JP3794387B2 - 照明光学系及びプロジェクタ - Google Patents

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Description

【背景技術】
【0001】
プロジェクタでは、照明光学系から射出された照明光を、液晶パネルなどの変調装置を用いて画像情報に応じて変調し、変調された照明光をスクリーン上に投写することにより画像表示を実現している。
【0002】
このようなプロジェクタでは、変調装置を照明する照明光の面内照度分布を均一化するために、光源から射出された光を複数の部分光束に分割して、変調装置の付近で重畳させるインテグレータ照明光学系が用いられる。
【0003】
図7は、従来のインテグレータ照明光学系を示す図である。
【0004】
図7に示した照明光学系1000において、1010は、光源1020、楕円リフレクタ1030及び非球面レンズ1040を備えた光源装置、1050は第一レンズアレイ、1060は第二レンズアレイ、1070は重畳レンズ、LAは液晶パネルなどの照明領域である。なお、各光学要素は、光源光軸1020ax(光源装置1010から出射される光束の中心軸)を基準として配置されている。すなわち、第一レンズアレイ1050、第二レンズアレイ1060、重畳レンズ1070は、その中心が光源光軸1020axとほぼ一致するように、かつ、光源光軸1020axに対してほぼ垂直となるように配置されている。
【0005】
このインテグレータ照明光学系1000において、光源1020は、光源光軸1020ax方向にある長さを有する発光部(アーク)を有しており、アークの中心が光源光軸1020ax(光源装置1010から出射される光束の中心軸)上における楕円リフレクタ1030の2つの焦点のうち、楕円リフレクタ1030により近い方の焦点(第一焦点)F1近傍に位置するように配置されている。
【0006】
そして、発光部から出射された光は、楕円リフレクタ1030の反射面1030Rによって反射し、その反射光は、第二焦点F2に向かう途中で非球面レンズ1040によって光源光軸1020axに略平行な光とされ、第一レンズアレイ1050に入射する。
【0007】
第一レンズアレイ1050は、図7に示すように、照明領域LAの形状と略相似形を成す矩形状の輪郭を有する複数のセルレンズ1051がマトリックス状に配置された構成となっており、光源装置1010からの略平行な光を、複数のセルレンズ1051によって複数の部分光束に分割する。また、第二レンズアレイ1060も第一レンズアレイ1050と同様に矩形状の輪郭を有する複数のセルレンズ1061がマトリックス状に配置された構成となっており、当該セルレンズ1061は第一レンズアレイ1050のセルレンズ1051と対応して設けられており、第一レンズアレイ1050のセルレンズ1051から出射された複数の部分光束のそれぞれが、対応するセルレンズ1061上に集光される。そして、第二レンズアレイ1060の各セルレンズ1061から出射された複数の部分光束のそれぞれが重畳レンズ1070によって液晶パネルなどの照明領域LAを重畳照明するようになっている。
【0008】
この種の照明光学系においては、光源1020から射出された光の平行度が充分でないと、第一レンズアレイ1050及び第二レンズアレイ1060においてそれぞれ対応するセルレンズ1051、1061を通過できないことから、先に本発明者は特開2000−347293号公報によって、光源装置1010から射出される光の平行度を高める技術を提供している。
【0009】
一方、この種のインテクレータ照明光学系においては、上述したように楕円リフレクタと非球面レンズとの組み合わせにより光源からの光を平行化するのではなく、光源からの光を反射した時点で平行光とすることが可能な放物面リフレクタを用いたものも存在している。しかしながら、放物面リフレクタを用いた照明光学系においては、図9に示すように、放物面リフレクタ1080の回転放物面でなる反射面1080Rは、楕円リフレクタ1030の回転楕円面でなる反射面1030Rに比べ、光源1020から放射状に出射される光線を非球面レンズ1040へと導くためののみ込み角θ(光源光軸1020ax回りの角度)が小さくなることから(図9には、反射面1030Rの場合ののみこみ角θよりも小さい角度で既に非球面レンズ1040への導光が不能になっている状態が示されている)、光の利用効率が楕円リフレクタ1030に比して低くなり、よって、近年では、楕円リフレクタを採用したインテクレータ照明光学系の開発が盛んに行われている。
【0010】
しかしながら、楕円リフレクタを用いた照明光学系においては、光の強度分布が一様ではなく、光源光軸側に偏る傾向があることから以下に説明する問題を有している。次の図は光の強度分布に偏りがある状態を示した図である。
【0011】
図10は従来の楕円リフレクタを用いた光源装置における光源の中心から放射状に射出される光線の軌跡を図示したもので、光源光軸1020ax近傍の中央部が照度が高く、光軸から離れるに従って照度が低下する照度分布となることが示されている。このため、楕円リフレクタを採用した図7の従来の照明光学系1000においては、第二レンズアレイ1060上に形成されるアーク像1062が、本来、図11(a)に示す如く各セルレンズ1061内に収まるべきところが、図11(b)に示す如く光源光軸1020ax近傍の中心部に偏り、本来収まるべきセルレンズ1061の周囲のセルにはみ出してしまう現象が生じていた。
【0012】
このように、第二レンズアレイ1060の各セルレンズ1061内に収まらずはみ出してしまった部分の光線は、照射領域を照明できずに無駄となってしまい、光量損失となっていた。なお、このようにはみ出してしまった部分の光線とは、第一レンズアレイ1050及び第二レンズアレイ1060においてそれぞれ対応するセルレンズ1051、1061を通過できなかった光線に相当し、上記従来の照明光学系においては、非球面レンズ1040から出射される光線の平行度を高めることによって第一レンズアレイ1050及び第二レンズアレイ1060においてそれぞれ対応するセルレンズ1051、1061を通過できるとしながらも、実際には光源光軸1020ax近傍の中心部分の光線の一部については依然通過できないままとなっており、その改善が望まれていた。
【発明の開示】
【0013】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、非球面レンズから射出された光線のうち、光源光軸を中心とする中心部分側の光線を光源光軸に平行よりも若干外向きの光線となるようにして第一、第二レンズアレイにおいてそれぞれ対応するセルレンズを通過できるようにして光源からの光を有効に利用することが可能な照明光学系およびプロジェクタを提供することを目的とする。
【0014】
本発明の一つの態様に係る照明光学系は、光源と、該光源からの光を反射する楕円リフレクタと、該楕円リフレクタからの反射光を複数の部分光束に分割するための複数のセルレンズを含む第一及び第二レンズアレイとが光源光軸に沿ってそれぞれ配置された照明光学系において、前記楕円リフレクタは、前記光源からの光を第二焦点に向けて集光させる機能を有しており、前記楕円リフレクタと前記第一レンズアレイとの間には非球面レンズが配置され、前記非球面レンズは、前記楕円リフレクタで反射され、前記第二焦点に向けて集光される前記反射光のうち、前記光源光軸を中心とする中心部側の光線の光路を、前記第一レンズアレイ及び前記第二レンズアレイにおいてそれぞれ 対応する前記セルレンズを通過するように、前記光源光軸に平行な光路よりも若干外方に向かう光路に変更し、その他の光線を前記光源光軸に略平行な光路に変更するようにしたものである。
【0015】
また、本発明の他の態様に係る照明光学系は、前記非球面レンズの非球面の形状を特定するための円錐定数を、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得るときの非球面レンズの非球面形状を特定するための円錐定数よりも大きい値に設定したものである。
【0016】
本発明の他の態様に係る照明光学系は、前記非球面レンズの非球面の近軸曲率半径を、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得るときの非球面レンズの近軸曲率半径よりも小さい値に設定したものである。
【0017】
本発明の他の態様に係る照明光学系は、前記非球面レンズを、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得るときの非球面レンズの設置位置よりも楕円リフレクタ側に設置したものである。
【0018】
本発明の他の態様に係る照明光学系は、楕円リフレクタと非球面レンズとの組み合わせが、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得る条件を満たしたときの組み合わせにおける楕円リフレクタよりも、第1焦点と第2焦点との間の距離が長い楕円リフレクタを用いたものである。
【0019】
これらの発明によれば、第一レンズアレイ及び第二レンズアレイにおいて、それぞれ対応するセルレンズを通過できるようになり、従って第二レンズアレイ上に形成される光源のアーク像が、本来収まるべきセルレンズ内に収まるようになる。よって、光量損失を低減して、照明領域を効率良く照明することが可能となる。(尚、第二レンズアレイ上に形成されるとしたが、第二レンズアレイ上、乃至第二レンズアレイ附近に形成されれば良い。以降同様。)
本発明の他の態様に係る照明光学系は、楕円リフレクタで反射された反射光のうち、光源光軸を中心とする中心部側の光線が、第一レンズアレイ及び第二レンズアレイのそれぞれにおいて光源光軸の周囲の4つのセルレンズを通過する光路を有する光線であるものである。
【0020】
本発明によれば、第二レンズアレイ上に形成される複数のアーク像のうち、特に従来の光学系においてセルレンズからのアーク像のはみ出しによる光量損失が多かった光源光軸周囲の4つセルレンズのアーク像をセルレンズ内に収めることができ、よって、光量損失を低減して、照明領域を効率良く照明することが可能となる。
【0021】
本発明の一つの態様に係るプロジェクタは、上記の何れかに記載のプロジェクタの光学系を備えたものである。
【0022】
本発明によれば、上記の何れかに記載の照明光学系を組み込むことにより、照明領域を効率良く照明でき、投写される画像の明るさを向上させることが可能なプロジェクを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1を示す図、図2は本発明の実施の形態1の照明光学系を示す図である。
【0024】
図2に示す照明光学系1は、光源装置10と、第一レンズアレイ50と、第二レンズアレイ60と、重畳レンズ70とを備えている。光源装置10は、メタルハイドランプや高圧水銀灯などの高圧放電灯で構成される光源20と、楕円リフレクタ30と、本実施の形態1の特徴部分である非球面レンズ40とを備えている。各光学要素は、光源光軸20ax(光源装置10から出射される光束の中心軸)を基準として配置されている。すなわち、第一レンズアレイ50、第二レンズアレイ60、重畳レンズ70は、その中心が光源光軸20axとほぼ一致するように、かつ、光源光軸20axに対してほぼ垂直となるように配置されている。
【0025】
光源装置10は、光源20と、楕円リフレクタ30と、本実施の形態1の特徴部分である非球面レンズ40とを備えている。光源20は、光源光軸20ax方向にある長さを有する発光部(アーク)を有しており、アークの中心が光源光軸20ax(光源装置10から出射される光束の中心軸)上における楕円リフレクタ30の2つの焦点のうち、楕円リフレクタ30により近い方の焦点(第一焦点)F1近傍に位置するように配置されている。
【0026】
楕円リフレクタ30は、光源光軸20axに軸対称な回転楕円体の凹面からなる反射面30Rを有しており、光源20からの光を第二焦点F2に向けて集光させる機能を有している。
【0027】
非球面レンズ40は、楕円リフレクタ30によって反射された反射光が第一レンズアレイ50及び第二レンズアレイ60のそれぞれの対応する後述のセルレンズ51、61を通過するように前記楕円リフレクタ30からの反射光の光路変更を行うレンズである。具体的には、楕円リフレクタ30からの反射光のうち、光源光軸20axを中心とする中心部側を通過する光線を光源光軸20axに平行な光路よりも若干外方へ向かう光路に変更し、その他の光線を光源光軸20axに略平行な光路に変更する。非球面レンズ40は、入射面が凹状の回転双曲面からなる非球面40A、出射面が平面で構成されている。本実施の形態1においては、非球面40Aの形状に特徴を有するものであり、その詳細については後述する。
【0028】
第一レンズアレイ50の構成は、先に示した図8と同様に、矩形状の輪郭を有する複数のセルレンズ51(図2参照)がマトリックス状に配置された構成となっている。各セルレンズ51をz方向からみた外形形状は、通常照明領域LAの形状と略相似形を成すように設定される。このように構成された第一レンズアレイ50は、光源装置10から出射された出射光を複数のセルレンズ51によって複数の部分光束に分割し、複数の部分光束のそれぞれを第二レンズアレイ60の対応するセルレンズ61上に集光する機能を有している。尚、必ずしも第二レンズアレイ60の対応するセルレンズ61上に集光する必要はなく、セルレンズ61上、乃至セルレンズ61附近に集光すれば良い。以降の説明においても同様である。
【0029】
第二レンズアレイ60は、第一レンズアレイ50と同様に矩形状の輪郭を有する複数のセルレンズ61がマトリックス状に配置された構成となっている。当該セルレンズ61は第一レンズアレイ50のセルレンズ51と対応して設けられている。第一レンズアレイ50のセルレンズ51の像は対応するセルレンズ61を通過することによって照明領域LA上に結像される。
【0030】
尚、第二レンズアレイの各セルレンズ61は第一レンズアレイの各セルレンズ51と対応していれば良く、必ずしもセルレンズ51と同様の形状である必要は無い。
【0031】
重畳レンズ70は、第一レンズアレイ50のセルレンズ51のそれぞれから出射された複数の部分光束を照明領域LA上に重畳する機能を有している。
【0032】
ところで、図7に示した従来の光源装置1010においては、上述したように第一レンズアレイ1050及び第二レンズアレイ1060のそれぞれの対応するセルレンズ1051、1061を通過させるために、非球面レンズ1040によって楕円リフレクタ1030の反射光を平行化することでこれを実現するようにしている。しかしながら、実際には光源光軸1020axを中心とする中心部側の光線については実現されていないことも上述の通りである。
【0033】
そこで、本実施の形態1を含む後述の各実施の形態では、楕円リフレクタ30にて反射された光のうち、光源光軸20axを含む中心部側を通過する光線については、光源光軸20axに平行とせずに、平行よりも若干外方(光源光軸20axから離れる方向)に向けることで、第一レンズアレイ50及び第二レンズアレイ60のそれぞれの対応するセルレンズ51、61を通過させる、すなわちアーク像がセルレンズ61からはみ出すことの無いようにするものである。
【0034】
また、楕円リフレクタ30と非球面レンズ40とには、非球面レンズ40からの出射光を理想的な平行光とし得る最適な組み合わせ(楕円リフレクタ30の形状、非球面レンズの屈折率、非球面レンズ40の設置位置等によって多種多様)が存在する。本明細書では、その組み合わせの状態を基準として、その状態に本実施の形態1を含む後述の各実施の形態において説明する各種の変更をそれぞれ加えることにより、光源光軸20axを含む中心部側を通過する光線を外方に向ける構成を得るようにしている。
【0035】
なお、理想的な平行光を得ることが可能とされる最適な組み合わせを得る方法として、本願発明者は、先に提案した特開2000−347293号公報において、非球面の形状が以下の条件を満足することで、理想的な平行光が得られるとしている。
【0036】
【数1】
Figure 0003794387
【0037】
ここで、r、Zは非球面40Aと光源光軸20axとの交点を原点とし、光軸20axに軸対象なrθZ円柱座標系における座標値である。なお、rは前記原点からの光軸直交方向の距離、Zは原点からの光軸方向の距離である。また、cは近軸曲率半径である。
【0038】
Kは、円錐定数と呼ばれる値である。この円錐定数Kの値によって、回転二次曲面形状は特定の形状に限定される。即ち、円錐定数Kの値が−1<K<0である場合には非球面は回転楕円面となる。また、円錐定数Kの値がK=1である場合には、非球面は回転放物面となる。さらに、円錐定数Kの値がK<−1である場合には、非球面は回転双曲面となる。
【0039】
また、近軸曲率半径cは、楕円リフレクタ30の反射面30Rの形状と、非球面レンズ40の屈折率nと、非球面レンズ40の中心部の厚みと、非球面レンズ40の設置位置とを考慮して求められるものである。具体的には、予め楕円リフレクタ30の反射面30Rの形状と、非球面レンズ40の屈折率mと、非球面レンズ40の中心部の厚みと、非球面レンズ40の設置位置とを決めておく。そして、予め決定された反射面30Rの形状と同じ形状を有する楕円リフレクタに対し、予め決定された位置に、屈折率、中心部の厚みが同じ球面の凹レンズを用いた場合に、近軸領域(回転軸付近の領域)で平行光に変換できるような曲率を求め、これが近軸曲率半径cとなる。よって、理想的な平行光を得ることが可能な非球面の形状が決定されるとき、楕円リフレクタ30と非球面レンズ40との組み合わせ、つまり、楕円リフレクタ30の反射面30Rの形状や、非球面レンズ40の設置位置、近軸曲率半径cは決定されていることになる。
【0040】
また、本実施の形態1のように入射面側が非球面で構成される場合には、非球面レンズ40の屈折率をnとしたとき、円錐定数KをK=−nとし、当該円錐定数Kの元で、上記(1)式を満足する非球面を用いることにより、平行光を得ることができるとしている。
【0041】
円錐定数Kは、その値を大きくすることによって非球面のうちの特に中心部分(光源光軸20axを中心とする中心部分)の光学的パワーを増加させることができる。つまり、円錐定数Kの値を大きくすることにより光源光軸20axに平行となっていた光線の光路を徐々に外方に向かう光路に変更することが可能となる。従って、円錐定数Kの値を徐々に大きくしていくことにより、第二レンズアレイ60上において光源光軸20ax側に偏っていたアーク像(図11に示されているように、光源光軸周囲の4つのセルレンズ内のアーク像)が、除々に放射状方向へ分離させることが可能となる。そこで、本実施の形態1では、理想的な平行光を出射し得るときの円錐定数Kの値を初期値とし、当該円錐定数Kを徐々に大きくしながら繰り返しシミュレーションを行い、光源光軸20ax側に偏っていたアーク像が、本来収まるべきセルレンズ61内に収まったときの円錐定数Kを、本実施の形態1の非球面40Aを決定するための最適な円錐定数Kpと決定する。
【0042】
本実施の形態1の非球面40Aの形状は、このようにして決定した円錐定数Kpの基で上記(1)式を満足する非球面に設定される。なお、その他の構成(楕円リフレクタ30の反射面30Rの形状や、非球面レンズ40の設置位置など)は、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得るときの構成と同じである。そして、このように設定された非球面40Aを用いることにより、図1に示すように楕円リフレクタ30から反射された光線のうち、光源光軸20axの中心部分側を通過し、略平行となって出射されていた光線80、81を、光線80a、81aのように、平行よりも若干外方へ向かわせることが可能となる。従って、セルレンズ61内にアーク像を収めることが可能となり、よって光量損失を低減でき、光源からの光を有効利用できて照明領域LAを効率良く照明することが可能となる。
【0043】
なお、本実施の形態1の方法においては、光源光軸20axを中心とする中心部側のうち、光源光軸20ax付近だけでなく、その周辺部の光線についても同様にして外方に向かう光路に変更されるが、前述の図11に示されているように外周部のアーク像は中心部のものと比べて小さいことから、現在収まっているセルレンズ61からはみ出すことはあまりなく、特に問題ない。仮に、はみ出すような場合には、第二レンズアレイ60の該当のセルレンズ形状をアーク像が収まるように変えることにより対応可能である。すなわち、第一レンズアレイ50の各セルレンズは、照明領域と相似形である必要があるが、第二レンズアレイ60についてはそのような条件はないため、自由に変更可能である。よって、本実施の形態1によれば、アーク像を第二レンズアレイ60のセルレンズ61に確実に収めることが可能となる。
【0044】
[実施の形態2]
図3は、本発明の実施の形態2の照明光学系の説明図で、図3には実施の形態2の照明光学系における光源装置110が示されており、第一レンズアレイ50、第二レンズアレイ60については図示を省略している。なお、図3において、図2と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0045】
本実施の形態2は、理想的な平行光を出射し得る組み合わせにある楕円リフレクタ30と非球面レンズ141のうち、非球面レンズ141を、その非球面141Aの近軸曲率半径よりも小さい値に設定された非球面140Aを有する非球面レンズ140に代えたものである。その他は実施形態1と同じである。
【0046】
近軸曲率半径cを小さくすることにより、非球面レンズ141全体の光学的パワーを増加させることができるため、すなわち非球面レンズ141の中心部分の光学的パワーも増加させることができるため、楕円リフレクタ30から反射された光線のうち、光源光軸20axの中心部分側を通過し、略平行となって出射されていた光線180、181を、光線180a、181aのように、平行よりも若干外方へ向かわせることが可能となる。従って、近軸曲率半径cを小さくしていくと、第二レンズアレイ60上において光源光軸20ax側に偏っていたアーク像(図11に示されているように、光源光軸周囲の4つのセルレンズ内のアーク像)を、除々に放射状方向へ分離させることが可能となる。
【0047】
よって、本実施の形態2では、理想的な平行光を出射し得るときの非球面141Aの近軸曲率半径cを初期値とし、当該近軸曲率半径cを徐々に小さくしながら繰り返しシミュレーションを行い、光源光軸20ax側に偏っていたアーク像が、本来収まるべきセルレンズ61内に収まったときの近軸曲率半径cを非球面140Aを決定するための最適な近軸曲率半径cpと決定する。
【0048】
以上のようにして決定された近軸曲率半径cpを有する非球面140Aを用いることにより、第一レンズアレイ50及び第二レンズアレイ60において、それぞれ対応するセルレンズ51,61を通過できるようになり、つまり第二レンズアレイ60上に形成されるアーク像が、本来収まるべきセルレンズ61内に収まるようになる。よって、光量損失を低減して、照明領域を効率良く照明することが可能となる。
【0049】
なお、この実施の形態2の方法においても、上記実施の形態1と同様に非球面全体の光学的パワーが増加するため(なお、実施の形態1の方法は、非球面のうちの特に中心部分の光学的パワーの増加が可能)、光源光軸20axを中心とする中心部側のうち、光源光軸20ax付近だけでなく、その周辺部の光線についても外方に向かう光路に変更されるが、特に影響が無いことは上述の通りである。よって、本実施の形態2によれば、第二レンズアレイ60上に形成される全てのアーク像をそれぞれ対応するセルレンズ61内に確実に収めることが可能となる。
【0050】
[実施の形態3]
図4は、本発明の実施の形態3の照明光学系の説明図で、図4には実施の形態3の照明光学系における光源装置210が示されおり、第一レンズアレイ50、第二レンズアレイ60については図示を省略している。なお、図4において、図2と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0051】
本実施の形態3は、理想的な平行光を出射し得る組み合わせにある楕円リフレクタ30と非球面レンズ141において、非球面レンズ141の設置位置を楕円リフレクタ30側に移動させたものである。なお、図4において設置位置変更後の非球面レンズ141を非球面レンズ240として示している。なお、このような集光光学系(図4の光学系は第二焦点に向かって集光する光学系である)では、光学的パワーは光源光軸20axを中心として半径方向に離れるに従って強くなることから、楕円リフレクタ30側に近づけることにより、移動前に比べ非球面240Aの周辺側に光線が入射されるようになるため、移動後の非球面240Rに入射される光線は、移動前の非球面141Aに比べてより強い光学的パワーを受けることになる。つまり、上記実施の形態2と同様の作用を受けることになる。よって、図4に示されるように、上記実施の形態2と同様に楕円リフレクタ30から反射された光線のうち、光源光軸20axの中心部分側を通過し、略平行となって出射されていた光線280、281を、光線280a、281aのように、平行よりも若干外方に向かわせることが可能となる。その他は実施形態1と同様である。
【0052】
従って、理想的な平行光を出射し得るときの設置位置から楕円リフレクタ30側に除々に移動させることにより、第二レンズアレイ60上において光源光軸20ax側に偏っていたアーク像(図11に示すアーク像のうち、特に光源光軸周囲の4セル内のアーク像)を、除々に放射状方向へ分離させることが可能となる。なお、どの程度楕円リフレクタ30側に移動させるかは上記と同様にシミュレーションにより決定されるものであり、第二レンズアレイ60上において光源光軸20axの中心に偏っていたアーク像が、本来収まるべきセルレンズ上に収まった時点での位置を、最適な設置位置と決定する。
【0053】
以上のようにして決定された位置に配置された非球面レンズ240を用いることにより、第一レンズアレイ50及び第二レンズアレイ60において、それぞれ対応するセルレンズ51,61を通過できるようになり、つまり第二レンズアレイ60上に形成されるアーク像が、本来収まるべきセルレンズ61内に収まるようになる。よって、光量損失を低減して、照明領域を効率良く照明することが可能となる。
【0054】
なお、本実施の形態3の方法においても、上記実施の形態2と同様に光源光軸20axを中心とする中心部側のうち、光源光軸20ax付近だけでなく、その周辺部の光線についても同様に、より強い光学的パワーを受けることになり、外方に向かう光路に変更されるが、特に影響が無いことは上述の通りである。よって、本実施の形態3によれば、第二レンズアレイ60上に形成される全てのアーク像をそれぞれ対応するセルレンズ61内に確実に収めることが可能となる。
【0055】
[実施の形態4]
図5は、本発明の実施の形態4の照明光学系の説明図で、図5には実施の形態4の照明光学系における光源装置310が示されており、第一レンズアレイ50、第二レンズアレイ60については図示を省略している。なお、図5において、図2と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0056】
本実施の形態4は、理想的な平行光を出射し得る組み合わせにある楕円リフレクタ30と非球面レンズ141のうち、楕円リフレクタ30を、楕円リフレクタ30の第1焦点と第2焦点との間の距離よりも長い焦点間距離を有する楕円リフレクタ330に代えたものである。その他は実施形態1と同様である。
【0057】
第1焦点と第2焦点間が長い楕円リフレクタ330を用いることにより、変更後の楕円リフレクタ330にて反射された光線は、変更前の(つまり、平行光が得られる条件を満たした)楕円リフレクタ30にて反射された光線よりも外側で非球面レンズ141に入射されることになり、より強い光学的パワーを受けることになるという上記実施の形態2,3と同様の作用を受けることになる。よって、図5に示されるように、上記実施の形態2,3と同様に楕円リフレクタ30で反射された光線のうち、光源光軸20axの中心部分側を通過し、略平行となって出射されていた光線380、381を、光線380a、381aのように、平行よりも若干外方に向かわせることが可能となる。
【0058】
従って、楕円リフレクタ30を第一焦点と第二焦点間が長いものに変更していくと、第二レンズアレイ60上において光源光軸20ax側に偏っていたアーク像(図11に示すアーク像のうち、特に光源光軸周囲の4セル内のアーク像)を、除々に放射状方向へ分離させることが可能となる。なお、どの程度、第一焦点と第二焦点間を長くした楕円リフレクタにするかは、上記と同様にシミュレーションにより決定されるものである。すなわち、楕円リフレクタ30を第一焦点と第二焦点間の距離が長いものに徐々に変更しながら繰り返しシミュレーションを行い、第二レンズアレイ60上において光源光軸20axの中心に偏ってアーク像が、本来収まるべきセルレンズ61上に収まった時点での楕円リフレクタ330を、最適な楕円リフレクタと決定する。
【0059】
以上のようにして決定された楕円リフレクタ330を用いることにより、第一レンズアレイ50及び第二レンズアレイ60において、それぞれ対応するセルレンズ51,61を通過できるようになり、つまり第二レンズアレイ60上に形成されるアーク像が、本来収まるべきセルレンズ61内に収まるようになる。よって、光量損失を低減して、照明領域を効率良く照明することが可能となる。
【0060】
なお、本実施の形態4の方法においても、上記実施の形態2,3と同様に光源光軸20axを中心とする中心部側のうち、光源光軸20ax付近だけでなく、その周辺部の光線についても同様に、より強い光学的パワーを受けることになり、外方に向かう光路に変更されるが、特に影響が無いことは上述の通りである。よって、本実施の形態4によれば、第二レンズアレイ60上に形成される全てのアーク像をそれぞれ対応するセルレンズ61内に確実に収めることが可能となる。
【0061】
以上のように構成された照明光学系が組み込まれたプロジェクタ400の構成を図6に示す。なお、図1(図2)、図3〜図5に示した照明光学系のうち、特に図2に示した照明光学系1を組み込んだ場合を示している。
【0062】
図6に示すプロジェクタ400は、照明光学系1と、色光分離光学系410と、リレー光学系420と、3枚の液晶パネル430a、430b、430c(特に区別しない場合は430と符号を付す)と、クロスダイクロイックプリズム440と、投写レンズ450とを備えている。
【0063】
このような構成のプロジェクタ400では、照明光学系1において、光源装置10から出射された出射光が、第一レンズアレイ50の複数のセルレンズ51によって複数の部分光束に分割され、その部分光束のそれぞれが、対応する第二レンズアレイ60の複数のセルレンズ61をそれぞれ良好に通過し、重畳レンズ70によって液晶パネル430上で重畳される。
【0064】
色光分離光学系410は、青緑反射ダイクロイックミラー411と緑反射ダイクロイックミラー412と、反射鏡413とを備えている。青緑反射ダイクロイックミラー411は、照明光学系1からの照明光の赤色光成分を透過させるとともに、青色光成分と緑色成分とを反射する。透過した赤色光束Rは、反射鏡413で反射されて、液晶パネル430aに達する。一方、青緑反射ダイクロイックミラー411で反射された青色光束Bと緑色光束Gのうち、緑色光束Gは緑反射ダイクロイックミラー412によって反射され、液晶パネル430bに達する。
【0065】
一方、青色光束Bは、緑反射ダイクロイックミラー412も透過してリレー光学系420へと入射する。
【0066】
リレー光学系420は、第一リレーレンズ421、反射鏡422、第二リレーレンズ423、反射鏡424及びコンデンサーレンズ425を備え、これら各光学要素を通過させることによって青色光束Bをその強度を維持したまま液晶パネル430cまで導くようにしている。
【0067】
3枚の液晶パネル430は、入射した光を、与えられた画像情報(画像信号)に従ってそれぞれの色光を変調し、それぞれの色成分の画像を形成する光変調手段としての機能を有するもので、いわゆる電気光学装置に相当するものである。
【0068】
なお、これら3つの液晶パネル430の入射側と出射側には図示しない偏光板が設けられており、所定の偏光光のみが液晶パネル430の入射側の偏光板を透過し、変調される。
【0069】
変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム440に入射して合成され、合成された光は投写レンズ450によってスクリーンSC上に投写される。
【0070】
このように構成されたプロジェクタ400においては、本発明による照明光学系1が用いられているため、照明領域LAが効率良く照明され、よって、スクリーンSC上に投写される画像の明るさを向上させることが可能となる。なお、光源装置10の代わりに光源装置110、210、310を用いた場合も同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、上記各実施の形態においては、非球面レンズ40を、入射面側を凹状の非球面(回転双曲面)、出射面側を平面として場合を例に説明してきたが、これに限られたものではなく、例えばメニスカスレンズ(レンズの第1面と第2面の曲率が同符号(正負が同じ)であるレンズ)で、入射面側を平面、出射面側を凹状の非球面(回転楕円面)としたもの、入射面側に球面を、出射面側に非球面(回転楕円面)を設けたもの、であっても同様に上記各実施の形態を適用可能である。
【0072】
なお、本実施の形態では、透過型のプロジェクタ400に本発明の照明光学系を適用した場合を例に説明しているが、本発明は反射型のプロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、液晶パネル等の電気光学装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは液晶パネルなどの電気光学装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型の電気光学装置を採用したプロジェクタでは、ダイクロイックプリズムが光を赤、緑、青の3つの光に分離する色光分離手段として利用されるとともに、変調された3つの光を合成して同一の方向に出射する色光合成手段としても利用されることがある。反射型のプロジェクタに本発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクタと略同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態においては、カラー画像を表示するプロジェクタを例に説明したが、モノクロ画像を表示するプロジェクタに本発明の光源装置を適用することも可能である。この場合にも、上記プロジェクタと同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、本実施の形態においては、光変調用電気光学装置として液晶パネルを用いた例を示しているが、これに限られたものではなく、例えばマイクロミラーを用いた装置であっても良い。
【0075】
また、本実施の形態においては、投写像を観察する方向から投写を行う前面投写型プロジェクタを例に説明したが、投写像を観察する方向とは反対側から投写を行う背面投写型プロジェクタに本発明の光源装置を適用することも可能である。
【0076】
また、本実施の形態では、3つの液晶パネルを用いたいわゆる3板方式のプロジェクタにおいて本発明の照明光学系を適用した場合を例に示したが、液晶パネルを2枚又は4枚用いた2板方式又は4板方式のプロジェクタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1は本発明の実施形態1の照明光学系の説明図である。
図2は本発明の実施形態1の照明光学系を示す図である。
図3は本発明の実施形態2の照明光学系の説明図である。
図4は本発明の実施形態3の照明光学系の説明図である。
図5は本発明の実施形態4の照明光学系の説明図である。
図6は図2の照明光学系を用いたプロジェクタの光学系を示す図である。
図7は従来の照明光学系を示す図である。
図8はレンズアレイの説明図である。
図9は光源から放射状に出射される光を非球面レンズへと導光可能とする光源光軸回りの角度(のみ込み角)が、リフレクタの反射面が回転楕円面の場合と回転放物面の場合とで違いがあることを説明するための図である。
図10は従来の楕円リフレクタを用いた光源装置における光源の中心から放射状に射出される光線の軌跡示す図である。
図11は第二レンズアレイ上に形成されるアーク像を示す図である。

Claims (7)

  1. 光源と、該光源からの光を反射する楕円リフレクタと、該楕円リフレクタからの反射光を複数の部分光束に分割するための複数のセルレンズを含む第一及び第二レンズアレイとが光源光軸に沿ってそれぞれ配置された照明光学系において、
    前記楕円リフレクタは、前記光源からの光を第二焦点に向けて集光させる機能を有しており、
    前記楕円リフレクタと前記第一レンズアレイとの間には非球面レンズが配置され、
    前記非球面レンズは、前記楕円リフレクタで反射され、前記第二焦点に向けて集光され前記反射光のうち、前記光源光軸を中心とする中心部側の光線の光路を、前記第一レンズアレイ及び前記第二レンズアレイにおいてそれぞれ対応する前記セルレンズを通過するように、前記光源光軸に平行な光路よりも若干外方に向かう光路に変更し、その他の光線を前記光源光軸に略平行な光路に変更することを特徴とする照明光学系。
  2. 前記非球面レンズの前記非球面の形状を特定するための円錐定数は、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得るときの非球面レンズの非球面形状を特定するための円錐定数よりも大きい値に設定されていることを特徴とする請求項1記載の照明光学系。
  3. 前記非球面レンズの前記非球面の近軸曲率半径は、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得るときの非球面レンズの近軸曲率半径よりも小さい値に設定されていることを特徴とする請求項1記載の照明光学系。
  4. 前記非球面レンズは、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得るときの非球面レンズの設置位置よりも前記楕円リフレクタ側に設置されていることを特徴とする請求項1記載の照明光学系。
  5. 楕円リフレクタと非球面レンズとの組み合わせには、非球面レンズからの出射光を理想的な平行光とし得る条件が存在し、前記楕円リフレクタは、当該条件を満足するときの楕円リフレクタよりも、第1焦点と第2焦点との間の距離が長い楕円リフレクタであることを特徴とする請求項1記載の照明光学系。
  6. 前記楕円リフレクタで反射された反射光のうち、前記光源光軸を中心とする中心部側の光線は、前記第一レンズアレイ及び前記第二レンズアレイのそれぞれにおいて、前記光源光軸の周囲の4つのセルレンズを通過する光路を有する光線であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の照明光学系。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の照明光学系を備えてなることを特徴とするプロジェクタ。
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