JP2004216751A - 多色感熱記録材料及び記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低エネルギー記録が可能で、したがって、高速記録を行っても印画障害を起こすことがない、又は少ない多色感熱記録材料を提供すること。
【解決手段】支持体上に、支持体に近い側から第1の感熱記録層、第2の感熱記録層及び第3の感熱記録層をこの順に有する多色感熱記録材料であって、少なくとも1つの感熱記録層が赤外線吸収色素を含み、かつ第2及び第3の感熱記録層が、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとを含有する多色感熱記録材料、及び前記多色感熱記録材料の赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録する、多色感熱記録材料の記録方法。
【選択図】 図1
【解決手段】支持体上に、支持体に近い側から第1の感熱記録層、第2の感熱記録層及び第3の感熱記録層をこの順に有する多色感熱記録材料であって、少なくとも1つの感熱記録層が赤外線吸収色素を含み、かつ第2及び第3の感熱記録層が、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとを含有する多色感熱記録材料、及び前記多色感熱記録材料の赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録する、多色感熱記録材料の記録方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも1層を赤外レーザー光書き込み等の非接触記録が可能な多色感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルカラー画像を得る感熱記録方式はいくつか知られているが、直接感熱方式でフルカラー画像を得ることは一般に難しく、何らかの工夫が必要である。また、近年、フルカラー画像を得るためのプリント時間の高速化が求められている。
直接感熱方式でフルカラー画像を得る手段はこれまで種々検討されているが、例えば以下の特許文献1には、電子供与性無色染料前駆体と電子受容性化合物を組み合わせた第1の感熱記録層と、感光波長が異なる2種のジアゾニウム塩化合物とそれぞれのジアゾニウム塩化合物と反応して異なった色相に発色するカプラーを組み合わせた第2及び第3の感熱記録層との、合計3つの感熱記録層を設けた多色感熱記録材料を用いることにより、直接感熱方式でフルカラーを得る方式が提案されている。
【0003】
前記多色感熱記録材料の第2及び第3の感熱記録層において、2種のジアゾニウム塩化合物の感光波長域は、それぞれ極大吸収波長が400±20nmと360±20nmのものであり、支持体から見て近い方の層(前記公報中、「第二の感熱記録層」と表示されている)に極大吸収波長360±20nmのジアゾニウム塩化合物(B’)を用い、その上の層(遠い方の層、前記公報中では「第三の感熱記録層」と表示されている)に極大吸収波長400±20nmのジアゾニウム塩化合物(A’)を用いる構成が提案されている。
前記多色感熱記録材料の記録方法としては、第3の感熱記録層を熱印字して発色させ、次いで第3の感熱記録層のジアゾニウム塩化合物(A’)を光照射により分解する。その後に第二の感熱記録層を熱印字して発色させ、次いで第2の感熱記録層のジアゾニウム塩化合物(B’)を光照射により分解する手順が採用されている。
そして前記方式によるフルカラー作製は、インクリボンに塗布された染料を受像紙に転写するいわゆる熱転写方式に比べて、ジアゾニウム塩化合物の光分解工程が余分に2つあるので、その分プリント時間は長くなる。そこで、プリント時間を短くするためには、ジアゾニウム塩化合物の光分解工程をできるだけ短時間で行うことが必要とされる。
【0004】
また、前記方式においては、第3の感熱記録層を低熱エネルギーで、第2の感熱記録層を中熱エネルギーで、第1の感熱記録層を高熱エネルギーで記録するといったように3つ領域の熱エネルギーを分けて印字するが、当然のことながら熱エネルギーが高くなるに従い記録エネルギーは増大し、また、その結果記録時間も長くなる。
したがって、熱印字を行う感熱記録材料において、より低熱エネルギー(高感度記録)で、また、より高速記録を行えるものが望まれる。
また、高速で熱印字する場合、サーマルヘッドを用いる接触型記録では、ヘッドと記録面の摩擦が原因となり種々の印画障害を起こす。したがって、このような観点からみると、高速で熱記録する場合は、低熱エネルギーでかつ非接触記録することが有利と考えられる。
【0005】
非接触記録方式としては、光熱変換を利用した記録方式が、既に提案されている。中でもレーザービームを用いる方式は、照射方向に対するレーザー光の光拡散がない点で記録ヘッドとしては好ましい。このようなレーザー光を用いて記録する感熱記録方法は、以下の特許文献2及び3等に開示されている。
前記のレーザー光を用いて記録が可能な感熱記録方法には、レーザービームを吸収して発熱する光熱変換材料が必要である。そして該光熱変換材料は、感熱記録材料の感熱記録層に含有させる方法、あるいは、光熱変換材料を塗布したシートを感熱記録層に密着させる方法などが考えられる。非接触方式という点では前者が好ましいが、光熱変換材料は着色しているものがほとんどであり、感熱発色層に含有させて記録した場合、通常、未印字部全体に光熱変換材料起因の着色が残る。文字情報や単色の画像情報のみを印字する場合は、未印字部の着色は許容されることもあるが、フルカラー画像を得るときには問題となり採用することができない。したがって、光熱変換材料を感熱記録層に含ませる場合は、この点を考慮することが好ましい。
【0006】
前記光熱変換材料としては赤外線吸収色素が知られており、中でもアニオン部にボレートアニオンを有するカチオン色素は、光励起によりボレートから発生したラジカルにより色素が分解されるので、光照射により消色する(以下の特許文献4及び5、非特許文献1ないし3を参照)。
しかしながら、多色感熱記録材料において、少なくとも1つの層に赤外線吸収色素を含有させ、この層を赤外レーザー光により画像記録するものは、全く知られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−288688号公報
【特許文献2】
特開平4−307292号公報
【特許文献3】
特開平8−127180号公報
【特許文献4】
特開昭62−150242号公報
【特許文献5】
特開昭62−143044号公報
【非特許文献1】
G.B.Schuster et.al.J.Am.Chem.Soc.,110,2326−2328(1998)
【非特許文献2】
G.B.Schuster et.al.J.Am.Chem.Soc.,112,6329−6338(1990)
【非特許文献3】
G.B.Schuster et.al.Pure.Appl.Chem.,62,1565−1572(1990)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、低エネルギー記録が可能で、したがって、高速記録を行っても印画障害を起こすことがない、又は少ない多色感熱記録材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の多色感熱記録材料及びその記録方法を提供することにより解決される。
(1)支持体上に、支持体に近い側から第1の感熱記録層、第2の感熱記録層及び第3の感熱記録層をこの順に有する多色感熱記録材料であって、少なくとも1つの感熱記録層が赤外線吸収色素を含み、かつ第2及び第3の感熱記録層が、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとを含有する多色感熱記録材料。
(2)前記第1の感熱記録層が電子供与性無色染料と電子受容性化合物を含むことを特徴とする前記(1)に記載の多色感熱記録材料。
(3)2つ以上の感熱記録層に赤外線吸収色素が含まれ、それぞれの感熱記録層に含まれる赤外線吸収色素の吸収波長が互いに異なることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の多色感熱記録材料。
(4)第3の感熱記録層に赤外線吸収色素が含有されていることを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0010】
(5)赤外線吸収色素が光照射又は熱の付与により分解消色することを特徴とする前記(1)ないし(4)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(6)赤外線吸収色素がボレートアニオンを有するカチオン性色素であることを特徴とする前記(1)ないし(5)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(7)赤外線吸収色素を含む感熱記録層が、光若しくは熱ラジカル発生剤、又は光若しくは熱酸発生剤を含有することを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(8)前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長が450±65nmであり、第3の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長が360±25nmであることを特徴とする前記(1)ないし(7)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(9)前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物が、下記一般式(1)〜(3)で表されるジアゾニウム塩化合物のいずれかであることを特徴とする前記(1)ないし(8)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0011】
【化3】
【0012】
[一般式(1)〜(3)中、R1、R2、及びR4〜R9は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、スルホニル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基を表し、D1は置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。AはHammettのσp値が0.3以上の電子吸引性基を表す。X−は対アニオンを表す。一般式(1)〜(3)中のそれぞれのベンゼン環は更に置換基を有していてもよい。]
(10)前記第3の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物が、下記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩化合物であることを特徴とする前記(1)ないし(9)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0013】
【化4】
【0014】
[一般式(4)中、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、D2はHammettのσp値が0.3未満の基を表す。Xは対アニオンを表す。一般式(4)中のベンゼン環は更に置換基を有していてもよい。]
(11)前記ジアゾニウム塩化合物及び/又は電子供与性無色染料がマイクロカプセルに内包されていることを特徴とする前記(1)ないし(10)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0015】
(12)前記(1)ないし(11)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料の記録方法であって、多色感熱記録材料の赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録する、多色感熱記録材料の記録方法。
(13)赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録した後、赤外線吸収色素を光照射又は加熱により消色することを特徴とする前記(12)記載の記録方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多色感熱記録材料について説明する。
本発明の多色感熱記録材料は、支持体上に、支持体に最も近い第1の感熱記録層(A層)、第1の感熱記録層の上に設けた第2の感熱記録層(B層)及び第2の感熱記録層の上に設けた第3の感熱記録層(C層)を有する多色感熱記録材料であり、少なくとも1つの感熱記録層が赤外線吸収色素を含むことを特徴とする。
本発明の多色感熱記録材料は、感熱記録層の少なくとも1層に赤外線吸収色素を含有させ、この層を非接触の光記録(例えばレーザー光記録)を行うため、他の層の発色温度を従来のものより低く設定でき、その結果、高速記録が可能となる。従来の多色感熱記録材料においては、サーマルヘッドにより、3つの感熱記録層を、低、中、高エネルギーの3つのエネルギー領域において接触熱記録する必要があったが、本発明の多色感熱記録材料においては、例えば、1つの感熱記録層を光記録層とすると、他の2つの感熱記録層は接触熱記録層となるものの、低及び中エネルギーという2つのエネルギー領域における接触熱記録を行うことが可能で、高エネルギー領域を適用する必要が無くなる。また、接触熱記録の際のエネルギーを小さくすることができるため、高速で接触熱記録を行っても、従来の多色感熱記録材料に比較して、印画障害を少なくすることができる。
図を用いて低エネルギー記録が可能なことを説明する。図1中、点線で示される曲線A、B及びCは、3つの感熱記録層を有する従来の多色感熱記録材料を用い、接触熱記録を行う場合の、それぞれ、低、中、高エネルギーの3つのエネルギー領域を示す。また、実線X及びYは、1つの層が赤外線吸収色素を含む感熱記録層で、2つの層が接触熱記録を行う感熱記録層である本発明の多色感熱記録材料に接触熱記録を行う場合の、2つの接触熱記録を行う感熱記録層に付与される熱エネルギー領域を示す。図から分かるように本発明の多色感熱記録材料を記録する際の、X及びYで示される2つのエネルギー領域は、従来の多色感熱記録材料を記録する際のエネルギー領域B及びCより低いエネルギー領域が可能となる。
【0017】
[感熱記録層]
本発明の多色感熱記録材料においては、少なくとも1つの感熱記録層に赤外線吸収色素を含有させる。
(赤外線吸収色素)
赤外線吸収色素は特に制限なく用いうるが、中でも、以下に詳述するカチオン性色素、錯塩形成色素及びキノン系中性色素が好ましい。
また、本発明において用いられる赤外線吸収色素の極大吸収波長は、600〜1100nmの範囲にあることが好ましく、特に700〜900nmの範囲にあるものが好ましい。
赤外線吸収色素は、バインダー中、マイクロカプセルオイル中、マイクロカプセル壁中、カプラー乳化物中のいずれに添加してもよい。バインダー中に添加する場合は、水溶性のものが、それ以外に添加する場合は油溶性のものを用いることが好ましい。
赤外線吸収色素の塗設量は、作製した多色感熱記録材料において、赤外領域で最も吸光度が高い波長の吸光度で決定され、該吸光度は0.1〜2.5の範囲が好ましく、0.2〜2.0の範囲がより好ましい。
本発明の多色感熱記録材料の2層以上に赤外線吸収色素を含ませる場合には、それぞれの感熱記録層に含まれる赤外線吸収色素の吸収波長が互いに異なることが必要である。
【0018】
以下に、本発明において用いる赤外線吸収色素について詳細に説明する。
(1)カチオン性色素
カチオン性色素は下記一般式(1)で表される色素である。
D1 + [X1 −1/m] m (1)
但し、D1 + はカチオン性色素母核を、X1 −は対アニオンを、mは1〜4の整数を表す。
【0019】
一般式(1)中のカチオン性色素母核であるD1 +としては、ポリメチン(シアニンを含む)、アズレニウム、ピリリウム、チオピリリウム、スクワリリウム、トリアリールメタン、インモニウム、ジインモニウム等が好ましい。X1 −1/mは対アニオンを形成できるものであれば特に限定されない。
上記のカチオン性色素としては、以下のような具体的色素が挙げられる。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
(2)錯塩形成色素
前記錯塩形成色素としては、チオールニッケル錯塩系、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素が好ましく、以下のようは具体的色素を挙げることができる。
【0025】
【化9】
【0026】
(3)キノン系中性色素
キノン系中性色素としては、ナフトキノン系及びアントラキノン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0027】
【化10】
【0028】
また、前記(1)カチオン性色素として、対アニオンが以下の一般式で示されるようなボレートであるものは、光(定着光等)により分解・消色しやすいので好ましく用いられる。
【0029】
【化11】
【0030】
前記一般式中、R1、R2、R3及びR4は同じでも異なっていてもよく、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換の置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のアルカリール基、置換または未置換のアルケニル基、置換または未置換のアルキニル基、置換または未置換のアリサイクリック基、置換または未置換の複素環基、置換または未置換のアリル基、置換または未置換のシリル基、アリールオキシ基から選ばれる基であり、R1、R2、R3及びR4 は、その2個以上の基が結合して環状構造を形成していてもよい。
【0031】
ボレートアニオンの好適な例としては、例えば、テトラメチルボレート、テトラエチルボレート、テトラブチルボレート、トリイソブチルメチルボレート、ジ−n−ブチル−ジ−t−ブチルボレート、テトラ−n−ブチルボレート、テトラフェニルボレート、テトラ−p−クロロフェニルボレート、テトラ−m−クロロフェニルボレート、トリフェニルメチルボレート、トリフェニルエチルボレート、トリフェニルプロピルボレート、トリメシチルブチルボレート、トリトリルイソプロピルボレート、トリフェニルベンジルボレート、テトラベンジルボレート、トリフェニルフェネチルボレート、トリフェニル−p−クロロベンジルボレート、トリフェニルエテニルブチルボレート、ジ(α−ナフチル)−ジプロピルボレート、トリフェニルシリルトリフェニルボレート、トリトルイルシリルトリフェニルボレート、トリ−n−ブチル(ジメチルフェニルシリル)ボレート、トリブチル(2,6−ジ−t−ブチルフェニルオキシ)ボレート、トリブチル(2−t−ブチルフェニルオキシ)ボレート等が挙げられる。
【0032】
前記ボレートアニオンの他に、好適なボレートアニオンとして以下のようなものが挙げられる。
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
但し、ボレートアニオンは、前記のごときものに限定されるものではない。
【0036】
また、消色しやすい赤外線吸収色素の色素骨格としては、ポリメチン(シアニン)色素系が好ましい。したがって、対アニオンとしてボレートアニオンを有するポリメチン(シアニン)色素は特に好ましい。
以下に、対アニオンとしてボレートアニオンをもち、消色しやすい赤外線吸収色素の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
【化16】
【0040】
また、本発明において使用する赤外線吸収色素のうち、マイクロカプセル形成時に該マイクロカプセル壁材と反応する活性基を有しているものも有効である。
活性基の具体例としては、イソシアネート基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基等を挙げることができるが、特にイソシアネート基及びヒドロキシ基が好ましく、以下のような、活性基を有するカチオン性色素、錯塩形成色素及びキノン系中性色素が好ましい。
(1)−1 カチオン性色素
カチオン性色素は下記一般式(1)で表される色素である。
D1 + [X1 −1/m]m (1)
但し、D1 + はカチオン性色素母核を、X1 −は対アニオンを、mは1〜4の整数を表す。
【0041】
一般式(1)中のカチオン性色素母核であるD1 +としては、ポリメチン(シアニンを含む)、アズレニウム、ピリリウム、チオピリリウム、スクワリリウム、トリアリールメタン、インモニウム、ジインモニウム等が好ましい。X1 −1/mは対アニオンを形成できるものであれば特に限定されず、上記マイクロカプセル壁と反応する活性基はD1 +若しくはX1 −1/mの何れにあってもよい。
【0042】
活性基を有するカチオン性色素としては、以下のような具体的色素が挙げられる。
【0043】
【化17】
【0044】
【化18】
【0045】
【化19】
【0046】
【化20】
【0047】
(2)−1 錯塩形成色素
活性基を有する錯塩形成色素としては、チオールニッケル錯塩系、フタロシアニン系色素、及びナフタロシアニン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0048】
【化21】
【0049】
(3)−1 キノン系中性色素
活性基を有するキノン系中性色素としては、ナフトキノン系及びアントラキノン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0050】
【化22】
【0051】
(発色材料)
本発明の多色感熱記録材料において、第1の感熱記録層における発色系としては、電子供与性無色染料と電子受容性化合物の組み合わせ、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとの組み合わせ、塩基性化合物と接触して発色する塩基発色系、キレート発色系、求核剤と反応して脱離反応を生じて発色する発色系等のいずれであってもよい。これらの発色系としては、感熱記録材料に通常用いられるものが制限なく使用可能である。
【0052】
本発明の多色感熱記録材料において、前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物(以下において「第1のジアゾニウム塩化合物」ということがある)の極大吸収波長が450±65nmであり、第3の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物(以下において「第2のジアゾニウム塩化合物」ということがある)の極大吸収波長が360±25nmであることが好ましい。これにより第2のジアゾニウム塩化合物の光分解工程にかかる時間が短縮され、その結果、プリント時間がさらに短くなる。(ジアゾニウム塩化合物の光定着(光分解)は、ジアゾニウム塩化合物の光吸収を阻害する成分が存在すると遅くなるが、第2の感熱記録層に用いるジアゾニウム塩化合物の感光波長域が340〜380nmと紫外線領域にあると、光分解時の光エネルギーは自層の構成素材や第3の感熱記録層の構成素材により吸収される傾向にあるため、感光波長域が短波のジアゾニウム塩化合物を第3の感熱記録層に含有させて吸収阻害をなくす。)
【0053】
また、第3層における第2のジアゾニウム塩化合物に対する第2層における第1のジアゾニウム塩化合物の、波長360nmにおけるモル吸光係数の割合が20%以下であると、第3層を光定着する際、その影響が第2層に及ばない。
【0054】
また、第3の感熱記録層の画像形成後の画像部は光を吸収しやすいため、第2の感熱記録層の光定着への影響を考慮する必要がある。その点を考慮すると第3の感熱記録層の色相としては、より光の吸収が少ないシアンが最も好ましく、次いでマゼンタが好ましいことが分かる。イエロー色素は第1のジアゾニウム塩化合物の吸収特性と重なっており、第1のジアゾニウム塩化合物の吸収を阻害することがある。以上のことから、本発明における感熱記録材料の色相としては次の組合わせが好ましい。
支持体側から順に、イエロー/マゼンタ/シアン、マゼンタ/イエロー/シアン、シアン/イエロー/マゼンタ、イエロー/シアン/マゼンタである。
【0055】
(ジアゾニウム塩化合物)
本発明において用いるジアゾニウム塩化合物は、前記のごとき吸収特性を有するものが好ましい。
【0056】
−第1のジアゾニウム塩化合物−
第1のジアゾニウム塩化合物は、極大吸収波長450±65nmの範囲のジアゾニウム塩化合物である。前記極大吸収波長範囲の上限を超えると、ジアゾニウム塩化合物の安定性が劣化して実用性不足となることがあり、下限を超えると、第2のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長範囲と重なることがある。第1のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長の範囲は、より好ましくは、390〜480nmである。
第1のジアゾニウム塩化合物としては、一般式(1)〜(3)で表されるジアゾニウム塩化合物であることが好ましい。
【0057】
【化23】
[一般式(1)〜(3)中、R1、R2、及びR4〜R9は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、スルホニル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基を表し、D1は置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。AはHammettのσp値が0.3以上の電子吸引性基を表す。X−は対アニオンを表す。一般式(1)〜(3)中のそれぞれのベンゼン環は更に置換基を有していてもよい。]
【0058】
前記R1、R2、R4〜R9は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基が好ましい。特に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基が好ましい。アルキル基は分岐していてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はカルバモイル基で置換されていてもよい。また、フェニル基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアシル基で置換されていてもよい。
前記R1、R2、R4〜R9は、具体的には例えば以下に示すものが挙げられる。
【0059】
【化24】
【0060】
前記R3は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜18のアシル基、又は炭素数1〜18のアルコキシカルボニル基が好ましい。アルキル基、アルキルスルホニル基は分岐していてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はカルバモイル基で置換していてもよい。
アリールスルホニル基は、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
R3は、具体的には例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0061】
【化25】
【0062】
前記D1が置換アミノ基を表わす場合、置換アミノ基としては、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリールアミノ基、炭素数7〜20のN−アルキル−N−アリールアミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基が好ましく、これらの基はさらに1又は2以上の置換基を有していてもよい。また、前記アルキル基等の置換基同士が結合して環状アミノ基を形成してもよい。
D1がアルキルチオ基を表わす場合、炭素数1〜18のアルキルチオ基が好ましく、アリールチオ基を表わす場合、炭素数6〜10のアリールチオ基が好ましく、アルコキシ基を表わす場合、炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、アリールオキシ基を表わす場合、炭素数6〜10のアリールオキシ基が好ましく、これらの基はさらに1又は2以上の置換基を有していてもよい。
ジアゾニウム塩化合物の安定性の観点から、D1がジアルキルアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。
【0063】
前記D1が示す置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基におけるアルキル基、アリール基としては以下のようなものが挙げられる。
【0064】
【化26】
【0065】
前記Aとしては、スルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はシアノ基が好ましい。スルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、R3が表すスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基と同義である。
R8とR9、R13とR14は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0066】
酸アニオンX−の例としては、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルカルボン酸(例えば、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロドデカン酸)、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルスルホン酸(例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロヘキサデカンスルホン酸)、炭素数7〜50の芳香族カルボン酸(例えば、4,4−ジ−t−ブチルサリチル酸、4−t−オクチルオキシ安息香酸、2−n−オクチルオキシ安息香酸、4−t−ヘキサデシル安息香酸、2,4−ビス−n−オクタデシルオキシ安息香酸、4−n−デシルナフトエ酸)、炭素数6〜50の芳香族スルホン酸(例えば、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−t−オクチルオキシベンゼンスルホン酸、4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸)、4,5−ジ−t−ブチル−2−ナフトエ酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸等が挙げられる。中でも、炭素数6〜16のパーフルオロアルキルカルボン酸、炭素数10〜40の芳香族カルボン酸、炭素数10〜40の芳香族スルホン酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸などが好ましい。
【0067】
一般式(1)中のD1が置換アミノ基を示す場合、置換基同士が結合して形成される環状アミノ基、及び一般式(2)中の−N(R8)R9の環状のものとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0068】
【化27】
【0069】
一般式(3)のインドリル基上のベンゼン環は核置換基を有していてもよく、特に環の安定性の観点から電子吸引性基が好ましい。電子吸引性基のHammettのσp値としては0.1以上が好ましい。中でも、アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、スルホンアミド基、又はカルボンアミド基が好ましい。アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基は前記R3と同義であり、好ましい態様も同様である。スルホンアミド基は炭素数1〜12のものが好ましく、具体的には、次のものが挙げられる。
【0070】
【化28】
【0071】
カルボンアミド基は、炭素数2〜13のものが好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
【0072】
【化29】
【0073】
以下に、一般式(1)〜(3)で表されるジアゾニウム塩化合物の具体例(例示化合物(1)〜(22))を挙げるが本発明は以下に限定されるものではない。
【0074】
【化30】
【0075】
【化31】
【0076】
【化32】
【0077】
−第2のジアゾニウム塩化合物−
前記第2のジアゾニウム塩化合物は、極大吸収波長360±25nmの範囲のジアゾニウム塩化合物である。前記極大吸収波長範囲の上限を超えると、第1のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長範囲となり好ましくない。また、下限を超えると、ジアゾニウム塩化合物の安定性劣化と光分解性劣化が生じることがある。第2のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長の範囲は、より好ましくは、350〜380nmである。
前記第2のジアゾニウム塩化合物としては、下記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩化合物が好ましい。
【0078】
【化33】
【0079】
一般式(4)中、R10及びR11は、R1と同義であり、好ましい例も同様である。
【0080】
前記D2はアルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。該アルコキシ基のアルキル基、アリールオキシ基のアリール基はR1が表すアルキル基、アリール基と同義であり、好ましい例も同様である。
【0081】
以下に、一般式(4)で表されるジアゾニウム塩化合物の具体例(例示化合物(23)〜(29))を挙げるが本発明は以下に限定されるものではない。
【0082】
【化34】
【0083】
また、前記一般式(1)〜(3)及び(4)で示されるジアゾニウム塩化合物は、一般式(4)で示される第2のジアゾニウム塩化合物に対する、一般式(1)〜(3)で示される第1のジアゾニウム塩化合物の、波長360nmにおけるモル吸光係数の割合が20%以下のものが好ましい。
【0084】
また、ジアゾニウム塩化合物は、油状、結晶状のいずれであってもよいが、取扱い性の点で常温で結晶状態のものが好ましい。このジアゾニウム塩化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、また、既存のジアゾニウム塩化合物と併用してもよい。
【0085】
前記ジアゾニウム塩化合物の感熱記録層における含有量としては、0.02〜5g/m2が好ましく、発色濃度の点から0.1〜4g/m2がより好ましい。
【0086】
ジアゾニウム塩化合物の安定化のために、塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化スズ等を用いて錯化合物を形成させ、ジアゾニウム塩化合物の安定化を図ることもできる。
【0087】
(カプラー)
次に、本発明の多色感熱記録材料において使用可能なカプラー(カップリング成分)について説明する。
前記カプラーとしては、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気でジアゾニウム塩化合物とカップリングして色素を形成するものであればいずれの化合物も使用可能である。ハロゲン化銀写真感光材料用のいわゆる4当量カプラー化合物はすべてカプラーとして使用可能である。また、2当量カプラーの一部も使用可能である。これらは目的とする色相に応じて選択することが可能である。
例えば、カルボニル基の隣にメチレン基を有するいわゆる活性メチレン化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体等があり、具体的には以下のものが挙げられ、本発明の目的に合致する範囲で使用される。
【0088】
前記カプラーの具体例としては、例えば、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、5−アセトアミド−1−ナフトール、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ジアニリド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、5,5−ジメチル−l,3−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、5−(2−n−テトラデシルオキシフェニル)−1,3−シクロへキサンジオン、5−フェニル−4−メトキシカルボニル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−(2,5−ジーn−オクチルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン;
【0089】
N,N’−ジシクロヘキシルバルビツール酸、N,N’−ジ−n−ドデシルバルビツール酸、N−n−オクチル−N’−n−オタタデシルバルビツール酸、N−フェニル−N’−(2,5−ジ−n−オクチルオキジフェニル)バルビツール酸、N,N’−ビス(オクタデシルオキシカルボニルメチル)バルビツール酸、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、6−ヒドロキシ−4−メチル−3−シアノ−1−(2−エチルヘキシル)−2−ピリドン、2,4−ビス−(ベンゾイルアセトアミド)トルエン、1,3−ビス−(ピバロイルアセトアミドメチル)ベンゼン、ベンゾイルアセトニトリル、テノイルアセトニトリル、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、ピバロイルアセトアニリド、2−クロロ−5−(N−n−ブチルスルファモイル)−1−ビバロイルアセトアミドベンゼン、1−(2−エチルヘキシルオキシプロピル)−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(ドデシルオキシプロピル)−3−アセチル−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(4−n−オクチルオキシフェニル)−3−tert−ブチル−5−アミノピラゾール等が挙げられる。
【0090】
カプラーの詳細については、特開平4−201483号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平7−323660号、特開平7−125446号、特開平7−96671号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平9−156229号、特開平9−216468号、特開平9−216469号、特開平9−203472号、特開平9−319025号、特開平10−35113号、特開平10−193801号、特開平10−264532号等の公報に記載されている。
【0091】
上記のうち、本発明においては、下記一般式(IV)で表される化合物又はその互変異性体が特に好ましい。
以下に、一般式(IV)で表されるカプラーについて詳述する。
E1−CH(X)−E2 一般式(IV)
一般式(IV)中、E1とE2はそれぞれ独立に電子吸引性基を表し、Xはアゾカップリングするときに離脱してアゾ色素を形成することができる基を表し、またE1とびE2は結合して環を形成してもよい。
【0092】
前記E1及びE2で表される電子吸引性基とは、Hammettのσp値が正である置換基を意味し、これらは同一であっても異なっていてもよく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、1−メチルシクロプロピルカルボニル基、1−エチルシクロプロピルカルボニル基、1−ベンジルシクロプロピルカルボニル基、ベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、テノイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等のオキシカルボニル基;カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−〔2,4−ビス(ペンチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、N−〔2,4−ビス(オクチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、モルホリノカルボニル基等のカルバモイル基;メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基;ジエチルホスホノ基等のホスホノ基;ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−スルホン−2−イル基等の複素環基;ヘテロ環基;ニトロ基;イミノ基;シアノ基が好適に挙げられる。
【0093】
Xはアゾカップリング時に脱離する基を示すが、離脱基Xとしては、ハロゲン原子(フッ素、臭素、塩素、沃素)、置換アルキル基(ヒドロキシメチル基、ジメチルアミノメチル基)、アルキルチオ基(例えば、エチルチオ基、2−カルボキシエチルチオ基、ドデシルチオ基、1−カルボキシドデシルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、2−ブトキシ−t−オクチルフェニルチオ基)、アルコキシル基(例えば、エトキシ基、ドデシルオキシ基、メトキシエチルカルバモイルメトキシ基、カルボキシプロピルオキシ基、メチルスルホニルエトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、4−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−カルボキシフェノキシ基、3−エトキシカルボキシフェノキシ基、3−アセチルアミノフェノキシ基、2−カルボキシフェノキシ基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、テトラデカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(例えば、トルエンスルホニルオキシ基)、ジアルキルアミノカルボニルオキシ基(例えば、ジメチルアミノカルボニルオキシ基、ジエチルアミノカルボニルオキシ基)、ジアリールアミノカルボニルオキシ基(例えば、ジフェニルアミノカルボニルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、エトキシカルボニルオキシ基、ベンジルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、又は複素環基(例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基)が挙げられる。
【0094】
また、E1及びE2で表される電子吸引性基は、両者が結合し環を形成してもよい。E1及びE2で形成される環としては、5員ないし6員の炭素環又は複素環が好ましい。
【0095】
以下に、一般式(IV)で表されるカプラーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下に示すカプラーの互変異性体も好適なものとして挙げることができる。
【0096】
【化35】
【0097】
【化36】
【0098】
【化37】
【0099】
【化38】
【0100】
【化39】
【0101】
【化40】
【0102】
【化41】
【0103】
前記カプラーの互変異性体とは、上記に代表されるカプラーの異性体として存在するものであって、その両者間で構造が容易に変化し合う関係にあるものをいい、本発明に用いるカプラーとしては、該互変異性体も好ましい。
【0104】
本発明の多色感熱記録材料の第1の感熱記録層は、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとを含有する感熱記録層とする他、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とを含有する感熱記録層としてもよい。
電子供与性染料前駆体および電子受容性化合物などは、特開平6−328860号公報、特開平7−290826号公報、特開平7−314904号公報、特開平8−324116号公報、特開平3−37727号公報、特開平9−31345号公報、特開平9−111136号公報、特開平9−118073号公報、特開平11−157221号公報、などに詳しく記載されている。具体例を以下に示すが本発明はこれに限定されるものではない。
【0105】
【化42】
【0106】
【化43】
【0107】
【化44】
【0108】
【化45】
【0109】
−電子受容性化合物の具体例−
電子受容性化合物としては、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。これらの一部を例示すれば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(即ち、ビスフェノールP)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸およびその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸およびその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸およびその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノールなどが挙げられる。
【0110】
前記赤外線吸収色素は多くの場合、可視領域に吸収をもち、着色しているので、その場合には、消色することが好ましい。消色は、光照射(定着光など)及び/又は加熱により行うことができる。
赤外線吸収色素として、対アニオンがボレートアニオンである、及び/又は色素骨格としてポリメチン(シアニン)系骨格を有するものは、光照射及び/又は加熱により容易に分解され消色する。
また、消色を促進するために、光及び/又は熱によりラジカル、カチオン、アニオンなどの活性種を発生させ、色素の共役系を切断することが好ましい。このためには、光(又は熱)ラジカル発生剤、光(又は熱)酸発生剤などが用いられる。
【0111】
(1)光(又は)ラジカル発生剤
光(又は熱)ラジカル発生剤としては、分子内に活性ハロゲンを有するもの、ロフィンダイマー、有機過酸化物、その他のものが挙げられる。
▲1▼ 分子内に活性ハロゲンを有するものとしては、下記一般式(II)及び一般式(III)で示されるものが挙げられる。
【0112】
【化46】
【0113】
前記一般式(II)中、Xはハロゲン原子を表す。Y1 は−CX3 、−NH2 、−NHR、−NR2 、−ORを表す。ここで、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。また、Y2 は−CX3 、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。置換基は、一般式(II)自身であっても良い。
【0114】
【化47】
【0115】前記一般式(III)中、Xはハロゲン原子を表す。Y3 、Y4は同じでも異なっても良く、水素原子又はハロゲン原子を表す。また、Zは下記式で示す基を表す。
【0116】
【化48】
【0117】
ここで、R’は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、複素環基、置換複素環基を表す。
【0118】
前記一般式(II)で表される化合物としては、若林ら著、ブリティン オブケミカル ソサエティ ジャパン(Bull, Chem, Soc, Japan)42巻、2924頁(1969年)記載の化合物、具体的には、例えば、2−フエニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフエニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフエニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号明細書記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記構造式で表される化合物等を挙げることができる。
【0119】
【化49】
【0120】
その他の化合物として下記構造式で表される化合物等も用いることができる。
【0121】
【化50】
【0122】
また、F.C.Schaefer等によるジャーナルオブ オーガニック ケミストリィ(J.Org.Chem.)29巻、1527頁(1964年)記載の化合物、例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
【0123】
さらに特公平7−66185号公報に記載の化合物、例えば、下記構造式で表される化合物等を挙げることができる。
【0124】
【化51】
【0125】
本発明の多色感熱記録材料に、前記一般式(II)で表される化合物を用いる場合、Y1が−CX3である化合物を用いた場合が特に好ましい。
【0126】
本発明で用いられる一般式(II)の化合物は当業者に公知の方法で合成することができる。具体的にはブリティン オブ ケミカル ソサエティ ジャパン(Bull, Chem, Soc, Jpn)42巻、2924頁(1969年)を参考にして、例えば、下記構造の化合物を得ることができる。
【0127】
【化52】
【0128】
また、DE2718259号(願番)の記載を参照して、例えば、下記構造の化合物を得ることができる。
【0129】
【化53】
【0130】
また、本発明において用いることが可能な、前記一般式(III )で表される化合物としては、特公昭51−8330号明細書記載の化合物、具体的には、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、ヨードホルム、p−ニトロ−α,α,α−トリブロモアセトフエノン、ω,ω,ω−トリブロモキナルジン、トリブロモメチルフエニルスルホン、トリクロロメチルフエニルスルホン等を挙げることができる。また特公昭49−12180号明細書記載の化合物、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0131】
【化54】
【0132】
さらに、特開昭60−138539号公報に記載の化合物、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0133】
【化55】
【0134】
【化56】
【0135】
▲2▼ ロフィンダイマー
ロフィンダイマーとしては、以下のものが挙げられる。
【0136】
【化57】
【0137】
▲3▼ 有機過酸化物
有機過酸化物としては、以下のものが挙げられる。
【0138】
【化58】
【0139】
▲4▼ その他のもの
その他の光(又は熱)ラジカル発生剤としては、以下のごときものが挙げられる。
【0140】
【化59】
【0141】
(2)熱ラジカル発生剤
熱ラジカル発生剤としては、アゾビス系化合物が好ましい。例えば、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)や、AIVN[2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)]などが挙げられる。
【0142】
(3)光(又は熱)酸発生剤
光(又は熱)酸発生剤としては、前記▲1▼の、分子内に活性ハロゲンを有する光(又は熱)ラジカル発生剤(ハロゲン化水素を発生する)の他、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類が用いられる。
ヨードニウム塩類としては、以下のものが挙げられる。
【0143】
【化60】
【0144】
スルホニウム塩類としては、以下のものが挙げられる。
【0145】
【化61】
【0146】
アジニウム塩類としては、以下のものが挙げられる。
【0147】
【化62】
【0148】
(マイクロカプセル化)
本発明の多色感熱記録材料においては、その使用前の生保存性を良化する目的で、各層におけるジアゾニウム塩化合物及び/又は電子供与性無色染料をマイクロカプセルに内包させることが好ましい。該マイクロカプセルの形成方法としては、既に公知の方法の中から適宜選択することができる。
マイクロカプセルのカプセル壁を形成する高分子物質としては、常温では非透過性であり、加熱時に透過性となる性質を有することが必要である点から、特にガラス転移温度が60〜200℃のものが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレン・メタクリレート共重合体、スチレン・アクリレート共重合体及びこれらの混合系を挙げることができる。
【0149】
マイクロカプセル形成方法としては、具体的には、界面重合法や内部重合法が適している。該カプセル形成方法の詳細及びリアクタントの具体例等については、米国特許第3,726,804号、同第3,796,669号等の明細書に記載がある。例えば、カプセル壁材として、ポリウレア、ポリウレタンを用いる場合には、ポリイソシアネート及びそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオールやポリアミン)を水性媒体又はカプセル化すべき油性媒体中に混合し、水中でこれらを乳化分散し次に加温することにより油滴界面で高分子形成反応を起こしマイクロカプセル壁を形成する。尚、上記第2物質の添加を省略した場合もポリウレアを生成することができる。
【0150】
本発明においては、マイクロカプセルのカプセル壁を形成する高分子物質としては、ポリウレタン及び/又はポリウレアを成分として含有することが、製造適性と熱応答感度に優れるので好ましい。
【0151】
次に、ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル(ポリウレア・ポリウレタン壁)の製造方法について述べる。
まず、ジアゾニウム塩化合物は、カプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解又は分散させ、マイクロカプセルの芯となる油相を調製する。このとき、さらに壁材として多価イソシアネートが添加される。
【0152】
前記油相の調製に際し、ジアゾニウム塩化合物を溶解、分散してマイクロカプセルの芯の形成に用いる疎水性の有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましく、例えば、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、アルキルビフェニル、アルキルターフェニル、塩素化パラフィン、リン酸エステル類、マレイン酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類、安息香酸エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、硫酸エステル類、スルホン酸エステル類等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
【0153】
カプセル化しようとするジアゾニウム塩化合物の前記有機溶媒に対する溶解性が劣る場合には、用いるジアゾニウム塩化合物の溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもでき、該低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
このため、ジアゾニウム塩化合物は、高沸点疎水性有機溶媒、低沸点溶媒に対する適当な溶解度を有していることが好ましく、具体的には、該溶剤に5%以上の溶解度を有していることが好ましい。水に対する溶解度は1%以下が好ましい。
【0154】
一方、用いる水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、該水溶性高分子は、分散を均一かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は公知の乳化用界面活性剤が使用可能である。
界面活性剤を添加する場合の添加量としては、油相質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0155】
調製された油相を分散する水溶性高分子水溶液に用いる水溶性高分子は、乳化しようとする温度における、水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール及びその変成物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0156】
前記水溶性高分子は、イソシアネート化合物との反応性がないか、若しくは低いことが好ましく、例えば、ゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め変成する等して反応性をなくしておくことが好ましい。
【0157】
前記多価イソシアネート化合物としては、3官能以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましいが、2官能のイソシアネート化合物であってもよい。具体的には、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物等が挙げられる。
特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特願平8−268721号公報等に記載の化合物が好ましい。
【0158】
多価イソシアネートの使用量としては、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、壁厚みが0.01〜0.3μmとなるように決定される。また、その分散粒子径としては、0.2〜10μm程度が一般的である。
水相中に油相を加えた乳化分散液中では、油相と水相の界面において多価イソシアネートの重合反応が生じてポリウレア壁が形成される。
【0159】
水相中又は油相の疎水性溶媒中に、さらにポリオール及び/又はポリアミンを添加しておけば、多価イソシアネートと反応してマイクロカプセル壁の構成成分の一つとして用いることもできる。上記反応において、反応温度を高く保ち、或いは、適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
これらのポリオール又はポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。
多価イソシアネート、ポリオール、反応触媒、あるいは、壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については成書に詳しい(岩田敬治編 ポリウレタンハンドブック 日刊工業新聞社(1987))。
【0160】
乳化は、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等の公知の乳化装置の中から適宜選択して行うことができる。乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させるために乳化物を30〜70℃に加温することが行われる。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、十分な攪拌を行う等の必要がある。
【0161】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その終息をもっておよそのカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的のジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセルを得ることができる。
【0162】
次に、本発明に用いるカプラーは、例えば、水溶性高分子、有機塩基、その他の発色助剤等とともに、サンドミル等により固体分散して用いることもできるが、特に好ましくは、予め水に難溶性又は不溶性の高沸点有機溶剤に溶解した後、これを界面活性剤及び/又は水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合し、ホモジナイザー等で乳化した乳化分散物として用いることが好ましい。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることもできる。さらに、カプラー、有機塩基は別々に乳化分散することも、混合してから高沸点有機溶剤に溶解し、乳化分散することも可能である。好ましい乳化分散粒子径は1μm以下である。
【0163】
前記カプラーの使用量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0164】
この場合に使用される高沸点有機溶剤は、例えば、特開平2−141279号公報に記載の高沸点オイルの中から適宜選択することができる。中でも、乳化分散物の乳化安定性の観点から、エステル類が好ましく、リン酸トリクレジルが特に好ましい。上記オイル同士、又は他のオイルとの併用も可能である。
【0165】
前記有機溶剤に、さらに溶解助剤として、低沸点の補助溶剤を加えることもでき、該補助溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びメチレンクロライド等を好適に挙げることができる。場合に応じて、高沸点オイルを含まず、低沸点補助溶剤のみを用いることもできる。
【0166】
また、水相中に保護コロイドとして含有させる水溶性高分子としては、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができ、中でも、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体等が好ましい。
【0167】
また、水相中に含有させる界面活性剤としては、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤であって、上記保護コロイドと作用して沈澱や凝集を起こさないものを適宜選択して使用することができる。該界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等が挙げられる。
【0168】
(塩基性物質、その他)
本発明においては、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとのカップリング反応を促進する目的で、有機塩基等の塩基性物質を加えることも好ましい態様である。
前記有機塩基としては、第3級アミン類、ピぺリジン類、ピペラジン類、アミジン類、ホルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類等の含窒素化合物等が挙げられ、例えば、特公昭52−46806号公報、特開昭62−70082号公報、特開昭57−169745号公報、特開昭60−94381号公報、特開昭57−123086号公報、特開昭60−49991号公報、特公平2−24916号公報、特公平2−28479号公報、特開昭60−165288号公報、特開昭57−185430号公報に記載のものを好適に挙げることができる。これらは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0169】
上記のうち、具体的には、N,N’−ビス(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(p−メチルフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(p−メトキシフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N’−ビス(3−フェニルチオ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N−3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル−N’−メチルピペラジン、1,4−ビス{〔3−(N−メチルピペラジノ)−2−ヒドロキシ〕プロピルオキシ)ベンゼン等のピペラジン類、N−〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシ〕プロピルモルホリン、1,4−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン、1,8−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン等のモルホリン類、N−(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペリジン、N−ドデシルピペリジン等のピペリジン類、トリフェニルグアニジン、トリシクロヘキシルグアニジン、ジシクロヘキシルフェニルグアニジン等のグアニジン類等が好ましい。
【0170】
前記塩基性物質の使用量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
前記使用量が、0.1質量部未満であると、十分な発色濃度が得られなくなることがあり、30質量部を超えると、ジアゾニウム塩化合物の分解が促進されることがある。
【0171】
また、本発明の感熱記録材料においては、カップリング反応を促進する目的で、記録層中に、アミノフェノール系、フェノール系、カテコール系、ハイドロキノン系、アミン系、ヒドロキシアミン系、アルコール系、チオール系、スルフィド系、アルカリ金属、アルカリ土類金属、金属水素化物、ヒドラジン系、フェニドン系、アニリン系、フェニルエーテル系、L−アスコルビン酸類等の還元剤を添加することが好ましく、なかでも、ハイドロキノン系、カテコール系、アミノフェノール系還元剤が好ましい。中でも、ハイドロキノン系、カテコール系、アミノフェノール系が好ましい。
これらの還元剤は、記録層に微粒子状態で固体分散させてもよい。また、ジアゾ化合物をマイクロカプセル化した場合には、マイクロカプセルの内に添加することも、内と外の両方に添加することも可能である。
また、前記還元剤の含有量は、ジアゾ化合物に対して1〜10倍モルであることが好ましく、1〜4倍モルであることがより好ましい。ジアゾ化合物の含有量の1倍モルより少ない添加量では、発色性の向上効果や、画像保存性の向上効果が充分に得られないことがあり、一方、10倍モルより多く添加すると、却って発色性の向上効果が小さくなったり、また、生保存性が悪化したりすることがある。
【0172】
また、感熱記録層中には、上記塩基性物質の他、発色反応を促進させる、即ち、低エネルギーで迅速かつ完全に熱印画させる目的で、発色助剤を加えることもできる。ここで、発色助剤とは、加熱記録時の発色濃度を高くする、若しくは発色温度を制御する物質であり、カプラー、塩基性物質若しくはジアゾニウム塩化合物等の融解点を下げたり、カプセル壁の軟化点を低下させうる作用により、ジアゾニウム塩、塩基性物質、カプラー等が反応しやすい条件とするためのものである。
前記発色助剤としては、例えば、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、アルコキシ置換ベンゼン類、アルコキシ置換ナフタレン類、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、ウレイド、ウレタン、スルホンアミド化合物、ヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0173】
前記発色助剤には、熱融解性物質も含まれる。
該熱融解性物質は、常温下では固体であって、加熱により融解する融点50℃〜150℃の物質であり、ジアゾニウム塩化合物、カプラー、或いは、有機塩基等を溶解しうる物質である。具体的には、カルボン酸アミド、N置換カルボン酸アミド、ケトン化合物、尿素化合物、エステル類等を挙げることができる。
【0174】
本発明の多色感熱記録材料においては、熱発色画像の光及び熱に対する堅牢性を向上させ、又は、定着後の未印字部分(非画像部)の光による黄変を軽減する目的で、以下に示す公知の酸化防止剤等を用いることも好ましい。
前記酸化防止剤については、例えば、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同第309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4814262号、アメリカ特許第4980275号等に記載されている。
【0175】
感熱若しくは感圧記録材料において既に用いられている公知の各種添加剤を用いることも有効である。
前記各種添加剤としては、例えば、特開昭60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同63−088381号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−170361号公報、特公昭48−043294号公報、同48−033212号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0176】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2.4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0177】
前記酸化防止剤、又は各種添加剤の添加量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.05〜100質量部が好ましく、0.2〜30質量部がより好ましい。
【0178】
前記酸化防止剤及び各種添加剤は、マイクロカプセル中にジアゾニウム塩化合物とともに含有させてもよいし、或いは、固体分散物としてカプラー、塩基性物質及びその他の発色助剤とともに含有させてもよいし、乳化物にして適当な乳化助剤とともに含有させてもよいし、又はその両形態で含有させてもよい。また、酸化防止剤、又は各種添加剤は、単独で用いてもよく、複数併用することもできる。さらに、保護層に含有させることもできる。
【0179】
前記酸化防止剤及び各種添加剤は、必ずしも同一層に添加しなくてもよい。
前記酸化防止剤及び/又は各種添加剤を複数組合わせて用いる場合には、アニリン類、アルコキシベンゼン類、ビンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン誘導体、リン化合物、硫黄化合物のように構造的に分類し、互いに異構造のものを組合わせてもよいし、同一のものを複数組合わせることもできる。
【0180】
画像記録後の地肌部の黄着色を軽減する目的で、光重合性組成物等に用いられる遊離基発生剤(光照射により遊離基を発生する化合物)を添加することができる。
前記遊離基発生剤としては、例えば、芳香族ケトン類、キノン類、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、アゾ化合物、有機ジスルフィド類、アシルオキシムエステル類等が挙げられる。
該遊離基発生剤の添加量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0181】
また、同様に黄着色を軽減する目的で、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物(以下、「ビニルモノマー」と称する。)を用いることもできる。ビニルモノマーとは、その化学構造中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合(ビニル基、ビニリデン基等)を有する化合物であって、モノマーやプレポリマーの化学形態を持つものである。
前記ビニルモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。該ビニルモノマーは、ジアゾニウム塩1質量部に対して、0.2〜20質量部の割合で用いる。
前記遊離基発生剤やビニルモノマーは、ジアゾニウム塩化合物と共にマイクロカプセル中に含有して用いることもできる。
【0182】
さらに、酸安定剤としてクエン酸、酒石酸、シュウ酸、ホウ酸、リン酸、ピロリン酸等を添加することもできる。
【0183】
前記感熱記録層は、例えば、ジアゾニウム塩化合物を含有したマイクロカプセル、カプラー、必要に応じて塩基性物質及び他の成分等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を紙や合成樹脂フィルム等の支持体上に塗布、乾燥することにより塗設することができる。
本発明においては、前記感熱記録層が塩基性物質を含有する態様が好ましい。
【0184】
前記塗布は、公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、バー塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等が挙げられる。
また、塗布、乾燥後の感熱記録層の乾燥塗布量としては、2.5〜30g/m2が好ましい。
【0185】
本発明の多色感熱記録材料における感熱記録層の構成態様としては、特に限定されるものではなく、例えば、マイクロカプセル、カプラー、塩基性物質等が全て同一層に含まれた、単一層よりなる態様であってもよいし、別層に含まれるような複数層積層型の態様であってもよい。また、支持体上に、特開昭61−54980号公報等に記載の中間層を設けた後、感熱記録層を塗布形成した態様であってもよい。いずれの態様においても、さらに、色相の異なる単色かつ単一の感熱記録層を複数層積層したフルカラー発色型の態様である。
【0186】
本発明の多色感熱記録材料において、感熱記録層、中間層又は後述の保護層等の各層にはバインダーを含有することができ、該バインダーとしては、公知の水溶性高分子化合物やラテックス類等の中から適宜選択することができる。
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド等及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0187】
前記ラテックス類としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
中でも、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン誘導体、ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体、ポリアクリル酸アミド誘導体等が好ましい。
【0188】
また、本発明の多色感熱記録材料には顔料を含有させることもでき、該顔料としては、有機、無機を問わず公知のものが挙げられ、例えば、カオリン、焼成カオリン、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトポン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、マイクロバルーン、尿素−ホルマリンフィラー、ポリエステルパーティクル、セルロースフィラー等が挙げられる。
【0189】
また、必要に応じて、公知のワックス、帯電防止剤、消泡剤、導電剤、蛍光染料、界面活性剤、紫外線吸収剤及びその前駆体等の各種添加剤を使用することもできる。
【0190】
本発明の多色感熱記録材料においては、必要に応じて、感熱記録層上に保護層を設けてもよい。該保護層は、必要に応じて二層以上積層してもよい。
前記保護層に用いる材料としては、ポリビニルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン類、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子化合物、及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等のラテックス類等が挙げられる。
【0191】
前記水溶性高分子化合物は、架橋させることで、より一層保存安定性を向上させることもできる。該架橋剤としては、公知の架橋剤の中から適宜選択することができ、例えば、N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、尿素−ホルマリン等の水溶性初期縮合物;グリオキザール、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物類;硼酸、硼砂等の無機系架橋剤;ポリアミドエピクロルヒドリン等が挙げられる。
【0192】
前記保護層には、さらに公知の顔料、金属石鹸、ワックス、界面活性剤等を使用することもできる。
保護層の塗布量としては、乾燥塗布量で0.2〜5g/m2が好ましく、0.5〜2g/m2がより好ましい。その膜厚としては、0.2〜5μmが好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。
また、保護層を設ける場合には、該保護層中に公知の紫外線吸収剤やその前駆体を含有させてもよい。
前記保護層は、支持体上に感熱記録層を形成する場合と同様、上述の公知の塗布方法により設けることができる。
【0193】
本発明の多色感熱記録材料に使用可能な支持体としては、通常の感圧紙や感熱紙、乾式や湿式のジアゾ複写紙等に用いられる紙支持体はいずれも使用することができる他、酸性紙、中性紙、コート紙、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム等を使用することができる。
【0194】
支持体上には、カールバランスを補正する目的で、或いは、裏面からの耐薬品性を向上させる目的で、バックコート層を設けてもよい。該バックコート層は、前記保護層と同様にして設けることができる。
さらに、必要に応じて、支持体と感熱記録層との間、或いは、支持体の感熱記録層が設けられた側の表面にアンチハレーション層を、その裏側の表面にスベリ層、アンチスタチック層、粘着剤層等を設けることもできる。
また、支持体の裏面(感熱記録層が設けられない側の表面)に、接着剤層を介して剥離紙を組合わせてラベルの形態としてもよい。
【0195】
ジアゾニウム塩化合物をマイクロカプセルに内包することにより、記録材料としての長期での安定性をより高めることができる。
【0196】
[記録方法]
本発明の多色感熱記録材料を用いる画像形成は、本発明の記録方法により以下のようにして行うことができる。即ち、赤外線吸収色素を含ませた感熱記録層の記録は、赤外線吸収色素を励起するレーザー光等により画像様に照射することにより行われる。赤外線吸収色素はレーザー光を吸収し、その光エネルギーは熱エネルギーに変換する。
レーザー光の発振波長としては700nm〜1100nmの赤外領域のものが好ましい。具体的には、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
また、赤外線吸収色素を含まない感熱記録層は、サーマルヘッド等の加熱装置により画像様に加熱して画像形成する。
各感熱記録層において、前記のように光エネルギーから変換された熱エネルギーを付与された部分、及びサーマルヘッド等の加熱装置により加熱された部分においては、感熱記録層中のポリウレア及び/又はポリウレタンを含むカプセル壁が軟化して物質透過性となり、カプセル外のカプラーや塩基性物質(有機塩基)がマイクロカプセル内に浸入し、画像様に発色する。
【0197】
ジアゾニウム塩を含む感熱記録層を発色させた後、その層中のジアゾニウム塩化合物の吸収波長に相当する光を照射することにより(光定着)、他の層を発色させる際の該層の発色を防ぐだけでなく、未反応のジアゾニウム塩化合物を分解して、形成した画像の濃度変動や、非画像部(地肌部)におけるステインの発生による着色、即ち、白色性の低下、該低下に伴う画像コントラストの低下を抑制することができる。
また、本発明の多色感熱記録材料を記録する際、この光定着を利用して、赤外線吸収色素を消色させることが好ましい。この場合、赤外線吸収色素を含む層に光ラジカル発生剤を添加することが好ましい。
赤外線吸収色素の消色は、多色感熱記録材料の全面に、未記録の感熱記録層に発色が生じない程度に、加熱することによっても行うことができる。この場合、赤外線吸収色素を含む層に熱ラジカル発生剤を添加することが好ましい。
【0198】
前記光定着に用いる光源としては、種々の発光ダイオード、蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等が挙げられ、これら光源の発光スペクトルが感熱記録材料中のジアゾニウム塩の吸収スペクトルとほぼ一致していることが、高効率に定着しうる点で好ましい。また、光定着の経時的安定性の観点から発光ダイオードが好ましい。
【0199】
また、光により画像様に書き込みを行い、熱現像して画像化する光書込み熱現像型感熱記録材料として用いることもできる。この場合、印字印画過程を、上記のような加熱装置に代えてレーザ等の光源が担う。
【0200】
以下において、本発明の多色感熱記録材料として、例えば、支持体上に電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とを含有する第1の感熱記録層(A層)と、第1のジアゾニウム塩化合物を含む第2の感熱記録層(B層)と、第2のジアゾニウム塩化合物及び赤外線吸収色素を含む第3の感熱記録層(C層)とを有する多色感熱記録材料の場合について、その記録方法を説明する。
まず、第3の感熱記録層(C層)に、赤外レーザー光により画像様に書き込みを行い、該層に含まれるジアゾニウム塩化合物とカプラーとを反応させ発色させる。次いで、例えば、360±25nmの光を照射してC層中に含まれている未反応のジアゾニウム塩を分解させる。この際、前記のようにして赤外線吸収色素を消色させる(例えば、赤外線吸収色素としてボレートアニオンを有する赤外線吸収色素を用いたり、光又は熱ラジカル発生剤を添加するなど)ことが好ましい。赤外線吸収色素がボレートアニオンを有するものであったり、光ラジカル発生剤を添加した場合には、この定着の工程で消色が行われる。)
次に、第2の感熱記録層(B層)が発色するに十分な熱を与え(例えばサーマルヘッドを用いる)、該層に含まれているジアゾニウム塩とカプラー化合物とを反応させ発色させる。このとき第3の感熱記録層((C層)も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解しており、発色能力が失われているので発色しない。この後、例えば、450±65nmの光を照射して第2の感熱記録層(B層)に含まれているジアゾニウム塩を分解させる。最後に、第1の感熱記録層(A層)が発色するに十分な熱を与えて発色させる。このとき第2及び第3の感熱記録層(B層、C層)も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解しており、発色能力が失われているので発色しない。
本発明の多色感熱記録材料の感熱記録層が、2層以上赤外線吸収色素を含む場合(該色素の吸収波長は互いに異なる)、例えば、前記の多色感熱記録材料において、第2の感熱記録層も赤外線吸収色素を含む場合、まず、各層に異なる波長領域の複数の赤外レーザー光を、同時に又は別々に画像様に書き込み、その後、一度にあるいは多数回の光定着を行うことが好ましい。
【0201】
[他の層]
感熱記録層相互の混色を防ぐ目的で、各感熱記録層間に中間層を設けることもできる。
該中間層は、ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物からなり、適宜各種添加剤を含んでいてもよい。
【0202】
本発明の多色感熱記録材料は、必要に応じて、さらにその上層として光透過率調整層若しくは保護層、又は光透過率調整層及び保護層を設けることが望ましい。
前記光透過率調整層については、特開平9−39395号公報、同9−39396号公報、特願平7−208386号公報等に記載されている。
光透過率調整層に、紫外線吸収剤の前駆体として機能する成分を用いる場合には、定着に必要な波長領域の光を照射する前は、紫外線吸収剤として機能しないために高い光透過率を有するため、光定着型感熱記録層を定着する際、定着に必要な領域の波長を十分に透過させることができ、かつ可視光線の透過率も高く、感熱記録層の定着に支障をきたすことはない。
【0203】
一方、前記紫外線吸収剤の前駆体は、光定着型感熱記録層の光定着(光照射によるジアゾニウム塩の光分解)に必要な波長領域の光を照射した後、該光により反応を起こし紫外線吸収剤として機能するようになる。この紫外線吸収剤により、紫外線領域の波長の光の大部分が吸収されてその透過率が低下し、感熱記録材料の耐光性を向上させることが可能となる。しかしながら、可視光線の吸収性はないため、可視光線の透過率は実質的に変わらない。
光透過率調整層は、感熱記録材料中に少なくとも1層設けることができ、中でも特に、感熱記録層と保護層との間に形成することが好ましい。また、光透過率調整層の機能を保護層に持たせ、兼用させてもよい。
【0204】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の「部」又は「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」又は「質量%」を意味する。
[実施例1]
<フタル化ゼラチン溶液の調製>
フタル化ゼラチン(商品名;MGPゼラチン,ニッピコラーゲン(株)製)32部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)0.9143部、イオン交換水367.1部を混合し、40℃にて溶解し、フタル化ゼラチン水溶液を得た。
【0205】
<アルカリ処理ゼラチン溶液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)25.5部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)0.7286部、水酸化カルシウム0.153部、イオン交換水143.6部を混合し、50℃にて溶解し、乳化物作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0206】
(1)第3の感熱記録層(C層)液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(c)の調製>
酢酸エチル16.1部に、前記ジアゾニウム塩化合物(例示化合物17)4.4部、モノイソプロピルビフェニル4.8部、フタル酸ジフェニル4.8部を添加し、40℃に加熱して均一に溶解した。この混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)8.6部を添加し、均一に攪拌し混合液(I)を得た。
【0207】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液58.6部にイオン交換水16.3部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.34部添加し、混合液(II)を得た。
【0208】
混合液(II)に混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水20部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(c)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.36μmであった。
【0209】
<カプラー化合物乳化液(c)の調製>
酢酸エチル33.0部に前記カプラー化合物(B−1)9.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)9.9部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))20.8部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’,6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.3部、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)13.6部、4−n−ペンチルオキシベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)6.8部、前記赤外線吸収色素(例示化合物 DYE−35)を3.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.2部を溶解し、混合液(III)を得た。
【0210】
別途前記アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(IV)を得た。
【0211】
混合液(IV)に混合液(III)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が26.5質量%になるように濃度調節を行った。得られたカプラー化合物乳化物の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.21μmであった。
【0212】
更に上記カプラー化合物乳化物100部に対して、SBRラテックス(商品名SN−307,48%液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5%に濃度調整したものを9部添加して均一に撹拌してカプラー化合物乳化液(c)を得た。
【0213】
<塗布液(c)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(c)および前記カプラー化合物分乳化液(c)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が2.2/1になるように混合し、イエローの第3の感熱記録層(C層)用塗布液(c)を得た。
【0214】
(2)第2の感熱記録層(B層)液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(b)の調製>
酢酸エチル15.1部に、前記ジアゾニウム塩化合物(例示化合物26)2.8部、フタル酸ジフェニル7.7部、化合物(商品名;ライトエステルTMP,共栄油脂化学(株)製)4.2部、及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)0.1部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)12.7部を添加し、均一に攪拌し混合液(V)を得た。
【0215】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液55.3部にイオン交換水21.0部添加、混合し、混合液(VI)を得た。
混合液(VI)に混合液(V)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水24部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(b)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.43μmであった。
【0216】
<カプラー化合物乳化液(b)の調製>
酢酸エチル36.9部に前記カプラー化合物(B−15)11.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)14.0部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))14.0部、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン14部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’、6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.5部、下記化合物(F)3.5部、リン酸トリクレジル1.7部、マレイン酸ジエチル0.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.5部を溶解し、混合液(VII)を得た。
【0217】
【化63】
【0218】
別途アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(VIII)を得た。
【0219】
混合液(VIII)に混合液(VII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が24.5質量%になるように濃度調節を行い、カプラー化合物乳化液(b)を得た。得られたカプラー化合物乳化液の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.22μmであった。
【0220】
<塗布液(b)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー化合物分乳化液(b)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が3.5/1になるように混合した。さらに、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)をカプセル液量10部に対し、0.2部になるように混合し、マゼンタの第2の感熱記録層(B層)用塗布液(b)を得た。
【0221】
(3)第1の感熱記録層(A層)液の調製
<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(a)の調製>
酢酸エチル18.1部に、下記電子供与性染料(G)7.4部、1−メチルプロピルフェニル−フェニルメタンおよび1−(1−メチルプロプルフェニル)−2−フェニルエタンの混合物(商品名;ハイゾールSAS−310,日本石油(株)製)8.0部、下記化合物(H)(商品名;Irgaperm2140 チバガイギー(株)の商品名)8.0部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)4.2部と、キシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)11.5部との混合物を添加し、均一に攪拌し混合液(IX)を得た。
【0222】
【化64】
【0223】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液28.8部にイオン交換水9.5部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.17部およびドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(10%水溶液)4.3部を添加混合し、混合液(X)を得た。
【0224】
混合液(X)に混合液(IX)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水50部、テトラエチレンペンタミン0.12部を加え均一化し、65℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行ないカプセル液の固形分濃度が33%になるように濃度調節しマイクロカプセル液を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で1.00μmであった。
【0225】
更に上記マイクロカプセル液100部に対して、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム25%水溶液(商品名;ネオペレックスF−25、花王(株)製)3.7部と4,4’−ビストリアジニルアミノスチルベン−2,2’−ジスルフォン誘導体を含む蛍光増白剤(商品名;Kaycoll BXNL、日本曹達(株)製)4.2部を添加して均一に撹拌してマイクロカプセル分散液(a)を得た。
【0226】
<電子受容性化合物分散液(a)の調製>
前記フタル化ゼラチン水溶液11.3部にイオン交換水30.1部、下記化合物15.0部、2%の2−エチルヘキシルコハク酸ナトリウム水溶液3.8部を加えて、ボールミルにて一晩分散した後、分散液を得た。この分散液の固形分濃度は26.6%であった。
上記分散液100部に、前記アルカリ処理ゼラチン水溶液45.2部を加えて30分攪拌した後、分散液の固形分濃度が23.5%となるようにイオン交換水を加えて電子受容性化合物分散液(a)を得た。
【0227】
【化65】
【0228】
<塗布液(a)の調製>
前記電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(a)および前記電子受容性化合物分散液(a)を、電子受容性化合物/電子供与性染料前駆体の質量比が10/1になるように混合し、シアンの第1の感熱記録層(A層)用塗布液(a)を得た。
【0229】
(4)中間層用塗布液の調製
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)100.0部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)2.857部、水酸化カルシウム0.5部、イオン交換水521.643部を混合し、50℃にて溶解し、中間層作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0230】
前記中間層作製用ゼラチン水溶液10.0部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)0.05部、硼酸(4.0質量%水溶液)1.5部、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)0.19部、下記化合物(I)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液3.42部、下記化合物(I’)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液1.13部、イオン交換水0.67部を混合し、中間層用塗布液とした。
【0231】
【化66】
【0232】
(5)光透過率調整層用塗布液の調製
(v−1)紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液の調製
酢酸エチル71部に紫外線吸収剤前駆体として[2−アリル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェニル]ベンゼンスルホナート14.5部、2,2’−t−オクチルハイドロキノン5.0部、燐酸トリクレジル1.9部、α−メチルスチレンダイマー(商品名:MSD−100,三井化学(株)製)5.7部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)0.45部を溶解し均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物 (商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)54.7部を添加し、均一に攪拌し紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を得た。
【0233】
別途、イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318,クラレ(株)製)52部に30質量%燐酸水溶液8.9部、イオン交換水532.6部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液を調製した。
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液516.06部に前記紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて20℃の下で乳化分散した。得られた乳化液にイオン交換水254.1部を加え均一化した後、40℃下で攪拌しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトMB−3(オルガノ(株)製)94.3部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除きカプセル液の固形分濃度が13.5%になるように濃度調節した。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.23±0.05μmであった。このカプセル液859.1部にカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス(商品名:SN−307,(48質量%水溶液),住友ノーガタック(株)製)2.416部、イオン交換水39.5部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液を得た。
【0234】
(v−2) 光透過率調整層用塗布液の調製
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液1000部、下記化合物(J)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))5.2部、4質量%水酸化ナトリウム水溶液7.75部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)73.39部を混合し、光透過率調整層用塗布液を得た。
【0235】
【化67】
【0236】
(6)保護層用塗布液の調製
(vi−1)保護層用ポリビニルアルコール溶液の調製
ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物(商品名:EP−130,電気化学工業(株)製)160部、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液(商品名:ネオスコアCM−57,(54質量%水溶液),東邦化学工業(株)製)8.74部、イオン交換水3832部を混合し、90℃のもとで1時間溶解し均一な保護層用ポリビニルアルコール溶液を得た。
【0237】
(vi−2)保護層用顔料分散液の調製
硫酸バリウム(商品名:BF−21F,硫酸バリウム含有量93%以上,堺化学工業(株)製)8部に陰イオン性特殊ポリカルボン酸型高分子活性剤(商品名:ポイズ532A(40質量%水溶液),花王(株)製)0.2部、イオン交換水11.8部を混合し、ダイノミルにて分散して保護層用顔料分散液を調製した。この分散液は粒径測定(LA−910,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.15μm以下であった。
【0238】
上記硫酸バリウム分散液45.6部に対し、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO(20質量%水分散液)、日産化学(株)製)8.1部を添加して目的の分散物を得た。
【0239】
(vi−3)保護層用マット剤分散液の調製
小麦澱粉(商品名:小麦澱粉S,新進食料工業(株)製)220部に1−2ベンズイソチアゾリン3オンの水分散物(商品名:PROXEL B.D,I.C.I(株)製)3.81部、イオン交換水1976.19部を混合し、均一に分散し、保護層用マット剤分散液を得た。
【0240】
(vi−4)保護層用塗布ブレンド液の調製
前記保護層用ポリビニルアルコール溶液1000部に前記化合物(K)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))40部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム (三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)50部、前記保護層用顔料分散液49.87部、前記保護層用マット剤分散液16.65部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115,20.5質量%水溶液,中京油脂(株)製)48.7部を均一に混合し保護層用塗布ブレンド液を得た。
【0241】
(7)下塗り層つき支持体の作製
<下塗り層液の調製>
酵素分解ゼラチン(平均分子量:10000、PAGI法粘度:1.5mPa・s、PAGI法ゼリー強度:20g)40部をイオン交換水60部に加えて40℃で攪拌溶解して下塗り層用ゼラチン水溶液を調製した。
【0242】
別途水膨潤性の合成雲母(アスペクト比:1000、商品名:ソマシフME100,コープケミカル社製)8部と水92部とを混合した後、ビスコミルで湿式分散し、平均粒径が2.0μmの雲母分散液を得た。この雲母分散液に雲母濃度が5質量%となるように水を加え、均一に混合し、所望の雲母分散液を調製した。
【0243】
40℃の40質量%の前記ゼラチン水溶液100部に、水120部およびメタノール556部を加え、十分攪拌混合した後、5質量%前記雲母分散液208部を加えて、十分攪拌混合し、1.66質量%ポリエチレンオキサイド系界面活性剤9.8部を加えた。そして液温を35℃から40℃に保ち、エポキシ化合物のゼラチン硬膜剤7.3部を加えて下塗り層用塗布液(5.7質量%)を調製し、下塗り用塗布液を得た。
【0244】
<下塗り層つき支持体の作製>
LBPS 50部LBPK 50部からなる木材パルプをデイスクリファイナーによりカナデイアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、硫酸アルミニウム1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部をいずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し長網抄紙機により坪量114g/m2の原紙を抄造しキャレンダー処理によって厚み100μmに調整した。
【0245】
次に原紙の両面にコロナ放電処理を行った後、溶融押し出し機を用いてポリエチレンを樹脂厚36μmとなるようにコーテイングしマット面からなる樹脂層を形成した(この面をウラ面と呼ぶ)。次に上記樹脂層を形成した面とは反対側に溶融押し出し機を用いてアナターゼ型二酸化チタンを10質量%及び微量の群青を含有したポリエチレンを樹脂厚50μmとなるようにコーテイングし光沢面からなる樹脂層を形成した(この面をオモテ面と呼ぶ)。ウラ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(商品名;アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)/二酸化珪素(商品名;スノーテックスO、日産化学工業(株)製)=1/2(質量比)を水に分散させて乾燥後の質量で0.2g/m2塗布した。次にオモテ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、上記下塗り液を雲母の塗布量が0.26g/m2となるように塗布し、下塗り層つき支持体を得た。
【0246】
<各感熱記録層用塗布液の塗布>
前記下塗り層つき支持体の上に、下から、前記第1の感熱記録層用塗布液(a)、前記中間層用塗布液、前記第2の感熱記録層用塗布液(b)、前記中間層用塗布液、前記第3の感熱記録層用塗布液(c)、前記光透過率調整層用塗布液、前記保護層用塗布液の順に7層同時に連続塗布し、30℃湿度30%、および40℃湿度30%の条件でそれぞれ乾燥して多色感熱記録材料を得た。
この際、前記感熱記録層用塗布液(c)の塗布量は液中に含まれるジアゾニウム塩化合物(17)の塗布量が固形分塗布量で0.078g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(b)の塗布量は液中に含まれるジアゾニウム塩化合物(26)の塗布量が固形分塗布量で0.206g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(a)の塗布量は液中に含まれる電子供与性染料(G)の塗布量が固形分塗布量で0.355g/m2となるように塗布を行った。
また、前記中間層用塗布液はC層とB層の間は固形分塗布量が2.39g/m2、B層とA層の間は固形分塗布量が3.34g/m2、前記光透過率調整層用塗布液は固形分塗布量が2.35g/m2、保護層は固形分塗布量が1.39g/m2となるように塗布を行った。
【0247】
[実施例2]
実施例1の混合液(III)において、赤外線吸収色素(例示化合物 DYE−35)の代わりに、例示化合物 DYE−40を用いる他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0248】
[実施例3]
実施例1の混合液(III)において、さらに、前記光ラジカル発生剤(例示化合物 D−1)を0.5部加える他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
[実施例4]
実施例3の光ラジカル発生剤D−1を前記D−43に変更する他は、実施例3と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0249】
[実施例5]
実施例1の混合液(I)の調製において、酢酸エチル16.1部にジアゾニウム塩化合物を溶解させる際、赤外線吸収色素DYE−35を3部加え、かつ、混合液(III)においてDYE−35を添加しない他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0250】
[実施例6]
実施例1の混合液(I)の調製において、酢酸エチル16.1部にジアゾニウム塩化合物を溶解させる際、DYE−35を1.5部加え、混合液(III)においてDYE−35を2.0部加える他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0251】
[実施例7]〜[実施例10]
実施例1におけるジアゾニウム塩化合物、カプラー及び電子供与性無色染料を以下の表1のごとく変更する他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0252】
【表1】
【0253】
[比較例1]
実施例1の混合液(III)においてDYE−35を加えなかった他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0254】
[比較例2]
実施例1の混合液(III)においてDYE−35を加えず、かつ、ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(b)の調製において、カプセル壁材が「キシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)12.7部」の代わりに、「前記タケネートD119N 2.5部と、キシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)6.8部との混合物」を用い、さらに、電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(a)の調製において、カプセル壁材として「タケネートD119N 4.2部と前記タケネートD110N 11.5部との混合物」の代わりに、「タケネートD110N7.2部と、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(商品名;ミリオネートMR−200,日本ポリウレタン工業(株)製)5.3部の混合物」を用いる他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0255】
[比較例3]
比較例1の多色感熱記録材料を用い、比較例1とは異なる記録方法を適用して画像記録を行った。
【0256】
表2に、実施例1ないし10、比較例1及び2の多色感熱記録材料の、第3の感熱記録層(C層)における赤外線吸収色素及び光ラジカル発生剤の添加の有無ならびに添加量を示す。
【0257】
【表2】
【0258】
また、表3に、実施例1ないし10、比較例1及び2の多色感熱記録材料の、第2の感熱記録層(B層)及び第1の感熱記録層(A層)に用いた、マイクロカプセル壁材を示す。
【0259】
【表3】
【0260】
[評価]
得られた実施例1〜10、及び比較例1及び2の多色感熱記録材料に対し、以下の評価を行った。
【0261】
<実施例1ないし10及び比較例1の画像記録>
〈レーザービームを用いた画像記録〉
発振波長780nmの半導体レーザービームを用いて、記録層側から画像様に1ミリ秒間で35mJ/mm2のエネルギーとなるように照射した。次いで、発光中心波長420nm(出力40W)の紫外線ランプで、発色領域及び未発色領域の双方に10秒間曝光し、第3の感熱記録層(C層)に画像記録を行った。
〈サーマルヘッドを用いた画像記録〉
次に、前記第3層の紫外線曝光を行った発色領域及び未発色領域の双方に、サーマルヘッドKST(商品名;京セラ(株)製)を用い、単位面積当たりの記録エネルギーとして40〜90mJ/mm2の範囲のエネルギーで印画し、その後、発光中心波長365nm(出力40W)の紫外線ランプで、第2層の発色領域及び未発色領域の双方に30秒間曝光し、第2の感熱記録層(B層)に画像記録を行った。
さらに、紫外線曝光を行った第3層(C層)及び第2層(B層)の発色領域及び未発色領域をそれぞれ組み合わせた4つの領域に、上記サーマルヘッドを用いて95〜135mJ/mm2の範囲のエネルギーで印画し、第1の感熱記録層に画像記録を行った。(表4に、第1ないし第3の感熱記録層の発色領域と非発色領域が、積層方向において重なるすべての組み合わせを示す。)
【0262】
<実施例7ないし10の画像記録>
実施例1の画像記録方法において、第3の感熱記録層における光定着を、発光中心波長365nm(出力40W)の紫外線ランプで、18秒間曝光することに変更し、かつ、第2の感熱記録層における光定着を、発光中心波長420nm(出力40W)の紫外線ランプで、10秒間曝光することに変更する他は、実施例1と同様にして画像記録を行った。
【0263】
<比較例2の画像記録>
〈サーマルヘッドを用いた画像記録〉
上記のサーマルヘッドを用い、第3の感熱記録層(C層)を25〜75mJ/mm2、第2の感熱記録層(B層)を80〜125mJ/mm2、第1の感熱記録層(A層)を130〜170mJ/mm2の範囲のエネルギーで熱記録した。紫外線ランプによる曝光は実施例1の場合と同じとした。
【0264】
<比較例3の画像記録>
〈サーマルヘッドを用いた画像記録〉
比較例1の多色感熱記録材料に対して、第3の感熱記録層(C層)を10〜35mJ/mm2、第2の感熱記録層(B層)を40〜90mJ/mm2、第1の感熱記録層(A層)を95〜135mJ/mm2の範囲のエネルギーで熱記録した。紫外線ランプによる曝光は実施例1の場合と同じとした。
【0265】
表4に、第1ないし第3のそれぞれの発色領域の色相と発色濃度、及び前記積層方向において重なるすべての組み合わせについての色相を示す。
【0266】
【表4】
【0267】
表4から、実施例1ないし10の第1層ないし第3層は、記録エネルギーが低いにもかかわらず、十分な発色濃度が得られていることが分かる。これに対し、比較例1では、第3層に赤外線吸収色素を含ませていないため、レーザー光で記録をしようとしても第3層は発色しない。
比較例2は、従来の多色感熱記録材料であり、低温、中温及び高温の3つの温度領域を用いることにより十分な発色濃度が得られているが、記録エネルギーは、実施例1ないし6のものに比較し、かなり大きい。また、比較例3は、第3の感熱記録層に対するエネルギー付与(10〜35mJ/mm2)が小さいため、濃度不足となる。
このことから、本発明の多色感熱記録材料においては、少なくとも1層を非接触の光記録層とすることにより、低エネルギーで記録可能であることが分かる。
【0268】
【発明の効果】
本発明の多色感熱記録材料は、感熱記録層の少なくとも1層に赤外線吸収色素を含有させ、この層を非接触の光記録(例えばレーザー光記録)を行うため、他の層の発色温度を従来のものより低く設定でき、その結果、高速記録が可能となる。また、接触熱記録の際のエネルギーを小さくすることができるため、高速で接触熱記録を行っても、従来の多色感熱記録材料に比較して、印画障害を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多色感熱記録材料(実線)と、従来の多色感熱記録材料(点線)の記録エネルギー(サーマルヘッド記録)を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも1層を赤外レーザー光書き込み等の非接触記録が可能な多色感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルカラー画像を得る感熱記録方式はいくつか知られているが、直接感熱方式でフルカラー画像を得ることは一般に難しく、何らかの工夫が必要である。また、近年、フルカラー画像を得るためのプリント時間の高速化が求められている。
直接感熱方式でフルカラー画像を得る手段はこれまで種々検討されているが、例えば以下の特許文献1には、電子供与性無色染料前駆体と電子受容性化合物を組み合わせた第1の感熱記録層と、感光波長が異なる2種のジアゾニウム塩化合物とそれぞれのジアゾニウム塩化合物と反応して異なった色相に発色するカプラーを組み合わせた第2及び第3の感熱記録層との、合計3つの感熱記録層を設けた多色感熱記録材料を用いることにより、直接感熱方式でフルカラーを得る方式が提案されている。
【0003】
前記多色感熱記録材料の第2及び第3の感熱記録層において、2種のジアゾニウム塩化合物の感光波長域は、それぞれ極大吸収波長が400±20nmと360±20nmのものであり、支持体から見て近い方の層(前記公報中、「第二の感熱記録層」と表示されている)に極大吸収波長360±20nmのジアゾニウム塩化合物(B’)を用い、その上の層(遠い方の層、前記公報中では「第三の感熱記録層」と表示されている)に極大吸収波長400±20nmのジアゾニウム塩化合物(A’)を用いる構成が提案されている。
前記多色感熱記録材料の記録方法としては、第3の感熱記録層を熱印字して発色させ、次いで第3の感熱記録層のジアゾニウム塩化合物(A’)を光照射により分解する。その後に第二の感熱記録層を熱印字して発色させ、次いで第2の感熱記録層のジアゾニウム塩化合物(B’)を光照射により分解する手順が採用されている。
そして前記方式によるフルカラー作製は、インクリボンに塗布された染料を受像紙に転写するいわゆる熱転写方式に比べて、ジアゾニウム塩化合物の光分解工程が余分に2つあるので、その分プリント時間は長くなる。そこで、プリント時間を短くするためには、ジアゾニウム塩化合物の光分解工程をできるだけ短時間で行うことが必要とされる。
【0004】
また、前記方式においては、第3の感熱記録層を低熱エネルギーで、第2の感熱記録層を中熱エネルギーで、第1の感熱記録層を高熱エネルギーで記録するといったように3つ領域の熱エネルギーを分けて印字するが、当然のことながら熱エネルギーが高くなるに従い記録エネルギーは増大し、また、その結果記録時間も長くなる。
したがって、熱印字を行う感熱記録材料において、より低熱エネルギー(高感度記録)で、また、より高速記録を行えるものが望まれる。
また、高速で熱印字する場合、サーマルヘッドを用いる接触型記録では、ヘッドと記録面の摩擦が原因となり種々の印画障害を起こす。したがって、このような観点からみると、高速で熱記録する場合は、低熱エネルギーでかつ非接触記録することが有利と考えられる。
【0005】
非接触記録方式としては、光熱変換を利用した記録方式が、既に提案されている。中でもレーザービームを用いる方式は、照射方向に対するレーザー光の光拡散がない点で記録ヘッドとしては好ましい。このようなレーザー光を用いて記録する感熱記録方法は、以下の特許文献2及び3等に開示されている。
前記のレーザー光を用いて記録が可能な感熱記録方法には、レーザービームを吸収して発熱する光熱変換材料が必要である。そして該光熱変換材料は、感熱記録材料の感熱記録層に含有させる方法、あるいは、光熱変換材料を塗布したシートを感熱記録層に密着させる方法などが考えられる。非接触方式という点では前者が好ましいが、光熱変換材料は着色しているものがほとんどであり、感熱発色層に含有させて記録した場合、通常、未印字部全体に光熱変換材料起因の着色が残る。文字情報や単色の画像情報のみを印字する場合は、未印字部の着色は許容されることもあるが、フルカラー画像を得るときには問題となり採用することができない。したがって、光熱変換材料を感熱記録層に含ませる場合は、この点を考慮することが好ましい。
【0006】
前記光熱変換材料としては赤外線吸収色素が知られており、中でもアニオン部にボレートアニオンを有するカチオン色素は、光励起によりボレートから発生したラジカルにより色素が分解されるので、光照射により消色する(以下の特許文献4及び5、非特許文献1ないし3を参照)。
しかしながら、多色感熱記録材料において、少なくとも1つの層に赤外線吸収色素を含有させ、この層を赤外レーザー光により画像記録するものは、全く知られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−288688号公報
【特許文献2】
特開平4−307292号公報
【特許文献3】
特開平8−127180号公報
【特許文献4】
特開昭62−150242号公報
【特許文献5】
特開昭62−143044号公報
【非特許文献1】
G.B.Schuster et.al.J.Am.Chem.Soc.,110,2326−2328(1998)
【非特許文献2】
G.B.Schuster et.al.J.Am.Chem.Soc.,112,6329−6338(1990)
【非特許文献3】
G.B.Schuster et.al.Pure.Appl.Chem.,62,1565−1572(1990)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、低エネルギー記録が可能で、したがって、高速記録を行っても印画障害を起こすことがない、又は少ない多色感熱記録材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の多色感熱記録材料及びその記録方法を提供することにより解決される。
(1)支持体上に、支持体に近い側から第1の感熱記録層、第2の感熱記録層及び第3の感熱記録層をこの順に有する多色感熱記録材料であって、少なくとも1つの感熱記録層が赤外線吸収色素を含み、かつ第2及び第3の感熱記録層が、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとを含有する多色感熱記録材料。
(2)前記第1の感熱記録層が電子供与性無色染料と電子受容性化合物を含むことを特徴とする前記(1)に記載の多色感熱記録材料。
(3)2つ以上の感熱記録層に赤外線吸収色素が含まれ、それぞれの感熱記録層に含まれる赤外線吸収色素の吸収波長が互いに異なることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の多色感熱記録材料。
(4)第3の感熱記録層に赤外線吸収色素が含有されていることを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0010】
(5)赤外線吸収色素が光照射又は熱の付与により分解消色することを特徴とする前記(1)ないし(4)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(6)赤外線吸収色素がボレートアニオンを有するカチオン性色素であることを特徴とする前記(1)ないし(5)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(7)赤外線吸収色素を含む感熱記録層が、光若しくは熱ラジカル発生剤、又は光若しくは熱酸発生剤を含有することを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(8)前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長が450±65nmであり、第3の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長が360±25nmであることを特徴とする前記(1)ないし(7)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
(9)前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物が、下記一般式(1)〜(3)で表されるジアゾニウム塩化合物のいずれかであることを特徴とする前記(1)ないし(8)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0011】
【化3】
【0012】
[一般式(1)〜(3)中、R1、R2、及びR4〜R9は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、スルホニル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基を表し、D1は置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。AはHammettのσp値が0.3以上の電子吸引性基を表す。X−は対アニオンを表す。一般式(1)〜(3)中のそれぞれのベンゼン環は更に置換基を有していてもよい。]
(10)前記第3の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物が、下記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩化合物であることを特徴とする前記(1)ないし(9)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0013】
【化4】
【0014】
[一般式(4)中、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、D2はHammettのσp値が0.3未満の基を表す。Xは対アニオンを表す。一般式(4)中のベンゼン環は更に置換基を有していてもよい。]
(11)前記ジアゾニウム塩化合物及び/又は電子供与性無色染料がマイクロカプセルに内包されていることを特徴とする前記(1)ないし(10)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料。
【0015】
(12)前記(1)ないし(11)のいずれか1に記載の多色感熱記録材料の記録方法であって、多色感熱記録材料の赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録する、多色感熱記録材料の記録方法。
(13)赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録した後、赤外線吸収色素を光照射又は加熱により消色することを特徴とする前記(12)記載の記録方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多色感熱記録材料について説明する。
本発明の多色感熱記録材料は、支持体上に、支持体に最も近い第1の感熱記録層(A層)、第1の感熱記録層の上に設けた第2の感熱記録層(B層)及び第2の感熱記録層の上に設けた第3の感熱記録層(C層)を有する多色感熱記録材料であり、少なくとも1つの感熱記録層が赤外線吸収色素を含むことを特徴とする。
本発明の多色感熱記録材料は、感熱記録層の少なくとも1層に赤外線吸収色素を含有させ、この層を非接触の光記録(例えばレーザー光記録)を行うため、他の層の発色温度を従来のものより低く設定でき、その結果、高速記録が可能となる。従来の多色感熱記録材料においては、サーマルヘッドにより、3つの感熱記録層を、低、中、高エネルギーの3つのエネルギー領域において接触熱記録する必要があったが、本発明の多色感熱記録材料においては、例えば、1つの感熱記録層を光記録層とすると、他の2つの感熱記録層は接触熱記録層となるものの、低及び中エネルギーという2つのエネルギー領域における接触熱記録を行うことが可能で、高エネルギー領域を適用する必要が無くなる。また、接触熱記録の際のエネルギーを小さくすることができるため、高速で接触熱記録を行っても、従来の多色感熱記録材料に比較して、印画障害を少なくすることができる。
図を用いて低エネルギー記録が可能なことを説明する。図1中、点線で示される曲線A、B及びCは、3つの感熱記録層を有する従来の多色感熱記録材料を用い、接触熱記録を行う場合の、それぞれ、低、中、高エネルギーの3つのエネルギー領域を示す。また、実線X及びYは、1つの層が赤外線吸収色素を含む感熱記録層で、2つの層が接触熱記録を行う感熱記録層である本発明の多色感熱記録材料に接触熱記録を行う場合の、2つの接触熱記録を行う感熱記録層に付与される熱エネルギー領域を示す。図から分かるように本発明の多色感熱記録材料を記録する際の、X及びYで示される2つのエネルギー領域は、従来の多色感熱記録材料を記録する際のエネルギー領域B及びCより低いエネルギー領域が可能となる。
【0017】
[感熱記録層]
本発明の多色感熱記録材料においては、少なくとも1つの感熱記録層に赤外線吸収色素を含有させる。
(赤外線吸収色素)
赤外線吸収色素は特に制限なく用いうるが、中でも、以下に詳述するカチオン性色素、錯塩形成色素及びキノン系中性色素が好ましい。
また、本発明において用いられる赤外線吸収色素の極大吸収波長は、600〜1100nmの範囲にあることが好ましく、特に700〜900nmの範囲にあるものが好ましい。
赤外線吸収色素は、バインダー中、マイクロカプセルオイル中、マイクロカプセル壁中、カプラー乳化物中のいずれに添加してもよい。バインダー中に添加する場合は、水溶性のものが、それ以外に添加する場合は油溶性のものを用いることが好ましい。
赤外線吸収色素の塗設量は、作製した多色感熱記録材料において、赤外領域で最も吸光度が高い波長の吸光度で決定され、該吸光度は0.1〜2.5の範囲が好ましく、0.2〜2.0の範囲がより好ましい。
本発明の多色感熱記録材料の2層以上に赤外線吸収色素を含ませる場合には、それぞれの感熱記録層に含まれる赤外線吸収色素の吸収波長が互いに異なることが必要である。
【0018】
以下に、本発明において用いる赤外線吸収色素について詳細に説明する。
(1)カチオン性色素
カチオン性色素は下記一般式(1)で表される色素である。
D1 + [X1 −1/m] m (1)
但し、D1 + はカチオン性色素母核を、X1 −は対アニオンを、mは1〜4の整数を表す。
【0019】
一般式(1)中のカチオン性色素母核であるD1 +としては、ポリメチン(シアニンを含む)、アズレニウム、ピリリウム、チオピリリウム、スクワリリウム、トリアリールメタン、インモニウム、ジインモニウム等が好ましい。X1 −1/mは対アニオンを形成できるものであれば特に限定されない。
上記のカチオン性色素としては、以下のような具体的色素が挙げられる。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
(2)錯塩形成色素
前記錯塩形成色素としては、チオールニッケル錯塩系、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素が好ましく、以下のようは具体的色素を挙げることができる。
【0025】
【化9】
【0026】
(3)キノン系中性色素
キノン系中性色素としては、ナフトキノン系及びアントラキノン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0027】
【化10】
【0028】
また、前記(1)カチオン性色素として、対アニオンが以下の一般式で示されるようなボレートであるものは、光(定着光等)により分解・消色しやすいので好ましく用いられる。
【0029】
【化11】
【0030】
前記一般式中、R1、R2、R3及びR4は同じでも異なっていてもよく、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換の置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のアルカリール基、置換または未置換のアルケニル基、置換または未置換のアルキニル基、置換または未置換のアリサイクリック基、置換または未置換の複素環基、置換または未置換のアリル基、置換または未置換のシリル基、アリールオキシ基から選ばれる基であり、R1、R2、R3及びR4 は、その2個以上の基が結合して環状構造を形成していてもよい。
【0031】
ボレートアニオンの好適な例としては、例えば、テトラメチルボレート、テトラエチルボレート、テトラブチルボレート、トリイソブチルメチルボレート、ジ−n−ブチル−ジ−t−ブチルボレート、テトラ−n−ブチルボレート、テトラフェニルボレート、テトラ−p−クロロフェニルボレート、テトラ−m−クロロフェニルボレート、トリフェニルメチルボレート、トリフェニルエチルボレート、トリフェニルプロピルボレート、トリメシチルブチルボレート、トリトリルイソプロピルボレート、トリフェニルベンジルボレート、テトラベンジルボレート、トリフェニルフェネチルボレート、トリフェニル−p−クロロベンジルボレート、トリフェニルエテニルブチルボレート、ジ(α−ナフチル)−ジプロピルボレート、トリフェニルシリルトリフェニルボレート、トリトルイルシリルトリフェニルボレート、トリ−n−ブチル(ジメチルフェニルシリル)ボレート、トリブチル(2,6−ジ−t−ブチルフェニルオキシ)ボレート、トリブチル(2−t−ブチルフェニルオキシ)ボレート等が挙げられる。
【0032】
前記ボレートアニオンの他に、好適なボレートアニオンとして以下のようなものが挙げられる。
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
但し、ボレートアニオンは、前記のごときものに限定されるものではない。
【0036】
また、消色しやすい赤外線吸収色素の色素骨格としては、ポリメチン(シアニン)色素系が好ましい。したがって、対アニオンとしてボレートアニオンを有するポリメチン(シアニン)色素は特に好ましい。
以下に、対アニオンとしてボレートアニオンをもち、消色しやすい赤外線吸収色素の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
【化16】
【0040】
また、本発明において使用する赤外線吸収色素のうち、マイクロカプセル形成時に該マイクロカプセル壁材と反応する活性基を有しているものも有効である。
活性基の具体例としては、イソシアネート基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基等を挙げることができるが、特にイソシアネート基及びヒドロキシ基が好ましく、以下のような、活性基を有するカチオン性色素、錯塩形成色素及びキノン系中性色素が好ましい。
(1)−1 カチオン性色素
カチオン性色素は下記一般式(1)で表される色素である。
D1 + [X1 −1/m]m (1)
但し、D1 + はカチオン性色素母核を、X1 −は対アニオンを、mは1〜4の整数を表す。
【0041】
一般式(1)中のカチオン性色素母核であるD1 +としては、ポリメチン(シアニンを含む)、アズレニウム、ピリリウム、チオピリリウム、スクワリリウム、トリアリールメタン、インモニウム、ジインモニウム等が好ましい。X1 −1/mは対アニオンを形成できるものであれば特に限定されず、上記マイクロカプセル壁と反応する活性基はD1 +若しくはX1 −1/mの何れにあってもよい。
【0042】
活性基を有するカチオン性色素としては、以下のような具体的色素が挙げられる。
【0043】
【化17】
【0044】
【化18】
【0045】
【化19】
【0046】
【化20】
【0047】
(2)−1 錯塩形成色素
活性基を有する錯塩形成色素としては、チオールニッケル錯塩系、フタロシアニン系色素、及びナフタロシアニン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0048】
【化21】
【0049】
(3)−1 キノン系中性色素
活性基を有するキノン系中性色素としては、ナフトキノン系及びアントラキノン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0050】
【化22】
【0051】
(発色材料)
本発明の多色感熱記録材料において、第1の感熱記録層における発色系としては、電子供与性無色染料と電子受容性化合物の組み合わせ、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとの組み合わせ、塩基性化合物と接触して発色する塩基発色系、キレート発色系、求核剤と反応して脱離反応を生じて発色する発色系等のいずれであってもよい。これらの発色系としては、感熱記録材料に通常用いられるものが制限なく使用可能である。
【0052】
本発明の多色感熱記録材料において、前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物(以下において「第1のジアゾニウム塩化合物」ということがある)の極大吸収波長が450±65nmであり、第3の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物(以下において「第2のジアゾニウム塩化合物」ということがある)の極大吸収波長が360±25nmであることが好ましい。これにより第2のジアゾニウム塩化合物の光分解工程にかかる時間が短縮され、その結果、プリント時間がさらに短くなる。(ジアゾニウム塩化合物の光定着(光分解)は、ジアゾニウム塩化合物の光吸収を阻害する成分が存在すると遅くなるが、第2の感熱記録層に用いるジアゾニウム塩化合物の感光波長域が340〜380nmと紫外線領域にあると、光分解時の光エネルギーは自層の構成素材や第3の感熱記録層の構成素材により吸収される傾向にあるため、感光波長域が短波のジアゾニウム塩化合物を第3の感熱記録層に含有させて吸収阻害をなくす。)
【0053】
また、第3層における第2のジアゾニウム塩化合物に対する第2層における第1のジアゾニウム塩化合物の、波長360nmにおけるモル吸光係数の割合が20%以下であると、第3層を光定着する際、その影響が第2層に及ばない。
【0054】
また、第3の感熱記録層の画像形成後の画像部は光を吸収しやすいため、第2の感熱記録層の光定着への影響を考慮する必要がある。その点を考慮すると第3の感熱記録層の色相としては、より光の吸収が少ないシアンが最も好ましく、次いでマゼンタが好ましいことが分かる。イエロー色素は第1のジアゾニウム塩化合物の吸収特性と重なっており、第1のジアゾニウム塩化合物の吸収を阻害することがある。以上のことから、本発明における感熱記録材料の色相としては次の組合わせが好ましい。
支持体側から順に、イエロー/マゼンタ/シアン、マゼンタ/イエロー/シアン、シアン/イエロー/マゼンタ、イエロー/シアン/マゼンタである。
【0055】
(ジアゾニウム塩化合物)
本発明において用いるジアゾニウム塩化合物は、前記のごとき吸収特性を有するものが好ましい。
【0056】
−第1のジアゾニウム塩化合物−
第1のジアゾニウム塩化合物は、極大吸収波長450±65nmの範囲のジアゾニウム塩化合物である。前記極大吸収波長範囲の上限を超えると、ジアゾニウム塩化合物の安定性が劣化して実用性不足となることがあり、下限を超えると、第2のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長範囲と重なることがある。第1のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長の範囲は、より好ましくは、390〜480nmである。
第1のジアゾニウム塩化合物としては、一般式(1)〜(3)で表されるジアゾニウム塩化合物であることが好ましい。
【0057】
【化23】
[一般式(1)〜(3)中、R1、R2、及びR4〜R9は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、スルホニル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基を表し、D1は置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。AはHammettのσp値が0.3以上の電子吸引性基を表す。X−は対アニオンを表す。一般式(1)〜(3)中のそれぞれのベンゼン環は更に置換基を有していてもよい。]
【0058】
前記R1、R2、R4〜R9は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基が好ましい。特に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基が好ましい。アルキル基は分岐していてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はカルバモイル基で置換されていてもよい。また、フェニル基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアシル基で置換されていてもよい。
前記R1、R2、R4〜R9は、具体的には例えば以下に示すものが挙げられる。
【0059】
【化24】
【0060】
前記R3は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜18のアシル基、又は炭素数1〜18のアルコキシカルボニル基が好ましい。アルキル基、アルキルスルホニル基は分岐していてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はカルバモイル基で置換していてもよい。
アリールスルホニル基は、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
R3は、具体的には例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0061】
【化25】
【0062】
前記D1が置換アミノ基を表わす場合、置換アミノ基としては、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリールアミノ基、炭素数7〜20のN−アルキル−N−アリールアミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基が好ましく、これらの基はさらに1又は2以上の置換基を有していてもよい。また、前記アルキル基等の置換基同士が結合して環状アミノ基を形成してもよい。
D1がアルキルチオ基を表わす場合、炭素数1〜18のアルキルチオ基が好ましく、アリールチオ基を表わす場合、炭素数6〜10のアリールチオ基が好ましく、アルコキシ基を表わす場合、炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、アリールオキシ基を表わす場合、炭素数6〜10のアリールオキシ基が好ましく、これらの基はさらに1又は2以上の置換基を有していてもよい。
ジアゾニウム塩化合物の安定性の観点から、D1がジアルキルアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。
【0063】
前記D1が示す置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基におけるアルキル基、アリール基としては以下のようなものが挙げられる。
【0064】
【化26】
【0065】
前記Aとしては、スルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はシアノ基が好ましい。スルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、R3が表すスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基と同義である。
R8とR9、R13とR14は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0066】
酸アニオンX−の例としては、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルカルボン酸(例えば、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロドデカン酸)、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルスルホン酸(例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロヘキサデカンスルホン酸)、炭素数7〜50の芳香族カルボン酸(例えば、4,4−ジ−t−ブチルサリチル酸、4−t−オクチルオキシ安息香酸、2−n−オクチルオキシ安息香酸、4−t−ヘキサデシル安息香酸、2,4−ビス−n−オクタデシルオキシ安息香酸、4−n−デシルナフトエ酸)、炭素数6〜50の芳香族スルホン酸(例えば、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−t−オクチルオキシベンゼンスルホン酸、4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸)、4,5−ジ−t−ブチル−2−ナフトエ酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸等が挙げられる。中でも、炭素数6〜16のパーフルオロアルキルカルボン酸、炭素数10〜40の芳香族カルボン酸、炭素数10〜40の芳香族スルホン酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸などが好ましい。
【0067】
一般式(1)中のD1が置換アミノ基を示す場合、置換基同士が結合して形成される環状アミノ基、及び一般式(2)中の−N(R8)R9の環状のものとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0068】
【化27】
【0069】
一般式(3)のインドリル基上のベンゼン環は核置換基を有していてもよく、特に環の安定性の観点から電子吸引性基が好ましい。電子吸引性基のHammettのσp値としては0.1以上が好ましい。中でも、アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、スルホンアミド基、又はカルボンアミド基が好ましい。アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基は前記R3と同義であり、好ましい態様も同様である。スルホンアミド基は炭素数1〜12のものが好ましく、具体的には、次のものが挙げられる。
【0070】
【化28】
【0071】
カルボンアミド基は、炭素数2〜13のものが好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
【0072】
【化29】
【0073】
以下に、一般式(1)〜(3)で表されるジアゾニウム塩化合物の具体例(例示化合物(1)〜(22))を挙げるが本発明は以下に限定されるものではない。
【0074】
【化30】
【0075】
【化31】
【0076】
【化32】
【0077】
−第2のジアゾニウム塩化合物−
前記第2のジアゾニウム塩化合物は、極大吸収波長360±25nmの範囲のジアゾニウム塩化合物である。前記極大吸収波長範囲の上限を超えると、第1のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長範囲となり好ましくない。また、下限を超えると、ジアゾニウム塩化合物の安定性劣化と光分解性劣化が生じることがある。第2のジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長の範囲は、より好ましくは、350〜380nmである。
前記第2のジアゾニウム塩化合物としては、下記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩化合物が好ましい。
【0078】
【化33】
【0079】
一般式(4)中、R10及びR11は、R1と同義であり、好ましい例も同様である。
【0080】
前記D2はアルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。該アルコキシ基のアルキル基、アリールオキシ基のアリール基はR1が表すアルキル基、アリール基と同義であり、好ましい例も同様である。
【0081】
以下に、一般式(4)で表されるジアゾニウム塩化合物の具体例(例示化合物(23)〜(29))を挙げるが本発明は以下に限定されるものではない。
【0082】
【化34】
【0083】
また、前記一般式(1)〜(3)及び(4)で示されるジアゾニウム塩化合物は、一般式(4)で示される第2のジアゾニウム塩化合物に対する、一般式(1)〜(3)で示される第1のジアゾニウム塩化合物の、波長360nmにおけるモル吸光係数の割合が20%以下のものが好ましい。
【0084】
また、ジアゾニウム塩化合物は、油状、結晶状のいずれであってもよいが、取扱い性の点で常温で結晶状態のものが好ましい。このジアゾニウム塩化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、また、既存のジアゾニウム塩化合物と併用してもよい。
【0085】
前記ジアゾニウム塩化合物の感熱記録層における含有量としては、0.02〜5g/m2が好ましく、発色濃度の点から0.1〜4g/m2がより好ましい。
【0086】
ジアゾニウム塩化合物の安定化のために、塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化スズ等を用いて錯化合物を形成させ、ジアゾニウム塩化合物の安定化を図ることもできる。
【0087】
(カプラー)
次に、本発明の多色感熱記録材料において使用可能なカプラー(カップリング成分)について説明する。
前記カプラーとしては、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気でジアゾニウム塩化合物とカップリングして色素を形成するものであればいずれの化合物も使用可能である。ハロゲン化銀写真感光材料用のいわゆる4当量カプラー化合物はすべてカプラーとして使用可能である。また、2当量カプラーの一部も使用可能である。これらは目的とする色相に応じて選択することが可能である。
例えば、カルボニル基の隣にメチレン基を有するいわゆる活性メチレン化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体等があり、具体的には以下のものが挙げられ、本発明の目的に合致する範囲で使用される。
【0088】
前記カプラーの具体例としては、例えば、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、5−アセトアミド−1−ナフトール、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ジアニリド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、5,5−ジメチル−l,3−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、5−(2−n−テトラデシルオキシフェニル)−1,3−シクロへキサンジオン、5−フェニル−4−メトキシカルボニル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−(2,5−ジーn−オクチルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン;
【0089】
N,N’−ジシクロヘキシルバルビツール酸、N,N’−ジ−n−ドデシルバルビツール酸、N−n−オクチル−N’−n−オタタデシルバルビツール酸、N−フェニル−N’−(2,5−ジ−n−オクチルオキジフェニル)バルビツール酸、N,N’−ビス(オクタデシルオキシカルボニルメチル)バルビツール酸、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、6−ヒドロキシ−4−メチル−3−シアノ−1−(2−エチルヘキシル)−2−ピリドン、2,4−ビス−(ベンゾイルアセトアミド)トルエン、1,3−ビス−(ピバロイルアセトアミドメチル)ベンゼン、ベンゾイルアセトニトリル、テノイルアセトニトリル、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、ピバロイルアセトアニリド、2−クロロ−5−(N−n−ブチルスルファモイル)−1−ビバロイルアセトアミドベンゼン、1−(2−エチルヘキシルオキシプロピル)−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(ドデシルオキシプロピル)−3−アセチル−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(4−n−オクチルオキシフェニル)−3−tert−ブチル−5−アミノピラゾール等が挙げられる。
【0090】
カプラーの詳細については、特開平4−201483号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平7−323660号、特開平7−125446号、特開平7−96671号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平9−156229号、特開平9−216468号、特開平9−216469号、特開平9−203472号、特開平9−319025号、特開平10−35113号、特開平10−193801号、特開平10−264532号等の公報に記載されている。
【0091】
上記のうち、本発明においては、下記一般式(IV)で表される化合物又はその互変異性体が特に好ましい。
以下に、一般式(IV)で表されるカプラーについて詳述する。
E1−CH(X)−E2 一般式(IV)
一般式(IV)中、E1とE2はそれぞれ独立に電子吸引性基を表し、Xはアゾカップリングするときに離脱してアゾ色素を形成することができる基を表し、またE1とびE2は結合して環を形成してもよい。
【0092】
前記E1及びE2で表される電子吸引性基とは、Hammettのσp値が正である置換基を意味し、これらは同一であっても異なっていてもよく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、1−メチルシクロプロピルカルボニル基、1−エチルシクロプロピルカルボニル基、1−ベンジルシクロプロピルカルボニル基、ベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、テノイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等のオキシカルボニル基;カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−〔2,4−ビス(ペンチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、N−〔2,4−ビス(オクチルオキシ)フェニル〕カルバモイル基、モルホリノカルボニル基等のカルバモイル基;メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基;ジエチルホスホノ基等のホスホノ基;ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン−2−イル基、3,4−ジヒドロキナゾリン−4−スルホン−2−イル基等の複素環基;ヘテロ環基;ニトロ基;イミノ基;シアノ基が好適に挙げられる。
【0093】
Xはアゾカップリング時に脱離する基を示すが、離脱基Xとしては、ハロゲン原子(フッ素、臭素、塩素、沃素)、置換アルキル基(ヒドロキシメチル基、ジメチルアミノメチル基)、アルキルチオ基(例えば、エチルチオ基、2−カルボキシエチルチオ基、ドデシルチオ基、1−カルボキシドデシルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、2−ブトキシ−t−オクチルフェニルチオ基)、アルコキシル基(例えば、エトキシ基、ドデシルオキシ基、メトキシエチルカルバモイルメトキシ基、カルボキシプロピルオキシ基、メチルスルホニルエトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、4−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−カルボキシフェノキシ基、3−エトキシカルボキシフェノキシ基、3−アセチルアミノフェノキシ基、2−カルボキシフェノキシ基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、テトラデカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(例えば、トルエンスルホニルオキシ基)、ジアルキルアミノカルボニルオキシ基(例えば、ジメチルアミノカルボニルオキシ基、ジエチルアミノカルボニルオキシ基)、ジアリールアミノカルボニルオキシ基(例えば、ジフェニルアミノカルボニルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、エトキシカルボニルオキシ基、ベンジルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、又は複素環基(例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基)が挙げられる。
【0094】
また、E1及びE2で表される電子吸引性基は、両者が結合し環を形成してもよい。E1及びE2で形成される環としては、5員ないし6員の炭素環又は複素環が好ましい。
【0095】
以下に、一般式(IV)で表されるカプラーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下に示すカプラーの互変異性体も好適なものとして挙げることができる。
【0096】
【化35】
【0097】
【化36】
【0098】
【化37】
【0099】
【化38】
【0100】
【化39】
【0101】
【化40】
【0102】
【化41】
【0103】
前記カプラーの互変異性体とは、上記に代表されるカプラーの異性体として存在するものであって、その両者間で構造が容易に変化し合う関係にあるものをいい、本発明に用いるカプラーとしては、該互変異性体も好ましい。
【0104】
本発明の多色感熱記録材料の第1の感熱記録層は、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとを含有する感熱記録層とする他、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とを含有する感熱記録層としてもよい。
電子供与性染料前駆体および電子受容性化合物などは、特開平6−328860号公報、特開平7−290826号公報、特開平7−314904号公報、特開平8−324116号公報、特開平3−37727号公報、特開平9−31345号公報、特開平9−111136号公報、特開平9−118073号公報、特開平11−157221号公報、などに詳しく記載されている。具体例を以下に示すが本発明はこれに限定されるものではない。
【0105】
【化42】
【0106】
【化43】
【0107】
【化44】
【0108】
【化45】
【0109】
−電子受容性化合物の具体例−
電子受容性化合物としては、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。これらの一部を例示すれば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(即ち、ビスフェノールP)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸およびその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸およびその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸およびその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノールなどが挙げられる。
【0110】
前記赤外線吸収色素は多くの場合、可視領域に吸収をもち、着色しているので、その場合には、消色することが好ましい。消色は、光照射(定着光など)及び/又は加熱により行うことができる。
赤外線吸収色素として、対アニオンがボレートアニオンである、及び/又は色素骨格としてポリメチン(シアニン)系骨格を有するものは、光照射及び/又は加熱により容易に分解され消色する。
また、消色を促進するために、光及び/又は熱によりラジカル、カチオン、アニオンなどの活性種を発生させ、色素の共役系を切断することが好ましい。このためには、光(又は熱)ラジカル発生剤、光(又は熱)酸発生剤などが用いられる。
【0111】
(1)光(又は)ラジカル発生剤
光(又は熱)ラジカル発生剤としては、分子内に活性ハロゲンを有するもの、ロフィンダイマー、有機過酸化物、その他のものが挙げられる。
▲1▼ 分子内に活性ハロゲンを有するものとしては、下記一般式(II)及び一般式(III)で示されるものが挙げられる。
【0112】
【化46】
【0113】
前記一般式(II)中、Xはハロゲン原子を表す。Y1 は−CX3 、−NH2 、−NHR、−NR2 、−ORを表す。ここで、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。また、Y2 は−CX3 、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。置換基は、一般式(II)自身であっても良い。
【0114】
【化47】
【0115】前記一般式(III)中、Xはハロゲン原子を表す。Y3 、Y4は同じでも異なっても良く、水素原子又はハロゲン原子を表す。また、Zは下記式で示す基を表す。
【0116】
【化48】
【0117】
ここで、R’は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、複素環基、置換複素環基を表す。
【0118】
前記一般式(II)で表される化合物としては、若林ら著、ブリティン オブケミカル ソサエティ ジャパン(Bull, Chem, Soc, Japan)42巻、2924頁(1969年)記載の化合物、具体的には、例えば、2−フエニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフエニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフエニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号明細書記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記構造式で表される化合物等を挙げることができる。
【0119】
【化49】
【0120】
その他の化合物として下記構造式で表される化合物等も用いることができる。
【0121】
【化50】
【0122】
また、F.C.Schaefer等によるジャーナルオブ オーガニック ケミストリィ(J.Org.Chem.)29巻、1527頁(1964年)記載の化合物、例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
【0123】
さらに特公平7−66185号公報に記載の化合物、例えば、下記構造式で表される化合物等を挙げることができる。
【0124】
【化51】
【0125】
本発明の多色感熱記録材料に、前記一般式(II)で表される化合物を用いる場合、Y1が−CX3である化合物を用いた場合が特に好ましい。
【0126】
本発明で用いられる一般式(II)の化合物は当業者に公知の方法で合成することができる。具体的にはブリティン オブ ケミカル ソサエティ ジャパン(Bull, Chem, Soc, Jpn)42巻、2924頁(1969年)を参考にして、例えば、下記構造の化合物を得ることができる。
【0127】
【化52】
【0128】
また、DE2718259号(願番)の記載を参照して、例えば、下記構造の化合物を得ることができる。
【0129】
【化53】
【0130】
また、本発明において用いることが可能な、前記一般式(III )で表される化合物としては、特公昭51−8330号明細書記載の化合物、具体的には、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、ヨードホルム、p−ニトロ−α,α,α−トリブロモアセトフエノン、ω,ω,ω−トリブロモキナルジン、トリブロモメチルフエニルスルホン、トリクロロメチルフエニルスルホン等を挙げることができる。また特公昭49−12180号明細書記載の化合物、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0131】
【化54】
【0132】
さらに、特開昭60−138539号公報に記載の化合物、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0133】
【化55】
【0134】
【化56】
【0135】
▲2▼ ロフィンダイマー
ロフィンダイマーとしては、以下のものが挙げられる。
【0136】
【化57】
【0137】
▲3▼ 有機過酸化物
有機過酸化物としては、以下のものが挙げられる。
【0138】
【化58】
【0139】
▲4▼ その他のもの
その他の光(又は熱)ラジカル発生剤としては、以下のごときものが挙げられる。
【0140】
【化59】
【0141】
(2)熱ラジカル発生剤
熱ラジカル発生剤としては、アゾビス系化合物が好ましい。例えば、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)や、AIVN[2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)]などが挙げられる。
【0142】
(3)光(又は熱)酸発生剤
光(又は熱)酸発生剤としては、前記▲1▼の、分子内に活性ハロゲンを有する光(又は熱)ラジカル発生剤(ハロゲン化水素を発生する)の他、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類が用いられる。
ヨードニウム塩類としては、以下のものが挙げられる。
【0143】
【化60】
【0144】
スルホニウム塩類としては、以下のものが挙げられる。
【0145】
【化61】
【0146】
アジニウム塩類としては、以下のものが挙げられる。
【0147】
【化62】
【0148】
(マイクロカプセル化)
本発明の多色感熱記録材料においては、その使用前の生保存性を良化する目的で、各層におけるジアゾニウム塩化合物及び/又は電子供与性無色染料をマイクロカプセルに内包させることが好ましい。該マイクロカプセルの形成方法としては、既に公知の方法の中から適宜選択することができる。
マイクロカプセルのカプセル壁を形成する高分子物質としては、常温では非透過性であり、加熱時に透過性となる性質を有することが必要である点から、特にガラス転移温度が60〜200℃のものが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレン・メタクリレート共重合体、スチレン・アクリレート共重合体及びこれらの混合系を挙げることができる。
【0149】
マイクロカプセル形成方法としては、具体的には、界面重合法や内部重合法が適している。該カプセル形成方法の詳細及びリアクタントの具体例等については、米国特許第3,726,804号、同第3,796,669号等の明細書に記載がある。例えば、カプセル壁材として、ポリウレア、ポリウレタンを用いる場合には、ポリイソシアネート及びそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオールやポリアミン)を水性媒体又はカプセル化すべき油性媒体中に混合し、水中でこれらを乳化分散し次に加温することにより油滴界面で高分子形成反応を起こしマイクロカプセル壁を形成する。尚、上記第2物質の添加を省略した場合もポリウレアを生成することができる。
【0150】
本発明においては、マイクロカプセルのカプセル壁を形成する高分子物質としては、ポリウレタン及び/又はポリウレアを成分として含有することが、製造適性と熱応答感度に優れるので好ましい。
【0151】
次に、ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル(ポリウレア・ポリウレタン壁)の製造方法について述べる。
まず、ジアゾニウム塩化合物は、カプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解又は分散させ、マイクロカプセルの芯となる油相を調製する。このとき、さらに壁材として多価イソシアネートが添加される。
【0152】
前記油相の調製に際し、ジアゾニウム塩化合物を溶解、分散してマイクロカプセルの芯の形成に用いる疎水性の有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましく、例えば、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、アルキルビフェニル、アルキルターフェニル、塩素化パラフィン、リン酸エステル類、マレイン酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類、安息香酸エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、硫酸エステル類、スルホン酸エステル類等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
【0153】
カプセル化しようとするジアゾニウム塩化合物の前記有機溶媒に対する溶解性が劣る場合には、用いるジアゾニウム塩化合物の溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもでき、該低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
このため、ジアゾニウム塩化合物は、高沸点疎水性有機溶媒、低沸点溶媒に対する適当な溶解度を有していることが好ましく、具体的には、該溶剤に5%以上の溶解度を有していることが好ましい。水に対する溶解度は1%以下が好ましい。
【0154】
一方、用いる水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、該水溶性高分子は、分散を均一かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は公知の乳化用界面活性剤が使用可能である。
界面活性剤を添加する場合の添加量としては、油相質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0155】
調製された油相を分散する水溶性高分子水溶液に用いる水溶性高分子は、乳化しようとする温度における、水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール及びその変成物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0156】
前記水溶性高分子は、イソシアネート化合物との反応性がないか、若しくは低いことが好ましく、例えば、ゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め変成する等して反応性をなくしておくことが好ましい。
【0157】
前記多価イソシアネート化合物としては、3官能以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましいが、2官能のイソシアネート化合物であってもよい。具体的には、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物等が挙げられる。
特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特願平8−268721号公報等に記載の化合物が好ましい。
【0158】
多価イソシアネートの使用量としては、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、壁厚みが0.01〜0.3μmとなるように決定される。また、その分散粒子径としては、0.2〜10μm程度が一般的である。
水相中に油相を加えた乳化分散液中では、油相と水相の界面において多価イソシアネートの重合反応が生じてポリウレア壁が形成される。
【0159】
水相中又は油相の疎水性溶媒中に、さらにポリオール及び/又はポリアミンを添加しておけば、多価イソシアネートと反応してマイクロカプセル壁の構成成分の一つとして用いることもできる。上記反応において、反応温度を高く保ち、或いは、適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
これらのポリオール又はポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。
多価イソシアネート、ポリオール、反応触媒、あるいは、壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については成書に詳しい(岩田敬治編 ポリウレタンハンドブック 日刊工業新聞社(1987))。
【0160】
乳化は、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等の公知の乳化装置の中から適宜選択して行うことができる。乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させるために乳化物を30〜70℃に加温することが行われる。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、十分な攪拌を行う等の必要がある。
【0161】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その終息をもっておよそのカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的のジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセルを得ることができる。
【0162】
次に、本発明に用いるカプラーは、例えば、水溶性高分子、有機塩基、その他の発色助剤等とともに、サンドミル等により固体分散して用いることもできるが、特に好ましくは、予め水に難溶性又は不溶性の高沸点有機溶剤に溶解した後、これを界面活性剤及び/又は水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合し、ホモジナイザー等で乳化した乳化分散物として用いることが好ましい。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることもできる。さらに、カプラー、有機塩基は別々に乳化分散することも、混合してから高沸点有機溶剤に溶解し、乳化分散することも可能である。好ましい乳化分散粒子径は1μm以下である。
【0163】
前記カプラーの使用量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0164】
この場合に使用される高沸点有機溶剤は、例えば、特開平2−141279号公報に記載の高沸点オイルの中から適宜選択することができる。中でも、乳化分散物の乳化安定性の観点から、エステル類が好ましく、リン酸トリクレジルが特に好ましい。上記オイル同士、又は他のオイルとの併用も可能である。
【0165】
前記有機溶剤に、さらに溶解助剤として、低沸点の補助溶剤を加えることもでき、該補助溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びメチレンクロライド等を好適に挙げることができる。場合に応じて、高沸点オイルを含まず、低沸点補助溶剤のみを用いることもできる。
【0166】
また、水相中に保護コロイドとして含有させる水溶性高分子としては、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができ、中でも、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体等が好ましい。
【0167】
また、水相中に含有させる界面活性剤としては、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤であって、上記保護コロイドと作用して沈澱や凝集を起こさないものを適宜選択して使用することができる。該界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等が挙げられる。
【0168】
(塩基性物質、その他)
本発明においては、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとのカップリング反応を促進する目的で、有機塩基等の塩基性物質を加えることも好ましい態様である。
前記有機塩基としては、第3級アミン類、ピぺリジン類、ピペラジン類、アミジン類、ホルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類等の含窒素化合物等が挙げられ、例えば、特公昭52−46806号公報、特開昭62−70082号公報、特開昭57−169745号公報、特開昭60−94381号公報、特開昭57−123086号公報、特開昭60−49991号公報、特公平2−24916号公報、特公平2−28479号公報、特開昭60−165288号公報、特開昭57−185430号公報に記載のものを好適に挙げることができる。これらは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0169】
上記のうち、具体的には、N,N’−ビス(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(p−メチルフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(p−メトキシフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N’−ビス(3−フェニルチオ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N−3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル−N’−メチルピペラジン、1,4−ビス{〔3−(N−メチルピペラジノ)−2−ヒドロキシ〕プロピルオキシ)ベンゼン等のピペラジン類、N−〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシ〕プロピルモルホリン、1,4−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン、1,8−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン等のモルホリン類、N−(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペリジン、N−ドデシルピペリジン等のピペリジン類、トリフェニルグアニジン、トリシクロヘキシルグアニジン、ジシクロヘキシルフェニルグアニジン等のグアニジン類等が好ましい。
【0170】
前記塩基性物質の使用量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
前記使用量が、0.1質量部未満であると、十分な発色濃度が得られなくなることがあり、30質量部を超えると、ジアゾニウム塩化合物の分解が促進されることがある。
【0171】
また、本発明の感熱記録材料においては、カップリング反応を促進する目的で、記録層中に、アミノフェノール系、フェノール系、カテコール系、ハイドロキノン系、アミン系、ヒドロキシアミン系、アルコール系、チオール系、スルフィド系、アルカリ金属、アルカリ土類金属、金属水素化物、ヒドラジン系、フェニドン系、アニリン系、フェニルエーテル系、L−アスコルビン酸類等の還元剤を添加することが好ましく、なかでも、ハイドロキノン系、カテコール系、アミノフェノール系還元剤が好ましい。中でも、ハイドロキノン系、カテコール系、アミノフェノール系が好ましい。
これらの還元剤は、記録層に微粒子状態で固体分散させてもよい。また、ジアゾ化合物をマイクロカプセル化した場合には、マイクロカプセルの内に添加することも、内と外の両方に添加することも可能である。
また、前記還元剤の含有量は、ジアゾ化合物に対して1〜10倍モルであることが好ましく、1〜4倍モルであることがより好ましい。ジアゾ化合物の含有量の1倍モルより少ない添加量では、発色性の向上効果や、画像保存性の向上効果が充分に得られないことがあり、一方、10倍モルより多く添加すると、却って発色性の向上効果が小さくなったり、また、生保存性が悪化したりすることがある。
【0172】
また、感熱記録層中には、上記塩基性物質の他、発色反応を促進させる、即ち、低エネルギーで迅速かつ完全に熱印画させる目的で、発色助剤を加えることもできる。ここで、発色助剤とは、加熱記録時の発色濃度を高くする、若しくは発色温度を制御する物質であり、カプラー、塩基性物質若しくはジアゾニウム塩化合物等の融解点を下げたり、カプセル壁の軟化点を低下させうる作用により、ジアゾニウム塩、塩基性物質、カプラー等が反応しやすい条件とするためのものである。
前記発色助剤としては、例えば、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、アルコキシ置換ベンゼン類、アルコキシ置換ナフタレン類、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、ウレイド、ウレタン、スルホンアミド化合物、ヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0173】
前記発色助剤には、熱融解性物質も含まれる。
該熱融解性物質は、常温下では固体であって、加熱により融解する融点50℃〜150℃の物質であり、ジアゾニウム塩化合物、カプラー、或いは、有機塩基等を溶解しうる物質である。具体的には、カルボン酸アミド、N置換カルボン酸アミド、ケトン化合物、尿素化合物、エステル類等を挙げることができる。
【0174】
本発明の多色感熱記録材料においては、熱発色画像の光及び熱に対する堅牢性を向上させ、又は、定着後の未印字部分(非画像部)の光による黄変を軽減する目的で、以下に示す公知の酸化防止剤等を用いることも好ましい。
前記酸化防止剤については、例えば、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同第309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4814262号、アメリカ特許第4980275号等に記載されている。
【0175】
感熱若しくは感圧記録材料において既に用いられている公知の各種添加剤を用いることも有効である。
前記各種添加剤としては、例えば、特開昭60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同63−088381号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−170361号公報、特公昭48−043294号公報、同48−033212号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0176】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2.4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0177】
前記酸化防止剤、又は各種添加剤の添加量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.05〜100質量部が好ましく、0.2〜30質量部がより好ましい。
【0178】
前記酸化防止剤及び各種添加剤は、マイクロカプセル中にジアゾニウム塩化合物とともに含有させてもよいし、或いは、固体分散物としてカプラー、塩基性物質及びその他の発色助剤とともに含有させてもよいし、乳化物にして適当な乳化助剤とともに含有させてもよいし、又はその両形態で含有させてもよい。また、酸化防止剤、又は各種添加剤は、単独で用いてもよく、複数併用することもできる。さらに、保護層に含有させることもできる。
【0179】
前記酸化防止剤及び各種添加剤は、必ずしも同一層に添加しなくてもよい。
前記酸化防止剤及び/又は各種添加剤を複数組合わせて用いる場合には、アニリン類、アルコキシベンゼン類、ビンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン誘導体、リン化合物、硫黄化合物のように構造的に分類し、互いに異構造のものを組合わせてもよいし、同一のものを複数組合わせることもできる。
【0180】
画像記録後の地肌部の黄着色を軽減する目的で、光重合性組成物等に用いられる遊離基発生剤(光照射により遊離基を発生する化合物)を添加することができる。
前記遊離基発生剤としては、例えば、芳香族ケトン類、キノン類、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、アゾ化合物、有機ジスルフィド類、アシルオキシムエステル類等が挙げられる。
該遊離基発生剤の添加量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0181】
また、同様に黄着色を軽減する目的で、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物(以下、「ビニルモノマー」と称する。)を用いることもできる。ビニルモノマーとは、その化学構造中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合(ビニル基、ビニリデン基等)を有する化合物であって、モノマーやプレポリマーの化学形態を持つものである。
前記ビニルモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。該ビニルモノマーは、ジアゾニウム塩1質量部に対して、0.2〜20質量部の割合で用いる。
前記遊離基発生剤やビニルモノマーは、ジアゾニウム塩化合物と共にマイクロカプセル中に含有して用いることもできる。
【0182】
さらに、酸安定剤としてクエン酸、酒石酸、シュウ酸、ホウ酸、リン酸、ピロリン酸等を添加することもできる。
【0183】
前記感熱記録層は、例えば、ジアゾニウム塩化合物を含有したマイクロカプセル、カプラー、必要に応じて塩基性物質及び他の成分等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を紙や合成樹脂フィルム等の支持体上に塗布、乾燥することにより塗設することができる。
本発明においては、前記感熱記録層が塩基性物質を含有する態様が好ましい。
【0184】
前記塗布は、公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、バー塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等が挙げられる。
また、塗布、乾燥後の感熱記録層の乾燥塗布量としては、2.5〜30g/m2が好ましい。
【0185】
本発明の多色感熱記録材料における感熱記録層の構成態様としては、特に限定されるものではなく、例えば、マイクロカプセル、カプラー、塩基性物質等が全て同一層に含まれた、単一層よりなる態様であってもよいし、別層に含まれるような複数層積層型の態様であってもよい。また、支持体上に、特開昭61−54980号公報等に記載の中間層を設けた後、感熱記録層を塗布形成した態様であってもよい。いずれの態様においても、さらに、色相の異なる単色かつ単一の感熱記録層を複数層積層したフルカラー発色型の態様である。
【0186】
本発明の多色感熱記録材料において、感熱記録層、中間層又は後述の保護層等の各層にはバインダーを含有することができ、該バインダーとしては、公知の水溶性高分子化合物やラテックス類等の中から適宜選択することができる。
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド等及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0187】
前記ラテックス類としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
中でも、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン誘導体、ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体、ポリアクリル酸アミド誘導体等が好ましい。
【0188】
また、本発明の多色感熱記録材料には顔料を含有させることもでき、該顔料としては、有機、無機を問わず公知のものが挙げられ、例えば、カオリン、焼成カオリン、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトポン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、マイクロバルーン、尿素−ホルマリンフィラー、ポリエステルパーティクル、セルロースフィラー等が挙げられる。
【0189】
また、必要に応じて、公知のワックス、帯電防止剤、消泡剤、導電剤、蛍光染料、界面活性剤、紫外線吸収剤及びその前駆体等の各種添加剤を使用することもできる。
【0190】
本発明の多色感熱記録材料においては、必要に応じて、感熱記録層上に保護層を設けてもよい。該保護層は、必要に応じて二層以上積層してもよい。
前記保護層に用いる材料としては、ポリビニルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン類、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子化合物、及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等のラテックス類等が挙げられる。
【0191】
前記水溶性高分子化合物は、架橋させることで、より一層保存安定性を向上させることもできる。該架橋剤としては、公知の架橋剤の中から適宜選択することができ、例えば、N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、尿素−ホルマリン等の水溶性初期縮合物;グリオキザール、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物類;硼酸、硼砂等の無機系架橋剤;ポリアミドエピクロルヒドリン等が挙げられる。
【0192】
前記保護層には、さらに公知の顔料、金属石鹸、ワックス、界面活性剤等を使用することもできる。
保護層の塗布量としては、乾燥塗布量で0.2〜5g/m2が好ましく、0.5〜2g/m2がより好ましい。その膜厚としては、0.2〜5μmが好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。
また、保護層を設ける場合には、該保護層中に公知の紫外線吸収剤やその前駆体を含有させてもよい。
前記保護層は、支持体上に感熱記録層を形成する場合と同様、上述の公知の塗布方法により設けることができる。
【0193】
本発明の多色感熱記録材料に使用可能な支持体としては、通常の感圧紙や感熱紙、乾式や湿式のジアゾ複写紙等に用いられる紙支持体はいずれも使用することができる他、酸性紙、中性紙、コート紙、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム等を使用することができる。
【0194】
支持体上には、カールバランスを補正する目的で、或いは、裏面からの耐薬品性を向上させる目的で、バックコート層を設けてもよい。該バックコート層は、前記保護層と同様にして設けることができる。
さらに、必要に応じて、支持体と感熱記録層との間、或いは、支持体の感熱記録層が設けられた側の表面にアンチハレーション層を、その裏側の表面にスベリ層、アンチスタチック層、粘着剤層等を設けることもできる。
また、支持体の裏面(感熱記録層が設けられない側の表面)に、接着剤層を介して剥離紙を組合わせてラベルの形態としてもよい。
【0195】
ジアゾニウム塩化合物をマイクロカプセルに内包することにより、記録材料としての長期での安定性をより高めることができる。
【0196】
[記録方法]
本発明の多色感熱記録材料を用いる画像形成は、本発明の記録方法により以下のようにして行うことができる。即ち、赤外線吸収色素を含ませた感熱記録層の記録は、赤外線吸収色素を励起するレーザー光等により画像様に照射することにより行われる。赤外線吸収色素はレーザー光を吸収し、その光エネルギーは熱エネルギーに変換する。
レーザー光の発振波長としては700nm〜1100nmの赤外領域のものが好ましい。具体的には、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
また、赤外線吸収色素を含まない感熱記録層は、サーマルヘッド等の加熱装置により画像様に加熱して画像形成する。
各感熱記録層において、前記のように光エネルギーから変換された熱エネルギーを付与された部分、及びサーマルヘッド等の加熱装置により加熱された部分においては、感熱記録層中のポリウレア及び/又はポリウレタンを含むカプセル壁が軟化して物質透過性となり、カプセル外のカプラーや塩基性物質(有機塩基)がマイクロカプセル内に浸入し、画像様に発色する。
【0197】
ジアゾニウム塩を含む感熱記録層を発色させた後、その層中のジアゾニウム塩化合物の吸収波長に相当する光を照射することにより(光定着)、他の層を発色させる際の該層の発色を防ぐだけでなく、未反応のジアゾニウム塩化合物を分解して、形成した画像の濃度変動や、非画像部(地肌部)におけるステインの発生による着色、即ち、白色性の低下、該低下に伴う画像コントラストの低下を抑制することができる。
また、本発明の多色感熱記録材料を記録する際、この光定着を利用して、赤外線吸収色素を消色させることが好ましい。この場合、赤外線吸収色素を含む層に光ラジカル発生剤を添加することが好ましい。
赤外線吸収色素の消色は、多色感熱記録材料の全面に、未記録の感熱記録層に発色が生じない程度に、加熱することによっても行うことができる。この場合、赤外線吸収色素を含む層に熱ラジカル発生剤を添加することが好ましい。
【0198】
前記光定着に用いる光源としては、種々の発光ダイオード、蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等が挙げられ、これら光源の発光スペクトルが感熱記録材料中のジアゾニウム塩の吸収スペクトルとほぼ一致していることが、高効率に定着しうる点で好ましい。また、光定着の経時的安定性の観点から発光ダイオードが好ましい。
【0199】
また、光により画像様に書き込みを行い、熱現像して画像化する光書込み熱現像型感熱記録材料として用いることもできる。この場合、印字印画過程を、上記のような加熱装置に代えてレーザ等の光源が担う。
【0200】
以下において、本発明の多色感熱記録材料として、例えば、支持体上に電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とを含有する第1の感熱記録層(A層)と、第1のジアゾニウム塩化合物を含む第2の感熱記録層(B層)と、第2のジアゾニウム塩化合物及び赤外線吸収色素を含む第3の感熱記録層(C層)とを有する多色感熱記録材料の場合について、その記録方法を説明する。
まず、第3の感熱記録層(C層)に、赤外レーザー光により画像様に書き込みを行い、該層に含まれるジアゾニウム塩化合物とカプラーとを反応させ発色させる。次いで、例えば、360±25nmの光を照射してC層中に含まれている未反応のジアゾニウム塩を分解させる。この際、前記のようにして赤外線吸収色素を消色させる(例えば、赤外線吸収色素としてボレートアニオンを有する赤外線吸収色素を用いたり、光又は熱ラジカル発生剤を添加するなど)ことが好ましい。赤外線吸収色素がボレートアニオンを有するものであったり、光ラジカル発生剤を添加した場合には、この定着の工程で消色が行われる。)
次に、第2の感熱記録層(B層)が発色するに十分な熱を与え(例えばサーマルヘッドを用いる)、該層に含まれているジアゾニウム塩とカプラー化合物とを反応させ発色させる。このとき第3の感熱記録層((C層)も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解しており、発色能力が失われているので発色しない。この後、例えば、450±65nmの光を照射して第2の感熱記録層(B層)に含まれているジアゾニウム塩を分解させる。最後に、第1の感熱記録層(A層)が発色するに十分な熱を与えて発色させる。このとき第2及び第3の感熱記録層(B層、C層)も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解しており、発色能力が失われているので発色しない。
本発明の多色感熱記録材料の感熱記録層が、2層以上赤外線吸収色素を含む場合(該色素の吸収波長は互いに異なる)、例えば、前記の多色感熱記録材料において、第2の感熱記録層も赤外線吸収色素を含む場合、まず、各層に異なる波長領域の複数の赤外レーザー光を、同時に又は別々に画像様に書き込み、その後、一度にあるいは多数回の光定着を行うことが好ましい。
【0201】
[他の層]
感熱記録層相互の混色を防ぐ目的で、各感熱記録層間に中間層を設けることもできる。
該中間層は、ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物からなり、適宜各種添加剤を含んでいてもよい。
【0202】
本発明の多色感熱記録材料は、必要に応じて、さらにその上層として光透過率調整層若しくは保護層、又は光透過率調整層及び保護層を設けることが望ましい。
前記光透過率調整層については、特開平9−39395号公報、同9−39396号公報、特願平7−208386号公報等に記載されている。
光透過率調整層に、紫外線吸収剤の前駆体として機能する成分を用いる場合には、定着に必要な波長領域の光を照射する前は、紫外線吸収剤として機能しないために高い光透過率を有するため、光定着型感熱記録層を定着する際、定着に必要な領域の波長を十分に透過させることができ、かつ可視光線の透過率も高く、感熱記録層の定着に支障をきたすことはない。
【0203】
一方、前記紫外線吸収剤の前駆体は、光定着型感熱記録層の光定着(光照射によるジアゾニウム塩の光分解)に必要な波長領域の光を照射した後、該光により反応を起こし紫外線吸収剤として機能するようになる。この紫外線吸収剤により、紫外線領域の波長の光の大部分が吸収されてその透過率が低下し、感熱記録材料の耐光性を向上させることが可能となる。しかしながら、可視光線の吸収性はないため、可視光線の透過率は実質的に変わらない。
光透過率調整層は、感熱記録材料中に少なくとも1層設けることができ、中でも特に、感熱記録層と保護層との間に形成することが好ましい。また、光透過率調整層の機能を保護層に持たせ、兼用させてもよい。
【0204】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の「部」又は「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」又は「質量%」を意味する。
[実施例1]
<フタル化ゼラチン溶液の調製>
フタル化ゼラチン(商品名;MGPゼラチン,ニッピコラーゲン(株)製)32部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)0.9143部、イオン交換水367.1部を混合し、40℃にて溶解し、フタル化ゼラチン水溶液を得た。
【0205】
<アルカリ処理ゼラチン溶液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)25.5部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)0.7286部、水酸化カルシウム0.153部、イオン交換水143.6部を混合し、50℃にて溶解し、乳化物作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0206】
(1)第3の感熱記録層(C層)液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(c)の調製>
酢酸エチル16.1部に、前記ジアゾニウム塩化合物(例示化合物17)4.4部、モノイソプロピルビフェニル4.8部、フタル酸ジフェニル4.8部を添加し、40℃に加熱して均一に溶解した。この混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)8.6部を添加し、均一に攪拌し混合液(I)を得た。
【0207】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液58.6部にイオン交換水16.3部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.34部添加し、混合液(II)を得た。
【0208】
混合液(II)に混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水20部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(c)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.36μmであった。
【0209】
<カプラー化合物乳化液(c)の調製>
酢酸エチル33.0部に前記カプラー化合物(B−1)9.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)9.9部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))20.8部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’,6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.3部、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)13.6部、4−n−ペンチルオキシベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)6.8部、前記赤外線吸収色素(例示化合物 DYE−35)を3.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.2部を溶解し、混合液(III)を得た。
【0210】
別途前記アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(IV)を得た。
【0211】
混合液(IV)に混合液(III)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が26.5質量%になるように濃度調節を行った。得られたカプラー化合物乳化物の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.21μmであった。
【0212】
更に上記カプラー化合物乳化物100部に対して、SBRラテックス(商品名SN−307,48%液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5%に濃度調整したものを9部添加して均一に撹拌してカプラー化合物乳化液(c)を得た。
【0213】
<塗布液(c)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(c)および前記カプラー化合物分乳化液(c)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が2.2/1になるように混合し、イエローの第3の感熱記録層(C層)用塗布液(c)を得た。
【0214】
(2)第2の感熱記録層(B層)液の調製
<ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(b)の調製>
酢酸エチル15.1部に、前記ジアゾニウム塩化合物(例示化合物26)2.8部、フタル酸ジフェニル7.7部、化合物(商品名;ライトエステルTMP,共栄油脂化学(株)製)4.2部、及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)0.1部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)12.7部を添加し、均一に攪拌し混合液(V)を得た。
【0215】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液55.3部にイオン交換水21.0部添加、混合し、混合液(VI)を得た。
混合液(VI)に混合液(V)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水24部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.2部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(b)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.43μmであった。
【0216】
<カプラー化合物乳化液(b)の調製>
酢酸エチル36.9部に前記カプラー化合物(B−15)11.9部とトリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)14.0部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名;ビスフェノールM(三井石油化学(株)製))14.0部、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン14部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’、6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン3.5部、下記化合物(F)3.5部、リン酸トリクレジル1.7部、マレイン酸ジエチル0.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C 70%メタノール溶液,竹本油脂(株)製)4.5部を溶解し、混合液(VII)を得た。
【0217】
【化63】
【0218】
別途アルカリ処理ゼラチン水溶液206.3部にイオン交換水107.3部を混合し、混合液(VIII)を得た。
【0219】
混合液(VIII)に混合液(VII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー化合物乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が24.5質量%になるように濃度調節を行い、カプラー化合物乳化液(b)を得た。得られたカプラー化合物乳化液の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.22μmであった。
【0220】
<塗布液(b)の調製>
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー化合物分乳化液(b)を、内包しているカプラー化合物/ジアゾ化合物の質量比が3.5/1になるように混合した。さらに、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)をカプセル液量10部に対し、0.2部になるように混合し、マゼンタの第2の感熱記録層(B層)用塗布液(b)を得た。
【0221】
(3)第1の感熱記録層(A層)液の調製
<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(a)の調製>
酢酸エチル18.1部に、下記電子供与性染料(G)7.4部、1−メチルプロピルフェニル−フェニルメタンおよび1−(1−メチルプロプルフェニル)−2−フェニルエタンの混合物(商品名;ハイゾールSAS−310,日本石油(株)製)8.0部、下記化合物(H)(商品名;Irgaperm2140 チバガイギー(株)の商品名)8.0部を添加し加熱して均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)4.2部と、キシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)11.5部との混合物を添加し、均一に攪拌し混合液(IX)を得た。
【0222】
【化64】
【0223】
別途、前記フタル化ゼラチン水溶液28.8部にイオン交換水9.5部、Scraph AG−8(50質量%)日本精化(株)製)0.17部およびドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(10%水溶液)4.3部を添加混合し、混合液(X)を得た。
【0224】
混合液(X)に混合液(IX)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水50部、テトラエチレンペンタミン0.12部を加え均一化し、65℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行ないカプセル液の固形分濃度が33%になるように濃度調節しマイクロカプセル液を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で1.00μmであった。
【0225】
更に上記マイクロカプセル液100部に対して、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム25%水溶液(商品名;ネオペレックスF−25、花王(株)製)3.7部と4,4’−ビストリアジニルアミノスチルベン−2,2’−ジスルフォン誘導体を含む蛍光増白剤(商品名;Kaycoll BXNL、日本曹達(株)製)4.2部を添加して均一に撹拌してマイクロカプセル分散液(a)を得た。
【0226】
<電子受容性化合物分散液(a)の調製>
前記フタル化ゼラチン水溶液11.3部にイオン交換水30.1部、下記化合物15.0部、2%の2−エチルヘキシルコハク酸ナトリウム水溶液3.8部を加えて、ボールミルにて一晩分散した後、分散液を得た。この分散液の固形分濃度は26.6%であった。
上記分散液100部に、前記アルカリ処理ゼラチン水溶液45.2部を加えて30分攪拌した後、分散液の固形分濃度が23.5%となるようにイオン交換水を加えて電子受容性化合物分散液(a)を得た。
【0227】
【化65】
【0228】
<塗布液(a)の調製>
前記電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル液(a)および前記電子受容性化合物分散液(a)を、電子受容性化合物/電子供与性染料前駆体の質量比が10/1になるように混合し、シアンの第1の感熱記録層(A層)用塗布液(a)を得た。
【0229】
(4)中間層用塗布液の調製
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名;#750ゼラチン,新田ゼラチン (株)製)100.0部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液,大東化学工業所(株)製)2.857部、水酸化カルシウム0.5部、イオン交換水521.643部を混合し、50℃にて溶解し、中間層作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0230】
前記中間層作製用ゼラチン水溶液10.0部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)0.05部、硼酸(4.0質量%水溶液)1.5部、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)0.19部、下記化合物(I)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液3.42部、下記化合物(I’)(和光純薬(株)製)の4質量%水溶液1.13部、イオン交換水0.67部を混合し、中間層用塗布液とした。
【0231】
【化66】
【0232】
(5)光透過率調整層用塗布液の調製
(v−1)紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液の調製
酢酸エチル71部に紫外線吸収剤前駆体として[2−アリル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェニル]ベンゼンスルホナート14.5部、2,2’−t−オクチルハイドロキノン5.0部、燐酸トリクレジル1.9部、α−メチルスチレンダイマー(商品名:MSD−100,三井化学(株)製)5.7部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)0.45部を溶解し均一に溶解した。上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物 (商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)54.7部を添加し、均一に攪拌し紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を得た。
【0233】
別途、イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318,クラレ(株)製)52部に30質量%燐酸水溶液8.9部、イオン交換水532.6部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液を調製した。
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液516.06部に前記紫外線吸収剤前駆体混合液(XIII)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて20℃の下で乳化分散した。得られた乳化液にイオン交換水254.1部を加え均一化した後、40℃下で攪拌しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトMB−3(オルガノ(株)製)94.3部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除きカプセル液の固形分濃度が13.5%になるように濃度調節した。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.23±0.05μmであった。このカプセル液859.1部にカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス(商品名:SN−307,(48質量%水溶液),住友ノーガタック(株)製)2.416部、イオン交換水39.5部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液を得た。
【0234】
(v−2) 光透過率調整層用塗布液の調製
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液1000部、下記化合物(J)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))5.2部、4質量%水酸化ナトリウム水溶液7.75部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)73.39部を混合し、光透過率調整層用塗布液を得た。
【0235】
【化67】
【0236】
(6)保護層用塗布液の調製
(vi−1)保護層用ポリビニルアルコール溶液の調製
ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物(商品名:EP−130,電気化学工業(株)製)160部、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液(商品名:ネオスコアCM−57,(54質量%水溶液),東邦化学工業(株)製)8.74部、イオン交換水3832部を混合し、90℃のもとで1時間溶解し均一な保護層用ポリビニルアルコール溶液を得た。
【0237】
(vi−2)保護層用顔料分散液の調製
硫酸バリウム(商品名:BF−21F,硫酸バリウム含有量93%以上,堺化学工業(株)製)8部に陰イオン性特殊ポリカルボン酸型高分子活性剤(商品名:ポイズ532A(40質量%水溶液),花王(株)製)0.2部、イオン交換水11.8部を混合し、ダイノミルにて分散して保護層用顔料分散液を調製した。この分散液は粒径測定(LA−910,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.15μm以下であった。
【0238】
上記硫酸バリウム分散液45.6部に対し、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO(20質量%水分散液)、日産化学(株)製)8.1部を添加して目的の分散物を得た。
【0239】
(vi−3)保護層用マット剤分散液の調製
小麦澱粉(商品名:小麦澱粉S,新進食料工業(株)製)220部に1−2ベンズイソチアゾリン3オンの水分散物(商品名:PROXEL B.D,I.C.I(株)製)3.81部、イオン交換水1976.19部を混合し、均一に分散し、保護層用マット剤分散液を得た。
【0240】
(vi−4)保護層用塗布ブレンド液の調製
前記保護層用ポリビニルアルコール溶液1000部に前記化合物(K)(商品名:メガファックF−120,5質量%水溶液,大日本インキ化学工業(株))40部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム (三協化学(株)製 2.0質量%水溶液)50部、前記保護層用顔料分散液49.87部、前記保護層用マット剤分散液16.65部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115,20.5質量%水溶液,中京油脂(株)製)48.7部を均一に混合し保護層用塗布ブレンド液を得た。
【0241】
(7)下塗り層つき支持体の作製
<下塗り層液の調製>
酵素分解ゼラチン(平均分子量:10000、PAGI法粘度:1.5mPa・s、PAGI法ゼリー強度:20g)40部をイオン交換水60部に加えて40℃で攪拌溶解して下塗り層用ゼラチン水溶液を調製した。
【0242】
別途水膨潤性の合成雲母(アスペクト比:1000、商品名:ソマシフME100,コープケミカル社製)8部と水92部とを混合した後、ビスコミルで湿式分散し、平均粒径が2.0μmの雲母分散液を得た。この雲母分散液に雲母濃度が5質量%となるように水を加え、均一に混合し、所望の雲母分散液を調製した。
【0243】
40℃の40質量%の前記ゼラチン水溶液100部に、水120部およびメタノール556部を加え、十分攪拌混合した後、5質量%前記雲母分散液208部を加えて、十分攪拌混合し、1.66質量%ポリエチレンオキサイド系界面活性剤9.8部を加えた。そして液温を35℃から40℃に保ち、エポキシ化合物のゼラチン硬膜剤7.3部を加えて下塗り層用塗布液(5.7質量%)を調製し、下塗り用塗布液を得た。
【0244】
<下塗り層つき支持体の作製>
LBPS 50部LBPK 50部からなる木材パルプをデイスクリファイナーによりカナデイアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、硫酸アルミニウム1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部をいずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し長網抄紙機により坪量114g/m2の原紙を抄造しキャレンダー処理によって厚み100μmに調整した。
【0245】
次に原紙の両面にコロナ放電処理を行った後、溶融押し出し機を用いてポリエチレンを樹脂厚36μmとなるようにコーテイングしマット面からなる樹脂層を形成した(この面をウラ面と呼ぶ)。次に上記樹脂層を形成した面とは反対側に溶融押し出し機を用いてアナターゼ型二酸化チタンを10質量%及び微量の群青を含有したポリエチレンを樹脂厚50μmとなるようにコーテイングし光沢面からなる樹脂層を形成した(この面をオモテ面と呼ぶ)。ウラ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(商品名;アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)/二酸化珪素(商品名;スノーテックスO、日産化学工業(株)製)=1/2(質量比)を水に分散させて乾燥後の質量で0.2g/m2塗布した。次にオモテ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、上記下塗り液を雲母の塗布量が0.26g/m2となるように塗布し、下塗り層つき支持体を得た。
【0246】
<各感熱記録層用塗布液の塗布>
前記下塗り層つき支持体の上に、下から、前記第1の感熱記録層用塗布液(a)、前記中間層用塗布液、前記第2の感熱記録層用塗布液(b)、前記中間層用塗布液、前記第3の感熱記録層用塗布液(c)、前記光透過率調整層用塗布液、前記保護層用塗布液の順に7層同時に連続塗布し、30℃湿度30%、および40℃湿度30%の条件でそれぞれ乾燥して多色感熱記録材料を得た。
この際、前記感熱記録層用塗布液(c)の塗布量は液中に含まれるジアゾニウム塩化合物(17)の塗布量が固形分塗布量で0.078g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(b)の塗布量は液中に含まれるジアゾニウム塩化合物(26)の塗布量が固形分塗布量で0.206g/m2となるように、同様に前記感熱記録層用塗布液(a)の塗布量は液中に含まれる電子供与性染料(G)の塗布量が固形分塗布量で0.355g/m2となるように塗布を行った。
また、前記中間層用塗布液はC層とB層の間は固形分塗布量が2.39g/m2、B層とA層の間は固形分塗布量が3.34g/m2、前記光透過率調整層用塗布液は固形分塗布量が2.35g/m2、保護層は固形分塗布量が1.39g/m2となるように塗布を行った。
【0247】
[実施例2]
実施例1の混合液(III)において、赤外線吸収色素(例示化合物 DYE−35)の代わりに、例示化合物 DYE−40を用いる他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0248】
[実施例3]
実施例1の混合液(III)において、さらに、前記光ラジカル発生剤(例示化合物 D−1)を0.5部加える他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
[実施例4]
実施例3の光ラジカル発生剤D−1を前記D−43に変更する他は、実施例3と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0249】
[実施例5]
実施例1の混合液(I)の調製において、酢酸エチル16.1部にジアゾニウム塩化合物を溶解させる際、赤外線吸収色素DYE−35を3部加え、かつ、混合液(III)においてDYE−35を添加しない他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0250】
[実施例6]
実施例1の混合液(I)の調製において、酢酸エチル16.1部にジアゾニウム塩化合物を溶解させる際、DYE−35を1.5部加え、混合液(III)においてDYE−35を2.0部加える他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0251】
[実施例7]〜[実施例10]
実施例1におけるジアゾニウム塩化合物、カプラー及び電子供与性無色染料を以下の表1のごとく変更する他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0252】
【表1】
【0253】
[比較例1]
実施例1の混合液(III)においてDYE−35を加えなかった他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0254】
[比較例2]
実施例1の混合液(III)においてDYE−35を加えず、かつ、ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(b)の調製において、カプセル壁材が「キシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物の混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)12.7部」の代わりに、「前記タケネートD119N 2.5部と、キシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名;タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),武田薬品工業(株)製)6.8部との混合物」を用い、さらに、電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(a)の調製において、カプセル壁材として「タケネートD119N 4.2部と前記タケネートD110N 11.5部との混合物」の代わりに、「タケネートD110N7.2部と、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(商品名;ミリオネートMR−200,日本ポリウレタン工業(株)製)5.3部の混合物」を用いる他は、実施例1と同様にして、多色感熱記録材料を得た。
【0255】
[比較例3]
比較例1の多色感熱記録材料を用い、比較例1とは異なる記録方法を適用して画像記録を行った。
【0256】
表2に、実施例1ないし10、比較例1及び2の多色感熱記録材料の、第3の感熱記録層(C層)における赤外線吸収色素及び光ラジカル発生剤の添加の有無ならびに添加量を示す。
【0257】
【表2】
【0258】
また、表3に、実施例1ないし10、比較例1及び2の多色感熱記録材料の、第2の感熱記録層(B層)及び第1の感熱記録層(A層)に用いた、マイクロカプセル壁材を示す。
【0259】
【表3】
【0260】
[評価]
得られた実施例1〜10、及び比較例1及び2の多色感熱記録材料に対し、以下の評価を行った。
【0261】
<実施例1ないし10及び比較例1の画像記録>
〈レーザービームを用いた画像記録〉
発振波長780nmの半導体レーザービームを用いて、記録層側から画像様に1ミリ秒間で35mJ/mm2のエネルギーとなるように照射した。次いで、発光中心波長420nm(出力40W)の紫外線ランプで、発色領域及び未発色領域の双方に10秒間曝光し、第3の感熱記録層(C層)に画像記録を行った。
〈サーマルヘッドを用いた画像記録〉
次に、前記第3層の紫外線曝光を行った発色領域及び未発色領域の双方に、サーマルヘッドKST(商品名;京セラ(株)製)を用い、単位面積当たりの記録エネルギーとして40〜90mJ/mm2の範囲のエネルギーで印画し、その後、発光中心波長365nm(出力40W)の紫外線ランプで、第2層の発色領域及び未発色領域の双方に30秒間曝光し、第2の感熱記録層(B層)に画像記録を行った。
さらに、紫外線曝光を行った第3層(C層)及び第2層(B層)の発色領域及び未発色領域をそれぞれ組み合わせた4つの領域に、上記サーマルヘッドを用いて95〜135mJ/mm2の範囲のエネルギーで印画し、第1の感熱記録層に画像記録を行った。(表4に、第1ないし第3の感熱記録層の発色領域と非発色領域が、積層方向において重なるすべての組み合わせを示す。)
【0262】
<実施例7ないし10の画像記録>
実施例1の画像記録方法において、第3の感熱記録層における光定着を、発光中心波長365nm(出力40W)の紫外線ランプで、18秒間曝光することに変更し、かつ、第2の感熱記録層における光定着を、発光中心波長420nm(出力40W)の紫外線ランプで、10秒間曝光することに変更する他は、実施例1と同様にして画像記録を行った。
【0263】
<比較例2の画像記録>
〈サーマルヘッドを用いた画像記録〉
上記のサーマルヘッドを用い、第3の感熱記録層(C層)を25〜75mJ/mm2、第2の感熱記録層(B層)を80〜125mJ/mm2、第1の感熱記録層(A層)を130〜170mJ/mm2の範囲のエネルギーで熱記録した。紫外線ランプによる曝光は実施例1の場合と同じとした。
【0264】
<比較例3の画像記録>
〈サーマルヘッドを用いた画像記録〉
比較例1の多色感熱記録材料に対して、第3の感熱記録層(C層)を10〜35mJ/mm2、第2の感熱記録層(B層)を40〜90mJ/mm2、第1の感熱記録層(A層)を95〜135mJ/mm2の範囲のエネルギーで熱記録した。紫外線ランプによる曝光は実施例1の場合と同じとした。
【0265】
表4に、第1ないし第3のそれぞれの発色領域の色相と発色濃度、及び前記積層方向において重なるすべての組み合わせについての色相を示す。
【0266】
【表4】
【0267】
表4から、実施例1ないし10の第1層ないし第3層は、記録エネルギーが低いにもかかわらず、十分な発色濃度が得られていることが分かる。これに対し、比較例1では、第3層に赤外線吸収色素を含ませていないため、レーザー光で記録をしようとしても第3層は発色しない。
比較例2は、従来の多色感熱記録材料であり、低温、中温及び高温の3つの温度領域を用いることにより十分な発色濃度が得られているが、記録エネルギーは、実施例1ないし6のものに比較し、かなり大きい。また、比較例3は、第3の感熱記録層に対するエネルギー付与(10〜35mJ/mm2)が小さいため、濃度不足となる。
このことから、本発明の多色感熱記録材料においては、少なくとも1層を非接触の光記録層とすることにより、低エネルギーで記録可能であることが分かる。
【0268】
【発明の効果】
本発明の多色感熱記録材料は、感熱記録層の少なくとも1層に赤外線吸収色素を含有させ、この層を非接触の光記録(例えばレーザー光記録)を行うため、他の層の発色温度を従来のものより低く設定でき、その結果、高速記録が可能となる。また、接触熱記録の際のエネルギーを小さくすることができるため、高速で接触熱記録を行っても、従来の多色感熱記録材料に比較して、印画障害を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多色感熱記録材料(実線)と、従来の多色感熱記録材料(点線)の記録エネルギー(サーマルヘッド記録)を示すグラフである。
Claims (13)
- 支持体上に、支持体に近い側から第1の感熱記録層、第2の感熱記録層及び第3の感熱記録層をこの順に有する多色感熱記録材料であって、少なくとも1つの感熱記録層が赤外線吸収色素を含み、かつ第2及び第3の感熱記録層が、ジアゾニウム塩化合物とカプラーとを含有する多色感熱記録材料。
- 前記第1の感熱記録層が電子供与性無色染料と電子受容性化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の多色感熱記録材料。
- 2つ以上の感熱記録層に赤外線吸収色素が含まれ、それぞれの感熱記録層に含まれる赤外線吸収色素の吸収波長が互いに異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多色感熱記録材料。
- 第3の感熱記録層に赤外線吸収色素が含有されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料。
- 赤外線吸収色素が光照射又は熱の付与により分解消色することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料。
- 赤外線吸収色素がボレートアニオンを有するカチオン性色素であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料。
- 赤外線吸収色素を含む感熱記録層が、光若しくは熱ラジカル発生剤、又は光若しくは熱酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料。
- 前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長が450±65nmであり、第3の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物の極大吸収波長が360±25nmであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料。
- 前記第2の感熱記録層に含まれるジアゾニウム塩化合物が、下記一般式(1)〜(3)で表されるジアゾニウム塩化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料。
- 前記ジアゾニウム塩化合物及び/又は電子供与性無色染料がマイクロカプセルに内包されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料。
- 請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の多色感熱記録材料の記録方法であって、多色感熱記録材料の赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録する、多色感熱記録材料の記録方法。
- 赤外線吸収色素を含む感熱記録層を赤外レーザー光により画像記録した後、赤外線吸収色素を光照射又は加熱により消色することを特徴とする請求項12に記載の記録方法。
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