JP3794890B2 - 擁壁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土圧を支持する垂直部と、この垂直部の下方で地盤に埋設される水平部とを備え、高低差を有する宅地や道路脇等に設けられるコンクリート製の擁壁、特に、上記垂直部上に金網を有する擁壁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高低差を有する宅地や道路脇等に土止め用の擁壁を施工する場合、例えば、図12に示すように、予め工場等で製造したコンクリート製のL型パネル1を擁壁の長手方向に沿って複数個並設する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図12の方法では、上記L型パネル1等を用いた擁壁上に金網を設置したい場合でも、金網の支柱の下端部をL型パネル1等で支持することが困難なため、擁壁上に金網を設けることが難しい問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記の課題を解決するため、金網の設置が容易に行える擁壁を提供することを目的とする。
そのため、本発明の請求項1の擁壁は、土圧を支持する垂直部と、この垂直部の下方で地盤に埋設される水平部とを有するコンクリート製の擁壁であって、上記垂直部は、複数のコンクリート製の分割体を擁壁の長手方向に沿って並設することにより構成されるとともに、隣接する分割体間で延び各分割体に固定されることにより隣接する分割体同士を連結する通り用連結部材が設けられ、上記垂直部上に金網が配置されるとともに、この金網の下端部が上記通り用連結部材に接続されていることを特徴とするものである。
【0005】
請求項2の擁壁は、請求項1の構成において、上記通り用連結部材には、各々支持凹部を有する複数の支持部材が取り付けられ、上記金網に設けられた複数の支柱の各下端部が各支持部材の支持凹部に嵌合されることにより、上記金網の下端部が上記通り用連結部材に接続されることを特徴とするものである。
【0006】
請求項3の擁壁は、上記通り用連結部材が各分割体の後面側に沿って設けられるとともに、上記金網が垂直部の前後方向略中間部上に配置され、かつ上記支柱が上記金網から各分割体の後面に向けて屈曲状に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、宅地又は道路脇等に高低差がある場合、段差部分に本実施の形態のコンクリート製の擁壁10が設けられている。すなわち、擁壁10の後方側(図の右側)の地面L1(2点鎖線参照)は擁壁10の前方側(図の左側)の地面L2より高くなっており、上段側又は下段側の少なくとも一方が宅地となっていたり、上段側又は下段側の一方が道路を構成している場合等に、段差部分の土砂の崩落を防止するために上記擁壁10を用いることができる。
【0008】
上記擁壁10は、土中に埋設された水平部11と、段差部分の土圧を支持する垂直部12とを備え、水平部11と垂直部12が連結金具13により連結されている。図2及び図3にも示すように、水平部11は地盤14上に砕石15を介してコンクリートを打設することにより、擁壁10の長手方向へ連続的に設けられている。
【0009】
一方、垂直部12は、コンクリートからなる複数の略直方体状の分割体16が水平部11上に擁壁10の長手方向に沿って並設されることにより構成されている。図1において、水平部11及び垂直部12の各分割体16には各々鉄筋17、18が埋め込まれている。また、図1中の拡大図にも示したように、水平部11の前端部上面付近には、その後端に下向きの屈曲部20aを有する下部止め金具20が各分割体16に対応させて複数埋め込まれ、この下部止め金具20の前端から上向きに突出する屈曲部20bに各分割体16の前面が当接されている。
【0010】
水平部11の後端部付近には、複数のボルト21が上方へ突出するように埋め込まれている。一方、各分割体16の上部には、ナット22が後面側に露出するように埋め込まれている。
【0011】
隣接する複数の分割体16間に断面L型の通りアングル23(通り用連結部材)が架け渡され、この通りアングル23の垂直部23aに設けた横方向の長孔23bを介してボルト24が各分割体16のナット22に螺合されることにより、隣接する分割体16同士が水抜き用の僅かな隙間Gを隔てて連結されている。
【0012】
図4にも示すように、連結金具13は、両端部に雌ねじ25a、25bを有する中央連結体25と、各々この中央連結体25の雌ねじ25aに螺合する雄ねじ26a、27aの端部に羽子板26b、27bが接続された1対の羽子板ボルト26、27とからなる。上記雌ねじ25a、25b同士(従って、雄ねじ26a、27a同士も)は互いの逆向きにねじが切られており、中央連結体25を羽子板ボルト26、27に対して回転させることにより、両端の羽子板26b、27b間の距離を調整できるようになっている。
【0013】
そして、一方の羽子板ボルト26の羽子板26bが上記ボルト21にナット28により接続されるとともに、他方の羽子板ボルト27の羽子板27bがボルト29及びナット30により通りアングル23の水平部23cに接続されて、各分割体16が連結金具13を介して水平部11に連結されている。なお、他方の羽子板ボルト27は、図4の状態から略180゜回転させた状態で使用されている。
【0014】
上記通りアングル23の水平部23c上には、複数の金属製で筒状(例えば、有底円筒状)の支持部材31が、例えば、隣接する分割体16の目地の位置に対応させて溶接等の手段で取り付けられている。擁壁10上に設置すべき金網32に設けた複数の支柱33aの各下端部が上記支持部材31の支持凹部31aに嵌合されて支持されている。このように、通りアングル23を利用して金網32を設置することにより、擁壁10部分での金網32の取付を容易に行える。
【0015】
なお、金網32を支持する枠体33は、上記複数の支柱33aと、各支柱33aの上端部間に架け渡された上部バー33bと、隣接する各分割体16の上面よりやや上方で隣接する支柱33a上端部間に架け渡された下部バー33cとからなる。
【0016】
次に、上記擁壁10の施工手順を説明する。図5に示すように、まず、擁壁10を施工する周辺の地盤14を図1に示す施工完了後における下段側の地面L2より若干低くなる程度まで掘削し、前記砕石15を敷設した後、側部のみを型枠34で仕切った状態でコンクリートを上下幅より前後幅が大きくなるように打設して凝固させた後、型枠34を取り外すことにより、水平部11を形成する。この際、水平部11内に前記鉄筋17、下部止め金具20及びボルト21を埋め込んでおく。
【0017】
一方、垂直部12を構成する複数の分割体16は、水平部11の施工前、施工後又は水平部11の施工と並行して現場で作成する。すなわち、図6に示すような、例えば、仕切り板35の両側で同時に2個の分割体16の作成が可能な型枠36に、ナット22を支持金具37を介して装着するとともに、図6には示さない前記鉄筋18を型枠36内に組み込んでコンクリートを流し込み、凝固後に型枠36を取り外すことにより、図7に示すような分割体16を多数作成する。
【0018】
図7等に示す分割体16は表面模様を有していないが、所望により、型枠32の内表面に凹凸模様を付しておけば、分割体16は表面に所望の模様を付与することができる。なお、16aは、支持金具37により形成された凹部である。
【0019】
上記分割体16は、例えば、高低差を有する宅地に住宅を建築するような場合、当該住宅の基礎等を施工した後に生コンクリートが余った場合は、この余剰の生コンクリートを流用し、必要により、新規のコンクリート材料を追加しながら作成することができる。これにより、保存の困難な生コンクリートを無駄なく使用できる。
【0020】
なお、残存する生コンクリート量との関係で分割体16を当該現場の擁壁10の施工に必要な数量以上に作成した場合でも、生コンクリートと異なり、余剰の分割体16を所定期間保管しておいて、必要により他の施工現場で使用することができる。
【0021】
上記水平部11の施工と複数の分割体16の作成が終了した後、水平部11の前端部付近の上面にモルタル層38(図2では図示省略)を薄く敷き、このモルタル層38上に所定個数の分割体16を前記水抜き用の隙間Gを介して順次載置し、各分割体16の下端部前面を上記屈曲部20bに当接させる。このように、分割体16の下端部前面を屈曲部20bに当接させることにより、後に擁壁10を土砂39で埋め戻した場合にも、分割体16が前方へ倒れることがない。
【0022】
その後、図2及び図3に示したように、隣接する分割体16同士を通りアングル23で連結するとともに、この通りアングル23と水平部11から突出した前記ボルト21とを前記連結金具13を用いて連結する。この際、両羽子板26b、27bを各々ボルト21と通りアングル23とに連結した状態で、ボルト21と通りアングル23間の距離に応じて中央連結体25を羽子板ボルト26、27に対し回転させるのみで、両羽子板26b、27b間の間隔を調整できる。
【0023】
続いて、垂直部12上に金網32を配置し、各支柱33の下端部を通りアングル23上の支持部材31の支持凹部31a内に挿入して金網32を通り用連結部材10上に取り付ける。この場合、必要により、支柱33を支持部材31に不図示のピン又はねじ等で固定するようにしてもよい。
【0024】
上記擁壁10の施工及び金網32の取付作業が完了した後、図1に2点鎖線のハッチングで示したように、擁壁10の後方側(上段側)では高さL1まで、前方側(下段側)では高さL2まで土砂39で埋め戻せばよい。これにより、支柱33の下部も土砂39に埋められることになるので、支柱33の取付部の見栄えも良好なものとなる。
【0025】
上記のように、隣接する分割体16同士を連結する通りアングル23に予め支持部材31を固定しておき、擁壁10上に設置すべき金網32の支柱33を上記支持部材31に支持させるようにしたので、擁壁10上への金網32の取付を容易に行える利点がある。図8は変形例を示すものであり、金網32の支柱33aに、各分割体16の上面及び後面に沿って順次後方及び下方へ屈曲する屈曲部33dを形成することにより、金網32が擁壁10の前後方向略中間位置上に位置するようにしている。
【0026】
なお、本発明の金網32は、垂直部12を構成する各分割体16を連結する通りアングル23を有する限り、上記した以外の種々の構成の擁壁上に取り付けることができる。例えば、図9及び図10に示す擁壁40では、水平部11に前記下部止め金具20及びボルト21に代えて幅止め金具41が埋め込まれる一方、前記連結金具13の代わりに略三角状の連結プレート42を用いて水平部11と各分割体16とが連結されている。
【0027】
上記幅止め金具41は、長尺の金具本体43と、この金具本体43の長手方向中間部付近の下面側に溶接により取り付けられたL型の引抜防止鉄筋44と、金具本体43の後端部付近に設けた孔に下方から挿通されかつこの金具本体43に溶接されたボルト45からなる。金具本体43の前端には上向きに屈曲する屈曲部43aが、後端には下向きに屈曲する屈曲部43bが各々設けられている。
【0028】
一方、上記連結プレート42は、下端部及び上端部に各々水平方向への折曲部42a、42bを有し、折曲部42aは上記ボルト45にナット46によって固定されるとともに、折曲部42bは通りアングル23の水平部23cにボルト29及びナット30で接続されている。ここでは、通りアングル23は第1実施の形態とは異なり、水平部23cが垂直部23aの上端に位置するように配置されている。そして、この水平部23c上に上記と同様の支持部材31が固定され、金網32の支柱33の下端部が支持部材31に嵌合されて支持されている。
【0029】
図11に示す擁壁50では、水平部51を現場で打設する際に、垂直部52を構成する各分割体53の下端部を水平部51内に直接埋め込んで水平部51と垂直部52を互いに連結するようにしている。この擁壁50の施工に際しては、上記と同様に、擁壁50を施工する周辺の地盤14を施工完了後における下段側の地面L2より若干低くなる程度まで掘削し、砕石15を敷設する。
【0030】
その後、砕石15上に、略平坦な上面を有するコンクリート製のブロック54をモルタル55を介して所定の間隔で敷設し、これらのブロック54上に複数の分割体53を配置して隣接する分割体53同士を通りアングル23で連結する。
【0031】
なお、分割体53は、上記分割体16と基本的に同一構成であるが、分割体53に上下方向に沿って埋め込まれた鉄筋56に分割体53の下方へ突出する突出部56aが形成され、かつこの突出部56aが後方へ折り曲げられている点で上記分割体16と相違する。
【0032】
上記のように、ブロック54上に複数の分割体53を配置し、分割体53の周囲を型枠57で取り囲んだ後、型枠57内に分割体53の下端部が浸漬される程度までコンクリートを流し込んで凝固させると、ブロック54、鉄筋56の突出部56a及び分割体53の下端部が水平部51内に埋め込まれることにより、水平部51と各分割体53とが連結される。
【0033】
上記コンクリートが凝固した後、型枠57を取り外し、予め通りアングル23に固定されている支持部材31に金網32の支柱33aの下端部を挿入して金網32を取り付けた後、擁壁50の後方側をレベルL1まで、前方側をレベルL2まで土砂39で埋め戻せばよい。
【0034】
なお、上記実施の形態では、各擁壁10、40、50の水平部11は現場でコンクリートを打設することにより、擁壁の長手方向で一体に形成するものとしたが、図12に示したようなコンクリート製のL型パネル1を並設することで擁壁を構成する場合、つまり、擁壁の垂直部だけでなく水平部も複数の分割体で構成されているような場合でも、上記L型パネル1同士が上記通りアングル23又はこれと類似の長尺部材を介して連結されていれば、この通りアングル23等に上記支持部材31を固定して金網32の取付を行えることは、言うまでもない。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1の擁壁は、土圧を支持する垂直部と、この垂直部の下方で地盤に埋設される水平部とを有するコンクリート製の擁壁であって、上記垂直部は、複数のコンクリート製の分割体を擁壁の長手方向に沿って並設することにより構成されるとともに、隣接する分割体間で延び各分割体に固定されることにより隣接する分割体同士を連結する通り用連結部材が設けられ、上記垂直部上に金網が配置されるとともに、この金網の下端部が上記通り用連結部材に接続されているものであり、少なくとも擁壁の垂直部が複数の分割体を並設して構成されており、かつ隣接する分割体同士が通り用連結部材で連結されている場合、この通り用連結部材を利用して金網の下端部の取付を行えるので、擁壁の上部に金網を設けたい場合も、係る金網を設置を容易に行える利点がある。
【0036】
請求項2の擁壁は、請求項1の構成において、上記通り用連結部材には、各々支持凹部を有する複数の支持部材が取り付けられ、上記金網に設けられた複数の支柱の下端部が各支持部材の支持凹部に嵌合されることにより、上記金網の下端部が上記通り用連結部材に接続されるものであり、このように各支柱の下端部を各支持部材に嵌合する形式とすることで、金網の取付作業を一層容易に行えるようになる。また、上記通り用連結部材が土中に埋め戻される場合、上記支柱の下端部も土中に埋められることになるので、金網の取付部の見栄えの良好なものとなる。
【0037】
請求項3の擁壁は、上記通り用連結部材が各分割体の後面側に沿って設けられるとともに、上記金網が垂直部の前後方向略中間部上に配置され、かつ上記支柱が上記金網から各分割体の後面に向けて屈曲状に形成されているものであり、上記のように支柱を屈曲状に形成することで、通り用連結部材が各分割体の後面側に沿って設けられている場合でも、金網を擁壁垂直部の前後方向略中間部上に配置できるようになる。これに対し、上記通り用連結部材を各分割体の後面側に配置し、かつ上記支柱を略直線状とした場合、金網が擁壁垂直部より後方へずれることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る擁壁を示す概略断面図。
【図2】上記擁壁を示す概略背面図。
【図3】上記擁壁を示す概略平面図。
【図4】上記擁壁で用いられる連結金具を示す概略平面図。
【図5】上記擁壁の施工手順を示す概略断面図。
【図6】上記擁壁の垂直部を構成する分割体を製造するための型枠を上方から見た状態示す概略斜視図。
【図7】上記型枠を用いて作成した分割体を示す概略斜視図。
【図8】上記実施の形態の変形例に係る擁壁を示す概略断面図。
【図9】本発明の別の実施の形態の擁壁を示す概略断面図。
【図10】図9の実施の形態の擁壁を示す概略背面図。
【図11】本発明の更に別の実施の形態の擁壁を示す概略断面図。
【図12】従来の擁壁の施工に用いるL型パネルを示す概略斜視図。
【符号の説明】
10 擁壁
11 水平部
12 垂直部
16 分割体
23 通りアングル(通り用連結部材)
32 金網
33a 支柱
Claims (3)
- 土圧を支持する垂直部と、この垂直部の下方で地盤に埋設される水平部とを有するコンクリート製の擁壁であって、
上記垂直部は、コンクリート製の複数の分割体を擁壁の長手方向に沿って並設することにより構成されるとともに、隣接する分割体間で延び各分割体に固定されることにより隣接する分割体同士を連結する通り用連結部材が設けられ、
上記垂直部上に金網が配置されるとともに、この金網の下端部が上記通り用連結部材に接続されていることを特徴とする擁壁。 - 上記通り用連結部材には、各々支持凹部を有する複数の支持部材が取り付けられ、上記金網に設けられた複数の支柱の各下端部が各支持部材の支持凹部に嵌合されることにより、上記金網の下端部が上記通り用連結部材に接続されることを特徴とする請求項1記載の擁壁。
- 上記通り用連結部材が各分割体の後面側に沿って設けられるとともに、上記金網が垂直部の前後方向略中間部上に配置され、かつ上記支柱が上記金網から各分割体の後面に向けて屈曲状に形成されていることを特徴とする請求項2記載に擁壁。
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