JP4354138B2 - アルミナ質焼結体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体ウエーハ、LCD基板ガラス等を高精度に位置決めし固定する静電チャックに使用できるアルミナ質焼結体及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体製造装置に於いて、回路形成を目的としてシリコンウェーハ上に露光し、成膜し、シリコンウエーハをエッチングするためには、対象とするウエーハの平坦度を保ち、かつウエーハに温度分布がつかないように、即ち温度の均一性を確保するようにウェーハを保持する必要がある。このようなウェーハの保持手段としては機械方式、真空吸着方式、静電吸着方式が提案されている。これらの保持手段のうち、静電吸着方式は静電チャックによりウェーハを保持する方法であり、ウエーハ加工面の平坦度に優れ、真空雰囲気であっても使用することができるため多用されつつある。
【0003】
静電チャックは吸着力としてクーロン力を利用したものと、ジョンセン・ラーベック力を利用したものが有る。クーロン力を利用した静電チャックとしては誘電体としてCaTiO3、PbTiO2−La23系などを用いたもの知られている(例えば特公平8−31517号公報など)。
【0004】
またジョンセン・ラーベック力は誘電体とウエーハとの界面の小さなギャップに微小電流が流れ、帯電分極して誘起させることによって生じる力であり、誘電体の体積固有抵抗率が1012〜1013Ω・cm以下になると発生する。
【0005】
ジョンセンラーベック力を用いて静電チャックとして必要な吸着能力を確保するためには、誘電体の体積固有抵抗率が109〜1013Ω・cmの範囲内に有ることが要件となる。さらに静電チャックに要求される特性として、電圧を印加している間には大きな吸着力を有し、電圧印加を解除したならば直ちに吸着力を小さくしてウエーハ等の被吸着物を容易に取り外すことが出来るようにすることが求められるが、このためには誘電体の体積固有抵抗率が109〜1011Ω・cmの範囲内に有ることが望ましい。
【0006】
ジョンセン・ラーベック力を利用した静電チャックには、誘電体としてアルミナに遷移金属元素を添加したセラミックス、例えばAl23−TiO2系などが良く知られている(特平6−97675公報、特開平2−160444号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
Al23−TiO2系セラミックスを誘電体とした従来の静電チャックにおいては、TiO2の添加量を調整することによってセラミックスの体積固有抵抗率を制御している。この従来型のAl23−TiO2系セラミックスはAl23を主成分とする以外に焼結助剤としてSiO2、CaO、MgOが数%以上添加されており、焼結後にこれらの焼結助剤がAl23粒子間に粒界相として存在する。TiO2はAl23粒子と、この粒界相に固溶し体積固有抵抗率を低下させるが、粒界相の方が固溶し易いため選択的に粒界相に固溶し、粒界相を繋ぐ低抵抗なネットワークを形成する。Al23−TiO2系セラミックス結晶組織の体積の小さい粒界相が実質的に抵抗値を低下させているために、TiO2添加量が2%を超える領域では非常に微量な添加量の増減で抵抗値の値が大幅に変化するという現象が生じる。特にジョンセン・ラーベック力を利用した静電チャックをして好適な体積固有抵抗率を109〜1011Ωcmの範囲が得られるTiO2含有量2%〜6%の領域に於いては0.1〜0.3%の添加量の差で大幅に抵抗値が変わることから、この範囲内の抵抗値を制御する事は非常に難しく、ロット間で抵抗率がばらついてしまい、安定して静電チャックの誘電体を製造できないという問題があった。
【0008】
特開2000−286333公報にはTiO2の添加量は体積固有抵抗率が顕著に変化しない程度の添加量に抑え、Cr23を添加することによってAl23とCr23の固溶体粒子を形成し、Cr23の含有量を調整することで体積固有抵抗率を調整する発明が開示されている。当該公報によると、体積固有抵抗率を109〜1011Ω・cmの範囲とするためにはCr23添加量を20〜50%とする必要がある。しかし、半導体プロセスにおいては不純物、特に重金属不純物の混入はなるべく避けなければならず、このためAl23−TiO2系セラミックスに大量にCr23を添加することは望ましくない。
【0009】
従って上記の問題を解決するためにはAl23、チタン酸化物を主成分とし、その他の助剤成分をほとんど含まずに、TiをAl23粒子に固溶させて体積固有抵抗率を低下させることが必要となってくる。
【0010】
TiをAl23粒子に固溶させるためには添加するAl2TiO5、TiO2のTi4+の一部がTi3+に還元され、このTi3+がAl23のAl3+のサイトに置換固溶した(Al、Ti)23とならなければならない。しかしながらTi4+からTi3+への還元反応は非酸化雰囲気中で焼結体の表面から徐々に内部へと生じていくため、焼成温度、焼成雰囲気、焼結体のサイズ等の影響を受けやすくなり、焼結体の内部で均一にTi3+への還元反応を起こすことは難しい。このため抵抗値を安定に制御することは困難となる。
【0011】
特開平11−294455公報には、Al23に既にTiがTi3+の形態であるTi23を添加し、(Al,Ti)23を形成することによって体積固有抵抗率のバラツキを抑えようとした発明が開示されている。しかしTi23が非常に高価であるということ、製造プロセス中で酸化されてTiO2になりやすく焼成での雰囲気制御が難しいという問題が有った。
【0012】
本発明は、有害成分を大量に含有することなく、安価に体積固有抵抗率を109〜1011Ω・cmの範囲において制御することのできるアルミナ質焼結体及びその製造法並びに静電チャックを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはAl23にTiO2及び/又はAl2TiO5、並びにBN、B4C又はBの1種又は2種以上を微量に添加し焼成することで焼成中にTi4+を安定的にTi3+に還元することが可能であり、結果として電気抵抗率を的確に制御したセラミックスを製造できることを見出した。このセラミックスを静電チャックの誘電体として用いる事により、吸着力の高い静電チャックが安定的に製造出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
(1)チタン酸化物をTi換算で0.5〜3.6質量%、ボロン及び/又はボロン化合物をB換算で0.04〜0.9質量%含み、前記チタン酸化物、ボロン、ボロン化合物及びアルミナ以外の成分含有量が1.0%未満であり、体積固有抵抗率が1.0×10 9 〜1.0×10 13 Ω・cmであり、非酸化性雰囲気焼成で得られてなるアルミナ質焼結体の製造方法であって、アルミナの粉末にTiO2及び/又はAl2TiO5の粉末をTi換算で0.5〜3.6質量%、BN、B4C又はBの1種又は2種以上の粉末をB換算で0.04〜0.9質量%になるように添加、混合し、非酸化雰囲気または真空中で、1200〜1700℃の温度でホットプレス焼成又はHIP焼成又はガス圧焼成することを特徴とするアルミナ質焼結体の製造方法。
【0014】
本発明によればアルミナに実質的にTiを固溶させることにより体積固有抵抗率を109〜1013Ω・cmの範囲に制御したセラミックスが得られるため、このセラミックスを静電チャックの誘電体として使用した場合、ジョンセン・ラーベック力による吸着力が発現する。
【0015】
従来から静電チャックの誘電体として多用されているAl23−TiO2系セラミックスの結晶相はα−Al23のマトリックスにα−Al23との反応生成物であるAl2TiO5や未反応のTiO2等が第二相として分散した組織となっている。Al23−TiO2系セラミックスを大気中で焼成したものの体積固有抵抗率は1014Ω・cm以上であるが、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気中で焼成を行うと、第二相のAl2TiO5、 TiO2のTi4+の一部がTi3+に還元され、このTi3+がAl23のAl3+のサイトに置換固溶した(Al、Ti)23となり体積固有抵抗率を低下させる事が出来ると考えられる。しかしながらAl23、チタン酸化物を主成分とする以外に焼結助剤としてSiO2、CaO、MgOが数%以上添加されている場合には、焼結後にこれらの焼結助剤がAl23粒子間に粒界相として存在してしまい、還元されたTi3+は選択的に粒界相に固溶し、このAl23−TiO2系セラミックス結晶組織の体積の小さい粒界相が実質的に抵抗値を低下させているためにTiO2添加量が2%を超える領域では非常に微量な添加量の増減で抵抗値の値が大幅に変化するという現象が生じる。特にジョンセン・ラーベック力を利用した静電チャックをして好適な体積固有抵抗率を109〜1011Ωcmの範囲が得られるTiO2含有量2%〜6%の領域に於いては0.1〜0.3%の添加量の差で大幅に抵抗値が変わることから、この領域での抵抗値を安定に制御することは困難となる。
【0016】
従って上記の問題を解決するためにはAl23、チタン酸化物を主成分とし、その他の助剤成分をほとんど含まずに、TiをAl23粒子に固溶させて体積固有抵抗率を低下させる事が必要となってくる。
【0017】
TiをAl23粒子に固溶させるためには添加するAl2TiO5、TiO2のTi4+の一部がTi3+に還元され、このTi3+がAl23のAl3+のサイトに置換固溶した(Al、Ti)23とならなければならない。しかしながらTi4+からTi3+への還元反応は非酸化雰囲気中で焼結体の表面から徐々に内部へと生じていくため、焼成温度、焼成雰囲気、焼結体のサイズ等の影響を受けやすくなり、焼結体の内部で均一にTi3+への還元反応を起こすことは難しい。このため抵抗値を安定に制御することは困難となる。
【0018】
これに対し、本発明のAl23−T−B系の誘電体は、含有させたBが非酸化雰囲気焼成中にAl23、チタン酸化物の酸素を奪って酸化されB23となるために、実質的にBが還元促進剤として作用し、チタン酸化物のTi4+の一部をTi3+に還元することを助けることとなる。したがって、還元反応が表面と内部と同時に進行するため、焼成温度、焼成雰囲気、焼結体のサイズ等の影響をさほど受けずに、体積固有抵抗率の値を安定に制御することが出来る。またSiO2、CaO、MgO等のその他の助剤成分をほとんど含まないため、粒界相が少なく、非常に微量な添加量で抵抗値の値が大幅に低下することもない。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明においてのTiの含有量を0.5質量%以上、3.6質量%以下の範囲としたのは、Tiの含有量を0.5質量%よりも小さくした場合には体積固有抵抗率が1013Ωcmよりも大きくなり、ジョンセン・ラーベック力が発現せず、吸着力が小さくなるためであり、一方、Tiの含有量が3.6質量%よりも大きい場合には体積固有抵抗率が小さくなりすぎて、ウエーハにリーク電流が流れすぎ、実用上好ましく無いためである。
【0020】
またBの含有量を0.04質量%以上、0.9質量%以下の範囲としたのは、Bの含有量を0.04質量%よりも小さくした場合には、添加量があまりにも少なすぎ、Tiの還元促進剤としての効果がほとんど得られないためである。一方、Bの含有量が0.9質量%よりも大きい場合には、焼結阻害要因として働き、焼結密度低下や機械強度の劣化を招くため実用上好ましく無いためである。
【0021】
アルミナ焼結体含有成分について、チタン酸化物、ボロン、ボロン化合物及びアルミナ以外の成分含有量を1.0%未満にしたのはアルミナの焼結助剤であるSiO2、MgO、CaO等の酸化物セラミックスが1.0%以上存在すると、焼成温度下で一旦溶融し冷却時にアルミナ粒子間で粒界相となり、粒界相同士がアルミナ粒子間で繋がるネットワークを形成するためである。この粒界相は選択的にTiを溶解し粒内より低抵抗となり易く、電圧を印加した場合には電荷の流れは粒界が支配的となる。この粒界相はTiの微量な添加で抵抗が極端に変化するために、体積固有抵抗の調整が困難となる。
【0022】
図1はTiの添加量と体積固有抵抗との関係を表すグラフであり、図中(1)(○)はBを添加し助剤添加量を1%以下とした本発明の場合、(2)(□)はBを添加せず助剤添加量を1%以下とした場合、(3)(▲)はBを添加せず助剤を1%以上添加した場合である。体積固有抵抗率109〜1011Ωcmの範囲に於いて、(2)のBを添加せず助剤を1%以下添加した場合では、Tiの還元が起こりにくく、体積固有抵抗率が安定しない。(3)のBを添加せずに助剤を1%以上添加した場合にはTiの0.1〜0.5%の添加量差で体積固有抵抗率が2桁以上変動する。Bを添加し、助剤を1%以下にした場合にはTiの添加量を1%変化させても体積固有抵抗の変化量は1桁以内であり、体積固有抵抗率の調整が工業的に容易であることが分かる。
【0023】
ジョンセン・ラーベック力を吸着力として有効に利用するためには、誘電体の体積固有抵抗率が109〜1013Ω・cmの範囲に有ることが要件となる。さらに静電チャックに要求される特性として、電圧を印加している間には大きな吸着力を有し、電圧印加を解除したならば直ちに吸着力を小さくしてウエーハ等の被吸着物を容易に取り外すことができるようにすることが求められるが、このためには誘電体の体積固有抵抗率が109〜1011Ω・cmの範囲内に有ることが望ましい。この場合、チタン酸化物の添加ではTiの換算で1.8〜3.0質量%、Bの含有量は0.04〜0.2質量%が良く、この場合、誘電体の体積固有抵抗率は109〜1011Ω・cmという最適な値となる。
【0024】
本発明のアルミナ焼結体は、α−Al23粉末にTiO2またはAl2TiO5粉末、BN、B4C又はBの1種又は2種以上の粉末を所定量混合後、プレス成形、CIP(静水圧加圧)成形、ドクターブレード成形等により所定形状に成形し、必要に応じて脱脂した後、1200℃〜1700℃の温度で焼成して得られる。大気中で脱脂を行う場合に於いてはB4CまたはBは酸化され易いため望ましくはB源としては耐酸化性の高いBNが好ましい。
【0025】
焼成温度が1200℃より低い場合は、焼結体の密度が低くなる上に、Tiの還元反応が不十分となり、体積固有抵抗率が1013Ω・cmより高くなるため、吸着力が弱くなる。焼成温度が1700℃より高い場合には粒成長が進み、焼結密度の低下や機械強度の劣化を招き、実用上好ましくない。
【0026】
焼成雰囲気は不活性ガス雰囲気や水素等の還元ガス雰囲気(即ち非酸化性雰囲気)、あるいは真空中で行われる。大気中や酸素中などの酸化雰囲気は使用できない。なぜなら、酸化雰囲気下ではTi3+がTi4+に酸化してしまい、体積固有抵抗率が1014Ω・cm以上になるため、ジョンセンラーベック力による吸着力を発現しないからである。
【0027】
焼成は通常の常圧焼結で行っても良いが相対的に低密度になりやすいため、ホットプレスまたはHIPまたはガス圧焼成などの加圧焼結を行うと好ましい。加圧焼結により気孔率が0.3%以下と小さく、密度3.85g/cm2以上の高密度な焼結体が得られ、高性能な静電チャックを製造することが出来る。低密度で気孔率が0.3%以上となると、大気中で静電チャックとして使用する際に、セラミックスの気孔が大気中の水分を吸着して、表面に電流が多く流れるため吸着力が低下する。
【0028】
絶縁体基板上に設けられた導体層と、該導体層を被覆する誘電体層を備えた静電チャックにおいて、誘電体層及び絶縁体基板、もしくは少なくとも誘電体層に本発明のアルミナ質焼結体を用いることが出来る。
【0029】
本発明のアルミナ質焼結体を用いた静電チャックは、例えば誘電体層の成形体を一軸プレス成形、CIP(静水圧加圧)成形、鋳込み成形、もしくはドクターブレード成形で作製し、表面に電極用としてWやMo金属ペーストをスクリーン印刷した後成形体を重ね合わせて一体焼成する方法、あるいは、誘電体を焼成後、スパッタやメッキ等で電極を付与した後、絶縁体基板に接合剤で接合する方法あるいは、誘電体を焼成後、アルミやTiなどの金属基板にロウ付け接合する方法などにより得られる。接合材としては例えばエポキシ樹脂等の有機系接着剤、ガラスや酸化物系の無機系接合剤が好適に使用される。
【0030】
【実施例】
α−Al23粉末にTiO2またはAl2TiO5の粉末、並びにBNまたはB4CまたはBの粉末を、表1に示したようになるように所定量秤量し、蒸留水、バインダー、分散剤を加えてボールミル混合した。得られたスラリーをスプレードライヤーで造粒し、造粒粉とした。これを円盤状にCIP成形した後、大気中500℃で脱脂を行い成形体を得た。この成形体をアルゴンガス中で温度1600℃、圧力30MPaで2時間ホットプレス焼成を行い焼成体を得た。得られた焼結体を直径200mm、厚さ3mmの円盤状に加工し、誘電体とした。誘電体の焼結密度をアルキメデス法により測定、更に電気抵抗を三端子法で測定した。(印加電圧500V、室温)。次いで、誘電体の片方の表面にTiをスパッタし、導体層としての電極を付与した。これに絶縁体基板(アルミナ)を導体層が中間に挟まれるようにエポキシ系接着剤で接着した。この際、絶縁体基板の中心にはリード電極用としてあらかじめ穴を開けておき、最後に誘電体を2mmの厚みまで研削、ラップ加工し、リード電極を付けて図2に示すような静電チャックを作成した。
【0031】
【表1】
Figure 0004354138
【0032】
表1においてチタン化合物、ボロン、ボロン化合物及びアルミナ以外の成分(「残成分」という)は主に焼結助剤成分である。本発明例1〜11はいずれも残成分が0.5%以下である。
【0033】
本発明例1〜11は体積固有抵抗率が適正範囲内にあり、特に本発明例4〜11は体積固有抵抗率が109〜1011Ω・cmの好ましい範囲内にある。
【0034】
比較例1はチタン酸化物含有量が本発明の上限を超えており、体積固有抵抗率が適正範囲下限より低い。比較例2は残成分の含有量が本発明の範囲を超えており、同じく体積固有抵抗率が適正範囲下限より低い。比較例3はチタン酸化物、ボロン系物質を含有しておらず、残成分が2%で有り、比較例4〜8はチタン酸化物含有量は本発明内であるがボロン系物質を含有せず、また残成分が1%を超えている例である。比較例9はチタン酸化物、ボロン系物質を含有しておらず、残成分が1%以下で有り、比較例10〜14はチタン酸化物含有量は本発明内であるがボロン系物質を含有せず、また残成分が1%以下の例である。
【0035】
比較例3〜4、9〜12は体積固有抵抗率が適正範囲上限より高い。比較例6〜8は残成分が1%を超えているため体積固有抵抗率が適正範囲下限より低い。
【0036】
比較例13、14はボロン系物質を含有せずにチタン酸化物をTi換算2.5%以上含有し、体積固有抵抗率が変動し不安定である。
【0037】
この静電チャックに真空中で500Vの直流電圧を60秒間印加し、真空中でシリコンウエ−ハを吸着したときの吸着力を測定した。合わせて電圧の印加を解除しウエ−ハが剥がれるまでの時間(残留吸着時間)を測定した。表1に吸着力、残留吸着時間の結果を誘電体の焼結密度、体積固有抵抗率の値とともに示す。
【0038】
表1より本発明例1〜11の静電チャックは、吸着力が高く、残留吸着時間が短いことが分かる。比較例1、2、6〜8は吸着力が小さく、誘電体の抵抗値が低いため、ウエーハに流れるリーク電流が大きくなるため、実用上好ましくない。比較例3、4、9〜12は吸着力が低く残留吸着時間が長いので実用上好ましくない。比較例5も体積固有抵抗率は適正範囲内であるが、残留吸着時間が長いので実用上不適である。比較例13、14はチタン酸化物をTi換算2.5%以上含有するため、直径200mm面内で体積固有抵抗率が3桁以上変動し、安定した製品を得ることが出来なかった。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、Al23−TiO2系セラミックスにボロン、ボロン化合物を適量含有して焼成することにより、電気抵抗率を的確に制御したアルミナ質焼結体を安定的に製造することが可能となる。特にジョンセン・ラーベック力を利用する静電チャックとして好適な体積固有抵抗率を安定して実現することが出来るので、このアルミナ質焼結体を静電チャックの誘電体として使用すれば、吸着特性の良い静電チャックを提供できるため、産業上極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Tiの添加量と体積固有抵抗率との関係を表すグラフであり、(1)はBを添加し助剤添加量を1%以下とした本発明の場合、(2)はBを添加せず助剤添加量を1%以下とした場合、(3)はBを添加せず助剤を1%以上添加した場合についてのものである。
【図2】本発明の静電チャック断面の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1.誘電体層
2.絶縁体基板
3.導体層(電極)
4.エポキシ樹脂
5.リード電極
6.シリコンウエ−ハ
7.電源

Claims (1)

  1. チタン酸化物をTi換算で0.5〜3.6質量%、ボロン及び/又はボロン化合物をB換算で0.04〜0.9質量%含み、前記チタン酸化物、ボロン、ボロン化合物及びアルミナ以外の成分含有量が1.0%未満であり、体積固有抵抗率が1.0×10 9 〜1.0×10 13 Ω・cmあり、非酸化性雰囲気焼成で得られてなるアルミナ質焼結体の製造方法であって、アルミナの粉末にTiO2及び/又はAl2TiO5の粉末をTi換算で0.5〜3.6質量%、BN、B4C又はBの1種又は2種以上の粉末をB換算で0.04〜0.9質量%になるように添加、混合し、非酸化雰囲気または真空中で、1200〜1700℃の温度でホットプレス焼成又はHIP焼成又はガス圧焼成することを特徴とするアルミナ質焼結体の製造方法。
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