JP3795806B2 - 感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱記録材料に関し、さらに詳しくは、ロイコ発色系感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリやプリンター等の記録媒体として普及している感熱記録材料は、主として支持体上に電子供与性染料前駆体の固体分散物を塗布乾燥させた材料である。電子供与性染料前駆体を使用した記録方式は、材料も入手し易くかつ高い発色濃度や発色速度を示す利点を有するが、溶剤等の付着により発色し易く、記録画像の保存性や信頼性に問題があり、多くの改良が検討されてきた。記録画像の保存性を改善するための一つの方法として、電子供与性染料前駆体をマイクロカプセル中に内包し、色素をマイクロカプセル中に形成させることにより、画像の保存性を高める方式が提案されている。この方式によって高い画像安定性を得ることができる。
【0003】
上記以外の感熱記録材料としては、ジアゾ化合物を利用した、いわゆるジアゾ型の感熱記録材料も研究されている。このジアゾ化合物は、フェノール誘導体や活性メチレン基を有するカプラーと呼ばれる化合物などと反応して染料を形成するものであるが、同時に感光性も有し、光照射によりその活性を失うものである。これらの性質を応用し、ジアゾ化合物とカプラーを熱で反応させて画像を形成し、その後、光照射して画像を定着させることができる光定着型感熱記録材料が提案されている(佐藤弘次ら「画像電子学会誌」、第11巻、第4号(1982)、290−296頁、など)。
【0004】
しかし、ジアゾ化合物を用いた記録材料は、化学的活性が高いため、低温であってもジアゾ化合物とカプラーが徐々に反応し、使用前の貯蔵寿命が短いという欠点があった。これに対する一つの解決手段として、ジアゾ化合物をマイクロカプセルで包含し、カプラーや水、塩基性化合物から隔離する方法が提案されている(宇佐美智正ら「電子写真学会誌」、第26巻、第2(1987)、115〜125頁)。
【0005】
また、感熱記録材料の応用分野の一つとして、多色感熱記録材料が注目されてきている。感熱記録による多色画像の再現は、電子写真記録方式やインクジェット方式のそれに比べて難しいと言われてきたが、この点に関してはすでに、支持体上に電子供与性染料前駆体と顕色剤を主成分とする感熱発色層又はジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と加熱時に反応して発色するカプラーを含有する感熱発色層を2層以上積層した多色感熱記録材料が提案されている。
【0006】
従来、電子供与性染料前駆体やジアゾ化合物をマイクロカプセル中に包含させるには、一般に有機溶媒中にこれらの化合物を溶解させた油相を水溶性高分子の水溶液(水相)中に加えて乳化分散させる。このとき、壁材となるモノマーあるいはプレポリマーを有機溶媒相側か水相側の何れかあるいは両方に添加しておくことにより有機溶媒相と水相の界面に高分子壁を形成させマイクロカプセルを形成することができる。これらの方法については、「マイクロカプセル」(近藤朝士、日刊工業新聞社(1970))及び「マイクロカプセル」(近藤保ら、三共出版(1977))に詳しく記載されている。形成されるマイクロカプセル壁としては、ゼラチン、アルギン酸塩、セルロース類、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン樹脂、ナイロンなど様々なものがある。特に、ポリウレアやウレタン樹脂は、そのガラス転移温度前後でカプセル壁の物質透過性が大きく変化し、即ちカプセル壁が熱応答性を示し、感熱記録材料を設計するのに好適である。
【0007】
ポリウレタンおよびポリウレア壁を有するマイクロカプセルの製法としては、まず有機溶媒中にジアゾ化合物や電子供与性染料前駆体を溶解し、これに多官能イソシアネート化合物を添加し、この有機相溶液を水溶性高分子水溶液中で乳化させる。その後、水相に重合反応促進の触媒を添加するか又は乳化液の温度を上げて多価多官能イソシアネート化合物を水等の活性水素を有する化合物と重合させてカプセル壁を形成させる方法が従来から知られている。
【0008】
上記ポリウレアあるいはポリウレタン壁の形成材料である多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシナネートとトリメチロールプロパンの付加体、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加体が主として使用されている(特開昭62−212190号公報及び特開平4−26189号公報)。この様に、多価アルコール化合物と多価イソシアネート化合物を付加させて得られる多価イソシアネート化合物は良く知られている。
【0009】
また、この他にも多価イソシアネート化合物を用いた例が、特開昭61−169281号公報、特開平5−168911号公報、同8−230328号公報、同8−259486号公報に、3価以上の多価イソシアネート化合物と2官能イソシアネート化合物の併用例が特開平7−88356号公報、同7−185307号公報、同7−204496号公報等に記載されている。
【0010】
マイクロカプセルの芯を形成するための疎水性溶媒としては高沸点有機溶媒が知られている。具体的には、芳香族系炭化水素であるアルキルジフェニル付加物、アルキルビフェニルや、塩素化パラフィン、更にはトリクレジルフォスフェート等の燐酸系誘導体等が知られている。
【0011】
これらの化合物を利用して各種の色素前駆体を内包するマイクロカプセルが開発され、各種の感熱記録材料に利用されてきた。
【0012】
しかしながら、電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルを有する感熱記録材料は、曝光により白地部が黄変することが問題であった。このためにカプセル内に酸化防止剤や、紫外線吸収剤を添加することで耐光性の向上をはかることがなされてきたが、まだまだ不充分であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑み、電子供与性染料前駆体を内包する感熱記録材料において、曝光により、白地部が黄変することが少なく、且つ画像部の耐光性の良好な感熱記録材料を提供することを目的とする。
【0014】
<1> 紙又はプラスチックフィルムの支持体上に、電子供与性染料前駆体と該電子供与性染料前駆体と反応して呈色する電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を少なくとも1層有する感熱記録材料において、該感熱記録材料がマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセル中に電子供与性染料前駆体及び蛍光増白剤が内包され、且つ該マイクロカプセル外に前記電子受容性顕色剤を含むことを特徴とする感熱記録材料。
<2> 紙又はプラスチックフィルムの支持体上に、電子供与性染料前駆体と該電子供与性染料前駆体と反応して呈色する電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録材料において、該感熱記録層がマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセル中に電子供与性染料前駆体及び蛍光増白剤が内包され、且つ該マイクロカプセル外に前記電子受容性顕色剤を含んでいる感熱記録層を少なくとも1層有することを特徴とする多色感熱記録材料。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、紙又はプラスチックフィルムの支持体上(以下、単に支持体という。)に、電子供与性染料前駆体と電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を少なくとも1層有する感熱記録材料において、該感熱記録材料がマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセル中に電子供与性染料前駆体及び蛍光増白剤が内包され、且つ該マイクロカプセル外に前記電子受容性顕色剤を含むことを特徴とする感熱記録材料である。以下その内容について説明する。
【0016】
(蛍光増白剤)
本発明において用いられる蛍光増白剤としては、例えばジアミノスチルベンジル誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ピラゾリン誘導体、ピレン誘導体、イミダゾロン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアミノカルバゾール誘導体、オキサシアニン誘導体、メチン誘導体、ピリジン誘導体、アントラピリダジン誘導体、ジスチリル誘導体、カルボスチリル誘導体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
上記の中でも、マイクロカプセルに内包することが容易である点からは、油溶性蛍光増白剤が好ましく、具体的な商品名としてはUVITEX OB, UVITEX OB‐ONE(いずれもチバスペシャリティケミカルズ(株)製)、KAYCOLLE,KAYCOLLE C((株)日本曹達製)、Mikephor YO(三池染料(株)製)等を挙げることができる。
【0018】
本発明の蛍光増白剤の添加量は、電子供与性染料前駆体に対し0.1〜30.0質量%が好ましく、特には0.1〜10.0質量%が好ましい。電子供与性染料前駆体に対し0.1〜30.0質量%の範囲においては、蛍光増白剤の効果が発揮され、且つ曝光による白地部の黄変等の弊害も少ない。
【0019】
本発明は蛍光増白剤がマイクロカプセル中に内包されていることを特徴とする。従来、蛍光増白剤は水溶性のものが多いためか、マイクロカプセル外に添加され、蛍光増白剤自身の耐光性が弱いことから、長時間光に暴露されると、蛍光増白剤自身の分だけ、ステインが上乗せされるという問題があったが、本発明は蛍光増白剤をマイクロカプセル中に内包することにより、従来の問題を解決したものである。
【0020】
該蛍光増白剤が内包されるマイクロカプセルは感熱記録層中に電子供与性染料前駆体とともに内包されている。
【0021】
(マイクロカプセル化の方法)
マイクロカプセル形成方法としては、従来公知のマイクロカプセルの形成方法(米国特許第3,726,804号、同第3,796,669号等の明細書など)を用いることができ、具体的には界面重合法や内部重合法が適している。具体的には、蛍光漂白剤と電子供与性染料前駆体をマイクロカプセル壁前駆体(壁材)などと共に水に難溶又は不溶の有機溶剤に溶解して油相とし、これを水溶性高分子の水溶液(水相)中に添加してホモジナイザーなどにより乳化分散し、昇温してマイクロカプセル壁となる高分子膜(壁膜)を油/水界面に形成して得られる。
【0022】
壁膜となる高分子物質(壁材)としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、ポリウレタン・ポリウレア樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルが好ましい。
【0023】
以下、蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル(ポリウレア・ポリウレタン壁)の製造方法を一例に説明する。
まず、蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体は、カプセルの芯となる疎水性の有機溶媒(必要に応じ低沸点溶媒を含む)に溶解又は分散させ、マイクロカプセルの芯となる油相(有機溶媒溶液)を調製する。このとき、該油相側に壁材としての多価イソシアネートや、均一に乳化分散し安定化させる目的で界面活性剤、を更に添加してもよい。また、褪色防止剤やステイン防止剤等の添加剤を添加してもよい。
【0024】
前記多価イソシアネート化合物としては、3官能以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましく、2官能のイソシアネート化合物であってもよい。具体的には、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物等が挙げられる。
特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特願平8−268721号等に記載の化合物も好ましい。
【0025】
多価イソシアネートの使用量としては、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、壁厚みが0.01〜0.3μmとなるように決定され、その分散粒子径としては、0.2〜10μm程度が一般的である。
【0026】
前記界面活性剤は、公知の乳化用界面活性剤を使用でき、該界面活性剤を添加する場合の添加量としては、油相質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0027】
前記油相の調製に際し、蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体を溶解、分散する前記疎水性の有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましく、例えば、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、アルキルビフェニル、アルキルターフェニル、塩素化パラフィン、リン酸エステル類、マレイン酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類、安息香酸エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、硫酸エステル類、スルホン酸エステル類等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
また、蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体の前記有機溶媒に対する溶解性が劣る場合は、蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体の溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用してもよく、該低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0028】
即ち、蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体は、疎水性の有機溶媒、低沸点溶媒に対する適当な溶解度を有することが好ましく、具体的には、蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体の濃度調整を容易に行い得る点で、溶媒への溶解度は5%以上が好ましい。尚、水に対する溶解度は1%以下が好ましい。
【0029】
続いて、調製した油相を水相中に乳化分散する。このとき、水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行う。前記水溶性高分子は、分散を均一かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここでも、更に均一に乳化分散し安定化させる目的で、上記同様の界面活性剤を添加してもよい。
【0030】
前記水相に用いる水溶性高分子としては、乳化しようとする温度における、水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール及びその変成物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、前記水溶性高分子は、イソシアネート化合物との反応性がないか、若しくは低いことが好ましく、例えば、ゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め変成する等して反応性をなくしておくことが望ましい。
【0031】
水相中に油相を加えた乳化分散液中では、油相と水相の界面において多価イソシアネートの重合反応が生じてポリウレア壁が形成される。
水相中又は油相の疎水性溶媒中に、更にポリオール及び/又はポリアミンを添加しておけば、多価イソシアネートと反応してマイクロカプセル壁の構成成分の一つとして用いることもできる。上記反応において、反応温度を高く保ち、或いは、適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
【0032】
前記ポリオール又はポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。
尚、上記の多価イソシアネート、ポリオール、反応触媒、或いは、壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については成書(岩田敬治編 ポリウレタンハンドブック 日刊工業新聞社(1987))に詳細な記載がある。
【0033】
前記乳化は、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等の公知の乳化装置の中から適宜選択して行うことができる。乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させる目的で、乳化物は30〜70℃に加温される。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、十分な攪拌を行う等の必要がある。また、反応中に凝集防止用の分散物を添加してもよい。
重合反応時は、その進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その終息をもっておよそのカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的の蛍光漂白剤及び電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセルを得ることができる。
【0034】
(感熱記録材料)
本発明は蛍光増白剤と電子供与性染料前駆体をマイクロカプセルに内包する感熱記録層を有することで、曝光による白地部の黄変が改良され、且つ地肌部の耐光性が向上する感熱記録材料を形成することができる。前記蛍光増白剤と電子供与性染料前駆体をマイクロカプセルに内包する感熱記録層を有する感熱記録材料は、支持体の他に、更に電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセル及び顕色剤、及び/又は、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセル及びカプラーを含む他の感熱記録層を有してもよい。
【0035】
感熱記録層は、電子供与性染料前駆体と蛍光増白剤を内包するマイクロカプセルと顕色剤(電子受容性化合物)、及び必要に応じてその他の添加剤等の調製液とを適当な割合で混合された塗布液を支持体上に塗布することで形成することができる。以下に、各材料について説明する。
【0036】
電子供与性染料前駆体としてはトリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物等が挙げられるが、特にトリアリールメタン系化合物及びキサンテン系化合物が、発色濃度が高く有用である。
【0037】
電子供与性染料前駆体として具体例には、3−(o−アセトアミド−p−ジプロピルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6ジメチルアミノフタリド(即ちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(1′−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、
【0038】
2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3′−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等が挙げられる。
【0039】
顕色剤(電子受容性化合物(マイクロカプセルには内包されない))としてはフェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。例えば、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル}ベンゼン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸及びその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸及びその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールを挙げることができる。本発明においては、これらの電子受容性化合物を2種以上任意の比率で併用することができる。
【0040】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に、電子供与性染料前駆体と顕色剤との反応を促進させる目的で、増感剤を添加することが好ましい。増感剤としては、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましい。その具体例としては、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、p−トルエンスルホンアミド、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルスルホンアミド、4−n−ペンチルオキシフェニルスルホンアミド等が挙げられる。本発明においては、これらの増感剤を2種以上任意の比率で併用することもできる。
【0041】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に、熱発色画像の光及び熱に対する堅牢性を向上させ、又は、定着後の未印字部分の光による黄変を軽減する目的で、以下に示す公知の酸化防止剤等を用いることが好ましい。
【0042】
上記の酸化防止剤については、例えばヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4814262号、アメリカ特許第4980275号等に記載されている。
【0043】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に、感熱記録材料や感圧記録材料において既に用いられている公知の各種添加剤を添加することも有効である。これらの各種添加剤の具体例としては、特開昭60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同63−088381号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−043294号公報、同48−033212号公報等に記載されてる化合物を挙げることができる。
【0044】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0045】
これらの酸化防止剤及び各種添加剤は同一層に添加しなくてもよい。更にこれらの酸化防止剤及び各種添加剤を組み合わせて複数用いる場合には、アニリン類、アルコキシベンゼン類、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン誘導体、りん化合物、硫黄化合物の様に構造的に分類し、互いに異なる構造のものを組み合わせてもよいし、同一のものを複数組み合わせることもできる。
【0046】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に、記録後の地肌部の黄着色を軽減する目的で、光重合性組成物等に用いられる遊離基発生剤(光照射により遊離基を発生する化合物)を添加することができる。遊離基発生剤としては、芳香族ケトン類、キノン類、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、アゾ化合物、有機ジスルフィド類、アシルオキシムエステル類等が挙げられる。
【0047】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に、黄着色を軽減する目的で、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物(以下、ビニルモノマーと呼ぶ)を添加することができる。ビニルモノマーとは、その化学構造中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合(ビニル基、ビニリデン基等)を有する化合物であって、モノマーやプレポリマーの化学形態を持つものである。これらの例として、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0048】
前記遊離基発生剤やビニルモノマーは、電子共与性染料前駆体と共にマイクロカプセル中に含有して用いることもできる。
【0049】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に、酸安定剤としてクエン酸、酒石酸、シュウ酸、ホウ酸、リン酸、ピロリン酸等を添加することができる。
【0050】
感熱記録層おいて、顕色剤(電子受容性化合物)と共に用いられるバインダーとしては、公知の水溶性高分子化合物やラテックス類等を使用することができる。水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、エピクロルヒドリン変成ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド等及びこれらの変成物等が挙げられ、ラテックス類としては、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
【0051】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に用いられる顔料としては、有機、無機を問わず公知のものを使用することができる。具体的には、カオリン、焼成カオリン、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトポン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、マイクロバルーン、尿素−ホルマリンフィラー、ポリエステルパーティクル、セルロースフィラー等が挙げられる。
【0052】
感熱記録層には、顕色剤(電子受容性化合物)と共に、必要に応じて、公知のワックス、帯電防止剤、消泡剤、導電剤、界面活性剤、紫外線吸収剤及びその前駆体等各種添加剤を添加することもできる。
【0053】
感熱記録層において、顕色剤(電子受容性化合物)、及び必要に応じて、前述の各種添加剤(増感剤、塩基性物質等)等の調製液は、これら材料を、適宜混合して、別々に乳化分散或いは固体分散して微粒化し添加、又は適宜混合してから、乳化分散或いは固体分散して微粒化し添加することができる。乳化分散する方法は、有機溶媒中にこれらの化合物を溶解し、水溶性高分子水溶液をホモジナイザー等で攪拌中に添加することが好ましい。固体分散する方法は、これらの材料を水溶性高分子水溶液中に投入しボールミル等の公知の分散手段を用いて微粒子化することが好ましい。乳化分散或いは固体分散して微粒子化を促進するにあたり、前述の疎水性有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子を使用することが好ましい。また、微粒子化に際しては、熱感度、保存性、記録層の透明性、製造適性等の多色感熱記録材料及びその製造方法に必要な特性を満足しうる粒子直径を得るように行うことが好ましい。
【0054】
感熱記録層において、顕色剤の添加量は、電子供与性染料前駆体1モルに対して0.5〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましく3〜15モルが適当である。熱増感剤の添加量は、電子供与性染料前駆体1モルに対して一般に0.1〜20モル、好ましくは0.5〜10モルが適当である。
【0055】
感熱記録層は、蛍光増白剤と電子供与性染料前駆体、ないしはジアゾ化合物を含有したマイクロカプセルと、顕色剤又はカプラー、及び必要に応じて上述した各種添加剤を含有した調製液とを混合して塗布液を調製し、紙や合成樹脂フィルム等の支持体の上にバー塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等の塗布方法により塗布乾燥して設けることが好ましい。また、感熱記録層は、固型分2.5〜30g/m2になるように設けることが好ましい。
【0056】
本発明の感熱記録材料において、電子供与性染料前駆体を含有したマイクロカプセル、顕色剤、その他の添加物等が同一層に含まれていてもよいが、別層に含まれるような積層型の構成をとることもできる。また、支持体の上に特願昭59−177669号明細書等に記載されているような中間層を設けた後、感熱記録層を塗布することもできる。
【0057】
本発明の感熱記録材料において、単層構造(単色)の場合、感度調整等の目的で、同一感熱記録層に、前記本発明のマイクロカプセルと共に、その他、従来公知のマイクロカプセルを併用することもできる。この場合における前記本発明のマイクロカプセルは、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上で併用することが好適である。
【0058】
本発明の感熱記録材料には、必要に応じて感熱記録層の表面に保護層を設けてもよい。保護層は必要に応じて二層以上積層してもよい。保護層に用いる材料としては、ポリビニルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン類、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子化合物、及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等のラテックス類が用いられる。保護層の水溶性高分子化合物を架橋して、より一層保存安定性を向上させることもでき、その架橋剤としては公知の架橋剤を使用することができる。具体的にはN−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、尿素−ホルマリン等の水溶性初期縮合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物類、硼酸、硼砂等の無機系架橋剤、ポリアミドエピクロルヒドリン等が挙げられる。保護層には、さらに公知の顔料、金属石鹸、ワックス、界面活性剤等を使用することもできる。保護層の塗布量は0.2〜5g/m2が好ましく、さらには0.5〜2g/m2が好ましい。またその膜厚は0.2〜5μmが好ましく、特に0.5〜2μmが好ましい。
【0059】
本発明の感熱記録材料に、保護層を使用する場合、保護層中に公知の紫外線吸収剤やその前駆体を含有してもよい。
【0060】
(多色感熱記録材料)
本発明の多色感熱記録材料は、支持体と、シアン、マゼンタ及びイエローのいずれかに発色し得る2層以上の感熱記録層とを有し、各感熱記録層がジアゾ化合物を内包するマイクロカプセル及びカプラー、又は、電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセル及び顕色剤を含み、該感熱記録層の少なくとも1層がマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセル中に電子供与性染料前駆体及び蛍光増白剤が内包され、且つ該マイクロカプセル外に電子供与性染料前駆体と反応して呈色する電子受容性顕色剤を含んでいる本発明の多色感熱記録材料は、曝光により、白地部が黄変することが少なく、且つ画像部の耐光性の良好な感熱記録材料となる。また、各感熱記録層、支持体、及び保護層、光透過率調整層等のその他の層は、前記本発明の感熱記録材料と同様に作製することができる。
【0061】
本発明の多色感熱記録材料において、本発明のマイクロカプセルは、電子供与性染料前駆体と、該電子供与性染料前駆体と反応して呈色する電子受容性顕色剤を含有する感熱層を形成しているため、定着ができないことから、最も高温(高エネルギー印加)で発色させる感熱記録層(一般的には、最下層)に含有することが好ましい。
【0062】
本発明の多色感熱記録材料は、2層以上の感熱記録層に、それぞれ光分解波長が異なる光分解性ジアゾ化合物を用いることにより作製することができる。また、2層以上の感熱記録層の色相を変えることにより、フルカラーの多色感熱記録材料となる。例えば、各感熱記録層の発色色相を減色混合における3原色、イエロー、マゼンタ、シアンとなるように選べばフルカラーの画像記録が可能となる。この場合、支持体面に直接、積層(感熱記録層の最下層)される感熱記録層の発色機構は、電子供与性染料と顕色剤とからなるロイコ発色系であり、この感熱記録層上に最大吸収波長が異なるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを各々含有する感熱記録層を2層設け、この層上に光透過率調整層、保護層を順次設けるのが望ましい。
【0063】
本発明の感熱記録材料において、ジアゾ化合物を用いた感熱記録層を設ける場合、支持体上に感熱記録層と光定着する波長領域における光透過率が定着後に減少する光透過率調整層を設け、さらにその上に保護層を設けることが好ましい。
【0064】
本発明の感熱記録材料において、光透過率調整層は、紫外線吸収剤の前駆体として機能する成分を含有しており、定着に必要な領域の波長の光照射前は紫外線吸収剤として機能しないので、光透過率が高く、感熱記録層を定着する際、定着に必要な領域の波長を十分に透過させ、また、可視光線の透過率も高く、感熱記録層の定着に支障は生じない。
【0065】
この紫外線吸収剤の前駆体は、感熱記録層の光照射による定着に必要な領域の波長の光照射が終了した後、光又は熱等で反応することにより紫外線吸収剤として機能するようになり、紫外線領域の波長の光は紫外線吸収剤によりその大部分が吸収され、透過率が低くなり、感熱記録材料の耐光性が向上するが、可視光線の吸収効果がないから、可視光線の透過率は実質的に変わらない。
【0066】
本発明の感熱記録材料において、光透過率調整層は、感熱記録材料中に少なくとも1層設けることができ、最も好ましくは感熱記録層と保護層との間に形成するのがよいが、光透過率調整層を保護層と兼用するようにしてもよい。光透過率調整層の特性は、感熱記録層の特性に応じて任意に選定することができる。
【0067】
本発明の感熱記録材料において、支持体としては、通常の感圧紙や感熱紙、乾式や湿式のジアゾ複写紙等に用いられる紙支持体はいずれも使用することができる他、酸性紙、中性紙、コート紙、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙、プラスチックフィルム等を使用することができる。
【0068】
支持体のカールバランスを補正するため或いは、裏面からの耐薬品性を向上させる目的で、バックコート層を設けてもよく、また裏面に接着剤層を介して剥離紙を組み合わせてラベルの形態にしてもよい。このバックコート層についても上記保護層と同様にして設けることができる。
【0069】
本発明の感熱記録材料において、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーを用いた場合、記録面にサーマルヘッド等で加熱すると、マイクロカプセルのカプセル壁が軟化し、カプセル外のカプラーと塩基化合物がカプセル内に進入して発色する。発色後はジアゾ化合物の吸収波長の光を照射する事により、ジアゾ化合物が分解しカプラーとの反応性を失うため画像の定着が行なわれる。
【0070】
また、定着光源としては、種々の蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等が用いられ、この発光スペクトルが感熱記録材料で用いたジアゾ化合物の吸収スペクトルにほぼ一致していることが効率よく定着でき好ましい。本発明においては、発光中心波長が360〜440nmの定着光源が特に好ましい。
【0071】
本発明の多色感熱記録材料において、感熱記録層として、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層とを含有することが好ましい。
【0072】
本発明の多色感熱記録材料としては、支持体上に、電子供与性染料と電子受容性化合物を含有する感熱記録層と、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、を順次設け、この層上に光透過率調整層を設けたものが好ましい。
【0073】
本発明の多色感熱記録材料においては、感熱記録層を複数積層するため、感熱記録層相互の混色を防ぐ目的で、各感熱記録層間に中間層を設けることもできる。この中間層はゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物からなり、適宜各種添加剤を含んでいてもよい。
【0074】
本発明の多色感熱記録材料及びその記録方法についてさらに詳しく説明する。
まず初めに低エネルギーの熱記録でジアゾ化合物を含有する最外層の感熱層(第1感熱記録層、通常イエロー発色層)を発色させた後、該感熱層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて全面光照射して、最上層の感熱層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。
【0075】
次いで、前回より高エネルギーで、第1層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光とは異なった光吸収波長域を有するジアゾ化合物を含有する第2層目の感熱層(第2感熱記録層、通常マゼンタ発色層)を発色させた後、該ジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて再度全面光照射し、これによって第2層目の加熱層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。最後に、更に高エネルギーで、最内層(第3感熱記録層、通常シアン発色層)の電子供与性染料前駆体を含有する層(第3層)を発色させて画像記録を完了する。
【0076】
上記の場合には、最外層及び第2層を透明な感熱層とすることが、各発色が鮮やかになるので好ましい。
【0077】
また、本発明においては、支持体として透明な支持体を用い、上記3層のうち何れか一層を透明な支持体の裏面に塗布することにより、多色画像を得ることもできる。この場合には、画像を見る側と反対側の最上層の感熱記録層は透明である必要はない。
【0078】
上記ジアゾ化合物の光分解に使用する光源としては、通常紫外線ランプを使用する。紫外線ランプは管内に水銀蒸気を充填した蛍光管であり、管の内壁に塗布する蛍光体の種類により種々の発光波長を有する蛍光管を得ることができる。
【0080】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ゼラチン溶液の調製
<フタル化ゼラチン溶液の調製>
フタル化ゼラチン(商品名;MGPゼラチン,ニッピコラーゲン(株)製)32部、 1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)0.9143部、イオン交換水367.1部を混合し、40℃にて溶解し、フタル化ゼラチン水溶液を得た。
<アルカリ処理ゼラチン溶液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)25.5部、1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)0.7286部、水酸化カルシウム0.153部、イオン交換水143.6部を混合し、50℃にて溶解し、乳化物作成用ゼラチン水溶液を得た。
【0081】
(2)イエロー感熱記録層液の調整
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)の調製>
酢酸エチル16.1部に、下記ジアゾニウム化合物(A)(最大吸収波長420nm)2.2部、下記ジアゾニウム化合物(B)(最大吸収波長420nm)2.2部、モノイソプロピルビフェニル4.8部、フタル酸ジフェニル4.8部およびジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(商品名:ルシリンTPO,BASFジャパン(株)製)0.4部を添加し40℃に加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)8.6部を添加し、均一に攪拌し混合液(I)を得た。
【0082】
【化1】
【0083】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液58.6部にイオン交換水16.3部、Scraph AG-8(50質量%)日本精化(株)製)0.34部添加し、混合液〔II〕を得た。
混合液(II)に混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水20部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA-700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.36μmであった。
【0084】
<カプラー化合物乳化液(a)の調製>
酢酸エチル33.0部に下記カプラー化合物(C)9.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)9.9部、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))20.8部、3,3,3´,3 ´−テトラメチル−5,5´、6,6´−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1´−スピロビスインダン3.3部、4-(2-エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製) 13.6部、4-n-ペンチルオキシベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)6.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA-41-C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製) 4.2部を溶解し、混合液(III)を得た。
【0085】
【化2】
【0086】
別途前記アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(IV)を得た。
混合液(IV)に混合液(III)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が26.5質量%になるように濃度調節を行った。得られたカプラー化合物乳化物の粒径は粒径測定(LA-700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.21μmであった。
更に上記カプラー化合物乳化物100部に対して、SBRラテックス(商品名SN-307,48%液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5%に濃度調整したものを9部添加して均一に撹拌してカプラー化合物乳化液(a)を得た。
【0087】
<塗布液(a)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)、および前記カプラー化合物分乳化液(a)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の重量比が 2.2/1になるように混合し、感熱記録層用塗布液(a)を得た。
【0088】
(3)マゼンタ感熱記録層液の調整
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(b)の調製>
酢酸エチル15.1部に、下記ジアゾニウム化合物(D)(最大吸収波長365nm) 2.8部、フタル酸ジフェニル3.8部、フェニル2−ベンゾイロキシ安息香酸エステル3.9部及び下記エステル化合物(E)(商品名;ライトエステルTMP,共栄油脂化学(株)製)4.2部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA-41-C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製) 0.1部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)2.5部とキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)6.8部を添加し、均一に攪拌し混合液(V)を得た。
【0089】
【化3】
【0090】
【化4】
【0091】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液55.3部にイオン交換水21.0部添加、混合し、混合液(VI)を得た。
混合液(VI)に混合液(V)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水24部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA-700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.43μmであった。
【0092】
<カプラー化合物乳化液(b)の調製>
酢酸エチル36.9部に下記カプラー化合物(F)11.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)14.0部、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))14.0部、1,1-(p-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン 14部、3,3,3´,3 ´−テトラメチル−5,5´、6,6´−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1´−スピロビスインダン3.5部、下記化合物(G) 3.5部、リン酸トリクレジル 1.7部、マレイン酸ジエチル0.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA-41-C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製) 4.5部を溶解し、混合液(VII)を得た。
【0093】
【化5】
【0094】
別途アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(VIII)を得た。
混合液(VIII)に混合液(VII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が24.5質量%になるように濃度調節を行い、カプラー化合物乳化液(b)を得た。得られたカプラー化合物乳化液の粒径は粒径測定(LA-700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で 0.22μmであった。
【0095】
<塗布液(b)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー化合物分乳化液(b)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の重量比が 3.5/1になるように混合した。さらに、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)をカプセル液量10部に対し、0.2部になるように混合し、感熱記録層用塗布液(b)を得た。
【0096】
(4)シアン感熱記録層液の調整
<電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(c)の調製>
酢酸エチル18.1部に、下記電子供与性染料(H)7.6部、1‐メチルプロピルフェニル−フェニルメタン及び1−(1−メチルプロピルフェニル)−2−フェニルエタンの混合物(商品名:ハイゾールSAS‐310、日本石油(株)製)、下記化合物(I)(商品名:Irgaperm2140 チバガイギー(株)製)8.0部、蛍光増白剤UVITEX OB(商品名、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.7部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物 (商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)7.2部とポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名;ミリオネートMR-200,日本ポリウレタン工業(株)製)5.3部を添加し、均一に攪拌し混合液(IX)を得た。
【0097】
【化6】
【0098】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液28.8部にイオン交換水9.5部、Scraph AG-8(50重量%)日本精化(株)製)0.17部およびドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(10%水溶液)4.3部を添加混合し、混合液(X)を得た。混合液(X)に混合液(IX)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水50部、テトラエチレンペンタミン0.12部を加え均一化し、65℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行ないカプセル液の固形分濃度が33%になるように濃度調節しマイクロカプセル液を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA-700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で1.00μmであった。
更に上記マイクロカプセル液100部に対して、ドデシルスルフォン酸ナトリウム25%水溶液(商品名;W502、和光純薬(株)製)3.7部と4,4'-ビストリアジニルアミノスチルベン−2,2’−ジスルフォン誘導体を含む蛍光増白剤(商品名;Kaycoll BXNL、日本曹達(株)製)1.0部を添加して均一に撹拌してマイクロカプセル分散液(c)を得た。
【0099】
<電子受容性化合物分散液(c)の調製>
前記フタル化ゼラチン水溶液11.3質量部にイオン交換水30.1質量部、4,4'−(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールP、三井石油化学(株)製) 15質量部、2質量%−2-エチルヘキシルコハク酸ナトリウム水溶液3.8質量部を加えて、ボールミルにて一晩分散した後、分散液を得た。この分散液の、固形分濃度は26.6質量%であった。
上記分散液100重量部に、前記アルカリ処理ゼラチン水溶液45.2重量部加えて、30分攪拌した後、分散液の固形分濃度が23.5%となるようにイオン交換水を加えて電子受容性化合物分散液(c)を得た。
【0100】
<塗布液(c)の調製>
前記電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(c)および前記電子受容性化合物分散液(c)を、電子受容性化合物/電子供与性染料前駆体の重量比が10/1になるように混合し、塗布液(c)を得た。
【0101】
(5)中間層用塗布液の調製
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)100.0部、1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)2.857部、水酸化カルシウム0.5部、イオン交換水521.643部を混合し、50℃にて溶解し、中間層作成用ゼラチン水溶液を得た。
前記中間層作成用ゼラチン水溶液10.0部、(4-ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム (三協化学(株)製2.0質量%水溶液)0.05部、硼酸(4.0質量%水溶液)1.5部、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)0.19部、下記化合物(J)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液3.42部、下記化合物(J‘)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液1.13部、イオン交換水0.67部を混合し、中間層用塗布液とした。
【0102】
【化7】
【0103】
(6)光透過率調整層用塗布液の調製
<紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液の調製>
酢酸エチル71部に紫外線吸収剤前駆体として[2-アリル-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェニル]ベンゼンスルホナート14.5部、2,2'-t-オクチルハイドロキノン5.0部、燐酸トリクレジル1.9部、α-メチルスチレンダイマー(商品名:MSD-100,三井化学(株)製)5.7部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA-41-C (70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製) 0.45部を溶解し均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物 (商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)54.7部を添加し、均一に攪拌し紫外線吸収剤前駆体混合液(VII)を得た。
【0104】
別途、イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL-318,クラレ(株)製)52部に30質量%燐酸水溶液8.9部、イオン交換水532.6部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液を作成した。
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液516.06部に前記紫外線吸収剤前駆体混合液(VII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて20℃の下で乳化分散した。得られた乳化液にイオン交換水254.1部を加え均一化した後、40℃下で攪拌しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトMB-3 (オルガノ(株)製)94.3部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除きカプセル液の固形分濃度が13.5%になるように濃度調節した。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA-700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.23±0.05μmであった。このカプセル液859.1部にカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス(商品名:SN-307,(48質量%水溶液),住友ノーガタック(株)製)2.416部、イオン交換水39.5部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液を得た。
【0105】
<光透過率調整層用塗布液の調製>
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液1000部、下記化合物(K)(商品名:メガファックF-120, 5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))5.2部、4質量%水酸化ナトリウム水溶液7.75部、(4-ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム (三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)73.39部を混合し、光透過率調整層用塗布液を得た。
【0106】
(7)保護層用塗布液の調製
<保護層用ポリビニルアルコール溶液の作成>
ビニルアルコール-アルキルビニルエーテル共重合物(商品名:EP-130,電気化学工業(株)製)160部、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液(商品名:ネオスコアCM-57,(54質量%水溶液),東邦化学工業(株)製)8.74部、イオン交換水3832部を混合し、90℃のもとで1時間溶解し均一な保護層用ポリビニルアルコール溶液を得た。
【0107】
<保護層用顔料分散液の作成>
硫酸バリウム(商品名:BF-21F,硫酸バリウム含有量93%以上,堺化学工業(株)製)8部に陰イオン性特殊ポリカルボン酸型高分子活性剤(商品名:ポイズ532A(40質量%水溶液),花王(株)製)0.2部、イオン交換水11.8部を混合し、ダイノミルにて分散して保護層用顔料分散液を作成した。この分散液は粒径測定(LA-910,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.15μm以下であった。
上記硫酸バリウム分散液45.6部に対し、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO(20質量%水分散液)、日産化学(株)製)8.1部を添加して目的の分散物を得た。
【0108】
<保護層用マット剤分散液の作成>
小麦澱粉(商品名:小麦澱粉S,新進食料工業(株)製)220部に1-2ベンズイソチアゾリン3オンの水分散物(商品名:PROXEL B.D,I.C.I(株)製)3.81部、イオン交換水1976.19部を混合し、均一に分散し、保護層用マット剤分散液を得た。
【0109】
<保護層用塗布ブレンド液の調製>
前記保護層用ポリビニルアルコール溶液10000部に化合物(K)(商品名:メガファックF-120, 5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))40部、 (4-ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム (三協化学(株)製2.0質量%水溶液)50部、前記保護層用顔料分散液49.87部、前記保護層用マット剤分散液16.65部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115, 20.5質量%水溶液,中京油脂(株)製)48.7部、イオン交換水280部を均一に混合し保護層用塗布ブレンド液を得た。
【0110】
(8)下塗り層つき支持体
<下塗り層液の作製>
酵素分解ゼラチン(平均分子量:10000、PAGI法粘度:15mP、PAGI法ゼリー強度:20g)40部をイオン交換水60部に加えて40℃で攪拌溶解して下塗り層用ゼラチン水溶液を調製した。
別途水膨潤性の合成雲母(アスペクト比:1000、商品名:ソマシフME100,コープケミカル社製)8部と水92部とを混合した後、ビスコミルで湿式分散し、平均粒径が2.0μmの雲母分散液を得た。この雲母分散液に雲母濃度が5質量%となるように水を加え、均一に混合し、所望の雲母分散液を調製した。
40℃の40質量%の前記ゼラチン水溶液100部に、水120部およびメタノール556部を加え、十分攪拌混合した後、5質量%前記雲母分散液208部を加えて、十分攪拌混合し、1.66質量%ポリエチレンオキサイド系界面活性剤9.8部を加えた。そして液温を35℃から40℃に保ち、エポキシ化合物のゼラチン硬膜剤7.3部を加えて下塗り層用塗布液(5.7質量%)を調製し、下塗り用塗布液を得た。
【0111】
<下塗り層つき支持体の作製>
LBPS 50部、LBPK 50部からなる木材パルプをデイスクリファイナーによりカナデイアンフリーネス300ccまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、硫酸アルミニウム1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部をいずれもパルプに対する絶乾重量比で添加し長網抄紙機により坪量114g/m2の原紙を抄造しキャレンダー処理によって厚み100μmに調整した。
次に原紙の両面にコロナ放電処理を行った後、溶融押し出し機を用いてポリエチレンを樹脂厚36μmとなるようにコーテイングしマット面からなる樹脂層を形成した(この面をウラ面と呼ぶ)。次に上記樹脂層を形成した面とは反対側に溶融押し出し機を用いてアナターゼ型二酸化チタンを10質量%及び微量の群青を含有したポリエチレンを樹脂厚50μmとなるようにコーテイングし光沢面からなる樹脂層を形成した(この面をオモテ面と呼ぶ)。ウラ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(商品名;アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)/二酸化珪素(商品名;スノーテックスO、日産化学工業(株)製)=1/2(重量比)を水に分散させて乾燥後の重量で0.2g/m2塗布した。次にオモテ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、上記下塗り液を雲母の塗布量が0.26g/m2となるように塗布し、下塗り層つき支持体を得た。
【0112】
<各感熱記録層用塗布液の塗布>
前記下塗り層つき支持体の上に、下から、前記感熱記録層用塗布液(c)、前記中間層用塗布液、前記感熱記録層用塗布液(b)、前記中間層用塗布液、前記感熱記録層用塗布液(a)、前記光透過率調整層用塗布液、前記保護層用塗布液の順に7層同時に連続塗布し、30℃湿度30%、および40℃湿度30%の条件でそれぞれ乾燥して実施例1の多色感熱記録材料を得た。
この際前記感熱記録層用塗布液(a)の塗布量は液中に含まれるジアゾ化合物(A)の塗布量が固形分塗布量で0.078g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(b)の塗布量は液中に含まれるジアゾ化合物(D)の塗布量が固形分塗布量で0.206g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(c)の塗布量は液中に含まれる電子供与性染料(H)の塗布量が固形分塗布量で0.355g/m2となるように塗布を行った。
また、前記中間層用塗布液は(a)と(b)の間は固形分塗布量が2.39g/m2、(b)と(c)の間は固形分塗布量が3.34g/m2、前記光透過率調整層用塗布液は固形分塗布量が2.5g/m2、保護層は固形分塗布量が1.6g/m2となるように塗布を行った。
【0113】
(実施例2)
実施例1(4)シアン感熱記録層液の調整 <電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(c)の調製>における、蛍光増白剤UVITEX OB(商品名、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.7部を0.35部とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を得た。
【0114】
(比較例1)
実施例1(4)シアン感熱記録層液の調整 <電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(c)の調製>における、蛍光増白剤UVITEX OB(商品名、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.7部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の感熱記録材料を得た。
【0115】
<地肌部耐光性の評価>
実施例1、2及び比較例1で得られた感熱記録材料は、未印画部のサンプルをウエザーメーター(アトラスCi65)にて、420nmのエネルギーが0.9W/m2となる照度で曝光試験を行なった。
曝光後のサンプルの白色部の黄変度合いを、X−LiteのBフィルターにて測定した。
結果を表1に示す。
【0116】
<画像部耐光性の評価>
(1)熱記録
得られた実施例1,2および比較例1の感熱記録材料について、印画装置は長野日本無線側社製TRT‐21および紫外線ランプを用い、以下の順序で行った。
単位面積当たりの記録エネルギーが0〜71mJ/mm2となるように印加電力およびパルス幅を調節して、得られた記録材料にイエロー画像を記録した。
次に、発光中心波長420nmおよび出力40Wの紫外線ランプ下に10秒間曝して、イエロー感熱発色層を定着した後、サーマルヘッドの記録エネルギーを0〜131mJ/mm2となるように印加電圧及びパルス幅を調節して、マゼンタ画像を記録した。
最後に、発光中心波長365nmおよび出力40Wの紫外線ランプ下に15秒間曝して、マゼンタ感熱発色層を定着した後、サーマルヘッドの記録エネルギーを0〜171mJ/mm2となるように印加電圧及びパルス幅を調節して、シアン画像を記録した。
【0117】
(2)発色濃度の測定
(1)により発色させた感熱記録材料のシアン発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、RD‐918)により測定した。
【0118】
(3)耐光性試験
(1)〜(2)の後、感熱記録材料を光照射装置(アトラス・エレクトリック・デバイス社製、WEATHEROMETER Cl 65)を用いて、光照射パワー390W/m2にて、照射を行った。
【0119】
(4)画像残存率
(2)と同様に照射後のシアン濃度を測定した。これを耐光性試験前の発色濃度で除した値を画像残存率とした。実施例および比較例の画像残存率を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
その結果、電子供与性染料前駆体を含有するマイクロカプセルを有する感熱記録材料においては、本発明の感熱記録材料の場合は、比較例に比して、曝光により地肌部の黄変が少なく、画像部の画像残存率も高い結果となった。
【0122】
【発明の効果】
以上により、本発明によれば、蛍光増白剤と電子供与性染料前駆体を含有するマイクロカプセルを有する感熱記録材料において、曝光により白地部が黄変することが少なく、画像部の画像残存率も高い感熱記録材料を提供することができる。
Claims (2)
- 紙又はプラスチックフィルムの支持体上に、電子供与性染料前駆体と該電子供与性染料前駆体と反応して呈色する電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を少なくとも1層有する感熱記録材料において、該感熱記録材料がマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセル中に電子供与性染料前駆体及び蛍光増白剤が内包され、且つ該マイクロカプセル外に前記電子受容性顕色剤を含むことを特徴とする感熱記録材料。
- 紙又はプラスチックフィルムの支持体上に、電子供与性染料前駆体と該電子供与性染料前駆体と反応して呈色する電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録材料において、該感熱記録層がマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセル中に電子供与性染料前駆体及び蛍光増白剤が内包され、且つ該マイクロカプセル外に前記電子受容性顕色剤を含んでいる感熱記録層を少なくとも1層有することを特徴とする多色感熱記録材料。
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