JP3794133B2 - 塗工前の原紙の風合いを維持した塗工印刷用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原紙に塗工層を設けても、パルプ繊維の素材感や表面の微細な凹凸に起因する原紙の持つ紙本来の風合い、あるいは塗工前の原紙の風合いを維持し、しかもインキ受理性、インキ発色性、インキセット性、インキ乾燥性等のオフセット印刷適性を向上させることができる塗工印刷用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アート紙、コート紙等の塗工印刷用紙は、非常に美麗な印刷ができることから、カレンダー、パンフレット等の商業美術印刷物、ビジュアル雑誌、写真集等の出版印刷物、医薬品、化粧品の紙器、ショッピングバッグ等の包装材料印刷物等に幅広く使われてきた。
【0003】
かような従来の塗工印刷用紙は、印刷品質を向上させる目的で、木材パルプを主原料とする原紙上に、炭酸カルシウム、カオリン等の無機顔料を接着剤と共に塗工した後、スーパーカレンダー等の処理が施され製造される。木材パルプを主原料とする原紙表面を、微細な顔料を主成分とする塗工層が完全に被覆しさらに平滑化処理が施されているために、印刷を行った場合、塗工前の原紙と比較するときわだって優れた網点再現性、インキ発色性を発現し、高いインキ濃度を示す。しかしながら、木材パルプを主原料とする原紙が持つ素材感や風合いは、塗工層に隠されて全く失われてしまう。パルプ繊維の素材感や風合いと、塗工紙の風合いとの違いについては、例えば、光沢度、平滑性、摩擦係数などで数値化して表現する方法がいくつか提案されている。しかし、目視で一目瞭然に違いが判別できるものである。本発明では以下、目視で判別できるようなレベルを、塗工前の原紙の風合いと塗工後の原紙の風合いとして区別する。
【0004】
一方、従来からある非塗工紙は、木材パルプが主体となって紙全体が構成されているためにパルプ繊維の素材感や風合いを持っているものの、構造が粗で吸液性が大きいために、印刷を行った場合インキが紙層内部にまで浸透しインキ濃度が極めて低くなり、インキ発色性に劣る欠点があった。従って、非塗工紙は塗工印刷用紙に比較し、蒿高い、剛度がある、凹凸感がある、パルプ繊維の素材感や風合いがある、着色した場合の紙の色が優れる等の利点がありながらも、印刷適性の点で劣るため、その使用範囲は限定されたものとなっていた。
以上からわかるように、パルプ繊維の素材感や風合い、塗工前の紙の風合いと、印刷適性とを両立させることは非常に困難であるのが実状である。
【0005】
しかし近年、パルプ繊維の素材感や風合い、塗工前の紙の手触りや風合い、蒿高さといった特性と、塗工印刷用紙の印刷適性、とりわけ印刷インキ発色性やインキセット性といった特性の両方を兼ね備えた印刷用紙の出現が熱望されるようになり、これらに関する提案もいくつかなされている。たとえば、特開平8−144193号には、カオリンと接着力を有する有機合成顔料の混合物を主成分とする顔料100重量部に対し、接着剤としてスチレン−ブタジエン共重合ラテックス5〜30重量部と、リン酸エステル化デンプン及び/又はアセチル化デンプン20〜50重量部を含有する塗工層が設けられた高級印刷用紙が提案されており、また、特開平9−31892号には、塗工層に平均粒子径が1.5μm以上のカオリン、デラミネーテッドカオリン、タルクから選ばれる少なくとも1種の顔料を全顔料に対して40重量%以上含有させた艶消し塗工紙が提案されている。しかしながらこれらの提案はいずれも従来の塗工印刷用紙に凹凸感を付与することで、塗工紙の印刷適性を低下させずにパルプ繊維の素材感や風合い、非塗工紙の風合いに近似した風合いを発現させようとしたものであり、白色度、不透明性の高い無機填料で原紙表面が覆われているために、外観は塗工紙風であり、塗工前の紙特有のパルプ繊維の素材感や風合いは持ち合わせていない。
【0006】
さらに特開平8−120592号には、炭酸カルシウム、中性ロジンサイズ剤を内添、表面サイズ剤として分子量35万以上のポリアクリルアミド系樹脂水溶液とスチレン・アクリル酸共重合物を配合したサイズプレス液を用いる非塗工印刷用紙が提案されている。これは、塗工前の紙のパルプ繊維感を持ち、インキセット性、インキ乾燥性、耐刷性、インキ光沢等の印刷適性は向上するものの、インキ発色性を改善するまでには至っていない。
【0007】
また、エンボスなどの賦型が施された木材パルプを主体としたエンボス紙や、アクリルエマルジョンなどを塗工してエンボスや着色を施した樹脂塗工紙は、これらの表面を従来の顔料塗工層で被覆すると、エンボス感が無くなってしまうだけでなく、顔料塗工層が不透明であるため本来の原紙の色も消えてしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消し、原紙に塗工を施しても、パルプ繊維の素材感や風合い、塗工前の原紙の有する風合いを失うことなく、印刷適性とりわけ印刷インキ発色性やインキセット性を向上させることができる新規な塗工印刷用紙を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パルプ繊維の素材感や風合い、塗工前の原紙の風合いを維持し、しかも印刷後のインキ発色性やインキセット性が従来の塗工印刷用紙に近い印刷用紙を得るために、原紙上に形成する塗工層の組成について鋭意研究した結果、顔料としてプラスチックピグメントを使用し、これに特定の接着剤を組み合わせて特定の配合割合とした塗工液を原紙に塗工することにより、原紙のもつパルプ繊維の素材感や風合い、塗工前の原紙のもつ風合いを失うことなしに印刷後に高いインキ発色性やインキセット性が得られることを見いだし本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、原紙の少なくとも片面に(a)粒径2μm以下のプラスチックピグメントおよび(b)粒子径0.1μm以下のコロイダルシリカにより複合化された粒径30〜70μmのアクリル系重合体粒子の水性分散液からなる接着剤の2成分を主成分とする塗工層を設け、プラスチックピグメント/接着剤の割合が5/95重量部〜80/20重量部であることを特徴とする塗工前の原紙の風合いを維持した塗工印刷用紙である。この印刷用紙は、塗工前の原紙のもつパルプ繊維の素材感や風合い、あるいは塗工前の原紙のもつエンボス感や着色を損なうことなく保持し、しかも印刷後のインキ発色性が高く、インキセット性等のオフセット印刷適性に優れたものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するプラスチックピグメントは、高分子化合物からなる有機微粒子であって、ポリスチレン系プラスチックピグメント、スチレン−ブタジエン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、スチレン−アクリル系プラスチックピグメント等が挙げられ、これらを単独または2種類以上混合使用できる。この種のプラスチックピグメントは一般に市販品として入手できるものである。
【0012】
本発明でプラスチックピグメントを使用する目的は、塗工前の原紙の持つ風合いを失うことなしに印刷適性を向上させるためである。カオリン、炭酸カルシウム等の無機顔料を塗工した場合、インキ受理性、着肉性が向上し高いインキ発色性が得られ、インキセット性、乾燥性も向上するが、無機顔料の持つ白さ、不透明性のために塗工層は白くなり、外観は塗工前の原紙と著しく異なったものとなる。一方、プラスチックピグメントは透明性が高く、インキ受理性、着肉性に優れ、さらにインキ光沢、インキセット性、乾燥性も向上させる。本発明で使用するプラスチックピグメントは、原紙のもつ本来の色を維持するためには透明性の高いものを使用することが好ましい。またその形状や性質は、球状、扁平状、中空状、微粒子集合体、バインダーピグメント等各種の形状や性質のものが使用できるが、球状、中空状のものが原紙のもつ本来の色を維持するために効果的であり好ましい。粒径は2μm以下のものが使用でき、0.05〜0.5μmのものが好ましい。
【0013】
本発明では接着剤として、粒子径0.1μm以下の超微細なコロイダルシリカにより複合化された粒径30μm〜70μmのアクリル系重合体エマルジョン粒子の水性分散液からなる接着剤を使用する。本発明においては、かような接着剤を使用することによって、塗工前の原紙の有する風合いを失うことなしに、印刷適性を向上させることができるのである。
【0014】
このアクリル系エマルジョン粒子の水性分散液を製造する方法としては、たとえば特公平8−19311号に記載された方法がある。すなわち、重合度1500以下のポリビニルアルコールからなる乳化剤の存在下で、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを乳化重合して得られた粒子径数μm以下のアクリル重合体粒子のエマルジョンに、粒子径0.1μm以下のコロイダルシリカ粒子の水性分散液を添加して均一に攪拌混合し、アクリル系重合体粒子とコロイダルシリカ粒子を複合させることにより、粒径30〜70μmのアクリル系重合体複合粒子を含有する水性分散液が得られる。
【0015】
この接着剤はプラスチックピグメントを原紙に固着させる役割を果たすものであるが、この種の接着剤をプラスチックピグメントと併用することによって初めて、インキ受理性が高く、インキセット性のある透明感のある塗膜を形成させることができるのである。プラスチックピグメントを、アート紙やコート紙の塗工層に従来から用いられてきた通常の重合方法により得られる接着剤、すなわち各種ラテックスやアクリルエマルジョン、オレフィン系エマルジョン等と組み合わせても、本発明の目的を達成することができず、空隙のない塗膜が形成され、インキセット性が著しく劣るものとなる。
【0016】
一方、本発明で使用する接着剤を従来の無機顔料と組み合わせて使用した場合も、本発明の目的を達成することができない。すなわち、インキセット性はある程度向上するものの、通常の重合方法で得られる接着剤と無機顔料とを組み合わせた従来の塗工層のレベルには至らない。さらに、外観は艶消し状となり風合いも劣ったものとなる。
【0017】
上述の説明からわかるように、本発明においては、粒子径0.1μm以下の超微細なコロイダルシリカにより複合化された粒径30μm〜70μmのアクリル系重合体エマルジョン粒子の水性分散液からなる接着剤とプラスチックピグメントと併用することが不可欠であり、これによって、パルプ繊維の素材感や風合い、塗工前の原紙の風合いを維持し、しかも印刷適性に優れた塗工印刷用紙が得られるのである。
【0018】
本発明で使用するプラスチックピグメント/接着剤の割合は、プラスチックピグメント/接着剤=5/95重量部〜80/20重量部とする。プラスチックピグメントが5重量部未満になると所望の印刷インキセット性が得られず、さらには塗工前の原紙の風合いを維持する効果が不十分となる。一方、プラスチックピグメントが80重量部を越えると接着剤の割合が少なくなるためプラスチックピグメントの固着力が不足し、印刷時の表面強度に劣るものとなる。プラスチックピグメント/接着剤の割合が、20〜60重量部/80〜40重量部であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明では必要に応じて、塗工層を形成するための塗工液中に、保水剤、架橋剤、硬化剤、消泡剤、増粘剤、耐水化剤、離型剤、滑剤、着色剤等の塗工用助剤も添加することができる。またオフセット印刷適性を阻害しない範囲ならば上記以外の接着剤、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉等の澱粉類、カゼイン、大豆タンパク質類、ポリビニルアルコール類、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリル系、アクリル系、酢酸ビニル系等の各種共重合体からなるラテックス樹脂類等を適宜選択して単独もしくは2種類以上混合したものを少量添加してもかまわない。さらに、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、シリカ等の無機顔料もオフセット印刷適性および外観を阻害しない範囲ならば使用できる。
【0020】
本発明に使用する原紙は、製品の用途や使用目的に応じて各種の原紙が使用でき、特に限定するものではない。例えば、平滑度の低いラフ肌の原紙、フェルトマークやエンボスマークが付与された原紙、あるいは和紙、上質紙、板紙などの木材パルプを主体とした紙を原紙として用いる場合には、パルプ繊維の素材感や風合い、エンボス感などを維持したままで、印刷適性を向上させることができる。一方、合成紙、不織布、エンボスマークや色が付与されたフィルム、合成繊維紙、合成パルプ紙などの木材パルプ繊維以外の素材からなるシートを原紙として使用する場合には、これら原紙の素材感や風合い、エンボス感などを維持したままで、印刷適性を向上させることができる。特にアクリルエマルジョンなどを塗工してエンボスマークや着色を施した樹脂塗工紙を原紙として使用した場合には、エンボス感や着色などの外観を損ねることなく、印刷適性、特にインキセット性やインキ発色性等を改善することができる。また、既に各種の顔料塗工層を設けた塗工紙を原紙として使用することもでき、この場合には原紙となる塗工紙の風合いなどをそのまま維持してインキセット性やインキ発色性等を改善できる。
【0021】
本発明による塗工層を形成するための塗工液を原紙に塗工するに際しては、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、サイズプレスコーター、ビルブレードコーター等を使用することができる。これらの塗工はオンマシン、オフマシンいずれの方法でも塗工することができる。
【0022】
塗工層は原紙の片面のみ(印刷面となる面のみ)に設ければよいが、必要に応じて両面に塗工してもよい。塗工量は片面当たり通常0.5〜20g/m2 (乾重量)とすることができるが、プラスチックピグメントは高価であることを考慮し、塗工前の原紙の素材感、風合いなどを変化させずに維持し、印刷適性を効果的に向上させるためには1〜10g/m2の範囲が好ましい。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
コロイダルシリカにより複合化されたポリアクリル酸エステルエマルジョン水性分散液からなる接着剤(商品名「モビニール1430」、ヘキスト合成(株)製)60重量部に、プラスチックピグメント(商品名「グロスデール840−L」、粒径0.4μm、三井東圧化学(株)製)40重量部を加え、固形分濃度25重量%の塗工液を調製した。この塗工液を、坪量121g/m2 、密度0.67g/cm3、ベック平滑度6.2秒の上質紙系原紙に、メイヤーバーを用いて片面当たりの絶乾塗布量が6g/m2 となるように両面塗工し、熱風乾燥後、塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0025】
[比較例1]
実施例1で使用した上質紙系原紙を塗工せずにそのまま品質評価した。結果を表3に示す。
【0026】
[実施例2]
抄造時にプレス部で毛布の型付けを施して得られた、坪量132g/m2、密度0.66g/cm3、表面粗さ4.9μmのフェルトマーク付原紙に、実施例1で使用した塗工液を実施例1と同様にして片面当たりの絶乾塗布量が7g/m2となるように両面塗工し、熱風乾燥後、塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0027】
[比較例2]
実施例2で使用したフェルトマーク付原紙を塗工せずにそのまま品質評価した。結果を表3に示す。
【0028】
[実施例3]
実施例1におけるプラスチックピグメントを表1のように変更して塗工液を調製した以外は、実施例1と同様にして塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0029】
【0030】
[比較例3]
カオリン(商品名「HTカオリン」、エンゲルハード(株)製)60重量部、炭酸カルシウム(商品名「TP−121」、奥多摩工業(株)製)40重量部に分散剤(商品名「アロンT−40」、東亜合成(株))0.3重量部を加え、コーレス分散機により固形分濃度58重量%の分散液を得た。次いで、この分散液83重量部中に、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名「ニポールLX407F」、日本ゼオン(株))13重量部およびエステル化澱粉(商品名「MS−4600」、日本食品加工(株))4重量部をそれぞれ加え、さらに水を加えて固形分濃度30重量%の塗工液を調製した。この塗工液を実施例1で使用した上質紙系原紙に、メイヤーバーを用いて片面当たりの絶乾塗布量が6g/m2となるように両面塗工し、熱風乾燥後、塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0031】
[比較例4]
実施例1におけるプラスチックピグメント/接着剤の割合を表2のように変更して塗工紙を調製した以外は、実施例1と同様にして塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0032】
【0033】
[比較例5]
アクリルエマルジョン(商品名「ナクリリック178−6182」、スチレン−アクリル系、カネボウ・エヌエスシー(株)製)50重量部に、プラスチックピグメント(商品名「グロスデール840−L」)50重量部を加え、固形分濃度25重量%の塗工液を調整した。この塗工液を実施例1で使用した上質紙系原紙に、メイヤーバーを用いて片面当たりの絶乾塗布量が6g/m2となるように両面塗工し、熱風乾燥後、塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0034】
[実施例4]
カオリン(商品名「ULTRA WHITE 90」、エンゲルハード(株)製)39重量部、酸化チタン(商品名「タイペーク R−820」、石原産業(株)製)10重量部、エステル化デンプン(商品名「MS−4600」)2重量部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名「ポリラック 750」、三井東圧化学(株)製)47重量部および赤色の分散染料(C.I.Disperse Red 146)2重量部からなる塗工液を、上質紙系原紙に、メイヤーバーを用いて片面当たりの絶乾塗布量が8g/m2となるように片面塗工し、熱風乾燥後エンボス掛けして樹脂塗工紙を得た。
【0035】
次いで、コロイダルシリカにより複合化されたポリアクリル酸エステルエマルジョン水性分散液からなる接着剤(商品名「モビニール1430」)60重量部にプラスチックピグメント(商品名「グロスデール840−L」)40重量部を加えて、固形分濃度25重量%の塗工液を調製し、上記で得られた樹脂塗工紙を原紙として、メイヤーバーを用いて片面当たり乾燥塗布量が5g/m2となるように塗工、乾燥して、樹脂塗工紙にさらに塗工を施した塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0036】
[比較例6]
アクリルエマルジョン(商品名「ナクリリック178−6182」)にエステル化澱粉(商品名「MS−4600」)25重量部を加えて、固形分濃度25重量%の塗工液を調製した。
この塗工液を、実施例4で得た樹脂塗工紙を原紙として、メイヤーバーを用いて片面当たり乾燥塗布量5g/m2となるように塗工、乾燥して、樹脂塗工紙にさらに塗工を施した塗工紙を得た。この塗工紙について品質評価を行った結果を表3に示す。
【0037】
品質評価の方法は以下の通りである。
【0038】
【0039】
表3の結果から以下のように評価できる。
(1)本発明による塗工印刷用紙は、塗工前の原紙の素材感、風合いを維持し、しかもオフセット印刷適性、特にオフセット印刷時のインキ発色性、インキセット性が塗工前の原紙に比較して向上する。
(2)比較例1、2のように本発明の塗工層のない原紙のままであると、インキ発色性に劣る。
(3)比較例3のように従来のアート紙やコート紙で用いられている無機顔料塗工層を設けた場合には、塗工前の原紙の風合いは全く損なわれる。
(4)比較例4(9)(10)のように、プラスチックピグメントが5重量部未満になると、塗工前の原紙の風合いを維持できなくなる。
(5)比較例4(11)のように、プラスチックピグメントが80重量部を越えると、表面強度に劣るものとなる。
(6)比較例5のように、プラスチックピグメントを使用しても、超微細なフィラーにより複合化されたバインダー粒子の水性分散液からなる接着剤の代わりに、従来のアート紙やコート紙に使用されている接着剤を用いると、塗工前の原紙の風合いが損なわれ、インキセット性が劣るものとなる。
(7)樹脂塗工紙を原紙としてさらその表面を塗工する場合、本発明による塗工層を設けた場合(実施例4)には、塗工前の樹脂塗工紙の風合いや着色が維持され、しかもインキ発色性、インキセット性が良好となる。一方、通常の接着剤と無機顔料からなる塗工層を設けた場合(比較例6)には、塗工前の樹脂塗工紙の風合いや着色が損なわれ、インキ発色性、インキセット性も劣るものとなる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したところからわかるように本発明によれば、顔料としてプラスチックピグメントを使用し、これに特定の接着剤を組み合わせて特定の配合割合とした塗工層を原紙に設けることにより、塗工前の原紙の素材感や風合いを維持し、しかも、インキ発色性やインキセット性といったオフセット印刷適性を向上せしめることができる。
Claims (4)
- 原紙の少なくとも片面に、(a)粒径2μm以下のプラスチックピグメントおよび(b)粒子径0.1μm以下のコロイダルシリカにより複合化された粒径30〜70μmのアクリル系重合体粒子の水性分散液からなる接着剤の2成分を主成分とする塗工層を設け、プラスチックピグメント/接着剤の割合が5/95重量部〜80/20重量部であることを特徴とする塗工前の原紙の風合いを維持した塗工印刷用紙。
- 前記プラスチックピグメント/接着剤の割合が、20/80重量部〜60/40重量部であることを特徴とする請求項1記載の塗工印刷用紙。
- 前記プラスチックピグメントが透明性の高いものであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の塗工印刷用紙。
- 前記プラスチックピグメントの粒径が0.05〜0.5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗工印刷用紙。
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