JP4342002B2 - 静電チャックとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体製造装置等においてウェーハを静電的に吸着保持して処理したり、搬送するための静電チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体製造用装置において、Siウェーハ上に成膜したり、Siウェーハをエッチングするためには、ウェーハの平坦度を保ちながら保持する必要があり、このような手段としては機械方式、真空吸着方式、静電吸着方式が提案されている。これらの内、静電吸着方式は静電チャックによりウェーハを保持する方法であり、ウェーハ加工面の平坦度に優れ、真空中での使用も可能であるため多用されつつある。
【0003】
従来の静電チャックは吸着力としてクーロン力を利用したものと、ジョンセン・ラーベック力を利用したものがある。クーロン力を利用した静電チャックとしては誘電体としてCaTiO3 、PbTiO3 −La2 O3 系などを用いたものがある(例えば特公平8−31517号公報など)。
【0004】
また、ジョンセン・ラーベック力は 誘電体とウェーハとの界面の小さなギャップに微少電流が流れ、帯電分極して誘起させことによって生じる力であり、誘電体の体積固有抵抗率が約1012〜1013Ω・cm以下になると発生する。ジョンセン・ラーベック力を利用した静電チャックには、誘電体としてアルミナに遷移金属元素を添加したセラミックス、例えばAl2 O3 −TiO2 系などがよく知られている(特公平6−97675号公報、特開平2−160444号公報など)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、Al2 O3 −TiO2 系セラミックスを誘電体とした静電チャックはTiO2 の添加量によりセラミックスの体積固有抵抗率を制御しているが、焼成温度、焼成雰囲気、誘電体の膜厚などの製造条件により、抵抗率の値がばらついてしまうという問題があり、製造条件を厳密に制御しなければならないという問題があった。
【0006】
また、静電チャックをプラズマエッチング装置等に組み込んだ場合、プラズマ処理中に誘電体中のTi等の遷移金属成分が拡散し、ウェーハ中に混入する可能性があり、遷移金属成分をできるだけ少なくすることが望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはAl2 O3 にTi2 O3 を微量に固溶させたセラミックスを誘電体として用いることにより、吸着力の高い静電チャックが安定的に製造できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
(1)上層にセラミックスからなる誘電体、中層に電極、下層にセラミックスからなる絶縁体基盤を備えたセラミックス静電チャックにおいて、Ti2 O3 を0.2重量%以上、0.7重量%以下含有するAl2 O3 基セラミックスを誘電体とすることを特徴とする静電チャック。
(2)誘電体の体積固有抵抗率が109 〜1013Ω・cmの範囲にあることを特徴とする(1)項に記載の静電チャック。
(3)上層にセラミックスからなる誘電体、中層に電極、下層にセラミックスからなる絶縁体基盤を備えたセラミックス静電チャックの製造方法において、Al2 O3 の粉末にTi2 O3 の粉末を0.2重量%以上、0.7重量%以下になるよう添加、混合し、成形後、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気下もしくは真空中で、1200〜1700℃の温度で常圧焼成したセラミックスを誘電体として用いることを特徴とする静電チャックの製造方法。
(4)上層にセラミックスからなる誘電体、中層に電極、下層にセラミックスからなる絶縁体基盤を備えたセラミックス静電チャックの製造方法において、Al2 O3 の粉末にTi2 O3 の粉末を0.2重量%以上、0.7重量%以下になるよう添加、混合し、成形後、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気下もしくは真空中で、1200〜1700℃の温度でホットプレス焼成またはHIP焼成したセラミックスを誘電体として用いることを特徴とする静電チャックの製造方法。
【0009】
本発明によれば、Al2 O3 にTi2 O3 を含有させることにより体積固有抵抗率を約109 〜1013Ω・cmの範囲に制御した誘電体が得られるため、ジョンセン・ラーベック力による吸着力が発現する。
【0010】
【発明の実施の形態】
従来、静電チャックの誘電体として多用されているAl2 O3 −TiO2 系セラミックスの結晶相は、α−Al2 O3 、Al2 TiO5 等の混合相となっている。更に、焼結性向上のためMgO等を添加した場合にはMgAl8 Ti6 O25等が生成することが報告されている(日本セラミックス協会学術論文誌,101,1107(1993).)。Al2 O3 −TiO2 系セラミックスの微細組織はα−Al2 O3 のマトリックスにAl2 TiO5 等の第二相が分散した組織となるが、その分散状態は焼成温度、雰囲気により大きく変化する。更に、不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気下で焼成を行った場合、Ti4+の一部がTi3+へ還元され、Ti4+とTi3+が共存した状態となるが、その還元の程度も焼成温度や雰囲気に大きく依存する。Al2 O3 −TiO2 系セラミックスの体積固有抵抗率は微細組織、特に前記第二相の分散状態やTi3+への還元量の影響を大きく受けるため、抵抗値を安定に制御することは困難であった。
【0011】
これに対し、本発明のAl2 O3 −Ti2 O3 系誘電体は、含有させた少なくとも一部のTi2 O3 がAl2 O3 と反応し、Al2 O3 のAl3+のサイトにTi3+イオンが置換固溶した(Al,Ti)2 O3 となっている。ここでTiはすべて3価であり、通常の不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気下、または真空中では価数が変化し難い。したがって焼成条件の影響をさほど受けずに、体積固有抵抗率の値を安定に制御することができる。
【0012】
更に本発明のTi2 O3 含有量は0.7重量%以下と少量である。これはTiに換算してわずか0.47重量%以下に過ぎない。従って、半導体製造装置中で使用した場合に、遷移金属成分(Ti)のウェーハ中への混入を微量に抑えることができる。
【0013】
本発明においてTi2 O3 の含有量を、0.2重量%以上、0.7重量%以下の範囲としたのは、Ti2 O3 の含有量を0.2重量%よりも小さくした場合には体積固有抵抗率が1013Ω・cmよりも大きくなり、ジョンセン・ラーベック力が発現せず、吸着力が小さくなるためであり、一方、Ti2 O3 の含有量が0.7重量%よりも大きい場合には体積固有抵抗が小さくなりすぎて、ウェーハにリーク電流が流れ、実用上好ましくないためである。つまり、ジョンセン・ラーベック力を吸着を目的として有効に利用するためには、誘電体の体積固有抵抗率が109 〜1013Ω・cmの範囲にあることが要件となる。より好ましくはTi2 O3 の含有量は0.3〜0.7重量%が良く、この場合、誘電体の体積固有抵抗率が1010〜1012Ω・cmという最適な値となる。
【0014】
本発明における誘電体は、α−Al2 O3 粉末にTi2 O3 粉末を所定量混合後、プレス成形、CIP(静水圧加圧)成形、ドクターブレード成形等により所定形状に成形し、必要により脱脂した後、1200〜1700℃の温度で焼成して得られる。焼成温度が1200℃よりも低い場合は、焼結体の密度が低くなる上に、未反応のTi2 O3 が残り、体積固有抵抗率が1013Ω・ cmよりも高くなるため、吸着力が弱くなる。焼成温度が1700℃よりも高い場合は、粒成長が進み、焼結密度の低下や機械的強度の劣化を招くため、実用上好ましくない。焼成雰囲気はアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気や水素等の還元ガス雰囲気、あるいは真空中で行われる。大気中や酸素中などの酸化雰囲気は使用できない。なぜなら、酸化雰囲気下ではTi3+がTi4+に酸化してしまい、体積固有抵抗率が1014Ω・cm以上になるため、吸着力を発現しないからである。焼成は通常の常圧焼結で行っても良いが、ホットプレスまたはHIPなどで加圧焼結を行うと、より高密度の焼結体が得られ、高特性の静電チャックを製造することができる。
【0015】
製造に際しては、Al2 O3 、Ti2 O3 以外に、焼結助剤としてMgO、CaO、SiO2 、TiO2 あるいは希土類金属酸化物等を電気特性を損なわない程度に微量添加しても差し支えない。
【0016】
本発明の静電チャックは、例えば誘電体の成形体表面に電極用としてWやMoの金属ペーストをスクリーン印刷した後、絶縁体の成形体を重ね合わせて一体焼成する方法、あるいは、誘電体を焼成後、スクリーン印刷やメッキ等で電極を付与した後、絶縁体基盤を接合剤で接合する方法などにより得られる。接合剤としては例えばエポキシ樹脂等の有機系接着剤、ガラスや酸化物系の無機系接合剤が好適に使用される。
【0017】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0018】
α−Al2 O3 の粉末とTi2 O3 の粉末を第1表に示した様になるように所定量秤量し、蒸留水、バインダー、分散剤を加えてボールミル混合した。得られたスラリーをスプレードライヤーで造粒し、粒径約70μmの造粒粉とした。これを円盤状にCIP成形した後、アルゴンガス中で4時間、第1表に示した温度で焼成し、焼結体を得た(実施例1、3は圧力40MPaでホットプレス焼成、その他は常圧焼成で行った)。得られた焼結体を直径90mm、厚さ2mmの円盤状に加工し、誘電体とした。誘電体の焼結密度をアルキメデス法により測定し、さらに電気抵抗を三端子法で測定した(印加電圧500V、室温)。次いで、誘電体の片方の表面にAgの導電性接着剤をスクリーン印刷し、硬化させて電極を付与した。これに絶縁体基盤(アルミナ)を電極層が中間にはさまれるようにエポキシ系接着剤で接着した。この際、絶縁体基盤の中心にはリード電極用として、あらかじめ直径5mmの穴を開けておいた。最後に誘電体を300μmの厚さまで研削、ラップ加工し、リード電極を付けて図1に示すような静電チャックを作製した。
【0019】
この静電チャックに真空中で1kVの直流電圧を20秒間印加し、真空中でシリコンウェーハを吸着したときの吸着力を測定した。第1表に吸着力の測定結果を誘電体の焼結密度、体積固有抵抗率の値とともに示す。
【0020】
第1表より、本発明の静電チャックは吸着力が非常に高いことが分かる。比較例2は体積固有抵抗率が高く、ジョンセン・ラーベック力が発現しないため、吸着力は非常に小さかった。なお、比較例3は比較的大きな吸着力を示したが、誘電体の抵抗値が低く、ウェーハに流れるリーク電流が大きくなるため、実用上好ましくない。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば電気抵抗率を適確に制御した静電チャックの誘電体を安定的に製造することができ、高い吸着力の静電チャックを提供できるため、産業上極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電チャックの断面の概略を示す図である。
【符号の説明】
1.誘電体
2.電極(導体層)
3.絶縁体基盤
4.エポキシ樹脂
5.リード電極
6.シリコンウェーハ
Claims (4)
- 上層にセラミックスからなる誘電体、中層に電極、下層にセラミックスからなる絶縁体基盤を備えたセラミックス静電チャックにおいて、Ti2 O3 を0.2重量%以上、0.7重量%以下含有するAl2 O3 基セラミックスを誘電体とすることを特徴とする静電チャック。
- 誘電体の体積固有抵抗率が109 〜1013Ω・cmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
- 上層にセラミックスからなる誘電体、中層に電極、下層にセラミックスからなる絶縁体基盤を備えたセラミックス静電チャックの製造方法において、Al2 O3 の粉末にTi2 O3 の粉末を0.2重量%以上、0.7重量%以下になるよう添加、混合し、成形後、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気下もしくは真空中で、1200〜1700℃の温度で常圧焼成したセラミックスを誘電体として用いることを特徴とする静電チャックの製造方法。
- 上層にセラミックスからなる誘電体、中層に電極、下層にセラミックスからなる絶縁体基盤を備えたセラミックス静電チャックの製造方法において、Al2 O3 の粉末にTi2 O3 の粉末を0.2重量%以上、0.7重量%以下になるよう添加、混合し、成形後、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気下もしくは真空中で、1200〜1700℃の温度でホットプレス焼成またはHIP焼成したセラミックスを誘電体として用いることを特徴とする静電チャックの製造方法。
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