加して用いられる。
【0045】
黒色着色剤としてカーボンブラック以外に特に磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり、樹脂100重量部に対し40〜150重量部添加して用いられる。
【0046】
本発明に用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、カラートナーの場合は、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。更に、重合阻害性が無く水系への可溶化物の無い荷電制御剤が特に好ましい。具体的化合物としては、ネガ系としてサリチル酸,ナフトエ酸,ダイカルボン酸の金属化合物、スルホン酸,カルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリークスアレーン等が利用でき、ポジ系として四級アンモニウム塩,該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。該荷電制御剤は樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部が好ましい。しかしながら、本発明において荷電制御剤の添加は必須ではなく、二成分現像方法を用いた場合においては、キャリヤーとの摩擦帯電を利用し、非磁性一成分ブレードコーティング現像方法を用いた場合においてもブレード部材やスリーブ部材との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
【0047】
本発明で使用される重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤が用いられる。該重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが一般的には単量体に対し0.5〜20重量%添加され用いられる。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、十時間半減期温度を参考に、単独又は混合し利用される。
【0048】
重合度を制御するため公知の架橋剤,連鎖移動剤,重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
【0049】
本発明の具体的なトナー製造方法は、重合性単量体中に低軟化点物質である離型剤,着色剤,荷電制御剤,重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー・超音波分散機等によって均一に溶解又は分散せしめた重合性単量体組成物を、先に述べた分散媒調製工程で調製した分散媒中で、ホモミキサー等により分散せしめる。
【0050】
重合性単量体組成物からなる液滴が所望のトナー粒子のサイズが得られた段階で、造粒工程を停止する。
【0051】
その後は分散剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行いながら、重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合工程を行う。
【0052】
また、重合反応後半に昇温しても良く、更に、先に述べた最外殻層を設ける方法を行っても良い。
【0053】
更には、未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。
【0054】
反応終了後、懸濁液を酸性とし、ヒドロキシアパタイトを溶解させ、生成したトナー粒子を洗浄・ろ過により回収し、乾燥する。
【0055】
懸濁重合法においては、通常、重合性単量体組成物100重量部に対して水300〜3000重量部を分散剤として使用するのが好ましい。
【0056】
各種トナー特性付与を目的として使用される外添剤としては、トナーに添加した時の耐久性の点から、トナー粒子の重量平均径の1/10以下の粒径であることが好ましい。この添加剤の粒径とは、電子顕微鏡におけるトナー粒子の表面観察により求めたその平均粒径を意味する。外添剤としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
【0057】
金属酸化物(酸化アルミニウム,酸化チタン,チタン酸ストロンチウム,酸化セリウム,酸化マグネシウム,酸化クロム,酸化錫,酸化亜鉛など)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム,硫酸バリウム,炭酸カルシウムなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)・カーボンブラック・シリカなど。
【0058】
これら外添剤は、トナー粒子100重量部に対し、0.01〜10重量部が用いられ、好ましくは、0.05〜5重量部が用いられる。これら外添剤は、単独で用いても、また、複数併用しても良い。それぞれ、疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
【0059】
トナーの平均粒径及び粒度分布は、コールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能であるが、本発明においてはコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターTA−II型によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積,個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから本発明に係る体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)と重量変動係数(S4)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)との長さ変動係数(S1)を求めた。
【0060】
また、2μm未満の粒度分布は、フロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子株式会社製)で個数分布を測定した。測定法としては、イオン交換水約30ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁したイオン交換水を超音波分散器で約10分間分散処理を行い、前記FPIA−1000で測定を行った。
【0061】
画像濃度は(5mm角、5mm丸、ベタ)をマクベス濃度計(マクベス社製)にて測定した数値である。
【0062】
本発明では、カブリ量を反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD社製 REFLECTOMETER ODEL TC−6DS)を用いて測定し、プリント後の白地部反射濃度最悪値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとした時のDs−Drをカブリ量とした。カブリ量2%以下は実質的にカブリの無い良好な画像であり、5%を超えるとカブリの目立つ不鮮明な画像である。
【0063】
【実施例】
以下、具体的な製造方法、実施例及び比較例をもって本発明をさらに詳細に説明する。
【0064】
実施例1
0.1M−Na3PO4水溶液90リットルを、イオン交換水60リットルに投入し、60℃に加温した後、TK式ホモミキサーCB−S200(特殊機化工業製;ローター最長径92mm)を用いて、4,000rpmで撹拌下、これに1.0M−CaCl2水溶液15リットルを30秒で添加し、分散媒を調製した。
【0065】
この時、カルシウムイオン15molを30秒で添加しているので、単位時間当りの添加量は、リン酸イオン9molに対して、0.5mol/sであることから、Ca2+/PO4 3-は、0.056s-1である。
【0066】
一方、
上記処方を60℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、均一に溶解、分散した。これに、重合開始剤2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0kgを溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0067】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて4,000rpmで10分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、70℃に昇温し、10時間反応させた。重合反応終了後、減圧下で残存モノマーを留去し、冷却後、塩酸を加え分散剤を溶解させた後、ろ過、水洗を数回行い、乾燥をして、着色懸濁粒子を得た。
【0068】
得られた粒子の粒度分布を表1に示した。
【0069】
また、得られた粒子の断層面を観察したところ、コア/シェル構造が確認された。
【0070】
また、冷却後の反応液に塩酸を加えず(分散剤を溶解させない)、ろ過、乾燥をして得られた粒子表面を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に数十nmの均一なリン酸カルシウム塩の針状結晶が確認された。
【0071】
得られた粒子100重量部に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカを1重量部外添し、重合トナーを得た。得られたトナーを用い、キヤノン社製カラーレーザーショットLBP−3020改造機にて連続3,000枚の単色画出し評価を行った。結果を表1にまとめる。
【0072】
実施例2
実施例1において、1.0M−CaCl2水溶液を10秒で添加し(Ca2+/PO4 3-は0.167s-1)、着色剤にキナクリドン顔料を用いた以外は、同様の操作を行って、重合トナーを得た。結果を表1にまとめる。
【0073】
また、トナー断層面を観察したところ、コア/シェル構造が確認された。
【0074】
また、冷却後の反応液に塩酸を加えず(分散剤を溶解させない)、ろ過、乾燥をして得られた粒子表面を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に数十nmの均一なリン酸カルシウム塩の針状結晶が確認された。
【0075】
実施例3
実施例1において、1.0M−CaCl2水溶液を60秒で添加し(Ca2+/PO4 3-は0.028s-1)、着色剤にC.I.ピグメントイエローを用いた以外は、同様の操作を行って、重合トナーを得た。結果を表1にまとめる。
【0076】
また、トナー断層面を観察したところ、コア/シェル構造が確認された。
【0077】
また、冷却後の反応液に塩酸を加えず(分散剤を溶解させない)、ろ過、乾燥をして得られた粒子表面を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に数十nmの均一なリン酸カルシウム塩の針状結晶が確認された。
【0078】
実施例4
実施例1において、1.0M−CaCl2水溶液を300秒で添加(Ca2+/PO4 3-は0.006s-1)した以外は、同様の操作を行って、重合トナーを得た。結果を表1にまとめる。
【0079】
また、トナー断層面を観察したところ、コア/シェル構造が確認された。
【0080】
また、冷却後の反応液に塩酸を加えず(分散剤を溶解させない)、ろ過、乾燥をして得られた粒子表面を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に数十nmのやや不均一なリン酸カルシウム塩の針状結晶が確認された。
【0081】
実施例5
実施例1において、分散媒調製工程の液温を30℃で行った後、60℃に昇温した以外は、同様の操作を行って、重合トナーを得た。得られたトナー物性を表1にまとめる。
【0082】
また、トナー断層面を観察したところ、コア/シェル構造が確認された。
【0083】
また、冷却後の反応液に塩酸を加えず(分散剤を溶解させない)、ろ過、乾燥をして得られた粒子表面を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に数十nmのやや不均一なリン酸カルシウム塩の針状結晶が確認された。
【0084】
比較例1
実施例1において、1.0M−CaCl2水溶液を500秒で添加(Ca2+/PO4 3-は0.003s-1)した以外は、同様の操作を行って、重合トナーを得た。結果を表1にまとめる。
【0085】
また、トナー断層面を観察したところ、コア/シェル構造が確認された。
【0086】
また、冷却後の反応液に塩酸を加えず(分散剤を溶解させない)、ろ過、乾燥をして得られた粒子表面を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に数十から200nmの不均一なリン酸カルシウム塩の針状結晶が確認された。
【0087】
比較例2
実施例1において、1.0M−CaCl2水溶液を3秒で添加(Ca2+/PO4 3-は0.556s-1)した以外は、同様の操作を行って、重合トナーを得た。結果を表1にまとめる。
【0088】
また、トナー断層面を観察したところ、コア/シェル構造が確認された。
【0089】
また、冷却後の反応液に塩酸を加えず(分散剤を溶解させない)、ろ過、乾燥をして得られた粒子表面を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面に数十nmの不均一なリン酸カルシウム塩の針状結晶が確認された。
【0090】
【表1】
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって非常に微細で均一な分散剤が得られ、その結果として粒度分布のシャープな耐久性の優れたトナーが得られる。
Claims (6)
- 重合性単量体組成物調製工程、分散媒調製工程、該重合性単量体組成物造粒及び重合工程を含むトナーの製造方法において、
該分散媒調製工程が、リン酸カルシウム塩を分散剤(リン酸三カルシウム及びアニオン界面活性剤の組合せよりなる分散剤を除く)として含有する水系媒体を調製する工程であって、該分散媒調製工程において、リン酸イオン含有水溶液にカルシウムイオン含有水溶液を添加する速度が、該リン酸イオン含有水溶液に該カルシウムイオン含有水溶液を添加する前における該リン酸イオン含有水溶液中のリン酸イオンのモル数に対して、カルシウムイオンのモル数の比が0.005〜0.5s-1となる速度であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。 - 該分散媒調製工程の液温が、40℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 該分散剤が、該重合性単量体組成物に対して、0.2〜10.0重量%になるように調製されることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 該重合性単量体組成物中に、極性樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- トナーが、コア/シェル構造をもつことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- コア部の主たる成分が低軟化点物質であり、該低軟化点物質の融点が40〜90℃であることを特徴とする請求項5に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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