JP3794823B2 - 静電チャック及びその評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電チャック及びその静電吸着力の評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体製造分野においては、ウエハの搬送、パターン形成及びエッチング時にウエハの吸着、保持等を行うのに静電チャックが使用されている。
【0003】
静電チャックに要求される特性は、ウエハの大型化に対応できる吸着力と、広範囲な温度域でウエハを十分に保持する吸着力であり、従来より多くの提案がある。例えば、窒化アルミニウム焼結体・膜を利用するものとして、電極上下に窒化アルミニウム焼結体の絶縁性誘電層を形成させたもの(特開平4−304942号公報)、窒化アルミニウム焼結体表面に導電層を形成後、窒化アルミニウムの絶縁膜をCVD法により形成させたもの(特開平7−326655号公報)、窒化アルミニウム焼結体の絶縁性誘電層の厚みを0.5〜5.0mmとするもの(特開平9−134951号公報)などである。
【0004】
このような窒化アルミニウム焼結体・膜の利用によって、ウエハの吸着力はかなり改善されてきており、特に高温下での吸着力は100gf/cm2 をこえるものが得られるようになってきたが、室温付近の温度域ではその吸着力が著しく低下するため、その改善が要望されていた。
【0005】
高温下で静電チャックの機能を発現させるためには、加熱源としてMo、TiN等の発熱抵抗体を中間層を介して電極下面に設けた構造がとられている。しかしながら、これら電極層及び発熱抵抗体層の埋設された静電チャックを高温下で使用する場合、各構成材料の熱膨張率差から発生する熱応力によって窒化アルミニウム焼結体・膜が割れたり剥離したりしてその寿命は短いものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする手段】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は室温下において優れた吸着力を示すとともに、高温時の使用でも長寿命の静電チャックを提供することである。また、本発明の他の目的は、窒化アルミニウム焼結体・膜を絶縁性誘電層とする静電チャックにおいて、その静電吸着力をAlON成分量から簡便に評価する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、絶縁性誘電層が、AlON相を含む窒化アルミニウム質焼結体で構成されてなる静電チャックにおいて、そのAlON相含有量に基づいて静電吸着力の大きさを判断することを特徴とする静電チャックの評価法である。また、AlON相及び窒化ほう素を含有してなることを特徴とする静電チャック用窒化アルミニウム質焼結体である。更に、本発明は、セラミックス基体、発熱抵抗体層、中間層、電極層及び絶縁性誘電層が順次積層されてなる静電チャックにおいて、上記絶縁性誘電層、上記中間層及び上記セラミックス基体が上記窒化アルミニウム質焼結体で構成されてなることを特徴とする静電チャックである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0009】
窒化アルミニウム粉末は難焼結性であるため、通常、イットリア(Y2 3 )等の焼結助剤を添加して焼結される。得られた窒化アルミニウム焼結体の結晶組織は、AlNが主相で、粒界相にはY2 3 −Al23 化合物、例えば2Y2 3 ・Al23 、Y2 3 ・Al23 、3Y2 3 ・5Al23 が添加する焼結助剤量に応じて析出する。このような窒化アルミニウム焼結体を静電チャックの絶縁性誘電層に用いると、高温下ではウエハの吸着力を高めることができるが、温度が低下するに従いその吸着力が低下し、室温下では10gf/cm2 以下の吸着力であった。
【0010】
この原因について、本発明者らは、窒化アルミニウム焼結体の製造条件を種々変えて異なる結晶組織の窒化アルミニウム焼結体を製造し、その結晶組織と吸着力との関連を究明した結果、驚くべきことに、AlON相の存在量に相関して室温下における吸着力が飛躍的に向上し、また高温下の使用における長寿命化は窒化ほう素(BN)の添加によって達成できることを見いだしたものである。
【0011】
すなわち、本発明で使用される窒化アルミニウム質焼結体は、窒化アルミニウム焼結体中にAlON相と窒化ほう素を存在させたものであり、AlON相は少量でも室温下におけるウエハの静電吸着力を向上させることができる。また、AlON相の存在量に相関して静電吸着力が向上するので、その割合を知ることによって、静電チャックの静電吸着力を簡便に判断することができる。
【0012】
本発明において、AlON相はX線回折分析によってその存在を確認することができ、またその割合は酸素含有量で規定するものとする。すなわち、本発明における窒化アルミニウム質焼結体の結晶相は、窒化アルミニウムの主相、AlON及び窒化ほう素の副相からなり、その他に微量な3Y2 3 ・5Al2 3 相が粒界相に存在することもあるが、その割合は微量でありそれを窒化アルミニウム質焼結体中の酸素含有量に換算しても多くても0.5重量%未満であるので、本発明においては0.5重量%以上の酸素含有量がAlON相となる。
【0013】
本発明の窒化アルミニウム質焼結体の好ましい酸素含有量は、1〜6重量%特に2〜5.5重量%である。AlON相(酸素含有量)が上記よりも少量では室温下の吸着力を10gf/cm以上に向上させることができず、また上記よりも多いと、窒化アルミニウム質焼結体が緻密質でなくなってそれ自体の強度低下が起こり、更にはリーク電流が発生するなどして静電チャックには不適当なものとなる。酸素含有量は、LECO社製酸素・窒素同時分析装置を用いて測定することができる。
【0014】
また、本発明で使用される窒化アルミニウム質焼結体には、その高温下の使用時の耐熱衝撃性を高め、静電チャックの長寿命化を達成するために窒化ほう素が含まれている。窒化ほう素の存在によって、300℃をこえる高温下で繰り返し使用しても静電チャックが割れたり、電極層又は発熱抵抗体層との界面で剥離したりすることが著しく少なくなる。
【0015】
窒化ほう素は、窒化アルミニウム及びAlON相と反応しないため、その割合は原料調製時の配合量によって規定することができる。すなわち、窒化アルミニウム粉末100重量部に対し窒化ほう素粉末10重量部以下であることが好ましい。これよりも多くなると、窒化アルミニウム質焼結体の熱伝導性が低下し、特に大型ウエハの均熱に時間を要してしまう。なお、AlON相の存在によっても熱伝導性が低下するので、本発明においては、窒化アルミニウム質焼結体の熱伝導率を90W/m・K以上保持させて、上記割合でAlON相と窒化ほう素を存在させることが好ましい。
【0016】
本発明で使用される窒化アルミニウム質焼結体は、AlON相を生成させるため、窒化アルミニウム粉末にアルミナ(Al23 )粉末を添加するとともに、窒化ほう素粉末を配合し、成形後、窒素、アルゴン等の非酸化性雰囲気下、温度1800℃程度又はそれ以上の高温で焼成することによって製造することができる。この場合、窒化アルミニウム粉末に含まれる酸素量を考慮しアルミナ粉末の添加量を制御することが必要となる。具体的には、酸素含有量1重量%程度の窒化アルミニウム粉末100重量部に対し、アルミナ粉末1〜9重量部が好ましく、更に窒化アルミニウム粉末100重量部に対し、1重量部以下特に0.5重量部以下のイットリア粉末を添加するが好ましい。
【0017】
本発明の静電チャックは、セラミックス基体、発熱抵抗体層、中間層、電極層及び絶縁性誘電層が順次積層されてなるものにおいて、その絶縁性誘電層、中間層及びセラミックス基体を上記窒化アルミニウム質焼結体で構成したものである。ここで、電極層はW等であり、発熱抵抗体層はMo、TiN等である。
【0018】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0019】
実施例1〜4 比較例1
酸素含有量1.0重量%の窒化アルミニウム粉にイットリア粉とアルミナ粉を種々混合し、更に窒化アルミニウム粉100重量部に対し窒化ほう素粉を表1の割合(重量部)で配合し、アクリル系バインダーを用い、静電チャックの絶縁性誘電層及び中間層を形成するための、厚み500μmのシートをそれぞれ成形した。一方、同様の混合物を用い、静電チャックのセラミックス基体を形成するための、厚み4mmの板状体を成形した。
【0020】
次いで、絶縁性誘電層形成用シートの下面にタングステン電極を、また中間層形成用シートの下面にモリブデン発熱抵抗体をそれぞれペースト印刷してから圧着・積層し、更にそれをセラミックス基体形成用板状体面に圧着・積層し、脱脂処理した後、窒素雰囲気中、1850℃で常圧焼成を行って、直径200mmで、セラミックス基体、発熱抵抗体層、中間層、電極層及び絶縁性誘電層が順次積層されてなる静電チャックを製造した。
【0021】
得られた静電チャックについて、室温下(25℃)で400Vの電圧を印加し、静電吸着力を測定した。また、発熱抵抗体により、室温から800℃まで繰り返し通電処理を行い、静電チャックの構成部材の割れ・剥離等の発生の有無を調べた。それらの結果を表2に示す。
【0022】
更に、絶縁性誘電層を構成している窒化アルミニウム質焼結体の結晶相及び酸素含有量をX線回折分析及びLECO社製ON分析装置により測定した。また、熱伝導率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003794823
【0024】
【表2】
Figure 0003794823
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、室温下における静電吸着力が大で、高温時の使用でも長寿命な静電チャックが提供される。

Claims (2)

  1. AlON相窒化ほう素とを含有する窒化アルミニウム質焼結体において、酸素含有量で規定した上記AlON相の含有量が酸素含有量で1〜6重量%であり、上記窒化ほう素の含有量が窒化アルミニウム100重量部に対して10重量部以下であり、かつ0重量部を含まない量であることを特徴とする静電チャック用窒化アルミニウム質焼結体。
  2. セラミックス基体、発熱抵抗体層、中間層、電極層及び絶縁性誘電層が順次積層されてなる静電チャックにおいて、上記絶縁性誘電層、上記中間層及び上記セラミックス基体が請求項1記載の窒化アルミニウム質焼結体で構成されてなることを特徴とする静電チャック。
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