JP3623107B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性、耐食性、耐プラズマ性に優れ、主に半導体装置や液晶基板などの製造工程において、半導体ウエハやガラス基板などの被固定物を保持し、特に、被固定物を静電気力によって吸着保持する静電チャック等に使用される、高い静電気力を有するセラミック抵抗体を用いた静電チャックに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、半導体製造工程において、半導体ウエハ(以下、ウエハと称す。)に微細加工を施すためのエッチング工程や、薄膜を形成するための成膜工程、あるいはフォトレジストを行うための露光処理工程等においては、ウエハを保持するために静電チャックが使用されている。
【0003】
この種の静電チャックとしては、静電吸着用の電極板上にアルミナ、サファイアなどからなる誘電体層を形成したもの(特開昭60−261377号公報)や、絶縁基体の上に静電吸着用電極を形成し、その上に誘電体層を形成したもの(特開平4−34953号公報)、さらには誘電体材料からなる基体の内部に静電吸着用電極を埋設したもの(特開昭62−94953号公報)等誘電体層の上面を吸着面としたものが提案されている。
【0004】
上記構造の静電チャックにおいては、吸着面にウエハを載置して静電吸着用電極とウエハとの間に電圧を印加することで誘電分極によるクーロン力やジョンソン・ラーベック力等の静電気力を発現させてウエハを吸着保持するものである。また、静電吸着用電極を複数個に分割し、各電極間に電圧を印加することにより吸着面に載置したウエハを吸着保持する双極型の構造の静電チャックも提案されている。
【0005】
一方、近年、半導体素子における集積回路の集積度が向上し、半導体製造工程に過酷な条件が負荷されるに伴って、吸着面を構成する誘電体層には、ウエハの脱着に対する耐摩耗性と、各種処理工程で使用される腐食性ガスに対する耐食性に加え、耐プラズマ性に優れるとともに、高い熱伝導率を有する材料が望まれるようになり、このような材料として高純度の窒化アルミニウム質焼結体や、焼結助剤として主にY2 O3 やEr2 O3 を含有した窒化アルミニウム質焼結体を用いることが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ウエハを吸着させる静電気力には前述したようにクーロン力とジョンソン・ラーベック力の2種類があり、クーロン力は誘電体層を構成する材質の誘電率に依存し、ジョンソン・ラーベック力は誘電体層を構成する材質の体積固有抵抗値に依存する。具体的には、誘電体層の体積固有抵抗値が1015Ω・cmより大きい時の吸着力はクーロン力により支配され、誘電体層の体積固有抵抗値が低下するにしたがってジョンソン・ラーベック力が発現し、誘電体層の体積固有抵抗値が1012Ω・cm未満となると吸着力はクーロン力に比べて大きな吸着力が得られるジョンソン・ラーベック力により支配されることが知られている。
【0007】
上記高純度の窒化アルミニウム質焼結体や焼結助剤として主にY2 O3 やEr2 O3 を含有した窒化アルミニウム質焼結体は、250℃以上の高温下においては高い吸着力が得られるものの、200℃以下の温度下で行われる成膜工程や露光処理工程、あるいはエッチング工程などでは十分な吸着力が得られないといった課題があった。
【0008】
すなわち、上記窒化アルミニウム質焼結体の体積固有抵抗値は温度が上昇するに伴って低下し、300℃以上の温度下では1011Ω・cm程度であることからジョンソン・ラーベック力による高い吸着力が得られるものの、200℃以下の温度下では1016Ω・cm以上と絶縁性が高いためにクーロン力による吸着力しか得られず、また、誘電率もそれほど高くないことからクーロン力による吸着力も小さく、十分な吸着力を得ることができなかった。
【0009】
そのため、歪みをもったウエハを吸着した時には、静電チャックの吸着力が小さいためにウエハの全面を吸着面に当接させることができず、成膜面でのウエハの平坦化さらには均熱化等が損なわれ、成膜工程ではウエハ上に均一な厚みをもった薄膜を形成することができず、露光処理工程やエッチング工程では精度の高い処理を施すことができないといった課題があり、高温下でしか使用できなかった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは上記課題に対し、窒化アルミニウム質焼結体について、200℃以下の低温領域における吸着力を高める組成について検討を重ねた結果、焼結助剤としてセリウム(Ce)を特定範囲で含有させるとともに、粒界にCeAlO3 相を析出させることにより、200℃以下の温度における体積固有抵抗値をジョンソン・ラーベック力を発現させることができる程度にまで小さくできるとともに、抵抗値の温度依存性(抵抗温度係数)を小さくすることができ、200℃以下の温度においても高い吸着力を有する広範囲な温度領域で使用可能な静電チャックが得られることを見出した。
【0012】
即ち、本発明の静電チャックは、被固定物を静電気力によって吸着保持するものであって、被固定物を吸着保持する吸着面が、窒化アルミニウムを主成分とし、セリウムを酸化物(CeO2)換算で2〜20モル%の範囲で含み、かつCeAlO3を含有し、0〜50℃における体積固有抵抗値が108〜1012Ω・cmであることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
セリウム(Ce)は難焼結材である窒化アルミニウムの焼結性を高めるために加える焼結助剤成分であるが、焼成により窒化アルミニウムと化1のように反応し、粒界にCeAlO3 相として存在する。
【0014】
【化1】
【0015】
セリウム(Ce)は酸化物を構成する場合、その価数は通常4価であるが、CeAlO3 相を構成する際には3価となり価数が変化する結果、結晶中に空孔が生成するために導電性を示す。
【0016】
そして、絶縁材料である窒化アルミニウム粒子間すなわち粒界に、この導電性を示すCeAlO3 相を連続的に存在させることにより、粒界を介して導通を図ることができ、窒化アルミニウム質焼結体の抵抗値を下げることができる。
【0017】
また、CeAlO3 相を粒界に介在させることで温度変化に対する抵抗値の変化率を小さくできる(抵抗温度係数が小さい)といった効果も有することから、広範囲の温度領域において使用可能な静電チャックを提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の静電チャックに用いられるセラミック焼結体は、窒化アルミニウムを主成分とし、セリウムを酸化物(CeO2)換算で2〜20モル%の範囲で含み、かつCeAlO3を含有し、0〜50℃における体積固有抵抗値が108〜1012Ω・cmであることが重要である。
【0019】
−50℃〜200℃の温度域でジョンソン・ラーベック力による吸着力を得るためには、0℃から50℃の温度域における体積固有抵抗値が108 〜1012Ω・cmであることが必要であり、セリウムの含有量を2〜20モル%、好ましくは5〜15モル%とすることにより、0℃から50℃の温度域における体積固有抵抗値を108 〜1012Ω・cm、特に109 〜1011Ω・cmとすることができ、ジョンソン・ラーベック力による吸着力を得ることができるため、かかる焼結体の吸着力が飛躍的に向上する。
【0020】
即ち、セリウム(Ce)の含有量が酸化物(CeO2 )換算で2モル%未満であると、粒界に生成されるCeAlO3 相の量が少ないために、焼結体の体積固有抵抗値を下げる効果が小さく、また、抵抗温度係数を小さくする効果も小さいために所望の抵抗値を得難いからであり、逆に20モル%より多いと、焼結体の強度および熱伝導率等が低下するからである。
【0021】
また、窒化アルミニウムの平均結晶粒子径は0.5〜50μm、特に3〜30μmが望ましい。これは、窒化アルミニウムの平均結晶粒子径が50μmより大きくなると焼結体の強度や硬度等が大きく低下するため、被固定物との脱着に伴う摺動によって吸着面が摩耗したり、成膜工程やエッチング工程等におけるプラズマや腐食性ガスによって腐食摩耗し易くなるために、静電チャックの寿命が短くなるとともに、被固定物にパーティクルが付着するからであり、逆に、窒化アルミニウムの平均結晶粒子径を0.5μmより小さくすることは製造上難しいからである。
【0022】
また、本発明の静電チャックに用いられるセラミック抵抗体の強度については、3mm以下の厚みで使用することもあるため、100MPa以上であることが望ましい。
【0023】
また、本発明の静電チャックに用いられるセラミック抵抗体では、緻密化を促進させるために焼結助剤としてセリウム(Ce)化合物以外にイットリウム(Y)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)等の希土類酸化物を2モル%以下の範囲で含有してもよい。これにより、セラミックスの緻密化がさらに促進されるため、耐食性および耐摩耗性が向上し、静電チャックとして用いた場合、セラミックス表面から発生する脱粒等によるパーティクルの発生を低減でき、静電チャックとしての信頼性が向上する。
【0024】
以下に本発明の静電チャックに用いられるセラミック焼結体の製造方法について説明する。まず、出発原料である窒化アルミニウム粉末(純度99%以上、平均粒径0.4μm〜5.5μm)に対し、酸化セリウム(CeO2)粉末(純度99%以上、平均粒径0.5μm〜18μm)をセリウムの酸化物(CeO2)換算量で2〜20モル%の範囲で添加混合する。なお、原料中には不純物として酸素が存在するが、この酸素は前述の化1の反応を促進することができる。また、上記粉末に対し酸化アルミニウム(Al2O3)を添加することにより、以下に示す化2の反応を促進することができる。
【0025】
【化2】
【0026】
なお、焼結体中に酸化アルミニウム(Al2 O3 )が析出すると、抵抗の制御が困難になり、安定した吸着特性が得られないため、酸化アルミニウム(Al2 O3 )の添加量は、上記酸化セリウム(CeO2 )の添加量に対してモル換算量で50%以下の範囲であることが望ましい。
【0027】
さらに、CeAlO3 相の生成率を高めるために、予め、酸化アルミニウム(Al2 O3 )と酸化セリウム(CeO2 )とを反応させて、CeAlO3 の粉末を作製しておき、これを窒化アルミニウムの粉末と所定の割合で均一に混合してもよい。
【0028】
また、本発明においては、セリウム(Ce)は焼結性を高める効果を有するものの、その含有量が少量の範囲では十分な焼結性が得られない場合がある。このような時には従来より焼結助剤として使用されているイットリウム(Y)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)等の希土類酸化物を2モル%以下の範囲で添加すればよい。
【0029】
上記混合粉末を所定形状に周知の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、ドクターブレード法、圧延法等のテープ成形法、押し出し成形等により任意の形状に成形する。
【0030】
その後、この成形体を真空中または窒素中で脱脂した後、窒素等の非酸化性雰囲気中で1650℃〜2100℃、特に1750℃〜1900℃の温度で焼成することにより作製できる。
【0031】
図1(a)、(b)は本発明に係る静電チャック1を示す斜視図およびX−X線断面図であり、絶縁性を有するセラミック基体2の表面に静電吸着用電極4を備え、この静電吸着用電極4を覆うように上記セラミック基体2の表面に誘電体層3が設けられており、誘電体層3の上面が被固定物10を吸着する吸着面5を形成している。さらに、吸着面5の反対の面に静電吸着用電極4と電気的に接続された給電端子6が埋設されている。
【0032】
吸着面5を構成する誘電体層3の抵抗値は吸着力と密接な関係にあるが、本発明の静電チャックによれば、誘電体層3を形成する窒化アルミニウム質セラミックスの0〜50℃の体積固有抵抗値が108 〜1012Ω・cmの範囲となるように適宜調整することができるため、静電チャック1の静電吸着用電極4と吸着面5に載置した被固定物10との間に電圧を印加することで、被固定物10と静電吸着用電極4との間に微弱な漏れ電流が流れることからジョンソン・ラーベック力による吸着力を発現させることができ、被固定物10を吸着面5に強固に吸着保持することができる。
【0033】
また、耐食性および耐摩耗性を高める上で、誘電体層3の相対密度は95%以上、特に98%以上であることが望ましく、また熱伝導率は、15w/mK以上、特に30w/mK以上であることが望ましい。
【0034】
セラミック基体2は、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム等の絶縁性を有するセラミックスで形成すればよいが、特に窒化アルミニウム質セラミックスで形成することにより、誘電体層3を構成する窒化アルミニウム質セラミックスと同時焼成が可能で、両者間の熱膨張係数差を無くすことができるため、焼成時における反りや歪み等を生じることがなく信頼性の高い静電チャックを得ることができる。
【0035】
静電吸着用電極4および給電端子6は、焼成時及び加熱時におけるセラミック基体2との密着性を高めるために、セラミック基体2を構成する窒化アルミニウム質焼結体と熱膨張係数が近似したタングステン、モリブデン、白金等の耐熱性金属により形成する。また、給電端子6が腐食性ガスに曝されるような時には鉄−コバルト−クロム合金により形成することが良い。
【0036】
また、静電吸着用電極4が耐熱性に優れたセラミック基体2内に完全に埋設された構造であることから、比較的高温の200℃付近においても使用可能であり、さらには静電チャック1は優れた耐プラズマ性、耐食性を有する窒化アルミニウム質焼結体からなるため、成膜工程やエッチング工程などにおいてプラズマや腐食性ガスに曝されたとしても腐食が少なく、長期使用が可能である。しかも、静電吸着用電極4への通電をOFFにすれば、ただちに吸着力を除去することができるため、離脱応答性にも優れている。
【0037】
なお、図1に示す静電チャック1では、セラミック基体2の内部に静電吸着用電極4のみを備えた例を示したが、例えば、上記静電吸着用電極4以外にヒータ電極を埋設しても良く、この場合、ヒータ電極により静電チャック1を直接発熱させることができるため、間接加熱方式のものに比べて熱損失を大幅に抑えることができる。
【0038】
また、セラミック基体2を窒化アルミニウム質セラミックスにより形成した場合、熱伝導特性がよいために、吸着面5に保持した被固定物10をムラなく均一に加熱することができる。また、静電吸着用電極4以外にプラズマ発生用電極をセラミック基体2内に埋設すれば、装置の構造を簡略化することができる。また、本発明の静電チャック1は主に200℃以下の温度域で使用されるものであるが、200℃より高い温度域でももちろん使用可能である。
【0039】
ところで、このような静電チャック1を作製するには、セラミック基体2を形成する原料として、例えば、純度99%以上、平均粒径3μm以下の窒化アルミニウム(AlN)の粉末を用い、また誘電体層3を形成する原料として、前述した組成の混合粉末を用いて、所定形状に周知の成形方法、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、ドクターブレード法や圧延法等のテープ成形法、押し出し成形等により任意の形状に成形する。
【0040】
例えば、テープ成形法を用いる場合、セラミック基体2を形成するグリーンシートを複数枚成形し、このうちの1枚上に導体ペーストを印刷して静電吸着用電極4をなす電極パターンを形成した後、各グリーンシートを積層する。一方、誘電体層3を形成するグリーンシートを成形し、前記積層体上に積層し、該積層体に切削加工を施して所望の形状とする。
【0041】
また、金型プレスを用いる場合には、金型内に上記粉末を充填するとともに板状または粉末状の静電吸着用電極4を粉末中に埋設してプレス成形することにより、静電吸着用電極4を埋設したセラミック成形体を作製することも可能である。
【0042】
得られた成形体を真空または窒素中で脱脂した後、非酸化性雰囲気下において1650〜2100℃、特に1750〜1900℃で1〜数時間焼成する。焼成方法としては、常圧焼成、ホットプレス法あるいはガス圧焼成法等が用いられる。さらに、焼結体の密度を高めるために、焼結体に対してHIP処理を施すこともできる。
【0043】
そして、誘電体層3の表面に研磨加工を施して吸着面5を形成するとともに、吸着面5と反対側の面に静電吸着用電極4と連通する穴を穿孔し、該穴に給電端子6をロウ付け等の方法により接合することにより、図1に示す静電チャック1を得ることができる。
【0044】
次に、図2は本発明に係る静電チャック11の他の実施形態を示す図で、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
この静電チャック11は、窒化アルミニウム質焼結体からなる円盤状をした誘電板12と、該誘電板12の下面に敷設した静電吸着用電極14と、該静電吸着用電極14を覆うベース基体15とからなり、上記誘電板12とベース基体15とはガラス、ロウ材、あるいは接着剤などの接合剤16を介して接合し、静電吸着用電極14を誘電板12とベース基体15との間に内蔵するとともに、前記誘電板12の上面を吸着面13としてある。なお、ベース基体15の裏面には上記静電吸着用電極14と電気的に接続された給電端子17を埋設してある。
【0045】
上記ベース基体15は、サファイアあるいはアルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの各種セラミックス、あるいは樹脂などの絶縁材料により形成してある。
【0046】
また、静電吸着用電極14は銅、チタンなどの金属やTiN、TaN、WCなどの材質からなり、誘電板12の下面に蒸着、メタライズ、メッキ、PVD、CVD等の方法により形成してある。
【0047】
また、静電チャック11の吸着面13を構成する誘電板12は、セリウムを酸化物(CeO2 )換算で2〜20モル%の範囲で含み、かつCeAlO3 相を含有する窒化アルミニウム質焼結体により形成してある。そして、この窒化アルミニウム質焼結体は、0〜50℃の温度域において108 〜1012Ω・cmの体積固有抵抗値を有することから、静電チャック11の静電吸着用電極14と吸着面13に載置した被固定物10との間に電圧を印加すれば、被固定物10と静電吸着用電極14との間に微小な漏れ電流が流れ、ジョンソン・ラーベック力による吸着力を発現させることができるため、−50℃から200℃の温度域において被固定物10を吸着面13に強固に吸着保持することができる。
【0048】
その為、被固定物10が反りをもった半導体ウエハなどの基板であっても吸着面13の精度に倣わせて保持することができるために、例えば、露光処理工程において精度の良い露光処理を施すことができる。
【0049】
また、静電吸着用電極14への通電をOFFにすれば、ただちに吸着力を除去することができるため、離脱応答性にも優れている。
【0050】
しかも、この静電チャック11は、誘電体板12及びベース基体15をそれぞれ別々に作製しておき、接合剤16により接合するだけで良いため簡単に製造することができる。
【0051】
なお、本実施形態では単極型の静電チャックの例を示したが、双極型の静電チャックにも適用できることは言うまでもない。
【0052】
【実施例】
図1に示す本発明の静電チャック1を試作し、室温(25℃)下における吸着特性について測定を行った。
【0053】
まず、純度99%、平均粒径1.2μmのAlN粉末にバインダーと溶媒を加えて泥漿を作製した後、ドクターブレード法により厚さ0.5mm程度のグリーンシートを複数枚成形してそれらを積層し、セラミック基体2を構成するための成形体とした。そして、その一主面にAlN粉末を5容量%混合したタングステンペーストをスクリーン印刷法により印刷塗布して静電吸着用電極4をなす電極パターンを形成した。
【0054】
一方、純度99%、平均粒径1.2μmのAlN粉末と、純度99%、平均粒径0.9μmのCeO2 粉末と、純度99%、平均粒径0.7μmのAl2 O3 粉末とを成形体の組成がICP分析により表1となるように混合し、さらにバインダーと溶媒を加えて泥漿を作製した後、ドクターブレード法により厚さ0.5mm程度のグリーンシートを成形し、誘電体層3用の成形体とした。
【0055】
そして、静電吸着用電極4をなす金属膜を備えたセラミック基体2用成形体の金属膜の表面に、誘電体3用の成形体を積層して、80℃、50kg/cm2 の圧力で熱圧着した。しかる後に、上記積層体に切削加工を施して円盤状とし、真空脱脂したあと、窒素雰囲気下において2000℃程度の温度で3時間焼成することにより、外径200mm、厚み8mm、かつ内部に膜厚15μmの静電吸着用電極4を備えた板状体を形成した。そして、誘電体層3をなす窒化アルミニウム質セラミックスの表面に研磨加工を施して吸着面5を形成するとともに、吸着面5と反対側の面に前記静電吸着用電極4と連通する穴を穿孔し、該穴に鉄−コバルト−ニッケル合金からなる給電端子をロウ付けして静電チャック1を形成した。得られた静電チャックについて、室温(25℃)において、静電チャック1の吸着面5に8インチ径のシリコンウエハを載置し、静電吸着用電極4との間に300Vの電圧を印加することによりウエハを吸着面5に吸着保持させ、この状態でシリコンウエハを剥がすのに必要な力を吸着力として測定した。結果は表1に示した。
【0056】
また、誘電体層3と同じ組成のセラミックスを上記同様に作製し、0℃〜50℃における体積固有抵抗値を測定した。また、アルキメデス法により焼結体の密度を測定し、理論密度に対する比率である相対密度(%)を算出した。さらに、焼結体表面でのX線回折チャートより析出結晶相を同定した。また、厚み2mmの試料について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定した。さらに、JISR1601に従い、室温における4点曲げ強度を測定した。結果は、表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、焼結体中におけるセリウム(Ce)の含有量が2モル%未満である試料No.1、2は、抵抗値を下げる効果が小さく、0〜50℃の温度域における体積固有抵抗値を108 〜1012Ω・cmとすることができなかった。また、モル換算量によるAl2 O3 の添加量がCeO2 の添加量の50%よりも多い試料No.7では、体積固有抵抗値が高くなってしまい、また、これを静電チャックをして用いた場合、吸着力が0g/cm2 となった。
【0059】
さらに、試料No.13は、窒化アルミニウム質焼結体中におけるセリウム(Ce)の含有量が20モル%より多いために、強度および熱伝導率が低下した。
【0060】
これに対し、本発明の範囲内の試料は、0〜50℃の温度域における体積固有抵抗値が108 〜1012Ω・cmであるとともに、相対密度97%以上、強度150MPa以上、熱伝導率30W/mK以上であった。また、これらを静電チャックとして用いた場合、50g/cm2 以上の高い吸着力を得ることができた。
【0061】
また、表1の試料No.4(本発明)および表1の試料No.1(比較例)と同じ組成のセラミックス(直径60mm、厚み2mm)を上記静電チャックと同様な条件で作製し、このセラミックスを真空中で400℃に加熱した後、ドライ窒素を導入し、窒素雰囲気中、3端子法にて降温時での体積固有抵抗値を測定し、温度に対する体積固有抵抗値の変化を図3に示した。
【0062】
図3から明らかなように、温度の逆数と体積固有抵抗値との間に比例関係があるが、試料No.1(比較例)の200℃以下の温度領域での体積固有抵抗値が1013Ω・cmを越えるのに対し、本発明の範囲内である試料No.4(本発明)では、−30℃〜100℃の温度領域での体積固有抵抗値が108 〜1012Ω・cmであった。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明のセラミック抵抗体を用いた静電チャックは、0〜50℃における体積固有抵抗値が108〜1012Ω・cmであることから、200℃以下の温度下においてもジョンソン・ラーベック力による吸着力を発現させることができるため、広範囲な温度領域で使用可能であり、また高い吸着力でもって被固定物を強固に保持することができる。
【0064】
そのため、例えば、本発明の静電チャックを成膜処理工程に用いれば、被固定物上に均一な厚みをもった薄膜を被覆することができ、露光処理工程やエッチング処理工程に用いれば、被固定物に精度の良い露光や加工を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る静電チャックの一実施形態を示す図で、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】本発明に係る静電チャックの他の実施形態を示す図で、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【図3】本発明及び比較例の静電チャックを構成する窒化アルミニウム質焼結体の体積固有抵抗値と温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・静電チャック 2・・・セラミック基体 3・・・誘電体層
4・・・静電吸着用電極 5・・・吸着面 6・・・給電端子
10・・・被固定物
11・・・静電チャック 12・・・誘電板 13・・・吸着面
14・・・静電吸着用電極 15・・・ベース基体 16・・・接合剤
17・・・給電端子
Claims (1)
- 被固定物を静電気力によって吸着保持する静電チャックであって、被固定物を吸着保持する吸着面が、窒化アルミニウムを主成分とし、セリウムを酸化物(CeO2)換算で2〜20モル%の範囲で含み、かつCeAlO3を含有し、0〜50℃における体積固有抵抗値が108〜1012Ω・cmであることを特徴とする静電チャック。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21584498A JP3623107B2 (ja) | 1997-07-31 | 1998-07-30 | 静電チャック |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP9-206896 | 1997-07-31 | ||
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