JP2004142301A - マイクロカプセル及び感熱記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】低エネルギー印加では物質を透過せず、発色印字エネルギーに達すると効率よく物質を透過し(高γ化)、そして高エネルギー印加では十分に物質を透過し、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少ないマイクロカプセル及びこのマイクロカプセルを用いた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルのカプセル壁が、下記化合物(1)、下記化合物(2)、及び下記化合物(3)のイソシアネート化合物の重合により得られるポリマーからなることを特徴とするマイクロカプセル、及び該マイクロカプセルを用いた感熱記録材料である。
【化1】
[XDI:キシリレンジイソシアネート]
【選択図】 なし
【解決手段】ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルのカプセル壁が、下記化合物(1)、下記化合物(2)、及び下記化合物(3)のイソシアネート化合物の重合により得られるポリマーからなることを特徴とするマイクロカプセル、及び該マイクロカプセルを用いた感熱記録材料である。
【化1】
[XDI:キシリレンジイソシアネート]
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱記録材料に使用することができるマイクロカプセル、及び該マイクロカプセルを用いた感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリやプリンター等の記録媒体として普及している感熱記録材料は、主として支持体上に電子供与性染料前駆体の固体分散物を塗布乾燥させた材料である。電子供与性染料前駆体を使用した記録方式は、材料も入手し易くかつ高い発色濃度や発色速度を示す利点を有するが、溶剤等の付着により発色し易く、記録画像の保存性や信頼性に問題があり、多くの改良が検討されてきた。記録画像の保存性を改善するための一つの方法として、電子供与性染料前駆体をマイクロカプセル中に内包し、色素をマイクロカプセル中に形成させることにより、画像の保存性を高める方式が提案されている。この方式によって高い画像安定性を得ることができる。
【0003】
上記以外の感熱記録材料としては、ジアゾ化合物を利用した、いわゆるジアゾ型の感熱記録材料も研究されている。このジアゾ化合物は、フェノール誘導体や活性メチレン基を有するカプラーと呼ばれる化合物などと反応して染料を形成するものであるが、同時に感光性も有し、光照射によりその活性を失うものである。これらの性質を応用し、ジアゾ化合物とカプラーを熱で反応させて画像を形成し、その後、光照射して画像を定着させることができる光定着型感熱記録材料が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、ジアゾ化合物を用いた記録材料は、化学的活性が高いため、低温であってもジアゾ化合物とカプラーが徐々に反応し、使用前の貯蔵寿命が短いという欠点があった。これに対する一つの解決手段として、ジアゾ化合物をマイクロカプセルで包含し、カプラーや水、塩基性化合物から隔離する方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
また、感熱記録材料の応用分野の一つとして、多色感熱記録材料が注目されてきている。感熱記録による多色画像の再現は、電子写真記録方式やインクジェット方式のそれに比べて難しいと言われてきたが、この点に関してはすでに、支持体上に電子供与性染料前駆体と顕色剤を主成分とする感熱発色層又はジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と加熱時に反応して発色するカプラーを含有する感熱発色層を2層以上積層した多色感熱記録材料が提案されている。
【0006】
多色感熱記録材料においては、優れた色再現性を得るためにはマイクロカプセルの加熱時の物質透過特性を高度に制御することが必須である。
【0007】
従来、電子供与性染料前駆体やジアゾ化合物をマイクロカプセル中に包含させるには、一般に有機溶媒中にこれらの化合物を溶解させた油相を水溶性高分子の水溶液(水相)中に加えて乳化分散させる。このとき、壁材となるモノマーあるいはプレポリマーを有機溶媒相側か水相側の何れかあるいは両方に添加しておくことにより有機溶媒相と水相の界面に高分子壁を形成させマイクロカプセルを形成することができる(例えば、非特許文献3、非特許文献4参照。)。形成されるマイクロカプセル壁としては、ゼラチン、アルギン酸塩、セルロース類、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン樹脂、ナイロンなど様々なものがある。特に、ポリウレアやウレタン樹脂は、そのガラス転移温度前後でカプセル壁の物質透過性が大きく変化し、即ちカプセル壁が熱応答性を示し、感熱記録材料を設計するのに好適である。
【0008】
ポリウレタンおよびポリウレア壁を有するマイクロカプセルの製法としては、まず有機溶媒中にジアゾ化合物や電子供与性染料前駆体を溶解し、これに多官能イソシアネート化合物を添加し、この有機相溶液を水溶性高分子水溶液中で乳化させる。その後、水相に重合反応促進の触媒を添加するか又は乳化液の温度を上げて多価多官能イソシアネート化合物を水等の活性水素を有する化合物と重合させてカプセル壁を形成させる方法が従来から知られている。
【0009】
上記ポリウレアあるいはポリウレタン壁の形成材料である多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシナネートとトリメチロールプロパンの付加体、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加体が主として使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。この様に、多価アルコール化合物と多価イソシアネート化合物を付加させて得られる多価イソシアネート化合物は良く知られている。
【0010】
また、この他にも多価イソシアネート化合物を用いた例が知られており(例えば、特許文献3〜6参照。)、さらに3価以上の多価イソシアネート化合物と2官能イソシアネート化合物の併用例が知られている(例えば、特許文献7〜9参照)に記載されている。
【0011】
これらの化合物を利用して各種の色素前駆体を内包するマイクロカプセルが開発され、各種の感熱記録材料に利用されてきた。
【0012】
ところで、感熱記録材料に求められる発色開始温度、発色を開始する熱エネルギーの量は、それぞれの記録システムによって異なり、そのために前述の各種のイソシアネート化合物を組み合わせてカプセル壁の架橋度、ガラス転移温度を変更することで熱応答性の異なるマイクロカプセルが開発されている。例えば、多色感熱記録材料においては、下層に用いられるマイクロカプセルは上層を発色させる為の記録エネルギーが印加された場合には、全く物質を透過させないこと、更に上層を発色させる為の記録エネルギーよりも高い、下層を発色させる為の記録エネルギーが印加された場合には速やかに物質を透過させるという熱応答性が求められる。
【0013】
このような要求を解決するために例えばマイクロカプセルの壁厚を厚くする、マイクロカプセルの平均粒径を大きくする等の方法がある。しかしながら、これらの方法では物質透過に必要なエネルギー量は上昇傾向にはあるものの、高エネルギーを印加した場合でも物質を十分に通さず、色素前駆体から色素の形成が十分有効に進行しない為に十分に高い発色濃度が得られないという問題が生ずる。
【0014】
また、従来から知られている多価イソシアネート化合物では低い印加エネルギーですら物質を透過させ、ひいては発色が起こる。この発色は低濃度ではあるが、これによって画質は大幅に低下する。
【0015】
そこで、カプセル壁を形成するイソシアネート化合物の改良が提案されており、例えばジフェニルメタンジイソシアネートの多量体、フェニルイソシアネートのホルマリン縮合物等の多価芳香族イソシアネート(日本ポリウレタン工業社製の「MR200」等)が汎用されている。しかしながら、このイソシアネートは重縮合反応を用いて合成されるためにイソシアネート化合物自体が着色しており、多量に用いるとマイクロカプセル自体の着色が目立つという問題や、またこのイソシアネートから得られたマイクロカプセルでは光照射によって経時で黄着色が発生するという問題がある。
【0016】
そこで、これらの問題を解決するために新規な多価イソシアネート化合物が提案されている(例えば、特許文献10参照。)。しかしながらこのイソシアネート化合物は合成工程が複雑であり、化合物のコストが高いという問題がある。
【0017】
また、マイクロカプセルを高温高湿条件下、光照射条件下等の各種条件で保存した際に、カブリと呼ばれる地肌部分の発色が発生すると画像品質、画像の視認性を著しく低下させる。このカブリには例えば製造後から使用前の保存時に発生するもの、色素形成反応に定着の機構が含まれていない、即ち電子供与性染料前駆体と顕色剤の組み合わせを含有する感熱記録材料では印画後の画像保存時に発生するもの等がある。感熱記録材料に一般に用いられるマイクロカプセルは熱応答性を有している為に、これらの要求に十分応えているとは言えない。
【0018】
また、特に前記の多色感熱記録材料においては、シアン、マゼンタ、及びイエローのいずれかに発色し得る感熱記録層が設けられており、これらは異なる加熱温度の付与により印字されることにより、単色の感熱記録材料の感熱記録層に比べて更に優れた熱応答性の制御が求められる。従来のイソシアネート化合物から得られるカプセル壁はこの要求を十分に満たすとは言えない。
【0019】
このように、感熱記録材料において低エネルギー印加では物質を透過させず、かつ必要なエネルギーが印加された場合には十分に物質を透過させること、及び高度な保存性を有すること、を同時に達成することは非常に困難であった。
【0020】
【特許文献1】
特開昭62−212190号公報
【特許文献2】
特開平4−26189号公報
【特許文献3】
特開昭61−169281号公報
【特許文献4】
特開平5−168911号公報
【特許文献5】
特開平8−230328号公報
【特許文献6】
特開平8−259486号公報
【特許文献7】
特開平7−88356号公報
【特許文献8】
特開平7−185307号公報
【特許文献9】
特開平7−204496号公報
【特許文献10】
特開平11−92439号公報
【非特許文献1】
佐藤弘次ら著,「画像電子学会誌」,第11巻,第4号,1982年、p.290−296
【非特許文献2】
宇佐美智正ら著,「電子写真学会誌」,第26巻,第2,1987年,p.115−125
【非特許文献3】
近藤朝士著,「マイクロカプセル」,日刊工業新聞社,1970年
【非特許文献4】
近藤保ら著,「マイクロカプセル」,三共出版,1977年
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低エネルギー印加では物質を透過せず、発色印字エネルギーに達すると効率よく物質を透過し(高γ化)、そして高エネルギー印加では十分に物質を透過するマイクロカプセルを提供することを目的とする。
本発明はまた、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少ない感熱記録材料を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
<1> ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルのカプセル壁が、下記化合物(1)、下記化合物(2)、及び下記化合物(3)のイソシアネート化合物の重合により得られるポリマーからなることを特徴とするマイクロカプセルである。
【0023】
【化2】
[XDI:キシリレンジイソシアネート]
【0024】
<2> 支持体上に、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとを含む感熱記録層、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層を有する感熱記録材料であって、前記マイクロカプセルが前記<1>に記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料である。
<3> 支持体上に、2層以上の感熱記録層を有し、各感熱記録層が、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとを含む感熱記録層、及び電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層のいずれかである感熱記録材料であって、前記マイクロカプセルの少なくとも1つが前記<1>に記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料である。<4> 前記顕色剤がフェノール系化合物であることを特徴とする前記<3>に記載の感熱記録材料である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のマイクロカプセル及び感熱記録材料について詳述する。
[マイクロカプセル]
本発明のマイクロカプセルは、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルのカプセル壁が、下記化合物(1)、下記化合物(2)、及び下記化合物(3)のイソシアネート化合物の重合により得られるポリマーからなることを特徴としている。
【0026】
【化3】
[XDI:キシリレンジイソシアネート]
【0027】
本発明のマイクロカプセルにおいて、カプセル壁は、前記化合物(1)〜(3)の重合により得られるポリマーからなるが、化合物(1)〜(3)の重合は、例えば、分子中に2ケ以上の活性水素原子を有する化合物との反応で行なわれることが好ましい。このような活性水素原子を有する化合物の例としては、例えば水の他、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の多価アミン系化合物等、又はこれらの混合物等が挙げられる。これらの内で特に水を用いて重合させることが好ましいが、必要に応じて、水と前述のアルコール、アミン類とを併用してもよい。この結果としてカプセル壁が形成される。
【0028】
本発明のマイクロカプセルは、さらに具体的には、例えば以下のようにして作製することができる。
まず、マイクロカプセルの芯を形成するための疎水性溶媒としては、沸点100〜300℃の高沸点有機溶媒が好ましい。具体的には、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、ジフェニルエタンアルキル付加物、アルキルビフェニル、塩素化パラフィン、トリクレジルフォスフェート等の燐酸系誘導体、マレイン酸−ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸エステル類、及びアジピン酸エステル類等を挙げることができる。これらは2種以上混合して用いてもよい。ジアゾ化合物や電子供与性染料前駆体のこれらの疎水性溶媒に対する溶解度が充分でない場合は、更に低沸点溶剤を併用することができる。併用する低沸点有機溶媒としては、沸点40〜100℃の有機溶媒が好ましく、具体的には酢酸エチル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン及びアセトン等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。低沸点(沸点約100℃以下のもの)の溶媒のみをカプセル芯に用いた場合には、溶媒は蒸散し、カプセル壁とジアゾ化合物や電子供与性染料前駆体のみが存在するいわゆるコアレスカプセルが形成され易い。
【0029】
後述するジアゾ化合物の種類によってはマイクロカプセル化反応中の水相側へ移動する場合があり、これを抑制するために、あらかじめ酸アニオンを水溶性高分子溶液中に適宜添加してもよい。この酸アニオンとしては、PF6−、B(−Ph)4−[Phはフェニル基]、ZnCl2−、CnH2n+1COO−(nは1〜9の整数)及びCpF2p+1SO3−(pは1〜9の整数)を挙げることができる。
【0030】
マイクロカプセル化の際、マイクロカプセル壁を形成するための化合物(1)〜(3)の重合に用いる活性水素を有する化合物としては、一般に水が使用されるが、ポリオールを芯となる有機溶媒中あるいは分散媒となる水溶性高分子溶液中に添加しておき、上記活性水素を有する化合物(マイクロカプセル壁の原料の一つ)として用いることができる。具体的にはプロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等が挙げられる。またポリオールの代わりに、あるいは併用してジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のアミン化合物を使用しても良い。これらの化合物も先の「ポリウレタン樹脂ハンドブック」に記載されている。
【0031】
マイクロカプセルの油相を水相中に分散するための水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びその変性物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム及びアルギン酸ナトリウムを挙げることができる。これらの水溶性高分子は、イソシアネート化合物との反応しないか、極めて反応し難いものが好ましく、たとえばゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め反応性をなくしておくことが好ましい。
【0032】
界面活性剤を油相あるいは水相の何れに添加して使用してもよいが、有機溶媒に対する溶解度が低いために水相に添加する方が容易である。添加量は油相の質量に対し0.1〜5質量%、特に0.5〜2質量%が好ましい。一般に乳化分散に用いる界面活性剤は、比較的長鎖の疎水基を有する界面活性剤が優れているとされており(「界面活性剤便覧」、西一郎ら、産業図書発行(1980))、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等のアルカリ金属塩を用いることができる。
【0033】
界面活性剤(乳化助剤)として芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物や芳香族カルボン酸塩のホルマリン縮合物等の化合物を使用することもできる。具体的には、下記一般式(A)で表わされる化合物が好適に挙げられる。この化合物については特開平6−297856号公報に記載されている。また、アルキルグルコシド系化合物の化合物も同様に使用することができる。具体的には、下記の一般式(B)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
一般式(A)において、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を、XはSO3−又はCOO−を、Mはナトリウム原子又はカリウム原子を、そしてqは1〜20の整数を表す。
【0036】
【化5】
【0037】
一般式(B)において、Rは炭素原子数4〜18のアルキル基を、qは0〜2の整数を表す。
【0038】
本発明のマイクロカプセルにおいては、いずれの界面活性剤も単独で使用しても二種以上適宜併用してもよい。
【0039】
ジアゾ化合物(あるいは電子供与性染料前駆体)、高沸点溶媒等からなる溶液とイソシアネート化合物(本発明の多官能イソシアネート化合物を含む)との混合液(油相)を、界面活性剤及び水溶性高分子からなる水溶液(水相)に添加する。その際、水溶液をホモジナイサー等の高シェア攪拌装置で攪拌させながら、添加することにより乳化分散させる。乳化後、イソシアネート化合物の重合反応触媒を添加するか、乳化物の温度を上昇させてカプセル壁形成反応を行う。
【0040】
調製されたジアゾ化合物を内包したマイクロカプセル液には、更にカップリング反応失活剤を適宜添加することができる。この反応失活剤としての例としては、ハイドロキノン、重亜硫酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、次亜リン酸、塩化第1スズ及びホルマリンを挙げることができる。これらの化合物については、特開昭60−214992号公報に記載されている。また通常、カプセル化の過程で、水相中にジアゾ化合物が溶出することが多いが、これを除去する方法として、濾過処理、イオン交換処理、電気泳動処理、クロマト処理、ゲル濾過処理、逆浸透処理、限外濾過処理、透析処理、活性炭処理等の方法を利用することができる。この中でもイオン交換処理、逆浸透処理、限外濾過処理及び透析処理が好ましく、特に、陽イオン交換体による処理、陽イオン交換体と陰イオン交換体の併用による処理が好ましい。これらの方法については、特開昭61−219688号公報に記載されている。
【0041】
本発明のマイクロカプセルにおいて、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体は、前述のように高沸点溶媒に溶解されてマイクロカプセルに内包されている。ジアゾ化合物及び電子供与性染料前駆体については、以下の本発明の感熱記録材料と共に詳しく説明する。
【0042】
[感熱記録材料]
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセル及びカプラーとを含む感熱記録層、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層を有し、該マイクロカプセルが、前記本発明のマイクロカプセルである。このマイクロカプセルとして前記本発明のマイクロカプセルを用いることで、本発明の感熱記録材料は、低エネルギー印加では発色せず、発色印字エネルギーに達すると効率よく物質を透過し、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少なくなる。
【0043】
感熱記録層は、ジアゾ化合物を内包したマイクロカプセルと、カプラー、必要に応じて、その他の添加剤等の調製液とを適当な割合で混合された塗布液、或いは、電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと、顕色剤(電子受容性化合物)、必要に応じてその他の添加剤等の調製液とを適当な割合で混合された塗布液を支持体上に塗布することで形成することができる。以下に、各材料について説明する。
【0044】
ジアゾ化合物としては、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
【化10】
【0050】
一般式(1)において、Arは、アリール基を表し、R11、R12は、それぞれ炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。R11とR12とは、同一でもよく、また異なっていてもよい。X−は、酸アニオンを表す。
【0051】
一般式(2)において、R14、R15、R16は、それぞれ炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。R14とR15とR16とは、同一でもよく、また異なっていてもよい。Yは、水素原子、又はOR17を表す。R17は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。X−は、酸アニオンを表す。
【0052】
一般式(3)において、Zは水素原子、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又はOR19を表す。R18、R19は、それぞれ炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。R18とR19とは、同一でもよく、また異なっていてもよい。X−は、酸アニオンを表す。
【0053】
一般式(4)において、R19、R20、R21、R22は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、−OR23、−SR24、−NR25R26、−COR28、ハロゲン原子、−SONR25R26を表す。ここで、R23及びR24はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基を表し、R25及びR26はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を表し、さらに、R25及びR26は互いに連結して、−O−、−S−、−SO2−、−NR27−を含んでいてもよいアルキレン基を表し、R27は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表し、R28は水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、−NR25R26を表す。ここで、R25及びR26は前記したのと同義である。また、Aは−CO−、−SO2−を表し、Bは−SO2R29、−POR30R31を表す。ここで、R29は、アルキル基、アリール基、複素環基、−NR25R26を表す。R30及びR31は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R25及びR26は、前記したのと同義である。
【0054】
一般式(5)において、R32及びR33はそれぞれ独立に炭素数1〜18の置換若しくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリール基を表す。R34はアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシル基、アシル基、又はシアノ基を表す。X−は酸アニオンを表す。一般式(5)で表されるジアゾ化合物は、特開平10−337691に詳細に記載されている。
【0055】
一般式(1)〜(3)、(5)において、X−で表わされる酸アニオンとしては、炭素数1〜9のポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、炭素数1〜9のアルキルスルホン酸イオン、四フッ化ホウ素、テトラフェニルホウ素、ヘキサフルオロリン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオンが挙げられる。
【0056】
以下に、一般式(1)〜(5)で示されるジアゾ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化11】
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
一般式(1)〜(3)、(5)で示されるジアゾ化合物は、既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化することにより得られる。また、一般式(4)で示されるジアゾ化合物は、特願平11−335801、特願平11−324248に記載の方法で合成することができる。
【0066】
一般式(1)〜(5)で表されるジアゾ化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。さらに、色相調製等の諸目的に応じて、一般式(1)〜(5)で表されるジアゾ化合物と既存のジアゾ化合物とを併用してもよい。既存のジアゾ化合物については、成書(The Focal Press London and New York 「Photosensitive Diazo Compounds and their uses」57頁〜86頁(1964)等)に詳しい。
【0067】
ジアゾ化合物の安定化のために塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化スズ等を用いて錯化合物を形成させジアゾ化合物の安定化を行うこともできる。
【0068】
カプラー(マイクロカプセルには内包されない)としては、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成するものであればいずれの化合物も可能である。ハロゲン化銀写真感光材料用のいわゆる4当量カプラーはすべてカプラーとして使用可能である。これらは目的とする色相に応じて選択することが可能である。
【0069】
例えば、カルボニル基の隣にメチレン基を有するいわゆる活性メチレン化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体等があり、具体例として下記のものが挙げられ本発明の目的に合致する範囲で使用される。
【0070】
カプラーとしては、下記一般式(6)で示される化合物が、特に好ましい。
【0071】
【化19】
【0072】
一般式(6)において、E1、E2で表される電子吸引性基は、Hammettのσ値が正である置換基をさし、これらは同一であっても異なっていても良く、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環基、ホスホノ基等が好ましい。アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、1−メチルシクロプロピルカルボニル基、1−エチルシクロプロピルカルボニル基、1−ベンジルシクロプロピルカルボニル基、ベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、テノイル基等のアシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等のオキシカルボニル基、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−〔2,4−ビス(ペンチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、N−〔2,4−ビス(オクチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、モルホリノカルボニル基等のカルバモイル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基、ジエチルホスホノ基等のホスホノ基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−スルホン−2−イル基等の複素環基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基が好ましい。
【0073】
また、E1、E2で表される電子吸引性基は、両者が結合し環を形成してもよい。E1、E2で形成される環としては5ないし6員の炭素環あるいは複素環が好ましい。
【0074】
一般式(6)で示される化合物として具体例には、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、5−アセトアミド−1−ナフトール、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ジアニリド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、5−(2−n−テトラデシルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン、5−フェニル−4−メトキシカルボニル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−(2,5−ジ−n−オクチルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン、N,N’−ジシクロヘキシルバルビツール酸、N,N’−ジ−n−ドデシルバルビツール酸、N−n−オクチル−N’−n−オクタデシルバルビツール酸、N−フェニル−N’−(2,5−ジ−n−オクチルオキシフェニル)バルビツール酸、N,N’−ビス(オクタデシルオキシカルボニルメチル)バルビツール酸、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、6−ヒドロキシ−4−メチル−3−シアノ−1−(2−エチルヘキシル)−2−ピリドン、2,4−ビス−(ベンゾイルアセトアミド)トルエン、1,3−ビス−(ピバロイルアセトアミドメチル)ベンゼン、ベンゾイルアセトニトリル、テノイルアセトニトリル、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、ピバロイルアセトアニリド、2−クロロ−5−(N−n−ブチルスルファモイル)−1−ピバロイルアセトアミドベンゼン、1−(2−エチルヘキシルオキシプロピル)−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(ドデシルオキシプロピル)−3−アセチル−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(4−n−オクチルオキシフェニル)−3−tert−ブチル−5−アミノピラゾール等が挙げられる。
【0075】
カプラーの詳細については、特開平4−201483号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平7−323660号、特開平7−125446号、特開平7−96671号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平9−156229号、特開平9−216468号、特開平9−216469号、特開平9−203472号、特開平9−319025号、特開平10−35113号、特開平10−193801号、特開平10−264532号等の公報に記載されている。
【0076】
一般式(6)で表されるカプラーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
【化20】
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
【化23】
【0081】
電子供与性染料前駆体としてはトリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物等が挙げられるが、特にトリアリールメタン系化合物及びキサンテン系化合物が、発色濃度が高く有用である。
【0082】
電子供与性染料前駆体として具体例には、3−(o−アセトアミド−p−ジプロピルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6ジメチルアミノフタリド(即ちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(1′−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等が挙げられる。
【0083】
顕色剤(電子受容性化合物(マイクロカプセルには内包されない))としてはフェノール誘導体(フェノール系化合物)、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。例えば、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル}ベンゼン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸及びその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸及びその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールを挙げることができる。本発明においては、これらの電子受容性化合物を2種以上任意の比率で併用することができる。
【0084】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、ジアゾ化合物とカプラーとの反応、或いは、電子供与性染料前駆体と顕色剤との反応を促進させる目的で、増感剤を添加することが好ましい。増感剤としては、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましい。その具体例としては、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、p−トルエンスルホンアミド、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルスルホンアミド、4−n−ペンチルオキシフェニルスルホンアミド等が挙げられる。本発明においては、これらの増感剤を2種以上任意の比率で併用することもできる。
【0085】
感熱記録層には、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとの組み合わせを用いる場合、カプラーと共に、色素形成反応を促進させる目的で、乳化分散及び/又は固体分散して微粒子化した塩基性物質を添加するのが一般的である。塩基性物質としては、無機あるいは有機の塩基化合物のほか、加熱時に分解等によりアルカリ物質を放出するような化合物も含まれる。代表的なものとしては、有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素及びチオ尿素さらにそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルホリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォルムアジン類、ピリジン類等の含窒素化合物があげられる。これらの具体例としてはトリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン、アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2−ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、グアニジントリクロロ酢酸塩、N,N’−ジベンジルピペラジン、4,4’−ジチオモルホリン、モルホリニウムトリクロロ酢酸塩、2−アミノベンゾチアゾール、及び2−ベンゾイルヒドラジノベンゾチアゾールが挙げられる。これらは、2種以上併用することもできる。
【0086】
感熱記録層には、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとの組み合わせを用いる場合、カプラーと共に、発色反応を促進させる目的で、前記塩基性物質の他に、発色助剤を添加することができる。発色助剤とは、加熱記録時の発色濃度を高くする、もしくは最低発色温度を低くする物質であり、カプラー、塩基性物質、もしくはジアゾ化合物等の融解点を下げたり、カプセル壁の軟化点を低下せしめる作用により、ジアゾ化合物、塩基性物質、カプラー等が反応しやすい状況を作るためのものである。発色助剤として、例えば低エネルギーで迅速かつ完全に熱印画が行われるように、発色層中にフェノール誘導体、ナフトール誘導体、アルコキシ置換ベンゼン類、アルコキシ置換ナフタレン類、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、ウレイド、ウレタン、スルホンアミド化合物ヒドロキシ化合物、等を加えることができる。
【0087】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、熱発色画像の光及び熱に対する堅牢性を向上させ、又は、定着後の未印字部分の光による黄変を軽減する目的で、以下に示す公知の酸化防止剤等を用いることが好ましい。
【0088】
上記の酸化防止剤については、例えばヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4814262号明細書、アメリカ特許第4980275号明細書等に記載されている。
【0089】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、感熱記録材料や感圧記録材料において既に用いられている公知の各種添加剤を添加することも有効である。これらの各種添加剤の具体例としては、特開昭60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同63−088381号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−043294号公報、同48−033212号公報等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0090】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0091】
これらの酸化防止剤及び各種添加剤の添加量は、ジアゾ化合物1質量部に対して0.05〜100質量部の割合であることが好ましく、特に0.2〜30質量部であることが好ましい。
【0092】
このような公知の酸化防止剤及び各種添加剤はジアゾ化合物と共にマイクロカプセル中に含有させて用いることも、あるいはカプラーや塩基性物質、その他の発色助剤と共に、固体分散物として、もしくは適当な乳化助剤と共に乳化物にして用いることも、あるいはその両方の形態で用いることもできる。また酸化防止剤及び各種添加剤を単独又は複数併用することができるのは勿論である。また、保護層に添加又は存在させることもできる。
【0093】
これらの酸化防止剤及び各種添加剤は同一層に添加しなくてもよい。更にこれらの酸化防止剤及び各種添加剤を組み合わせて複数用いる場合には、アニリン類、アルコキシベンゼン類、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン誘導体、りん化合物、硫黄化合物の様に構造的に分類し、互いに異なる構造のものを組み合わせてもよいし、同一のものを複数組み合わせることもできる。
【0094】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、記録後の地肌部の黄着色を軽減する目的で、光重合性組成物等に用いられる遊離基発生剤(光照射により遊離基を発生する化合物)を添加することができる。遊離基発生剤としては、芳香族ケトン類、キノン類、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、アゾ化合物、有機ジスルフィド類、アシルオキシムエステル類等が挙げられる。添加する量は、ジアゾ化合物1質量部に対して、遊離基発生剤0.01〜5質量部が好ましい。
【0095】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、黄着色を軽減する目的で、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物(以下、ビニルモノマーと呼ぶ)を添加することができる。ビニルモノマーとは、その化学構造中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合(ビニル基、ビニリデン基等)を有する化合物であって、モノマーやプレポリマーの化学形態を持つものである。これらの例として、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。ビニルモノマーはジアゾ化合物1質量部に対して0.2〜20質量部の割合で用いる。
【0096】
前記遊離基発生剤やビニルモノマーは、ジアゾ化合物又は電子共与性染料前駆体と共にマイクロカプセル中に含有して用いることもできる。
【0097】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、酸安定剤としてクエン酸、酒石酸、シュウ酸、ホウ酸、リン酸、ピロリン酸等を添加することができる。
【0098】
感熱記録層において、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に用いられるバインダーとしては、公知の水溶性高分子化合物やラテックス類等を使用することができる。水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、エピクロルヒドリン変成ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド等及びこれらの変成物等が挙げられ、ラテックス類としては、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
【0099】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に用いられる顔料としては、有機、無機を問わず公知のものを使用することができる。具体的には、カオリン、焼成カオリン、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトポン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、マイクロバルーン、尿素−ホルマリンフィラー、ポリエステルパーティクル、セルロースフィラー等が挙げられる。
【0100】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、必要に応じて、公知のワックス、帯電防止剤、消泡剤、導電剤、蛍光染料、界面活性剤、紫外線吸収剤及びその前駆体等各種添加剤を添加することもできる。
【0101】
感熱記録層において、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)、及び必要に応じて、前述の各種添加剤(増感剤、塩基性物質等)等の調製液は、これら材料を、適宜混合して、別々に乳化分散或いは固体分散して微粒化し添加、又は適宜混合してから、乳化分散或いは固体分散して微粒化し添加することができる。乳化分散する方法は、有機溶媒中にこれらの化合物を溶解し、水溶性高分子水溶液をホモジナイザー等で攪拌中に添加することが好ましい。固体分散する方法は、これらの材料を水溶性高分子水溶液中に投入しボールミル等の公知の分散手段を用いて微粒子化することが好ましい。乳化分散或いは固体分散して微粒子化を促進するにあたり、前述の疎水性有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子を使用することが好ましい。また、微粒子化に際しては、熱感度、保存性、記録層の透明性、製造適性等の多色感熱記録材料及びその製造方法に必要な特性を満足しうる粒子直径を得るように行うことが好ましい。
【0102】
感熱記録層において、カプラーの添加量は、ジアゾ化合物1モルに対して1〜10モル、好ましくは2〜6モルが適当である。塩基性物質の添加量は、塩基性の強度により異なるがジアゾ化合物1モルに対して0.5〜5モルが適当である。顕色剤の添加量は、電子供与性染料前駆体1モルに対して0.5〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましく3〜15モルが適当である。熱増感剤の添加量は、ジアゾ化合物或いは電子供与性染料前駆体1モルに対して一般に0.1〜20モル、好ましくは0.5〜10モルが適当である。
【0103】
感熱記録層は、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を含有したマイクロカプセルと、カプラー又は顕色剤、及び必要に応じて上述した各種添加剤を含有した調製液とを混合して塗布液を調製し、紙や合成樹脂フィルム等の支持体の上にバー塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等の塗布方法により塗布乾燥して設けることが好ましい。また、感熱記録層は、固型分2.5〜30g/m2になるように設けることが好ましい。
【0104】
本発明の感熱記録材料において、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を含有したマイクロカプセル、カプラー、顕色剤、その他塩基性物質等が同一層に含まれていてもよいが、別層に含まれるような積層型の構成をとることもできる。また、支持体の上に特願昭59−177669号明細書等に記載されているような中間層を設けた後、感熱記録層を塗布することもできる。
【0105】
本発明の感熱記録材料において、単層構造(単色)の場合、感度調整等の目的で、同一感熱記録層に、前記本発明のマイクロカプセルと共に、その他、従来公知のマイクロカプセルを併用することもできる。この場合における前記本発明のマイクロカプセルは、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上で併用することが好適である。
【0106】
本発明の感熱記録材料には、必要に応じて感熱記録層の表面に保護層を設けてもよい。保護層は必要に応じて二層以上積層してもよい。保護層に用いる材料としては、ポリビニルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン類、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子化合物、及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等のラテックス類が用いられる。保護層の水溶性高分子化合物を架橋して、より一層保存安定性を向上させることもでき、その架橋剤としては公知の架橋剤を使用することができる。具体的にはN−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、尿素−ホルマリン等の水溶性初期縮合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物類、硼酸、硼砂等の無機系架橋剤、ポリアミドエピクロルヒドリン等が挙げられる。保護層には、さらに公知の顔料、金属石鹸、ワックス、界面活性剤等を使用することもできる。保護層の塗布量は0.2〜5g/m2が好ましく、さらには0.5〜2g/m2が好ましい。またその膜厚は0.2〜5μmが好ましく、特に0.5〜2μmが好ましい。
【0107】
本発明の感熱記録材料に、保護層を設ける場合、保護層中に公知の紫外線吸収剤やその前駆体を含有してもよい。
【0108】
本発明の感熱記録材料において、ジアゾ化合物を用いた感熱記録層を設ける場合、支持体上に感熱記録層と光定着する波長領域における光透過率が定着後に減少する光透過率調整層を設け、さらにその上に保護層を設けることが好ましい。
【0109】
本発明の感熱記録材料において、光透過率調整層は、紫外線吸収剤の前駆体として機能する成分を含有しており、定着に必要な領域の波長の光照射前は紫外線吸収剤として機能しないので、光透過率が高く、感熱記録層を定着する際、定着に必要な領域の波長を十分に透過させ、また、可視光線の透過率も高く、感熱記録層の定着に支障は生じない。
【0110】
この紫外線吸収剤の前駆体は、感熱記録層の光照射による定着に必要な領域の波長の光照射が終了した後、光又は熱等で反応することにより紫外線吸収剤として機能するようになり、紫外線領域の波長の光は紫外線吸収剤によりその大部分が吸収され、透過率が低くなり、感熱記録材料の耐光性が向上するが、可視光線の吸収効果がないから、可視光線の透過率は実質的に変わらない。
【0111】
本発明の感熱記録材料において、光透過率調整層は、感熱記録材料中に少なくとも1層設けることができ、最も好ましくは感熱記録層と保護層との間に形成するのがよいが、光透過率調整層を保護層と兼用するようにしてもよい。光透過率調整層の特性は、感熱記録層の特性に応じて任意に選定することができる。
【0112】
本発明の感熱記録材料において、支持体としては、通常の感圧紙や感熱紙、乾式や湿式のジアゾ複写紙等に用いられる紙支持体はいずれも使用することができる他、酸性紙、中性紙、コート紙、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙、プラスチックフィルム等を使用することができる。
【0113】
支持体のカールバランスを補正するため或いは、裏面からの耐薬品性を向上させる目的で、バックコート層を設けてもよく、また裏面に接着剤層を介して剥離紙を組み合わせてラベルの形態にしてもよい。このバックコート層についても上記保護層と同様にして設けることができる。
【0114】
本発明の感熱記録材料において、記録面にサーマルヘッド等で加熱すると、マイクロカプセルのカプセル壁が軟化し、カプセル外のカプラーと塩基化合物がカプセル内に進入して発色する。発色後はジアゾ化合物の吸収波長の光を照射する事により、ジアゾ化合物が分解しカプラーとの反応性を失うため画像の定着が行なわれる。
【0115】
また、定着光源としては、種々の蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等が用いられ、この発光スペクトルが感熱記録材料で用いたジアゾ化合物の吸収スペクトルにほぼ一致していることが効率よく定着でき好ましい。本発明においては、発光中心波長が360〜440nmの定着光源が特に好ましい。
【0116】
(多色感熱記録材料)
本発明の感熱記録材料は、多色とする場合、支持体上に、シアン、マゼンタ及びイエローのいずれかに発色し得る2層以上の感熱記録層を有し、各感熱記録層がジアゾ化合物を内包するマイクロカプセル及びカプラー、又は、電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセル及び顕色剤を含み、該感熱記録層の少なくとも1層におけるマイクロカプセルが、前記本発明のマイクロカプセルである。このマイクロカプセルとして前記本発明のマイクロカプセルを用いることで、本発明の多色感熱記録材料は、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少なくなる。また、各感熱記録層、支持体、及び保護層、光透過率調整層等のその他の層は、前記本発明の感熱記録材料と同様に作製することができる。
【0117】
本発明の感熱記録材料において、本発明のマイクロカプセルは、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能である観点から、最も高温(高エネルギー印加)で発色させる感熱記録層(一般的には、最下層)に含有することが好ましい。これにより、低温発色(低エネルギー印加)する感熱記録層発色時に、本発明のマイクロカプセル含有する感熱記録層が発色することなく、低温発色する感熱記録層の純粋な発色画像を得ることができ、画像品質が向上する。
【0118】
本発明の感熱記録材料は、2層以上の感熱記録層に、それぞれ光分解波長が異なる光分解性ジアゾ化合物を用いることにより作製することができる。また、2層以上の感熱記録層の色相を変えることにより、フルカラーの多色感熱記録材料となる。例えば、各感熱記録層の発色色相を減色混合における3原色、イエロー、マゼンタ、シアンとなるように選べばフルカラーの画像記録が可能となる。この場合、支持体面に直接、積層(感熱記録層の最下層)される感熱記録層の発色機構は、ジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとからなるジアゾ発色系、電子供与性染料と顕色剤とからなるロイコ発色系、塩基性化合物と接触して塩基発色する塩基発色系、キレート発色系、求核剤と反応して脱離反応を起こし発色する発色系等のいずれでもよく、この感熱記録層上に最大吸収波長が異なるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを各々含有する感熱記録層を2層設け、この層上に光透過率調整層、保護層を順次設けるのが望ましい。
【0119】
本発明の感熱記録材料において、感熱記録層として、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層とを含有することが好ましい。
【0120】
本発明の感熱記録材料としては、支持体上に、電子供与性染料と電子受容性化合物を含有する感熱記録層と、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、を順次設け、この層上に光透過率調整層を設けたものが好ましい。
【0121】
本発明の感熱記録材料としては、支持体上に、最大吸収波長310±20nm以下のジアゾ化合物と、該ジアゾ化合物と呈色反応をするカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、を順次設け、この層上に光透過率調整層を設けたものが好ましい。
【0122】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層を複数積層するため、感熱記録層相互の混色を防ぐ目的で、各感熱記録層間に中間層を設けることもできる。この中間層はゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物からなり、適宜各種添加剤を含んでいてもよい。
【0123】
本発明の感熱記録材料及びその記録方法についてさらに詳しく説明する。
まず初めに低エネルギーの熱記録でジアゾ化合物を含有する最外層の感熱層(第1感熱記録層、通常イエロー発色層)を発色させた後、該感熱層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて全面光照射して、最上層の感熱層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。
【0124】
次いで、前回より高エネルギーで、第1層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光とは異なった光吸収波長域を有するジアゾ化合物を含有する第2層目の感熱層(第2感熱記録層、通常マゼンタ発色層)を発色させた後、該ジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて再度全面光照射し、これによって第2層目の加熱層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。最後に、更に高エネルギーで、最内層(第3感熱記録層、通常シアン発色層)の電子供与性染料前駆体を含有する層(第3層)を発色させて画像記録を完了する。
【0125】
上記の場合には、最外層及び第2層を透明な感熱層とすることが、各発色が鮮やかになるので好ましい。
【0126】
また、本発明においては、支持体として透明な支持体を用い、上記3層のうち何れか一層を透明な支持体の裏面に塗布することにより、多色画像を得ることもできる。この場合には、画像を見る側と反対側の最上層の感熱記録層は透明である必要はない。
【0127】
上記ジアゾ化合物の光分解に使用する光源としては、通常紫外線ランプを使用する。紫外線ランプは管内に水銀蒸気を充填した蛍光管であり、管の内壁に塗布する蛍光体の種類により種々の発光波長を有する蛍光管を得ることができる。
【0128】
多色感熱記録材料においては、上記第3感熱記録層を適当なジアゾ化合物とカプラーとの組合せで作製することも可能である。
【0129】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
[実施例1]
<フタル化ゼラチン溶液の調製>
フタル化ゼラチン(商品名:MGPゼラチン、ニッピコラーゲン(株)製)32部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、大東化学工業所(株)製)0.9143部、イオン交換水367.1部を混合し、40℃にて溶解し、フタル化ゼラチン水溶液を得た。
【0130】
<アルカリ処理ゼラチン溶液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)25.5部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、大東化学工業所(株)製)0.7286部、水酸化カルシウム0.153部、イオン交換水143.6部を混合し、50℃にて溶解し、乳化物作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0131】
(1)イエロー感熱記録層液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)の調製>
酢酸エチル16.1部に、下記ジアゾニウム化合物(A)(最大吸収波長420nm)2.2部、下記ジアゾニウム化合物(B)(最大吸収波長420nm)2.2部、モノイソプロピルビフェニル4.8部、フタル酸ジフェニル4.8部、およびジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(商品名:ルシリンTPO,BASFジャパン(株)製)0.4部を添加し40℃に加熱して均一に溶解した。この混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)8.6部を添加し、均一に攪拌し混合液(I)を得た。
【0132】
【化24】
【0133】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液58.6部にイオン交換水16.3部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.34部添加し、混合液(II)を得た。
【0134】
混合液(II)に混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水20部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.36μmであった。
【0135】
<カプラー化合物乳化液(a)の調製>
酢酸エチル33.0部に下記カプラー化合物(C)9.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)9.9部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))20.8部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’,6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.3部、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)13.6部、4−n−ペンチルオキシベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)6.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.2部を溶解し、混合液(III)を得た。
【0136】
【化25】
【0137】
別途前記アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(IV)を得た。
【0138】
混合液(IV)に混合液(III)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が26.5質量%になるように濃度調節を行った。得られたカプラー化合物乳化物の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.21μmであった。
【0139】
更に上記カプラー化合物乳化物100部に対して、SBRラテックス(商品名SN−307,48%液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5%に濃度調整したものを9部添加して均一に撹拌してカプラー化合物乳化液(a)を得た。
【0140】
<塗布液(a)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー化合物分乳化液(a)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が2.2/1になるように混合し、イエローの感熱記録層用塗布液(a)を得た。
【0141】
(2)マゼンタ感熱記録層液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(b)の調製>
酢酸エチル15.1部に、下記ジアゾニウム化合物(D)(最大吸収波長365nm)2.8部、フタル酸ジフェニル3.8部、フェニル2−ベンゾイロキシ安息香酸エステル3.9部及び下記化合物(E)(商品名;ライトエステルTMP,共栄油脂化学(株)製)4.2部、及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)0.1部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)2.5部とキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)6.8部を添加し、均一に攪拌し混合液(V)を得た。
【0142】
【化26】
【0143】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液55.3部にイオン交換水21.0部添加、混合し、混合液(VI)を得た。
混合液(VI)に混合液(V)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水24部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.43μmであった。
【0144】
<カプラー化合物乳化液(b)の調製>
酢酸エチル36.9部に下記カプラー化合物(E)11.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)14.0部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))14.0部、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン14部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’、6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.5部、下記化合物(F)3.5部、リン酸トリクレジル1.7部、マレイン酸ジエチル0.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.5部を溶解し、混合液(VII)を得た。
【0145】
【化27】
【0146】
別途アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(VIII)を得た。
【0147】
混合液(VIII)に混合液(VII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が24.5質量%になるように濃度調節を行い、カプラー化合物乳化液(b)を得た。得られたカプラー化合物乳化液の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.22μmであった。
【0148】
<塗布液(b)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー化合物分乳化液(b)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が3.5/1になるように混合した。さらに、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)をカプセル液量10部に対し、0.2部になるように混合し、マゼンタの感熱記録層用塗布液(b)を得た。
【0149】
(3)シアン感熱記録層液の調製
<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>
酢酸エチル17.6部に、下記電子供与性染料前駆体(G)7.6部、1−メチルプロピルフェニル−フェニルメタン及び1−(1−メチルプロピルフェニル)−2−フェニルエタンの混合物(商品名:ハイゾールSAS−310,日本石油(株)製)10部、Irgaperm2140(チバガイギー(株))10部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材として、化合物2(商品名:TF469−F、(50%酢酸エチル溶液)、三井武田ケミカル(株))を11.0部、化合物3(商品名:タケネートD117N(50%酢酸エチル溶液)、三井武田ケミカル(株))を3.6部、化合物1(商品名:ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業(株))5.4部を添加し、均一に攪拌し混合液(IX)を得た。
【0150】
【化28】
【0151】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液28.8部にイオン交換水9.5部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.17部およびドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(10%水溶液)4.3部を添加混合し、混合液(X)を得た。
【0152】
混合液(X)に混合液(IX)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水50部、テトラエチレンペンタミン0.12部を加え均一化し、65℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行ないカプセル液の固形分濃度が33%になるように濃度調節しマイクロカプセル液を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で1.00μmであった。
【0153】
更に上記マイクロカプセル液100部に対して、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム25%水溶液(商品名;ネオペレックスF−25、花王(株)製)3.7部と4,4’−ビストリアジニルアミノスチルベン−2,2’−ジスルフォン誘導体を含む蛍光増白剤(商品名;Kaycoll BXNL、日本曹達(株)製)4.2部を添加して均一に撹拌してマイクロカプセル分散液(c)を得た。
【0154】
<電子受容性化合物乳化液(c)の調製>
酢酸エチル50.0部に、本発明に係るサリチル酸誘導体金属塩のジオール付加体(化合物No.5)20.0部、リン酸トリクレジル20.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA41C 70%メタノール溶液、竹本油脂(株)製)5.5部を溶解し、混合液(XI)を得た。
別途アルカリ処理ゼラチン水溶液46.0部にイオン交換水200部を混合し、混合液(XII)を得た。
【0155】
<電子受容性化合物分散液(c)の調製>
前記フタル化ゼラチン水溶液11.3部にイオン交換水30.1部、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールP、三井石油化学(株)製)15部、2%の2−エチルヘキシルコハク酸ナトリウム水溶液3.8部を加えて、ボールミルにて一晩分散した後、分散液を得た。この分散液の、固形分濃度は26.6%であった。
【0156】
上記分散液100部に、前記アルカリ処理ゼラチン水溶液45.2部を加えて、30分攪拌した後、分散液の固形分濃度が23.5%となるようにイオン交換水を加えて電子受容性化合物分散液(c)を得た。
【0157】
<塗布液(c)の調製>
前記電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(c)および前記電子受容性化合物分散液(c)を、電子受容性化合物/電子供与性染料前駆体の質量比が10/1になるように混合し、シアンの感熱記録層用塗布液(c)を得た。
【0158】
(4)中間層用塗布液の調製
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)100.0部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)2.857部、水酸化カルシウム0.5部、イオン交換水521.643部を混合し、50℃にて溶解し、中間層作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0159】
前記中間層作製用ゼラチン水溶液10.0部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)0.05部、硼酸(4.0質量%水溶液)1.5部、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)0.19部、下記化合物(I)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液3.42部、下記化合物(I’)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液1.13部、イオン交換水0.67部を混合し、中間層用塗布液とした。
【0160】
【化29】
【0161】
(5)光透過率調整層用塗布液の調製
(v−1)紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液の調製
酢酸エチル71部に紫外線吸収剤前駆体として[2−アリル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェニル]ベンゼンスルホナート14.5部、2,2’−t−オクチルハイドロキノン5.0部、燐酸トリクレジル1.9部、α−メチルスチレンダイマー(商品名:MSD−100,三井化学(株)製)5.7部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)0.45部を溶解し均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物 (商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)54.7部を添加し、均一に攪拌し紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を得た。
【0162】
別途、イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318,クラレ(株)製)52部に30質量%燐酸水溶液8.9部、イオン交換水532.6部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液を調製した。
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液516.06部に前記紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて20℃の下で乳化分散した。得られた乳化液にイオン交換水254.1部を加え均一化した後、40℃下で攪拌しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトMB−3(オルガノ(株)製)94.3部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除きカプセル液の固形分濃度が13.5%になるように濃度調節した。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.23±0.05μmであった。このカプセル液859.1部にカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス(商品名:SN−307,(48質量%水溶液),住友ノーガタック(株)製)2.416部、イオン交換水39.5部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液を得た。
【0163】
(v−2) 光透過率調整層用塗布液の調製
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液1000部、下記化合物(J)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))5.2部、4質量%水酸化ナトリウム水溶液7.75部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)73.39部を混合し、光透過率調整層用塗布液を得た。
【0164】
【化30】
【0165】
(6)保護層用塗布液の調製
(vi−1)保護層用ポリビニルアルコール溶液の調製
ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物(商品名:EP−130,電気化学工業(株)製)160部、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液(商品名:ネオスコアCM−57,(54質量%水溶液),東邦化学工業(株)製)8.74部、イオン交換水3832部を混合し、90℃のもとで1時間溶解し均一な保護層用ポリビニルアルコール溶液を得た。
【0166】
(vi−2)保護層用顔料分散液の調製
硫酸バリウム(商品名:BF−21F,硫酸バリウム含有量93%以上,堺化学工業(株)製)8部に陰イオン性特殊ポリカルボン酸型高分子活性剤(商品名:ポイズ532A(40質量%水溶液),花王(株)製)0.2部、イオン交換水11.8部を混合し、ダイノミルにて分散して保護層用顔料分散液を調製した。この分散液は粒径測定(LA−910,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.15μm以下であった。
【0167】
上記硫酸バリウム分散液45.6部に対し、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO(20質量%水分散液)、日産化学(株)製)8.1部を添加して目的の分散物を得た。
【0168】
(vi−3)保護層用マット剤分散液の調製
小麦澱粉(商品名:小麦澱粉S,新進食料工業(株)製)220部に1−2ベンズイソチアゾリン3オンの水分散物(商品名:PROXEL B.D,I.C.I(株)製)3.81部、イオン交換水1976.19部を混合し、均一に分散し、保護層用マット剤分散液を得た。
【0169】
(vi−4) 保護層用塗布ブレンド液の調製
前記保護層用ポリビニルアルコール溶液1000部に前記化合物(K)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))40部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム (三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)50部、前記保護層用顔料分散液49.87部、前記保護層用マット剤分散液16.65部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115,20.5質量%水溶液,中京油脂(株)製)48.7部を均一に混合し保護層用塗布ブレンド液を得た。
【0170】
(7)下塗り層つき支持体の作製
<下塗り層液の調製>
酵素分解ゼラチン(平均分子量:10000、PAGI法粘度:1.5mPa・s、PAGI法ゼリー強度:20g)40部をイオン交換水60部に加えて40℃で攪拌溶解して下塗り層用ゼラチン水溶液を調製した。
【0171】
別途水膨潤性の合成雲母(アスペクト比:1000、商品名:ソマシフME100,コープケミカル社製)8部と水92部とを混合した後、ビスコミルで湿式分散し、平均粒径が2.0μmの雲母分散液を得た。この雲母分散液に雲母濃度が5質量%となるように水を加え、均一に混合し、所望の雲母分散液を調製した。
【0172】
40℃の40質量%の前記ゼラチン水溶液100部に、水120部およびメタノール556部を加え、十分攪拌混合した後、5質量%前記雲母分散液208部を加えて、十分攪拌混合し、1.66質量%ポリエチレンオキサイド系界面活性剤9.8部を加えた。そして液温を35℃から40℃に保ち、エポキシ化合物のゼラチン硬膜剤7.3部を加えて下塗り層用塗布液(5.7質量%)を調製し、下塗り用塗布液を得た。
【0173】
<下塗り層つき支持体の作製>
LBPS 50部LBPK 50部からなる木材パルプをデイスクリファイナーによりカナデイアンフリーネス300ccまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、硫酸アルミニウム1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部をいずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し長網抄紙機により坪量114g/m2の原紙を抄造しキャレンダー処理によって厚み100μmに調整した。
【0174】
次に原紙の両面にコロナ放電処理を行った後、溶融押し出し機を用いてポリエチレンを樹脂厚36μmとなるようにコーテイングしマット面からなる樹脂層を形成した(この面をウラ面と呼ぶ)。次に上記樹脂層を形成した面とは反対側に溶融押し出し機を用いてアナターゼ型二酸化チタンを10質量%及び微量の群青を含有したポリエチレンを樹脂厚50μmとなるようにコーテイングし光沢面からなる樹脂層を形成した(この面をオモテ面と呼ぶ)。ウラ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(商品名;アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)/二酸化珪素(商品名;スノーテックスO、日産化学工業(株)製)=1/2(質量比)を水に分散させて乾燥後の質量で0.2g/m2塗布した。次にオモテ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、上記下塗り液を雲母の塗布量が0.26g/m2となるように塗布し、下塗り層つき支持体を得た。
【0175】
<各感熱記録層用塗布液の塗布>
前記下塗り層つき支持体の上に、下から、前記感熱記録層用塗布液(c)、前記中間層用塗布液、前記感熱記録層用塗布液(b)、前記中間層用塗布液、前記感熱記録層用塗布液(a)、前記光透過率調整層用塗布液、前記保護層用塗布液の順に7層同時に連続塗布し、30℃湿度30%、および40℃湿度30%の条件でそれぞれ乾燥して多色の感熱記録材料を得た。
この際前記感熱記録層用塗布液(a)の塗布量は液中に含まれるジアゾ化合物(A)の塗布量が固形分塗布量で0.078g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(b)の塗布量は液中に含まれるジアゾ化合物(D)の塗布量が固形分塗布量で0.206g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(c)の塗布量は液中に含まれる電子供与性染料(H)の塗布量が固形分塗布量で0.355g/m2となるように塗布を行った。
また、前記中間層用塗布液は(a)と(b)の間は固形分塗布量が2.39g/m2、(b)と(c)の間は固形分塗布量が3.34g/m2、前記光透過率調整層用塗布液は固形分塗布量が2.35g/m2、保護層は固形分塗布量が1.39g/m2となるように塗布を行った。
【0176】
[実施例2]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物2の添加量をを7.3部に変更したこと、及び化合物3の添加量を7.3部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を作製した。
【0177】
[実施例3]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物2の添加量をを3.6部に変更したこと、及び化合物3の添加量を11.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を作製した。
【0178】
[比較例1]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物3の代わりにキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名:タケネートD110N(75%酢酸エチル溶液)、三井武田ケミカル(株)7.3部を用いたこと、化合物2の添加量をを3.7部に変更したこと、及び化合物1の添加量を5.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の感熱記録材料を作製した。
【0179】
[比較例2]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物3を添加しなかったこと、化合物2の添加量を14.7部に変更したこと、及び化合物1の添加量を5.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の感熱記録材料を作製した。
【0180】
[比較例3]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物2を添加しなかったこと、化合物3の添加量を14.7部に変更したこと、及び化合物1の添加量を5.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の感熱記録材料を作製した。
【0181】
<評価>
以上のようにして作製した実施例1〜3、及び比較例1〜3の感熱記録材料に対し、イエロー及びマゼンタの印画定着後、シアンを印画し、シアンの発色濃度を記録エネルギーステップ毎に測定し評価した。具体的には、シアン画像印画前に発光中心波長365nm、出力40Wの紫外線ランプを15秒間照射することによりイエロー及びマゼンタの定着を行い、印画はサーマルヘッドKST(京セラ社製)を用い、単位面積あたりの記録エネルギーが表1の値になるように、サーマルヘッドに対する印加電圧、パルス幅を決めて行った。そして、印画したサンプルの各ステップ毎のシアンの発色濃度をX−rite model310(X−rite Incorporated製)にて測定した。表1にシアン発色濃度を示す。
【0182】
【表1】
【0183】
また、各実施例と各比較例とを比較するため、比較例1と各実施例の比較、比較例2と各実施例の比較、及び比較例3と各実施例の比較を図1〜図3にグラフで示す。
【0184】
図1〜図3より以下のことが分かる。即ち、図1、図3より、各実施例の感熱記録材料は、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に発色することが比較例よりも顕著である。また、図2より、比較例3は低エネルギー印加で発色しないことにおいては各実施例と同じであるが、各実施例は曲線の傾き(γ)が大きく、ハイコントラストであることが分かる。
【0185】
【発明の効果】
本発明によれば、低エネルギー印加では物質を透過せず、発色印字エネルギーに達すると効率よく物質を透過し(高γ化)、そして高エネルギー印加では十分に物質を透過するマイクロカプセルを提供することができる。
また、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少ない感熱記録材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】印加エネルギーに対する発色濃度の関係を、比較例1と各実施例とで比較したグラフである。
【図2】印加エネルギーに対する発色濃度の関係を、比較例2と各実施例とで比較したグラフである。
【図3】印加エネルギーに対する発色濃度の関係を、比較例3と各実施例とで比較したグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱記録材料に使用することができるマイクロカプセル、及び該マイクロカプセルを用いた感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリやプリンター等の記録媒体として普及している感熱記録材料は、主として支持体上に電子供与性染料前駆体の固体分散物を塗布乾燥させた材料である。電子供与性染料前駆体を使用した記録方式は、材料も入手し易くかつ高い発色濃度や発色速度を示す利点を有するが、溶剤等の付着により発色し易く、記録画像の保存性や信頼性に問題があり、多くの改良が検討されてきた。記録画像の保存性を改善するための一つの方法として、電子供与性染料前駆体をマイクロカプセル中に内包し、色素をマイクロカプセル中に形成させることにより、画像の保存性を高める方式が提案されている。この方式によって高い画像安定性を得ることができる。
【0003】
上記以外の感熱記録材料としては、ジアゾ化合物を利用した、いわゆるジアゾ型の感熱記録材料も研究されている。このジアゾ化合物は、フェノール誘導体や活性メチレン基を有するカプラーと呼ばれる化合物などと反応して染料を形成するものであるが、同時に感光性も有し、光照射によりその活性を失うものである。これらの性質を応用し、ジアゾ化合物とカプラーを熱で反応させて画像を形成し、その後、光照射して画像を定着させることができる光定着型感熱記録材料が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、ジアゾ化合物を用いた記録材料は、化学的活性が高いため、低温であってもジアゾ化合物とカプラーが徐々に反応し、使用前の貯蔵寿命が短いという欠点があった。これに対する一つの解決手段として、ジアゾ化合物をマイクロカプセルで包含し、カプラーや水、塩基性化合物から隔離する方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
また、感熱記録材料の応用分野の一つとして、多色感熱記録材料が注目されてきている。感熱記録による多色画像の再現は、電子写真記録方式やインクジェット方式のそれに比べて難しいと言われてきたが、この点に関してはすでに、支持体上に電子供与性染料前駆体と顕色剤を主成分とする感熱発色層又はジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と加熱時に反応して発色するカプラーを含有する感熱発色層を2層以上積層した多色感熱記録材料が提案されている。
【0006】
多色感熱記録材料においては、優れた色再現性を得るためにはマイクロカプセルの加熱時の物質透過特性を高度に制御することが必須である。
【0007】
従来、電子供与性染料前駆体やジアゾ化合物をマイクロカプセル中に包含させるには、一般に有機溶媒中にこれらの化合物を溶解させた油相を水溶性高分子の水溶液(水相)中に加えて乳化分散させる。このとき、壁材となるモノマーあるいはプレポリマーを有機溶媒相側か水相側の何れかあるいは両方に添加しておくことにより有機溶媒相と水相の界面に高分子壁を形成させマイクロカプセルを形成することができる(例えば、非特許文献3、非特許文献4参照。)。形成されるマイクロカプセル壁としては、ゼラチン、アルギン酸塩、セルロース類、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン樹脂、ナイロンなど様々なものがある。特に、ポリウレアやウレタン樹脂は、そのガラス転移温度前後でカプセル壁の物質透過性が大きく変化し、即ちカプセル壁が熱応答性を示し、感熱記録材料を設計するのに好適である。
【0008】
ポリウレタンおよびポリウレア壁を有するマイクロカプセルの製法としては、まず有機溶媒中にジアゾ化合物や電子供与性染料前駆体を溶解し、これに多官能イソシアネート化合物を添加し、この有機相溶液を水溶性高分子水溶液中で乳化させる。その後、水相に重合反応促進の触媒を添加するか又は乳化液の温度を上げて多価多官能イソシアネート化合物を水等の活性水素を有する化合物と重合させてカプセル壁を形成させる方法が従来から知られている。
【0009】
上記ポリウレアあるいはポリウレタン壁の形成材料である多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシナネートとトリメチロールプロパンの付加体、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加体が主として使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。この様に、多価アルコール化合物と多価イソシアネート化合物を付加させて得られる多価イソシアネート化合物は良く知られている。
【0010】
また、この他にも多価イソシアネート化合物を用いた例が知られており(例えば、特許文献3〜6参照。)、さらに3価以上の多価イソシアネート化合物と2官能イソシアネート化合物の併用例が知られている(例えば、特許文献7〜9参照)に記載されている。
【0011】
これらの化合物を利用して各種の色素前駆体を内包するマイクロカプセルが開発され、各種の感熱記録材料に利用されてきた。
【0012】
ところで、感熱記録材料に求められる発色開始温度、発色を開始する熱エネルギーの量は、それぞれの記録システムによって異なり、そのために前述の各種のイソシアネート化合物を組み合わせてカプセル壁の架橋度、ガラス転移温度を変更することで熱応答性の異なるマイクロカプセルが開発されている。例えば、多色感熱記録材料においては、下層に用いられるマイクロカプセルは上層を発色させる為の記録エネルギーが印加された場合には、全く物質を透過させないこと、更に上層を発色させる為の記録エネルギーよりも高い、下層を発色させる為の記録エネルギーが印加された場合には速やかに物質を透過させるという熱応答性が求められる。
【0013】
このような要求を解決するために例えばマイクロカプセルの壁厚を厚くする、マイクロカプセルの平均粒径を大きくする等の方法がある。しかしながら、これらの方法では物質透過に必要なエネルギー量は上昇傾向にはあるものの、高エネルギーを印加した場合でも物質を十分に通さず、色素前駆体から色素の形成が十分有効に進行しない為に十分に高い発色濃度が得られないという問題が生ずる。
【0014】
また、従来から知られている多価イソシアネート化合物では低い印加エネルギーですら物質を透過させ、ひいては発色が起こる。この発色は低濃度ではあるが、これによって画質は大幅に低下する。
【0015】
そこで、カプセル壁を形成するイソシアネート化合物の改良が提案されており、例えばジフェニルメタンジイソシアネートの多量体、フェニルイソシアネートのホルマリン縮合物等の多価芳香族イソシアネート(日本ポリウレタン工業社製の「MR200」等)が汎用されている。しかしながら、このイソシアネートは重縮合反応を用いて合成されるためにイソシアネート化合物自体が着色しており、多量に用いるとマイクロカプセル自体の着色が目立つという問題や、またこのイソシアネートから得られたマイクロカプセルでは光照射によって経時で黄着色が発生するという問題がある。
【0016】
そこで、これらの問題を解決するために新規な多価イソシアネート化合物が提案されている(例えば、特許文献10参照。)。しかしながらこのイソシアネート化合物は合成工程が複雑であり、化合物のコストが高いという問題がある。
【0017】
また、マイクロカプセルを高温高湿条件下、光照射条件下等の各種条件で保存した際に、カブリと呼ばれる地肌部分の発色が発生すると画像品質、画像の視認性を著しく低下させる。このカブリには例えば製造後から使用前の保存時に発生するもの、色素形成反応に定着の機構が含まれていない、即ち電子供与性染料前駆体と顕色剤の組み合わせを含有する感熱記録材料では印画後の画像保存時に発生するもの等がある。感熱記録材料に一般に用いられるマイクロカプセルは熱応答性を有している為に、これらの要求に十分応えているとは言えない。
【0018】
また、特に前記の多色感熱記録材料においては、シアン、マゼンタ、及びイエローのいずれかに発色し得る感熱記録層が設けられており、これらは異なる加熱温度の付与により印字されることにより、単色の感熱記録材料の感熱記録層に比べて更に優れた熱応答性の制御が求められる。従来のイソシアネート化合物から得られるカプセル壁はこの要求を十分に満たすとは言えない。
【0019】
このように、感熱記録材料において低エネルギー印加では物質を透過させず、かつ必要なエネルギーが印加された場合には十分に物質を透過させること、及び高度な保存性を有すること、を同時に達成することは非常に困難であった。
【0020】
【特許文献1】
特開昭62−212190号公報
【特許文献2】
特開平4−26189号公報
【特許文献3】
特開昭61−169281号公報
【特許文献4】
特開平5−168911号公報
【特許文献5】
特開平8−230328号公報
【特許文献6】
特開平8−259486号公報
【特許文献7】
特開平7−88356号公報
【特許文献8】
特開平7−185307号公報
【特許文献9】
特開平7−204496号公報
【特許文献10】
特開平11−92439号公報
【非特許文献1】
佐藤弘次ら著,「画像電子学会誌」,第11巻,第4号,1982年、p.290−296
【非特許文献2】
宇佐美智正ら著,「電子写真学会誌」,第26巻,第2,1987年,p.115−125
【非特許文献3】
近藤朝士著,「マイクロカプセル」,日刊工業新聞社,1970年
【非特許文献4】
近藤保ら著,「マイクロカプセル」,三共出版,1977年
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低エネルギー印加では物質を透過せず、発色印字エネルギーに達すると効率よく物質を透過し(高γ化)、そして高エネルギー印加では十分に物質を透過するマイクロカプセルを提供することを目的とする。
本発明はまた、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少ない感熱記録材料を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
<1> ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルのカプセル壁が、下記化合物(1)、下記化合物(2)、及び下記化合物(3)のイソシアネート化合物の重合により得られるポリマーからなることを特徴とするマイクロカプセルである。
【0023】
【化2】
[XDI:キシリレンジイソシアネート]
【0024】
<2> 支持体上に、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとを含む感熱記録層、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層を有する感熱記録材料であって、前記マイクロカプセルが前記<1>に記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料である。
<3> 支持体上に、2層以上の感熱記録層を有し、各感熱記録層が、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとを含む感熱記録層、及び電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層のいずれかである感熱記録材料であって、前記マイクロカプセルの少なくとも1つが前記<1>に記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料である。<4> 前記顕色剤がフェノール系化合物であることを特徴とする前記<3>に記載の感熱記録材料である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のマイクロカプセル及び感熱記録材料について詳述する。
[マイクロカプセル]
本発明のマイクロカプセルは、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルのカプセル壁が、下記化合物(1)、下記化合物(2)、及び下記化合物(3)のイソシアネート化合物の重合により得られるポリマーからなることを特徴としている。
【0026】
【化3】
[XDI:キシリレンジイソシアネート]
【0027】
本発明のマイクロカプセルにおいて、カプセル壁は、前記化合物(1)〜(3)の重合により得られるポリマーからなるが、化合物(1)〜(3)の重合は、例えば、分子中に2ケ以上の活性水素原子を有する化合物との反応で行なわれることが好ましい。このような活性水素原子を有する化合物の例としては、例えば水の他、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の多価アミン系化合物等、又はこれらの混合物等が挙げられる。これらの内で特に水を用いて重合させることが好ましいが、必要に応じて、水と前述のアルコール、アミン類とを併用してもよい。この結果としてカプセル壁が形成される。
【0028】
本発明のマイクロカプセルは、さらに具体的には、例えば以下のようにして作製することができる。
まず、マイクロカプセルの芯を形成するための疎水性溶媒としては、沸点100〜300℃の高沸点有機溶媒が好ましい。具体的には、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、ジフェニルエタンアルキル付加物、アルキルビフェニル、塩素化パラフィン、トリクレジルフォスフェート等の燐酸系誘導体、マレイン酸−ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸エステル類、及びアジピン酸エステル類等を挙げることができる。これらは2種以上混合して用いてもよい。ジアゾ化合物や電子供与性染料前駆体のこれらの疎水性溶媒に対する溶解度が充分でない場合は、更に低沸点溶剤を併用することができる。併用する低沸点有機溶媒としては、沸点40〜100℃の有機溶媒が好ましく、具体的には酢酸エチル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン及びアセトン等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。低沸点(沸点約100℃以下のもの)の溶媒のみをカプセル芯に用いた場合には、溶媒は蒸散し、カプセル壁とジアゾ化合物や電子供与性染料前駆体のみが存在するいわゆるコアレスカプセルが形成され易い。
【0029】
後述するジアゾ化合物の種類によってはマイクロカプセル化反応中の水相側へ移動する場合があり、これを抑制するために、あらかじめ酸アニオンを水溶性高分子溶液中に適宜添加してもよい。この酸アニオンとしては、PF6−、B(−Ph)4−[Phはフェニル基]、ZnCl2−、CnH2n+1COO−(nは1〜9の整数)及びCpF2p+1SO3−(pは1〜9の整数)を挙げることができる。
【0030】
マイクロカプセル化の際、マイクロカプセル壁を形成するための化合物(1)〜(3)の重合に用いる活性水素を有する化合物としては、一般に水が使用されるが、ポリオールを芯となる有機溶媒中あるいは分散媒となる水溶性高分子溶液中に添加しておき、上記活性水素を有する化合物(マイクロカプセル壁の原料の一つ)として用いることができる。具体的にはプロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等が挙げられる。またポリオールの代わりに、あるいは併用してジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のアミン化合物を使用しても良い。これらの化合物も先の「ポリウレタン樹脂ハンドブック」に記載されている。
【0031】
マイクロカプセルの油相を水相中に分散するための水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びその変性物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム及びアルギン酸ナトリウムを挙げることができる。これらの水溶性高分子は、イソシアネート化合物との反応しないか、極めて反応し難いものが好ましく、たとえばゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め反応性をなくしておくことが好ましい。
【0032】
界面活性剤を油相あるいは水相の何れに添加して使用してもよいが、有機溶媒に対する溶解度が低いために水相に添加する方が容易である。添加量は油相の質量に対し0.1〜5質量%、特に0.5〜2質量%が好ましい。一般に乳化分散に用いる界面活性剤は、比較的長鎖の疎水基を有する界面活性剤が優れているとされており(「界面活性剤便覧」、西一郎ら、産業図書発行(1980))、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等のアルカリ金属塩を用いることができる。
【0033】
界面活性剤(乳化助剤)として芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物や芳香族カルボン酸塩のホルマリン縮合物等の化合物を使用することもできる。具体的には、下記一般式(A)で表わされる化合物が好適に挙げられる。この化合物については特開平6−297856号公報に記載されている。また、アルキルグルコシド系化合物の化合物も同様に使用することができる。具体的には、下記の一般式(B)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
一般式(A)において、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を、XはSO3−又はCOO−を、Mはナトリウム原子又はカリウム原子を、そしてqは1〜20の整数を表す。
【0036】
【化5】
【0037】
一般式(B)において、Rは炭素原子数4〜18のアルキル基を、qは0〜2の整数を表す。
【0038】
本発明のマイクロカプセルにおいては、いずれの界面活性剤も単独で使用しても二種以上適宜併用してもよい。
【0039】
ジアゾ化合物(あるいは電子供与性染料前駆体)、高沸点溶媒等からなる溶液とイソシアネート化合物(本発明の多官能イソシアネート化合物を含む)との混合液(油相)を、界面活性剤及び水溶性高分子からなる水溶液(水相)に添加する。その際、水溶液をホモジナイサー等の高シェア攪拌装置で攪拌させながら、添加することにより乳化分散させる。乳化後、イソシアネート化合物の重合反応触媒を添加するか、乳化物の温度を上昇させてカプセル壁形成反応を行う。
【0040】
調製されたジアゾ化合物を内包したマイクロカプセル液には、更にカップリング反応失活剤を適宜添加することができる。この反応失活剤としての例としては、ハイドロキノン、重亜硫酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、次亜リン酸、塩化第1スズ及びホルマリンを挙げることができる。これらの化合物については、特開昭60−214992号公報に記載されている。また通常、カプセル化の過程で、水相中にジアゾ化合物が溶出することが多いが、これを除去する方法として、濾過処理、イオン交換処理、電気泳動処理、クロマト処理、ゲル濾過処理、逆浸透処理、限外濾過処理、透析処理、活性炭処理等の方法を利用することができる。この中でもイオン交換処理、逆浸透処理、限外濾過処理及び透析処理が好ましく、特に、陽イオン交換体による処理、陽イオン交換体と陰イオン交換体の併用による処理が好ましい。これらの方法については、特開昭61−219688号公報に記載されている。
【0041】
本発明のマイクロカプセルにおいて、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体は、前述のように高沸点溶媒に溶解されてマイクロカプセルに内包されている。ジアゾ化合物及び電子供与性染料前駆体については、以下の本発明の感熱記録材料と共に詳しく説明する。
【0042】
[感熱記録材料]
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセル及びカプラーとを含む感熱記録層、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層を有し、該マイクロカプセルが、前記本発明のマイクロカプセルである。このマイクロカプセルとして前記本発明のマイクロカプセルを用いることで、本発明の感熱記録材料は、低エネルギー印加では発色せず、発色印字エネルギーに達すると効率よく物質を透過し、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少なくなる。
【0043】
感熱記録層は、ジアゾ化合物を内包したマイクロカプセルと、カプラー、必要に応じて、その他の添加剤等の調製液とを適当な割合で混合された塗布液、或いは、電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと、顕色剤(電子受容性化合物)、必要に応じてその他の添加剤等の調製液とを適当な割合で混合された塗布液を支持体上に塗布することで形成することができる。以下に、各材料について説明する。
【0044】
ジアゾ化合物としては、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
【化10】
【0050】
一般式(1)において、Arは、アリール基を表し、R11、R12は、それぞれ炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。R11とR12とは、同一でもよく、また異なっていてもよい。X−は、酸アニオンを表す。
【0051】
一般式(2)において、R14、R15、R16は、それぞれ炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。R14とR15とR16とは、同一でもよく、また異なっていてもよい。Yは、水素原子、又はOR17を表す。R17は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。X−は、酸アニオンを表す。
【0052】
一般式(3)において、Zは水素原子、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又はOR19を表す。R18、R19は、それぞれ炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基を表す。R18とR19とは、同一でもよく、また異なっていてもよい。X−は、酸アニオンを表す。
【0053】
一般式(4)において、R19、R20、R21、R22は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、−OR23、−SR24、−NR25R26、−COR28、ハロゲン原子、−SONR25R26を表す。ここで、R23及びR24はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基を表し、R25及びR26はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を表し、さらに、R25及びR26は互いに連結して、−O−、−S−、−SO2−、−NR27−を含んでいてもよいアルキレン基を表し、R27は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表し、R28は水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、−NR25R26を表す。ここで、R25及びR26は前記したのと同義である。また、Aは−CO−、−SO2−を表し、Bは−SO2R29、−POR30R31を表す。ここで、R29は、アルキル基、アリール基、複素環基、−NR25R26を表す。R30及びR31は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R25及びR26は、前記したのと同義である。
【0054】
一般式(5)において、R32及びR33はそれぞれ独立に炭素数1〜18の置換若しくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリール基を表す。R34はアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシル基、アシル基、又はシアノ基を表す。X−は酸アニオンを表す。一般式(5)で表されるジアゾ化合物は、特開平10−337691に詳細に記載されている。
【0055】
一般式(1)〜(3)、(5)において、X−で表わされる酸アニオンとしては、炭素数1〜9のポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、炭素数1〜9のアルキルスルホン酸イオン、四フッ化ホウ素、テトラフェニルホウ素、ヘキサフルオロリン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオンが挙げられる。
【0056】
以下に、一般式(1)〜(5)で示されるジアゾ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化11】
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
一般式(1)〜(3)、(5)で示されるジアゾ化合物は、既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化することにより得られる。また、一般式(4)で示されるジアゾ化合物は、特願平11−335801、特願平11−324248に記載の方法で合成することができる。
【0066】
一般式(1)〜(5)で表されるジアゾ化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。さらに、色相調製等の諸目的に応じて、一般式(1)〜(5)で表されるジアゾ化合物と既存のジアゾ化合物とを併用してもよい。既存のジアゾ化合物については、成書(The Focal Press London and New York 「Photosensitive Diazo Compounds and their uses」57頁〜86頁(1964)等)に詳しい。
【0067】
ジアゾ化合物の安定化のために塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化スズ等を用いて錯化合物を形成させジアゾ化合物の安定化を行うこともできる。
【0068】
カプラー(マイクロカプセルには内包されない)としては、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成するものであればいずれの化合物も可能である。ハロゲン化銀写真感光材料用のいわゆる4当量カプラーはすべてカプラーとして使用可能である。これらは目的とする色相に応じて選択することが可能である。
【0069】
例えば、カルボニル基の隣にメチレン基を有するいわゆる活性メチレン化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体等があり、具体例として下記のものが挙げられ本発明の目的に合致する範囲で使用される。
【0070】
カプラーとしては、下記一般式(6)で示される化合物が、特に好ましい。
【0071】
【化19】
【0072】
一般式(6)において、E1、E2で表される電子吸引性基は、Hammettのσ値が正である置換基をさし、これらは同一であっても異なっていても良く、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環基、ホスホノ基等が好ましい。アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、1−メチルシクロプロピルカルボニル基、1−エチルシクロプロピルカルボニル基、1−ベンジルシクロプロピルカルボニル基、ベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、テノイル基等のアシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等のオキシカルボニル基、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−〔2,4−ビス(ペンチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、N−〔2,4−ビス(オクチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、モルホリノカルボニル基等のカルバモイル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基、ジエチルホスホノ基等のホスホノ基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−スルホン−2−イル基等の複素環基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基が好ましい。
【0073】
また、E1、E2で表される電子吸引性基は、両者が結合し環を形成してもよい。E1、E2で形成される環としては5ないし6員の炭素環あるいは複素環が好ましい。
【0074】
一般式(6)で示される化合物として具体例には、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、5−アセトアミド−1−ナフトール、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ジアニリド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、5−(2−n−テトラデシルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン、5−フェニル−4−メトキシカルボニル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−(2,5−ジ−n−オクチルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン、N,N’−ジシクロヘキシルバルビツール酸、N,N’−ジ−n−ドデシルバルビツール酸、N−n−オクチル−N’−n−オクタデシルバルビツール酸、N−フェニル−N’−(2,5−ジ−n−オクチルオキシフェニル)バルビツール酸、N,N’−ビス(オクタデシルオキシカルボニルメチル)バルビツール酸、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、6−ヒドロキシ−4−メチル−3−シアノ−1−(2−エチルヘキシル)−2−ピリドン、2,4−ビス−(ベンゾイルアセトアミド)トルエン、1,3−ビス−(ピバロイルアセトアミドメチル)ベンゼン、ベンゾイルアセトニトリル、テノイルアセトニトリル、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、ピバロイルアセトアニリド、2−クロロ−5−(N−n−ブチルスルファモイル)−1−ピバロイルアセトアミドベンゼン、1−(2−エチルヘキシルオキシプロピル)−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(ドデシルオキシプロピル)−3−アセチル−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(4−n−オクチルオキシフェニル)−3−tert−ブチル−5−アミノピラゾール等が挙げられる。
【0075】
カプラーの詳細については、特開平4−201483号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平7−323660号、特開平7−125446号、特開平7−96671号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平9−156229号、特開平9−216468号、特開平9−216469号、特開平9−203472号、特開平9−319025号、特開平10−35113号、特開平10−193801号、特開平10−264532号等の公報に記載されている。
【0076】
一般式(6)で表されるカプラーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
【化20】
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
【化23】
【0081】
電子供与性染料前駆体としてはトリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物等が挙げられるが、特にトリアリールメタン系化合物及びキサンテン系化合物が、発色濃度が高く有用である。
【0082】
電子供与性染料前駆体として具体例には、3−(o−アセトアミド−p−ジプロピルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6ジメチルアミノフタリド(即ちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(1′−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等が挙げられる。
【0083】
顕色剤(電子受容性化合物(マイクロカプセルには内包されない))としてはフェノール誘導体(フェノール系化合物)、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。例えば、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル}ベンゼン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸及びその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸及びその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールを挙げることができる。本発明においては、これらの電子受容性化合物を2種以上任意の比率で併用することができる。
【0084】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、ジアゾ化合物とカプラーとの反応、或いは、電子供与性染料前駆体と顕色剤との反応を促進させる目的で、増感剤を添加することが好ましい。増感剤としては、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましい。その具体例としては、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、p−トルエンスルホンアミド、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルスルホンアミド、4−n−ペンチルオキシフェニルスルホンアミド等が挙げられる。本発明においては、これらの増感剤を2種以上任意の比率で併用することもできる。
【0085】
感熱記録層には、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとの組み合わせを用いる場合、カプラーと共に、色素形成反応を促進させる目的で、乳化分散及び/又は固体分散して微粒子化した塩基性物質を添加するのが一般的である。塩基性物質としては、無機あるいは有機の塩基化合物のほか、加熱時に分解等によりアルカリ物質を放出するような化合物も含まれる。代表的なものとしては、有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素及びチオ尿素さらにそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルホリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォルムアジン類、ピリジン類等の含窒素化合物があげられる。これらの具体例としてはトリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン、アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2−ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、グアニジントリクロロ酢酸塩、N,N’−ジベンジルピペラジン、4,4’−ジチオモルホリン、モルホリニウムトリクロロ酢酸塩、2−アミノベンゾチアゾール、及び2−ベンゾイルヒドラジノベンゾチアゾールが挙げられる。これらは、2種以上併用することもできる。
【0086】
感熱記録層には、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとの組み合わせを用いる場合、カプラーと共に、発色反応を促進させる目的で、前記塩基性物質の他に、発色助剤を添加することができる。発色助剤とは、加熱記録時の発色濃度を高くする、もしくは最低発色温度を低くする物質であり、カプラー、塩基性物質、もしくはジアゾ化合物等の融解点を下げたり、カプセル壁の軟化点を低下せしめる作用により、ジアゾ化合物、塩基性物質、カプラー等が反応しやすい状況を作るためのものである。発色助剤として、例えば低エネルギーで迅速かつ完全に熱印画が行われるように、発色層中にフェノール誘導体、ナフトール誘導体、アルコキシ置換ベンゼン類、アルコキシ置換ナフタレン類、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、ウレイド、ウレタン、スルホンアミド化合物ヒドロキシ化合物、等を加えることができる。
【0087】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、熱発色画像の光及び熱に対する堅牢性を向上させ、又は、定着後の未印字部分の光による黄変を軽減する目的で、以下に示す公知の酸化防止剤等を用いることが好ましい。
【0088】
上記の酸化防止剤については、例えばヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4814262号明細書、アメリカ特許第4980275号明細書等に記載されている。
【0089】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、感熱記録材料や感圧記録材料において既に用いられている公知の各種添加剤を添加することも有効である。これらの各種添加剤の具体例としては、特開昭60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同63−088381号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−043294号公報、同48−033212号公報等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0090】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0091】
これらの酸化防止剤及び各種添加剤の添加量は、ジアゾ化合物1質量部に対して0.05〜100質量部の割合であることが好ましく、特に0.2〜30質量部であることが好ましい。
【0092】
このような公知の酸化防止剤及び各種添加剤はジアゾ化合物と共にマイクロカプセル中に含有させて用いることも、あるいはカプラーや塩基性物質、その他の発色助剤と共に、固体分散物として、もしくは適当な乳化助剤と共に乳化物にして用いることも、あるいはその両方の形態で用いることもできる。また酸化防止剤及び各種添加剤を単独又は複数併用することができるのは勿論である。また、保護層に添加又は存在させることもできる。
【0093】
これらの酸化防止剤及び各種添加剤は同一層に添加しなくてもよい。更にこれらの酸化防止剤及び各種添加剤を組み合わせて複数用いる場合には、アニリン類、アルコキシベンゼン類、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン誘導体、りん化合物、硫黄化合物の様に構造的に分類し、互いに異なる構造のものを組み合わせてもよいし、同一のものを複数組み合わせることもできる。
【0094】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、記録後の地肌部の黄着色を軽減する目的で、光重合性組成物等に用いられる遊離基発生剤(光照射により遊離基を発生する化合物)を添加することができる。遊離基発生剤としては、芳香族ケトン類、キノン類、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、アゾ化合物、有機ジスルフィド類、アシルオキシムエステル類等が挙げられる。添加する量は、ジアゾ化合物1質量部に対して、遊離基発生剤0.01〜5質量部が好ましい。
【0095】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、黄着色を軽減する目的で、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物(以下、ビニルモノマーと呼ぶ)を添加することができる。ビニルモノマーとは、その化学構造中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合(ビニル基、ビニリデン基等)を有する化合物であって、モノマーやプレポリマーの化学形態を持つものである。これらの例として、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。ビニルモノマーはジアゾ化合物1質量部に対して0.2〜20質量部の割合で用いる。
【0096】
前記遊離基発生剤やビニルモノマーは、ジアゾ化合物又は電子共与性染料前駆体と共にマイクロカプセル中に含有して用いることもできる。
【0097】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、酸安定剤としてクエン酸、酒石酸、シュウ酸、ホウ酸、リン酸、ピロリン酸等を添加することができる。
【0098】
感熱記録層において、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に用いられるバインダーとしては、公知の水溶性高分子化合物やラテックス類等を使用することができる。水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、エピクロルヒドリン変成ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド等及びこれらの変成物等が挙げられ、ラテックス類としては、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
【0099】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に用いられる顔料としては、有機、無機を問わず公知のものを使用することができる。具体的には、カオリン、焼成カオリン、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトポン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、マイクロバルーン、尿素−ホルマリンフィラー、ポリエステルパーティクル、セルロースフィラー等が挙げられる。
【0100】
感熱記録層には、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)と共に、必要に応じて、公知のワックス、帯電防止剤、消泡剤、導電剤、蛍光染料、界面活性剤、紫外線吸収剤及びその前駆体等各種添加剤を添加することもできる。
【0101】
感熱記録層において、カプラー又は顕色剤(電子受容性化合物)、及び必要に応じて、前述の各種添加剤(増感剤、塩基性物質等)等の調製液は、これら材料を、適宜混合して、別々に乳化分散或いは固体分散して微粒化し添加、又は適宜混合してから、乳化分散或いは固体分散して微粒化し添加することができる。乳化分散する方法は、有機溶媒中にこれらの化合物を溶解し、水溶性高分子水溶液をホモジナイザー等で攪拌中に添加することが好ましい。固体分散する方法は、これらの材料を水溶性高分子水溶液中に投入しボールミル等の公知の分散手段を用いて微粒子化することが好ましい。乳化分散或いは固体分散して微粒子化を促進するにあたり、前述の疎水性有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子を使用することが好ましい。また、微粒子化に際しては、熱感度、保存性、記録層の透明性、製造適性等の多色感熱記録材料及びその製造方法に必要な特性を満足しうる粒子直径を得るように行うことが好ましい。
【0102】
感熱記録層において、カプラーの添加量は、ジアゾ化合物1モルに対して1〜10モル、好ましくは2〜6モルが適当である。塩基性物質の添加量は、塩基性の強度により異なるがジアゾ化合物1モルに対して0.5〜5モルが適当である。顕色剤の添加量は、電子供与性染料前駆体1モルに対して0.5〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましく3〜15モルが適当である。熱増感剤の添加量は、ジアゾ化合物或いは電子供与性染料前駆体1モルに対して一般に0.1〜20モル、好ましくは0.5〜10モルが適当である。
【0103】
感熱記録層は、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を含有したマイクロカプセルと、カプラー又は顕色剤、及び必要に応じて上述した各種添加剤を含有した調製液とを混合して塗布液を調製し、紙や合成樹脂フィルム等の支持体の上にバー塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等の塗布方法により塗布乾燥して設けることが好ましい。また、感熱記録層は、固型分2.5〜30g/m2になるように設けることが好ましい。
【0104】
本発明の感熱記録材料において、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を含有したマイクロカプセル、カプラー、顕色剤、その他塩基性物質等が同一層に含まれていてもよいが、別層に含まれるような積層型の構成をとることもできる。また、支持体の上に特願昭59−177669号明細書等に記載されているような中間層を設けた後、感熱記録層を塗布することもできる。
【0105】
本発明の感熱記録材料において、単層構造(単色)の場合、感度調整等の目的で、同一感熱記録層に、前記本発明のマイクロカプセルと共に、その他、従来公知のマイクロカプセルを併用することもできる。この場合における前記本発明のマイクロカプセルは、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上で併用することが好適である。
【0106】
本発明の感熱記録材料には、必要に応じて感熱記録層の表面に保護層を設けてもよい。保護層は必要に応じて二層以上積層してもよい。保護層に用いる材料としては、ポリビニルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン類、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子化合物、及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等のラテックス類が用いられる。保護層の水溶性高分子化合物を架橋して、より一層保存安定性を向上させることもでき、その架橋剤としては公知の架橋剤を使用することができる。具体的にはN−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、尿素−ホルマリン等の水溶性初期縮合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物類、硼酸、硼砂等の無機系架橋剤、ポリアミドエピクロルヒドリン等が挙げられる。保護層には、さらに公知の顔料、金属石鹸、ワックス、界面活性剤等を使用することもできる。保護層の塗布量は0.2〜5g/m2が好ましく、さらには0.5〜2g/m2が好ましい。またその膜厚は0.2〜5μmが好ましく、特に0.5〜2μmが好ましい。
【0107】
本発明の感熱記録材料に、保護層を設ける場合、保護層中に公知の紫外線吸収剤やその前駆体を含有してもよい。
【0108】
本発明の感熱記録材料において、ジアゾ化合物を用いた感熱記録層を設ける場合、支持体上に感熱記録層と光定着する波長領域における光透過率が定着後に減少する光透過率調整層を設け、さらにその上に保護層を設けることが好ましい。
【0109】
本発明の感熱記録材料において、光透過率調整層は、紫外線吸収剤の前駆体として機能する成分を含有しており、定着に必要な領域の波長の光照射前は紫外線吸収剤として機能しないので、光透過率が高く、感熱記録層を定着する際、定着に必要な領域の波長を十分に透過させ、また、可視光線の透過率も高く、感熱記録層の定着に支障は生じない。
【0110】
この紫外線吸収剤の前駆体は、感熱記録層の光照射による定着に必要な領域の波長の光照射が終了した後、光又は熱等で反応することにより紫外線吸収剤として機能するようになり、紫外線領域の波長の光は紫外線吸収剤によりその大部分が吸収され、透過率が低くなり、感熱記録材料の耐光性が向上するが、可視光線の吸収効果がないから、可視光線の透過率は実質的に変わらない。
【0111】
本発明の感熱記録材料において、光透過率調整層は、感熱記録材料中に少なくとも1層設けることができ、最も好ましくは感熱記録層と保護層との間に形成するのがよいが、光透過率調整層を保護層と兼用するようにしてもよい。光透過率調整層の特性は、感熱記録層の特性に応じて任意に選定することができる。
【0112】
本発明の感熱記録材料において、支持体としては、通常の感圧紙や感熱紙、乾式や湿式のジアゾ複写紙等に用いられる紙支持体はいずれも使用することができる他、酸性紙、中性紙、コート紙、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙、プラスチックフィルム等を使用することができる。
【0113】
支持体のカールバランスを補正するため或いは、裏面からの耐薬品性を向上させる目的で、バックコート層を設けてもよく、また裏面に接着剤層を介して剥離紙を組み合わせてラベルの形態にしてもよい。このバックコート層についても上記保護層と同様にして設けることができる。
【0114】
本発明の感熱記録材料において、記録面にサーマルヘッド等で加熱すると、マイクロカプセルのカプセル壁が軟化し、カプセル外のカプラーと塩基化合物がカプセル内に進入して発色する。発色後はジアゾ化合物の吸収波長の光を照射する事により、ジアゾ化合物が分解しカプラーとの反応性を失うため画像の定着が行なわれる。
【0115】
また、定着光源としては、種々の蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等が用いられ、この発光スペクトルが感熱記録材料で用いたジアゾ化合物の吸収スペクトルにほぼ一致していることが効率よく定着でき好ましい。本発明においては、発光中心波長が360〜440nmの定着光源が特に好ましい。
【0116】
(多色感熱記録材料)
本発明の感熱記録材料は、多色とする場合、支持体上に、シアン、マゼンタ及びイエローのいずれかに発色し得る2層以上の感熱記録層を有し、各感熱記録層がジアゾ化合物を内包するマイクロカプセル及びカプラー、又は、電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセル及び顕色剤を含み、該感熱記録層の少なくとも1層におけるマイクロカプセルが、前記本発明のマイクロカプセルである。このマイクロカプセルとして前記本発明のマイクロカプセルを用いることで、本発明の多色感熱記録材料は、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少なくなる。また、各感熱記録層、支持体、及び保護層、光透過率調整層等のその他の層は、前記本発明の感熱記録材料と同様に作製することができる。
【0117】
本発明の感熱記録材料において、本発明のマイクロカプセルは、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能である観点から、最も高温(高エネルギー印加)で発色させる感熱記録層(一般的には、最下層)に含有することが好ましい。これにより、低温発色(低エネルギー印加)する感熱記録層発色時に、本発明のマイクロカプセル含有する感熱記録層が発色することなく、低温発色する感熱記録層の純粋な発色画像を得ることができ、画像品質が向上する。
【0118】
本発明の感熱記録材料は、2層以上の感熱記録層に、それぞれ光分解波長が異なる光分解性ジアゾ化合物を用いることにより作製することができる。また、2層以上の感熱記録層の色相を変えることにより、フルカラーの多色感熱記録材料となる。例えば、各感熱記録層の発色色相を減色混合における3原色、イエロー、マゼンタ、シアンとなるように選べばフルカラーの画像記録が可能となる。この場合、支持体面に直接、積層(感熱記録層の最下層)される感熱記録層の発色機構は、ジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとからなるジアゾ発色系、電子供与性染料と顕色剤とからなるロイコ発色系、塩基性化合物と接触して塩基発色する塩基発色系、キレート発色系、求核剤と反応して脱離反応を起こし発色する発色系等のいずれでもよく、この感熱記録層上に最大吸収波長が異なるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを各々含有する感熱記録層を2層設け、この層上に光透過率調整層、保護層を順次設けるのが望ましい。
【0119】
本発明の感熱記録材料において、感熱記録層として、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層とを含有することが好ましい。
【0120】
本発明の感熱記録材料としては、支持体上に、電子供与性染料と電子受容性化合物を含有する感熱記録層と、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、を順次設け、この層上に光透過率調整層を設けたものが好ましい。
【0121】
本発明の感熱記録材料としては、支持体上に、最大吸収波長310±20nm以下のジアゾ化合物と、該ジアゾ化合物と呈色反応をするカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長360±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、最大吸収波長400±20nmであるジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と反応し呈色するカプラーとを含有する感熱記録層と、を順次設け、この層上に光透過率調整層を設けたものが好ましい。
【0122】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層を複数積層するため、感熱記録層相互の混色を防ぐ目的で、各感熱記録層間に中間層を設けることもできる。この中間層はゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物からなり、適宜各種添加剤を含んでいてもよい。
【0123】
本発明の感熱記録材料及びその記録方法についてさらに詳しく説明する。
まず初めに低エネルギーの熱記録でジアゾ化合物を含有する最外層の感熱層(第1感熱記録層、通常イエロー発色層)を発色させた後、該感熱層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて全面光照射して、最上層の感熱層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。
【0124】
次いで、前回より高エネルギーで、第1層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光とは異なった光吸収波長域を有するジアゾ化合物を含有する第2層目の感熱層(第2感熱記録層、通常マゼンタ発色層)を発色させた後、該ジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて再度全面光照射し、これによって第2層目の加熱層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。最後に、更に高エネルギーで、最内層(第3感熱記録層、通常シアン発色層)の電子供与性染料前駆体を含有する層(第3層)を発色させて画像記録を完了する。
【0125】
上記の場合には、最外層及び第2層を透明な感熱層とすることが、各発色が鮮やかになるので好ましい。
【0126】
また、本発明においては、支持体として透明な支持体を用い、上記3層のうち何れか一層を透明な支持体の裏面に塗布することにより、多色画像を得ることもできる。この場合には、画像を見る側と反対側の最上層の感熱記録層は透明である必要はない。
【0127】
上記ジアゾ化合物の光分解に使用する光源としては、通常紫外線ランプを使用する。紫外線ランプは管内に水銀蒸気を充填した蛍光管であり、管の内壁に塗布する蛍光体の種類により種々の発光波長を有する蛍光管を得ることができる。
【0128】
多色感熱記録材料においては、上記第3感熱記録層を適当なジアゾ化合物とカプラーとの組合せで作製することも可能である。
【0129】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
[実施例1]
<フタル化ゼラチン溶液の調製>
フタル化ゼラチン(商品名:MGPゼラチン、ニッピコラーゲン(株)製)32部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、大東化学工業所(株)製)0.9143部、イオン交換水367.1部を混合し、40℃にて溶解し、フタル化ゼラチン水溶液を得た。
【0130】
<アルカリ処理ゼラチン溶液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)25.5部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、大東化学工業所(株)製)0.7286部、水酸化カルシウム0.153部、イオン交換水143.6部を混合し、50℃にて溶解し、乳化物作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0131】
(1)イエロー感熱記録層液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)の調製>
酢酸エチル16.1部に、下記ジアゾニウム化合物(A)(最大吸収波長420nm)2.2部、下記ジアゾニウム化合物(B)(最大吸収波長420nm)2.2部、モノイソプロピルビフェニル4.8部、フタル酸ジフェニル4.8部、およびジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(商品名:ルシリンTPO,BASFジャパン(株)製)0.4部を添加し40℃に加熱して均一に溶解した。この混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)8.6部を添加し、均一に攪拌し混合液(I)を得た。
【0132】
【化24】
【0133】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液58.6部にイオン交換水16.3部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.34部添加し、混合液(II)を得た。
【0134】
混合液(II)に混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水20部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.36μmであった。
【0135】
<カプラー化合物乳化液(a)の調製>
酢酸エチル33.0部に下記カプラー化合物(C)9.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)9.9部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))20.8部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’,6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.3部、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)13.6部、4−n−ペンチルオキシベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)6.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.2部を溶解し、混合液(III)を得た。
【0136】
【化25】
【0137】
別途前記アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(IV)を得た。
【0138】
混合液(IV)に混合液(III)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が26.5質量%になるように濃度調節を行った。得られたカプラー化合物乳化物の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.21μmであった。
【0139】
更に上記カプラー化合物乳化物100部に対して、SBRラテックス(商品名SN−307,48%液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5%に濃度調整したものを9部添加して均一に撹拌してカプラー化合物乳化液(a)を得た。
【0140】
<塗布液(a)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー化合物分乳化液(a)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が2.2/1になるように混合し、イエローの感熱記録層用塗布液(a)を得た。
【0141】
(2)マゼンタ感熱記録層液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(b)の調製>
酢酸エチル15.1部に、下記ジアゾニウム化合物(D)(最大吸収波長365nm)2.8部、フタル酸ジフェニル3.8部、フェニル2−ベンゾイロキシ安息香酸エステル3.9部及び下記化合物(E)(商品名;ライトエステルTMP,共栄油脂化学(株)製)4.2部、及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)0.1部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)2.5部とキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)6.8部を添加し、均一に攪拌し混合液(V)を得た。
【0142】
【化26】
【0143】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液55.3部にイオン交換水21.0部添加、混合し、混合液(VI)を得た。
混合液(VI)に混合液(V)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水24部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.43μmであった。
【0144】
<カプラー化合物乳化液(b)の調製>
酢酸エチル36.9部に下記カプラー化合物(E)11.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)14.0部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))14.0部、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン14部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’、6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.5部、下記化合物(F)3.5部、リン酸トリクレジル1.7部、マレイン酸ジエチル0.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.5部を溶解し、混合液(VII)を得た。
【0145】
【化27】
【0146】
別途アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(VIII)を得た。
【0147】
混合液(VIII)に混合液(VII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が24.5質量%になるように濃度調節を行い、カプラー化合物乳化液(b)を得た。得られたカプラー化合物乳化液の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.22μmであった。
【0148】
<塗布液(b)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー化合物分乳化液(b)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が3.5/1になるように混合した。さらに、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)をカプセル液量10部に対し、0.2部になるように混合し、マゼンタの感熱記録層用塗布液(b)を得た。
【0149】
(3)シアン感熱記録層液の調製
<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>
酢酸エチル17.6部に、下記電子供与性染料前駆体(G)7.6部、1−メチルプロピルフェニル−フェニルメタン及び1−(1−メチルプロピルフェニル)−2−フェニルエタンの混合物(商品名:ハイゾールSAS−310,日本石油(株)製)10部、Irgaperm2140(チバガイギー(株))10部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材として、化合物2(商品名:TF469−F、(50%酢酸エチル溶液)、三井武田ケミカル(株))を11.0部、化合物3(商品名:タケネートD117N(50%酢酸エチル溶液)、三井武田ケミカル(株))を3.6部、化合物1(商品名:ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業(株))5.4部を添加し、均一に攪拌し混合液(IX)を得た。
【0150】
【化28】
【0151】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液28.8部にイオン交換水9.5部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.17部およびドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(10%水溶液)4.3部を添加混合し、混合液(X)を得た。
【0152】
混合液(X)に混合液(IX)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水50部、テトラエチレンペンタミン0.12部を加え均一化し、65℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行ないカプセル液の固形分濃度が33%になるように濃度調節しマイクロカプセル液を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で1.00μmであった。
【0153】
更に上記マイクロカプセル液100部に対して、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム25%水溶液(商品名;ネオペレックスF−25、花王(株)製)3.7部と4,4’−ビストリアジニルアミノスチルベン−2,2’−ジスルフォン誘導体を含む蛍光増白剤(商品名;Kaycoll BXNL、日本曹達(株)製)4.2部を添加して均一に撹拌してマイクロカプセル分散液(c)を得た。
【0154】
<電子受容性化合物乳化液(c)の調製>
酢酸エチル50.0部に、本発明に係るサリチル酸誘導体金属塩のジオール付加体(化合物No.5)20.0部、リン酸トリクレジル20.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA41C 70%メタノール溶液、竹本油脂(株)製)5.5部を溶解し、混合液(XI)を得た。
別途アルカリ処理ゼラチン水溶液46.0部にイオン交換水200部を混合し、混合液(XII)を得た。
【0155】
<電子受容性化合物分散液(c)の調製>
前記フタル化ゼラチン水溶液11.3部にイオン交換水30.1部、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールP、三井石油化学(株)製)15部、2%の2−エチルヘキシルコハク酸ナトリウム水溶液3.8部を加えて、ボールミルにて一晩分散した後、分散液を得た。この分散液の、固形分濃度は26.6%であった。
【0156】
上記分散液100部に、前記アルカリ処理ゼラチン水溶液45.2部を加えて、30分攪拌した後、分散液の固形分濃度が23.5%となるようにイオン交換水を加えて電子受容性化合物分散液(c)を得た。
【0157】
<塗布液(c)の調製>
前記電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(c)および前記電子受容性化合物分散液(c)を、電子受容性化合物/電子供与性染料前駆体の質量比が10/1になるように混合し、シアンの感熱記録層用塗布液(c)を得た。
【0158】
(4)中間層用塗布液の調製
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)100.0部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)2.857部、水酸化カルシウム0.5部、イオン交換水521.643部を混合し、50℃にて溶解し、中間層作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0159】
前記中間層作製用ゼラチン水溶液10.0部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)0.05部、硼酸(4.0質量%水溶液)1.5部、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)0.19部、下記化合物(I)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液3.42部、下記化合物(I’)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液1.13部、イオン交換水0.67部を混合し、中間層用塗布液とした。
【0160】
【化29】
【0161】
(5)光透過率調整層用塗布液の調製
(v−1)紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液の調製
酢酸エチル71部に紫外線吸収剤前駆体として[2−アリル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェニル]ベンゼンスルホナート14.5部、2,2’−t−オクチルハイドロキノン5.0部、燐酸トリクレジル1.9部、α−メチルスチレンダイマー(商品名:MSD−100,三井化学(株)製)5.7部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)0.45部を溶解し均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物 (商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)54.7部を添加し、均一に攪拌し紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を得た。
【0162】
別途、イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318,クラレ(株)製)52部に30質量%燐酸水溶液8.9部、イオン交換水532.6部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液を調製した。
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液516.06部に前記紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて20℃の下で乳化分散した。得られた乳化液にイオン交換水254.1部を加え均一化した後、40℃下で攪拌しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトMB−3(オルガノ(株)製)94.3部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除きカプセル液の固形分濃度が13.5%になるように濃度調節した。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.23±0.05μmであった。このカプセル液859.1部にカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス(商品名:SN−307,(48質量%水溶液),住友ノーガタック(株)製)2.416部、イオン交換水39.5部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液を得た。
【0163】
(v−2) 光透過率調整層用塗布液の調製
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液1000部、下記化合物(J)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))5.2部、4質量%水酸化ナトリウム水溶液7.75部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)73.39部を混合し、光透過率調整層用塗布液を得た。
【0164】
【化30】
【0165】
(6)保護層用塗布液の調製
(vi−1)保護層用ポリビニルアルコール溶液の調製
ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物(商品名:EP−130,電気化学工業(株)製)160部、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液(商品名:ネオスコアCM−57,(54質量%水溶液),東邦化学工業(株)製)8.74部、イオン交換水3832部を混合し、90℃のもとで1時間溶解し均一な保護層用ポリビニルアルコール溶液を得た。
【0166】
(vi−2)保護層用顔料分散液の調製
硫酸バリウム(商品名:BF−21F,硫酸バリウム含有量93%以上,堺化学工業(株)製)8部に陰イオン性特殊ポリカルボン酸型高分子活性剤(商品名:ポイズ532A(40質量%水溶液),花王(株)製)0.2部、イオン交換水11.8部を混合し、ダイノミルにて分散して保護層用顔料分散液を調製した。この分散液は粒径測定(LA−910,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.15μm以下であった。
【0167】
上記硫酸バリウム分散液45.6部に対し、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO(20質量%水分散液)、日産化学(株)製)8.1部を添加して目的の分散物を得た。
【0168】
(vi−3)保護層用マット剤分散液の調製
小麦澱粉(商品名:小麦澱粉S,新進食料工業(株)製)220部に1−2ベンズイソチアゾリン3オンの水分散物(商品名:PROXEL B.D,I.C.I(株)製)3.81部、イオン交換水1976.19部を混合し、均一に分散し、保護層用マット剤分散液を得た。
【0169】
(vi−4) 保護層用塗布ブレンド液の調製
前記保護層用ポリビニルアルコール溶液1000部に前記化合物(K)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))40部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム (三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)50部、前記保護層用顔料分散液49.87部、前記保護層用マット剤分散液16.65部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115,20.5質量%水溶液,中京油脂(株)製)48.7部を均一に混合し保護層用塗布ブレンド液を得た。
【0170】
(7)下塗り層つき支持体の作製
<下塗り層液の調製>
酵素分解ゼラチン(平均分子量:10000、PAGI法粘度:1.5mPa・s、PAGI法ゼリー強度:20g)40部をイオン交換水60部に加えて40℃で攪拌溶解して下塗り層用ゼラチン水溶液を調製した。
【0171】
別途水膨潤性の合成雲母(アスペクト比:1000、商品名:ソマシフME100,コープケミカル社製)8部と水92部とを混合した後、ビスコミルで湿式分散し、平均粒径が2.0μmの雲母分散液を得た。この雲母分散液に雲母濃度が5質量%となるように水を加え、均一に混合し、所望の雲母分散液を調製した。
【0172】
40℃の40質量%の前記ゼラチン水溶液100部に、水120部およびメタノール556部を加え、十分攪拌混合した後、5質量%前記雲母分散液208部を加えて、十分攪拌混合し、1.66質量%ポリエチレンオキサイド系界面活性剤9.8部を加えた。そして液温を35℃から40℃に保ち、エポキシ化合物のゼラチン硬膜剤7.3部を加えて下塗り層用塗布液(5.7質量%)を調製し、下塗り用塗布液を得た。
【0173】
<下塗り層つき支持体の作製>
LBPS 50部LBPK 50部からなる木材パルプをデイスクリファイナーによりカナデイアンフリーネス300ccまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、硫酸アルミニウム1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部をいずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し長網抄紙機により坪量114g/m2の原紙を抄造しキャレンダー処理によって厚み100μmに調整した。
【0174】
次に原紙の両面にコロナ放電処理を行った後、溶融押し出し機を用いてポリエチレンを樹脂厚36μmとなるようにコーテイングしマット面からなる樹脂層を形成した(この面をウラ面と呼ぶ)。次に上記樹脂層を形成した面とは反対側に溶融押し出し機を用いてアナターゼ型二酸化チタンを10質量%及び微量の群青を含有したポリエチレンを樹脂厚50μmとなるようにコーテイングし光沢面からなる樹脂層を形成した(この面をオモテ面と呼ぶ)。ウラ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(商品名;アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)/二酸化珪素(商品名;スノーテックスO、日産化学工業(株)製)=1/2(質量比)を水に分散させて乾燥後の質量で0.2g/m2塗布した。次にオモテ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、上記下塗り液を雲母の塗布量が0.26g/m2となるように塗布し、下塗り層つき支持体を得た。
【0175】
<各感熱記録層用塗布液の塗布>
前記下塗り層つき支持体の上に、下から、前記感熱記録層用塗布液(c)、前記中間層用塗布液、前記感熱記録層用塗布液(b)、前記中間層用塗布液、前記感熱記録層用塗布液(a)、前記光透過率調整層用塗布液、前記保護層用塗布液の順に7層同時に連続塗布し、30℃湿度30%、および40℃湿度30%の条件でそれぞれ乾燥して多色の感熱記録材料を得た。
この際前記感熱記録層用塗布液(a)の塗布量は液中に含まれるジアゾ化合物(A)の塗布量が固形分塗布量で0.078g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(b)の塗布量は液中に含まれるジアゾ化合物(D)の塗布量が固形分塗布量で0.206g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(c)の塗布量は液中に含まれる電子供与性染料(H)の塗布量が固形分塗布量で0.355g/m2となるように塗布を行った。
また、前記中間層用塗布液は(a)と(b)の間は固形分塗布量が2.39g/m2、(b)と(c)の間は固形分塗布量が3.34g/m2、前記光透過率調整層用塗布液は固形分塗布量が2.35g/m2、保護層は固形分塗布量が1.39g/m2となるように塗布を行った。
【0176】
[実施例2]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物2の添加量をを7.3部に変更したこと、及び化合物3の添加量を7.3部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を作製した。
【0177】
[実施例3]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物2の添加量をを3.6部に変更したこと、及び化合物3の添加量を11.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を作製した。
【0178】
[比較例1]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物3の代わりにキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名:タケネートD110N(75%酢酸エチル溶液)、三井武田ケミカル(株)7.3部を用いたこと、化合物2の添加量をを3.7部に変更したこと、及び化合物1の添加量を5.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の感熱記録材料を作製した。
【0179】
[比較例2]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物3を添加しなかったこと、化合物2の添加量を14.7部に変更したこと、及び化合物1の添加量を5.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の感熱記録材料を作製した。
【0180】
[比較例3]
実施例1の「(3)シアン感熱記録層液の調製の<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(c)の調製>において、化合物2を添加しなかったこと、化合物3の添加量を14.7部に変更したこと、及び化合物1の添加量を5.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の感熱記録材料を作製した。
【0181】
<評価>
以上のようにして作製した実施例1〜3、及び比較例1〜3の感熱記録材料に対し、イエロー及びマゼンタの印画定着後、シアンを印画し、シアンの発色濃度を記録エネルギーステップ毎に測定し評価した。具体的には、シアン画像印画前に発光中心波長365nm、出力40Wの紫外線ランプを15秒間照射することによりイエロー及びマゼンタの定着を行い、印画はサーマルヘッドKST(京セラ社製)を用い、単位面積あたりの記録エネルギーが表1の値になるように、サーマルヘッドに対する印加電圧、パルス幅を決めて行った。そして、印画したサンプルの各ステップ毎のシアンの発色濃度をX−rite model310(X−rite Incorporated製)にて測定した。表1にシアン発色濃度を示す。
【0182】
【表1】
【0183】
また、各実施例と各比較例とを比較するため、比較例1と各実施例の比較、比較例2と各実施例の比較、及び比較例3と各実施例の比較を図1〜図3にグラフで示す。
【0184】
図1〜図3より以下のことが分かる。即ち、図1、図3より、各実施例の感熱記録材料は、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に発色することが比較例よりも顕著である。また、図2より、比較例3は低エネルギー印加で発色しないことにおいては各実施例と同じであるが、各実施例は曲線の傾き(γ)が大きく、ハイコントラストであることが分かる。
【0185】
【発明の効果】
本発明によれば、低エネルギー印加では物質を透過せず、発色印字エネルギーに達すると効率よく物質を透過し(高γ化)、そして高エネルギー印加では十分に物質を透過するマイクロカプセルを提供することができる。
また、低エネルギー印加では発色せず、高エネルギー印加では十分に高い発色濃度を実現可能であり、且つ保存時のカブリ、光照射による経時での黄着色が少ない感熱記録材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】印加エネルギーに対する発色濃度の関係を、比較例1と各実施例とで比較したグラフである。
【図2】印加エネルギーに対する発色濃度の関係を、比較例2と各実施例とで比較したグラフである。
【図3】印加エネルギーに対する発色濃度の関係を、比較例3と各実施例とで比較したグラフである。
Claims (4)
- 支持体上に、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとを含む感熱記録層、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層を有する感熱記録材料であって、
前記マイクロカプセルが請求項1に記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料。 - 支持体上に、2層以上の感熱記録層を有し、各感熱記録層が、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーとを含む感熱記録層、及び電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤とを含む感熱記録層のいずれかである感熱記録材料であって、
前記マイクロカプセルの少なくとも1つが請求項1に記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料。 - 前記顕色剤がフェノール系化合物であることを特徴とする請求項3に記載の感熱記録材料。
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---|---|---|---|
JP2002310785A JP2004142301A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | マイクロカプセル及び感熱記録材料 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
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CN112829490B (zh) * | 2020-12-29 | 2023-02-17 | 乐凯医疗科技有限公司 | 一种环保型热敏记录材料 |
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